(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 17/02 20060101AFI20231108BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
B25J17/02 Z
B25J19/00 Z
(21)【出願番号】P 2023550041
(86)(22)【出願日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 JP2023017018
【審査請求日】2023-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】江 航杰
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-6242(JP,A)
【文献】特開平2-284898(JP,A)
【文献】国際公開第2023/062738(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
境界面を挟んだ両側に配置され、該境界面に沿って相対移動可能に支持された2つの部材を備え、
各該部材が、原点位置において隣接して配置されるマーク設置面をそれぞれ備え、
各該マーク設置面が、両前記部材の相互に交差する方向に延びる外表面にそれぞれ設けられるとともに、前記境界面に対して0°よりも大きく90°よりも小さい角度をなし、
各該マーク設置面に、原点位置において相互に一致させられるマークがそれぞれ設けられているロボット。
【請求項2】
前記マーク設置面が、原点位置において隣接しかつ同一平面上に配置されている請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
少なくとも一方の前記部材が、前記境界面に沿って延びる平面からなる第1切削面と、該第1切削面に交差する方向に延びる平面からなる1以上の第2切削面とをそれぞれ備え、
前記マーク設置面が、前記第1切削面と前記第2切削面との交線に平行な方向に延びている請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
2つの前記部材が、前記境界面に直交する軸線回りに相対回転可能に支持されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項5】
2つの前記部材が、前記境界面に沿う軸線に沿って相対的に並進移動可能に支持されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項6】
2つの前記部材が、被設置面に設置されるベースに対して回転可能に支持された旋回胴、および、該旋回胴に対して前記軸線回りに回転可能に支持されたアームである請求項4に記載のロボット。
【請求項7】
2つの前記部材が、前記軸線回りに相対回転可能に支持された2つのアームである請求項4に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットの関節を構成する相対回転可能な2つの部材のそれぞれに、互いの位置合わせを行うためのマークが設けられたロボットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
マークは、部材に設けた平面からなる切削面にマークを有するシールを貼付したり、切削面に直接刻印等によって形成したりすることにより、部材に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、マークをロボットの前面位置に配置すると、スパッタ等がマークに付着し易く、マークが損傷したり視認できなくなったりする。また、マークを設ける切削面は、ロボットを構成する部品を、広く使用されている4軸の工作機械により加工する際に、部品の固定姿勢を変更することなく加工できることが望ましい。さらに、2つの部品に設けられた2つのマーク用の切削面は、部品の表面から大きく突出することなく、かつ、マークが一致するときに同一平面上に配置されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、境界面を挟んだ両側に配置され、該境界面に沿って相対移動可能に支持された2つの部材を備え、各該部材が、原点位置において隣接して配置されるマーク設置面をそれぞれ備え、各該マーク設置面が、両前記部材の相互に交差する方向に延びる外表面にそれぞれ設けられるとともに、前記境界面に対して0°よりも大きく90°よりも小さい角度をなし、各該マーク設置面に、原点位置において相互に一致させられるマークがそれぞれ設けられているロボットである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一実施形態に係るロボットを示す斜視図である。
【
図2】
図1のロボットの旋回胴および第1アームに設けたマーク設置面を示す部分的に拡大した斜視図である。
【
図3】
図1のロボットの旋回胴の切削面の位置を示す正面図である。
【
図4】
図1のロボットの第1アームの切削面の位置を示す正面図である。
【
図5】
図1のロボットの第2アームおよび手首ユニットを示す正面図である。
【
図6】
図1のロボットの旋回胴、第1アームおよび第2アームのマーク設置面にカメラユニットを押し当てた状態を示す部分的な正面図である。
【
図7】
図2のマーク設置面の第1の比較例を示す部分的な斜視図である。
【
図8】
図2のマーク設置面の第2の比較例を示す部分的な斜視図である。
【
図9】
図2のマーク設置面の第3の比較例を示す部分的な斜視図である。
【
図10】
図2のマーク設置面の第4の比較例を示す部分的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本開示の一実施形態に係るロボット1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係るロボット1は、
図1に示すように、6つの回転関節を備える垂直多関節型ロボットである。ロボット1は、床面(被設置面)Gに設置されるベース2と、鉛直な第1軸線A回りにベース2に対して回転可能に支持された旋回胴(部材)3とを備える。また、ロボット1は、水平な第2軸線(軸線)B回りに旋回胴3に対して回転可能に支持された第1アーム(部材、アーム)4を備える。
【0008】
また、ロボット1は、第2軸線Bに平行な第3軸線(軸線)C回りに第1アーム4に対して回転可能に支持された第2アーム(部材、アーム)5と、第2アーム5の先端に配置された3軸の手首ユニット6とを備えている。
【0009】
手首ユニット6は、第2アーム5に対して、第3軸線Cに直交する平面内に配置される第4軸線D回りに回転可能に支持された第1手首要素7を備える。また、手首ユニット6は、第1手首要素7に対して、第4軸線Dに直交する第5軸線E回りに回転可能に支持された第2手首要素8を備える。さらに、手首ユニット6は、第2手首要素8に対して、第5軸線Eに直交する第6軸線F回りに回転可能に支持された第3手首要素9を備える。
【0010】
各回転関節軸は相対回転可能な2つの部材を備えている。例えば、第1の回転関節は、第1軸線A回りにベース2に対して回転する旋回胴3を備えている。また、第2の回転関節は、第2軸線B回りに旋回胴3に対して回転する第1アーム(アーム)4を備えている。また、第3の回転関節は、第3軸線C回りに相対回転可能な第1アーム4と第2アーム5とを備えている。
【0011】
第4の回転関節は、第4軸線D回りに相対回転可能な第2アーム5と第1手首要素7とを備えている。第5の回転関節は、第5軸線E回りに相対回転可能な第1手首要素7と第2手首要素8とを備えている。そして、第6の回転関節は、第6軸線F回りに相対回転可能な第2手首要素8と第3手首要素9とを備えている。
【0012】
本実施形態に係るロボット1においては、特に、第2の回転関節および第3の回転関節において特徴がある。
第2の回転関節を構成する旋回胴3は、ベース2との間および第1アーム4との間に境界面X1,X2を有している。ベース2が水平な被設置面Gに設置されたときには、ベース2と旋回胴3との境界面X1は水平方向に延び、旋回胴3と第1アーム4との境界面X2は鉛直方向に延びている。
【0013】
また、旋回胴3は、中空の内部空間を備える。内部空間には、第1軸線Aに平行に延びるシャフトを備える第1モータ(図示略)、第2軸線Bに平行に延びるシャフトを備える第2モータ(図示略)、図示しない減速機およびケーブル等が収容される。減速機は任意の形式のものでよい。例えば、遊星歯車型の減速機あるいはハイポイドギヤのような減速機でよい。旋回胴3は、内部空間を開閉するためのカバー31を備える。
【0014】
カバー31は、
図1および
図2に示すように、第1軸線Aおよび第2軸線Bの両方に対して傾斜する平面に沿う取付面32に、図示しないネジにより着脱可能に取り付けられて旋回胴3の内部空間を閉塞する。また、カバー31が取り外されると、第1軸線Aおよび第2軸線Bの両方に対して傾斜する取付面32により囲まれた開口部によって、内部空間が開放される。これにより、第1モータおよび第2モータを、開口部を経由して、旋回胴3に対して、それぞれのシャフトの方向に着脱することができ、減速機およびケーブル等の組立および保守を行うことができる。
【0015】
旋回胴3は、
図3に示すように、第1アーム4との境界面X2に沿う方向に延び、減速機あるいは軸受を取り付けるための平面からなる切削面(第1切削面)33を備える。また、旋回胴3は、ベース2との境界面X1に沿う方向に延び、減速機あるいは軸受を取り付けるための平面からなる切削面(第2切削面)34を備える。
【0016】
これらの切削面33,34の裏面側となる旋回胴3の内部空間内には、第1モータ、第2モータおよび減速機等を固定するための平面からなる切削面(第2切削面、図示略)が形成されている。さらに、旋回胴3は、カバー31を着脱可能に取り付ける取付面32を構成する平面からなる切削面(第2切削面)を備える。
【0017】
第1アーム4は、
図4に示すように、旋回胴3との境界面X2に沿って延び、減速機または軸受によって旋回胴3の切削面33に第2軸線B回りに回転可能に取り付けられる円形の第1取付面42を備える。また、第1アーム4は、第2アーム5との境界面X3に沿って延び、減速機または軸受によって第2アーム5に、第3軸線C回りに回転可能に取り付けられる円形の第2取付面43を備える。
【0018】
第1アーム4の第1取付面42および第2取付面43は、相互に平行な切削面である。第1アーム4は、長手方向の両端において第1取付面42および第2取付面43に接続される中空の筒状の第1アーム本体41を備えている。
【0019】
第2アーム5は、
図5に示すように、第1アーム4に第3軸線C回りに回転可能に取り付けられる第2アーム基部51と、第2アーム基部51に固定される第2アーム本体52とを備える。第2アーム基部51は、第1アーム4との境界面X3に沿って延び、減速機または軸受によって第1アーム4の第2取付面43に第3軸線C回りに回転可能に取り付けられる取付面53を備える。
【0020】
また、第2アーム基部51は、第4軸線Dに直交する方向に延び、第2アーム本体52を取り付ける取付面54を備える。さらに、第2アーム基部51は、取付面54の裏面側に位置し、第3モータおよび減速機等を固定するための切削面および、これらを覆うカバー55を取り付けるための取付面56を備える。
【0021】
また、旋回胴3、第1アーム4および第2アーム基部51は、
図3から
図5に示すように、それぞれ位置合わせ用のマーク10a,11aを設けるためのマーク設置面10,11,12,13を備える。旋回胴3のマーク設置面10は、
図2に示すように、ベース2が水平な被設置面G上に設置されたとき旋回胴3の上端に設けられている。
【0022】
また、旋回胴3のマーク設置面10は、ベース2が水平な被設置面G上に設置されたときに、第2軸線Bに沿う方向に第1アーム4との境界面X2に向かって漸次上昇する方向に傾斜する平面である。旋回胴3のマーク設置面10の水平面に対する傾斜角度(角度)θ1は、0°よりも大きく90°よりも小さく、15°以上75°以下であることが望ましく、30°以上60°以下であることがさらに望ましい。
旋回胴3のマーク設置面10は、旋回胴3を構成する鋳物の上部の外表面を上方に突出させた突起3aの一部を切削加工することにより形成された切削面である。
【0023】
第1アーム4のマーク設置面11は、第1アーム本体41の両端の第1取付面42および第2取付面43との境界位置近傍の外表面にそれぞれ設けられている。第1アーム4の第1取付面42側のマーク設置面11は、第1アーム本体41の外表面から第2軸線Bに沿う方向に旋回胴3との境界面X2に向かって漸次第2軸線Bに近接する方向に傾斜する平面である。第1アーム4の第1取付面42側のマーク設置面11の第2軸線Bに対する傾斜角度(角度)θ2は、θ1と同一である。
【0024】
また、第1アーム4の第2取付面43側のマーク設置面12は、第1アーム本体41の外表面から第3軸線Cに沿う方向に第2アーム基部51との境界面X3に向かって漸次第3軸線Cに近接する方向に傾斜する平面である。第1アーム4の第2取付面43側のマーク設置面12の第3軸線Cに対する傾斜角度(角度)θ3も、0°よりも大きく90°よりも小さく、15°以上75°以下であることが望ましく、30°以上60°以下であることがさらに望ましい。
【0025】
第1アーム4のマーク設置面11,12も、第1アーム4を構成する鋳物の第1アーム本体41の第1取付面42および第2取付面43側の外表面をそれぞれ突出させた突起4a,4bの一部を切削加工することにより形成された切削面である。
【0026】
また、第2アーム5のマーク設置面13は、
図5に示すように、第4軸線Dを水平に配置したときに、第1アーム4との境界面X3に沿って延びる円形の取付面53の鉛直下方に位置する円筒状の外表面に設けられている。第2アーム5のマーク設置面13は、第4軸線Dに平行に延びるとともに、第2アーム5の円筒状の外表面から第3軸線Cに沿う方向に第1アーム4との境界面X3に向かって漸次第3軸線Cから離れる方向に傾斜する平面である。
【0027】
第2アーム5のマーク設置面13の第3軸線Cに対する傾斜角度(角度)θ4は、θ3と同一である。第2アーム5のマーク設置面13も、第2アーム5を構成する鋳物の外表面を突出させた突起5aの一部を切削加工することにより形成された切削面である。
【0028】
旋回胴3のマーク設置面10と第1アーム4の第1取付面42側のマーク設置面11とは、
図2に示されるように、ロボット1が原点位置に配置されたときに、相互に隣接し同一平面上に配置される。また、第1アーム4の第2取付面43側のマーク設置面12と第2アーム基部51のマーク設置面13とも、ロボット1が原点位置に配置されたときに、相互に近接し同一平面上に配置される。
他の回転関節についても、ロボット1が原点位置に配置されることにより同一平面上に配置されるマーク設置面を備えている。
【0029】
マーク10a,11aは、
図2に示されるように、中央にケガキ線状のマークが付された金属製プレート10b,11bを接着剤によってマーク設置面10,11に貼り付けることにより設けられる。あるいは、マーク10a,11aはマーク設置面10,11に直接ケガキ線を刻印することにより設けられてもよい。マーク10a,11aは、マスタリングされた状態のロボット1が原点位置に配置されたときに、隣接するマーク設置面10,11に付されるケガキ線どうしが一直線上に並ぶように設けられる。
【0030】
このように構成された本実施形態に係るロボット1の作用について、以下に説明する。
本実施形態によれば、マスタリングされたロボット1を原点位置に配置することにより、旋回胴3および第1アーム4にそれぞれ設けられたマーク10a,11aのケガキ線が一直線上に配列される、また、第1アーム4および第2アーム5にそれぞれ設けられたマーク10a,11aのケガキ線も一直線上に配列される。
【0031】
これにより、作業者は、モータあるいは減速機を交換した後等に、マーク10a,11aが一直線上に配置された状態を原点位置として設定することにより、簡易にマスタリングを行うことができる。
【0032】
この場合において、本実施形態によれば、旋回胴3と第1アーム4とに設けられたマーク10a,11aが、旋回胴3の上面と、第1アーム4の側面とにそれぞれ配置される。これにより、ロボット1の前面にマーク10a,11aが配置されないので、ロボット1による溶接時に飛散したスパッタが付着し難く、マーク10a,11aの汚損を防止できるという利点がある。
【0033】
マーク10a,11aとしてケガキ線状のマークが一直線上に精度よく配置されたか否かは、目視により、あるいは、マーク設置面10,11,12,13にカメラユニット60を押し当てて画像を取得することにより確認される。
本実施形態によれば、マーク設置面10,11,12,13を第2軸線Bおよび第3軸線Cに対して傾斜させているので、以下の効果を奏する。
【0034】
第1に、
図6に示すように、カメラユニット60を旋回胴3、第1アーム4および第2アーム5の外表面から離れた位置に配置することができる。すなわち、カメラユニット60をマーク設置面10,11、12,13に押し当てる際に、旋回胴3、第1アーム4および第2アーム5の外表面が邪魔にならず、作業性を向上できるという利点がある。
【0035】
第2に、マーク10a,11aの一致を目視により、あるいはカメラユニット60によって確認する場合に、マーク設置面10,11,12,13が傾斜していた方が、水平あるいは垂直に配置されている場合と比較して、見やすい位置に配置できる。すなわち、マーク設置面10,11,12,13が水平に配置されている場合には、作業者はマーク10a,11aを真上あるいは真下から覗き込むように確認する必要がある。また、マーク設置面10,11,12,13が鉛直に配置されている場合には、特に、高所に位置する第2アーム5と第1アーム4との間のマーク設置面10,11,12,13を真横から確認することが困難である。これに対して、マーク設置面10,11,12,13が傾斜していると、比較的見やすい斜め上方あるいは斜め下方から確認できるという利点がある。
【0036】
第3に、各境界面X2,X3において旋回胴3と第1アーム本体41とが交わる角部および第2アーム基部51と第1アーム本体41とが交わる角部を斜めに短絡する位置にマーク設置面10,11,12,13を配置できる。これにより、マーク設置面10,11,12,13を旋回胴3、第1アーム4、第2アーム5の外表面から大きく突出させずに済むという利点がある。例えば、
図7の比較例に示すように、マーク設置面70,71を第2軸線Bに直交する方向に設ける場合には、旋回胴3および第1アーム本体41の外表面から大きく突出する直方体状の突起72,73を設ける必要がある。
【0037】
また、例えば、
図8の比較例に示すように、旋回胴3および第1アーム4に、原点位置において水平になるマーク設置面80,81を設ければ、マーク設置面80,81用の突起82,83の突出量を抑えることができる。しかしながら、第1アーム4におけるこのようなマーク設置面80,81の切削加工は第1アーム本体41が近接しているために困難である。また、
図6に示すカメラユニット60を配置する場合には近接する第1アーム本体41が邪魔になって作業性が悪い。
【0038】
また、例えば、
図9の比較例に示すように、旋回胴3に水平なマーク設置面90、第1アーム4に鉛直なマーク設置面91を設けても、マーク設置面90,91用の突起92,93の突出量を抑えることができる。しかしながら、この場合には、原点位置において、マーク設置面90,91どうしが同一平面上に配置されないため、斜めから目視したときにマーク10a,11aの一致を正確に確認することができない。また、上述したカメラユニット60による確認もできない。
【0039】
また、旋回胴3においては、
図3に示すように、旋回胴3の上端に、第2軸線Bに沿って第1取付面42に向かって上向きに傾斜するマーク設置面10を設けることにより、旋回胴3の加工上の利点もある。すなわち、
図3に示すように、旋回胴3の複数の切削面32,33,34およびマーク設置面10はいずれもロボット1の前後方向に延びる直線に平行な方向、すなわち、
図3の紙面に垂直な方向に延びている。この方向は、例えば、第1アーム4を取り付ける切削面33とベース2に取り付ける切削面34との交線の方向である。
【0040】
1軸のターンテーブルと3軸の移動機構とを備える4軸の工作機械によって、旋回胴3を切削加工する場合には、ロボット1の前後方向に延びる直線を回転軸線Mに一致させてターンテーブルに固定する。これにより、1回の段取りで全て切削面32,33,34およびマーク設置面10の切削加工を行うことができるという利点がある。
【0041】
旋回胴3において、第1アーム4を取り付ける円形の切削面33の鉛直上方以外の位置にマーク設置面10を設ける場合には、マーク設置面10の切削加工を他の切削面32,34の加工とは異なる段取りで行う必要がある。そのため、加工工数が増大し、生産性が低い。
【0042】
また、第1アーム4においても、
図4に示すように、第1アーム4の複数の切削面である取付面42,43および2つのマーク設置面11,12はいずれも第2軸線Bと第3軸線Cとを含む平面に直交する平面に平行な方向に延びている。この方向は、
図4の紙面に垂直な方向である。
【0043】
第1アーム4を1軸のターンテーブルを備える4軸の工作機械によって切削加工する場合に、
図4の紙面に直交する直線を回転軸線Nに一致させてターンテーブルに固定する。これにより、1回の段取りで全ての切削面42,43およびマーク設置面11,12の切削加工を行うことができるという利点がある。
【0044】
なお、本実施形態においては、第1アーム本体41の外表面が、旋回胴3との境界面X2および第2アーム5との境界面X3に近接している第2の回転関節および第3の回転関節におけるマーク設置面10,11,12,13を例に挙げて説明した。これに限定されるものではなく、第1の回転関節あるいは第4~第6の回転関節においても同様の構造を採用してもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、マーク設置面10とマーク設置面11とがロボット1が原点位置に配置されたときに、相互に隣接し同一平面上に配置されるものを例示したが、厳密に同一平面上に配置されていなくてもよい。具体的には、マーク設置面10とマーク設置面11とがロボット1が原点位置に配置されたときに、微小な段差または平面間の相対的斜視を有する状態で相互に隣接して配置されていてもよい。同様に、マーク設置面12,13も、ロボット1が原点位置に配置されたときに、微小な段差または平面間の相対的斜視を有する状態で相互に隣接して配置されていてもよい。
【0046】
また、旋回胴3、第1アーム4および第2アーム5に設けるマーク設置面10,11,12,13として、旋回胴3、第1アーム4および第2アーム5を構成する鋳物に一体に設けた突起3a,4a,4b,5aを切削することにより構成したものを例示した。これに代えて、マーク設置面10,11,12,13を有する部品をネジ等の締結具によって旋回胴3、第1アーム4および第2アーム5の少なくとも1つに取り付けてもよい。
また、マーク10a,11aとしてケガキ線状のマークを例示したが、これに代えて、尖端を有する三角形あるいは円形のドット等、他の任意のマークを採用してもよい。
【0047】
また、ロボット1として、本実施形態においては6個の回転関節を有する垂直6軸多関節型のロボットを例示したが、これに代えて、水平多関節型のロボットを採用してもよい。また、直動軸を有するロボットを採用してもよい。
【0048】
具体的には、直動軸を有するロボットは、
図10に示されるように、ベース(部材)2と、ベース2に並進移動可能に支持されるスライダ(部材)21と、スライダ21に取り付けられる直動軸22とを備え、ベース2とスライダ21との間に境界面X4を有している。
ベース2およびスライダ21の外表面には位置合わせ用のマーク23a,24aを設けるためのマーク設置面23,24が設けられている。マーク設置面23,24は、スライダ21がベース2に対して境界面X4に沿う軸線に沿って並進移動し、マスタリングされた状態のロボットが原点位置に配置することにより、隣接するマーク設置面23,24に付されたマーク23a,24aのケガキ線どうしが一直線上に並ぶように設けられる。
【0049】
マーク設置面10,11,12,13の傾斜角度は、45°近傍であることが最も好ましいが、0°よりも大きく90°よりも小さい任意の角度を採用できる。
【0050】
以上、本開示の各実施形態について詳述したが、本開示は上述した個々の実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、または、請求の範囲に記載された内容とその均等物から導き出される本発明の思想および趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、置き換え、変更、部分的削除等が可能である。例えば、上述した実施形態において、各動作の順序や各処理の順序は、一例として示したものであり、これらに限定されるものではない。
【0051】
上記実施形態および変形例に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
境界面を挟んだ両側に配置され、該境界面に沿って相対移動可能に支持された2つの部材を備え、各該部材が、原点位置において隣接して配置されるマーク設置面をそれぞれ備え、各該マーク設置面が、両前記部材の相互に交差する方向に延びる外表面にそれぞれ設けられるとともに、前記境界面に対して0°よりも大きく90°よりも小さい角度をなし、各該マーク設置面に、原点位置において相互に一致させられるマークがそれぞれ設けられているロボット。
【0052】
(付記2)
前記マーク設置面が、原点位置において隣接しかつ同一平面上に配置されている付記1に記載のロボット。
【0053】
(付記3)
少なくとも一方の前記部材が、前記境界面に沿って延びる平面からなる第1切削面と、該第1切削面に交差する方向に延びる平面からなる1以上の第2切削面とをそれぞれ備え、前記マーク設置面が、前記第1切削面と前記第2切削面との交線に平行な方向に延びている付記2に記載のロボット。
【0054】
(付記4)
2つの前記部材が、前記境界面に直交する軸線回りに相対回転可能に支持されている付記1から付記3のいずれか1項に記載のロボット。
【0055】
(付記5)
2つの前記部材が、前記境界面に沿う軸線に沿って相対的に並進移動可能に支持されている付記1から付記3のいずれか1項に記載のロボット。
【0056】
(付記6)
2つの前記部材が、被設置面に設置されるベースに対して回転可能に支持された旋回胴、および、該旋回胴に対して前記軸線回りに回転可能に支持されたアームである付記4に記載のロボット。
【0057】
(付記7)
2つの前記部材が、前記軸線回りに相対回転可能に支持された2つのアームである付記4に記載のロボット。
【符号の説明】
【0058】
1 ロボット
2 ベース(部材)
3 旋回胴(部材)
4 第1アーム(部材、アーム)
5 第2アーム(部材、アーム)
10,11,12,13 マーク設置面
10a,11a マーク
21 スライダ(部材)
32 取付面(切削面、第2切削面)
33 切削面(第1切削面)
34,35 切削面(第2切削面)
B 第2軸線(軸線)
C 第3軸線(軸線)
G 床面(被設置面)
X1,X2,X3 境界面
θ1,θ2,θ3,θ4 傾斜角度(角度)
【要約】
境界面を挟んだ両側に配置され、境界面に沿って相対移動可能に支持された2つの部材を備え、各部材が、原点位置において隣接して配置されるマーク設置面をそれぞれ備え、各マーク設置面が、両部材の相互に交差する方向に延びる外表面にそれぞれ設けられるとともに、境界面に対して0°よりも大きく90°よりも小さい角度をなし、各マーク設置面に、原点位置において相互に一致させられるマークがそれぞれ設けられているロボットである。