(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】低収束負パワー眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02C 7/06 20060101AFI20231108BHJP
【FI】
G02C7/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023009321
(22)【出願日】2023-01-25
(62)【分割の表示】P 2020536628の分割
【原出願日】2018-12-15
【審査請求日】2023-02-22
(32)【優先日】2017-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519247958
【氏名又は名称】ニューロレンズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】クラール ジェフリー ピー
(72)【発明者】
【氏名】プラムリー アリック
(72)【発明者】
【氏名】ジマニ ゲルゲリー ティー
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0049301(US,A1)
【文献】特表2008-529100(JP,A)
【文献】特表2013-521518(JP,A)
【文献】特表2009-536753(JP,A)
【文献】特開2001-33738(JP,A)
【文献】特開2004-94004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球緊張低減レンズであって、
眼球緊張低減レンズの中心法線が、z軸を定め、眼球緊張低減レンズの中心領域が、タンジェンシャル中心x-y平面を定め、互いに眼球緊張低減レンズのx-y-z座標系を定め、
眼球緊張低減レンズが、
前記座標系の中心から遠見視力x距離での遠見視力領域点で光源によって向けられた光線を眼球-中心表現場所に伝播するように屈折させるように構成されて負の遠見視力光学パワーを有する遠見視力領域と、
前記座標系の中心から近見視力x距離での近見視力領域点で前記光源によって向けられた光線を対応するy高さで前記眼球-中心表現場所のx-z場所に伝播するように屈折させるように構成されて0.5D内で前記遠見視力光学パワーに適合する近見視力光学パワーを有する近見視力領域と
を含み、
前記近見視力x距離は、前記遠見視力x距離よりも小さい、
ことを特徴とする眼球緊張低減レンズ。
【請求項2】
前記遠見視力領域は、前記遠見視力x距離での前記遠見視力領域点で前記光源によって向けられた前記光線を前記座標系のy-z平面と遠見視力凝視収束角度で交わるように屈折させるように構成され、
前記近見視力領域は、前記近見視力x距離での前記近見視力領域点で前記光源によって向けられた前記光線を前記y-z平面と近見視力凝視収束角度で交わるように屈折させるように構成され、
前記近見視力凝視収束角度は、前記遠見視力凝視収束角度よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項3】
前記遠見視力領域は、前記遠見視力x距離での前記遠見視力領域点で前記光源によって向けられた前記光線を遠見視力屈折角度だけ屈折させるように構成され、
前記近見視力領域は、前記近見視力x距離での前記近見視力領域点で前記光源によって向けられた前記光線を近見視力屈折角度だけ屈折させるように構成され、
前記近見視力屈折角度のx成分が、前記遠見視力屈折角度のx成分よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項4】
漸変x距離での漸変領域点で前記光源によって向けられた光線を前記眼球-中心表現場所に伝播するように屈折させるように構成された少なくとも部分的に前記遠見視力領域と前記近見視力領域の間の漸変領域を含み、
前記漸変x距離は、前記近見視力x距離と前記遠見視力x距離の間にあることを特徴とする請求項1に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項5】
前記光源は、前記眼球緊張低減レンズの半径よりも大きい前記座標系のz軸からの光源x距離、及び
10cmと100cmの間の光源z距離、に位置付けられることを特徴とする請求項1に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項6】
前記眼球-中心表現場所は、z軸上で前記光源の方向と反対の方向に前記座標系の中心から15~25mmの範囲のz距離に位置することを特徴とする請求項1に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項7】
前記近見視力領域は、5mm
2よりも大きい面積を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項8】
前記近見視力光学パワーは、0.25D内で前記遠見視力光学パワーに適合する、
ことを特徴とする請求項1に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項9】
前面であって、
前記座標系の前記中心から鼻側x距離で前記遠見視力領域で前記前面に接する遠見視力前側タンジェンシャル、及び
前記鼻側x距離でのかつ対応するy高さでの前記近見視力領域で前記前面に接する近見視力前側タンジェンシャル、
を有する前記前面と、
後面であって、
前記鼻側x距離での前記遠見視力領域で前記後面に接する遠見視力後側タンジェンシャル、及び
前記鼻側x距離でのかつ前記対応するy高さでの前記近見視力領域で前記後面に接する近見視力後側タンジェンシャル、
を有する前記後面と、
を含み、
前記遠見視力前側タンジェンシャル及び前記遠見視力後側タンジェンシャルは、遠見視力面収束角度を形成し、かつ前記近見視力前側タンジェンシャル及び前記近見視力後側タンジェンシャルは、近見視力面収束角度を形成し、
前記近見視力面収束角度は、前記遠見視力面収束角度よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項10】
前記遠見視力領域は、遠見視力z軸を有し、前記近見視力領域は、近見視力z軸を有し、
前記近見視力z軸は、前記遠見視力z軸に対して鼻方向に回転される、
ことを特徴とする請求項1に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項11】
前記近見視力x距離は、像-調節プロトコル、レンズ-調節プロトコル、及び光源-調節プロトコルのうちの少なくとも1つによって決定されるような前記遠見視力x距離よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項12】
前記遠見視力領域及び前記近見視力領域のうちの少なくとも一方が、非球面成分、パワー中立成分、円柱成分、コマ成分、及び非点収差成分のうちの少なくとも1つを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項13】
眼球緊張低減レンズであって、
眼球緊張低減レンズの中心法線が、z軸を定め、眼球緊張低減レンズの中心領域が、タンジェンシャル中心x-y平面を定め、互いに眼球緊張低減レンズのx-y-z座標系を定め、
眼球緊張低減レンズが、
前記座標系の中心から遠見視力x距離での遠見視力領域点で光源によって向けられた光線を像点に伝播するように屈折させるように構成されて負の遠見視力光学パワーを有する遠見視力領域であって、該光源が該座標系の中心から光源z距離で前記z軸上に位置付けられる、前記遠見視力領域と、
前記座標系の中心から近見視力x距離での近見視力領域点で前記光源によって向けられた光線を対応するy高さで前記像点のx-z場所に伝播するように屈折させるように構成されて0.5D内で前記遠見視力光学パワーに適合する近見視力光学パワーを有する近見視力領域と、
を含み、
前記近見視力x距離は、前記遠見視力x距離よりも小さい、ことを特徴とする眼球緊張低減レンズ。
【請求項14】
前記遠見視力領域は、光線を前記座標系のy-z平面に対して遠見視力凝視収束角度で差し向けることによって前記遠見視力領域点での屈折を通して前記像点に伝播するように前記光源が光線を差し向けるように構成され、
前記近見視力領域は、光線を前記座標系のy-z平面に対して近見視力凝視収束角度で差し向けることによって前記近見視力領域点での屈折を通して、前記対応するy高さで前記像点のx-z場所に伝播するように前記光源が光線を差し向けるように構成され、
前記近見視力凝視収束角度は、前記遠見視力凝視収束角度よりも小さい、
ことを特徴とする請求項13に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項15】
前記遠見視力領域は、前記遠見視力領域点で前記光源によって向けられた前記光線を遠見視力屈折角度だけ屈折させて前記像点に伝播するように構成され、
前記近見視力領域は、前記近見視力領域点で前記光源によって向けられた前記光線を近見視力屈折角度だけ屈折させて前記対応するy高さで前記像点の前記x-z場所に伝播するように構成され、
前記近見視力屈折角度のx成分が、前記遠見視力屈折角度のx成分よりも大きい、
ことを特徴とする請求項13に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項16】
前記座標系の前記中心から鼻側x距離での遠見視力前側タンジェンシャル、及び
前記鼻側x距離及び対応するy高さでの近見視力前側タンジェンシャル、
を有する前面と、
前記鼻側x距離での遠見視力後側タンジェンシャル、及び
前記鼻側x距離及び前記対応するy高さでの近見視力後側タンジェンシャル、
を有する後面と、
を含み、
前記遠見視力前側タンジェンシャル及び前記遠見視力後側タンジェンシャルは、遠見視力面収束角度を形成し、かつ前記近見視力前側タンジェンシャル及び前記近見視力後側タンジェンシャルは、近見視力面収束角度を形成し、
前記近見視力面収束角度は、前記遠見視力面収束角度よりも大きい、
ことを特徴とする請求項13に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項17】
前記遠見視力領域は、遠見視力z軸を有し、前記近見視力領域は、近見視力z軸を有し、
前記近見視力z軸は、前記遠見視力z軸に対して鼻方向に回転される、
ことを特徴とする請求項16に記載の眼球緊張低減レンズ。
【請求項18】
前記近見視力x距離は、像-調節プロトコル、レンズ-調節プロトコル、及び光源-調節プロトコルのうちの少なくとも1つによって決定されるような前記遠見視力x距離よりも小さい、
ことを特徴とする請求項13に記載の眼球緊張低減レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に改善された眼鏡レンズに関し、より詳細には、眼球緊張を低減して収束を緩和し、かつ固有受容フィードバックを変更する眼鏡レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
正常視力の場合に、個人は、異なる距離に位置付けられた物体にフォーカスすることができる。理想的には、個人は、遠見視力と呼ばれる遠くの物体上にかつ近見視力と呼ばれる近い物体上にフォーカスすることができる。眼の光学系は、遠見視力と近見視力の両方に対してフォーカスするために多くの筋肉を使用する。これらの筋肉は、遠見視力及び近見視力間で移行する時に眼の様々な態様を調節する。筋肉調節は、水晶体の形状に微妙な変化を加えて水晶体のフォーカスを調節すること、眼球を回転させてそれらの光軸を回転させること、及び瞳孔のサイズを変えることを含む。
【0003】
老視は、加齢による眼の水晶体の可撓性の損失によって引き起こされる近見視力の自然な劣化である。老視は、近い物体を凝視する時に眼がそれほど強くフォーカスしなくてもよいように近見視力屈折誤差を補正する「読書」眼鏡を着用することによって部分的に補償することができる。老視の個人は、近見視力及び遠見視力に対して異なる光学補正を必要とする。しかし、2つの眼鏡を用いること及びそれらを高い頻度で取り替えることは紛らわしいことである。絶えず眼鏡を取り替えることを回避するために、近見視力及び遠見視力に対して異なる光学補正を提供する遠近両用眼鏡が使用される場合がある。これらの2つの視力領域間の移行は、急変又は漸変とすることができる。後者の眼鏡は、累進加算レンズ(PAL)と呼ばれる。急変遠近両用眼鏡は、2つの視力領域を分離する可視線を有し、一方でPALは、異なる屈折パワー(dioptric powers)を有する領域間に可視の線又は縁を持たない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】US 15/289,157
【文献】US 15/289,163
【文献】US 15/289,194
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全てのこの進歩にも関わらず、一部のタイプの視力関連の不快感が依然として存続している。これらの不快感の1つは、現代のデジタル生活様式での習慣のシフトに関連している。職業の大きくかつ増大する割合が、労働者に彼らの作業時間の大きくかつ増大する割合をコンピュータ画面及びモバイルデバイスを含む近距離デジタルインタフェースにフォーカスするのに費やすことを要求している。同じことは、取りわけ、何時間もビデオゲームで遊び、セル電話上で文字通信して更新を確認する多くの人々の私生活に関しても真である。全てのこれらの職業的及び挙動的シフトは、人々がデジタル画面、デバイス、ディスプレイ、及びモニタを以前よりも遙かに近い距離で注視するのに費やす時間を急速に増加させた。眼が近見視力ターゲットに慣らされている時間の増加は、近見視力に関わる筋肉に対して過度の要求を課し、多くの場合にそれらを快適ゾーンを超えて緊張させる。これは、疲労、不快感、疼痛、又は更にデジタル誘起の偏頭痛に至る可能性がある。これまでのところ、これらのデジタルデバイス関連の視覚的不快感、疼痛、及び偏頭痛の正確な発症機構に対する広く受け入れられた統一見解はない。従って、デジタル眼球不快感に関して緩和を提供することができる眼鏡又は他の視機能ソリューションに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態は、低収束眼鏡の収束低減レンズを含み、収束低減レンズの中心法線は、z軸を定め、収束低減レンズの中心は、タンジェンシャル中心x-y平面を定め、互いに収束低減レンズのx-y-z座標系を定め、収束低減レンズは、座標系のy-z平面からx距離での遠見視力領域点でz軸と平行に向けられた光線をその延長が遠見視力交点z距離でy-z平面と交わるように屈折させるように構成されて負遠見視力光学パワー(negative distance-vision optical power)を有する遠見視力領域と、対応するy高さで遠見視力領域点のx距離での近見視力領域点でz軸と平行に向けられた光線をその延長が遠見視力交点z距離よりも小さい近見視力交点z距離でy-z平面と交わるように屈折させるように構成されて0.5D内で遠見視力光学パワー(distance-vision optical power)に適合する近見視力光学パワー(near-vision optical power)を有する近見視力領域とを含む。
【0007】
実施形態は、更に、収束低減レンズを含み、収束低減レンズの中心法線は、z軸を定め、収束低減レンズの中心は、タンジェンシャル中心x-y平面を定め、互いに収束低減レンズのx-y-z座標系を定め、収束低減レンズは、座標系のy-z平面からx距離での遠見視力領域点で光源によって向けられた光線を屈折させてy-z平面との遠見視力光収束角度を形成するように構成されて負遠見視力光学パワーを有する遠見視力領域であって、光源が座標系の中心から交点z距離でz軸上に位置付けられる上記遠見視力領域と、対応するy高さで座標系のy-z平面からx距離での近見視力領域点で光源によって向けられた光線を屈折させてy-z平面との近見視力光収束角度を形成するように構成されて0.5D内で遠見視力光学パワーに適合する近見視力光学パワーを有する近見視力領域であって、光源が座標系の中心から交点z距離でz軸上に位置付けられる上記近見視力領域とを含み、近見視力光収束角度のx成分は、遠見視力光収束角度のx成分よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2A】単眼視野レンズの屈折角度を示す図である。
【
図2B】単眼視野レンズの屈折角度を示す図である。
【
図2C】単眼視野レンズの屈折角度を示す図である。
【
図3A】凝視収束角度を誘起する近い物体を示す図である。
【
図3B】凝視収束角度を誘起する近い物体を示す図である。
【
図4A】凝視収束角度に対する収束低減レンズの効果を示す図である。
【
図4B】凝視収束角度に対する収束低減レンズの効果を示す図である。
【
図5A】光伝播に対する収束低減レンズの効果を示す図である。
【
図5B】光伝播に対する収束低減レンズの効果を示す図である。
【
図5C】光伝播に対する収束低減レンズの効果を示す図である。
【
図5D】光伝播に対する収束低減レンズの効果を示す図である。
【
図6A】収束低減レンズによって影響された光伝播の態様を示す図である。
【
図6B】収束低減レンズによって影響された光伝播の態様を示す図である。
【
図6C】収束低減レンズによって影響された光伝播の態様を示す図である。
【
図6D】収束低減レンズによって影響された光伝播の態様を示す図である。
【
図7A】様々な収束低減レンズの等高線表現を示す図である。
【
図7B】様々な収束低減レンズの等高線表現を示す図である。
【
図8A】収束低減レンズ内の近見視力領域の様々な設計を示す図である。
【
図8B】収束低減レンズ内の近見視力領域の様々な設計を示す図である。
【
図8C】収束低減レンズ内の近見視力領域の様々な設計を示す図である。
【
図10A】収束低減レンズの様々な実施形態での軸外曲率中心を示す図である。
【
図10B】収束低減レンズの様々な実施形態での軸外曲率中心を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に近見視力に関する凝視収束角度に対する既存眼鏡の通常の単眼視野レンズの効果を説明することによって本発明の実施形態の背景を示す。その後に本発明の実施形態を以下に説明する。
【0010】
図1Aは、典型的な正パワー(positive power)単眼視野光学レンズ1が入射光線2又は単純に光2にどのように影響を及ぼすかを示している。平行光線2がレンズ1上に入射すると、レンズ1は、それらを焦点Fの中にフォーカスする。
【0011】
図1Bは、入射光線2の偏心又は軸外部分に着目している。見て分るように、偏心又は軸外平行光線は、十分に確立された光屈折の法則に従ってレンズ1の傾斜又は湾曲した前面と傾斜又は湾曲した後面とによって焦点Fに向けて屈折される。光線がこれら2つの傾斜又は湾曲した面を通って伝播する全体効果は、それらが誘起された屈折角度αの屈折を受けることである。
【0012】
負光学パワー(negative optical power)単眼視野レンズは、光線の光源側延長が(仮想)焦点Fで交わるように光線を光軸から離れるように屈折させる。これを負パワー(negative power)レンズが負焦点距離を有するということによって特徴付けることが通例である。
【0013】
軸から半径方向距離rでのレンズ領域による屈折の量を特徴付ける異なる関連の方法がある。1つの特徴付けは、屈折角度αそれ自体によるものである。別のものは、レンズの焦点距離であるfに対するレンズ光軸3からのレンズの領域の半径方向距離であるrの比として表されるこの同じ屈折角度のタンジェントによるものである:
tanα=r/f (1)
【0014】
この関係は、D=1/f[1/m]として定められるDジオプトリの光学パワー(optical power)のレンズがレンズ1の軸3から半径方向距離rでレンズに入射する光線に対して屈折角度αを誘起することを示し、ここでαは、次式によって与えられる:
tanα=r*D (2)
【0015】
図2Aは、光学パワーDを有する単純な単眼視野レンズ10を示している。
【0016】
図2Bは、
図2Aの単眼視野レンズ10の傾斜又は湾曲した面がレンズの軸から離れるような領域毎の屈折角度αを誘起するという上述の概念を示している。屈折角度αの大きさは、軸からの半径方向距離にのみ依存するので、α等高線、すなわち、屈折角度αの大きさが等しい点は、同心円を形成する。図示の円は、約r=2.8mm、r=5.6mm、r=8.4mm、r=11.2mm,及びr=14.1mmの半径を有する。式(2)は、屈折角度αのタンジェントであるtanαが半径rと光学パワーDの積として与えられることを提供している。ここで、Dの単位は[1/m]であり、rの単位は[m]である。rの典型的な値は、1~20ミリメートルであり、Dの値は、数ジオプトリ[1/m]であるので、tanα及び従ってαは、10
-3~10
-1の範囲の値を取る。一例として、r=1mm及びD=1[1/m]に対して、tanα=10
-3である。より扱い易い数値を得るために、100
*tanαである「屈折ジオプトリ」又は「rD」を定義することができる。この定義を使用すると、tanα=0.01に対する屈折角度は、1rDの屈折ジオプトリを有する。従って、
図2Bに戻ると、図示の円上の1Dパワーレンズに対して、屈折ジオプトリは、0.28rD、0.56rD、0.84rD、1.12rD、及び1.41rDという値を取る。本明細書では、屈折角度は、以下で多くの場合に屈折ジオプトリを用いて表す。同じく上述のように、屈折角度は小さいので、角度とそれらのタンジェントは、以下で交換可能に使用される。
【0017】
図2Bの下側のグラフは、屈折角度αのx成分であるα
xを示しており、x-y座標系は、レンズ10の中心を原点とし、その軸は、図示のようにレンズ10の平面内で水平及び垂直である。α
xを定めるためのいくつかの方法があり、これらは互いに同様である。1つの実用的な定義は、α
x=sinφ
*αであり、式中のφは、図示のように
図2Bの平面内で真下に向くy軸の負又は下半分から測定される角度である。式(2)と組み合わせて長さrの半径方向ベクトルのx座標であるsinφ
*r=xを使用すると、次式の単純な関係が与えられる:
α
x=x
*D (3)
【0018】
図2Bの下側のグラフは、α
xを一般的に角度φの関数として示している。上側の図は、+45度及び-45度の線に沿うα
xの特定の値をsin(45)=0.7を用いて示している。これらの値は、図示のように(明瞭化の目的で単位rDを記していない)α
x=0.2rD、0.4rD、0.6rD、0.8rD、及び1.0rDである。
【0019】
αxの類似の定義は、屈折光線2の投影の幾何学形状をより正確に考慮するαx=sinφ*tanαを含む。しかし、存在する小さい角度では、これら2つの定義は非常に似通った数値をもたらす。最終的に、この数式は、光軸3と平行ではなく光軸3と角度βを成す光線2に対して拡張することができる。一般的に、そのような拡張は、角度βへの依存性による物体角度依存の表現をもたらすことになる。取りわけ、そのようなβ依存の数式は、αで展開することができる。そのような拡張は、αの最高次では式(2)を再現することになる。
【0020】
αxは、屈折角度αのx成分を特徴付けて、それは、次に、眼鏡の着用者がこれらの光線に集中するために凝視をどの程度方向転換させる必要があるかを決定する。レンズ10の領域内のαxが大きい程、この領域を通過する光2はレンズ10によって大きく屈折され、着用者は、この屈折光2に位置合わせするために凝視をレンズ10に対して大きく方向転換させなければならない。
【0021】
図2Cは、α
xが同じ値を取る点の間を接続する
図2Bのレンズ10に関するα
x等高線を示している。見て分るように、光学パワーDの単眼視野レンズ10では、α
xは、α
x等高線が有する点のx座標にのみ依存するので、α
x等高線は、y軸と平行なほぼ真っ直ぐな線である。線形近似が補正を必要とし始める大きい光学パワー及び半径では、α
x等高線は、半径方向外向きにx軸の近くに膨らみ始める。図示のα
x等高線の値は、正パワーレンズに関するものである。負パワーレンズでは、鼻側/左等高線は正値を取得し、右/側頭側等高線は負値を取得する。
【0022】
図3Aは、人が遠くの物体を凝視している時に左眼の凝視方向と右眼の凝視方向とが実質的に平行であることを示している。従って、凝視方向の収束は存在せず、眼筋は全く緊張しない。そのような場合に、眼球5の中心を通って遠くの物体に向く2つのz軸3は、眼球-光軸9と一致する。遠くの物体からの光線2は眼球5に入射し、その後に、途中で眼球水晶体7を通って伝播し、眼球5の網膜に当たる。次に、近い物体に向けられる凝視の収束角度を特徴付けるための基準として平行なz軸3を使用する。
【0023】
図3Bは、人が近い物体を凝視している時に左眼の凝視と右眼の凝視とが互いに向けて傾斜又は回転し、各凝視がz軸3と非ゼロの凝視収束角度βを成すことを示している。凝視収束角度βは、互いに向う2つの眼の凝視の収束を特徴付けて、以下では、凝視収束角度βは、特に、眼の全凝視回転角度のx成分を指すものとする。凝視収束角度βのこの取り決めにより、凝視収束角度βは屈折角度のx成分α
xと類似になり、従って、説明が容易になる。
【0024】
上述のように、眼球は、眼に外部から取り付けられた筋肉によって回転される。特に、横方向のx方向の回転は、内直筋と外直筋によって制御され、垂直回転は、上直筋と下直筋、及び上斜筋と下斜筋によって制御される。左眼の内直筋と右目の内直筋が収縮すると、これらの眼の凝視は互いに向けて収束する。電子画面、デジタル画面、モバイル電子デバイスの画面、仕事関連の文書、又は更に書籍のような近い物体に長時間にわたって眼を慣らす個人は、内直筋及び上斜筋の連続的な収縮を必要とし、従って、これらの筋肉にかなりの緊張を及ぼす。この「デジタル眼球緊張」は、疲労に至る可能性があり、現代のデジタル生活様式の要求によって引き起こされる頭痛に至り、最終的に偏頭痛に達する。
【0025】
デジタル生活様式は、他の形態の眼精疲労又は眼球緊張と、固有受容視差及び固視視差を含む他のタイプの収束障害とを含む可能性がある。固有受容視差は、眼が意識的にフォーカスされている場所と物体が空間内で位置付けられた場所の知覚との間の均衡不良である。この視差は様々なファクタに依存する。固有受容視差を有する患者の脳は、この視差を補償することができる。しかし、そうすることによって三又神経が過剰刺激を受け、その結果、患者が頭痛、眼の疲れ、眼の周りの疼痛、霧視、頚部痛、乾燥性角結膜炎、及び眼精疲労の他の一般的な症状を体験することになる。
【0026】
特に言及に値する部類の症状は、1億人の米国人に影響を及ぼしていると推定されるコンピュータ視力症候群(CVS)である。コンピュータ視力症候群は、近距離のコンピュータデバイスを見ながら長時間費やした後に感じられる物理的な眼の不快感である。CVSは、様々な眼精疲労症状を含む又は誘起する可能性があり、従って、健康、喜び、気分、及び労働生産率に対する弊害を有する可能性がある。
【0027】
別の大きい部類の症状は、慢性連日性頭痛(CDH)という名称で公知である。CDHの症状は、3千万人の米国人に影響を及ぼしていると推定されている。これらの患者は、それ自体が慢性連日性頭痛に発現する三又神経の過剰刺激に悩まされる。様々なファクタ及び誘因が、身体を衰弱させる慢性連日性頭痛に寄与すると考えられる。CDHの因果関係に関する統一見解が不在の状態では、CDHに悩まされる患者は、これらの症状を鈍化させようと模索するだけの治療オプションに限られる。しかし、本出願人は、慢性連日性頭痛患者のうちのかなりの割合が中枢視力系と、末梢視力系と、神経系とが相互作用する際のこれらの作用動態の間の不整合な他覚的徴候を示すことに気付いている。従って、本出願人は、凝視収束を修正し、観察される不整合を考慮する眼鏡レンズを生成することによって眼精疲労、CVS、及びCDHの根本原因を緩和することを提案する。
【0028】
図4Aは、負パワー(単眼視野)眼鏡10’が、
図2Cに関して上述したように屈折角度αのx成分であるα
xが鼻側領域内で正であることに起因して眼が
図3Bの眼鏡不在の場合と比較してある程度まで凝視収束角度βを低減することを可能にすることができることを示している。従って、これらの負パワー単眼視野眼鏡10’は、デジタルデバイスによって引き起こされる眼球緊張、眼精疲労、コンピュータ視力症候群、CDH、及び固有受容視差をある程度楽にすることができる。しかし、多くの場合に、この緩和は十分ではなく、眼球緊張及び眼精疲労は、負パワー単眼視野眼鏡の着用者においても持続する。
【0029】
図4Bは、眼球緊張、眼精疲労、コンピュータ視力症候群、及び負パワーレンズに対する固有受容視差によって引き起こされる症状を更に低減し、多くの場合に排除することができる収束低減眼鏡100’内の収束低減レンズの実施形態を示している。収束低減レンズ100を有する収束低減眼鏡100’は、その着用者がデジタルデバイスのような隣接物体を注視する時に凝視収束角度βを低減する適切に修正された屈折角度αを有する。低減した凝視収束角度βは、鼻方向への眼のより小さい回転しか必要とせず、従って、眼の内直筋及び上斜筋の連続的な収縮及び緊張を緩和する。この低減した筋肉緊張は、デジタル偏頭痛を低減し、多くの場合に排除する。
【0030】
図5A~
図5Bは、眼球緊張及び関連のデジタル眼球不快感を緩和する眼球緊張低減レンズ100又は収束低減レンズ100の実施形態を詳細に例示している。本明細書を通じて眼球緊張低減レンズ100という用語と収束低減レンズ100という用語を交換可能に用いて取り扱う。明瞭化の目的で、収束低減眼鏡100’の収束低減レンズ100のうちの1つだけを示している。下記の説明は、鼻を横切って鏡像反転のような適切な修正を加えた上で収束低減眼鏡100’の他方のレンズに対しても適用される。参考までに、眼鏡着用者の鼻を示している。収束低減レンズ100の実施形態は、以下の通りにx-y-z座標系を定めることができる。収束低減レンズ100の中心法線は、z軸3を定めることができ、収束低減レンズ100の中心領域は、タンジェンシャル中心x-y平面を定めることができる。座標系の中心は、収束低減レンズ100の中心にあるとすることができる。x軸は、眼鏡100’に対して「水平」であり、従って、左と右の両方の収束低減レンズ100の中心を通過するという取り決めを採用する。相応に、y軸は垂直である。眼鏡内のレンズは円形であるとは限らず、従って、その中心の定義が明確に定められた状態で現れない場合があるが、レンズ製造工程の標準生成物は、多くの場合にパックと呼ばれて後にレンズを切り抜く元になる円形ディスクである。これらの円形ディスク又はパックの中心は明確に定められる。この中心の概念の自然な拡張又は適応は、特定のレンズに対して定められ、それによってx-y-z座標系の定義を固定することができる。時には簡潔化の目的で、x-y-z座標系は、単純に座標系と呼ばれることになる。
【0031】
このx-y-z座標系を用いてかつ
図5Aを参照して、収束低減レンズ100は、(xy-z)座標系の中心から遠見視力x距離x
Pdでの遠見視力領域点P
dで光源(又は物体、下記を参照されたい)11によって向けられた光線2を屈折させて眼球-中心表現場所8に伝播するように構成されて負遠見視力光学パワーを有する遠見視力領域110を含むことができる。一部の実施形態では、眼球-中心表現場所8は、眼球中心8それ自体とすることができる。他の実施形態では、眼球-中心表現場所8は、場所8に配置されたセンサ又は場所8にわたって位置決めされた画面とすることができ、眼球-中心表現場所8は、z軸3上で光源の方向と反対の方向にレンズの座標系の中心から15~25mmの範囲のz距離位置する。これらのセンサ又は画面である眼球-中心表現場所8は、測定及び特徴付けに向けてより適切で利用可能なものとすることができる。例えば、眼球5の代わりに、眼球水晶体7と眼の角膜とを表すように配置され、そのように機能するレンズを含むフルサイズ眼球モデルを使用することができる。この眼球モデルは、y方向軸の周りに回転可能にし、眼球-中心表現場所8に位置決めすることができる。
【0032】
図5Bは、収束低減レンズ100が、座標系の中心から近見視力x距離x
Pnでの対応するy高さでの近見視力領域点P
nで光源11によって向けられた光線2を眼球-中心表現場所8のx-z場所に伝播するように屈折させるように構成されて、0.5ジオプトリD内で負遠見視力光学パワーに適合する近見視力光学パワーを有する近見視力領域120を更に含むことができることを示している。
【0033】
図5A及び
図5Bでの眼球-中心表現場所8のx-z場所は(少なくともほぼ)同じであり、それに対して遠見視力領域110のy高さと近見視力領域120のy高さとが異なるので、対応するy高さは異なる。
図5A~
図5Dは、これらの実施形態をx-z断面に示すので、眼球-中心表現場所8の適合するx-z場所しか例示していない。
【0034】
近見視力領域120の光学パワーは遠見視力領域110の光学パワーに非常に近く、一部の実施形態では等しいので、収束低減レンズ100の実施形態は、単眼視野レンズ又は単一視野レンズと呼ばれる。この態様は、これらのレンズを近見視力光学パワーと遠見視力光学パワーとが異なる他の従前の遠近両用眼鏡と区別することができる。
【0035】
明瞭化の目的で、本明細書では、「光学パワー」(”optical power”)という用語は、特にレンズの焦点距離fに関して焦点距離に反比例するジオプトリD、すなわち、D=1/fで測定される光学パワーを指す。同様に、
図5Aは、高い正のy座標での収束低減レンズ100の断面とすることができ、それに対して
図5Bは、より低い負のy座標での同じ収束低減レンズ100の断面を示すとすることができる。本明細書では、場合によって光線は、遠見視力領域110内と近見視力領域120内とで同じx距離で収束低減レンズ100に当たるものとして説明する。当然ながら、遠見視力領域110では、x距離により高い/正のy値で当たり、それに対して近見視力領域120では、同じx距離により低い/負のy値で当たる。
【0036】
図5A~
図5Bの実施形態では、図示のように近見視力x距離x
Pnは遠見視力x距離x
Pdよりも小さい。見て分るように、これらの実施形態では近見視力x距離x
Pnが遠見視力x距離x
Pdよりも小さいので、この収束低減レンズ100の着用者は、近見視力領域120を通して光源11を注視する時に、遠見視力領域110を通して(対応するy高さで)眼の眼球-光軸9を同じ光源11を注視する場合と比較してz軸3に向けて近い場所に回転させ、それによって次に更に詳しく説明するように凝視収束角度βは低減する。
図5Bに示すように、小さい凝視収束角度βは、眼球5の緊張低減回転を意味する。従って、収束低減レンズ100は、眼球緊張低減レンズ100と呼ばれる場合もある。この理由から、収束低減眼鏡100’は、眼球緊張、デジタル偏頭痛、CVS、CDH、固有受容視差、固視視差、眼精疲労を低減し、一般的に収束障害を低減するという待望の医療的利益を送出する。
【0037】
遠見視力領域内で非負光学パワー(non-negative optical power)を有する関連の眼球緊張低減レンズは、現在特許出願中かつ本出願人所有の特許出願US 15/289,157「眼球緊張低減レンズ(Eye-strain reducing lens)」、US 15/289,163「低収束眼鏡(Low convergence spectacles)」、及びUS 15/289,194「軸外曲率中心を有するレンズ(Lens with off-axis curvature center)」に記載されている。本説明の実施形態とこれら3つの出願に記載されているものとの間の相違点は、非負パワー(non-negative power)レンズが近見視力領域内で眼球緊張を悪化させ、それに対して本明細書に説明する負パワーレンズは、ある程度まで眼球緊張を低減することができる点である。しかし、この低減にも関わらず、本出願人は、患者を扱う中で多くの場合に更に別の緩和を必要とすることを見出している。眼球緊張のこの更に別の緩和は、本明細書に説明する眼球緊張低減眼鏡100’によって達成される。
【0038】
遠近両用眼鏡は、通常の遠見視力領域とは別個の近見視力領域を有する。そのような眼鏡には、更にこれら2つの視力領域の収束特性又は屈折特性を異なるものにすることによって眼球緊張低減の追加の医療的利益を与えることができる。
【0039】
本明細書に説明する単一視野又は単眼視野収束低減レンズ100の際立った特徴は、近見視力領域120と遠見視力領域110とが適合光学パワー(matching optical powers)を有するにも関わらず、これらのレンズが、遠見視力領域110の光学パワーとは異なる光学パワーを有する近見視力領域120を有することである。これは、2つの視力領域の光学パワーと光学パワーの両方が異なる上述の遠近両用眼鏡と対照的である。これは、少なくとも以下の理由から定性的な決定的差異である。
【0040】
(1)遠近両用眼鏡は、光学パワーである異なる光学特性を有する2つの視力領域を予め有する。従って、レンズ設計者は、収束を低減するために光学パワーのような更に別の光学特性も異なるものにするように想起する場合がある。しかし、単眼視野レンズでは、設計者が、近見視力領域の光学パワーがレンズの遠見視力領域と同じであるレンズにおいて異なる光学パワーを与えるという目的だけで近見視力領域を考え出して生成するということは全く明白ではない。
【0041】
(2)眼鏡レンズに関する世界市場では、2015年には世界中で販売された台数が10億よりも多く、米国だけで3億2千万を上回った。同様に、米国人口の75%又は約2億4千万人の人々が何らかのタイプの視力補正眼鏡を着用していることも推定されている。米国で今日販売されている眼鏡のうちで全体市場の約90%である断然大きい市場セグメントは、単眼視野レンズを有し、約10%又は2千万~2千5百万人の人々しか遠近両用眼鏡を着用していない。主として若年及び中年早期の単眼視野レンズ着用者は、単純に遠近両用眼鏡を必要としていない。一部の業界調査は、コンピュータ視力症候群に悩まされているか又はそれを報告する人々の数が1億人よりも多いと推定している。先に、様々な症状及び定義に基づいて潜在的な患者を3千万人と推定した他の情報源に言及した。従って、収束低減近見視力領域を単眼視野眼鏡の中に導入することにより、収束低減技術の広がりは、狭い1~2千万台/年の遠近両用眼鏡市場セグメントから1億余台/年の単眼視野眼鏡市場セグメントに拡張されることになる。従って、本明細書に説明する単眼視野眼鏡は、収束低減の医療的利益を届けることができる人々の群を劇的に拡大することになる。
【0042】
(3)ゼロ又は近ゼロの光学パワーのみを有する収束低減単眼視野眼鏡は、市場浸透度を更に別の広い部類に定性的に拡大することになる。これらの眼鏡は、光学パワー補正を全く必要とせず、従って、これまで眼鏡を着用することを考えもしなかった人々に収束低減の医療的利益を届けることになる。この理由から、ゼロ又はほぼゼロの光学パワーの単眼視野眼鏡は、収束低減の医療的利益が更に届けられる人口セグメントを劇的に拡張することになる。
【0043】
最後に、今日の視機能実務では、殆どの医師は、眼球緊張の原因に対して異なる理論を有しており、従って、眼球緊張又は眼精疲労を軽減するために非常に異なる治療及び手順を提供していることに言及しておく。多くの場合に、視機能医は、青色光フィルタを有する眼鏡に切り換えることを処方するか又は加湿器を使用することを提案する。従って、本明細書に説明する収束低減技術を有する眼鏡を処方することは、何が眼球緊張をもたらすかに関する非常に異なる医療的洞察と、今日の視機能専門家の大部分によって処方されるものとは純粋に異なる眼球緊張を軽減するための独創的な治療とに基づいている。
【0044】
この特許明細書では、単眼視野レンズ又は単一視野レンズという用語を広義の意味に使用する。当然ながら、その範囲は、前面及び後面が各々単一曲率半径を有するレンズを含む。他に、この用語は、形状が単一曲率半径よりも大きい成分を有するレンズを含むことができる。一例は非球面成分であり、この場合に、成分は、ゼルニケ分解を含む異なる方式で定めることができる。一般的に、非球面成分は、レンズの光学歪みを補償するために導入される。取りわけ、有限のレンズ厚、屈折率の態様、及び軸から遠い場所での光線挙動といういくつかのファクタは、光学歪みをもたらす場合がある。非球面成分は、歪みを補償するためではなく、光学的利点を達成するために導入することができる。単眼視野という用語は、単一光学パワーをパワー中立利益(power-neutral benefit)と組み合わせるレンズ形状を含むことができる。典型例は、対応する視野歪みを補償するために他の点では単一視野のレンズの中に導入される円柱収差、非点収差、又はコマ収差を含む。単一視野レンズの範囲は、遠近両用眼鏡を含まない。要約すると、本説明の収束低減レンズ100では、遠見視力領域110又は近見視力領域120のうちの少なくとも一方は、非球面成分、パワー中立成分、円柱収差成分、コマ収差成分、又は非点収差成分を含むことができる。
【0045】
以降の本文では、光源11によって発せられた光又は交換可能に物体11からの光の伝播を説明する。光源11は、レーザポインタ又は光線2を能動的に発生させる別の指向性光源とすることができる。一部の他の実施形態では、物体11は能動光源ではなく、代わりに入射光を収束低減レンズ100に向う本説明の光2として反射する物体又はミラーとすることができ、この場合に、入射光は、どこか別の場所で発生する。光伝播の観点からは、これら2つの場合は交換可能とすることができる。物体11又は光源11は、収束低減レンズ100のx-y平面からz距離zo/sでのものとすることができる。
【0046】
収束低減レンズ100の実施形態では、遠見視力領域110は、遠見視力x距離xPdでの遠見視力領域点Pdで光源11又は物体11によって向けられた光線2を座標系のy-z平面と遠見視力凝視収束角度βdで交わるように屈折させるように構成することができ、それに対して近見視力領域120は、近見視力x距離xPnでの近見視力領域点Pnで光源11によって向けられた光線2をy-z平面と近見視力凝視収束角度βnで交わるように屈折させるように構成することができる。収束低減レンズ100のこれらの実施形態では、近見視力凝視収束角度βnは、遠見視力凝視収束角度βdよりも小さいとすることができる。一般的に、凝視収束角度βn/dでの屈折光2とy-z平面との交差は、眼球-中心表現場所8で発生する。
【0047】
凝視収束角度βd及びβnは、眼の凝視の収束を特徴付けて、従って、全屈折角度αのx成分であるαxと同じく眼の全3d次元回転角度のx成分に対応することができる。
【0048】
遠見視力領域110内の凝視収束角度βdと比較して近見視力領域120内の凝視収束角度βnの低減は、着用者が収束低減レンズ100の近見視力領域120を通して物体11を注視する時に、同じ物体をレンズ100の遠見視力領域110を通して注視する場合と同じ程度まで眼をz軸3から離れるように回転させる必要はないことの第2の表現である。従って、収束低減レンズ100の実施形態は、近見視力領域120を通して物体を注視する時に、同じ物体を対応するy高さでの遠見視力領域110を通して注視する場合と比較して又は類似の標準負パワーレンズ10を通して注視する場合と比較したとしても着用者の凝視の収束角度αを確実に低減する。
【0049】
収束低減レンズ100の一部の実施形態では、遠見視力領域110は、遠見視力x距離xPdでの遠見視力領域点Pdで光源11によって向けられた又はそこからの光線2を遠見視力屈折角度αdだけ屈折させるように構成することができ、それに対して近見視力領域120は、近見視力x距離xPnでの近見視力領域点Pnで光源11によって向けられた又はそこからの光線2を近見視力屈折角度αnだけ屈折させるように構成することができる。収束低減レンズ100のそのような実施形態では、近見視力屈折角度αnのx成分αn
xは、遠見視力屈折角度αdのx成分αd
xよりも大きいとすることができる。これは、着用者が近見視力領域120を通して物体11を注視している時に、同じ物体11を適切なy高さでの遠見視力領域110を通して注視する場合と比較してレンズ100が凝視収束βを低減していることの第3の表現である。
【0050】
収束低減レンズ100の凝視収束低減態様の上記3つの関連表現は、
図5Bの四角取り囲み不等式として説明される。これらの不等式を本明細書にも次式のように再記する。
x
Pn<x
Pd (4)
β
n<β
d (5)、及び
α
d
x<α
n
x (6)
【0051】
上式の全ては、固定された同じ物体又は光源、距離zo/sに対するものである。収束低減レンズ100の実施形態は、これら3つの不等式(4)~(6)のうちの少なくとも1つを満足する。
【0052】
収束低減レンズ100の実施形態の以上の説明は、レンズが収束低減レンズであるか否かを決定するための審査プロトコルも明確に表現している。
【0053】
(1)レンズの着用者がレンズの遠見視力領域を通して物体を注視している時に、上述の距離xPd、並びに角度αd
x及びβdを測定し、次に、着用者がレンズの対応する近見視力領域を通して注視する時に対応する距離xPn、並びに角度αn
x及びβnを測定し、更に測定された角度及び距離を比較してこれらが上述の不等式(4)~(6)のうちの少なくとも1つを満足するか否かを検証することができる。角度変化が小さいレンズでは、これらの小さい変化及び差を検出して着用者の凝視角度の変化を決定するために眼球追跡システム又は眼球撮像システムを使用することができる。
【0054】
(2)着用者の凝視の角度及び方向を測定する代わりに、現実的なパラメータを有する眼球モデルを使用することができる。眼球モデルは、y軸の周りに回転可能であり、眼球-中心表現場所8に配置された約20~25mm、例えば、24mmの直径の円形ディスクを含むことができる。眼球モデルの前部は、レンズ100の10~15mm背後に、眼球-中心表現場所8は、レンズ100の20~30mm背後に配置することができる。眼球モデルは、約40~45Dの角膜の光学パワーに約15~25Dの眼球水晶体7の光学パワーを加えたものにほぼ等しい全光学パワーを有する適切なモデルレンズを含むことができる。レーザポインタのような指向性光源又はその均等物を光源11の代わりに配備することができる。その光は、審査されるレンズの遠見視力領域に、次に、別個に近見視力領域に向けることができる。眼球モデルは、両方の場合にモデルレンズによる屈折の後に光が眼球モデルの眼球-中心表現場所8を通過するように適切に回転させることができる。次に、不等式(4)~(6)の上述した角度及び距離を測定し、これら3つの不等式のうちの少なくとも1つが審査されるレンズに適用されるか否かを決定することができる。
【0055】
(3)最後に、着用者の眼を必要としないか又は眼球モデルさえも必要としない測定は、審査されるレンズが収束低減レンズ100の実施形態であるか否かを決定するのに十分である可能性もある。光源11の位置からレンズにレーザポインタをその光がレンズによる屈折の後にz軸3に沿ってレンズ100の中心の約20~30mm背後にある眼球-中心表現場所8の候補点を通って伝播するように向けることによって固定光学テーブル上のレンズを審査することができる。この光の伝播は、例えば、光源11と反対側のレンズ100のy-z平面にスクリーンを実施することによって追跡することができる。レーザポインタ11の光は、審査されるレンズの遠見視力領域に、更に続けて審査されるレンズの近見視力領域を通して、両方の場合の屈折光が眼球中心8に対応する座標系の中心から同じz距離でy-z平面と交わることを確保しながら誘導することができる。上述のように、そのような相当場所は、z軸3上のレンズ中心の20~30mm背後にあるとすることができる。遠見視力領域、次に、近見視力領域に向けられた光に関して上記で議論した角度及び距離が測定された後に、
図5Bに説明して上記で不等式(4)~(6)において議論した3つの不等式のうちの少なくとも1つが測定された角度及び距離に関して成り立つ場合はレンズは収束低減レンズ100の実施形態である。
【0056】
上記に列記した審査プロトコル(1)~(3)において光線を光源11又は光源8rによって遠見視力領域110から近見視力領域120に経路変更する時に、
図5A~
図5Bの眼球-中心表現場所8の「対応するy高さ」又は
図5C~
図5Dの像11r(集合的に、像)を調節する段階を以下の通りに様々な方法を用いて実施することができる。(1)着用者は、凝視方向を固定の収束低減レンズ100の遠見視力領域110から近見視力領域120に変更することができ、(2)眼球モデルの光軸を傾斜させることができ、又は(3)レーザポインタの方向を変更することができる。これらのプロトコルは、収束低減レンズ100のy高さ、並びに物体/光源11又は光源8r(集合的に、光源)のy高さを固定状態に保つ。この部類のプロトコルは、不等式(4)~(6)のうちのいずれか1つが審査されるレンズによって満足されるか否かを審査するための「像-調節プロトコル」と呼ばれる場合がある。
【0057】
しかし、これらの場合の各々に関して、像又は光源のy高さの代わりに収束低減レンズ100のy高さを光源及び画像のy高さを固定されたままに保ちながらレンズ自体を昇降させることによって調節する類似の代わりの「レンズ-調節プロトコル」を定めて実施することができる。これらのプロトコルでは、近見視力領域120の眼球-中心表現場所8の「対応するy高さ」は、遠見視力領域110に関しても同じである。これらのレンズ-調節プロトコルは、不等式(4)~(6)のうちのいずれか1つが審査されるレンズによって満足され、従って、収束低減レンズ100の実施形態を均等であるように取り込んでいるか否かを審査するために使用することができる。
【0058】
第3の部類の代替的「光源-調節プロトコル」は、像と収束低減レンズ100の両方のy高さを固定されたままに保ち、代わりに光源のy高さを調節する。ここでもまた、これらの光源-調節プロトコルは、不等式(4)~(6)のうちのいずれか1つが審査されるレンズによって満足され、従って、収束低減レンズ100の実施形態を均等であるように取り込んでいるか否かを審査するために使用することができる。
【0059】
要約すると、収束低減レンズ100又は眼球緊張低減レンズ100の実施形態では、像-調節プロトコル、レンズ-調節プロトコル、又は光源-調節プロトコルのうちの少なくとも1つによって決定された近見視力x距離x
Pnは、遠見視力x距離x
Pdよりも小さいとすることができる。更に他の審査プロトコルを
図5C~
図5D及び
図7A~
図7Dに関して以下に説明する。
【0060】
収束低減レンズ100は領域140を含むことができ、漸変領域140内では、漸変領域点Ppのx距離であるx
Pp、漸変領域凝視収束角度β
P、又は漸変領域屈折角度のx成分α
p
xのうちの少なくとも1つが、その近見視力領域値と遠見視力領域値との間で遷移する。数式的には、漸変領域140内では不等式x
Pn<x
Pp<x
Pd、β
n<β
p<β
d、又はα
d
x<α
p
x<α
n
xのうちの少なくとも1つが成り立つ。そのような漸変領域140の例を
図7A~
図7Bにおいてある程度詳細に以下に説明する。
【0061】
図5A~
図5Bは、物体/光源11は、収束低減レンズ100の半径よりも大きい座標系のz軸3からの光源x距離、及び10cmと100cmの間の光源z距離に位置付けられた近い物体とすることができることを示している。そのような偏心、軸外の光源11は、図示の眼鏡着用者の鼻に位置合わせされた近い物体の良好な表現とすることができる。
【0062】
図5C~
図5Dは、収束低減レンズ100の更に別の態様を示している。
図5C~
図5Dの実施形態の特徴付けは、
図5A~
図5Bとほぼ同様である。これらの特徴付けは、伝播する光線2の経路の可逆性によって促進される。
図5C~
図5Dの光源及び像が
図5A~
図5Bの光源及び像に経路反転によって関連することを示すために、追加「r」を有する対応するラベルを使用する。
【0063】
これらの序論的考察を念頭に置き、収束低減レンズ100の一部の実施形態は、座標系の中心から遠見視力x距離x
Pdでの遠見視力領域点P
dで光源8rによって向けられた光線2を像点11rに伝播するように屈折させるように構成されて負の遠見視力光学パワーを有する遠見視力領域110を有することができる。ある意味では
図5A~
図5Bの実施形態の物体/光源11の反転対である像点11rは、レンズ100のx-y平面からz距離z
Iに位置することができる。ある意味では
図5A~
図5Bの実施形態の眼球-中心表現場所8の反転対である光源8rは、z軸3上で座標系の中心から光源z距離z
sに位置することができる。
【0064】
収束低減レンズ100のこの実施形態は、座標系の中心から近見視力x距離x
Pnでの対応するy高さでの近見視力領域点P
nで座標系の中心から同じ光源z距離z
sに位置付けられた光源8rによって向けられた光線2を像点11rのx-z場所に伝播するように屈折させるように構成されて0.5D内で遠見視力光学パワーに適合する近見視力光学パワーを有する近見視力領域120を更に含むことができる。これらの実施形態では、
図5A~
図5Bの実施形態の不等式(4)と同様に、近見視力x距離x
Pnは、遠見視力x距離x
Pdよりも小さいとすることができる。
【0065】
図5Cの像点11rのx-z場所と
図5Dの像点11rのx-z場所とは(少なくともほぼ)同じであり、一方、遠見視力領域110のy高さと近見視力領域120のy高さとが異なるので、対応するy高さは異なる。
図5A~
図5Dは、これらの実施形態をx-z断面に示しており、これらの像点11rの適合するx-z場所のみを示している。
【0066】
先に議論したように、一部の実施形態では、遠見視力領域110から近見視力領域120に切り換える時に光線2のy方向角度を調節しなくてもよいように、像点11rのy高さの代わりに、収束低減レンズ100のy高さを調節する類似のプロトコルを定めることができる。最後に、更に他の代替実施形態では、光線2を遠見視力領域110から近見視力領域120に経路変更する時に、収束低減レンズ100及び像点11rのy高さを維持しながら光源8rのy高さを調節することができる。上述の場合のように、像-調節プロトコル、レンズ-調節プロトコル、及び光源-調節プロトコルは、収束低減レンズ100の密接に関連する実施形態を定めることができる。
【0067】
一部の実施形態では、遠見視力領域110は、光源8rが光線2を座標系のy-z平面に対して遠見視力凝視収束角度βdで誘導することによって遠見視力領域点Pdでの屈折を通して像点11rに伝播するように光線2を誘導することができるように構成することができ、近見視力領域120は、光源8rが光線2を座標系のy-z平面に対して近見視力凝視収束角度βnで誘導することによって近見視力領域点Pnでの屈折を通して像点11rのx-z場所に伝播するように光線2を誘導することができるように構成することができる。これらの実施形態では、上述の不等式(5)と同様に、近見視力凝視収束角度βnは、遠見視力凝視収束角度βdよりも小さいとすることができる。
【0068】
一部の実施形態では、遠見視力領域110は、遠見視力領域点Pdで光源8rによって向けられた光線2を像点11rに伝播するように遠見視力屈折角度αdだけ屈折させるように構成することができる。近見視力領域120は、近見視力領域点Pnで光源8rによって向けられた光線2を像点11rのx-z場所に伝播するように近見視力屈折角度αnだけ屈折させるように構成することができる。実施形態では、上述の不等式(6)と同様に、近見視力屈折角度αnのx成分であるαn
xは、遠見視力屈折角度αdのx成分であるαd
xよりも大きいとすることができる。
【0069】
ここでもまた、収束低減レンズ100は漸変領域140を含むことができ、漸変領域140内では、漸変領域点Ppのx距離であるxPp、漸変領域凝視収束角度βP、及び漸変領域屈折角度のx成分αp
xのうちの少なくとも1つは、その近見視力領域値と遠見視力領域値の間で遷移する。
【0070】
図7A~
図7Bは、z軸方向にレンズのx-y平面に面する収束低減レンズ100の実施形態の前面図を示している。
図7Aは、収束低減レンズ100のα
x屈折角度等高線を示している。図示の収束低減レンズ100では、遠見視力領域110内の屈折角度αのx成分であるα
d
xは式(3)に従い、それに対して近見視力領域120内の屈折角度αのx成分であるα
n
xは、+0.4rD(屈折ジオプトリ)のシフトを下鼻側四分円内に導入し、すなわち、α
n
x=α
d
x+0.4rD又は同等的にΔα
n
x=+0.4rDである。これは、近見視力領域120内の垂直α
x等高線が遠見視力領域110内で2本の線だけ右にシフトしたα
x等高線に位置合わせされていることで理解することができる。
【0071】
収束低減レンズ100は漸変領域140を含むことができ、漸変領域140内では、屈折角度のx成分αp
xが、遠見視力領域110に関するαd
x値から近見視力領域120に関するαn
x値に変化する。漸変領域140は、その中の屈折角度αのx成分であるαp
xがαd
xとαn
xの間を滑らかに補間するように、すなわち、αd
x<αp
x<αn
xであるように成形される。更に、この漸変領域140は、少なくとも部分的に遠見視力領域110と近見視力領域120の間で漸変x距離xPpでの漸変領域点Ppで光源11によって向けられた光線2を眼球-中心表現場所8に伝播するように屈折させるように構成することができ、この場合に、漸変x距離xPpは、近見視力x距離xPnと遠見視力x距離xPdの間にあるものとし、すなわち、xPn<xPp<xPdとすることができる。最後に、従って、漸変領域140の凝視収束角度βpも、遠見視力領域110内の凝視収束角度値と近見視力領域120内の凝視収束角度値との間を滑らかに補間し、すなわち、βn<βp<βdとすることができる。
【0072】
図7Bは、
図7Aの収束低減レンズ100内の光学パワーの等ジオプトリ等高線を示している。収束低減レンズ100の一部の実施形態では、遠見視力領域110は、Dジオプトリの遠見視力負光学パワーを有することができる。近見視力領域120は、0.5D内で遠見視力光学パワーに適合する近見視力光学パワーを有することができ、遷移領域は、遠見視力領域110と近見視力領域120を接続することができる。一部の実施形態では、近見視力光学パワーは、0.25D内で遠見視力光学パワーに適合することができる。漸変パワーレンズでは、遷移領域は、遠見視力光学パワーと、それとは異なる近見視力光学パワーとの間で光学パワーを滑らかに補間し、それによって光学歪みを低減するために導入される。この収束低減レンズ100では、遷移領域の原点は異なり、その光学パワーは、光学パワー変化によって必要とされず、この変化は、変化する漸変領域屈折角度α
p
xだけによって誘起される。図示の事例では、遷移領域の場所は主として鼻側にあり、従って、鼻側遷移領域130nと表示している。一部の実施形態では、遷移領域は、鼻側と側頭側の両方の領域を有することができる。一般的に、
図7Aの漸変領域140は、
図7Bの鼻側遷移領域130nと相関だけはするが、必ずしも一致するとは限らない。
【0073】
一部の実施形態では、近見視力領域120の面積は、5mm2よりも大きいとすることができる。一部の実施形態では、近見視力領域120の面積は、10mm2よりも大きいとすることができる。
【0074】
図8A~
図8Cは、収束低減眼鏡100’の様々な設計を示している。一般的に、近見視力領域120の大部分は、収束低減レンズ100の下鼻-下位鼻側四分円を占有することができる。一部の実施形態では、近見視力領域120の小さい部分は、図示のように下側頭側四分円にも延びることができる。
【0075】
図8Aは、一部の実施形態では近見視力領域120を長円形とすることができることを示している。
図8Bは、四分円として成形された近見視力領域120を示している。最後に、
図8Cは、チャネル状の近見視力領域120を示している。他の実施形態では、近見視力領域120は、三角形、四角形、細長領域、対角領域、又は通路状を含む追加の形状を有することができる。更に他の実施形態では、近見視力領域は、実質的に円形又は下向きD字形状とすることができる。
【0076】
図9A~
図9Bは、収束低減レンズ100の上述した特性に関して与えることができ、特に、上述の3つの不等式(4)~(6)のうちの少なくとも1つを満足するレンズ100の構成及び設計を示す収束低減レンズ100の2つの実施形態を示している。
【0077】
図9Aは、収束低減レンズ100の実施形態が、遠見視力領域110内の座標系の中心から鼻側x距離で前面140fに接する遠見視力前側タンジェンシャル145fdと、近見視力領域120内の同じ鼻側x距離であるが一般的により低い対応するy高さでの前面140fに接する近見視力前側タンジェンシャル145fnとを有する前面140fを含むことができることを示している。(透視目的で、タンジェンシャルは、ラベルのみで区別している。)収束低減レンズ100は、遠見視力領域110内の同じx距離で後面140rに接する遠見視力後側タンジェンシャル145rdと、近見視力領域120内の同じx距離であるがより低い対応するy高さでの後面140rに接する近見視力後側タンジェンシャル145rnとを有する後面140rを更に含むことができる。これら4つのタンジェンシャル145を破線に示している。遠見視力前側タンジェンシャル145fdと遠見視力後側タンジェンシャル145rdは、遠見視力領域収束角度γ
dvrを成し、それに対して近見視力前側タンジェンシャル145fnと近見視力後側タンジェンシャル145rnは、近見視力領域収束角度γ
nvrを成す。
図9Aでは、近見視力領域120内の前面及び後面140f及び140rは、遠見視力領域110に対してレンズ100の中心の近くで内向きに回転され、従って、近見視力領域収束角度γ
nvrは、次式のように遠見視力領域収束角度γ
dvrよりも大きい。
γ
dvr<γ
nvr (7)
【0078】
この不等式は、3つの不等式(4)~(6)のうちの少なくとも1つを達成する収束低減レンズ100を設計する1つの方法である。いくつかの他の設計も、この不等式に従うことができる。一部の場合に、不等式(7)での角度の不等は、タンジェンシャルのうちの1つだけが異なること、例えば、近見視力前側タンジェンシャル145fnを遠見視力前側タンジェンシャル145fdに対して内向きに回転させ、一方で後側タンジェンシャル145rnと145rdとが同じであることによってのみ達成することができる。
【0079】
一部の場合に、収束低減レンズ100は、図示のようにメニスカスレンズ100とすることができる。これらの角度γnvr及びγdvrは、タンジェンシャルが面140r及び140fに適合した場所のx距離に依存し、すなわち、γnvr=γnvr(x)及びγdvr=γdvr(x)であることにも注意されたい。角度γnvrとγdvrは、座標系の中心から同じ鼻側x距離で決定及び比較されることになる。
【0080】
図9Bは、不等式(4)~(6)のうちの少なくとも1つを別の方式で達成する収束低減レンズ100の別のレンズ設計を示している。この設計では、次式が成り立つ。
γ
nvr=γ
dvr (8)
【0081】
面タンジェンシャルを修正する代わりに、これらの実施形態では、遠見視力領域110が遠見視力z軸3を有し、近見視力領域120が近見視力z軸3を有し、近見視力z軸3は、遠見視力z軸3に対して鼻方向に傾斜、回転、又は捻転される。この捻転は、+y軸方向からレンズの上を見下ろした状態で例示している。遠見視力領域110が必然的に位置付けられたレンズ100の最も高いy高さでの遠見視力z軸3は、全体のレンズz軸3に対して実質的に平行である。近見視力領域120が必然的に位置付けられたより低いy高さに向けて推移すると、レンズのx-y平面は、z軸3が鼻方向に回転されるように回転される。回転又は捻転された断面のうちの2つを
図9Bに示している。中間の断面は、漸変領域140に対応することができ、最も捻転された断面は、捻転された近見視力z軸を有する近見視力領域120に対応することができる。別の表現では、近見視力領域120内のz軸3は、遠見視力領域110内のz軸3に対して反時計方向に回転される。
【0082】
図9Bの実施形態の製造工程は、望ましい光学パワーを有するレンズを形成し、次に、その材料が意図する近見視力領域120内で収束低減レンズ100及びそのz軸3の望ましい程度の捻転を可能にする程度まで軟化するまでレンズを加温する段階を含むことができるので、この工程は顕著に容易なものとすることができることに注意されたい。言うまでもなく、一部の収束低減レンズ100は、
図9Aの実施形態と
図9Bの実施形態とを組み合わせることによって形成することができる。
【0083】
次に、
図6A~
図6Dの実施形態を以下に説明する。
図6Aは、収束低減レンズ100の実施形態が、座標系のy-z平面からx距離x
Pdでの遠見視力領域点P
dでz軸3と平行に向けられた光線2をその延長(破線)が遠見視力交点z距離z
Idでのy-z平面と交わるように屈折させるように構成されて負遠見視力光学パワーを有する遠見視力領域110を含むことができることを示している。更に、収束低減レンズ100は、遠見視力領域点P
dのx
Pdに等しいx距離x
Pn、すなわち、x
Pn=x
Pdでの対応するy高さでの近見視力領域点P
nでz軸3と平行に向けられた光線2をその延長が次式のように遠見視力交点z距離よりも小さい近見視力交点z距離z
Inでのy-z平面と交わるように屈折させるように構成されて0.5D内で遠見視力光学パワーに適合する近見視力光学パワーを有する近見視力領域120を含むことができる。
z
In<z
Id (9)
【0084】
収束低減レンズ100の一部の実施形態では、遠見視力領域110は、x距離xPdでの遠見視力領域点Pdでz軸3と平行に向けられた光線2を遠見視力屈折角度αdだけ屈折させるように構成することができる。近見視力領域120は、x距離xPn(xPn=xPd)での対応するy高さでの近見視力領域点Pnでz軸3と平行に向けられた光線2を近見視力屈折角度αnだけ屈折させるように構成することができる。実施形態では、近見視力屈折角度αnのx成分であるαn
xは、次式のように遠見視力屈折角度αdのx成分であるαd
xよりも大きいとすることができる。
αd
x<αn
x (10)
【0085】
ここで及び以下では、屈折角度α及び凝視収束角度βは、角度の大きさを指す。収束低減レンズ100の一部の実施形態では、遠見視力領域110は、x距離xPdでの遠見視力領域点Pdでz軸3と平行に向けられた光線2をその延長がy-z平面と遠見視力凝視収束角度βdで交わるように屈折させるように構成することができる。近見視力領域120は、同じx距離xPn=xPdでの対応するy高さでの近見視力領域点Pnでz軸3と平行に向けられた光線2をその延長がy-z平面と近見視力凝視収束角度βnで交わるように屈折させるように構成することができる。実施形態では、近見視力凝視収束角度βnは、次式のように遠見視力凝視収束角度βdよりも大きいとすることができる。
βd<βn (11)
【0086】
不等式(9)~(11)は、
図5A~
図5Bの実施形態を特徴付ける不等式(4)~(6)と同じく
図6A~
図6Bの実施形態を特徴付ける。収束低減レンズ100の実施形態は、3つの不等式(9)~(11)のうちの少なくとも1つを満足することができる。
【0087】
ここでもまた、収束低減レンズ100の実施形態は、遠見視力領域点のx距離と同じx距離xPpでの漸変領域点Pp、すなわち、xPp=xPn=xPdでz軸3と平行に向けられた光線をその延長が近見視力交点z距離zInと遠見視力交点z距離zIdの間にある漸変交点z距離zIp、すなわち、zIn<zIp<zIdでのy-z平面と交わるように屈折させるように構成された漸変領域140を少なくとも部分的に遠見視力領域110と近見視力領域120の間に更に含むことができる。
【0088】
図6C~
図6Dは、一部の必要な調節を加えているが、光線2の経路を反転することによって
図6A~
図6Bの実施形態に関連する実施形態を説明している。
図6Cは、収束低減レンズ100の実施形態が、座標系のy-z平面からx距離x
Pdでの遠見視力領域点P
dでz軸3上の座標系の中心から交点z距離z
Idに位置付けられた光源15rによって向けられた光線2をy-z平面との遠見視力光収束角度δ
dを構成するように屈折させるように構成されて負遠見視力光学パワーを有する遠見視力領域110を含むことができることを示している。更に、レンズ100は、座標系のy-z平面から遠見視力点P
dのx距離と同じx距離x
Pn、すなわち、x
Pn=x
Pdでの対応するy高さでの近見視力領域点P
nで光源15rによって向けられた光線2をy-z平面との近見視力光収束角度δ
nを構成するように屈折させるように構成されて0.5D内で遠見視力光学パワーに適合する近見視力光学パワーを有する近見視力領域120を含むことができる。この場合に、光源15rは、z
Idと同じ交点z距離z
In、すなわち、z
In=z
Idでのものとすることができる。従って、遠見視力凝視収束角度β
dも、近見視力凝視収束角度β
nに等しく、すなわち、β
d=β
nである。そのような実施形態では、近見視力光収束角度δ
nのx成分であるδ
n
xは、次式のように遠見視力光収束角度δ
dのx成分であるδd
xよりも大きいとすることができる。
δ
d
x<δ
n
x (12)
【0089】
相応に、収束低減レンズ100の一部の実施形態では、遠見視力領域110は、座標系のy-z平面からのx距離であるxPdでの遠見視力領域点Pdで光源15rによって向けられた光線2を遠見視力屈折角度αdだけ屈折させるように構成することができる。更に、近見視力領域120は、座標系のy-z平面からのx距離であるxPnでの近見視力領域点Pnでの光源15rによって向けられた光線2を近見視力屈折角度αnだけ屈折させるように構成することができる。実施形態では、近見視力屈折角度αnのx成分であるαn
xは、次式のように遠見視力屈折角度αdのx成分であるαd
xよりも大きいとすることができる。
αd
x<αn
x (13)
【0090】
【0091】
図10A~
図10Bは、眼球緊張低減レンズ100又は収束低減レンズ100の更に他の実施形態を示している。これらの実施形態は、レンズ面の曲率、及びその対応する曲率中心の偏心場所の記述によって特徴付けることができる。ある程度詳述すると、眼球緊張低減レンズ100又は収束低減レンズ100の実施形態は、z軸3を定める収束低減レンズの中心法線を有することができる。z軸3は、一般的に遠見視力領域110のz軸3でもある。収束低減レンズ100の中心領域は、タンジェンシャル中心x-y平面を更に含むことができる。z軸3とx-y平面とは、互いにx-y-z座標系を定める。
【0092】
収束低減レンズ100は、曲率半径Rdfと遠見視力前側曲率中心CCdfとを有する遠見視力前面140dfと、曲率半径Rdrと遠見視力後側曲率中心CCdrとを有する遠見視力後面140drとを有する負遠見視力光学パワーを有する上述の遠見視力領域110を含むことができる。更に、収束低減レンズ100は、曲率半径Rnfと近見視力前側曲率中心CCnfとを有する近見視力前面140nfと、曲率半径Rnrと近見視力後側曲率中心CCnrとを有する近見視力後面140nrとを有する遠見視力光学パワーの0.5Dの範囲の光学パワーを有する近見視力領域120を含むことができ、この場合に、近見視力前側曲率中心のx座標x(CCnf)は、遠見視力前側曲率中心のx座標x(CCdf)に対して鼻側にあるとすることができ、又は近見視力後側曲率中心のx座標x(CCnr)は、遠見視力後側曲率中心のx座標x(CCdr)に対して側頭側にあるとすることができる。上述の属性を不等式で表し、かつ右の側頭方向に位置付けられた点が左の鼻方向に位置付けられた点よりも大きいx座標を有するようなx軸の方向性を用いると、これらの条件は、次式のように書くことができる。
x(CCnf)<x(CCdf) (14)、又は
x(CCnr)>x(CCdr) (15)
【0093】
図10Aは、一部の典型的な実施形態では、遠見視力面140df及び140drのCC
df前側及びCC
dr後側の曲率中心がz軸3上に位置し、従って、そのx座標はゼロであることを示す。数式表現では、x(CC
df)=x(CC
dr)=0である。そのような実施形態では、収束低減レンズ100は、近見視力前側曲率中心CC
nfのx座標であるx(CC
nf)が座標系のz軸3に対して鼻側にあり、すなわち、次式が成り立つように構成することができる。
x(CC
nf)<0 (16)、又は
【0094】
近見視力後側曲率中心のx座標であるx(CCnr)が座標系のz軸3に対して側頭側にあり、すなわち、次式が成り立つように構成することができる。
x(CCnr)>0 (17)
【0095】
この意味では、収束低減レンズ100の実施形態は、軸外曲率中心レンズである。上述の場合のように、近見視力領域120、及びその面140nf及び140nrに対応するy高さは、遠見視力領域110、及びその面140df及び140drのy高さよりも低いとすることができる。
【0096】
上述した曲率中心の座標及びx距離x(CCnf)、x(CCnr)、x(CCdf),及びx(CCdr)は、球面計及びレンズ表面形状測定計のような専用ツール及びデバイスを用いて決定することができる。
【0097】
収束低減レンズ100の設計は、曲率中心が軸外であるにも関わらず、近見視力領域120の光学パワーが遠見視力領域110の光学パワーに0.5D内で適合することを達成することができる。これは、光学パワーが第1近似で曲率中心の場所ではなくレンズの前面及び後面の曲率半径だけによって与えられ、すなわち、光学パワー(遠見視力)=f(Rdf,Rdr)及び光学パワー(近見視力)=f(Rnf,Rnr)であることによる。薄肉レンズ近似では、光学パワーは、f(R1,R2)=(n-1)(1/R1-1/R2)に比例する。f(Rnf,Rnr)=f(Rdf,Rdr)が成り立つ限り、2つの領域内の光学パワーは、最高次近似で適合する。
【0098】
収束低減レンズ100の設計は、近見視力領域120の光学パワーを対応する曲率の半径を操作しないことによって遠見視力領域110の光学パワーと実質的に等しいままにしておくことができるが、依然として曲率中心を収束低減レンズ100のz軸3の外に移動することによって近見視力屈折角度を遠見視力屈折角度に対して調節及び操作することができるという認識の上に構成されるものとして見ることができる。より簡潔には、収束低減レンズ100の設計では、近見視力領域120の光学パワーが遠見視力領域110の光学パワーと適合した状態に留まることを維持しながら、遠見視力領域110の屈折角度αd
xとは異なる近見視力領域120の屈折角度αn
xを形成することができる。これら2つの領域の屈折角度と光学パワーは、偏心変位の最高次で互いに独立に相対的に調節可能である。
【0099】
これらの収束低減レンズ100の一部の実施形態は、以下の通りに更に特徴付けることができる。
図9Aを参照して、遠見視力前面140dfと遠見視力後面140drは、座標系の中心からx距離に遠見視力面収束角度γ
dvrを定めることができ、近見視力前面140nfと近見視力後面140nrは、座標系の中心から同じx距離の対応するy高さに近見視力面収束角度γ
nvrを定めることができ、この場合に、実施形態では、近見視力面収束角度は、次式のように遠見視力面収束角度よりも大きい。
γ
dvr<γ
nvr (18)
【0100】
図10A~
図10Bの軸外曲率中心収束低減レンズ100は、
図5~
図9に関して上述した実施形態によって更に特徴付けられてこれらと組み合わせることができる。
【0101】
レンズ後面140nrのみを修正して近見視力後面140nrを生成すること、レンズ前面140nfのみを修正して近見視力前面140nfを生成すること、又はこれら両方を行うことにより、
図5~
図10の収束低減レンズ100の近見視力領域120を形成することができることに注意されたい。
【0102】
近見視力領域120は、様々な方法によって形成することができる。一部の技術は、自由形状発生器又は5軸発生器を使用することができる。他の技術は、3次元(3D)プリンタを使用することができる。最後に、一部の場合に、近見視力領域120の形状が遠見視力領域110と異ならないことが可能である。代わりに、レンズ材料の屈折率nをこれらの領域内で別様に調整することにより、これらの領域の異なる光学性能を達成することができる。例えば、近見視力領域120内の屈折率であるn
nを遠見視力領域内の屈折率n
dよりも大きくし、すなわち、n
n>n
dとすることができる。収束低減レンズ100のそのような実施形態は、
図5~
図10に関して上述した光学性能のうちの多くを与えることができる。一部の場合に、屈折率nのそのような変化は、レンズのモールド成形工程中に電界を印加することによって達成することができる。
【0103】
本明細書は多くの詳細を含有するが、これらは、本発明の又は主張することができるものの範囲に対する限定と解釈すべきではなく、本発明の特定の実施形態に固有の特徴の説明として解釈しなければならない。本明細書に別々の実施形態の状況で上述したある一定の特徴は、単一実施形態に組み合わせて実施することができる。それとは逆に、単一実施形態の状況で上述した様々な特徴は、複数の実施形態に別々に又はあらゆる適切な部分組合せに実施することができる。更に、上記では複数の特徴は、ある一定の組合せで作用するものとして説明された場合があり、最初にそのように主張することさえ可能であるが、一部の場合では主張する組合せからの1又は2以上の特徴は、組合せから削除することができ、主張する組合せは、部分組合せ又は部分組合せの変形に向けることができる。
【符号の説明】
【0104】
2 光
3 レンズ-光軸/z軸
11 物体/光源
15n 近見視力交点
100 収束低減レンズ