IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマザキマザック株式会社の特許一覧

特許7381812チャック爪、チャック爪の作製方法、ワーク加工方法、チャック爪のリペア方法、ハイブリッド工作機械、および、プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-07
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】チャック爪、チャック爪の作製方法、ワーク加工方法、チャック爪のリペア方法、ハイブリッド工作機械、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/10 20060101AFI20231108BHJP
   B23P 23/04 20060101ALI20231108BHJP
   B23K 26/342 20140101ALI20231108BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20231108BHJP
【FI】
B23B31/10 B
B23P23/04
B23K26/342
B33Y80/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023563236
(86)(22)【出願日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2023029049
【審査請求日】2023-10-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】北本 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
(72)【発明者】
【氏名】大内 誠悟
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-349548(JP,A)
【文献】特開平8-294806(JP,A)
【文献】特開2014-231140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00-31/42;
B23Q 3/00-3/154;
B23P 23/04;
B23K 9/04,26/342;
B22F 1/00-8/00,10/00-12/90;
C22C 1/04-1/059,33/02;
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック本体に取り付けられる基部と、
爪本体と、
前記爪本体に付加され、ワークに当接する金属層と
を具備し、
前記金属層を構成する第1金属材料は、前記爪本体を構成する第2金属材料よりも熱伝導率が低い
チャック爪。
【請求項2】
前記ワークに当接することとなる部分の全体が前記金属層によって構成されている
請求項1に記載のチャック爪。
【請求項3】
前記金属層は、
前記ワークの外周面に当接する第1部分と、
前記ワークの端面に当接する第2部分と
を有する
請求項に記載のチャック爪。
【請求項4】
前記金属層は、
前記ワークの内周面に当接する第3部分と、
前記ワークの端面に当接する第2部分と
を有する
請求項に記載のチャック爪。
【請求項5】
前記金属層は、付加製造層である
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のチャック爪。
【請求項6】
前記金属層の表面は、切削面である
請求項に記載のチャック爪。
【請求項7】
基部と爪本体とを有する第1ブロックの前記基部を、第1軸まわりに回転可能なチャック本体に取り付ける工程と、
前記基部が前記チャック本体に取り付けられた状態で、前記爪本体にワークに当接することとなる金属層を付加する工程と
を具備し、
前記金属層を構成する第1金属材料は、前記爪本体を構成する第2金属材料よりも熱伝導率が低い
チャック爪の作製方法。
【請求項8】
前記爪本体に前記金属層を付加する工程は、付加製造装置を用いて行われる
請求項7に記載のチャック爪の作製方法。
【請求項9】
前記基部が前記チャック本体に取り付けられた状態で、前記爪本体に、前記第1軸に平行な方向に延在する第1基礎面、および、前記第1軸に垂直な第2基礎面が形成されるよう、前記爪本体を切削する工程を更に具備し、
前記爪本体に前記金属層を付加する工程は、前記第1基礎面および前記第2基礎面の両方に前記金属層を付加することを含む
請求項7または8に記載のチャック爪の作製方法。
【請求項10】
前記基部と、前記爪本体と、前記爪本体に付加された前記金属層とを有するチャック爪を、前記チャック本体から取り外す工程と、
前記チャック本体から取り外された前記チャック爪をストッカに移送する工程と
を更に具備し、
前記チャック爪を前記チャック本体から取り外す工程、および、前記チャック爪を前記ストッカに移送する工程は、爪交換装置を用いて自動的に行われる
請求項7または8に記載のチャック爪の作製方法。
【請求項11】
前記第2金属材料によって構成される第2爪本体を有する第2ブロックを、前記チャック本体に取り付ける工程と、
前記第2爪本体に前記第1金属材料によって構成される第2金属層を付加する工程と、
前記金属層の表面および前記第2金属層の表面が平滑化されるよう、前記金属層および前記第2金属層を切削する工程と
を更に具備し、
前記金属層および前記第2金属層を切削する工程は、前記第1軸まわりに回転する前記金属層および前記第2金属層に、旋削工具を繰り返し接触させることを含み、
前記金属層の表面の平滑化と、前記第2金属層の表面の平滑化とが、前記旋削工具を用いて並列的に行われる
請求項7または8に記載のチャック爪の作製方法。
【請求項12】
第1チャック爪を作製する工程と、
前記第1チャック爪を含む複数のチャック爪にワークを取り付ける工程と、
前記ワークを加工する工程と
を具備し、
前記第1チャック爪を作製する工程は、
基部と爪本体とを有する第1ブロックの前記基部を、第1軸まわりに回転可能なチャック本体に取り付けることと、
前記基部が前記チャック本体に取り付けられた状態で、前記爪本体に金属層を付加することと
を含み、
前記ワークを加工する工程は、前記第1チャック爪の前記金属層が前記ワークに当接している状態で、付加製造装置を用いて、前記ワークに第3材料を付加することを含み、
前記金属層を構成する第1金属材料は、前記爪本体を構成する第2金属材料よりも熱伝導率が低い
ワーク加工方法。
【請求項13】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のチャック爪のリペア方法であって、
前記金属層の少なくとも一部を切削することにより基礎面を形成する工程と、
前記基礎面に前記第1金属材料を付加することにより、前記金属層を再形成する工程と、
再形成された前記金属層の表面が平滑化されるよう、前記金属層を切削する工程と
を具備する
チャック爪のリペア方法。
【請求項14】
材料供給装置と、レーザを射出する第1ヘッドとを有する付加製造装置と、
工具を支持する第2ヘッドを有する切削加工装置と、
第1チャック爪を含む複数のチャック爪を介してワークを支持する第1支持装置と、
前記第1ヘッドを前記第1支持装置に対して相対移動させる第1移動装置と、
前記第2ヘッドを前記第1支持装置に対して相対移動させる第2移動装置と、
少なくとも、前記付加製造装置、前記切削加工装置、前記第1支持装置、前記第1移動装置、および、前記第2移動装置を制御する制御装置と
を具備し、
前記第1支持装置は、
基部と爪本体とを有する前記第1チャック爪の前記基部が取り付けられ、第1軸まわりに回転可能なチャック本体と、
前記複数のチャック爪を、前記第1軸から離れる第1方向、または、前記第1軸に近づく第2方向に移動させる爪駆動装置と、
前記チャック本体を前記第1軸まわりに回転させる第1回転駆動装置と
を有し、
前記制御装置は、前記チャック本体に前記基部が取り付けられた状態で行われる爪作製モードと、前記ワークが前記第1チャック爪を含む前記複数のチャック爪によって把持された状態で行われる付加製造モードと、を実行可能であり、
前記爪作製モードは、
前記付加製造装置を用いて、第2金属材料によって構成される前記爪本体に前記第2金属材料よりも熱伝導率が低い第1金属材料によって構成される金属層を付加することと、
前記切削加工装置を用いて前記金属層を切削することにより、前記金属層の表面を平滑化することと
を含み、
前記付加製造モードは、前記付加製造装置を用いて、前記第1チャック爪の前記金属層に当接している前記ワークに第3材料を付加することを含む
ハイブリッド工作機械。
【請求項15】
基部と爪本体とを有する第1ブロックの前記基部が第1軸まわりに回転可能なチャック本体に取り付けられた状態で、第2金属材料によって構成される前記爪本体に、前記第2金属材料よりも熱伝導率が低い第1金属材料によって構成される金属層を付加する工程と、
前記基部が前記チャック本体に取り付けられた状態で前記金属層を切削することにより、ワークに当接することとなる切削面を形成する工程と
を具備するチャック爪の作製方法を、ハイブリッド工作機械に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャック爪、チャック爪の作製方法、ワーク加工方法、チャック爪のリペア方法、ハイブリッド工作機械、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
チャック爪と、チャック爪を保持する保持部との間に断熱材を配置する技術が知られている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、断熱チャックが開示されている。特許文献1に記載の断熱チャックでは、チャック爪部と、チャック爪保持部との間に断熱材が介在される。また、チャック爪保持部と、スピンドルヘッドの取付部との間に断熱材が介在される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実願昭51-177244号(実開昭53-94907号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ワークからチャック爪への熱伝導を抑制する技術を低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態におけるチャック爪は、チャック本体に取り付けられる基部と、爪本体と、前記爪本体に付加され、ワークに当接する金属層と、を具備する。前記金属層を構成する第1金属材料は、前記爪本体を構成する第2金属材料よりも熱伝導率が低い。
【0007】
いくつかの実施形態におけるチャック爪の作製方法は、基部と爪本体とを有する第1ブロックの前記基部を、第1軸まわりに回転可能なチャック本体に取り付ける工程と、前記基部が前記チャック本体に取り付けられた状態で、前記爪本体にワークに当接することとなる金属層を付加する工程と、を具備する。前記金属層を構成する第1金属材料は、前記爪本体を構成する第2金属材料よりも熱伝導率が低い。
【0008】
いくつかの実施形態におけるワーク加工方法は、第1チャック爪を作製する工程と、前記第1チャック爪を含む複数のチャック爪にワークを取り付ける工程と、前記ワークを加工する工程と、を具備する。前記第1チャック爪を作製する工程は、基部と爪本体とを有する第1ブロックの前記基部を、第1軸まわりに回転可能なチャック本体に取り付けることと、前記基部が前記チャック本体に取り付けられた状態で、前記爪本体に金属層を付加することと、を含む。前記ワークを加工する工程は、前記第1チャック爪の前記金属層が前記ワークに当接している状態で、付加製造装置を用いて、前記ワークに第3材料を付加することを含む。前記金属層を構成する第1金属材料は、前記爪本体を構成する第2金属材料よりも熱伝導率が低い。
【0009】
いくつかの実施形態におけるチャック爪のリペア方法は、上述のチャック爪のリペア方法である。チャック爪のリペア方法は、前記金属層の少なくとも一部を切削することにより基礎面を形成する工程と、前記基礎面に前記第1金属材料を付加することにより、前記金属層を再形成する工程と、再形成された前記金属層の表面が平滑化されるよう、前記金属層を切削する工程と、を具備する。
【0010】
いくつかの実施形態におけるハイブリッド工作機械は、材料供給装置と、レーザを射出する第1ヘッドとを有する付加製造装置と、工具を支持する第2ヘッドを有する切削加工装置と、第1チャック爪を含む複数のチャック爪を介してワークを支持する第1支持装置と、前記第1ヘッドを前記第1支持装置に対して相対移動させる第1移動装置と、前記第2ヘッドを前記第1支持装置に対して相対移動させる第2移動装置と、少なくとも、前記付加製造装置、前記切削加工装置、前記第1支持装置、前記第1移動装置、および、前記第2移動装置を制御する制御装置と、を具備する。前記第1支持装置は、基部と爪本体とを有する前記第1チャック爪の前記基部が取り付けられ、第1軸まわりに回転可能なチャック本体と、前記複数のチャック爪を、前記第1軸から離れる第1方向、または、前記第1軸に近づく第2方向に移動させる爪駆動装置と、前記チャック本体を前記第1軸まわりに回転させる第1回転駆動装置と、を有する。前記制御装置は、前記チャック本体に前記基部が取り付けられた状態で行われる爪作製モードと、前記ワークが前記第1チャック爪を含む前記複数のチャック爪によって把持された状態で行われる付加製造モードと、を実行可能である。前記爪作製モードは、前記付加製造装置を用いて、第2金属材料によって構成される前記爪本体に前記第2金属材料よりも熱伝導率が低い第1金属材料によって構成される金属層を付加することと、前記切削加工装置を用いて前記金属層を切削することにより、前記金属層の表面を平滑化することと、を含む。前記付加製造モードは、前記付加製造装置を用いて、前記第1チャック爪の前記金属層に当接している前記ワークに第3材料を付加することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態におけるプログラムは、基部と爪本体とを有する第1ブロックの前記基部が第1軸まわりに回転可能なチャック本体に取り付けられた状態で、第2金属材料によって構成される前記爪本体に、前記第2金属材料よりも熱伝導率が低い第1金属材料によって構成される金属層を付加する工程と、前記基部が前記チャック本体に取り付けられた状態で前記金属層を切削することにより、ワークに当接することとなる切削面を形成する工程と、を具備するチャック爪の作製方法を、ハイブリッド工作機械に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ワークからチャック爪への熱伝導を抑制する技術を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1の実施形態におけるチャック爪が、チャック本体に取り付けられた状態を模式的に示す概略断面図である。
図2図2は、第1の実施形態におけるチャック爪が、チャック本体に取り付けられた状態を模式的に示す概略断面図である。
図3図3は、第1ブロックおよび第2ブロックを含む複数のブロックが、チャック本体に取り付けられた状態を模式的に示す概略断面図である。
図4図4は、爪本体が切削される様子を模式的に示す概略断面図である。
図5図5は、爪本体に金属層が付加される様子を模式的に示す概略断面図である。
図6図6は、比較例において、ワークに材料が付加される様子を模式的に示す概略断面図である。
図7図7は、ワークが複数のチャック爪によって把持されている様子を第1軸に沿って見た図である。
図8図8は、図7におけるA-A矢視断面図である。
図9図9は、複数のチャック爪が、複数種類のワークを把持可能な様子を模式的に示す概略断面図である。
図10図10は、第1の実施形態におけるチャック爪を模式的に示す概略断面図である。
図11図11は、第1の実施形態の第1変形例におけるチャック爪を模式的に示す概略断面図である。
図12図12は、複数のチャック爪によってワークが把持された状態を模式的に示す概略斜視図である。
図13図13は、第1の実施形態の第2変形例におけるチャック爪を模式的に示す概略断面図である。
図14図14は、第1の実施形態の第3変形例におけるチャック爪を模式的に示す概略断面図である。
図15図15は、第1の実施形態の第4変形例におけるチャック爪を模式的に示す概略断面図である。
図16図16は、第1ブロックがチャック本体に取り付けられる様子を模式的に示す概略断面図である。
図17図17は、第1ブロックがチャック本体に取り付けられる様子を模式的に示す概略断面図である。
図18図18は、爪本体が切削される様子を模式的に示す概略断面図である。
図19図19は、爪本体に金属層が付加される様子を模式的に示す概略断面図である。
図20図20は、爪本体に金属層が付加される様子を模式的に示す概略断面図である。
図21図21は、金属層が切削される様子を模式的に示す概略断面図である。
図22図22は、金属層が切削される様子を模式的に示す概略断面図である。
図23図23は、金属層の表面に溝が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
図24図24は、第1チャック爪がチャック本体から取り外される様子を模式的に示す概略断面図である。
図25図25は、第1チャック爪がチャック本体から取り外される様子を模式的に示す概略断面図である。
図26図26は、第1チャック爪がストッカに移送される様子を模式的に示す図である。
図27図27は、第1チャック爪がストッカから移送される様子を模式的に示す図である。
図28図28は、第1チャック爪がチャック本体に取り付けられる様子を模式的に示す概略断面図である。
図29図29は、複数のチャック爪にワークが取り付けられる様子を模式的に示す概略断面図である。
図30図30は、ワークが切削される様子を模式的に示す概略断面図である。
図31図31は、ワークが予熱される様子を模式的に示す概略断面図である。
図32図32は、ワークに第3材料が付加される様子を模式的に示す概略断面図である。
図33図33は、ワークが切削される様子を模式的に示す概略断面図である。
図34図34は、ワークが、第1支持装置から第2支持装置に移載される様子を模式的に示す概略断面図である。
図35図35は、ワークに第4材料が付加される様子を模式的に示す概略断面図である。
図36図36は、ワークが切削される様子を模式的に示す概略断面図である。
図37図37は、チャック爪のリペア方法の一工程が実行されている様子を模式的に示す概略断面図である。
図38図38は、チャック爪のリペア方法の一工程が実行されている様子を模式的に示す概略断面図である。
図39図39は、チャック爪のリペア方法の一工程が実行されている様子を模式的に示す概略断面図である。
図40図40は、チャック爪のリペア方法の一工程が実行されている様子を模式的に示す概略断面図である。
図41図41は、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法の一例を示すフローチャートである。
図42図42は、第1の実施形態におけるワーク加工方法の一例を示すフローチャートである。
図43図43は、第1の実施形態におけるチャック爪のリペア方法の一例を示すフローチャートである。
図44図44は、第2の実施形態におけるハイブリッド工作機械を模式的に示す図である。
図45図45は、プログラムを記録した記憶媒体の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施形態におけるチャック爪1、チャック爪の作製方法、ワーク加工方法、チャック爪のリペア方法、ハイブリッド工作機械100、および、プログラム922について説明する。なお、以下の実施形態の説明において、同一の機能を有する部位、部材については同一の符号を付し、同一の符号が付された部位、部材についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0015】
(方向の定義)
本明細書において、チャック本体31の回転軸から離れる方向を「第1方向DR1」と定義する。また、チャック本体31の回転軸に近づく方向を「第2方向DR2」と定義する。以下において、チャック本体31の回転軸のことを「第1軸AX」という。
【0016】
本明細書において、第1軸AXに沿う方向であって、チャック爪1からチャック本体31に向かう方向を「第3方向DR3」と定義する。また、第3方向DR3とは反対の方向を「第4方向DR4」と定義する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1乃至図43を参照して、第1の実施形態におけるチャック爪1、チャック爪の作製方法、ワーク加工方法、および、チャック爪のリペア方法について説明する。図1および図2は、第1の実施形態におけるチャック爪1が、チャック本体31に取り付けられた状態を模式的に示す概略断面図である。図3は、第1ブロックBL1および第2ブロックBL2を含む複数のブロックが、チャック本体31に取り付けられた状態を模式的に示す概略断面図である。図4は、爪本体13が切削される様子を模式的に示す概略断面図である。図5は、爪本体13に金属層15が付加される様子を模式的に示す概略断面図である。図6は、比較例において、ワークWに材料が付加される様子を模式的に示す概略断面図である。図7は、ワークWが複数のチャック爪1によって把持されている様子を第1軸AXに沿って見た図である。図8は、図7におけるA-A矢視断面図である。図9は、複数のチャック爪1が、複数種類のワークW、W2を把持可能な様子を模式的に示す概略断面図である。図10は、第1の実施形態におけるチャック爪1を模式的に示す概略断面図である。図11は、第1の実施形態の第1変形例におけるチャック爪1を模式的に示す概略断面図である。図12は、複数のチャック爪1によってワークWが把持された状態を模式的に示す概略斜視図である。なお、図12において、ワークWは破線によって示されている。また、図12において、複数のチャック爪1の形状を把握し易くするために、複数のチャック爪1は、ワークWの背後に隠れる部分についても図示されている。図13は、第1の実施形態の第2変形例におけるチャック爪1を模式的に示す概略断面図である。図14は、第1の実施形態の第3変形例におけるチャック爪1を模式的に示す概略断面図である。図15は、第1の実施形態の第4変形例におけるチャック爪1を模式的に示す概略断面図である。図16および図17は、第1ブロックBL1がチャック本体31に取り付けられる様子を模式的に示す概略断面図である。図18は、爪本体13が切削される様子を模式的に示す概略断面図である。図19および図20は、爪本体13に金属層15が付加される様子を模式的に示す概略断面図である。図21および図22は、金属層15が切削される様子を模式的に示す概略断面図である。図23は、金属層15の表面に溝161が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。図24および図25は、第1チャック爪1Aがチャック本体31から取り外される様子を模式的に示す概略断面図である。図26は、第1チャック爪1Aがストッカ101に移送される様子を模式的に示す図である。図27は、第1チャック爪1Aがストッカ101から移送される様子を模式的に示す図である。図28は、第1チャック爪1Aがチャック本体31に取り付けられる様子を模式的に示す概略断面図である。図29は、複数のチャック爪1にワークWが取り付けられる様子を模式的に示す概略断面図である。図30は、ワークWが切削される様子を模式的に示す概略断面図である。図31は、ワークWが予熱される様子を模式的に示す概略断面図である。図32は、ワークWに第3材料G3が付加される様子を模式的に示す概略断面図である。図33は、ワークWが切削される様子を模式的に示す概略断面図である。図34は、ワークWが、第1支持装置3から第2支持装置4に移載される様子を模式的に示す概略断面図である。図35は、ワークWに第4材料G4が付加される様子を模式的に示す概略断面図である。図36は、ワークWが切削される様子を模式的に示す概略断面図である。図37乃至図40は、チャック爪のリペア方法の一工程が実行されている様子を模式的に示す概略断面図である。図41は、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法の一例を示すフローチャートである。図42は、第1の実施形態におけるワーク加工方法の一例を示すフローチャートである。図43は、第1の実施形態におけるチャック爪のリペア方法の一例を示すフローチャートである。
【0018】
図1に例示されるように、第1の実施形態におけるチャック爪1は、チャック本体31によって支持される部材である。より具体的には、チャック爪1は、第1軸AX(換言すれば、チャック本体31の回転軸)から離れる第1方向DR1、および、当該回転軸に近づく第2方向DR2に移動可能なようにチャック本体31によって支持される。図1に記載の例において、第1方向DR1は、チャック本体31の回転軸から離れる放射方向に対応する。また、第2方向DR2は、第1方向DR1とは反対の方向である。
【0019】
図1に記載の例では、チャック本体31は、複数のチャック爪1を支持している。以下の説明において、複数のチャック爪1のうち、第1チャック爪1Aを代表して説明する。
【0020】
図1および図2に記載の例では、チャック本体31は、可動部32と、当該可動部32を移動可能に支持するベース部33とを有する。また、第1チャック爪1Aは、チャック本体31の可動部32とともに、第1軸AX(換言すれば、チャック本体31の回転軸)から離れる第1方向DR1に移動可能である。また、第1チャック爪1Aは、チャック本体31の可動部32とともに、第1軸AXに近づく第2方向DR2に移動可能である。
【0021】
図2に例示されるように、第1チャック爪1Aは、チャック本体31に取り付けられる基部11と、爪本体13と、金属層15とを有する。
【0022】
金属層15は、爪本体13に付加され、ワークWに当接する。金属層15を構成する第1金属材料は、爪本体13を構成する第2金属材料よりも熱伝導率が低い。金属層15は、例えば、爪本体13上で金属溶融物が固化することにより形成される層である。
【0023】
続いて、第1の実施形態における第1チャック爪1Aの作製方法について説明する。
【0024】
図3に例示されるように、第1ステップST1において、基部11および爪本体13を有する第1ブロックBL1が、第1軸AXまわりに回転可能なチャック本体31に取り付けられる。第1ステップST1は、第1取付工程である。なお、第1ブロックBL1において、基部11と爪本体13とは一体的に形成されていてもよい。代替的に、基部11は、固定部材を介して、爪本体13に固定されていてもよい。
【0025】
第1取付工程(第1ステップST1)は、第1ブロックBL1の基部11を、チャック本体31(より具体的には、チャック本体31の可動部32)に取り付けることを含む。
【0026】
図4に例示されるように、第2ステップST2において、爪本体13が切削される。第2ステップST2は、第1切削工程である。第1切削工程(第2ステップST2)は、第1ブロックBL1の基部11がチャック本体31に取り付けられた状態で、爪本体13に基礎面130が形成されるよう、爪本体13を切削することを含む。
【0027】
なお、第1ブロックBL1がチャック本体31に取り付けられる前に、爪本体13に予め基礎面130が形成されている場合には、第2ステップST2は、省略される。
【0028】
図5に例示されるように、第3ステップST3において、爪本体13に金属層15が付加される。第3ステップST3は、第1付加工程である。第1付加工程(第3ステップST3)は、基部11がチャック本体31に取り付けられた状態で、爪本体13にワークWに当接することとなる金属層15を付加することを含む。
【0029】
金属層15を構成する第1金属材料G1は、爪本体13を構成する第2金属材料よりも熱伝導率が低い。
【0030】
図6に例示されるように、比較例におけるチャック爪1’によって保持された予熱済みのワークWに付加製造を行う場合を想定する。図6に記載の例では、付加製造時に、ワークWからチャック爪1’に放熱され、ワークWの温度が低下する。ワークWの温度が低下することにより、ワークWへの材料の付加不良(より具体的には、ワークWに付加された材料の割れ)が発生する。
【0031】
これに対し、第1の実施形態におけるチャック爪1では、爪本体13に、熱伝導率が低い金属層15が付加されている。また、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法では、爪本体13に、熱伝導率が低い金属層15が付加される。
【0032】
第1の実施形態では、第1チャック爪1Aを含む複数のチャック爪1によってワークWが把持されるとき、ワークWに、熱伝導率が低い金属層15が接触する。よって、ワークWに材料を付加する付加製造時に(図2を参照。)、ワークWから第1チャック爪1Aへの放熱が抑制され、ワークWの温度低下が抑制される。こうして、ワークWへの材料の付加不良(より具体的には、ワークWに付加された材料の割れ)が、防止または抑制される。
【0033】
第1の実施形態におけるチャック爪1では、金属層15は、固定部材を用いることなく、爪本体13に付加されている。この場合、金属層15を、爪本体13に固定する固定部材を用意する必要がない。よって、ワークWから第1チャック爪1Aへの熱伝導を抑制する技術を低コストで提供することができる。
【0034】
爪本体13に、熱伝導率が低い第1部材を、固定部材を介して爪本体13に固定する場合を想定する。この場合、ワークWの形状に応じて爪本体13の形状を柔軟に変更することができない。例えば、ワークWの形状に応じて爪本体13の形状を変更すると、第1部材の形状が爪本体13の形状に整合しなくなる可能性がある。
【0035】
これに対し、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法では、把持対象であるワークWの形状に応じて、爪本体13の形状を柔軟に変更することができる。また、ワークWの形状に応じて、金属層15を設ける位置、金属層15を設ける範囲、金属層15の厚さ等を容易に設定することができる。
【0036】
(任意付加的な構成)
続いて、図1乃至図43を参照して、第1の実施形態における第1チャック爪1A、チャック爪の作製方法、ワーク加工方法、および、チャック爪のリペア方法において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0037】
(金属層15を構成する第1金属材料、および、爪本体13を構成する第2金属材料)
爪本体13は、例えば、鋼(より具体的には、中炭素鋼)によって形成されている。換言すれば、爪本体13を構成する第2金属材料は、例えば、鋼(より具体的には、中炭素鋼)である。なお、本明細書において、中炭素鋼とは、炭素含有量が0.25重量%以上0.6重量%以下の炭素鋼を意味するものとする。なお、爪本体13を構成する第2金属材料は、中炭素鋼、あるいは、鋼に限定されず任意である。
【0038】
金属層15は、例えば、ステンレス鋼によって形成されている。代替的に、金属層15は、ニッケルを主成分とするニッケル合金(例えば、ニッケルを主成分、クロムを第二成分として含むニッケルクロム合金)によって形成されていてもよい。更に代替的に、金属層15は、コバルトを主成分とするコバルト合金(例えば、コバルトを主成分、クロムを第二成分として含むコバルトクロム合金)によって形成されていてもよい。更に代替的に、金属層15は、熱伝導率が低い金型鋼、熱伝導率が低いハイス鋼によって形成されていてもよい。換言すれば、金属層15を構成する第1金属材料は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金(より具体的には、ニッケルクロム合金)、コバルト合金(より具体的には、コバルトクロム合金)、熱伝導率が低い金型鋼、熱伝導率が低いハイス鋼等である。なお、金属層15を構成する第1金属材料は、上述の例に限定されない。
【0039】
金属層15を構成する第1金属材料の熱伝導率は、爪本体13を構成する第2金属材料の熱伝導率の、例えば、0.5倍以下、より好ましくは、0.4倍以下、更により好ましくは、0.3倍以下である。なお、金属層15を構成する第1金属材料の熱伝導率と、爪本体13を構成する第2金属材料の熱伝導率との比較を容易にするため、本明細書における「熱伝導率」は、常温における熱伝導率を意味するものとする。
【0040】
第1の実施形態における第1チャック爪1Aにおいて、ワークWに当接することとなる部分の全体が金属層15によって構成されていることが好ましい。この場合、熱伝導率が相対的に高い爪本体13が、ワークWに接触しない。よって、ワークWから第1チャック爪1Aへの熱伝導が効果的に抑制され、ワークWの温度低下が効果的に抑制される。
【0041】
図8に記載の例では、金属層15は、ワークWの外周面Waに当接する第1部分15aと、ワークWの端面(より具体的には、ワークWの第3方向DR3側の端面)に当接する第2部分15bと、を有する。この場合、ワークWの外周面Waから第1チャック爪1Aへの放熱が抑制され、且つ、ワークWの端面から第1チャック爪1Aへの放熱が抑制される。よって、ワークWの外周面Waが第1チャック爪1Aを含む複数のチャック爪1によって把持される場合において、ワークWの温度低下が効果的に抑制される。なお、本明細書において、ワークWの第3方向DR3側の端面のことを「第1端面Wb」といい、ワークWの第4方向DR4側の端面のことを「第2端面Wd」という。
【0042】
代替的に、第1チャック爪1Aにおいて、ワークWの外周面Waに当接する第1部分15aが第1金属材料の金属層15によって構成され、ワークWの第1端面Wbに当接する第2部分15bが第2金属材料の爪本体13によって構成されていてもよい。更に代替的に、第1チャック爪1Aにおいて、ワークWの外周面Waに当接する第1部分15aが第2金属材料の爪本体13によって構成され、ワークWの第1端面Wbに当接する第2部分15bが第1金属材料の金属層15によって構成されていてもよい。これらの場合でも、全く金属層15が付加されない場合と比較すれば、ワークWの温度低下が抑制される。
【0043】
図2に記載の例では、金属層15は、ワークWの内周面Wcに当接する第3部分15cと、ワークWの第1端面Wbに当接する第2部分15bと、を有する。この場合、ワークWの内周面Wcから第1チャック爪1Aへの放熱が抑制され、且つ、ワークWの第1端面Wbから第1チャック爪1Aへの放熱が抑制される。よって、ワークWの内周面Wcが第1チャック爪1Aを含む複数のチャック爪1によって把持される場合において、ワークWの温度低下が効果的に抑制される。
【0044】
代替的に、第1チャック爪1Aにおいて、ワークWの内周面Wcに当接する第3部分15cが第1金属材料の金属層15によって構成され、ワークWの第1端面Wbに当接する第2部分15bが第2金属材料の爪本体13によって構成されていてもよい。更に代替的に、第1チャック爪1Aにおいて、ワークWの内周面Wcに当接する第3部分15cが第2金属材料の爪本体13によって構成され、ワークWの第1端面Wbに当接する第2部分15bが第1金属材料の金属層15によって構成されていてもよい。これらの場合でも、全く金属層15が付加されない場合と比較すれば、ワークWの温度低下が抑制される。
【0045】
図9に例示されるように、金属層15は、ワークWの外周面Waに当接する第1部分15aと、ワークWの第1端面Wbに当接する第2部分15bと、他のワークW2の内周面に当接する第3部分15cと、を有していてもよい。この場合、第1チャック爪1Aを、複数種類のワークの把持に用いることができる。
【0046】
図10図11に例示されるように、金属層15は、付加製造層151であってもよい。換言すれば、金属層15は、付加製造によって爪本体13に付加された層であってもよい。金属層15が付加製造層151である場合、金属層15の厚さを大きくすることが容易である。金属層15が十分な厚さを有する場合、ワークWからチャック爪1への熱伝導が効果的に抑制される。また、金属層15が十分な厚さを有する場合、金属層15の表面16に、溝161(図13を参照。)を形成するのが容易である。
【0047】
金属層15の厚さは、例えば、0.5mm以上5mm以下である。より具体的には、図10に記載の例において、金属層15の第1部分15aの厚さH1、および、金属層15の第2部分15bの厚さH2の各々は、0.5mm以上5mm以下である。図11に記載の例おいて、金属層15の第2部分15bの厚さH2、および、金属層15の第3部分15cの厚さの各々は、0.5mm以上5mm以下である。図10に記載の例において、第2部分15bの厚さH2は、第1部分15aの厚さH1より大きくてもよいし、第1部分15aの厚さH1より小さくてもよいし、第1部分15aの厚さH1と等しくてもよい。図11に記載の例において、第2部分15bの厚さH2は、第3部分15cの厚さH3より大きくてもよいし、第3部分15cの厚さH3より小さくてもよいし、第3部分15cの厚さH3と等しくてもよい。なお、金属層15の厚さは、上述の例に限定されない。
【0048】
金属層15が付加製造層151である場合、金属層15の再生が容易である。例えば、チャック爪1の使用によって金属層15が損耗した場合、金属層15を再付加することにより、金属層15を再生させることができる。
【0049】
金属層15が付加製造層151である場合、第1チャック爪1AのうちワークWに接触することとなる面にのみ金属層15を付加するのが容易である。例えば、図10に記載の例では、第1チャック爪1Aが有する複数の面のうち、ワークWの外周面Waに当接することとなる第1面16-1、および、ワークWの第1端面Wbに当接することとなる第2面16-2が、金属層15によって構成されている。また、図11に記載の例では、チャック爪1が有する複数の面のうち、ワークWの内周面Wcに当接することとなる第3面16-3、および、ワークWの第1端面Wbに当接することとなる第2面16-2が、金属層15によって構成されている。チャック爪1のうちワークWに接触しない面への金属層15の付加が省略される場合、金属層15を付加することに伴う加工コストの増加、および、金属層15を付加することに伴う加工時間の増加が抑制される。
【0050】
金属層15が付加製造層151である場合、ワークWに付加製造を行う付加製造装置50を用いて、当該ワークWを保持する第1チャック爪1Aの爪本体13に金属層15を付加することができる。換言すれば、1台の付加製造装置50を用いて、第1チャック爪1Aの加工と、ワークWの加工との両方を行うことができる。
【0051】
図12に記載の例では、金属層15において、ワークWの外周面Waに当接する第1面16-1は、円弧状面である。当該円弧状面は、ワークWの外周面Waの半径に実質的に等しい曲率半径を有することが好ましい。また、チャック爪1がチャック本体31に取り付けられた状態において、当該円弧状面の中心線は、第1軸AXと実質的に同軸であることが好ましい。代替的に、ワークWの外周面Waに当接する第1面16-1は、平面であってもよい。図12に記載の例では、第1面16-1は、第1軸AXに平行な方向に延在する面である。
【0052】
図12に記載の例では、金属層15において、ワークWの第1端面Wbに当接する第2面16-2は、平面である。図12に記載の例では、第2面16-2は、第1軸AXに垂直な面である。
【0053】
金属層15において、ワークWの内周面Wcに当接することとなる第3面16-3(図11を参照。)は、円弧状面であってもよいし、平面であってもよい。第3面16-3が円弧状面である場合、当該円弧状面は、ワークWの内周面Wcの半径に実質的に等しい曲率半径を有することが好ましい。第3面16-3は、チャック本体31の回転軸(換言すれば、第1軸AX)に平行な方向に延在する面である。
【0054】
図11に記載の例では、ワークWの第1端面Wbに当接することとなる第2面16-2は、平面である。図11に記載の例では、第2面16-2は、チャック本体31の回転軸(換言すれば、第1軸AX)に垂直な面である。
【0055】
図10に記載の例において、金属層15の表面16(より具体的には、第1面16-1、および、第2面16-2)は、切削面16s(換言すれば、切削加工により形成された面)である。また、図11に記載の例において、金属層15の表面16(より具体的には、第3面16-3、および、第2面16-2)は、切削面16s(換言すれば、切削加工により形成された面)である。
【0056】
金属層15の表面16が切削加工により形成される場合、当該表面16を滑らかな面にすることができる。この場合、金属層15に接触するワークWが、金属層15によって傷つけられることが抑制される。なお、切削加工の後、研削加工が行われる場合がある。本明細書において、切削後の研削によって形成された面は、切削面16sの一態様であるとみなされる。
【0057】
図10図11に記載の例において、金属層15の表面16(より具体的には、第1面16-1および第2面16-2、または、第3面16-3および第2面16-2)は、溝および突起を有さない平滑面である。
【0058】
代替的に、図13図14に例示されるように、金属層15の表面16は、溝161を有する平滑面であってもよい。より具体的には、金属層15の第1面16-1は、溝161-1を有する平滑面であってもよい。金属層15の第2面16-2は、溝161-2を有する平滑面であってもよい。また、金属層15の第3面16-3は、溝161-3を有する平滑面であってもよい。なお、溝を有する平滑面とは、平滑面に溝が形成された態様を意味する。よって、溝を有する平滑面において、溝以外の部分は平滑である。
【0059】
金属層15の表面16が、溝161を有する場合、金属層15とワークWとの接触面積が低減される。よって、ワークWから第1チャック爪1Aへの放熱が更に抑制される。
【0060】
図8乃至図14に記載の例では、第1チャック爪1Aの爪本体13の表面の一部が、金属層15を構成する第1金属材料によって覆われている。また、第1チャック爪1Aの爪本体13の表面の他の一部において、爪本体13を構成する第2金属材料が当該第1金属材料によって覆われることなく露出している。爪本体13の表面のうちワークWに接触することとなる部分が第1金属材料によって覆われ、爪本体13の表面のうちワークWと接触しない部分がそのまま露出する場合、爪本体13に付加する第1金属材料の量を少なくすることができる。また、爪本体13に第1金属材料を付加するのに要する時間が短くて済む。
【0061】
(第1チャック爪1Aの基部11)
図2図8に記載の例では、第1チャック爪1Aは、チャック本体31に取り付けられる基部11を有する。基部11は、チャック本体31に形成された係合部312に係合する第1係合部112を有していてもよい。図2図8に記載の例では、係合部312に対する第1係合部112の相対位置を調整することにより、チャック本体31の可動部32に対する第1チャック爪1Aの取り付け位置を調整可能である。
【0062】
(被保持部12)
第1チャック爪1Aは、爪交換装置によって保持される被保持部12を有していてもよい。被保持部12は、基部11または爪本体13に設けられる。図15に記載の例では、被保持部12は、基部11に設けられている。図15に記載の例では、被保持部12は、爪交換装置に係合可能な第2係合部122を含む。図17に例示されるように、第1チャック爪1Aがチャック本体31に取り付けられた状態において、被保持部12(より具体的には、第2係合部122)は、チャック本体31の外部に露出するように構成されることが好ましい。この場合、爪交換装置102が、当該被保持部12にアプローチし易い。
【0063】
(爪本体13の基礎面130)
爪本体13は、金属層15が付加される基礎面130を有する。図4に記載の例では、基礎面130は、切削面である。基礎面130が切削面である場合、基礎面130から不純物が除去され、且つ、基礎面130が滑らかな面となる。
【0064】
(チャック爪の作製方法)
第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法によって形成されるチャック爪は、図1乃至図15のいずれかに例示される第1チャック爪1Aであってもよいし、その他のチャック爪であってもよい。
【0065】
図16および図17に例示されるように、第1ステップST1において、基部11および爪本体13を有する第1ブロックBL1が、第1軸AXまわりに回転可能なチャック本体31(より具体的には、チャック本体31の可動部32)に取り付けられる。第1ステップST1は、第1取付工程である。なお、第1ブロックBL1において、基部11と爪本体13とは一体的に形成されていてもよい。代替的に、基部11は、固定部材を介して、爪本体13に固定されていてもよい。
【0066】
第1ブロックBL1において、爪本体13の外形形状は、略直方体形状であってもよい。この場合、作製されるチャック爪1の形状の自由度が大きくなる。換言すれば、略直方体形状の爪本体13を切削することにより、任意形状の爪本体13を形成することができる。図16に記載の例では、第1ブロックBL1は、新品のブロックである。
【0067】
代替的に、第1ブロックBL1において、爪本体13の外形形状は、最終的に形成される爪本体の外形形状に近似した形状であってもよい。この場合、第1ブロックBL1から除去されるべき部分の体積が小さくなり、爪本体13の切削に要する時間が短くて済む。第1ブロックBL1は、新品のブロックであってもよいし、中古のブロックであってもよい。例えば、第1ブロックBL1は、使用済みのチャック爪であってもよい。
【0068】
図16に記載の例では、第1ブロックBL1の基部11は、チャック本体31に係合する第1係合部112を有する。また、第1ブロックBL1は、爪交換装置102によって保持される被保持部12を有する。被保持部12は、爪交換装置102に係合可能な第2係合部122を含んでいてもよい。
【0069】
図16および図17に記載の例では、第1取付工程は、爪交換装置102が、第1ブロックBL1をチャック本体31に移送することと、爪交換装置102が、第1ブロックBL1をチャック本体31に取り付けることとを含む。この場合、チャック本体31への第1ブロックBL1の取り付けが、爪交換装置102を用いて自動的に行われる。
【0070】
代替的に、第1取付工程は、手動で行われてもよい。この場合、被保持部12(より具体的には、第2係合部122)は省略されてもよい。
【0071】
図18に例示されるように、第2ステップST2において、爪本体13が切削される。第2ステップST2は、第1切削工程である。第1切削工程は、第1ブロックBL1の基部11がチャック本体31(より具体的には、チャック本体31の可動部32)に取り付けられた状態で、爪本体13に基礎面130が形成されるよう、爪本体13を切削することを含む。第1切削工程(第2ステップST2)は、ワークWの表面の一部に概ね対応する形状の基礎面130が形成されるように、第1ブロックBL1を切削することを含む。
【0072】
図18に記載の例では、第1切削工程(第2ステップST2)は、爪本体13に、第1軸AX(換言すれば、チャック本体31の回転軸)に平行な方向に延在する第1基礎面131、および、第1軸AXに垂直な第2基礎面132が形成されるよう、爪本体13を切削することを含む。
【0073】
図18に記載の例では、第1切削工程(第2ステップST2)は、切削工具Tによって爪本体13を切削することにより、爪本体13に、第1基礎面131および/または第2基礎面132を形成することを含む。
【0074】
図18に例示されるように、第1切削工程(第2ステップST2)は、旋削によって、爪本体13に、第1基礎面131および/または第2基礎面132を形成することを含んでいてもよい。より具体的には、第1切削工程(第2ステップST2)は、基部11が取り付けられたチャック本体31が、第1軸AXまわりに回転している状態で(矢印R1を参照。)、切削工具Tを、爪本体13に繰り返し接触させることを含んでいてもよい。
【0075】
なお、第1ブロックBL1がチャック本体31に取り付けられる前に、爪本体13に予め基礎面130が形成されている場合には、第2ステップST2は、省略される。
【0076】
図19に例示されるように、第3ステップST3において、爪本体13に金属層15が付加される。第3ステップST3は、第1付加工程である。
【0077】
第1付加工程(第3ステップST3)は、基部11がチャック本体31(より具体的には、チャック本体31の可動部32)に取り付けられた状態で、爪本体13にワークWに当接することとなる金属層15を付加することを含む。金属層15を構成する第1金属材料G1は、爪本体13を構成する第2金属材料よりも熱伝導率が低い。
【0078】
図19に記載の例では、第1付加工程(第3ステップST3)は、金属付加装置5を用いて行われる。図19に記載の例では、金属付加装置5は、付加製造装置50である。付加製造装置50は、肉盛り溶接装置と呼ばれる場合もある。
【0079】
図19に記載の例において、付加製造装置50は、爪本体13(より具体的には、基礎面130)に向けて第1金属材料G1(より具体的には、第1金属材料の金属粉体g1)を供給するとともに、爪本体13(より具体的には、基礎面130)に向けてレーザLBを照射する。その結果、レーザLBのエネルギによって加熱される第1金属材料が融解し、融解金属が、爪本体13(より具体的には、基礎面130)に付着する。こうして、爪本体13(より具体的には、基礎面130)に第1金属材料が付着し、基礎面130を覆うように金属層15が形成される。図19に記載の例では、レーザLBによって、基礎面130を構成する第2金属材料の一部も溶融される。このため、基礎面130を構成する第2金属材料と、基礎面130に供給される第1金属材料とが強固に接合する。
【0080】
代替的に、金属付加装置5は、第1金属材料を爪本体13(より具体的には、基礎面130)に付加する溶射装置であってもよい。溶射装置は、高速フレーム溶射、ガスフレーム溶射、プラズマ溶射、アーク溶射、コールドスプレー等の方式で、第1金属材料を、爪本体13(より具体的には、基礎面130)に付加する。
【0081】
図19に例示されるように、第1付加工程(第3ステップST3)は、爪本体13を第1軸AXまわりに回転させることと(矢印R2を参照。)、第1軸AXまわりに回転している状態の爪本体13に金属層15を付加することと、を含んでいてもよい。爪本体13が第1軸AXまわりに回転されることにより、第1付加工程の実行時に、金属付加装置5の姿勢を変更する必要がないか、あるいは、金属付加装置5の姿勢変更が小さくて済む。金属付加装置5の姿勢変更が小さい場合、金属層15の形成精度が向上する。
【0082】
図19および図20に記載の例では、第1付加工程(第3ステップST3)は、第1基礎面131および第2基礎面132の両方に金属層15を付加することを含む。より具体的には、図19に記載の例では、第1付加工程(第3ステップST3)は、付加製造装置50を用いて、爪本体13の第2基礎面132に、第1金属材料を付加することを含む。付加製造装置50は、第2基礎面132に向けて第1金属材料を供給するとともに、第2基礎面132に向けてレーザLBを照射する。その結果、レーザLBのエネルギによって加熱される第1金属材料が融解し、融解金属が、第2基礎面132に付着する。こうして、第2基礎面132を覆うように金属層15が形成される。
【0083】
図20に記載の例では、第1付加工程(第3ステップST3)は、付加製造装置50を用いて、爪本体13の第1基礎面131に、第1金属材料を付加することを含む。付加製造装置50は、第1基礎面131に向けて第1金属材料を供給するとともに、第1基礎面131に向けてレーザLBを照射する。その結果、レーザLBのエネルギによって加熱される第1金属材料が融解し、融解金属が、第1基礎面131に付着する。こうして、第1基礎面131を覆うように金属層15が形成される。
【0084】
図19および図20に記載の例では、第2基礎面132に第1金属材料が付加された後に、第1基礎面131に第1金属材料が付加されている。代替的に、第1基礎面131に第1金属材料が付加された後に、第2基礎面132に第1金属材料が付加されてもよい。
【0085】
図21に例示されるように、第4ステップST4において、金属層15が切削される。第4ステップST4は、第2切削工程である。第2切削工程(第4ステップST4)は、基部11がチャック本体31(より具体的には、チャック本体31の可動部32)に取り付けられた状態で、金属層15の表面が平滑化されるよう、金属層15を切削することを含む。第2切削工程(第4ステップST4)は、ワークWの表面の一部に対応する形状の切削面16sが形成されるように、金属層15を切削することを含む。
【0086】
図21および図22に記載の例では、第2切削工程(第4ステップST4)は、金属層15に、第1軸AX(換言すれば、チャック本体31の回転軸)に平行な方向に延在する第1切削面16s-1、および、第1軸AXに垂直な第2切削面16s-2が形成されるよう、金属層15を切削することを含む。
【0087】
図21および図22に記載の例では、第2切削工程(第4ステップST4)は、切削工具Tによって金属層15を切削することにより、金属層15に、第1切削面16s-1および/または第2切削面16s-2を形成することを含む。なお、金属層15を切削する切削工具は、爪本体13を切削する工具と同一であってもよいし、爪本体13を切削する切削工具とは別の工具であってもよい。
【0088】
図21および図22に例示されるように、第2切削工程(第4ステップST4)は、旋削によって、金属層15に、第1切削面16s-1および/または第2切削面16s-2を形成することを含んでいてもよい。より具体的には、第2切削工程(第4ステップST4)は、基部11が取り付けられたチャック本体31が、第1軸AXまわりに回転している状態で(矢印R3を参照。)、切削工具Tを、金属層15に繰り返し接触させることを含んでいてもよい。
【0089】
付加的に、図23に例示されるように、第2切削工程(第4ステップST4)は、金属層15の表面に溝161を形成することを含んでいてもよい。例えば、第2切削工程(第4ステップST4)は、第1軸AXまわりに回転している金属層15に(矢印R4を参照。)、溝入れ工具T3等の工具を接触させることにより、金属層15の第1面16-1に溝161-1を形成することを含んでいてもよい。また、第2切削工程(第4ステップST4)は、第1軸AXまわりに回転している金属層15に、溝入れ工具T3等の工具を接触させることにより、金属層15の第2面16-2に溝161-2を形成することを含んでいてもよい。なお、金属層15の表面16に溝161を形成する工程は、省略されてもよい。
【0090】
上述の複数の工程によって、チャック爪1(例えば、第1チャック爪1A)が形成される。
【0091】
チャック爪の作製方法は、取り外し工程(第5ステップST5)を有していてもよい。取り外し工程は、形成された第1チャック爪1A(換言すれば、基部11、爪本体13、および、爪本体13に付加された金属層15を有する第1チャック爪1A)を、チャック本体31から取り外す工程である。
【0092】
図24に記載の例では、取り外し工程は、チャック本体31と基部11の第1係合部112との間の係合が解除されるよう、爪交換装置102が、操作部39を操作することを含む。図24に記載の例では、爪交換装置102がチャック本体31に設けられた操作部39を押圧することにより、チャック本体31の係合部312と基部11の第1係合部112との間の係合が解除される。
【0093】
図25に記載の例では、取り外し工程は、爪交換装置102が、第1チャック爪1Aを、第1軸AXから離れる方向に引き抜くことを含む。
【0094】
図24および図25に記載の例では、取り外し工程が、爪交換装置102を用いて自動的に行われる。代替的に、取り外し工程は、手動で行われてもよい。
【0095】
チャック爪の作製方法は、第1移送工程(第6ステップST6)を有していてもよい。第1移送工程は、チャック本体31から取り外された第1チャック爪1Aを、ストッカ101に移送することを含む。
【0096】
図26に記載の例では、移送工程は、爪交換装置102が第1チャック爪1Aを、ストッカ101に移送することを含む。爪交換装置102は、第1チャック爪1Aをチャック本体31から取り外す第1ユニット102aと、第1チャック爪1Aをストッカ101に移送する第2ユニット102bと、を有していてもよい。
【0097】
ストッカ101に移送された第1チャック爪1Aは、爪ホルダ101aによって保持されるようにしてもよい。
【0098】
図26に記載の例では、第1移送工程が、爪交換装置102を用いて自動的に行われる。代替的に、第1移送工程は、手動で行われてもよい。
【0099】
(第2チャック爪1B、および、第3チャック爪1C)
第2チャック爪1Bは、第1チャック爪1Aと同様の構成を有する。上述の第1チャック爪1Aの説明において、「第1チャック爪1A」、「基部11」、「爪本体13」、「金属層15」を、それぞれ、「第2チャック爪1B」、「第2基部11B」、「第2爪本体13B」、「第2金属層15B」に読み替えることにより、上述の第1チャック爪1Aの説明を第2チャック爪1Bの説明とみなし、第2チャック爪1Bについての繰り返しとなる説明は省略する。
【0100】
第3チャック爪1Cは、第1チャック爪1Aと同様の構成を有する。上述の第1チャック爪1Aの説明において、「第1チャック爪1A」、「基部11」、「爪本体13」、「金属層15」を、それぞれ、「第3チャック爪1C」、「第3基部11C」、「第3爪本体13C」、「第3金属層15C」に読み替えることにより、上述の第1チャック爪1Aの説明を第3チャック爪1Cの説明とみなし、第3チャック爪1Cについての繰り返しとなる説明は省略する。
【0101】
(第2チャック爪1Bの作製方法、および、第3チャック爪1Cの作製方法)
第2チャック爪1Bの作製方法は、第1チャック爪1Aの作製方法と同様の工程を有する。上述の第1チャック爪1Aの作製方法の説明において、「第1チャック爪1A」、「基部11」、「爪本体13」、「金属層15」、「第1ブロックBL1」を、それぞれ、「第2チャック爪1B」、「第2基部11B」、「第2爪本体13B」、「第2金属層15B」、「第2ブロックBL2」に読み替えることにより、上述の第1チャック爪1Aの作製方法の説明を第2チャック爪1Bの作製方法の説明とみなし、第2チャック爪1Bの作製方法についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0102】
第3チャック爪1Cの作製方法は、第1チャック爪1Aの作製方法と同様の工程を有する。上述の第1チャック爪1Aの作製方法の説明において、「第1チャック爪1A」、「基部11」、「爪本体13」、「金属層15」、「第1ブロックBL1」を、それぞれ、「第3チャック爪1C」、「第3基部11C」、「第3爪本体13C」、「第3金属層15C」、「第3ブロック」に読み替えることにより、上述の第1チャック爪1Aの作製方法の説明を第3チャック爪1Cの作製方法の説明とみなし、第3チャック爪1Cの作製方法についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0103】
(複数のチャック爪1の作製)
第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法は、第1チャック爪1Aおよび第2チャック爪1Bを含む複数のチャック爪を作製することを含んでいてもよい。
【0104】
図16に例示されるように、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法は、基部11および爪本体13を有する第1ブロックBL1の基部11を、第1軸AXまわりに回転可能なチャック本体31に取り付けることと、第2基部11Bおよび第2爪本体13Bを有する第2ブロックBL2の第2基部11Bを、当該チャック本体31に取り付けることと、を含んでいてもよい。
【0105】
図18に例示されるように、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法は、爪本体13を切削することと、第2爪本体13Bを切削することと、を含んでいてもよい。図18に記載の例では、第1ブロックBL1の基部11および第2ブロックBL2の第2基部11Bの両方がチャック本体31に取り付けられた状態で、爪本体13を切削することと、第2爪本体13Bを切削することとの両方が実行される。
【0106】
図18に例示されるように、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法は、第1ブロックBL1および第2ブロックBL2の両方が取り付けられたチャック本体31を第1軸AXまわりに回転させることと、第1軸AXまわりに回転する第1ブロックBL1および第2ブロックBL2に、切削工具Tを繰り返し接触させることとを含んでいてもよい。図18に記載の例では、第1ブロックBL1における基礎面130の形成と、第2ブロックBL2における基礎面130Bの形成とが、旋削工具T1を用いて、並列的に行われる。換言すれば、第1ブロックBL1と第2ブロックBL2とが、旋削工具T1を用いて、実質的に同時に旋削される。
【0107】
図19および図20に例示されるように、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法は、爪本体13に金属層15を付加することと、第2爪本体13Bに第2金属層15Bを付加することと、を含んでいてもよい。第2金属層15Bを構成する材料は、金属層15を構成する材料(すなわち、第1金属材料G1)と同一の材料である。図19および図20に記載の例では、基部11および第2基部11Bの両方がチャック本体31に取り付けられた状態で、爪本体13に金属層15を付加することと、第2爪本体13Bに第2金属層15Bを付加することとの両方が実行される。
【0108】
図19および図20に例示されるように、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法は、爪本体13および第2爪本体13Bをチャック本体31とともに第1軸AXまわりに回転させることと、第1軸AXまわりに回転している状態の爪本体13に金属層15を付加することと、第1軸AXまわりに回転している状態の第2爪本体13Bに第2金属層15Bを付加することと、を含んでいてもよい。爪本体13および第2爪本体13Bが第1軸AXまわりに回転されることにより、第1付加工程の実行時に、金属付加装置5の姿勢を変更する必要がないか、あるいは、金属付加装置5の姿勢変更が小さくて済む。
【0109】
図21に例示されるように、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法は、金属層15の表面が平滑化されるよう金属層15を切削することと、第2金属層15Bの表面が平滑化されるよう第2金属層15Bを切削することと、を含んでいてもよい。図21に記載の例では、基部11および第2基部11Bの両方がチャック本体31に取り付けられた状態で、金属層15を切削することと、第2金属層15Bを切削することとの両方が実行される。
【0110】
図21に例示されるように、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法は、金属層15および第2金属層15Bをチャック本体31とともに第1軸AXまわりに回転させることと、第1軸AXまわりに回転する金属層15および第2金属層15Bに、切削工具Tを繰り返し接触させることとを含んでいてもよい。図21に記載の例では、金属層15の表面の平滑化と、第2金属層15Bの表面の平滑化とが、旋削工具T1を用いて、並列的に行われる。換言すれば、金属層15と第2金属層15Bとが、旋削工具T1を用いて、実質的に同時に旋削される。
【0111】
付加的に、図23に例示されるように、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法は、金属層15の表面に溝161を形成することと、第2金属層15Bの表面に溝161を形成することと、を含んでいてもよい。図23に記載の例では、基部11および第2基部11Bの両方がチャック本体31に取り付けられた状態で、金属層15の表面に溝161を形成することと、第2金属層15Bの表面に溝161を形成することとの両方が実行される。
【0112】
(ワーク加工方法)
第1の実施形態におけるワーク加工方法は、第1チャック爪1Aを作製する工程と、複数のチャック爪1にワークWを取り付ける工程と、ワークを加工する工程とを含む。ワークを加工する工程は、例えば、後述の第3切削工程、後述の付加製造工程、後述の第4切削工程、後述の第2の付加製造工程、後述の第5切削工程のうちの少なくとも1つを含む。
【0113】
第1チャック爪1Aを作製する工程は、(1)図16および図17に例示されるように、基部11と爪本体13とを有する第1ブロックBL1の基部11を、第1軸AXまわりに回転可能なチャック本体31に取り付けることと、(2)図19および図20に例示されるように、基部11がチャック本体31に取り付けられた状態で、爪本体13に金属層15を付加することと、を含む。
【0114】
上述の金属層15を構成する第1金属材料G1は、爪本体13を構成する第2金属材料よりも熱伝導率が低い。第1チャック爪1Aを作製する工程は、上述の第1取付工程(第1ステップST1)、上述の第1切削工程(第2ステップST2)、上述の第1付加工程(第3ステップST3)、上述の第2切削工程(第4ステップST4)、上述の取り外し工程(第5ステップST5)、および、上述の第1移送工程(第6ステップST6)を含んでいてもよい。第1ステップST1乃至第6ステップST6については説明済みであるため、これらのステップについての繰り返しとなる説明は省略する。
【0115】
付加的に、第1の実施形態におけるワーク加工方法は、第2チャック爪1Bを作製する工程、および/または、第3チャック爪1Cを作製する工程を含んでいてもよい。第2チャック爪1Bを作製する工程、および、第3チャック爪1Cを作製する工程の各々は、第1チャック爪1Aを作製する工程と同様の工程であるため、第2チャック爪1Bを作製する工程、および、第3チャック爪1Cを作製する工程についての説明は省略する。
【0116】
第1チャック爪1Aを作製する工程の実行後(より具体的には、第1チャック爪1Aを作製する工程、第2チャック爪1Bを作製する工程、および、第3チャック爪1Cを作製する工程の実行後)、第7ステップST7において、ストッカ101からチャック本体31に、第1チャック爪1Aが移送される。第7ステップST7は、第2移送工程である。
【0117】
図27に記載の例では、第2移送工程(第7ステップST7)は、ストッカ101からチャック本体31に、第1チャック爪1Aを移送することを含む。図27に記載の例では、第2移送工程は、爪交換装置102を用いて自動的に行われる。代替的に、第2移送工程は、手動で行われてもよい。
【0118】
図28に例示されるように、第8ステップST8において、第1チャック爪1A(より具体的には、第1チャック爪1Aの基部11)が、チャック本体31(より具体的には、チャック本体31の可動部32)に取り付けられる。第8ステップST8は、第2取付工程である。図28に記載の例では、第2取付工程は、爪交換装置102を用いて自動的に行われる。代替的に、第2取付工程は、手動で行われてもよい。
【0119】
なお、上述の取り外し工程(第5ステップST5)、および、上述の第1移送工程(第6ステップST6)が省略される場合には、第2移送工程(第7ステップST7)、および、第2取付工程(第8ステップST8)は省略される。この場合、第1チャック爪1Aが作製された後、第1チャック爪1Aを含む複数のチャック爪1によってワークWが把持されるまで、第1チャック爪1Aは、一貫して、チャック本体31によって保持される。
【0120】
付加的に、第1の実施形態におけるワーク加工方法は、第2チャック爪1Bの第2基部11Bをチャック本体31に取り付けることと、第3チャック爪1Cの第3基部11Cをチャック本体31に取り付けることと、を含んでいてもよい。
【0121】
第9ステップST9において、第1チャック爪1Aを含む複数のチャック爪1にワークWが取り付けられる。第9ステップST9は、ワーク取付工程である。
【0122】
図29に例示されるように、ワーク取付工程(第9ステップST9)は、金属層15にワークWが当接するよう、複数のチャック爪1をチャック本体31のベース部33に対して相対移動させることを含む(矢印AR1を参照。)。当該相対移動は、爪駆動装置34を用いて行われる。
【0123】
図30に例示されるように、第10ステップST10において、複数のチャック爪1によって把持されたワークWが切削される。第10ステップST10は、切削工程(以下、「第3切削工程」という。)である。
【0124】
図30に例示されるように、第3切削工程(第10ステップST10)は、ワークWの外周面Waを切削することを含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第3切削工程(第10ステップST10)は、ワークWの第2端面Wdを切削することを含んでいてもよい。ワークWが筒状形状を有する場合には、第3切削工程(第10ステップST10)は、ワークWの内周面を切削することを含んでいてもよい。
【0125】
第3切削工程(第10ステップST10)は、ワークWを旋削することを含んでいてもよいし、ワークWをミル加工することを含んでいてもよい。
【0126】
第3切削工程は、後述の付加製造工程(第12ステップST12)の前に実行される切削工程である。第3切削工程(第10ステップST10)は、省略されてもよい。
【0127】
図31に例示されるように、第11ステップST11において、複数のチャック爪1によって把持されたワークWが予熱される。第11ステップST11は、予熱工程である。
【0128】
図31に記載の例では、予熱工程(第11ステップST11)は、ワークWにレーザLBを照射することによりワークWを昇温させることを含む。代替的に、あるいは、付加的に、予熱工程(第11ステップST11)は、ワークWに誘導電流を流すことにより、ワークWを昇温させることを含んでいてもよく、ワークWに向けて火炎を放射することにより、ワークWを昇温させることを含んでいてもよく、ヒータを用いてワークWを昇温させることを含んでいてもよい。
【0129】
予熱工程(第11ステップST11)は、第1チャック爪1Aの金属層15がワークWに当接している状態で実行される。金属層15の熱伝導率は爪本体13の熱伝導率よりも小さいため、予熱工程の実行時に、ワークWから第1チャック爪1Aへの放熱が小さくて済む。よって、ワークWの予熱に要するエネルギが少なくて済み、環境に対する負荷が低減される。
【0130】
予熱工程(第11ステップST11)がレーザLBの照射によって行われる場合、予熱工程におけるワーク表面でのレーザLBのスポット径が、後述の付加製造工程(第12ステップST12)におけるワーク表面でのレーザLBのスポット径よりも大きくなるように、レーザLBがワークWに照射されてもよい。予熱時におけるレーザLBのスポット径が相対的に大きいことにより、予熱時にワークWが局所的に溶けることが防止または抑制される。
【0131】
ワークWが複数のチャック爪1によって保持される前に、予め予熱されている場合には、予熱工程(第11ステップST11)は、省略されてもよい。また、ワークWのサイズ、ワークWの形状、ワークWの材質、後述の第12ステップST12においてワークWに付加される材料の材質等を考慮して、予熱工程(第11ステップST11)が不要と認められる場合には、当該予熱工程(第11ステップST11)は、省略される。
【0132】
図32に例示されるように、第12ステップST12において、複数のチャック爪1によって把持されたワークWに、第3材料G3が付加される。第12ステップST12は、付加製造工程である。付加製造工程は、付加製造装置50を用いて実行される。
【0133】
付加製造工程(第12ステップST12)は、第1チャック爪1Aの金属層15がワークWに当接している状態で実行される。金属層15の熱伝導率は爪本体13の熱伝導率よりも小さいため、付加製造工程の実行時に、ワークWから第1チャック爪1Aへの放熱が抑制され、ワークWの温度低下が抑制される。こうして、ワークWへの材料の付加不良(より具体的には、ワークWに付加された材料の割れ)が、防止または抑制される。付加製造工程(第12ステップST12)において、第1チャック爪1AのうちワークWに当接する部分の全体が、金属層15によって構成されていることが好ましい。第1チャック爪1Aのうちの金属層15以外の部分がワークWに当接しないことにより、ワークWから第1チャック爪1Aへの放熱がより効果的に抑制される。
【0134】
図32に記載の例において、付加製造装置50は、ワークWに向けて第3材料G3(より具体的には、第3材料の粉体g3)を供給するとともに、ワークWに向けてレーザLBを照射する。その結果、レーザLBのエネルギによって加熱される第3材料が融解し、融解材料が、ワークWに付着する。こうして、ワークWに第3材料G3が付加される。
【0135】
第3材料G3は、金属層15を構成する第1金属材料G1と同一の材料であってもよい。この場合、チャック爪を作製する工程と、ワークを加工する工程との間で、付加製造装置50の材料供給系の設定を変更する必要がない。
【0136】
代替的に、第3材料G3は、金属層15を構成する第1金属材料G1とは異なる材料であってもよい。この場合、第3材料G3の選択肢が増加する。第3材料G3は、金属材料であってもよいし、非金属材料であってもよい。
【0137】
図33に例示されるように、第13ステップST13において、複数のチャック爪1によって把持されたワークWが切削される。第13ステップST13は、切削工程(以下、「第4切削工程」という。)である。
【0138】
第4切削工程(第13ステップST13)は、ワークWの外周面Waを切削することを含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第4切削工程(第13ステップST13)は、ワークWの第2端面Wdを切削することを含んでいてもよい。ワークWが筒状形状を有する場合には、第4切削工程(第13ステップST13)は、ワークWの内周面を切削することを含んでいてもよい。
【0139】
第4切削工程(第13ステップST13)は、ワークWを旋削することを含んでいてもよいし、ワークWをミル加工することを含んでいてもよい。第4切削工程(第13ステップST13)は、ワークWのオリジナル部分Wpを切削することを含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第4切削工程(第13ステップST13)は、図33に例示されるように、付加製造工程の実施によってワークのオリジナル部分Wpに付加された付加部分Wqを切削することを含んでいてもよい。
【0140】
第4切削工程は、上述の付加製造工程(第12ステップST12)の後に実行される切削工程である。第4切削工程(第13ステップST13)は、省略されてもよい。
【0141】
図34に記載の例では、ハイブリッド工作機械は、第1支持装置3と、第2支持装置4とを有する。第1支持装置3は、複数のチャック爪1が取り付けられるチャック本体31を有する。第2支持装置4は、複数のチャック爪が取り付けられる第2チャック本体41を有する。第2チャック本体41に取り付けられた複数のチャック爪を、チャック本体31に取り付けられた複数のチャック爪1と区別するために、前者のことを、第2群のチャック爪1Sという。換言すれば、第2チャック本体41には、第2群のチャック爪1Sが取り付けられる。
【0142】
図34に例示されるように、第14ステップST14において、第1支持装置3から第2支持装置4にワークWが移載される。第14ステップST14は、移載工程である。移載工程は、第1支持装置3および第2支持装置4を用いて自動的に実行されてもよい。代替的に、移載工程の一部は、第1支持装置3および第2支持装置4以外の移載装置(例えば、ガントリーローダ、ワーク交換ハンド等)を用いて実行されてもよく、手動で実行されてもよい。
【0143】
図34に記載の例では、移載工程(第14ステップST14)は、第2群のチャック爪1Sを、ワークWに近づく方向に移動させることを含む(矢印AR2を参照。)。当該移動により、ワークWが、第2群のチャック爪1Sによって把持される。図34に記載の例では、移載工程(第14ステップST14)は、第1チャック爪1Aを含む複数のチャック爪1を、ワークWから離間する方向に移動させることを含む(矢印AR3を参照。)。当該移動により、複数のチャック爪1によるワークWの把持が解除される。
【0144】
図34に記載の例では、移載工程(第14ステップST14)は、ワークWと第1支持装置3との間の距離が拡大されるよう、第2支持装置4を、第1支持装置3に対して、第1軸AXに平行な方向に相対移動させることを含む(矢印AR4を参照。)。
【0145】
図35に例示されるように、第15ステップST15において、第2群のチャック爪1Sによって把持されたワークWに、第4材料G4が付加される。第15ステップST15は、第2の付加製造工程である。第2の付加製造工程は、付加製造装置50を用いて実行される。第4材料G4は、第3材料G3と同一の材料であってもよいし、第3材料G3とは異なる材料であってもよい。
【0146】
第2の付加製造工程(第15ステップST15)は、ワークWが第2群のチャック爪1Sによって把持されている状態で実行される。図35に記載の例では、第2群のチャック爪1Sに含まれる各チャック爪は、第2チャック本体41に取り付けられる基部11sと、爪本体13sと、爪本体13sに付加されワークWに当接する金属層15sとを有する。爪本体13sを構成する材料は、第1チャック爪1Aの爪本体13を構成する第2金属材料と同一の材料であることが好ましい。また、金属層15sを構成する材料は、第1チャック爪1Aの金属層15を構成する第1金属材料と同一の材料であることが好ましい。この場合、金属層15sの熱伝導率は爪本体13sの熱伝導率よりも小さいため、第2の付加製造工程の実行時に、ワークWから第2群のチャック爪1Sへの放熱が抑制される。また、ワークWの温度低下が抑制される。こうして、ワークWへの材料の付加不良(より具体的には、ワークWに付加された材料の割れ)が、防止または抑制される。なお、第2の付加製造工程(第15ステップST15)が省略される場合は、第2群のチャック爪1Sにおいて、金属層15sは省略されていてもよい。換言すれば、第2群のチャック爪1Sに含まれる各チャック爪は、一般的なチャック爪によって構成されてもよい。
【0147】
第14ステップST14(移載工程)の実行後、第15ステップST15(第2の付加製造工程)の実行前に、予熱装置を用いて、ワークWが予熱されてもよい。なお、ワークWの温度、ワークWの形状、ワークWの材質、第15ステップST15においてワークWに付加される第4材料G4の材質等を考慮して、予熱が不要と認められる場合には、当該予熱は省略される。
【0148】
図36に例示されるように、第16ステップST16において、第2群のチャック爪1Sによって把持されたワークWが切削される。第16ステップST16は、切削工程(以下、「第5切削工程」という。)である。
【0149】
第5切削工程(第16ステップST16)は、ワークWの外周面Waを切削することを含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第5切削工程(第16ステップST16)は、ワークWの第1端面Wbを切削することを含んでいてもよい。ワークWが筒状形状を有する場合には、第5切削工程(第16ステップST16)は、ワークWの内周面を切削することを含んでいてもよい。
【0150】
第5切削工程(第16ステップST16)は、ワークWを旋削することを含んでいてもよいし、ワークWをミル加工することを含んでいてもよい。第5切削工程(第16ステップST16)は、ワークWのオリジナル部分Wpを切削することを含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第5切削工程(第16ステップST16)は、第2の付加製造工程の実施によってワークのオリジナル部分Wpに付加された第2の付加部分Wrを切削することを含んでいてもよい。
【0151】
第5切削工程は、第2の付加製造工程(第15ステップST15)の後に実行されてもよいし、第2の付加製造工程(第15ステップST15)の前に実行されてもよい。また、第5切削工程(第16ステップST16)は、省略されてもよい。
【0152】
上述の移載工程(第14ステップST14)、上述の第2の付加製造工程(第15ステップST15)、および、上述の第5切削工程(第16ステップST16)の全てが省略されてもよい。
【0153】
(チャック爪のリペア方法)
続いて、第1の実施形態におけるチャック爪のリペア方法について説明する。第1の実施形態におけるチャック爪のリペア方法においてリペアされるチャック爪は、例えば、第1の実施形態における第1チャック爪1Aである。第1チャック爪1Aについては説明済みであるため、第1チャック爪1Aについての繰り返しとなる説明は省略する。
【0154】
図37に例示されるように、第17ステップST17において、第1チャック爪1Aに基礎面17が形成される。第17ステップST17は、基礎面形成工程である。
【0155】
基礎面形成工程(第17ステップST17)は、金属層15の少なくとも一部を切削することにより基礎面17を形成することを含む。図37に記載の例では、基礎面形成工程(第17ステップST17)は、金属層15の一部を切削することにより、チャック爪1の金属層15に基礎面17-1を形成することを含む。代替的に、図38に例示されるように、基礎面形成工程(第17ステップST17)は、金属層15の全部を切削することにより、チャック爪1の爪本体13に基礎面17-2を形成することを含んでいてもよい。
【0156】
図37図38に記載の例では、第1チャック爪1Aに基礎面17を形成する工程は、チャック本体31(より具体的には、チャック本体31の可動部32)に、第1チャック爪1Aの基部11が取り付けられた状態で実行される。
【0157】
図39に例示されるように、第18ステップST18において、金属層15が再形成される。第18ステップST18は、再形成工程である。
【0158】
再形成工程は、基礎面17(例えば、図37に例示されるように、金属層15に形成された基礎面17-1、または、図38に例示されるように、爪本体13に形成された基礎面17-2)に、第1金属材料G1を付加することにより、金属層15を再形成することを含む。基礎面17に第1金属材料を付加することは、金属付加装置5(例えば、付加製造装置50、または、溶射装置)を用いて実行される。
【0159】
図40に例示されるように、第19ステップST19において、金属層15の表面が切削される。第19ステップST19は、第6切削工程である。第6切削工程では、再形成された金属層15の表面16が平滑化されるよう、当該金属層15を切削することを含む。金属層15が切削されることにより、金属層15の表面が平滑な切削面16sとなる。
【0160】
付加的に、第6切削工程(第19ステップST19)は、金属層15の表面16に溝161を形成することを含んでいてもよい。例えば、第6切削工程(第19ステップST19)は、第1軸AXまわりに回転している金属層15に、溝入れ工具T3等の工具(必要であれば、図23を参照。)を接触させることにより、金属層15の表面に溝161を形成することを含んでいてもよい。
【0161】
以上の工程により、第1チャック爪1Aがリペアされる。使用済みの第1チャック爪1Aがリペアされ、リペアされた第1チャック爪1Aが再利用されるため、チャック爪の廃棄頻度が低減される。こうして、環境に対する負荷が低減される。
【0162】
(第2の実施形態)
図1乃至図44を参照して、第2の実施形態におけるハイブリッド工作機械100について説明する。図44は、第2の実施形態におけるハイブリッド工作機械100を模式的に示す図である。
【0163】
図44に例示されるように、第2の実施形態におけるハイブリッド工作機械100は、付加製造装置50と、切削加工装置60と、第1支持装置3と、第1移動装置7と、第2移動装置8と、制御装置9と、を具備する。
【0164】
付加製造装置50、および、切削加工装置60は、チャック本体31に取り付けられた第1ブロックBL1(例えば、図17を参照。)から、第1チャック爪1A(例えば、図24を参照。)を作製可能である。また、付加製造装置50、および、切削加工装置60は、第1チャック爪1Aを含む複数のチャック爪1によって把持されたワークWを加工可能である。
【0165】
図20に例示されるように、付加製造装置50は、材料供給装置55と、レーザLBを射出する第1ヘッド52とを有する。図21に例示されるように、切削加工装置60は、工具を支持する第2ヘッド62を有する。
【0166】
第1支持装置3は、第1チャック爪1Aを含む複数のチャック爪1を介してワークWを支持する。第1チャック爪1A、および、複数のチャック爪1については、第1の実施形態において説明済みであるため、第1チャック爪1A、および、複数のチャック爪1についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0167】
図12に例示されるように、第1支持装置3は、第1チャック爪1Aの基部が取り付けられるチャック本体31を有する。チャック本体31には、第1チャック爪1Aの基部に加え、第2チャック爪1Bの第2基部11B、および、第3チャック爪1Cの第3基部11Cが取り付けられる。チャック本体31は、第1軸AXまわりに回転可能である。
【0168】
図29に例示されるように、第1支持装置3は、チャック爪1を移動させる爪駆動装置34と、第1回転駆動装置36とを有する。
【0169】
爪駆動装置34は、第1軸AXから離れる第1方向DR1(より具体的には、第1軸AXから離れる放射方向)、または、第1軸AXに近づく第2方向DR2に、複数のチャック爪1を移動させる。
【0170】
第1回転駆動装置36は、チャック本体31を第1軸AXまわりに回転させる。第1回転駆動装置36は、チャック本体31、および、チャック本体31に支持された複数のチャック爪1を、一体的に、第1軸AXまわりに回転させることができる。また、第1回転駆動装置36は、チャック本体31、チャック本体31に支持された複数のチャック爪1、および、複数のチャック爪1に把持されたワークWを、一体的に、第1軸AXまわりに回転させることができる。
【0171】
図44に記載の例において、第1移動装置7は、第1ヘッド52を、第1支持装置3に対して相対移動させる。第1移動装置7は、第1ヘッド52を移動させる第1ヘッド移動装置70を含む。
【0172】
図44に記載の例では、第1ヘッド移動装置70は、第1ヘッド52を第1軸AXに平行な方向に移動させる第1駆動装置71と、第1ヘッド52を第1軸AXに垂直な方向(例えば、鉛直方向)に移動させる第2駆動装置72を含む。第1ヘッド移動装置70は、第1ヘッド52を三次元的に移動させることが可能な装置を含んでいてもよい。第1ヘッド移動装置70は、第1ヘッド52を傾動させる傾動装置73を含んでいてもよい。
【0173】
図44に記載の例において、第2移動装置8は、第2ヘッド62を、第1支持装置3に対して相対移動させる。第2移動装置8は、第2ヘッド62を移動させる第2ヘッド移動装置80を含む。
【0174】
図44に記載の例では、第2ヘッド移動装置80は、第2ヘッド62を第1軸AXに平行な方向に移動させる第3駆動装置81と、第2ヘッド62を第1軸AXに垂直な方向(例えば、鉛直方向)に移動させる第4駆動装置82とを含む。第2ヘッド移動装置80は、第2ヘッド62を三次元的に移動させることが可能な装置を含んでいてもよい。
【0175】
第2移動装置8は、第1移動装置7とは完全に別の装置であってもよい。代替的に、第2移動装置8の一部と第1移動装置7の一部とが共用されていてもよい。
【0176】
制御装置9は、少なくとも、付加製造装置50、切削加工装置60、第1支持装置3、第1移動装置7、および、第2移動装置8を制御する。
【0177】
(制御装置9)
制御装置9について、より詳細に説明する。図18に例示されるように、制御装置9は、ハードウェアプロセッサ90(以下、単に、「プロセッサ90」という。)と、メモリ92と、通信回路94と、入力装置96(例えば、タッチパネル付きディスプレイ962)と、を備える。プロセッサ90と、メモリ92と、通信回路94と、入力装置96とは、バス98を介して互いに接続されている。
【0178】
メモリ92は、制御装置9のプロセッサ90によって読み取り可能な記憶媒体である。メモリ92は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性または揮発性の半導体メモリであってもよいし、磁気ディスクであってもよいし、その他の形式のメモリであってもよい。
【0179】
メモリ92は、データ926(例えば、制御装置9が、後述の各モードを実行するために必要なデータ)、および、プログラム922(例えば、爪作製プログラム922a、加工プログラム922b、および、爪交換プログラム922c等)を記憶する。
【0180】
メモリ92に記憶されるデータ926は、第1ブロックBL1の形状を示すブロック形状データ926a、第1チャック爪1Aの形状を示す爪形状データ926b、ワークWの形状を示すワーク形状データ926cを含んでいてもよい。
【0181】
メモリ92に記憶されるデータ926は、後述の爪作製モードM1の実行に必要な第1制御データ926dを含んでいてもよい。第1制御データ926dは、第1ヘッド52の移動経路を特定する第1移動経路データ、および、切削工具Tの移動経路を特定する第2移動経路データを含んでいてもよい。第1制御データ926dは、チャック本体31の第1軸AXまわりの回転角を指定するデータ、および/または、チャック本体31の第1軸AXまわりの回転速度を指定するデータを含んでいてもよい。
【0182】
メモリ92に記憶されるデータ926は、後述の予熱モードM5の実行に必要な第2制御データ926eを含んでいてもよい。第2制御データ926eは、ワークWの予熱が完了したか否かを判断するための閾値データ(例えば、後述の第1温度TH1、後述の第1閾値TH2、後述の第1時間TH3等)を含んでいてもよい。また、第2制御データ926eは、レーザ出力パラメータを含んでいてもよい。第2制御データ926eは、第1ヘッド52の移動経路を特定する第3移動経路データ、および/または、チャック本体31の第1軸AXまわりの回転速度を指定するデータを含んでいてもよい。
【0183】
メモリ92に記憶されるデータ926は、後述の付加製造モードM6の実行に必要な第3制御データ926fを含んでいてもよい。第3制御データ926fは、第1ヘッド52の移動経路を特定する第4移動経路データを含んでいてもよい。第3制御データ926fは、チャック本体31の第1軸AXまわりの回転角を指定するデータ、および/または、チャック本体31の第1軸AXまわりの回転速度を指定するデータを含んでいてもよい。
【0184】
メモリ92に記憶されるデータ926は、後述の切削加工モードM7の実行に必要な第4制御データ926gを含んでいてもよい。第4制御データ926gは、切削工具Tの移動経路を特定する第5移動経路データを含んでいてもよい。第4制御データ926gは、チャック本体31の第1軸AXまわりの回転角を指定するデータ、および/または、チャック本体31の第1軸AXまわりの回転速度を指定するデータを含んでいてもよい。
【0185】
メモリ92は、その他のデータ926hを記憶していてもよい。
【0186】
入力装置96は、タッチパネル付きディスプレイ962に限定されない。例えば、制御装置9は、ボタン、スイッチ、レバー、ポインティングデバイス、キーボード等の入力装置96と、当該入力装置96に入力されたデータ、あるいは、その他の情報を表示するディスプレイと、を備えていてもよい。また、複数のコンピュータが協働して、制御装置9として機能してもよい。また、メモリ92は、複数箇所に分散配置されていてもよい。例えば、メモリ92の一部は、クラウドストレージに含まれていてもよい。
【0187】
メモリ92に記憶されたプログラム922(例えば、爪作製プログラム922a、加工プログラム922b、爪交換プログラム922c等)がプロセッサ90によって実行されることにより、制御装置9は制御指令を生成する。通信回路94は、当該制御指令を、制御対象機器(例えば、付加製造装置50、切削加工装置60、第1支持装置3、第1移動装置7、および、第2移動装置8)に送信する。こうして、プロセッサ90によってプログラム922が実行されることにより、制御装置9は、付加製造装置50、切削加工装置60、第1支持装置3、第1移動装置7、および、第2移動装置8等を制御することができる。
【0188】
制御装置9が実行可能な爪作製モードM1、および、付加製造モードM6について説明する。
【0189】
図20図21に記載の例では、制御装置9は、プログラム922(より具体的には、爪作製プログラム922a)を実行することにより、爪作製モードM1を実行可能である。爪作製モードM1は、チャック本体31に基部11が取り付けられた状態で行われる。
【0190】
図20に例示されるように、爪作製モードM1は、付加製造装置50を用いて、第2金属材料によって構成される爪本体13に第2金属材料よりも熱伝導率が低い第1金属材料G1によって構成される金属層15を付加することを含む。
【0191】
より具体的には、爪作製モードM1は、第2金属材料によって構成される爪本体13に第2金属材料よりも熱伝導率が低い第1金属材料G1によって構成される金属層15が付加されるよう、制御装置9から少なくとも第1移動装置7および付加製造装置50に制御指令を送信することを含む。制御装置9から制御指令を受信する第1移動装置7は、第1ヘッド52を爪本体13に対向する位置に移動させる。また、制御装置9から制御指令を受信する付加製造装置50は、爪本体13に、金属層15を付加する。
【0192】
図21に例示されるように、爪作製モードM1は、切削加工装置60を用いて金属層15を切削することにより、金属層15の表面を平滑化することを含む。
【0193】
より具体的には、爪作製モードM1は、金属層15が切削工具Tによって切削されるよう、少なくとも第2移動装置8に制御指令を送信することを含む。制御装置9から制御指令を受信する第2移動装置8は、金属層15に切削工具Tが接触するよう、第2ヘッド62を移動させる。金属層15に切削工具Tが接触することにより、金属層15が切削され、金属層15の表面が平滑面となる。
【0194】
図32に記載の例では、制御装置9は、プログラム922(より具体的には、加工プログラム922b)を実行することにより、付加製造モードM6を実行可能である。付加製造モードM6は、ワークWが第1チャック爪1Aを含む複数のチャック爪1によって把持された状態で行われる
【0195】
図32に例示されるように、付加製造モードM6は、付加製造装置50を用いて、第1チャック爪1Aの金属層15に当接しているワークWに第3材料G3を付加することを含む。
【0196】
より具体的には、付加製造モードM6は、第1チャック爪1Aの金属層15にワークWが当接した状態でワークWに第3材料G3が付加されるよう、少なくとも第1移動装置7および付加製造装置50に制御指令を送信することを含む。制御装置9から制御指令を受信する第1移動装置7は、第1ヘッド52をワークWに対向する位置に移動させる。また、制御装置9から制御指令を受信する付加製造装置50は、ワークWに第3材料G3を付加する。第3材料G3は、金属層15を構成する第1金属材料G1と同一の材料であってもよいし、金属層15を構成する第1金属材料G1とは異なる材料であってもよい。
【0197】
第2の実施形態におけるハイブリッド工作機械100は、爪本体13に、爪本体13の熱伝導率よりも熱伝導率が低い金属層15を付加することを含む爪作製モードM1と、当該金属層15にワークWが当接した状態でワークWに第3材料を付加することを含む付加製造モードM6とを実行可能である。よって、ワークWに第3材料G3を付加する付加製造時に、ワークWから第1チャック爪1Aへの放熱が抑制され、ワークWの温度低下が抑制される。こうして、ワークWへの材料の付加不良(より具体的には、ワークWに付加された材料の割れ)が、防止または抑制される。
【0198】
(任意付加的な構成)
続いて、図1乃至図44を参照して、第2の実施形態におけるハイブリッド工作機械100(あるいは、第1の実施形態におけるチャック爪1、第1の実施形態におけるチャック爪の作製方法、第1の実施形態におけるワーク加工方法、第1の実施形態におけるチャック爪のリペア方法)において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0199】
(爪作製モードM1)
爪作製モードM1の一例についてより詳細に説明する。制御装置9は、プログラム922(より具体的には、爪作製プログラム922a)を実行することにより、爪作製モードM1を実行する。
【0200】
図18に記載の例では、爪作製モードM1は、切削加工装置60を用いて爪本体13を切削することにより、爪本体13に基礎面130を形成すること(より具体的には、爪本体13に第1基礎面131および第2基礎面132を形成すること)を含む。
【0201】
より具体的には、爪作製モードM1は、爪本体13に基礎面130が形成されるよう、制御装置9から第2移動装置8に移動指令(以下、「第1移動指令Q1」という。)を送信することと、制御装置9から第1回転駆動装置36に回転指令(以下、「第1回転指令U1」という。)を送信することと、を含む。
【0202】
制御装置9から第1移動指令Q1を受信する第2移動装置8は、旋削工具T1が爪本体13に接触するよう、第2ヘッド62を移動させる。制御装置9から第1回転指令U1を受信する第1回転駆動装置36は、爪本体13を第1軸AXまわりに回転させる。こうして、爪本体13が旋削工具T1によって旋削され、爪本体13に基礎面130(より具体的には、第1基礎面131および第2基礎面132)が形成される。
【0203】
なお、基礎面130の形成がミル工具を用いて行われる場合には、爪作製モードM1は、制御装置9から第2移動装置8に第1移動指令Q1を送信することと、制御装置9から切削加工装置60に工具回転指令を送信することと、を含む。
【0204】
図19および図20に記載の例では、爪作製モードM1は、付加製造装置50を用いて、基礎面130(より具体的には、第1基礎面131および第2基礎面132)に、金属層15を付加することを含む。
【0205】
より具体的には、爪作製モードM1は、基礎面130に金属層15が付加されるよう、制御装置9から第1移動装置7に移動指令(以下、「第2移動指令Q2」という。)を送信することと、制御装置9から付加製造装置50に付加製造指令(以下、「第1付加製造指令D1」という。)を送信することと、を含む。付加的に、爪作製モードM1は、制御装置9から第1回転駆動装置36に回転指令(以下、「第2回転指令U2」という。)を送信することを含んでいてもよい。
【0206】
制御装置9から第2移動指令Q2を受信する第1移動装置7は、基礎面130に対向する位置に、第1ヘッド52を移動させる。制御装置9から第1付加製造指令D1を受信する付加製造装置50は、基礎面130に金属層15を付加する(より具体的には、第1基礎面131および第2基礎面132に金属層15を付加する。)。
【0207】
制御装置9から第1回転駆動装置36に第2回転指令U2が送信される場合には、第2回転指令U2を受信する第1回転駆動装置36は、爪本体13を第1軸AXまわりに回転させる。この場合、第1ヘッド52を大きく移動させることなく、基礎面130に金属層15を付加することができる。
【0208】
図21および図22に記載の例では、爪作製モードM1は、切削加工装置60を用いて金属層15を切削することにより、金属層15の表面を平滑化することを含む。
【0209】
より具体的には、爪作製モードM1は、金属層15の表面が平滑化されるよう(より具体的には、金属層15に、第1軸AXに平行な方向に延在する第1切削面16s-1、および、第1軸AXに垂直な第2切削面16s-2が形成されるよう)、制御装置9から第2移動装置8に移動指令(以下、「第3移動指令Q3」という。)を送信することと、制御装置9から第1回転駆動装置36に回転指令(以下、「第3回転指令U3」という。)を送信することと、を含む。
【0210】
制御装置9から第3移動指令Q3を受信する第2移動装置8は、旋削工具T1が金属層15に接触するよう、第2ヘッド62を移動させる。制御装置9から第3回転指令U3を受信する第1回転駆動装置36は、金属層15が付加された爪本体13を第1軸AXまわりに回転させる。こうして、金属層15が旋削工具T1によって旋削され、金属層15の表面が平滑化される。
【0211】
なお、金属層15の平滑化が、ミル工具を用いて行われる場合には、爪作製モードM1は、制御装置9から第2移動装置8に第3移動指令Q3を送信することと、制御装置9から切削加工装置60に工具回転指令を送信することと、を含む。
【0212】
図23に例示されるように、爪作製モードM1は、切削加工装置60を用いて金属層15を切削することにより、金属層15の表面に溝161を形成することを含んでいてもよい。
【0213】
より具体的には、爪作製モードM1は、金属層15の表面に溝161が形成されるよう、制御装置9から第2移動装置8に移動指令(以下、「第4移動指令Q4」という。)を送信することと、制御装置9から第1回転駆動装置36に回転指令(以下、「第4回転指令U4」という。)を送信することと、を含んでいてもよい。
【0214】
図23に記載の例では、制御装置9から第4移動指令Q4を受信する第2移動装置8は、溝入れ工具T3が金属層15に接触するよう、第2ヘッド62を移動させる。制御装置9から第4回転指令U4を受信する第1回転駆動装置36は、金属層15が付加された爪本体13を第1軸AXまわりに回転させる。こうして、金属層15が溝入れ工具T3によって切削され、金属層15の表面に溝161が形成される。
【0215】
(ストッカ101)
図26および図27に例示されるように、ハイブリッド工作機械100は、複数のチャック爪を保管するストッカ101を備えていてもよい。また、ストッカ101において、各チャック爪は、爪ホルダ101aによって保持されるようにしてもよい。
【0216】
(爪交換装置102)
ハイブリッド工作機械100は、爪交換装置102を備えていてもよい。爪交換装置102は、チャック本体31に取り付けられた複数のチャック爪1を、他の複数のチャック爪に交換する。
【0217】
(取り外しモードM2)
図24および図25に記載の例では、制御装置9は、プログラム922(より具体的には、爪交換プログラム922c)を実行することにより、付加製造装置50および切削加工装置60を用いて作製された第1チャック爪1Aを、チャック本体31から取り外す取り外しモードM2を実行する。
【0218】
図24および図25に例示されるように、取り外しモードM2は、第1回転駆動装置36を用いて、第1チャック爪1Aを取り外し位置P1に移動させることと、爪交換装置102を用いて、チャック本体31から第1チャック爪1Aを取り外すことと、を含む。
【0219】
より具体的には、図24に例示されるように、取り外しモードM2は、第1チャック爪1Aが取り外し位置P1に移動するよう、制御装置9から第1回転駆動装置36に回転指令(以下、「第5回転指令U5」という。)を送信することを含む。また、図25に例示されるように、取り外しモードM2は、取り外し位置P1に位置する第1チャック爪1Aがチャック本体31から取り外されるよう、制御装置9から爪交換装置102に、取り外し指令F1を送信することを含む。
【0220】
図24に記載の例において、第5回転指令U5を受信する第1回転駆動装置36は、第1チャック爪1Aが取り外し位置P1に移動するよう、チャック本体31を第1軸AXまわりに回転させる。図24に記載の例において、取り外し指令F1を受信する爪交換装置102は、第1チャック爪1Aとチャック本体31との間の係合が解除されるよう、操作部39を押圧する。また、図25に記載の例において、取り外し指令F1を受信する爪交換装置102は、第1チャック爪1Aをチャック本体31から引き抜く。こうして、第1チャック爪1Aがチャック本体31から取り外される。
【0221】
図26に例示されるように、取り外しモードM2は、爪交換装置102を用いて、第1チャック爪1Aを、チャック本体31からストッカ101に移送することを含んでいてもよい。
【0222】
(取り付けモードM3)
図28に記載の例では、制御装置9は、プログラム922(より具体的には、爪交換プログラム922c)を実行することにより、付加製造装置50および切削加工装置60を用いて作製された第1チャック爪1Aを、チャック本体31に取り付ける取り付けモードM3を実行する。
【0223】
図27および図28に例示されるように、取り付けモードM3は、爪交換装置102を用いて、第1チャック爪1Aを、ストッカ101からチャック本体31に移送することを含んでいてもよい。
【0224】
図28に例示されるように、取り付けモードM3は、爪交換装置102を用いて、第1チャック爪1Aをチャック本体31に取り付けることを含む。
【0225】
より具体的には、取り付けモードM3は、第1チャック爪1Aがチャック本体31に取り付けられるよう、制御装置9から爪交換装置102に、取り付け指令F2を送信することを含む。
【0226】
図28に記載の例において、取り付け指令F2を受信する爪交換装置102は、チャック本体31の係合部312が進出位置から後退位置に移動するよう、操作部39を押圧する。また、取り付け指令F2を受信する爪交換装置102は、第1チャック爪1Aをチャック本体31に挿入する。更に、取り付け指令F2を受信する爪交換装置102は、チャック本体31の係合部312が後退位置から進出位置に移動するよう、操作部39の押圧を解除する。こうして、第1チャック爪1Aがチャック本体31に取り付けられる。
【0227】
(ワーク取り付けモードM4)
図29に記載の例では、制御装置9は、プログラム922(より具体的には、加工プログラム922b)を実行することにより、ワークWを複数のチャック爪1に取り付けるワーク取り付けモードM4を実行する。
【0228】
図29に例示されるように、ワーク取り付けモードM4は、爪駆動装置34を用いて、ワークWを複数のチャック爪1に取り付けることを含む。
【0229】
より具体的には、図29に例示されるように、ワーク取り付けモードM4は、制御装置9から爪駆動装置34に把持指令J1を送信することを含む。制御装置9から把持指令J1を受信する爪駆動装置34は、複数のチャック爪1によってワークWが把持されるよう、チャック本体31の可動部32を第1方向DR1または第2方向DR2に移動させる。こうして、ワークWが複数のチャック爪1に取り付けられる。
【0230】
(予熱装置58)
図31に例示されるように、ハイブリッド工作機械100は、ワークWを予熱する予熱装置58を備えていてもよい。図31に記載の例では、予熱装置58は、ワークWにレーザLBを照射することにより、ワークWを昇温させるレーザ照射装置51を含む。図31および図32に記載の例では、レーザ照射装置51は、ワークWを予熱する予熱装置58(図31を参照。)として機能するとともに、ワークWに付加する第3材料G3を溶融させる付加製造装置50(図32を参照。)の一部として機能する。
【0231】
代替的に、あるいは、付加的に、予熱装置58は、ワークWに誘導電流を流すことにより、ワークWを昇温させる高周波誘導加熱装置を含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、予熱装置58は、セラミックヒータ等のヒータを含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、予熱装置58は、ワークWに向けて炎を放射するガスバーナを含んでいてもよい。
【0232】
(予熱モードM5)
図31に記載の例では、制御装置9は、プログラム922(より具体的には、加工プログラム922b)を実行することにより、予熱モードM5を実行する。予熱モードM5は、付加製造モードM6の直前に実行されるモードである。予熱モードM5は、予熱装置58を用いてワークWを予熱することを含む。
【0233】
より具体的には、予熱モードM5は、ワークWが昇温されるよう、制御装置9から少なくとも予熱装置58に予熱指令V1を送信することを含む。付加的に、予熱モードM5は、制御装置9から第1移動装置7に移動指令(以下、「第5移動指令Q5」という。)を送信することと、制御装置9から第1回転駆動装置36に回転指令(以下、「第6回転指令U6」という。)を送信することと、のうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0234】
制御装置9から予熱指令V1を受信する予熱装置58は、ワークWにエネルギを付加し、ワークWを昇温させる。図31に記載の例では、予熱指令V1を受信するレーザ照射装置51は、ワークWに向けてレーザLBを射出する。また、第5移動指令Q5を受信する第1移動装置7、または、第6回転指令U6を受信する第1回転駆動装置36は、複数のチャック爪1によって把持されたワークWに対して第1ヘッド52を相対移動させる。こうして、第1ヘッド52から射出されるレーザLBによってワークWが予熱される。また、レーザLBを射出する第1ヘッド52がワークWに対して相対移動することにより、レーザLBの照射がワークWの特定領域に集中することが防止される。
【0235】
図31に例示されるように、ハイブリッド工作機械100は、赤外線温度センサ等の温度センサ56を有していてもよい。温度センサ56は、ワークWの温度を検出する。温度センサ56は、制御装置9に、ワークWの温度を示す信号データDAを送信する。制御装置9は、温度センサ56から受け取る信号データDAに基づいて、ワークWの温度が予め設定された第1温度TH1に達するまで予熱装置58にワークWの予熱を継続させ、ワークWの温度が予め設定された第1温度TH1に達することに応じて、予熱装置58に予熱終了指令を送信してもよい(第1例)。
【0236】
代替的に、制御装置9は、温度センサ56から受け取る信号データDAに基づいて、予熱モードM5が開始されたタイミングでのワークWの温度からのワークWの温度上昇幅(換言すれば、現在のワークWの温度から予熱モードM5が開始されたタイミングでのワークWの温度を減算することにより得られる値)が予め設定された第1閾値TH2に達するまで、予熱装置58にワークWの予熱を継続させ、上述の温度上昇幅が第1閾値TH2に達することに応じて、予熱装置58に予熱終了指令を送信してもよい(第2例)。
【0237】
代替的に、あるいは、付加的に、ハイブリッド工作機械100は、タイマー99を有していてもよい。タイマー99は、ハードウェアによって構成されていてもよいし、制御装置9がプログラム922を実行することにより制御装置9自体がタイマーとして機能してもよい。タイマー99は、制御装置9から予熱装置58への予熱指令V1の送信が開始されてからの経過時間をカウントする。制御装置9は、タイマー99によってカウントされる上述の経過時間が、予め設定された第1時間TH3に達するまで、予熱装置58にワークWの予熱を継続させ、上述の経過時間が第1時間TH3に達することに応じて、予熱装置58に予熱終了指令を送信してもよい(第3例)。
【0238】
上述の第1例、第2例、および、第3例の各々において、予熱指令V1を受信する予熱装置58は、ワークWにエネルギを付加してワークWを昇温させる。また、予熱終了指令を受信する予熱装置58は、ワークWへのエネルギ付加を終了し、ワークWの昇温を停止させる。
【0239】
(付加製造装置50)
図32に記載の例では、付加製造装置50は、ワークWに付加される第3材料G3を供給する材料供給装置55と、レーザ照射装置51とを有する。レーザ照射装置51は、レーザLBを射出する第1ヘッド52を有する。
【0240】
材料供給装置55は、ワークWに向けてワイヤ(例えば、金属製のワイヤ)を供給する装置であってもよい。この場合、ワイヤにレーザLBが照射されることによりワイヤが溶融し、当該溶融によって形成される溶融物がワークWに付着する。代替的に、材料供給装置55は、ワークWに向けて粉体(例えば、金属粉体)を供給する装置であってもよい。この場合、粉体にレーザLBが照射されることにより粉体が溶融し、当該溶融によって形成される溶融物がワークWに付着する。
【0241】
第3材料G3が、第1金属材料G1とは異なる材料である場合には、材料供給装置55は、第1金属材料G1と、第3材料G3とを、選択的に供給可能であることが好ましい。ハイブリッド工作機械100は、第1金属材料G1を収容する第1タンクと、第3材料G3を収容する第2タンクとを備えていてもよい。
【0242】
(付加製造モードM6)
図32に記載の例では、制御装置9は、プログラム922(より具体的には、加工プログラム922b)を実行することにより、付加製造モードM6を実行する。付加製造モードM6は、付加製造装置50を用いて、第1チャック爪1Aの金属層15に当接しているワークWに第3材料G3を付加することを含む。
【0243】
より具体的には、付加製造モードM6は、第1チャック爪1Aを含む複数のチャック爪1によって把持されたワークWに第3材料G3が付加されるよう、制御装置9から第1移動装置7に移動指令(以下、「第6移動指令Q6」という。)を送信することと、制御装置9から付加製造装置50に付加製造指令(以下、「第2付加製造指令D2」という。)を送信することと、を含む。付加的に、付加製造モードM6は、制御装置9から第1回転駆動装置36に回転指令(以下、「第7回転指令U7」という。)を送信することを含んでいてもよい。
【0244】
制御装置9から第6移動指令Q6を受信する第1移動装置7は、ワークWに対向する位置に、第1ヘッド52を移動させる。制御装置9から第2付加製造指令D2を受信する付加製造装置50は、ワークWに第3材料G3を付加する。
【0245】
制御装置9から第1回転駆動装置36に第7回転指令U7が送信される場合には、第7回転指令U7を受信する第1回転駆動装置36は、ワークWを第1軸AXまわりに回転させる。この場合、第1ヘッド52を大きく移動させることなく、ワークWに第3材料G3を付加することができる。
【0246】
(切削加工装置60)
切削加工装置60は、第2ヘッド62を有する。図36に例示されるように、第2ヘッド62は、ミル工具T2を、当該ミル工具の中心軸まわりに回転させるモータ66を有していてもよい。より具体的には、第2ヘッド62は、ミル工具T2を保持する回転体63と、回転体63を回転可能に支持するフレーム64と、フレーム64に対して回転体63を相対回転させるモータ66と、を有していてもよい。
【0247】
第2ヘッド62は、タレットであってもよい。この場合、第2ヘッド62は、旋削工具T1、および、ミル工具T2の両方を支持可能なタレットヘッドであってもよい。また、タレットヘッドは、旋削工具T1、ミル工具T2、および、溝入れ工具T3を同時に支持可能であってもよい。
【0248】
(切削加工モードM7)
図30、または、図33に記載の例では、制御装置9は、プログラム922(より具体的には、加工プログラム922b)を実行することにより、切削加工モードM7を実行する。切削加工モードM7は、切削加工装置60を用いてワークWを切削することを含む。
【0249】
より具体的には、切削加工モードM7は、第1チャック爪1Aを含む複数のチャック爪1によって把持されたワークWが切削されるよう、制御装置9から第2移動装置8に移動指令(以下、「第7移動指令Q7」という。)を送信することを含む。付加的に、切削加工モードM7は、制御装置9から第1回転駆動装置36に回転指令(以下、「第8回転指令U8」という。)を送信することを含んでいてもよい。
【0250】
制御装置9から第7移動指令Q7を受信する第2移動装置8は、ワークWに旋削工具T1を接触させる。第8回転指令U8を受信する第1回転駆動装置36は、ワークWを第1軸AXまわりに回転させる。こうして、旋削工具T1によって、ワークWが旋削される。
【0251】
代替的に、切削加工モードM7は、ミル工具T2を回転させるための工具回転指令を、モータ66に送信してもよい。工具回転指令を受信するモータ66は、ミル工具T2をミル工具T2の中心軸まわりに回転させる。こうして、ミル工具T2によって、ワークWが切削される。
【0252】
(第1支持装置3)
図34記載の例では、第1支持装置3は、チャック本体31を第1軸AXまわりに回転可能に支持するハウジング37を有する。第1支持装置3は、ハウジング37を移動させる移動装置35を有していてもよい。移動装置35は、ハウジング37を、例えば、第1軸AXに平行な方向に移動させることができる。
【0253】
(第2支持装置4)
図34に例示されるように、ハイブリッド工作機械100は、ワークWを支持する第2支持装置4を備えていてもよい。図35に記載の例では、第2支持装置4は、ワークWを把持する第2群のチャック爪1Sが取り付けられる第2チャック本体41と、第2チャック本体41を第2軸AX2まわりに回転させる第2回転駆動装置46と、を有する。図34に例示されるように、第2軸AX2は、第1軸AXと同軸であってもよい。
【0254】
第2チャック本体41は、第2群のチャック爪1Sが取り付けられる可動部42と、当該可動部42を移動可能に支持するベース部43とを有する。
【0255】
図34に記載の例では、第2支持装置4は、第2爪駆動装置44を有する。第2爪駆動装置44は、第2軸AX2から離れる方向、または、第2軸AX2に近づく方向に、第2群のチャック爪1Sが取り付けられた可動部42を移動させる。
【0256】
第2支持装置4は、第2チャック本体41を第2軸AX2まわりに回転可能に支持する第2ハウジング47を有していてもよい。また。第2支持装置4は、第2ハウジング47を移動させる移動装置45を有していてもよい。移動装置45は、第2ハウジング47を、例えば、第2軸AX2に平行な方向に移動させることができる。
【0257】
(移載モードM8)
図34に記載の例では、制御装置9は、プログラム922(より具体的には、加工プログラム922b)を実行することにより、移載モードM8を実行する。
【0258】
移載モードM8は、第1支持装置3および第2支持装置4を用いて、ワークWを第1支持装置3から第2支持装置4に移載することを含む。
【0259】
より具体的には、図34に記載の例では、移載モードM8は、(1)複数のチャック爪1に把持されたワークWに、第2支持装置4が近づくよう、第1支持装置3の移動装置35、および、第2支持装置4の移動装置45のうちの少なくとも一方に第1指令S1を送信することと、(2)第2群のチャック爪1SによってワークWが把持されるよう、制御装置9から第2爪駆動装置44に第2指令S2を送信することと、(3)複数のチャック爪1によるワークWの把持が解除されるよう、制御装置9から爪駆動装置34に第3指令S3を送信することと、(4)ワークWが第1支持装置3から離れる方向に移動するよう、第1支持装置3の移動装置35、および、第2支持装置4の移動装置45のうちの少なくとも一方に第4指令S4を送信することと、を含む。
【0260】
図34に記載の例では、制御装置9から第1指令S1を受信する移動装置45は、第2支持装置4をワークWに接近させる。制御装置9から第2指令S2を受信する第2爪駆動装置44は、第2群のチャック爪1SによってワークWが把持されるよう、第2チャック本体41の可動部42を移動させる。制御装置9から第3指令S3を受信する爪駆動装置34は、複数のチャック爪1によるワークWの把持が解除されるよう、チャック本体31の可動部32を移動させる。制御装置9から第4指令S4を受信する移動装置45は、ワークWを支持する第2支持装置4を第1支持装置3から離れる方向に移動させる。こうして、ワークWが、第1支持装置3から第2支持装置4に移載される。
【0261】
(第2の付加製造モードM9)
図35に記載の例では、制御装置9は、プログラム922(より具体的には、加工プログラム922b)を実行することにより、第2の付加製造モードM9を実行する。
【0262】
第2の付加製造モードM9は、付加製造装置50を用いて、第2群のチャック爪1Sによって把持されるワークWに第4材料G4を付加することを含む。第4材料G4は、第3材料G3と同一の材料であってもよいし、第3材料G3とは異なる材料であってもよい。
【0263】
(第2の切削加工モードM10)
図36に記載の例では、制御装置9は、プログラム922(より具体的には、加工プログラム922b)を実行することにより、第2の切削加工モードM10を実行する。
【0264】
第2の切削加工モードM10は、切削加工装置60を用いて、第2群のチャック爪1Sによって把持されるワークWを切削することを含む。
【0265】
(リペアモードM11)
プログラム922(より具体的には、爪作製プログラム922a)を実行することにより、リペアモードM11を実行する。図37または図38に記載の例では、リペアモードM11は、チャック本体31に第1チャック爪1Aの基部11が取り付けられた状態で行われる。
【0266】
図37または図38に記載の例では、リペアモードM11は、切削加工装置60を用いて金属層15の少なくとも一部を切削することにより、第1チャック爪1Aに(より具体的には、爪本体13または金属層15に)、基礎面17を形成することを含む。
【0267】
より具体的には、リペアモードM11は、第1チャック爪1Aに基礎面17が形成されるよう、制御装置9から第2移動装置8に移動指令(以下、「第8移動指令Q8」という。)を送信することと、制御装置9から第1回転駆動装置36に回転指令(以下、「第9回転指令U9」という。)を送信することと、を含む。
【0268】
制御装置9から第8移動指令Q8を受信する第2移動装置8は、旋削工具T1が金属層15に接触するよう、第2ヘッド62を移動させる。制御装置9から第9回転指令U9を受信する第1回転駆動装置36は、爪本体13を第1軸AXまわりに回転させる。こうして、金属層15が旋削工具T1によって旋削され、爪本体13または金属層15に基礎面17が形成される。
【0269】
図39に記載の例では、リペアモードM11は、付加製造装置50を用いて、基礎面17に第1金属材料G1を付加することにより、金属層15を再形成することを含む。
【0270】
より具体的には、リペアモードM11は、基礎面17に第1金属材料G1が付加されるよう、制御装置9から第1移動装置7に移動指令(以下、「第9移動指令Q9」という。)を送信することと、制御装置9から付加製造装置50に付加製造指令(以下、「第3付加製造指令D3」という。)を送信することと、を含む。付加的に、リペアモードM11は、制御装置9から第1回転駆動装置36に回転指令(以下、「第10回転指令U10」という。)を送信することを含んでいてもよい。
【0271】
制御装置9から第9移動指令Q9を受信する第1移動装置7は、基礎面17に対向する位置に、第1ヘッド52を移動させる。制御装置9から第3付加製造指令D3を受信する付加製造装置50は、基礎面17に第1金属材料G1を付加する。
【0272】
制御装置9から第1回転駆動装置36に第10回転指令U10が送信される場合には、第10回転指令U10を受信する第1回転駆動装置36は、爪本体13を第1軸AXまわりに回転させる。この場合、第1ヘッド52を大きく移動させることなく、基礎面17に第1金属材料G1を付加することができる。
【0273】
図40に記載の例では、リペアモードM11は、切削加工装置60を用いて、再形成された金属層15を切削することにより、当該金属層15の表面を平滑化することを含む。
【0274】
より具体的には、リペアモードM11は、再形成された金属層15の表面が平滑化されるよう、制御装置9から第2移動装置8に移動指令(以下、「第10移動指令Q10」という。)を送信することと、制御装置9から第1回転駆動装置36に回転指令(以下、「第11回転指令U11」という。)を送信することと、を含む。
【0275】
制御装置9から第10移動指令Q10を受信する第2移動装置8は、旋削工具T1が再形成された金属層15に接触するよう、第2ヘッド62を移動させる。制御装置9から第11回転指令U11を受信する第1回転駆動装置36は、爪本体13を第1軸AXまわりに回転させる。こうして、再形成された金属層15が旋削工具T1によって旋削され、当該金属層15の表面が平滑化される。
【0276】
リペアモードM11は、切削加工装置60を用いて再形成された金属層15を切削することにより、当該金属層15の表面に溝を形成することを含んでいてもよい。
【0277】
(プログラム922)
実施形態におけるプログラム922は、上述のチャック爪の作製方法のうち、少なくとも、第1付加工程(第3ステップST3)、および、第2切削工程(第4ステップST4)を、ハイブリッド工作機械100(より具体的には、ハイブリッド工作機械100の制御装置9)に実行させるためのプログラムである。
【0278】
より具体的には、実施形態におけるプログラム922は、(1)基部11と爪本体13とを有する第1ブロックBL1の基部11が第1軸AXまわりに回転可能なチャック本体31に取り付けられた状態で、第2金属材料によって構成される爪本体13に、第2金属材料よりも熱伝導率が低い第1金属材料G1によって構成される金属層15を付加する工程と、(2)基部11がチャック本体31に取り付けられた状態で金属層15を切削することにより、ワークWに当接することとなる切削面16sを形成する工程と、を具備するチャック爪の作製方法を、ハイブリッド工作機械100(より具体的には、ハイブリッド工作機械100の制御装置9)に実行させるためのプログラムである。
【0279】
実施形態におけるプログラム922は、第1切削工程(第2ステップST2)、第1付加工程(第3ステップST3)、第2切削工程(第4ステップST4)を、具備するチャック爪の作製方法を、ハイブリッド工作機械100(より具体的には、ハイブリッド工作機械100の制御装置9)に実行させるためのプログラムであってもよい。
【0280】
より具体的には、実施形態におけるプログラム922は、(1)基部11と爪本体13とを有する第1ブロックBL1の基部11が第1軸AXまわりに回転可能なチャック本体31に取り付けられた状態で、爪本体13に基礎面130が形成されるよう、爪本体13を切削する工程と、(2)基部11がチャック本体31に取り付けられた状態で、第2金属材料によって構成される爪本体13の基礎面130に、第2金属材料よりも熱伝導率が低い第1金属材料G1によって構成される金属層15を付加する工程と、(3)基部11がチャック本体31に取り付けられた状態で金属層15を切削することにより、金属層15にワークWに当接することとなる切削面16sを形成する工程と、を具備するチャック爪の作製方法を、ハイブリッド工作機械100(より具体的には、ハイブリッド工作機械100の制御装置9)に実行させるためのプログラムであってもよい。
【0281】
上述の基礎面130は、第1軸AXに平行な方向に延在する第1基礎面131、および、第1軸AXに垂直な第2基礎面132を含んでいてもよい。また、上述の切削面16sは、第1軸AXに平行な方向に延在する第1切削面16s-1、および、第1軸AXに垂直な第2切削面16s-2を含んでいてもよい。
【0282】
実施形態におけるプログラム922は、少なくとも、上述の第2ステップST2、上述の第3ステップST3、上述の第4ステップST4、上述の第9ステップST9、および、上述の第12ステップST12をハイブリッド工作機械100(より具体的には、ハイブリッド工作機械100の制御装置9)に実行させるためのプログラムであってもよい。また、実施形態におけるプログラム922は、少なくとも、上述の第2ステップST2乃至第12ステップST12をハイブリッド工作機械100(より具体的には、ハイブリッド工作機械100の制御装置9)に実行させるためのプログラムであってもよい。また、実施形態におけるプログラム922は、上述の第1ステップST1乃至第16ステップST16をハイブリッド工作機械100(より具体的には、ハイブリッド工作機械100の制御装置9)に実行させるためのプログラムであってもよい。第1ステップST1乃至第16ステップST16については説明済みであるため、これらのステップについての繰り返しとなる説明は省略する。
【0283】
実施形態におけるメモリ92は、上述のプログラム922を記録した不揮発性記憶媒体であってもよい。上述のプログラム922を記録した不揮発性記憶媒体は、図45に例示されるように、可搬式の記憶媒体92Mであってもよい。
【0284】
本発明は上記各実施形態または各変形例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態または各変形例は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態または各変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態または他の変形例にも適用可能である。さらに、各実施形態または各変形例における任意付加的な構成は、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0285】
1…チャック爪、1'…チャック爪、1A…第1チャック爪、1B…第2チャック爪、1C…第3チャック爪、1S…第2群のチャック爪、3…第1支持装置、4…第2支持装置、5…金属付加装置、7…第1移動装置、8…第2移動装置、9…制御装置、11…基部、11B…第2基部、11C…第3基部、11s…基部、12…被保持部、13…爪本体、13B…第2爪本体、13C…第3爪本体、13s…爪本体、15…金属層、15B…第2金属層、15C…第3金属層、15a…金属層の第1部分、15b…金属層の第2部分、15c…金属層の第3部分、15s…金属層、16…表面、16-1…第1面、16-2…第2面、16-3…第3面、16s…切削面、16s-1…第1切削面、16s-2…第2切削面、17、17-1、17-2…基礎面、31…チャック本体、32…可動部、33…ベース部、34…爪駆動装置、35…移動装置、36…第1回転駆動装置、37…ハウジング、39…操作部、41…第2チャック本体、42…可動部、43…ベース部、44…第2爪駆動装置、45…移動装置、46…第2回転駆動装置、47…第2ハウジング、50…付加製造装置、51…レーザ照射装置、52…第1ヘッド、55…材料供給装置、56…温度センサ、58…予熱装置、60…切削加工装置、62…第2ヘッド、63…回転体、64…フレーム、66…モータ、70…第1ヘッド移動装置、71…第1駆動装置、72…第2駆動装置、73…傾動装置、80…第2ヘッド移動装置、81…第3駆動装置、82…第4駆動装置、90…ハードウェアプロセッサ、92…メモリ、92M…記憶媒体、94…通信回路、96…入力装置、98…バス、99…タイマー、100…ハイブリッド工作機械、101…ストッカ、101a…爪ホルダ、102…爪交換装置、102a…第1ユニット、102b…第2ユニット、112…第1係合部、122…第2係合部、130、130B…基礎面、131…第1基礎面、132…第2基礎面、151…付加製造層、161、161-1、161-2、161-3…溝、312…係合部、922…プログラム、922a…爪作製プログラム、922b…加工プログラム、922c…爪交換プログラム、926、926a、926b、926c、926d、926e、926f、926g、926h…データ、962…タッチパネル付きディスプレイ、BL1…第1ブロック、BL2…第2ブロック、G1…第1金属材料、g1…金属粉体、G3…第3材料、g3…粉体、G4…第4材料、LB…レーザ、M1…爪作製モード、M2…取り外しモード、M3…取り付けモード、M4…ワーク取り付けモード、M5…予熱モード、M6…付加製造モード、M7…切削加工モード、M8…移載モード、M9…第2の付加製造モード、M10…第2の切削加工モード、M11…リペアモード、T…切削工具、T1…旋削工具、T2…ミル工具、T3…溝入れ工具、W、W2…ワーク、Wa…ワークの外周面、Wb…ワークの第1端面、Wc…ワークの内周面、Wd…ワークの第2端面、Wp…ワークのオリジナル部分、Wq…ワークに付加された付加部分、Wr…ワークに付加された第2の付加部分
【要約】
チャック爪は、チャック本体に取り付けられる基部と、爪本体と、爪本体に付加され、ワークに当接する金属層と、を具備する。金属層を構成する第1金属材料は、爪本体を構成する第2金属材料よりも熱伝導率が低い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45