(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20231108BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20231108BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231108BHJP
A61K 36/9066 20060101ALI20231108BHJP
A61K 36/23 20060101ALI20231108BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20231108BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20231108BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231108BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231108BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20231108BHJP
A61P 39/06 20060101ALN20231108BHJP
A61P 1/16 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L5/00 A
A61K9/20
A61K36/9066
A61K36/23
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/14
A61K47/26
A61P43/00 121
A61P3/10
A61P39/06
A61P1/16
(21)【出願番号】P 2023084543
(22)【出願日】2023-05-23
【審査請求日】2023-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504008933
【氏名又は名称】秋山錠剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰伸
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3230457(JP,U)
【文献】Amazon,金秀バイオ 沖縄県産熱帯ウコン,[online],2009年11月06日,[検索日:2023.6.16],<URL: https://www.amazon.co.jp/dp/B002VVIQTI>
【文献】Amazon,オリヒロ 沖縄3種ウコン粒,[online],2006年05月24日,[検索日:2023.6.16],<URL: https://www.amazon.co.jp/dp/B000FQS2IQ>
【文献】Amazon,沖縄産トリプルウコンEXプラス 1本,[online],2021年08月17日,[検索日:2023.6.16],<URL: https://www.amazon.co.jp/dp/B09CSXLTD2>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23L 33/105
A61K 9/20
A61K 36/9066
A61P 39/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長命草と、4種ウコンである紫ウコン、熱帯ウコン、秋ウコンおよび春ウコンを含有した錠剤の製造方法において、
前記長命草の粉末と、前記4種の各ウコン
の粉末が、配合比率を、長命草2:紫ウコン4:熱帯ウコン3:秋ウコン2:春ウコン1と
するとともに、前記長命草の粉末5~50部、前記4種のウコンの粉末100部として、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかに投入
し、
次いで当該造粒装置にセルロース誘導体水溶液
1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得る第一改質工程
を行い、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得
た後に、
前記整粒顆粒に、予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル
1~10部と、粉末マルトース
5.0重量%と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステル
1~5部とを、それぞれ順に乾式混合して、表面改質
された混合末を得る第二改質工程
を行い、
この混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とする長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法。
【請求項2】
長命草と、4種ウコンである紫ウコン、熱帯ウコン、秋ウコンおよび春ウコンを含有した錠剤の製造方法において、
前記長命草の粉末と、前記4種の各ウコン
の粉末が、配合比率を、長命草2:紫ウコン4:熱帯ウコン3:秋ウコン2:春ウコン1と
するとともに、前記長命草の粉末5~50部、前記4種のウコンの粉末100部として、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかにに投入
し、
次いで当該造粒装置にセルロース誘導体水溶液
1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得る第一改質工程
を行い、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得る
とともに、
粉末マルトース
5.0重量%と、予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル
1~10部およびショ糖脂肪酸エステル
1~5部とを、
予め混合して混合末を得
て、
前記整粒顆粒に前記混合末を乾式混合して、表面改質
された混合末を得る第二改質工程
を行い、
この表面改質された混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とする長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法。
【請求項3】
請求項
1記載の長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法において、
前記第二改質工程
の乾式混合の際に、
前記微粒シリカゲルと、前記ショ糖脂肪酸エステルに、
セルロース誘導体よりなる微粉結合剤を添加す
ることを特徴とする長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法に関する。さらに詳しくは、圧縮成形性が困難な長命草とウコンを実用に耐える錠剤物性を有する錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボタンボウフウ(Peucedanum japonicum)は,沖縄では長命草と呼ばれていて南九州から沖縄地方にかけて海岸沿いに自生するセリ科の野草である。
この長命草(ボタンボウフウ)の葉および茎には、β-カロテン、ルテイン、クロロフィル、ポリフェノール、ビタミンCが含まれている。これらの有用な成分の中において、ポリフェノールとしてのクロロゲン酸が食後の血糖値を抑える機能が報告されている。
【0003】
また、ウコン(Curcuma longa L.)は、インド原産のショウガ科の薬用植物で、東南アジアを中心に、世界中の熱帯・亜熱帯地域で栽培されている。主に根茎を使用する。ウコンの根茎には3~5%のクルクミン(黄色色素)が含有されている。クルクミンは抗酸化能や肝機能改善あるいは肝機能の維持などに寄与するウコンの代表的な活性成分と考えられており、以下に示す様々な製剤や製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献1は、ウコンエキスを含有した柔らかい錠剤であり、ウコンエキス、ゼラチンなどゲル化剤、グリセリンなどの可塑剤、レシチンなどの放出剤、甘味料、保存料および香味料から成る製剤で、喉、食道、消化器管に限らずこれを含患部へ長時間有効成分を継続的に送達することができる経口投与薬である。
特許文献2は、ウコンやクルクミンを含むゼリーで、ゼリーを構成するゲル化剤がジェランガムとカラギナンから成ることを特徴とし、胃と腸において徐々にクルクミンが放出される組成のゼリー剤である。
特許文献3は、ウコンなどを含有した製剤の不快味のマスキングに関して、ウコンエキスの不快な呈味・異味が炭酸を加えることによって大きく改善されることを見出し、不快な呈味・異味が低減されたウコンエキス含有飲料の技術を提案したものである。
【0005】
特許文献4は、ウコンなどの機能性素材に起因する可食性組成物の不快味が馬鈴薯を原料とし、DE(デキストロース当量)が2以上6以下で、25℃の蒸留水で調製したデキストリン30質量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が150Pa・s以下であるデキストリンを用いることで、マスキングする方法である。
特許文献5は、ウコン粉末を加温処理することにより臭味を改良する方法として、加温処理後のウコンに含まれるクルクミン含量が、該加温処理前のウコンに含まれるクルクミン含量の80%以上であるように加温する方法である。該加温処理方法としては、実施例で155℃、15分で効果が確認できたことを記載している。
【0006】
また、非特許文献1では、ウコンを用いた錠剤の成形について報告されており、ウコン関連の粒(錠剤)製品の錠剤硬度が一般的な医薬品の硬度に比べて低いものが多く、圧縮成形性がよくない。一般的に打錠用顆粒は、流動層造粒法、転動流動層造粒法、攪拌造粒法の順に適してしているとされている。そこで、流動層造粒装置を用いて、結合剤にコラーゲンペプチド、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースを用いて造粒した。ヒドロキシプロピルセルロースで造粒した場合の硬度は、ウコンの品種別で秋ウコン<春ウコン<紫ウコンの順の傾向がある。この結果から、各造粒の錠剤硬度は、品種によって異なること、その要因は、粉体物性よりも、ウコン中の脂質含量の方が大きいことがわかったとしている。そして、上記3種のウコン類の脂質含量を測定した。その結果、秋ウコンが春ウコンより脂質含量が低いことがわかった。ここで、各種ウコンをジエチルエーテルで脱脂し、その脱脂粉末を用いて錠剤を製したところ、秋ウコンでは、16.5倍も錠剤硬度が改善するものであった。
【0007】
さらに、非特許文献2によれば、長命草には、塩化メチレン抽出物と酢酸エチル可溶部とを含有しており、これら抽出物および分画物は脂溶性成分と考えられるが、合計約7%含有している。これら抽出物および分画物が長命草の上記した有用な成分であり、この結果を基に錠剤1錠(350mg)当たりに換算すると脂溶性成分量は、約4mgになる。
【0008】
一方、錠剤を成形するために添加され、その素材の成形性や打錠性を得る打錠用賦形剤として、低甘味糖質の粉末マルトースが使用されるが、例えば非特許文献3のサンマルト(登録商標)がある。このサンマルト(登録商標)は、非特許文献3によると、打錠性については、サンマルト(ミドリ)(登録商標)が低圧打錠に適した糖質で、成形性の悪い素材に利用することができると記載されている。また、各種糖質を打錠した場合の錠剤硬度が示されている。
【0009】
このサンマルト(登録商標)に関しては、さらに非特許文献4にて、サンマルト(ミドリ)(登録商標)は、保油力が高いことからDHAなどの機能性を持つ油脂素材を配合した打錠品の製造には極めて高い効果を発揮するとして、DHAにデキストリン、またはサンマルト(登録商標)を配合し、打錠した場合の打錠圧と錠剤硬度との関係を示している。
【0010】
さらに、特許文献6には、生菌製剤の製造方法において、製造時の腸内有用菌の残存率を高くするためには、60質量%以上のマルチトール(麦芽糖)を有する糖類粉末組成物を30~95質量%用い、これと腸内有用菌とを混合して固形製剤を製造することが示されている。ここで、実施例1としてアメ粉にサンマルト(登録商標)が用いられている。
【0011】
また、特許文献7では、ライス成形品の製造方法において、遊離水分解防止材としてサンマルト(登録商標)が用いられることが特許請求の範囲および実施例に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特表2016-535028号公報
【文献】特開2017-197465号公報
【文献】特開2015-065938号公報
【文献】特開2015-128420号公報
【文献】特開2007-116945号公報
【文献】特開2016-193893号公報
【文献】特開平02-060556号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】鎌田靖弘,PHARM TECH JAPAN,vol.28 No.14(2012)179~186頁
【文献】菊崎泰枝ら,沖縄産香辛料植物の食中毒菌増殖抑制作用,生活科学研究誌、1巻(2002)11~16頁
【文献】株式会社林原ホームページ、製品紹介、サンマルト(登録商標)、[令和5年3月8日検索]、インターネット[https://www.food.hayashibara.co.jp/product/sunmalt/ ]
【文献】食品と開発,VOL.48 NO.8(2013)72~73頁
【文献】鎌田ら,ウコン類における錠剤成形の技術開発、沖縄県工業技術センター研究報告書 第9号(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した特許文献1および2の技術は、ゲル化剤を用いた半固形製剤であることから、製造では、特別な設備、そして、保存についても防腐剤などの添加が必要となり、製造の工程が多く、煩雑でありコストアップとなる欠点を有する。
また、特許文献3は、飲料におけるウコンの不快味のマスキング技術で、特許文献4では、形態として錠剤も挙げられているが、実施例では、機能性素材としてペプチドを水溶液の形態でマスキング効果が評価されている。しかし錠剤の形態でのウコンに対するマスキング効果は確認されておらず、手軽に持ち運べて摂取が可能であるとは言えない。
特許文献5の方法では、オートクレーブなどの特別な設備を必要とするもので、製造工程、製造コストが増大する欠点を有する。
【0015】
また、非特許文献1では、錠剤としての硬度を向上させることが可能ではあるが、その硬度を得るためにウコン末を脱脂してしまい、すなわちウコンに含有される精油成分を取り除いてしまうものである。すなわち、ウコンの精油には、胆汁分泌促進、健胃、殺菌、防腐などの薬理作用を有しており、上記のようにウコンを脱脂することで、錠剤硬度を改善する方法は、期待する機能を発揮させることができず望ましくない。非特許文献1において、秋ウコン含有錠では、例えば、秋ウコンの精油含量を1.3mL/50gとした場合、1錠330mgの95%秋ウコン含有錠では8.15μLの精油含量となるが、この錠剤の硬度が2.7kgfと低い(非特許文献5参照)ことから、この原因を明らかにする目的で、秋ウコン粉末をジエチルエーテルで脱脂し、その脱脂粉末を製することとすると、両者の錠剤硬度を比較したところ、脱脂した粉末では、錠剤硬度が秋ウコン粉末の16.5倍高い錠剤が得られることがわかる。しかしながら、秋ウコン粉末を脱脂することで、秋ウコンが有する機能を消失させることで望ましくない。さらに、非特許文献1では、錠剤の経時的安定性に関する報告がない。精油成分など脂溶性成分を含有した錠剤では、経時的な錠剤硬度および摩損度の試験観察、すなわち安定性試験や長期保存試験が重要になる。
【0016】
さらに、特許文献6や特許文献7、非特許文献3や非特許文献4において、ウコンの錠剤化に用いた例に関しての記載はなく、特に非特許文献3には、成形性の悪い素材に利用できると記載されているが、高含量のウコンを含む錠剤或いは長命草を含む錠剤とする場合に、サンマルト(登録商標)単味では、高い硬度を有すると共に、低い摩損度の錠剤を製することはできなかった。
【0017】
そして、上記各特許文献1~5,非特許文献1のいずれも、ウコン末を用いる例があるもののウコンに含有される精油成分を活かしておらず、また、長命草由来の脂溶性成分をも含有させることには開示がなく、これらの精油成分に含まれる有用な成分を用いて、錠剤などの製剤を得るという点について具体的な考察等がされていなかった。
【0018】
そこで本発明は、上記問題点を解消するために、ウコンは圧縮成形が困難で実用に耐えうる錠剤を製造することが難しいといわれてきたが、このウコンに含まれる有用な成分である精油成分を活かし、且つ長命草に含まれる脂溶性成分などの有用な成分をも活かして、これらを含有する錠剤を得ることができる製造方法を提供するとともに、流通時などの際に容易に型崩れや損壊などを起こさない強度を有する長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
次に、上記の課題を解決するための手段を説明する。
この発明の請求項1記載の長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法は、長命草と、4種ウコンである紫ウコン、熱帯ウコン、秋ウコンおよび春ウコンを含有した錠剤の製造方法において、
前記長命草の粉末と、前記4種の各ウコンの粉末が、配合比率を、長命草2:紫ウコン4:熱帯ウコン3:秋ウコン2:春ウコン1とするとともに、前記長命草の粉末5~50部、前記4種のウコンの粉末100部として、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかに投入し、
次いで当該造粒装置にセルロース誘導体水溶液1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得る第一改質工程を行い、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得た後に、
前記整粒顆粒に、予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル1~10部と、粉末マルトース5.0重量%と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステル1~5部とを、それぞれ順に乾式混合して、表面改質された混合末を得る第二改質工程を行い、
この混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とする。
【0020】
この長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法によれば、長命草と4種のウコンの各粉末とに、添加剤として、粉末マルトース(例えばサンマルト(登録商標))、微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステル、そしてヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体を特定な組成で配合することとしている。
【0021】
ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を用いて、湿式コーティングにより長命草の粉末と4種のウコン粉末とを表面改質した後、乾燥・整粒した顆粒に、微粒シリカゲル、粉末マルトース(サンマルト(登録商標))、ショ糖脂肪酸エステルの順で乾式混合により表面改質することにより、実用に十分耐えうる錠剤物性を有する優れた長命草とウコンとを含有する錠剤を得ることができる。
【0022】
また、この長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法によれば、それぞれの組成は、4種のウコン粉末、長命草の粉末、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース)、微粒シリカゲル、およびショ糖脂肪酸エステルを、100部:5~50部:1~10部:1~10部:1~5部が好ましく、さらに好ましくは、それぞれを100部:10~30部:1~8部:1~5部:1~3部とする。これにより、ウコン含量が従来よりも増量され、且つ長命草を含有し、それぞれの精油成分や脂溶性成分も含有していながら、十分な錠剤硬度、低い摩損度を有する長命草とウコンとを含有する錠剤を得ることができる。
【0023】
請求項2記載の長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法は、長命草と、4種ウコンである紫ウコン、熱帯ウコン、秋ウコンおよび春ウコンを含有した錠剤の製造方法において、
前記長命草の粉末と、前記4種の各ウコンの粉末が、配合比率を、長命草2:紫ウコン4:熱帯ウコン3:秋ウコン2:春ウコン1とするとともに、前記長命草の粉末5~50部、前記4種のウコンの粉末100部として、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかにに投入し、
次いで当該造粒装置にセルロース誘導体水溶液1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得る第一改質工程を行い、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得るとともに、
粉末マルトース5.0重量%と、予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル1~10部およびショ糖脂肪酸エステル1~5部とを、予め混合して混合末を得て、
前記整粒顆粒に前記混合末を乾式混合して、表面改質された混合末を得る第二改質工程を行い、
この表面改質された混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とする。
【0024】
この長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法によれば、長命草と4種のウコンの各粉末とに、添加剤として、粉末マルトース(例えばサンマルト(登録商標))、微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステル、そしてヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体を特定な組成で配合することとしている。
【0025】
ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を用いて、湿式コーティングにより長命草の粉末と4種のウコン粉末とを表面改質した後、乾燥・整粒した顆粒に、微粒シリカゲル、粉末マルトース(サンマルト(登録商標))、ショ糖脂肪酸エステルを乾式混合するが、予め、粉末マルトース(サンマルト(登録商標))と、微粒シリカゲルと、ショ糖脂肪酸エステルとを混合して混合末を得て、この予め混合された混合末を表面改質された長命草とウコン粉末に乾式混合して、表面改質が行われる。そして、表面改質することにより、実用に十分耐えうる錠剤物性を有する優れた長命草とウコンとを含有する錠剤を得ることができる。
【0026】
また、この長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法によれば、それぞれの組成は、4種のウコン粉末、長命草の粉末、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース)、微粒シリカゲル、およびショ糖脂肪酸エステルを、100部:5~50部:1~10部:1~10部:1~5部が好ましく、さらに好ましくは、それぞれを100部:10~30部:1~8部:1~5部:1~3部とする。これにより、ウコン含量が従来よりも増量され、且つ長命草を含有し、それぞれの精油成分や脂溶性成分も含有していながら、十分な錠剤硬度、低い摩損度を有する長命草とウコンとを含有する錠剤を得ることができる。
【0027】
請求項3記載の長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法は、請求項1記載の長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法において、
前記第二改質工程の乾式混合の際に、
前記微粒シリカゲルと、前記ショ糖脂肪酸エステルに、セルロース誘導体よりなる微粉結合剤を添加することを特徴とする。
【0028】
この長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法によれば、第二改質工程において、微粒シリカゲルと、ショ糖脂肪酸エステルに、微粉結合剤として、例えば、微粉セルロース誘導体、好ましくは微粉ヒドロキシプロピルセルロースを添加する。
【0029】
これにより、さらに表面改質が良好となり、実用に十分耐えうる錠剤物性を有する優れた長命草とウコンとを含有する錠剤を得ることができる。
【0030】
本発明に係る請求項1記載の長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法によれば、ウコンの持つ様々な有用な作用を、ウコンに含まれる精油成分とともに得ることができ、且つ、長命草の持つ様々な有用な作用を、長命草に含まれる脂溶性成分などとともに得ることができ、本発明の製造方法では、主成分としての長命草とウコンを造粒装置を用いて予め湿式コーティング法により表面改質しており、顆粒をより容易に得ることができ、その顆粒をさらに、粉末マルトースを添加することで表面改質され、さらに微粒シリカゲルおよびショ糖脂肪酸エステルを添加することで表面改質されて、それぞれを順に混合することにより、成形性を良好に、すなわち、打錠装置にて錠剤を成形する際に、打錠障害を防止して錠剤を得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
また、成形され製品となる錠剤に精油成分や脂溶性成分が含まれている状態でありながら十分な硬度を有し、流通過程などで損壊などを起こすことがない。つまり、錠剤の静的な強度として、製造過程や使用者の取り扱いなど直接に力が加わることに対して耐える強度を備える。さらに、落下や摩耗などによる錠剤破壊のしやすさの指標となる摩損度を極めて小さく、従来品のような錠剤表面の一部が欠落したり、剥離を起こすことがない。つまり、錠剤の動的な強度として、流通過程での取り扱いなど輸送中での振動など外力から耐える強度を備える。錠剤内部の精油成分や脂溶性成分などの滲み出しにより粉末の粒子間の結合力の低下によって錠剤硬度の低下や摩損度の増大が起きるが、本発明の製造方法により得られる長命草とウコンとを含有する錠剤は、このような問題の発生が無い。これらのことから、実用に十分耐え得る錠剤物性を有する優れた長命草とウコンとを含有する錠剤を得ることが可能となる。
【0032】
さらに、この長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法によれば、組成の配合比として、ウコンの持つ有用な作用を精油成分とともに十分に含有され、、且つ長命草の持つ有用な作用を脂溶性成分などとともに含有された錠剤を得ることができ、また、十分な錠剤硬度であって、且つ摩損度が低く、錠剤としての流通性など、十分な実用性を備えた長命草とウコンとを含有する錠剤を得ることができる。
【0033】
本発明に係る請求項2記載の長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法によれば、ウコンの持つ様々な有用な作用を、ウコンに含まれる精油成分とともに得ることができ、且つ、長命草の持つ様々な有用な作用を、長命草に含まれる脂溶性成分などとともに得ることができ、本発明の製造方法では、主成分としての長命草とウコンを造粒装置を用いて予め湿式コーティング法により表面改質しており、顆粒をより容易に得ることができ、その顆粒を乾燥・整粒して整粒顆粒を得るとともに、粉末マルトースと微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとを予め混合して混合末とし、整粒顆粒とこの混合末とを乾式混合する手順としたことで、それぞれを混合して表面改質するよりも均一に分散して表面改質されることとなり、ウコンの精油成分や長命草の脂溶性成分などによる錠剤硬度への影響を軽減することができる。
【0034】
また、成形され製品となる錠剤に精油成分や脂溶性成分が含まれている状態でありながら十分な硬度を有し、流通過程などで損壊などを起こすことがない。つまり、錠剤の静的な強度として、製造過程や使用者の取り扱いなど直接に力が加わることに対して耐える強度を備える。さらに、落下や摩耗などによる錠剤破壊のしやすさの指標となる摩損度を極めて小さく、従来品のような錠剤表面の一部が欠落したり、剥離を起こすことがない。つまり、錠剤の動的な強度として、流通過程での取り扱いなど輸送中での振動など外力から耐える強度を備える。錠剤内部の精油成分や脂溶性成分などの滲み出しにより粉末の粒子間の結合力の低下によって錠剤硬度の低下や摩損度の増大が起きるが、本発明の製造方法により得られる長命草とウコンとを含有する錠剤は、このような問題の発生が無い。これらのことから、実用に十分耐え得る錠剤物性を有する優れた長命草とウコンとを含有する錠剤を得ることが可能となる。
【0035】
さらに、この長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法によれば、組成の配合比として、ウコンの持つ有用な作用を精油成分とともに十分に含有され、、且つ長命草の持つ有用な作用を脂溶性成分などとともに含有された錠剤を得ることができ、また、十分な錠剤硬度であって、且つ摩損度が低く、錠剤としての流通性など、十分な実用性を備えた長命草とウコンとを含有する錠剤を得ることができる。
【0036】
本発明に係る請求項3記載の長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法によれば、微粉結合剤をさらに添加する工程を含むことで、さらに錠剤硬度を高くして長命草とウコンとを含有する錠剤を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤は、長命草の粉末と4種のウコンである紫ウコン、熱帯ウコン、秋ウコン、春ウコンの粉末とを含有する錠剤であって、これらの粉末に含有される精油成分等の各成分とともに、表面改質剤として、粉末マルトース、微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステルおよびセルロース誘導体を特定な組成で用いることとし、ここで、セルロース誘導体は水溶液であり、このセルロース誘導体水溶液を用いて湿式コーティングにより表面改質を行って顆粒状にし、さらに、この顆粒に粉末マルトース、微粒シリカゲル、およびショ糖脂肪酸エステルを乾式混合することで表面改質して、これを打錠し錠剤とする製造方法にて得られるものである。
この製造過程において、セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロースが好適であり、また、粉末マルトースは、サンマルト(登録商標:株式会社林原)が好適であり、錠剤としての硬度、摩損度が好ましい実用に十分耐えうる長命草とウコンとを含有する錠剤が得られるものとなる。
【0038】
また、乾式混合による表面改質において、微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとに、微粉結合剤を添加させることしてもよく、微粉結合剤としては、セルロース誘導体の粉末、例えば微粉ヒドロキシプロピルセルロース(微粉HPC)であり、セルニー(登録商標)SSL-SFP(商品名:日本曹達株式会社)などを好適に用いることができる。
【0039】
本発明における長命草とウコンの特徴は以下の通りである。
本発明で用いる長命草は、沖縄県などの温暖な地域で、海岸沿いに自生するセリ科の多年草の一種であり、栄養価が高く、ビタミンやミネラル、食物繊維を豊富に含み、古くから料理や民間薬として、健康に役立てられてきた食材である。高い抗酸化作用があり、排尿促進や血流改善などにも有効であることが近年の研究で明らかになっている。
長命草の葉および茎には主な成分として、ビタミンA、ビタミンB2 、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、カルシウム、イソサミジン、ルチン、クロロフィル、クロロゲン酸などのポリフェノールを豊富に含んでおり、これらの有用な成分の中において、ポリフェノールとしてのクロロゲン酸が食後の血糖値を抑える機能が報告され、民間療法では風邪やぜんそく、腎臓病、神経痛の治療にも用いられることがあり、すなわち、活性酸素を除去する効果、美肌効果、排尿を促す効果、血流を改善する効果など有用な成分を多く含んでいる。
【0040】
本発明で用いるウコンは、4種類のウコンであり、秋ウコン、春ウコン、紫ウコン、熱帯ウコンである。漢方では、利胆、健胃、利尿、止血、通経薬などに用いられているものである。
秋ウコンには、精油成分とクルクミンが含有されている。クルクミンの働きによって、肝機能の強化、消化促進、食欲増進などが期待できる。
春ウコンには、食物繊維とミネラル、精油の働きによって、腸に適度な刺激を与えることからお腹の調子を整える。
紫ウコンは、ガジュツとも言われ、芳香があり、味が苦く、消化器を刺激することから芳香健胃作用として使用されている。
熱帯ウコンは、精油成分およびクルクミンの含有量が高い。
【0041】
本願出願人による栽培及び計測結果での比較では、精油成分が、2021年および2022年に収穫した秋ウコンで1.3mL/50g、熱帯ウコンが2.8~3.4mL/50gとなり、熱帯ウコンの精油成分が秋ウコンのおよそ2~3倍であった。
また、クルクミンを含む総クルクミノイドの比較では、2021年および2022年に収穫した秋ウコンが0.461~0.612%であり、熱帯ウコンは5.5~5.8%となり、秋ウコンに対し熱帯ウコンがおよそ9~10倍以上の結果が得られた。したがって、熱帯ウコンではクルクミンによる高い効果、すなわち、抗酸化能や肝機能改善あるいは肝機能の維持などが期待できる。
なお、参考として、春ウコンおよび紫ウコンの総クルクミノイドは、0.08~0.233%、0~0.0007%であった。
【0042】
なお、ウコンに含有されるウコン抽出物は、例えば、秋ウコンのエタノール抽出物では、クルクミノイドを95%含有している。このウコン抽出物を錠剤に配合することで、クルクミンによる高い効果を期待することもできる。このクルクミンは、作用として、肝保護作用、抗酸化性、抗腫瘍作用、免疫賦活作用、抗炎症作用、抗菌作用を有している。
このクルクミンは、水に難溶性で、耐光性として紫外線に弱く、微量の金属、特に鉄イオンの共存で暗色化する。また、アルコールまたは、ジエチルエーテル溶液は、鮮黄色を示す。なお、クルクミノイドも水に難溶性であり、エタノール溶解性化合物である。
クルクミノイドとは、ポリフェノールの一種で、主にクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミンの3種類に分類される。
【0043】
本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤に用いる結合剤として使用するセルロース誘導体には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC・カルメロースナトリウム)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC・ヒプロメロース)などがある。
【0044】
また、添加剤を構成する微粒シリカゲルとしては、微粒二酸化ケイ素、微粉末シリカ(サイロページ(登録商標:富士シリシア化学株式会社)、軽質無水ケイ酸(アエロジル200(登録商標:日本アエロジル株式会社),アドソリダー101(登録商標:フロイント産業株式会社)などがある。
【0045】
さらに、添加剤を構成するショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ステアリン酸エステル(S-370,S-370F,S-1170,S-1170F(商品名:三菱ケミカル株式会社))、ショ糖ベヘニン酸エステル(B-370,B-370F(商品名:三菱ケミカル株式会社))、ショ糖混合脂肪酸エステル(POS-135(商品名:三菱ケミカル株式会社))などが用いられる。
【0046】
さらに、本実施形態の長命草とウコンとを含有する錠剤においては、これらに加えて、安定剤や香料、甘味剤なども添加することが出来る。
【0047】
このように構成された本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤は、健康食品分野をはじめ、食品、医薬品、医薬部外品などの分野にも適用することができる。また、剤形としては、錠剤が最も好ましいが、カプセル剤、穎粒剤、細粒剤、散剤などとして構成することができる。
【0048】
このように構成された本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤では、秋ウコン、春ウコン、紫ウコンおよび熱帯ウコンの4種を配合した錠剤で、上述したように、それぞれのウコンの本出願人による自社栽培により2021年および2022年に収穫したウコンの精油含量は、秋ウコンが1.3mL/50g、春ウコン0.8~1.1mL/50g、紫ウコン0.5~0.7mL/50g、そして熱帯ウコンでは2.8~3.4mL/50gであった。熱帯ウコンの精油含量は、秋ウコンの精油含量のおよそ2~3倍であった。この結果に基づいて1錠(350mg)当たりの精油含量を算出すると8.3μLとなる。なお、4種ウコンに加えて配合も可能となるウコン抽出物は、秋ウコンのエタノール抽出物でクルクミノイド95%で、5%は油脂、脂肪酸など脂溶性成分と思われる。ウコン抽出物に由来する脂溶性成分は1錠当たり0.3mgになる。
【0049】
本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤では、長命草由来の脂溶性成分に加えて、4種ウコンの精油成分を含有した錠剤化おいて、脂溶性成分などで錠剤としての形状を確保する、すなわち高い硬度を有する錠剤の製造が難しかったが、本発明の製造方法によって、錠剤硬度が8kgf以上となる高い硬度を有する錠剤を製することができた。
【0050】
このような高い錠剤硬度である本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤は、従来品となる市販品では例えば、長命草(ボタンボウフウ)のタブレット(しまのだいち)(商品名:株式会社大吉)(https://shimanodaichi.info/item/8204/ )では錠剤硬度が3.44kgf、長命草錠剤(商品名:勇田薬草園)(https://cyouju.com/product/41/)では錠剤硬度が3.55kgf、トリプルウコンEXプラス(商品名:トランスコスモス株式会社)(https://www.666-666.jp/251301.html)では3.98kgfであって、いずれも医薬品としての標準硬度である5kgf以下の錠剤であり、これらに比べて本発明の錠剤は十分な硬度を有し、流通過程での損壊などが発生することがない。
【0051】
したがって、本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤は、ウコンの持つ様々な有用な作用を、ウコンに含まれる精油成分とともに得ることができ、且つ長命草の持つ有用な作用を脂溶性成分などとともに得ることができ、粉末マルトースを添加することで表面改質され、さらに微粒シリカゲルおよびショ糖脂肪酸エステルを添加することで表面改質されて、成形性を良好に、すなわち、打錠装置にて錠剤を成形する際に、打錠障害を防止でき、成形され製品となる錠剤に精油成分が含まれている状態であっても十分な硬度を有し、硬度が5kgf以上となり、流通過程などで損壊などを起こすことがなく、落下や摩耗などによる錠剤破壊のしやすさの指標となる摩損度を極めて小さく、0.5%以下とすることができ、従来品のような錠剤表面の一部が欠落したり、剥離を起こすことがなく、実用に十分耐え得る錠剤物性を有する優れた長命草とウコンとを含有する錠剤を製造することが可能となる。
【0052】
さらに、本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤では、精油成分や脂溶性成分などを含んでいるが、十分な硬度で構成されていることから、上記したように容易に損壊することがなく、且つ摩損することが略無い。このことから、従来のウコンを含有する錠剤においては非特許文献1などに示されるように硬度を得るために脱脂を行っていたが、本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤では、有用な成分である精油成分や脂溶性成分などを削ぐことなく、これら有用な成分を含有した状態で錠剤として得られており、精油成分の持つ胆汁分泌促進、健胃、殺菌、防腐などの薬理作用などを有するウコン末として摂取することが可能であり、また脂溶性成分やポリフェノールなどによる様々な機能を有する長命草を摂取でき、十分な硬度を有する錠剤となり、流通時の外力による損壊などが発生することが無いものである。
【0053】
また、本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤では、添加剤として配合した粉末マルトースとしてのサンマルト(登録商標)の性質である多孔質により、クルクミンなど精油成分や長命草の脂溶性成分の含有状態の安定性を得る効果があり、これにより経時的安定性を得られ、錠剤としての経時変化、すなわち経時による硬度の低下や摩損度の増加を招くおそれを抑えることが可能となる。
さらに、粉末マルトースに加え、微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとを添加して表面改質を行っていることによっても、錠剤への成形性を良好とし、打錠障害の回避を行えるものである。
【0054】
次に、上述した長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法について説明する。
まず、長命草の粉末と、4種のウコンである紫ウコン、熱帯ウコン、秋ウコン、春ウコンのそれぞれの粉末を、攪拌造粒装置を用いて均一に混合する。なお、4種のウコンは、それぞれに栽培による収穫量などが異なり、4種全量を所定量とするために各ウコンの量の配分を変えており、後述する配分量が好ましい組み合わせの値となるが、その他の組み合わせとしては、含有する精油成分の量に応じるなど適宜変えることとしてもよい。また、攪拌造粒装置の他、流動層造粒装置や転動造粒装置を用いることとしてもよい。
【0055】
次に、第一改質工程として、上記の混合粉末を、予め水に溶解したセルロース誘導体の溶液で湿式コーティングする。セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0056】
次に、この湿式コーティングにより表面改質した顆粒を乾燥機を用いて乾燥する。
【0057】
次に、この乾燥顆粒を整粒機で整粒し、整粒顆粒とする。
【0058】
次に、第二改質工程として、整粒顆粒に、予め篩過した粉末マルトース、微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステルを添加し、乾式混合により表面改質する。
ここで、微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルに、微粉結合剤として、微粉セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の微粉をさらに添加し、乾式混合により表面改質することとしてもよい。
【0059】
次に、この表面改質された顆粒を打錠機を用いて錠剤を製する。
【0060】
ここで、長命草とウコンとは、それぞれ精油成分や脂溶性成分、油脂成分など、ポリフェノールなどの有用な成分を含んだままで粉末とされ、それぞれの粉末の配合比率は、長命草2:紫ウコン4:熱帯ウコン3:秋ウコン2:春ウコン1としている。
また、それぞれの組成の配合比は、4種のウコン粉末100部、長命草の粉末5~50部、セルロース誘導体1~10部、微粒シリカゲル1~10部、ショ糖脂肪酸エステル1~5部とする。なお、好ましくは、4種ウコンの粉末100部:長命草の粉末10~30部:セルロース誘導体1~8部:微粒シリカゲル1~5部:ショ糖脂肪酸エステル1~3部である。
これにより、4種のウコンの含量が従来よりも増量された配合比となり、且つ長命草を含有させながら、それぞれの精油成分や油脂成分を脱脂させることなく含有したまま、十分な錠剤硬度、低い摩損度を有する長命草とウコンとを含有する錠剤を得ることができる。
【0061】
本発明のウコン含有錠剤の製造方法によれば、長命草粉末とウコン粉末とを水溶性高分子溶液であるセルロース誘導体水溶液で湿式コーティング法により表面改質した後に、その粉末を表面改質した顆粒に、さらに、微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルをそれぞれ乾式混合法によって長命草とウコンとを含有する顆粒を表面改質した。
この表面改質については、「標準処方への表面改質法の応用」加藤ら((薬剤学,66(1)67-76P(2006))において、原薬および賦形剤を含む粉体を軽質無水ケイ酸と一括して混合することで表面改質を行う例を示しているが、本発明の製造方法では、主成分としての長命草とウコンを予め湿式コーティング法により表面改質しており、その顆粒をさらに、粉末マルトースとともに微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルを用いて個々に乾式混合法によって表面改質し、また、粉末マルトースと微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとの最適な混合比を特定したことで、長命草とウコンとを精油成分や脂溶性成分などを含有しながら十分な硬度と低い摩損度を備えた錠剤を得ることができた。
【0062】
なお、本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤には、用途に応じて種々の成分を配合することが出来る。
例えば、機能性素材としては、クルクミンやデメトキシクルクミン,ビスデメトキシクルクミンなどのウコン抽出物、月見草、菊の花、大豆イソフラボン、アガリスク、ノコギリヤシ、ヨウ葉、紅麹、ドコサヘキサエン酸、レスベラトール、ラクトフェリン、サラシア、グルコサミン、ポリフェノール、コラーゲン、ペプチド、コエンザイムQ10、ケール、アミノ酸、イチョウ葉、霊芝、ビタミン、ミネラル、ギャバ(GABA)、アスタキサンチン、プロポリス、ローヤルゼリー、スピルリナ、クロレラなどの成分が含まれることとしてもよい。
【0063】
また、医薬品分野においては、マレイン酸クロルフェニラミン,塩酸ジフェンヒドラミン,プロメタジンなどの抗ヒスタミン剤、臭化水素酸デキストロメトルファン,グアイフェネシン,テオフィリンなどの鎮咳去痰剤、カプトリル,メチルドーパ,塩酸ラベタロールなどの血圧降下剤、ピンドロール,塩酸プロプラノロール,塩酸プロカインアミドなどの不整脈用剤、イソソルビド,フロセミドなどの利尿剤、臭化水素酸スコポラミン,塩酸パパベリンなどの鎮痙薬、ロートエキス,ジアスターゼ,ケイヒ油などの健胃消化剤、塩化ベルベリン,乳酸菌,ビフィズス菌などの整腸剤、酸化マグネシウム,炭酸マグネシウム,スクラルファートなどの制酸剤、シメチジン,ラニチジン,ファモチジンなどのH2 受容体括抗剤、アセトアミノフェン,イブプロフェン,エテンザミドなどの解熱鎮痛消炎薬、ジアゼパム,ニトラゼパム,フェノバルビタールナトリウムなどの催眠鎮静剤、アンフェタミン,イミプラミンなどの抗うつ薬などを医薬品成分として含まれることとしてもよい。
【0064】
さらに、滋養強壮保健薬には、例えば、生薬,漢方薬などの天然由来物質、タンパク、アミノ酸、鉄,カルシウム,マグネシウムなどのミネラル。ビタミンA,ビタミンB1 ,ビタミンB2 ,ビタミンB6 ,ビタミンB12,ビタミンC, ビタミンEなどのビタミンなどが含まれることとしてもよい。
【実施例】
【0065】
次に、上述した実施の形態における具体的な実施例を比較例とともに説明する。
<比較例A>
まず始めに、本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤との比較として、粉末マルトースを使用しない長命草と4種のウコンの粉末とを含有させた比較錠剤を作成する。
以下に各錠剤物性の配合量を表1に示す。
【0066】
【0067】
比較錠剤としてA-1~A-3の3例を各配合量を変えて組み合わせる。これら錠剤の主な成分としては、長命草と4種のウコンの各粉末の合計量を94重量%となるように、且つ4種のウコンはそれぞれ等配合量となるよう組み合わせた。
比較例A-1としては、4種のウコン粉末をそれぞれ22.25重量%、長命草粉末を5.0重量%、比較例A-2としては、4種のウコン粉末をそれぞれ21.00重量%、長命草粉末を10.0重量%、比較例A-3としては、4種のウコン粉末をそれぞれ18.80重量%、長命草粉末を18.80重量%とする。
これら3種の組み合わせに、セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルセルロースを3.0重量%、微粒シリカゲルを2.0重量%、ショ糖脂脂肪酸エステルを1.0重量%とする組成とした。
【0068】
この比較錠剤を製造する手順として、まず、長命草粉末に4種のウコン粉末を配合して攪拌造粒装置に投入し、これにヒドロキシプロピルセルロース水溶液を添加し、湿式コーティングして顆粒とする。
次に、この顆粒を乾燥させ、整粒する。
次に、この整粒した顆粒をポリ袋に投人し、ここに、予め20メッシュで篩過した微粒シリカゲルを添加し、乾式混合した後、さらに、予め30メッシュで篩過したショ糖脂肪酸エステルを添加して、ポリ袋で乾式混合する。
次に、この混合末をロータリー打錠機を用いて、1錠あたりの重量350mg、剤形9mmφAR、回転数30rpmで打錠し、錠剤を製した。
なお、上記した微粒シリカゲルは、二酸化ケイ素とされ、例えばサイロページ(登録商標:富士シリアル化学株式会社)を、ショ糖脂肪酸エステルは、例えばシュガーエステルB-370F(商品名:三菱ケミカル株式会社)を用いる。
【0069】
<実施例>
次に、本発明の長命草とウコンとを含有する錠剤の実施例として、各成分の配合量を変えて3例を作成する。
以下に各錠剤物性の配合量を表2に示す。
【0070】
【0071】
(実施例1)
まず、実施例1として、長命草粉末15. 7重量%、4種のウコン粉末78. 3重量%、セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルセルロース3. 0重量%、粉末マルトースとしてサンマルト(登録商標)5. 0重量%、微粒シリカゲル2. 0重量%、およびショ糖脂肪酸エステル1. 0重量%からなる組成とする。ここで、長命草と4種のウコンの各粉末は、それぞれの配合比率を、長命草2:紫ウコン4:熱帯ウコン3:秋ウコン2:春ウコン1としている。すなわち、長命草粉末15.7重量%、紫ウコン31.3重量%、熱帯ウコン23.5重量%、秋ウコン15.7重量%、春ウコン7.8重量%である。
【0072】
この実施例1の錠剤を製造する手順として、まず、長命草粉末と4種ウコン粉末を攪拌造粒装置に投入する。
次に、第一改質工程として、ここにセルロース誘導体水溶液としてヒドロキシプロピルセルロース水溶液を添加し、湿式コーティングして顆粒とし、この顆粒を60℃で、含水量3%以下に乾燥する。すなわち、長命草粉末と4種ウコン粉末の表面改質を行う。
次に、この乾燥した顆粒をコーミル(1. 14mm径スクリーン、丸型インペラー)で整粒し、整粒顆粒とする。
【0073】
次に、第二改質工程として、この整粒顆粒をポリ袋に投入し、ここに、予め20メッシュで篩過した微粒シリカゲルを添加し、乾式混合を行う。
次に、粉末マルトースを加え、乾式混合した後、さらに、予め30メッシュで篩過したショ糖脂肪酸エステルを添加して、ポリ袋で乾式混合する。すなわち、長命草粉末と4種ウコン粉末の表面改質をさらに行う。
次に、この混合末をロータリー打錠機を用いて、1錠あたりの重量350mg、剤形9mmφAR、回転数30rpmで打錠し、錠剤を製する。
【0074】
なお、上記の微粒シリカゲルとしては、二酸化ケイ素でありサイロページ(登録商標:富士シリアル化学株式会社)を用い、粉末マルトースとしては、サンマルト(登録商標:株式会社林原)を用い、ショ糖脂肪酸エステルとしては、シュガーエステルB-370F(商品名:三菱ケミカル株式会社)を用いる。
【0075】
(実施例2)
次に、実施例2は、上記実施例1と同一処方、同一工程であるが、上記実施例1においては、微粒シリカゲル、粉末マルトース、ショ糖脂肪酸エステルの3成分についてそれぞれの成分ごとに乾式混合し表面改質したが、この実施例2においては、これら3成分(微粒シリカゲル、粉末マルトース、ショ糖脂肪酸エステル)を予め混合した後、すなわち混合末を得る工程を有し、この混合末を第一改質工程での湿式コーティング後に整粒した顆粒に投入し、第二改質工程として乾式混合を行う手順とした。
【0076】
(実施例3)
次に、実施例3は、上記実施例1と同一の工程で、第一改質工程として用いるセルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース)の配合量を1. 5重量%とし、第二改質工程は、それぞれ成分ごとに乾式混合する手順であるが、配合量として微粒HPCを2. 5重量%の添加量とした。
なお、上記各実施例の各配合量は、本発明を限定するものではない。
【0077】
<上記実施例の配合例を用いた比較例>
次に、上記した各実施例と同等の長命草とウコンとの配合量とするとともに、表面改質を一部省いた例を比較例Bとして示す。
(比較例B)
比較例Bとして、長命草粉末15. 7重量%、4種ウコン粉末78.3重量%、セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルセルロース3. 0重量%、粉末マルトースとしてサンマルト(登録商標)5. 0重量%からなる組成とする。ここで、長命草と4種のウコンの粉末は、上記同様であり、それぞれの配合比率を、長命草2:紫ウコン4:熱帯ウコン3:秋ウコン2:春ウコン1としている。
【0078】
この比較例Bの錠剤を製造する手順として、まず、長命草粉末と4種ウコン粉末を攪拌造粒機に投入する。 次に、この粉末にセルロース誘導体水溶液としてヒドロキシプロピルセルロース水溶液を添加し、湿式コーティングしてこの顆粒とし、この顆粒を60℃で、含水量3%以下に乾燥、表面改質を行う。
次に、この乾燥した顆粒をコーミル(1. 14mm径スクリーン、丸型インペラー)で整粒し、整粒顆粒とする。
【0079】
次に、この整粒顆粒をポリ袋に投入し、ここに、粉末マルトース(サンマルト:登録商標)を添加して、ポリ袋で乾式混合して混合末とし、この混合末をロータリー打錠機を用いて、1錠重量350mg、剤形9mmφAR、回転数30rpmで打錠し、錠剤を製した。
【0080】
すなわち、この比較例Bは、上記実施例において第二改質工程として粉末マルトース(サンマルト:登録商標)とともに混合される微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルを用いず、粉末マルトース(サンマルト:登録商標)のみとした錠剤である。
これは、非特許文献3において、サンマルト(登録商標)の打錠性に関して、成形性の悪い素材の打錠に利用できると記載があることから、サンマルト単味で打錠し錠剤を得て、この比較例Bとした。
【0081】
<比較例および実施例の評価>
比較例A-1~A-3の錠剤において、製造直後の錠剤の硬度および摩損度を測定した(表1参照)。
また、実施例1~3および比較例Bの錠剤について、錠剤硬度、摩損度を測定した。
錠剤硬度は、錠剤硬度計SmartTest50ST-50(フロイント産業株式会社製)を用い、各錠剤20錠の平均値で評価した。
摩損度は、錠剤摩損度試験器(富山産業株式会社製:TFT-120)25rpm、15分(試料質量10g)で測定した。
崩壊時間は、錠剤崩壊試験器NT-610(富山産業株式会社製)を用い、水を試験液として行い、6錠で評価した。
錠剤水分は、赤外水分計(株式会社ケット科学研究所製:FD-600-2)を用いて、60℃、20分(試料質量10g)で測定し、評価した。
【0082】
各試験結果から比較例A-1~3では、長命草粉末の含有量が低い比較例A-1の錠剤硬度が高く(7.22kgf)、比較例A-2および比較例A-3の長命草粉末含量10.0、18. 8%で、錠剤硬度は約6kgf程度であった。
このことから、長命草粉未の含有量が10%以上で錠剤硬度への影響、すなわち硬度の低下がみられると思われる。
【0083】
また、実施例においては、実施例2では、錠剤硬度が8. 33kgfで、比較例Bは、錠剤硬度3. 45kgfであった。
実施例2は、比較例Bに比べて錠剤硬度が約2倍以上高い値を示した。
【0084】
この結果から実施例1と実施例2は、同一処方であるが、第二改質工程において、顆粒の乾式混合による表面改質を、微粒シリカゲルと粉末マルトースとショ糖脂肪酸エステルのそれぞれの成分ごとに実施するか、これら3種の成分を予めに混合し混合末とした後に実施するかで、錠剤硬度の結果が大きく異なることがわかる。
これは、微粒シリカゲルと粉末マルトースとショ糖脂肪酸エステルの全成分を予め混合することで、粉末マルトースが十分に分散し、ウコンの精油成分および長命草の脂溶性成分が効果的に顆粒からの滲み出しを抑制したと考えられる。
【0085】
<実施例と比較例Bの経時変化試験結果>
次に、上述した各実施例および比較例Bの各錠剤の錠剤硬度、摩損度、崩壊時間および錠剤水分の各経時変化を比較した。各試験結果を表3~6に示す。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
実施例1~3および比較例Bの錠剤について、それぞれをアルミ袋に入れ、ヒートシールした密封状態とし、40℃・75RH%で保存した。
それぞれに密封保存された錠剤を、1週問後に開封し取り出したものと、1ヶ月後に開封し取り出したものとで、それらの錠剤硬度および摩損度を測定した。各測定結果を表3に示す。なお、錠剤を取り出した後、再保管としてアルミ袋はヒートシールした。
【0091】
これら試験結果から、表3および表4に示すように、比較例B、実施例1および実施例2共に、経時的には錠剤硬度の低下と摩損度の増大傾向がみられた。
これは長命草に含まれる脂溶性成分とウコン類の精油の経時的な滲み出しによるものと思われる。
具体的には、1週間保存後で、比較例Bで開始時の約20%程度の錠剤硬度の低下が、一方、実施例1および突施例2では比較例Bの1/2の約10%程度の低下に留まっている。
1ヶ月保存後では、実施例1で錠剤硬度が試験開始時から約5%程度(4. 96%)の低下であった。また、実施例2では錠剤硬度が試験開始時から約10%程度(10. 7%)と、1週間で開始時の約10%程度の錠剤硬度の低下はみられたが、その後、1ヶ月では、5~10%程度の低下とさらなる経時的な錠剤硬度の低下はみられていない。
【0092】
したがって、実施例1および実施例2において、1週間保存後で約10%程度の錠剤硬度の低下はみられるものの、その後、1ヶ月保存後では、錠剤硬度の低下が5~10%程度であることから、ウコンの精油成分および長命草の脂溶性成分による錠剤硬度への影響は抑制できているものと考えられる。
なお、比較例Bでは、試験開始時からの1ヶ月後錠剤硬度が10%(13.3%)を少し上回る程度であった。
【0093】
また、摩損度については、比較例Bが1ヶ月保存後で約0.3%の増大に対して実施例1および実施例2では0.1%程度の増大であった。この摩損度の経時的な増大に関しても、各実施例では、比較例Bに比べて、粉末マルトース(サンマルト:登録商標)に微粒シリカゲル(サイロページ:登録商標)およびショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル:商品名)を添加し、表面改質することで低く抑えられていることがわかる。
また、実施例3については、1週間保存後で0.02%の低下はみられたが、1ヶ月保存後で0.01%の増大と経時的にも大きな変化はみられなかった。
【0094】
崩壊時間については、表5に示すように、1ヶ月後の経過試験において、比較例Bでは若干短縮するものの、実施例1~3のそれぞれは約15分程度で崩壊している。各実施例においては、微粒シリカゲルおよびショ糖脂肪酸エステルを添加し表面改質したことが要因と考えられる。
すなわち、錠剤として製した後、その形状を硬度とともに保ちながら、製造直後と1ヶ月後とで崩壊性が変わりなく、上述した硬度や摩損度とともに、錠剤としての役割である形状や外観の維持と服用性、服用の際の崩壊性を保つことができ、品質を管理可能と考えられる。
【0095】
また、錠剤水分については、表6に示すように、1ヶ月経過後においてもそれぞれ約2%を保ち、経時的にも変化がみられない。すなわち、製造直後と1ヶ月後の錠剤において、水分の低下を起こさず、安定していることがわかる。
【0096】
なお、これら実施例1~3の結果から、実施例3の錠剤硬度が最も高く、好ましい結果が得られたが、処方の簡素化や素材の原料費などの組み合わせから実施例1や実施例2のような組み合わせが良いと考えられる。また、紫ウコン、熱帯ウコン、秋ウコン、春ウコンの4種のウコンは、栽培による収穫量などを勘案して、それぞれの配合比率で4種ウコンの全量を78.3重量%とし、長命草を15.7重量%として、これら有用な精油成分や脂溶性成分を含んだ粉末を94重量%という配合量を大きくすることができ、本発明出願人による従来品において秋ウコン34.1重量%、紫ウコン11.4重量%でウコン総量として45.5重量%のものと比べてもウコン含量が1.7倍の高配合量であり、さらに、6.45~9.86kgfという十分な硬度を備え、0.04~0.09%という低い摩耗度の錠剤を得ることができた。
【要約】 (修正有)
【課題】ウコンに含まれる有用な成分である精油成分と、長命草に含まれる脂溶性成分などの有用な成分を活かし、これらを含有する錠剤を得ることができる製造方法を提供するとともに、流通時などの際に容易に型崩れや損壊などを起こさない強度を有する長命草とウコンとを含有する錠剤の製造方法を提供する。
【解決手段】長命草と、4種のウコンである紫ウコン、熱帯ウコン、秋ウコンおよび春ウコンを含有した錠剤の製造方法において、長命草の粉末と4種の各ウコンの粉末との配合比率を、長命草2:紫ウコン4:熱帯ウコン3:秋ウコン2:春ウコン1として、セルロース誘導体水溶液を用いて湿式コーティングにより表面改質する第一改質工程と、表面改質された各粉末に、粉末マルトースと、微粒シリカゲルと、ショ糖脂肪酸エステルとを乾式混合して、表面改質する第二改質工程と、を含む。
【選択図】なし