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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/08 20060101AFI20231109BHJP
   F04D 29/70 20060101ALI20231109BHJP
   F02B 67/06 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
F04D29/08 C
F04D29/70 G
F02B67/06 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020216809
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102208
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】李沢 謙介
(72)【発明者】
【氏名】是永 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】森永 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】深田 神
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-080224(JP,U)
【文献】実開昭61-017128(JP,U)
【文献】実開平07-025220(JP,U)
【文献】特開2005-256789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/08
F04D 29/70
F02B 67/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォータポンプに連結されるファンプーリと、
前記ファンプーリを駆動するファン駆動プーリと、
前記ファンプーリに設けられ、前記ファン駆動プーリの回転により巻き上げられて跳ね返った泥水が前記ファンプーリの内側に溜まるのを阻止する泥水阻止部と、
を備え
前記ファンプーリは、前記ファンプーリと前記ファン駆動プーリとを連結するベルトが掛かる溝部を有し、
前記溝部の内側部分は、前記泥水阻止部を有しており、
前記泥水阻止部の中央の底部は、板材を突き合わせることで壁形状に形成されたことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記底部は、前記ファンプーリの軸部を回転可能に保持する保持部の外周面に近接する位置まで半径方向内側に延長して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等のエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばディーゼルエンジンが搭載された作業機器が水田等で作業を行う場合において、ディーゼルエンジンのファン駆動プーリが回転すると、ファン駆動プーリが水田の泥水を巻き上げることがある。ファン駆動プーリとウォータポンプの駆動入力用のファンプーリは、Vベルトで互いに連結されている。
【0003】
ファン駆動プーリが巻き上げた泥水は、ウォータポンプのボディに当たる。ボディに当たって跳ね返った泥水は、ファンプーリの内側に侵入して溜まって乾いて、ファンプーリの内側に土として溜まる。そして、ファンプーリが回転すると、ファンプーリに溜まった泥水や溜まった土が、ウォータポンプのメカニカルシールに入り込んでしまうという課題がある。
【0004】
なお、特許文献1には、ウォータポンプが開示されている。ウォータポンプは、自動車のエンジン冷却装置内における冷却水の循環に用いられている。特許文献1に記載されたウォータポンプは、カバー部材の弾接部を、プーリの第2側壁に弾接させて相互管の密接状態を保持することで、ポンプハウジング内部へ侵入した冷却水が軸受けに作用することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-36425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、泥水がファンプーリの内側に溜まって乾いて土として溜まる現象を防止することができるエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、ウォータポンプに連結されるファンプーリと、前記ファンプーリを駆動するファン駆動プーリと、前記ファンプーリに設けられ、前記ファン駆動プーリの回転により巻き上げられて跳ね返った泥水が前記ファンプーリの内側に溜まるのを阻止する泥水阻止部と、を備えたことを特徴とする本発明のエンジンにより解決される。
【0008】
本発明のエンジンによれば、ファン駆動プーリの回転により巻き上げられて跳ね返った泥水がファンプーリの内側に溜まるのを阻止する泥水阻止部が、ファンプーリに設けられている。これにより、泥水が、ファンプーリの内側に溜まって乾いて土として溜まる現象を防止することができる。従って、ファンプーリが回転しても、ウォータポンプのメカニカルシールへの泥水の侵入を抑えることができることから、ウォータポンプの動作に支障が生ずることを抑えることができる。
【0009】
本発明のエンジンにおいて、好ましくは、前記泥水阻止部は、前記ファンプーリの形状を先端側に向けて先細りになるように傾斜をつけることで形成されたテーパ形状の部分であり、前記ファンプーリの内側に溜まった前記泥水を前記ファンプーリの回転により発生する遠心力により吹き飛ばす構成としたことを特徴とする。
本発明のエンジンによれば、泥水阻止部は、ファンプーリの形状を先端側に向けて先細りになるように傾斜をつけることで形成されたテーパ形状の部分であるので、ファンプーリの内側に溜まった泥水をファンプーリの回転により発生する遠心力により吹き飛ばすことができる。従って、泥水が、ファンプーリの内側に溜まって乾いて土として溜まる現象を防止することができる。
【0010】
本発明のエンジンにおいて、好ましくは、前記泥水阻止部は、前記ファンプーリの内側に配置されて、前記泥水の侵入を防止する壁部であることを特徴とする。
本発明のエンジンによれば、泥水阻止部は、ファンプーリの内側に配置されて、泥水の侵入を防止する壁部である。従って、泥水が、ファンプーリの内側に溜まって乾いて土として溜まる現象を防止することができる。
【0011】
本発明のエンジンにおいて、好ましくは、前記ファンプーリは、前記ファン駆動プーリを連結するベルトを掛けるためのベルト溝を有し、前記泥水阻止部は、前記ベルト溝の底部を前記ファンプーリの半径方向内側に延長することで形成されていることを特徴とする。
本発明のエンジンによれば、泥水阻止部は、ベルト溝の底部をファンプーリの半径方向内側に延長することで形成されている。従って、泥水が、ファンプーリの内側に溜まって乾いて土として溜まる現象を防止することができる。
【0012】
本発明のエンジンにおいて、好ましくは、前記泥水阻止部は、前記ファンプーリの内側に形成されている羽根部分であり、前記羽根部分は、前記ファンプーリの回転方向とは逆方向である前記泥水を吐き出す方向に放射状に形成されていることを特徴とする。
本発明のエンジンによれば、羽根部分は、ファンプーリの回転方向とは逆方向である泥水を吐き出す方向に放射状に形成されている。従って、ファンプーリが回転すると、泥水を吐き出すことができ、泥水がファンプーリの内側に溜まって乾いて土として溜まる現象を防止することができる。
【0013】
本発明のエンジンにおいて、好ましくは、前記泥水阻止部は、前記ファンプーリの周囲面に形成されて、前記ファンプーリの内側の前記泥水を前記ファンプーリの外部に排出するための排出用穴であることを特徴とする。
本発明のエンジンによれば、泥水阻止部は、ファンプーリの周囲面に形成されて、ファンプーリの内側の泥水をファンプーリの外部に排出するための排出用穴である。従って、ファンプーリが回転すると、泥水を吐き出すことができる。これにより、泥水がファンプーリの内側に溜まって乾いて土として溜まる現象を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、泥水がファンプーリの内側に溜まって乾いて土として溜まる現象を防止することができるエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンを示す斜視図である。
図2図1に示すエンジンの正面図である。
図3】本発明の第1実施形態のファンプーリおよびウォータポンプを示す図である。
図4】本発明の第2実施形態を示す図である。
図5】本発明の第3実施形態を示す図である。
図6】本発明の第4実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンを示す斜視図であり、図2は、図1に示すエンジンの正面図である。本明細書では、図面は、図示の簡単化のために、断面を示すハッチングの表示を省略している。図面において、X方向は、図1に示すエンジン1の前後方向である。Y方向は、エンジン1の左右方向である。Z方向は、エンジン1の上下方向である。X、Y、Z方向は、互いに直交している。
【0018】
図1に示すエンジン1は、例えばコモンレール式のディーゼルエンジンであり、エンジン1は、例えば産業用ディーゼルエンジンである。エンジン1は、例えばターボチャージ付きの過給式の高出力な立形多気筒エンジン、一例として4気筒エンジンである。エンジン1は、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機のような各用途の機器に搭載される。
図1に示すように、エンジン1は、シリンダブロック2と、オイルパン3と、ヘッドカバー4と、ファン駆動プーリ5と、ダイナモアッセンブリ6と、冷却ファン7と、ファンプーリ10と、ウォータポンプ18と、ギヤケース19等を有している。ファン駆動プーリ5はクランク軸に連結され、ファンプーリ10は、ウォータポンプ18の軸部に連結されている。ファン駆動プーリ5と、ダイナモアッセンブリ6のプーリ6Pと、ファンプーリ10には、Vベルト9が掛かっており、ファン駆動プーリ5がR方向に連続回転駆動することにより、ダイナモアッセンブリ6のプーリ6Pとファンプーリ10は、連動して連続回転する。
【0019】
図2に示すエンジン1では、図1に示す冷却ファン7とVベルト9の図示を省略している。エンジン1が搭載された作業機器が、例えば水田等で作業を行う場合には、ファン駆動プーリ5がR方向に回転すると、ファン駆動プーリ5は水田の泥水を巻き上げる。ファン駆動プーリ5が巻き上げた泥水は、S方向に跳ね上がってエンジン1の例えばウォータポンプ18のボディに当たる。ボディに当たって跳ね返った泥水が、ファンプーリ10の内側に溜まって乾いて土として溜まらないようにする必要がある。そうしないと、ファンプーリ10が回転すると、泥水や土が、例えばウォータポンプ18のメカニカルシール等に侵入して、ウォータポンプ18の動作に支障が出るおそれがある。
【0020】
そこで、このように跳ね返った泥水が、ファンプーリ10の内側に溜まって乾いて、土として溜まる現象を阻止するために、図3(B)に示すように、ファンプーリ10には、泥水阻止部20が設けられている。図3(A)は、ウォータポンプ18を示す正面図であり、図3(B)は、ファンプーリ10およびウォータポンプ18を示す断面図である。
【0021】
図3に示すように、ファンプーリ10は、ウォータポンプ18の軸部10Pに取り付けられている。泥水阻止部20は、ファンプーリ10の絞り部21を、テーパ状にすることで形成されている。この泥水阻止部20は、ファンプーリ10の先端側に向けて先細りになるように傾斜をつけることで形成されている。泥水阻止部20がファンプーリ10に設けられることで、仮にファンプーリ10の内側11に泥水が入ったとしても、ファンプーリ10が回転することで発生する遠心力により、ファンプーリ10の内側11に入った泥水をファンプーリ10の内側11からファンプーリ10の外側へ確実に吹き飛ばすことができる。従って、泥水が、ファンプーリ10の内側11に溜まって乾いて、土として溜まる現象を阻止できる。泥水阻止部20は、ファンプーリ10の内側11に泥水の侵入するのを阻止できるだけでなく、ファンプーリ10が回転しても泥水や土がウォータポンプ18のメカニカルシール58への泥水の侵入を防ぐ。
【0022】
また、図3(B)に示すように、ファンプーリ10には、泥水阻止部20に加えて、別の泥水阻止部30を、必要に応じて追加して設けることができる。泥水阻止部30は、泥水の侵入を防止する壁部であり、ファンプーリ10の内側11において、好ましくは全周に渡って設けることができる。これにより、泥水阻止部30は、泥水がファンプーリ10の内側11に浸入するのをさらに確実に阻止できる。泥水阻止部30は、ファンプーリ10の内側11に泥水の侵入するのを阻止できるだけでなく、ウォータポンプ18のメカニカルシール58への泥水の侵入を防ぐ。泥水阻止部30は、例えばスポンジのような弾性を有する軽量な部材を用いることで、ファンプーリ10が重くなるのを防ぐことができる。
【0023】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図4は、本発明の第2実施形態を示しており、ファンプーリ10は、ウォータポンプ18の軸部10Pに取り付けられている。ファンプーリ10はV型溝部40を有し、このV型溝部40は、図1に示すVベルト9が掛かる。V型溝部40の内側部分は、泥水阻止部50を有する。泥水阻止部50は、V型溝部40の内側部分の全周囲に渡って形成されている。泥水阻止部50の中央の底部41が、ファンプーリ10の軸部10Pを回転可能に保持する保持部10Rの外周面に近接する位置まで半径方向内側に延長して形成されている。泥水阻止部50の中央の底部41は、板材を突き合わせることで壁形状になるように形成されている。これにより、泥水阻止部50は、泥水がファンプーリ10の内側11に浸入するのを、確実に阻止できる。泥水阻止部50は、ファンプーリ10の内側11に泥水や土の侵入するのを阻止できるだけでなく、ファンプーリ10が回転してもウォータポンプ18のメカニカルシール58への泥水や土の侵入を防ぐ。
【0024】
(第3実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図5は、本発明の第3実施形態を示している。図5(A)は、ファンプーリ10の内底面11Bを示しており、図5(B)は、図5(A)に示すファンプーリ10のC-C線における断面図である。図5に示すように、ファンプーリ10の内底面11Bには、複数の泥水阻止部60を有している。これらの泥水阻止部60は、ファンプーリ10の回転中心軸CLを中心にして、円周方向に同じ間隔をおいて成形されている羽根部分である。各泥水阻止部60は、ファンプーリ10の回転方向であるQ方向とは逆向きの吐き出し方向の放射状の羽根である。ファンプーリ10がQ方向に回転すると、羽根形状の各泥水阻止部60が発生する風力により生じる泥水の吐きだし作用と、ファンプーリ10が発生する遠心力により、ファンプーリ10の内側11に侵入した泥水は、ファンプーリ10の外へ吐きだすことができる。これにより、泥水阻止部60は、ファンプーリ10の内側11に浸入した泥水が乾燥して土になって留まるのを、確実に阻止できる。泥水阻止部60は、ファンプーリ10の内側11に泥水の侵入するのを阻止できるだけでなく、ファンプーリ10が回転してもウォータポンプのメカニカルシールへの泥水の侵入を防ぐ。
【0025】
(第4実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
図6は、本発明の第4実施形態を示している。図6に示すファンプーリ10は、その外周面10Mにおいて、複数の泥水阻止部70が形成されている。泥水阻止部70は、全周囲に渡って、同じ間隔をおいて形成されている例えばほぼ円形状の貫通した排出用の穴である。ファンプーリ10が回転すると、ファンプーリ10の内側11に入り込んだ泥水は、複数の泥水阻止部70を通じて、遠心力によりファンプーリ10の外側に吹き飛ばすことができる。これにより、泥水阻止部70は、ファンプーリ10の内側11に浸入した泥水が乾燥して土になって留まるのを、確実に阻止でき、ウォータポンプへの泥水の侵入を防ぐことができる。泥水阻止部60は、ファンプーリ10の内側11に泥水の侵入するのを阻止できるだけでなく、ウォータポンプのメカニカルシールへの泥水の侵入を防ぐ。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。上述した本発明の各実施形態は、必要に応じて、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0027】
1:エンジン、 2:シリンダブロック、 3:オイルパン、 4:ヘッドカバー、 5:ファン駆動プーリ、 6:ダイナモアッセンブリ、 6P:プーリ、 7:冷却ファン、 9:Vベルト、 10:ファンプーリ、 10M:外周面、 10P:軸部、 10R:保持部、 11:内側、 11B:内底面、 18:ウォータポンプ、 19:ギヤケース、 20:泥水阻止部、 21:絞り部、 30:泥水阻止部、 40:V型溝部、 41:底部、 50:泥水阻止部、 58:メカニカルシール、 60:泥水阻止部、 70:泥水阻止部、 CL:回転中心軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6