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特許7381806積層部品、及びその製造方法、並びに、積層体、及びその製造方法
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  • 特許-積層部品、及びその製造方法、並びに、積層体、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】積層部品、及びその製造方法、並びに、積層体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/04 20060101AFI20231108BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20231108BHJP
   C04B 41/83 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B32B15/04 B
H01L23/36 D
C04B41/83 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023511868
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2022034810
(87)【国際公開番号】W WO2023054031
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2021157493
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】南方 仁孝
(72)【発明者】
【氏名】金子 政秀
(72)【発明者】
【氏名】吉松 亮
(72)【発明者】
【氏名】坂口 真也
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7217391(JP,B1)
【文献】国際公開第2015/022956(WO,A1)
【文献】特開2012-114314(JP,A)
【文献】特開2005-235968(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172345(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
H01L
C04B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、前記金属板と接着された樹脂充填板と、前記樹脂充填板上に設けられた半硬化樹脂層と、からなり、
前記樹脂充填板は、多孔質の窒化物焼結板と、前記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂と、を含み、
前記半硬化樹脂層は熱硬化性樹脂を含有する、積層部品。
【請求項2】
前記半硬化樹脂層の厚さが65μm以下である、請求項1に記載の積層部品。
【請求項3】
前記窒化物焼結板の厚さが1.0mm以下である、請求項1又は2に記載の積層部品。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂の硬化率が60%以下である、請求項1又は2に記載の積層部品。
【請求項5】
前記硬化樹脂の硬化率が、前記熱硬化性樹脂の硬化率よりも大きい、請求項1又は2に記載の積層部品。
【請求項6】
前記硬化樹脂の硬化率が90%以上である、請求項1又は2に記載の積層部品。
【請求項7】
金属板と、前記金属板上と接着された樹脂充填板と、からなり、
前記樹脂充填板は、多孔質の窒化物焼結板と、前記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂と、を含み、
前記硬化樹脂の硬化率が90%以上である、積層体。
【請求項8】
多孔質の窒化物焼結板と、前記窒化物焼結板の気孔に充填された熱硬化性樹脂組成物の半硬化物とを含む樹脂含浸体を、金属板上に配置し、前記半硬化物を加熱することによって接着し、前記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂を含む樹脂充填板と、前記金属板とからなる積層体を調製する第一工程と、
前記樹脂充填板の前記金属板側とは反対側に、熱硬化性樹脂を含有する半硬化樹脂層を設ける第二工程と、を有する、積層部品の製造方法。
【請求項9】
前記第二工程が、支持体と、前記支持体上に設けられた半硬化樹脂層とを備える積層フィルムを用意し、前記積層フィルムの前記半硬化樹脂層を前記樹脂充填板の前記金属板側とは反対側に転写して、半硬化樹脂層を設ける工程である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
多孔質の窒化物焼結板と、前記窒化物焼結板の気孔に充填された熱硬化性樹脂組成物の半硬化物とを含む樹脂含浸体を、金属板上に配置し、前記半硬化物を加熱することによって接着し、前記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂を含む樹脂充填板と、前記金属板とからなる積層体を調製する工程を、有し、
前記硬化樹脂の硬化率が90%以上である、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層部品、及びその製造方法、並びに、積層体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、及びCPU等の部品においては、使用時に発生する熱を効率的に放熱することが求められる。このような要請から、従来、電子部品を実装するプリント配線板の絶縁層の高熱伝導化を図ったり、電子部品又はプリント配線板を、電気絶縁性を有する熱インターフェース材(Thermal Interface Materials)を介してヒートシンクに取り付けたりすることが行われてきた。このような絶縁層及び熱インターフェース材には、放熱部材として、樹脂と窒化ホウ素等のセラミックとで構成される複合シートが用いられる。
【0003】
このような複合シートとして、多孔性のセラミックス板(例えば、窒化物焼結板)に樹脂を含浸させた複合シートが検討されている(例えば、特許文献1参照)。また、回路基板と樹脂含浸窒化ホウ素焼結体とを有する積層体において、窒化ホウ素焼結体を構成する一次粒子と回路基板とを直接接触させて、積層体の熱抵抗を低減し、放熱性を改善することも検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上述のような複合シート(樹脂充填板ともいう)は、比較的薄く形成されるものであり、それ自体の機械的強度は必ずしも高くない。そこで、金属板にあらかじめ複合シートを接着しておくことが検討されている。特許文献3には、非酸化物セラミックス焼結体に、所定の熱硬化性樹脂組成物を含浸させたセラミックス樹脂複合体と、該セラミックス樹脂複合体の少なくとも一つの面に仮接着した状態にある金属板とを含み、前記セラミックス樹脂複合体と前記金属板とのせん断接着強度が0.1MPa以上1.0MPa以下であるセラミックス金属仮接着体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/196496号
【文献】特開2016-103611号公報
【文献】国際公開第2019/172345号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようなセラミックス金属仮接着体の場合、金属板とセラミックス樹脂複合体とが仮接着状態であり、位置ずれなどが生じ得るため、輸送、及び再加工等の際には注意を要する場合がある。そこで、金属板と、複合シートを仮接着し、さらに加熱等し、複合シート中の樹脂によって金属板との接合をより十分なものとすることで、ハンドリング性を更に向上させることが考えられる。ただし、この場合、金属板側とは反対側の面において他部品との接着性等が損なわれ得る。
【0007】
本開示は、他部品との接着性を有し、且つハンドリング性に優れる積層部品及びその製造方法を提供することを目的とする。本開示はまた、上述のような積層部品の製造に適する積層体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の[1]~[12]を提供する。
【0009】
[1]
金属板と、樹脂充填板と、半硬化樹脂層と、をこの順に備え、
前記樹脂充填板は、多孔質の窒化物焼結板と、前記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂と、を含み、
前記半硬化樹脂層は熱硬化性樹脂を含有する、積層部品。
[2]
前記半硬化樹脂層の厚さが65μm以下である、[1]に記載の積層部品。
[3]
前記窒化物焼結板の厚さが1.0mm以下である、[1]又は[2]に記載の積層部品。
[4]
前記熱硬化性樹脂の硬化率が60%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層部品。
[5]
前記硬化樹脂の硬化率が、前記熱硬化性樹脂の硬化率よりも大きい、[1]~[4]のいずれかに記載の積層部品。
[6]
前記硬化樹脂の硬化率が90%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の積層部品。
[7]
金属板と、樹脂充填板と、を備え、
前記樹脂充填板は、多孔質の窒化物焼結板と、前記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂と、を含む、積層体。
[8]
前記硬化樹脂の硬化率が90%以上である、[7]に記載の積層体。
[9]
多孔質の窒化物焼結板と、前記窒化物焼結板の気孔に充填された熱硬化性樹脂組成物の半硬化物とを含む樹脂含浸体を、金属板上に配置し、前記半硬化物を加熱することによって、前記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂を含む樹脂充填板と、前記金属板とを備える積層体を調製する第一工程と、
前記樹脂充填板の前記金属板側とは反対側に、熱硬化性樹脂を含有する半硬化樹脂層を設ける第二工程と、を有する、積層部品の製造方法。
[10]
前記第二工程が、支持体と、前記支持体上に設けられた半硬化樹脂層とを備える積層フィルムを用意し、前記積層フィルムの前記半硬化樹脂層を前記樹脂充填板の前記金属板側とは反対側に転写して、半硬化樹脂層を設ける工程である、[9]に記載の製造方法。
[11]
多孔質の窒化物焼結板と、前記窒化物焼結板の気孔に充填された熱硬化性樹脂組成物の半硬化物とを含む樹脂含浸体を、金属板上に配置し、前記半硬化物を加熱することによって、前記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂を含む樹脂充填板と、前記金属板とを備える積層体を調製する工程を、有する、積層体の製造方法。
[12]
前記硬化樹脂の硬化率が90%以上である、[11]に記載の製造方法。
【0010】
本開示の一側面は、金属板と、樹脂充填板と、半硬化樹脂層と、をこの順に備え、上記樹脂充填板は、多孔質の窒化物焼結板と、上記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂と、を含み、上記半硬化樹脂層は熱硬化性樹脂を含有する、積層部品を提供する。
【0011】
上記積層部品は、金属板と、樹脂充填板とを備え、上記樹脂充填板に含まれる樹脂が硬化されていることから、金属板との相対位置が固定されており、ハンドリング性に優れる。また上記積層部品は、半硬化樹脂層を備えることから、半硬化樹脂層を加熱等して更に硬化させることが可能である。これを利用することによって、他部品との接着性も有する。
【0012】
上記半硬化樹脂層の厚さが65μm以下であってよい。半硬化樹脂層の厚さの上限値を上記範囲内とすることによって、他部品を接着して得られる構造体において、他部品と窒化物焼結板との間に形成される硬化樹脂層の厚さを低減することにつながり、上記構造体における放熱性をより向上させることができる。
【0013】
上記窒化物焼結板の厚さが1.0mm以下であってよい。本開示によれば、樹脂充填板の脆性への懸念を低減し得ることから、機械的強度を向上させるための厚さを確保する必要は必ずしもなく、従前と比較して、厚さを小さなものとすることができ、製品の製造コストを低減することができる。
【0014】
上記熱硬化性樹脂の硬化率が60%以下であってよい。熱硬化性樹脂の硬化率の上限値を上記範囲内とすることで、他部品との接着の際に再溶融させ、樹脂に適度な流動性を持たせ、他部品の表面の微細な凹凸に十分に浸透すること等が可能になることから、他部品との接着性をより十分なものとすることができる。
【0015】
上記硬化樹脂の硬化率が、上記熱硬化性樹脂の硬化率よりも大きくてもよい。樹脂充填板を構成する硬化樹脂の硬化率が、半硬化樹脂層に含まれる熱硬化性樹脂の硬化率よりも大きいことで、本開示の効果をより顕著に得ることができる。
【0016】
上記硬化樹脂の硬化率が90%以上であってよい。上記硬化樹脂の硬化率の下限値が上記範囲内であることで、金属板と樹脂充填板との位置ずれ等をより十分に抑制でき、積層部品のハンドリング性を更に向上させることができる。
【0017】
本開示の一側面は、金属板と、樹脂充填板と、を備え、上記樹脂充填板は、多孔質の窒化物焼結板と、上記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂と、を含む、積層体を提供する。
【0018】
上記積層体は、金属板と、樹脂充填板とを備え、上記樹脂充填板に含まれる樹脂が硬化されていることから、金属板との相対位置が固定されており、ハンドリング性に優れる。そして、ハンドリング性に十分に優れることから、当該積層体は、上述の積層部品の製造に適する。
【0019】
上記硬化樹脂の硬化率が90%以上であってよい。上記硬化樹脂の硬化率の下限値が上記範囲内であることで、金属板と樹脂充填板との位置ずれ等をより十分に抑制でき、得られる積層部品のハンドリング性を更に向上させることができる。
【0020】
本開示の一側面は、多孔質の窒化物焼結板と、上記窒化物焼結板の気孔に充填された熱硬化性樹脂組成物の半硬化物とを含む樹脂含浸体を、金属板上に配置し、上記半硬化物を加熱することによって、上記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂を含む樹脂充填板と、上記金属板とを備える積層体を調製する第一工程と、上記樹脂充填板の上記金属板側とは反対側に、熱硬化性樹脂を含有する半硬化樹脂層を設ける第二工程と、を有する、積層部品の製造方法を提供する。
【0021】
上記積層部品の製造方法は、第一工程において、樹脂含浸体と金属板とを接着しつつ、樹脂含浸体中の樹脂を硬化させ硬化樹脂とすることによって、金属板と樹脂充填板との相対的な位置関係を十分に固定することができる。次に、第二工程によって、樹脂充填板の金属板側とは反対側に半硬化樹脂層を設けることによって、他部品との接着性も確保できる。これによって、上述の積層部品を製造することができる。
【0022】
上記第二工程が、支持体と、上記支持体上に設けられた半硬化樹脂層とを備える積層フィルムを用意し、上記積層フィルムの上記半硬化樹脂層を上記樹脂充填板の上記金属板側とは反対側に転写して、半硬化樹脂層を設ける工程であってよい。第二工程が、予め支持体上に形成された半硬化樹脂層を転写することによって、樹脂充填板上に半硬化樹脂層を形成する工程であることによって、半硬化樹脂層における熱硬化性樹脂の硬化率の調整がより容易なものとなり、半硬化樹脂層における硬化率のバラつきを抑制でき、積層部品の製造をより容易なものとすることができる。
【0023】
本開示の一側面は、多孔質の窒化物焼結板と、上記窒化物焼結板の気孔に充填された熱硬化性樹脂組成物の半硬化物とを含む樹脂含浸体を、金属板上に配置し、上記半硬化物を加熱することによって、上記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂を含む樹脂充填板と、上記金属板とを備える積層体を調製する工程を、有する、積層体の製造方法を提供する。
【0024】
上記積層体の製造方法は、上述の工程において、樹脂含浸体と金属板とを接着しつつ、樹脂含浸体中の樹脂を硬化させ硬化樹脂とすることによって、金属板と樹脂充填板との相対的な位置関係を十分に固定することができる。これによって、上述の積層体を製造することができる。
【0025】
上記硬化樹脂の硬化率が90%以上であってよい。上記硬化樹脂の硬化率の下限値が上記範囲内であることで、金属板と樹脂充填板との位置ずれ等をより十分に抑制することができることから、得られる積層部品のハンドリング性を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、他部品との接着性を有し、且つハンドリング性に優れる積層部品及びその製造方法を提供できる。本開示によればまた、上述のような積層部品の製造に適する積層体及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、積層部品の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、場合によって図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合によって重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0030】
積層部品の一実施形態は、金属板と、樹脂充填板と、半硬化樹脂層と、をこの順に備える。上記樹脂充填板は、多孔質の窒化物焼結板と、上記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂と、を含む。上記半硬化樹脂層は熱硬化性樹脂を含有する。
【0031】
図1は、積層部品の一例を示す模式図である。積層部品10は、積層体6と、積層体6上に設けられた半硬化樹脂層8とを備える。積層体6は、金属板2と、金属板2上に設けられた樹脂充填板4とを有する。半硬化樹脂層8は、上記積層体6を構成する樹脂充填板4の金属板2側とは反対側に設けられている。図1では、半硬化樹脂層8が樹脂充填板4の全面に形成される例で示したが、他部品との接着性を確保できればよく、必ずしも前面に形成されなくてもよい。すなわち、半硬化樹脂層8は、樹脂充填板4の金属板2側とは反対側の主面上の少なくとも一部に設けられてもよい。
【0032】
金属板2の材質は、例えば、銅、及びアルミニウム等であってよく、銅であってよい。金属板2は、回路等のパターンを有してもよいが、半硬化樹脂層8の支持の観点から、パターンを有しないことが望ましい。
【0033】
金属板2の厚さの下限値は、例えば、0.030mm以上、0.050mm以上、0.080mm以上、0.090mm以上、0.10mm以上、0.15mm以上、0.50mm以上、又は0.8mm以上であってよい。金属板2の厚さの下限値が上記範囲内であることで、積層体6及び積層部品10のハンドリング性をより向上させることができる。金属板2の厚さの上限値は、例えば、10.0mm以下、9.0mm以下、8.0mm以下、7.0mm以下、6.0mm以下、5.0mm以下、4.0mm以下、3.0mm以下、又は2.0mm以下であってよい。金属板2の厚さは上述の範囲内で調整してよく、例えば、0.030~10.0mm、0.080~10.0mm、0.15~5.0mm、0.505~4.0mm、又は0.80~2.0mmであってよい。
【0034】
樹脂充填板4は、多孔質の窒化物焼結板と、窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂とを含み、上記窒化物焼結板及び上記硬化樹脂からなってよい。樹脂充填板4における硬化樹脂の体積比率は、樹脂充填板4の全体積を基準として、例えば、30~60体積%、又は35~55体積%であってよい。樹脂充填板4における多孔質の窒化物焼結板を構成する窒化物粒子の体積比率は、樹脂充填板4の全体積を基準として、例えば、40~70体積%、又は45~65体積%であってよい。このような体積比率の樹脂充填板4は、優れた機械的強度を発揮し得ることから、得られる積層体6及び積層部品10のハンドリング性を更に向上し得る。
【0035】
多孔質の窒化物焼結板としては、例えば、窒化ホウ素焼結板等が挙げられる。窒化物焼結板は、窒化物の一次粒子同士が焼結して構成される窒化物粒子と気孔とを含有する。窒化物焼結板の気孔のメジアン細孔径は、例えば、6.0μm以下、5.0μm以下、4.0μm以下、又は3.5μm以下であってよい。このような窒化物焼結板は、気孔のサイズが小さいことから、窒化物粒子の粒子同士の接触面積を十分に大きくすることができる。したがって、熱伝導率を高くすることができる。窒化物焼結板の気孔のメジアン細孔径は、例えば、0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、又は1.5μm以上であってよい。このような窒化物焼結板は、接着する際に加圧すると十分に変形できるため、金属板2との密着性に優れる。窒化物焼結板の気孔のメジアン細孔径は上述の範囲内で調整してよく、例えば、0.3~6.0μm、又は1.5~3.5μmであってよい。金属板2の厚さは、主面に直交する方向に沿って測定され、厚さが一定ではない場合、任意の10箇所を選択して厚さの測定を行い、その平均値が上述の範囲であればよい。
【0036】
窒化物焼結板の気孔のメジアン細孔径は、以下の手順で測定することができる。まず、積層部品(又は積層体)を加熱して半硬化樹脂層及び硬化樹脂を除去する。そして、水銀ポロシメーターを用い、0.0042MPaから206.8MPaまで圧力を増やしながら窒化物焼結板を加圧したときの細孔径分布を求める。横軸を細孔径、縦軸を累積細孔容積としたときに、累積細孔容積が全細孔容積の50%に達するときの細孔径がメジアン細孔径である。水銀ポロシメーターとしては、例えば、株式会社島津製作所製のものを用いることができる。
【0037】
窒化物焼結板の気孔率、すなわち、窒化物焼結板における気孔の体積(V1)の比率は、30~65体積%であってよく、40~60体積%であってよい。気孔率が大きくなり過ぎると窒化物焼結板の強度が低下する傾向にある。一方、気孔率が小さくなり過ぎると樹脂含浸体が金属板2と接着される際にしみ出す樹脂が少なくなる傾向にある。
【0038】
気孔率は、窒化物焼結板の体積及び質量から、かさ密度[B(kg/m)]を算出し、このかさ密度と窒化物の理論密度[A(kg/m)]とから、下記式(1)によって求めることができる。窒化物焼結板は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、又は窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一種を含んでよい。窒化ホウ素の場合、理論密度Aは2280kg/mである。窒化アルミニウムの場合、理論密度Aは3260kg/mである。窒化ケイ素の場合、理論密度Aは3170kg/mである。
気孔率(体積%)=[1-(B/A)]×100 … 式(1)
【0039】
窒化物焼結板が窒化ホウ素焼結体である場合、かさ密度Bは、800~1500kg/m、又は1000~1400kg/mであってもよい。かさ密度Bが小さくなり過ぎると窒化物焼結板の強度が低下する傾向にある。また、かさ密度Bの上限値を上記範囲内とすることによって、硬化樹脂の充填量をより十分なものとし、樹脂充填板4と金属板2との接着性をより良好なものとすることができる。
【0040】
窒化物焼結板の厚さは、例えば、10.0mm以下、5.0mm以下、2.0mm以下、1.5mm以下、1.0mm以下、又は0.8mm以下であってもよい。窒化物焼結板の厚さの下限は、例えば、0.1mm以上、0.2mm以上、又は0.3mm以上であってよい。窒化物焼結板の厚さは上述の範囲内で調整してよく、例えば、0.1~10.0mm、0.2~1.5mm、0.2~1.0mm、又は0.3~1.0mm以下であってよい。窒化物焼結板の厚さは、主面に直交する方向に沿って測定され、厚さが一定ではない場合、任意の10箇所を選択して厚さの測定を行い、その平均値が上述の範囲であればよい。
【0041】
樹脂充填板4に含まれる硬化樹脂は、主剤及び硬化剤を含む樹脂組成物の硬化を進行させたものである。硬化樹脂の硬化率は、半硬化樹脂層8に含まれる熱硬化性樹脂の硬化率よりも大きくてもよい。上記硬化樹脂の硬化率は、例えば、90%以上、93%以上、95%以上、又は98%以上であってよく、100%(すなわち、樹脂組成物を完全硬化させたもの)であってもよい。換言すれば、樹脂充填板4に含まれる硬化樹脂は、主剤及び硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物(Cステージ)であってもよい。硬化物は、樹脂組成物の硬化反応が完全に進行したものである。なお、樹脂組成物の硬化反応が一部進行したものは、半硬化物(Bステージ)である。半硬化物は、その後の硬化処理によって、更に硬化させることができる。
【0042】
上記硬化率は、示差走査熱量計を用いた測定によって決定することができる。半硬化物の硬化率は、示差走査熱量計を用いた測定によって決定することができる。まず、未硬化の状態の樹脂組成物2mgを完全に硬化させた際に生じる単位質量当たりの発熱量Qを測定する。そして、複合シートが備える樹脂から採取したサンプル10mgを同様に昇温させて、完全に硬化させた際に生じる単位質量当たりの発熱量Rを求める。樹脂中に熱硬化性を有する成分がc(質量%)含有されているとすると、下記式(A)によって複合シートに含浸している熱硬化性樹脂組成物の硬化率が求められる。なお、樹脂が完全に硬化したか否かは、示差走査熱量測定によって得られる発熱曲線において、発熱が終了することで確認することができる。
半硬化物の硬化率(%)={1-[(R/c)×100]/Q}×100 … 式(A)
【0043】
半硬化樹脂層8は、熱硬化性樹脂を含み、主剤及び硬化剤を含む樹脂組成物を半硬化させることによって形成される。これによって、積層部品10は他部品との接着性を発揮し得る。半硬化樹脂層8は、熱硬化性樹脂の半硬化物で構成されいてもよい。
【0044】
半硬化樹脂層8は、加熱によって溶融可能であり、粘性を帯び得る。半硬化樹脂層8の100℃におけるせん断粘度の下限値は、例えば、500mPa・s以上、700mPa・s以上、900mPa・s以上、又は1000mPa・s以上であってよい。上記せん断粘度の下限値が上記範囲内であることで、半硬化樹脂層8の常温における粘性が小さく、ハンドリングにより優れたものとすることができる。半硬化樹脂層8の100℃におけるせん断粘度の上限値は、例えば、8000mPa・s以下、7000mPa・s以下、6000mPa・s以下、又は5000mPa・s以下であってよい。上記せん断粘度の上限値が上記範囲内であることで、半硬化樹脂層8の接着性をより向上させることができ、金属板等との接着をより容易なものとする。半硬化樹脂層8の100℃におけるせん断粘度は上述の範囲内で調整することができ、例えば、500~8000mPa・s、700~6000mPa・s、又は1000~5000mPa・sであってよい。
【0045】
本明細書に記載の100℃におけるせん断粘度は、レオメーター等の装置によって樹脂にせん断力を加えた際の応力で測定される値を意味する。具体的には、まず回転式レオメーターによって、ステージを100℃に加温する。その後、測定サンプルとなる硬化樹脂をステージ上に置き、測定サンプルの上部から、ステージ側から1mmの高さになるまで、25mmφのパラレルプレートを装着したシャフトをおろす。測定サンプルが溶融し、ステージとパラレルプレートとの間に樹脂が満たされているのを確認した後に、せん断速度を10/sとして上記シャフトを回転させた際の応力を決定し、当該応力の値を用いてせん断粘度を計算する。回転式レオメーターとしては、例えば、Anton paar社製の「MCR-92」(製品名)等を用いることができる。
【0046】
半硬化樹脂層8の厚さの上限値は、例えば、65μm以下、55μm以下、45μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、18μm以下、又は16μm以下であってよい。半硬化樹脂層8の厚さの上限値を上記範囲内とすることによって、他部品を接着して得られる構造体において、他部品と窒化物焼結板との間に形成される硬化樹脂層の厚さを低減することにつながり、上記構造体における放熱性をより向上させることができる。半硬化樹脂層8の厚さの上限値を上記範囲内とすることによって、上記構造体を製造する際に加える熱処理等の時間を短時間化することもでき、製造コストの低減が可能であり、また製造過程において構造体が熱に曝されることによるダメージを低減し得る。また、半硬化樹脂層8の厚さの上限値を上記範囲内とすることによって、金属板等の他部品との接着の際に、樹脂が製品側部に流れ出すことを抑制し、積層基板や放熱部材の製造の際に周囲に不必要な樹脂が付着することを抑制することができる。半硬化樹脂層8の厚さの下限値は、例えば、4μm以上、6μm以上、8μm以上、10μm以上、又は12μm以上であってよい。半硬化樹脂層8の厚さの下限値を上記範囲内とすることで、積層部品10の他部品との接着性をより向上させることができる。半硬化樹脂層8の厚さは上述の範囲内で調整することができ、例えば、4~65μm、4~45μm、4~35μm、8~35μm、10~20μm、又は12~16μmであってよい。
【0047】
半硬化樹脂層8における熱硬化性樹脂の硬化率の上限値は、例えば、60%以下、55%以下、又は50%以下であってよい。熱硬化性樹脂の硬化率の上限値を上記範囲内とすることで、他部品との接着の際に再溶融させ、樹脂に適度な流動性を持たせ、他部品の表面の微細な凹凸に十分に浸透すること等が可能になることから、他部品との接着性をより十分なものとすることができる。半硬化樹脂層8における熱硬化性樹脂の硬化率の下限値は、例えば、15%以上、25%以上、35%以上、38%以上、又は45%以上であってよい。熱硬化性樹脂の硬化率の下限値を上記範囲内とすることで、非加熱条件下においてもべたつきを抑制し、取扱い性をより向上させることができる。半硬化樹脂層8における熱硬化性樹脂の硬化率は上述の範囲内で調整することができ、例えば、15~60%、38~50%、又は45~50%であってよい。半硬化樹脂層8における熱硬化性樹脂の硬化率は、半硬化樹脂層8から採取するサンプルを用いて、樹脂充填板4の硬化樹脂の硬化率を測定する方法と同様にして測定することができる。
【0048】
半硬化樹脂層8は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シアネート樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド樹脂、マレイミド変性樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリフタルアミド、及びポリアセタールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。
【0049】
上述の積層部品10は、熱伝導性及び絶縁性を発揮し得る樹脂充填板を備えることに加えて、他部品との接着性を有し、且つハンドリング性にも優れることから、半硬化樹脂層8を介して他部品(例えば、金属回路等)を接着することによって、例えば、パワーモジュール構造体及びLED発光装置等の部品(例えば、積層基板)として好適に使用できる。積層基板の一実施形態は、金属板と、樹脂充填板と、硬化樹脂層と、金属回路層とを備える。ここで、上記硬化樹脂層は、上述の積層部品10を構成する半硬化樹脂層8の硬化物である。すなわち、上記積層基板は、上述の積層部品10の上記半硬化樹脂層8側の主面上に金属回路層を設け、加熱加圧によって半硬化樹脂層8を硬化させ硬化樹脂層を形成することによって、積層体6と金属回路層とを接着して調製される。
【0050】
上述の積層部品10は、例えば、以下のような方法で製造することができる。積層部品の製造方法の一実施形態は、多孔質の窒化物焼結板と、上記窒化物焼結板の気孔に充填された熱硬化性樹脂組成物の半硬化物とを含む樹脂含浸体を、金属板上に配置し、上記半硬化物を加熱することによって、上記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂を含む樹脂充填板と、上記金属板とを備える積層体を調製する第一工程と、上記樹脂充填板の上記金属板側とは反対側に、熱硬化性樹脂を含有する半硬化樹脂層を設ける第二工程と、を有する。第一工程によって、積層体が調製されることから、第一工程を含む製法を積層体の製造方法ということもできる。
【0051】
第一工程における樹脂含浸体は、市販の樹脂含浸体を用いてもよく、別途調製したものを用いてもよい。樹脂含浸体を調製する場合、樹脂含浸体の調製方法は、多孔質の窒化物焼結板に熱硬化性樹脂組成物を含浸し、加熱することによって、気孔に充填された上記熱硬化性樹脂組成物を半硬化させることによって、半硬化物を含む樹脂含浸体を得る工程を含む方法で調製することができる。
【0052】
窒化物焼結板は、市販の窒化物焼結板を用いてもよく、別途調製したものを用いてもよい。すなわち、窒化物焼結板の調製方法は、窒化物及び焼結助剤を含む原料粉末を成形し成形体を調製して、上記成形体を焼成することで窒化物焼結板を得る工程を更に有してもよい。ここで、成形体は、ブロック状であってもよく、板状であってもよい。成形体がブロック状である場合、焼成によって得られる窒化物焼結体を板状に加工してよい。
【0053】
原料粉末に含まれる窒化物は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一種の窒化物を焼結させたものであってよく、好ましくは窒化ホウ素を含む焼結体であってよく、より好ましくは窒化ホウ素焼結体である。窒化ホウ素を含有する場合、窒化ホウ素は、アモルファス状の窒化ホウ素であってよく、六方晶状の窒化ホウ素であってもよい。窒化物焼結板として窒化ホウ素焼結板を調製する場合、原料粉末として、例えば、平均粒径が0.5~10μmであるアモルファス窒化ホウ素粉末、又は、平均粒径が3.0~40μmである六方晶窒化ホウ素粉末を用いることができる。
【0054】
原料粉末に含まれる焼結助剤は、例えば、酸化イットリウム、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウム等の金属酸化物、炭酸リチウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、炭酸カルシウム、並びにホウ酸等が挙げられる。焼結助剤の配合量は、窒化物及び焼結助剤の合計100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、0.10質量部以上、0.50質量部以上、1.00質量部以上、又は5.00質量部以上であってよい。焼結助剤の配合量は、窒化物及び焼結助剤の合計100質量部に対して、例えば、20.00質量部以下、15.00質量部以下、又は10.00質量部以下であってよい。焼結助剤の配合量を上記範囲内とすることで、窒化物焼結板のメジアン細孔径を後述の範囲に調整し易くなる。焼結助剤の配合量は上述の範囲内で調整してよく、窒化物及び焼結助剤の合計100質量部に対して、例えば、0.01~20.00質量部、又は5.00~20.00質量部であってよい。
【0055】
上記成形体は、上記原料粉末を成形することで調製できる。成形は、一軸加圧で行ってよく、冷間等方加圧(CIP)法で行ってもよく、ドクターブレード法で行ってもよい。成形方法は特に限定されず、金型を用いてプレス成形を行って成形体としてもよい。成形圧力は、例えば、5~350MPaであってよい。成形板とする場合、その厚さは、例えば、2.0mm未満であってよい。ブロック状の窒化物焼結体を調製後に切断して板状とする場合に比べて、焼成前の段階からシート状に成形することによって、加工による材料ロスを低減することができる。したがって、高い歩留まりで窒化物焼結板を製造することができる。
【0056】
上記成形体の焼成温度は、例えば、1600℃以上、1650℃以上、1700℃以上、又は1800℃以上であってよい。上記成形体の焼成温度は、例えば、2200℃以下、2100℃以下、又は2000℃以下であってよい。焼成温度は上述の範囲内で調整してよく、例えば、1600~2200℃、1700~2100℃、又は1800~2100℃であってよい。焼成時間は、例えば、1時間以上、2時間以上、3時間以上、又は5時間以上であってよく、また30時間以下、又は20時間以下であってよい。焼成時間は上述の範囲内で調整してよく、例えば、2~20時間、3~15時間、又は4~10時間であってよい。焼成時の雰囲気は、例えば、窒素、ヘリウム、及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下であってよい。
【0057】
焼成には、例えば、バッチ式炉及び連続式炉等を用いることができる。バッチ式炉としては、例えば、マッフル炉、管状炉、及び雰囲気炉等を挙げることができる。連続式炉としては、例えば、ロータリーキルン、スクリューコンベア炉、トンネル炉、ベルト炉、プッシャー炉、及び大形連続炉等を挙げることができる。このようにして、窒化物焼結体又は窒化物焼結板を得ることができる。
【0058】
上述の焼成後に得られる窒化物焼結体は、ブロック状であってもよい。窒化物焼結体がブロック状である場合、所定の厚さ(例えば、1.0mm以下)となるように加工する切断工程を行ってもよい。切断工程では、窒化物焼結体を、例えばワイヤーソーを用いて切断する。ワイヤーソーは、例えば、マルチカットワイヤーソー等であってよい。このような切断工程によって、例えば、厚さが1.0mm以下の窒化物焼結板を得ることができる。
【0059】
樹脂含浸体を調製する際に用いる熱硬化性樹脂組成物は、後述する半硬化樹脂層を設ける際に用いる熱硬化性樹脂組成物の説明を適用することができる。樹脂充填板を構成する硬化樹脂を形成するための熱硬化性樹脂組成物と、半硬化樹脂層を設ける際に用いる熱硬化性樹脂組成物とは、同一であっても、異なってもよい。
【0060】
窒化物焼結板に熱硬化性樹脂組成物を含浸させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、含浸装置などを用いることもできる。
【0061】
窒化物焼結板に熱硬化性樹脂組成物を含浸する際の熱硬化性樹脂組成物の粘度の上限値は、例えば、440mPa・s以下、390mPa・s以下、又は340mPa・s以下であってよい。熱硬化性樹脂組成物の粘度を低くすることによって、熱硬化性樹脂組成物の窒化物焼結板への含浸を十分に促進することができる。窒化物焼結板に熱硬化性樹脂組成物を含浸する際の熱硬化性樹脂組成物の粘度の下限値は、例えば、5mPa・s以上、10mPa・s以上、15mPa・s以上、又は20mPa・s以上であってよい。熱硬化性樹脂組成物の粘度に下限を設けることによって、一旦気孔内に含浸した熱硬化性樹脂組成物が気孔から流出することをより十分に抑制することができる。窒化物焼結板に熱硬化性樹脂組成物を含浸する際の熱硬化性樹脂組成物の粘度は上述の範囲内で調整してよく、例えば、5~440mPa・s、又は10~340mPa・sであってよい。熱硬化性樹脂組成物の粘度は、モノマー成分を一部重合して調整してもよく、溶剤を加えて調整してもよい。
【0062】
上述の熱硬化性樹脂組成物の上記粘度は、窒化物焼結板に熱硬化性樹脂組成物を含浸する際の熱硬化性樹脂組成物の温度(T1)における粘度である。この粘度は、回転式粘度計を用いて、剪断速度が10(1/秒)、温度(T1)の下で測定される値である。したがって、温度T1を変えることによって、窒化物焼結板に熱硬化性樹脂組成物を含浸する際の粘度を調節してもよい。
【0063】
窒化物焼結板に熱硬化性樹脂組成物を含浸する際の温度(T1)は、例えば、熱硬化性樹脂組成物を半硬化する温度(T2)以上、且つ温度T3(=T2+20℃)未満であってよい。温度(T2)は、例えば、80~140℃であってよい。窒化物焼結板への熱硬化性樹脂組成物の含浸は、加圧下で行ってよく、減圧下で行ってもよい。含浸する方法は特に限定されず、熱硬化性樹脂組成物中に窒化物焼結板を浸漬してもよいし、窒化物焼結板の表面に熱硬化性樹脂組成物を塗布することで行ってもよい。
【0064】
窒化物焼結板への熱硬化性樹脂組成物の含浸は、大気圧下で行ってよく、また減圧条件下及び加圧条件下のどちらで行ってもよく、減圧条件下での含浸と、加圧条件下での含浸とを組み合わせて行ってもよい。減圧条件下で含浸を実施する場合における含浸装置内の圧力は、例えば、1000Pa以下、500Pa以下、100Pa以下、50Pa以下、又は40Pa以下であってよい。加圧条件下で含浸を実施する場合における含浸装置内の圧力は、例えば、1MPa以上、3MPa以上、6MPa以上、10MPa以上、又は30MPa以上であってよい。
【0065】
窒化物焼結板における細孔のメジアン細孔径を調整することによって、毛細管現象による熱硬化性樹脂組成物の含浸を促進し、硬化樹脂の充填率を調整してもよい。このような観点から、窒化物焼結板のメジアン細孔径は、例えば、0.3~6.0μm、0.5~5.0μm、又は1.0~4.0μmであってもよい。
【0066】
気孔に充填された上記熱硬化性樹脂組成物を半硬化させる際の加熱温度は、熱硬化性樹脂組成物の成分及び組成等に応じて調整可能であり、例えば、80~130℃であってよい。半硬化工程における上記加熱処理は、大気圧下、又は加圧条件下で行ってよい。
【0067】
市販の樹脂含浸体又は上述のようにして調製された樹脂含浸体を用意し、次に、これを金属板上に配置する。その後、樹脂含浸体を構成する上記半硬化物を加熱することによって、上記窒化物焼結板の気孔に充填された硬化樹脂を含む樹脂充填板と、上記金属板とを備える積層体を調製する。
【0068】
第一工程では、樹脂含浸体における半硬化物の硬化をさらに進行させ、その硬化率を例えば、90%以上としてよい。熱硬化性樹脂(又は必要に応じて併用される硬化剤)の種類に応じて、加熱、及び/又は光照射によって、硬化を進行させることができる。
【0069】
半硬化物の硬化を進行させるために、加熱によって半硬化物を硬化させる場合の加熱温度は、例えば、100~200℃、110~190℃、120~180℃、又は130℃超180℃以下であってよい。こうして得られる硬化樹脂は、樹脂成分として、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含有してよい。また硬化樹脂は、硬化剤を含有してもよい。硬化樹脂は、これらの成分の他に、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びアルキド樹脂等のその他の樹脂、並びに、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、表面調整剤、及び湿潤分散剤等に由来する成分を含有してもよい。
【0070】
第二工程では、上記樹脂充填板の上記金属板側とは反対側に、熱硬化性樹脂を含有する半硬化樹脂層を設ける。
【0071】
第二工程が、支持体と、上記支持体上に設けられた半硬化樹脂層とを備える積層フィルムを用意し、上記積層フィルムの上記半硬化樹脂層を上記樹脂充填板の上記金属板側とは反対側に転写して、半硬化樹脂層を設ける工程であってもよく、又は、上記樹脂充填板の上記金属板側とは反対側に、熱硬化性樹脂組成物の溶液又は溶融物を接触させることによって、半硬化樹脂層を設ける工程であってもよい。溶液又は溶融物を接触させる方法の場合、これらを樹脂充填板の表面に接触(例えば、塗布等)させる際の作業性の観点から、熱硬化性樹脂組成物を未硬化、又は硬化率の低い状態で接触させることが好ましく、その後、硬化率を調製することによって半硬化樹脂層を形成することが好ましい。第二工程は、半硬化樹脂層を設ける工程をより簡便なものとする観点から、好ましくは、半硬化樹脂層を備える積層フィルムからの転写によって半硬化樹脂層を設ける工程である。積層フィルムを予め調製する方法とすることによって、半硬化樹脂層における熱硬化性樹脂の硬化率の調整がより容易なものとなり、半硬化樹脂層における硬化率のバラつきを抑制することができる。また、積層部品の品質の調整が容易であり、歩留まりよく積層部品を製造することができる。また、全面転写を行うことによって均一な厚みの半硬化樹脂層を作製することができ、接着性のばらつきを抑制することができる。
【0072】
支持体としては、例えば、可撓性フィルム等を使用できる。可撓性フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタラートフィルム、ポリイミド及びテフロンフィルム等を挙げることができる。支持体は、少なくとも、半硬化樹脂層が設けられる側の面に離型処理が施されていてもよい。支持体の厚さは、取扱い性及び転写性を両立する観点から、例えば、10~200μm、又は50~100μmであってよい。
【0073】
熱硬化性樹脂組成物は、例えば、シアネート基を有する化合物、ビスマレイミド基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、硬化剤と、を含有してよい。
【0074】
シアネート基を有する化合物としては、例えば、ジメチルメチレンビス(1,4-フェニレン)ビスシアナート、及びビス(4-シアネートフェニル)メタン等が挙げられる。ジメチルメチレンビス(1,4-フェニレン)ビスシアナートは、例えば、TACN(三菱ガス化学株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0075】
ビスマレイミド基を有する化合物としては、例えば、N,N’-[(1-メチルエチリデン)ビス[(p-フェニレン)オキシ(p-フェニレン)]]ビスマレイミド、及び4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド等が挙げられる。N,N’-[(1-メチルエチリデン)ビス[(p-フェニレン)オキシ(p-フェニレン)]]ビスマレイミドは、例えば、BMI-80(ケイ・アイ化成株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0076】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及び多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。例えば、HP-4032D(DIC株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレン等であってもよい。
【0077】
硬化剤は、ホスフィン系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤を含有してもよい。ホスフィン系硬化剤はシアネート基を有する化合物又はシアネート樹脂の三量化によるトリアジン生成反応を促進し得る。ホスフィン系硬化剤としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、及びテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレートは、例えば、TPP-MK(北興化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0078】
イミダゾール系硬化剤はオキサゾリンを生成し、エポキシ基を有する化合物又はエポキシ樹脂の硬化反応を促進する。イミダゾール系硬化剤としては、例えば、1-(1-シアノメチル)-2-エチル-4-メチル-1H-イミダゾール、及び2-エチル-4-メチルイミダゾール等が挙げられる。1-(1-シアノメチル)-2-エチル-4-メチル-1H-イミダゾールは、例えば、2E4MZ-CN(四国化成工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0079】
ホスフィン系硬化剤の含有量は、シアネート基を有する化合物、ビスマレイミド基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物の合計量100質量部に対して、例えば、5質量部以下、4質量部以下、又は3質量部以下であってよい。ホスフィン系硬化剤の含有量は、シアネート基を有する化合物、ビスマレイミド基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物の合計量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、又は0.5質量部以上であってよい。ホスフィン系硬化剤の含有量が上記範囲内であると、樹脂含浸体の調製が容易である。ホスフィン系硬化剤の含有量は上述の範囲内で調整してよく、シアネート基を有する化合物、ビスマレイミド基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物の合計量100質量部に対して、例えば、0.1~5質量部、又は0.5~3質量部であってよい。
【0080】
イミダゾール系硬化剤の含有量は、シアネート基を有する化合物、ビスマレイミド基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物の合計量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以下、0.05質量部以下、又は0.03質量部以下であってよい。イミダゾール系硬化剤の含有量は、シアネート基を有する化合物、ビスマレイミド基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物の合計量100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、又は0.005質量部以上であってよい。イミダゾール系硬化剤の含有量が上記範囲内であると、樹脂含浸体の調製が容易である。イミダゾール系硬化剤の含有量は上述の範囲内で調整してよく、シアネート基を有する化合物、ビスマレイミド基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物の合計量100質量部に対して、例えば、0.001~0.1質量部、又は0.005~0.03質量部であってよい。
【0081】
熱硬化性樹脂組成物は、主剤及び硬化剤とは別の成分を含んでよい。その他の成分としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びアルキド樹脂等のその他の樹脂、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、表面調整剤、並びに湿潤分散剤等を更に含んでもよい。これらのその他の成分の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全量を基準として、例えば、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0082】
熱硬化性樹脂組成物は、溶剤と共に用いてもよい。溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の脂肪族アルコール、2-メトキシエタノール、1-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン、及びトルエン、キシレン等の炭化水素が挙げられる。
【0083】
支持体上に半硬化樹脂層を設ける方法は特に制限されるものではない。例えば、支持体上に、熱硬化性樹脂組成物の溶液又は溶融物を接触させることによって、熱硬化性樹脂組成物層を設け、これを加熱処理し半硬化させることによって、支持体上に半硬化樹脂層を設けることができる。このようにして、積層フィルムを調製できる。上記熱硬化性樹脂組成物層を半硬化させる際の加熱温度は、熱硬化性樹脂組成物の成分及び組成等に応じて調整可能であるが、例えば、80~130℃であってよい。上記熱硬化性樹脂組成物層を半硬化させる際の上記加熱処理は、大気圧下、又は加圧条件下で行ってよい。
【0084】
積層フィルムを用意し、積層フィルムの上記半硬化樹脂層側から、上記樹脂充填板の主面に接するようにして貼り付け、支持体をはく離することによって、上記樹脂充填板の上記金属板側とは反対側に半硬化樹脂層を転写することができる。転写の際、必要に応じて、積層フィルムを張り付けた状態で加圧及び加熱の少なくとも一方の処理を行ってもよい。このような操作を加えることで、半硬化樹脂層の上記樹脂充填板への接着性をより向上させることができる。例えば、積層フィルムを樹脂充填板上に張り付ける際に加圧し、支持体をはく離し、その後、加熱処理を行ってもよい。なお、支持体をはく離せず、金属回路等を積層するまでの保護膜として使用してもよい。
【0085】
積層フィルムを張り付けた際に加圧する場合の圧力は、例えば、0.1~3.0MPa、0.3~2.0MPa、又は0.5~1.0MPaであってよい。積層フィルムを張り付けた際に加熱する場合の加熱温度は、例えば、80~150℃、90~135℃、又は100~120℃であってよい。加熱プレスにおける熱板間の間隙(熱板間の距離)を調製することによって、半硬化樹脂層の厚みを調整することができる。
【0086】
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
【実施例
【0087】
以下、本開示について、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。なお、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
[窒化物焼結板]
新日本電工株式会社製のオルトホウ酸100質量部と、デンカ株式会社製のアセチレンブラック(商品名:HS100)35質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合した。得られた混合物を、黒鉛製のルツボ中に充填し、アーク炉にて、アルゴン雰囲気下で、2200℃にて5時間加熱し、塊状の炭化ホウ素(BC)を得た。得られた塊状物を、ジョークラッシャーで粗粉砕して粗粉を得た。この粗粉を、炭化ケイ素製のボール(φ10mm)を有するボールミルによってさらに粉砕して粉砕粉を得た。
【0089】
調製した粉砕粉を、窒化ホウ素製のルツボに充填した。その後、抵抗加熱炉を用い、窒素ガス雰囲気下で、2000℃、0.85MPaの条件で10時間加熱した。このようにして炭窒化ホウ素(BCN)及び窒化ホウ素(BN)を含む焼成物を得た。
【0090】
粉末状のホウ酸と炭酸カルシウムを配合して焼結助剤を調製した。調製にあたっては、100質量部のホウ酸に対して、炭酸カルシウムを50.0質量部配合した。このときのホウ素とカルシウムの原子比率は、ホウ素100原子%に対してカルシウムが17.5原子%であった。こうして、焼成物100質量部に対して焼結助剤を20質量部配合し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して粉末状の原料粉末を調製した。
【0091】
原料粉末を、粉末プレス機を用いて、150MPaで30秒間加圧して、シート状(縦×横×厚さ=50mm×50mm×0.35mm)の成形板を得た。得られた成形体を窒化ホウ素製容器に入れ、バッチ式高周波炉に導入した。バッチ式高周波炉において、常圧、窒素流量5L/分、2000℃の条件で5時間加熱した(焼成工程)。その後、窒化ホウ素製容器から取り出し、窒化ホウ素焼結板(窒化物焼結板)を得た。
【0092】
[樹脂含浸体の作製]
容器に、シアネート基を有する化合物が80質量部、ビスマレイミド基を有する化合物が20質量部、エポキシ基を有する化合物が50質量部となるように測り取り、上記3種の化合物合計量100質量部に対して、ホスフィン系硬化剤を1質量部及びイミダゾール系硬化剤を0.01質量部加えて混合した。なお、エポキシ樹脂が室温で固体状態であったため、80℃程度に加熱した状態で混合した。得られた熱硬化性樹脂組成物の100℃における粘度は、10mPa・sであった。調製した熱硬化性樹脂組成物を100℃にした後、その温度を維持したままディスペンサーを用いて、窒化ホウ素焼結板の上側の主面上に滴下して熱硬化性樹脂組成物を含浸した。熱硬化性樹脂組成物の滴下量は、窒化ホウ素焼結板の気孔の全体積の1.5倍とした。熱硬化性樹脂組成物の一部は、窒化ホウ素焼結板に含浸せず、主面上に残存した。
【0093】
熱硬化性樹脂組成物の調製には、以下の化合物を用いた。
【0094】
シアネート基を有する化合物:ジメチルメチレンビス(1,4-フェニレン)ビスシアナート(三菱ガス化学株式会社製、商品名:TA-CN)
ビスマレイミド基を有する化合物:N,N’-[(1-メチルエチリデン)ビス[(p-フェニレン)オキシ(p-フェニレン)]]ビスマレイミド(ケイ・アイ化成株式会社製、商品名:BMI-80)
エポキシ基を有する化合物:1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレン(DIC株式会社製、商品名:HP-4032D)
【0095】
ホスフィン系硬化剤:テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート(化学株式会社製、商品名:TPP-MK)
イミダゾール系硬化剤:1-(1-シアノメチル)-2-エチル-4-メチル-1H-イミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2E4MZ-CN)
【0096】
次に、大気圧下、窒化ホウ素焼結板の上側の主面上に残存する熱硬化性樹脂組成物を、ステンレス製のスクレーパー(株式会社ナルビー製)を用いて平滑化した。余剰分の熱硬化性樹脂組成物を除去した。次に、大気圧下、80℃で25時間加熱することによって熱硬化性樹脂組成物を半硬化させた。このようにして、四角柱状の樹脂含浸体(縦×横×厚さ=50mm×50mm×0.29mm)を作製した。半硬化物に含まれている熱硬化性樹脂組成物の硬化率は、示差走査熱量計を用いた測定によって決定した。含浸されている熱硬化性樹脂の硬化率は31%であった。
【0097】
[積層体の製造]
上述のように作製された樹脂含浸体を、銅板(縦×横×厚さ=50mm×50mm×1.0mm)に、四隅が一致するように積層し、200℃及び5MPaの条件下で5分間、加熱及び加圧した後、200℃及び大気圧の条件下で2時間加熱処理することによって、樹脂充填板を形成すると共に、樹脂充填板と銅板とを接着させた。樹脂充填板を構成する硬化樹脂の硬化率は、示差走査熱量計を用いた測定によって決定した。含浸されている硬化樹脂の硬化率は99%であった。
【0098】
[積層部品の製造]
上記樹脂含浸体を調製した際に窒化ホウ素焼結板に含浸させたものと同様の熱硬化性樹脂を用意し、120℃で6時間、加熱することで樹脂を半硬化状態とした。半硬化状態の樹脂の硬化率は示唆操作熱量計を用いた測定によって決定した。半硬化状態の樹脂の硬化率は20%であった。この樹脂を0.1gサンプリングし、離型処理を行ったPETフィルム(厚み:75μm)と離型処理を行っていないPETフィルム(厚み:75μm)とで挟み、PETフィルム間に半硬化樹脂層を有する積層フィルムとした。次に、ステージを80℃に加熱した加熱プレスに、上記積層フィルムをセットし、加熱プレスの熱板間の距離(間隙)を165μmとし、1MPaの圧力をかけることで半硬化樹脂層を狙い厚みとした。半硬化樹脂層の厚みは、積層フィルムの厚みからPETフィルム2層分の厚みを差し引くことで求めた。作製した半硬化樹脂層の厚みは15μmとなった。
【0099】
次に、離型処理を行ったPETフィルムを剥がし、半硬化樹脂層の主面を露出させ、当該主面と、上述のように調製した積層体の樹脂充填板側の主面とを貼り合わせ、ステージを100℃に加熱した加熱プレスにセットし、加熱プレスの熱板間の距離(間隙)を1.375mmに調整したうえで1MPaの圧力をかけることで、半硬化樹脂層を樹脂充填板に積層した。この後、PETフィルムを剥がすことによって、半硬化樹脂層を積層体上に転写させ、積層部品を得た。
【0100】
(実施例2、3)
半硬化樹脂層の厚さ、及び硬化率を表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層部品を得た。
【0101】
(参考例1)
実施例1と同様に調製した積層体(半硬化樹脂層を転写する前の物)を作製し、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0102】
(比較例1)
実施例1と同様にして、樹脂含浸体を作製した。含浸されている熱硬化性樹脂の硬化率は31%であった。
【0103】
次に、上述のように作製された樹脂含浸体を、銅板(縦×横×厚さ=50mm×50mm×1.0mm)に、四隅が一致するように積層し、120℃及び5MPaの条件下で5分間、加熱及び加圧することによって、樹脂含浸体を銅板上に仮接着させた。樹脂含浸体を構成する半硬化物の硬化率は、示差走査熱量計を用いた測定によって決定した。含浸されている半硬化物の硬化率は34%であり、仮接着前と大きく変化がないことを確認した。
【0104】
<積層部品の評価>
実施例で調製した積層部品に対して、後述する方法によって、ハンドリング性、接着性、及び熱抵抗性の評価を行った。結果を表1に示す。表1では、比較のために、上述の積層部品に代えて比較例1及び参考例1で調製した積層体を用いて同様の評価を行った結果を併記した。
【0105】
[ハンドリング性の評価]
上述のように調製した積層部品及び積層体の室温(約20℃)におけるハンドリング性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:サンプルを移動させたり持ち上げたり手で触れたりした際には位置ずれは起きないが、治具等を用いて樹脂含浸体と金属板とをせん断方向に少し力をかけた際に、測定対象が凝集破壊しながら位置ずれが発生する。
B:サンプルを移動させたり持ち上げたり手で触れたりした際には位置ずれは起きないが、治具等を用いて樹脂含浸体と金属板とをせん断方向に少し力をかけた際に、測定対象が凝集破壊することなく位置ずれが発生する。
C:サンプルを移動させたり持ち上げたり手で触れたりした際に樹脂含浸体が動き、凝集破壊することなく位置ずれが発生する。
【0106】
[接着性の評価]
上述のように調製した積層部品及び積層体を用意し、半硬化樹脂層側又は樹脂充填板側に、銅箔(縦×横×厚さ=50mm×20mm×0.035mm)を、四隅が一致するように積層し200℃及び5MPaの条件下で5分間、加熱及び加圧、更に200℃及び大気圧の条件下で2時間加熱して接着体(積層基板)を調製し、これを測定対象とした。測定は、JIS K 6854-1:1999「接着剤-はく離接着強さ試験方法」にしたがって、90°はく離試験を行い、凝集破壊部分の面積を測定した。測定結果から、以下の基準で接着性を評価した。結果を表1に示す。
A:凝集破壊部分の面積が70面積%以上である。
B:凝集破壊部分の面積が30面積%以上70面積%未満である。
C:凝集破壊部分の面積が30面積%未満である。
【0107】
[熱抵抗性の評価]
上述のように調製した積層部品及び積層体に対して熱抵抗性の評価を行った。まず、上記接着性の評価と同様にして、積層部品及び積層体のそれぞれを使用して接着体(積層基板)を調製した。得られた接着体を対象として、ASTM-D5470に準拠して、積層方向における接着体の熱抵抗を測定した。測定には、樹脂材料熱抵抗測定装置(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製)を使用した。比較例1で得られた積層体を用いて調製される接着体(積層基板)の熱抵抗(単位:K/W)を基準として、実施例1で得られた積層部品を用いて調製される接着体(積層基板)の熱抵抗を以下の基準で評価した。結果は表1に示すとおりであった。
A:熱抵抗が比較例1の値を1としたときに0.8未満である。
B:熱抵抗が比較例1の値を1としたときに0.8以上1未満である。
C:熱抵抗が比較例1の値を1としたときに1以上である。
【0108】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本開示によれば、他部品との接着性を有し、且つハンドリング性に優れる積層部品及びその製造方法を提供できる。本開示によればまた、上述のような積層部品の製造に適する積層体及びその製造方法を提供できる。
【符号の説明】
【0110】
2…金属板、4…樹脂充填板、6…積層体、8…半硬化樹脂層、10…積層部品。

図1