(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】冷凍寿司の解凍用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20231109BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20231109BHJP
A23L 3/365 20060101ALI20231109BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B65D81/34 U
A47J27/00 107
A23L3/365 A
B65D85/50 140
(21)【出願番号】P 2022209055
(22)【出願日】2022-12-26
【審査請求日】2023-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522502668
【氏名又は名称】株式会社ビーアンドテーマリンプロダクツカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107607
【氏名又は名称】加藤 実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勉
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-034946(JP,A)
【文献】特許第3640473(JP,B2)
【文献】特開2019-156439(JP,A)
【文献】実公平02-048381(JP,Y2)
【文献】特開昭63-192410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
A47J 27/00-64
A23L 7/10-196
A23L 3/36-37
B65D 85/50
A23B 4/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司を配置するための中底部と、水を収容可能な下底部から構成されており、冷凍寿司の寿司飯が接する中底の下方側に水が収容された状態で電子レンジによる加熱が行われる、
マイクロ波の遮蔽部を要しない冷凍寿司の解凍容器。
【請求項2】
蓋部と中底部とは、互いに嵌合するよう構成されている、請求項1に記載の冷凍寿司の解凍容器。
【請求項3】
中底部には、電子レンジによる加熱によって加温された水の蒸気が通過できる細孔が設けてある、請求項1に記載の冷凍寿司の解凍容器。
【請求項4】
中底部と下底部とは、互いに嵌合したとき、その間隙に、電子レンジによる加熱によって水が沸騰しないように十分な量の水を収容できる空間が形成されるよう構成されている、請求項1に記載の冷凍寿司の解凍容器。
【請求項5】
中底部に配置すべき冷凍寿司が握り寿司である場合に、その数に応じた凸部が設けられ、凸部は寿司ネタの端部が中底部の底面に接触しない状態を維持するのに十分な高さを備えている、請求項1に記載の冷凍寿司の解凍容器。
【請求項6】
蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された中底部と、水を収容可能な下底部から構成されており、冷凍寿司の寿司飯が接する中底の下方側に水が収容された状態で電子レンジによる加熱が行われる、
マイクロ波の遮蔽部を要しない解凍容器入りの冷凍寿司。
【請求項7】
蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された中底部と、水を収容可能な下底部から構成された解凍容器入りの冷凍寿司の調理方法であって、下底部に水を注入して、冷凍寿司の寿司飯が接する中底部の下方側に水が収容された状態とする工程、及び、下底部に水が注入された解凍容器入りの冷凍寿司を電子レンジで加熱する工程を含む、
マイクロ波の遮蔽部を要しない冷凍寿司の調理方法。
【請求項8】
蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された底部から構成された解凍容器入りの冷凍寿司の調理方法であって、水を収容可能な水保持容器に水を注入する工程、水保持容器の上方に解凍容器入りの冷凍寿司を載置して、冷凍寿司の寿司飯が接する底部の下方側に水が収容された状態とする工程、及び、水が注入された水保持容器及び解凍容器入りの冷凍寿司を電子レンジで加熱する工程を含む、
マイクロ波の遮蔽部を要しない冷凍寿司の調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍寿司の解凍容器、解凍容器入りの冷凍寿司、及び冷凍寿司の調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、解凍して食する冷凍寿司の食味を改善することを意図して、種々の工夫が報告されている。その多くは、電子レンジのマイクロ波を遮蔽する手段を局在させることで、寿司飯に作用するマイクロ波に比して、寿司ネタに作用するマイクロ波を減衰させるように構成された容器を用いるものである(特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1では、合成樹脂製の水容器と、その水容器に入れた水で構成される磁気シールド材を、寿司ネタを上にして並べた冷凍寿司の上部と上方側面を覆うように配置した解凍容器が提案されている(請求項1、
図5等)。
【0004】
特許文献2では、蓋部と器部とから構成される本体容器、中敷および中容器により構成され、蓋部上面部および側面部の内側にマイクロ波を遮断する遮蔽部が形成されて、中容器の中敷の上に寿司ネタを上にして配置された冷凍寿司を解凍すると、マイクロ波が器部における底部からのみ照射されるようにした解凍容器が提案されている(請求項1、
図3等)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3640473号公報
【文献】特開2007-137493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロ波の遮蔽部を容器の上部ないし側部に設けるためには、容器を独特な形状としたり、アルミ箔等の付加的な素材を用いたりする必要があり、実用化のために大量生産が求められる解凍容器の材料費及び加工費を圧迫する要因となる。従って、廉価で製作可能な簡易な構成を備え、かつ安定的に望ましい冷凍寿司の解凍を実現できる解凍容器が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、適切な冷凍寿司の解凍のためには部分的にマイクロ波を遮蔽すべきとの従来の固定観念から離れて、鋭意検討した結果、驚くべきことに、適量を適切に配置した水との共存下で電子レンジにより加熱することで、食味の良い冷凍寿司を提供可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司を配置するための中底部と、水を収容可能な下底部から構成されており、冷凍寿司の寿司飯が接する中底の下方側に水が収容された状態で電子レンジによる加熱が行われる、冷凍寿司の解凍容器を提供する。
【0009】
蓋部と中底部とは、互いに嵌合するよう構成されていることが好ましい。
【0010】
中底部には、電子レンジによる加熱によって加温された水の蒸気が通過できる細孔が設けてあることが好ましい。
【0011】
中底部と下底部とは、互いに嵌合したとき、その間隙に、電子レンジによる加熱によって水が沸騰しないように十分な量の水を収容できる空間が形成されることが好ましい。
【0012】
中底部に配置すべき冷凍寿司が握り寿司である場合に、その数に応じた凸部が設けられ、凸部は寿司ネタの端部が中底部の底面に接触しない状態を維持するのに十分な高さを備えていることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された中底部と、水を収容可能な下底部から構成されており、冷凍寿司の寿司飯が接する中底の下方側に水が収容された状態で電子レンジによる加熱が行われる、解凍容器入りの冷凍寿司を提供する。
【0014】
本発明は更に、蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された中底部と、水を収容可能な下底部から構成された解凍容器入りの冷凍寿司の調理方法であって、下底部に水を注入して、冷凍寿司の寿司飯が接する中底部の下方側に水が収容された状態とする工程、及び、下底部に水が注入された解凍容器入りの冷凍寿司を電子レンジで加熱する工程を含む、冷凍寿司の調理方法を提供する。
【0015】
本発明は更に、蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された底部から構成された解凍容器入りの冷凍寿司の調理方法であって、水を収容可能な水保持容器に水を注入する工程、水保持容器の上方に解凍容器入りの冷凍寿司を載置して、冷凍寿司の寿司飯が接する底部の下方側に水が収容された状態とする工程、及び、水が注入された水保持容器及び解凍容器入りの冷凍寿司を電子レンジで加熱する工程を含む、冷凍寿司の調理方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による冷凍寿司の解凍容器は、廉価で製作可能な簡易な構成を備え、大量生産への適合性が高い。
【0017】
本発明による冷凍寿司の解凍容器はまた、安定的に望ましい冷凍寿司の解凍を実現できるため、家庭等において良好な食味を呈する寿司を再現性良く利用することを可能とする。
【0018】
本発明による解凍容器入りの冷凍寿司は、冷凍状態での配送、保管及び販売に適し、冷凍寿司のサプライチェーンを効率化できる。また、寿司職人の人手不足への対処策となりうる。
【0019】
本発明による解凍容器入りの冷凍寿司はまた、水が収容された状態とするのみで、そのまま加熱調理に供することができるため、解凍操作者ないし消費者に高い利便性を提供できる。
【0020】
本発明による冷凍寿司の調理方法は、解凍容器入りの冷凍寿司において、寿司飯の下方側に水が収容された状態とした上で、電子レンジで加熱するという簡素な操作によって、良好な食味を呈する寿司を調製することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態である解凍容器に冷凍寿司が配置され、蓋部が外された状態を示す上面図である。
【
図2】
図1の一実施形態のA-A方向の断面図である。
【
図3】
図1の一実施形態のB-B方向の断面図である。蓋部が装着され、下底部には水が注入された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の対象となる「寿司」は、握り寿司、軍艦巻、押し寿司、棒寿司を含むが、寿司飯の上に寿司ネタが配された寿司であれば、これらに限定はされない。寿司飯としては、米飯と寿司酢とを混ぜた一般的な酢飯を用いることができる。寿司ネタの対象は限定されないが、例として、マグロ、イカ、サーモン、ブリ、エビ、ヒラメ等の魚介類を挙げることができる。
【0023】
本明細書において「良好な食味を呈する寿司」とは、寿司飯が程よい暖かさが感じられる温度で、かつ寿司ネタが寿司飯よりもやや低い温度であって、いわゆる食べ頃に該当する寿司を指す。具体的には、寿司飯の温度が30~45℃程度で、寿司ネタの温度が18~25℃程度であることが概ね好ましい。
【0024】
[冷凍寿司の解凍容器について]
図1~
図3に示す解凍容器1は、蓋部2(
図3にのみ示す)と、中底部3と、下底部4から構成されている。中底部3には冷凍寿司5が、寿司ネタ5aを寿司飯5bの上にした状態で配置される。下底部4は水を収容可能な構造を有し、水を注入することで、冷凍寿司5の下方側に水6が収容された状態となる。水6が収容された状態で電子レンジにより加熱を行うことで、良好な食味を呈する寿司が得られる。
【0025】
解凍容器1を用いて、このように望ましい冷凍寿司5の解凍を実現できる理由としては、特定の理論に拘束されるものではないが、以下のように想定される。すなわち、電子レンジで解凍する場合「先に氷から水に変化した場所に熱が集中する」特性があるため、冷凍寿司5と水6を二重構造で一体に加熱することによって、水6が先に加熱され、結果として冷凍寿司5への熱の集中が避けられて、冷凍寿司5がゆっくりと加熱され、特に寿司ネタ5aが過熱されて煮えることを防ぐことができると考えられる。また、寿司飯5bは、電子レンジのマイクロ波による熱に加えて、下側にある水6が加熱された湯温による熱も伝わることで、寿司ネタ5aよりも温度が上昇し、両者に程良い温度差がある、食べ頃の状態が実現できると考えられる。
【0026】
解凍容器の材質としては、マイクロ波を透過し、且つ電子レンジの加熱に耐え得る耐熱性材料で構成されるものであれば、何れのものも使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、紙及び前記ポリマーをコーティングした紙などが挙げられる。解凍容器の大きさは、主に、中底部3に配置する冷凍寿司5の大きさと個数に応じて選択される。電子レンジの中で回転できる大きさであることが好ましい。
図1は、握り寿司10個(10貫)が配置された1人前の容器を例示している。
【0027】
蓋部2と中底部3とは、内部に配置された冷凍寿司5の配送、保管、陳列等に適するように、互いに嵌合するよう構成されていることが好ましい。下底部4については、蓋部2と中底部3のいずれか又は両方と嵌合して、3つの部材が一体となって持ち運びできるよう構成されていることが好ましい。蓋部2と中底部3とが互いに嵌合し、更に中底部3と下底部4とが互いに嵌合して、3つの部材が一体となって持ち運びできるよう構成されていることがより好ましい。
【0028】
中底部3には、電子レンジによる加熱によって加温された水の蒸気が通過できる細孔が設けてあることが好ましい。寿司飯5bに湯温による熱と蒸気とが伝わり易いように、細孔は、中底部3の、冷凍寿司5が配置される部位に設けてあることがより好ましい。細孔は実質的に、中底部3の、冷凍寿司5が配置される部位のみに設けてあることが更に好ましい。ここで冷凍寿司5が「配置される部位」とは、水平面に置いた中底部3に、上方から寿司飯5bを投影して得られる領域をいう。また「実質的に・・のみ」とは、中底部3に設けられた全ての細孔の総面積に対して、当該部位にある細孔の総面積が占める割合が、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上であることをいう。
【0029】
中底部3と下底部4とは、互いに嵌合したとき、その間隙に、電子レンジによる加熱によって水が沸騰しないように十分な量の水6を収容できる空間が形成されることが好ましい。そのため、特に下底部4の形状は、中底部3の底面の形状との関係において、想定される適量の水6を収容するのに十分な程度の空間を形成できるように設計されることが好ましい。
【0030】
電子レンジによる所望の加熱が終了した時点での水の温度は、典型的には60~80℃程度である。従って、水6の適量の範囲は相応の幅広さを有するが、望ましい冷凍寿司5の解凍を実現するためには、この適量の範囲を解凍操作者が把握しておくことが重要といえる。具体的には、水6の適量は主に、解凍容器1に配置される冷凍寿司5の大きさと個数に応じて規定される。
【0031】
下底部4の側面の上方側には、水を注入するための注水口が設けられていてもよい。注水口を設けることで、下底部4に水を注入するために予め嵌合された中底部3と下底部4とを一旦取り外す操作を省略することができる。注水の操作をより容易にするために、下底部4の側面の上方側に膨らみを持たせた張出し部を設け、張出し部の上面に注水口を設けてもよい。
【0032】
下底部4の側面には、水6の適量の目安となる目盛り線を、印刷又は容器の刻み等によって設けられていてもよい。目盛り線は、例えば、適量の略上限と略下限を示す1対の線であってもよく、適量の典型量を示す1本の線であってもよい。
【0033】
中底部3には、配置すべき冷凍寿司5が握り寿司である場合に、その数に応じた凸部3aが設けられていてもよい。凸部3aは、寿司ネタ5aの端部が中底部3の底面に接触しない状態を維持するのに十分な高さを備えていることが好ましい。寿司ネタ5aの端部が中底部3の底面に接触した状態で電子レンジのマイクロ波により加熱されると、寿司ネタ5aの接触部分で先行して解凍が進むため、そこに水分が溜まり、溜まった水分にマイクロ波が集中して、寿司ネタ5aを過熱させる起点となり易い。従って、握り寿司を底上げする凸部3aを設けることで、特に、寿司飯5bの両側に大きくはみ出している寿司ネタ5aを過熱させることを防止する効果が高く、より安定的に望ましい解凍が実現できる。
また、凸部3aを設けることで、寿司のボリューム感が強調され、かつ寿司を箸で摘んで取り出しやすいという効果も得られる。
【0034】
凸部3aを設ける場合、その上面には、寿司飯5bの下面に密着し易いように、下向きの湾曲形状を付すことがより好ましい。かかる湾曲形状により、冷凍寿司5ないし解凍後の寿司を容器内でより安定的に保持することができる。
【0035】
凸部3aを有する中底部3に、水の蒸気が通過できる細孔を設ける場合、細孔は、凸部3aの上面に設けてあることが好ましく、実質的に凸部3aの上面のみに設けてあることがより好ましい。また、細孔は、凸部3aの上面と冷凍寿司5が配置される部位とが重複する領域に設けてあることがより好ましく、実質的に凸部3aの上面と冷凍寿司5が配置される部位とが重複する領域のみに設けてあることが更に好ましい。冷凍寿司5が「配置される部位」、及び「実質的に・・のみ」の語義については上述の通りである。
【0036】
[冷凍寿司の調理方法について]
本発明により提供される解凍容器1入りの冷凍寿司5を喫食に呈するための調理方法は、下底部4に水を注入して、冷凍寿司5の寿司飯5bが接する中底部3の下方側に水6が収容された状態とし、続いて、下底部4に水が注入され、かつ蓋部2が被せられた解凍容器1入りの冷凍寿司5を電子レンジで加熱することによって実施することができる。中底部3と下底部4とを一旦取り外して、下底部4に水を注入することができるが、上述のように下底部4に注水口が設けてある場合は、注水口から行うこともできる。
【0037】
電子レンジでの加熱に要する時間は、主に、利用する電子レンジの出力、及び中底部3に配置する冷凍寿司5の大きさと個数に応じて選択される。例えば、500W(ワット)の出力で、握り寿司10貫が配置された1人前の容器(寿司弁当)を調理するには、加熱時間として90~120秒程度が好ましい。加熱終了後、解凍された冷凍寿司5は、温度調整のための放置時間等を特に設ける必要なく、直ちに喫食に呈することができる。
【0038】
このように設定できる適切な加熱時間と電子レンジの出力とを組合せた調理条件の情報を、電子レンジによる加熱前に必ず下底部4に適量の水を注入すべきとの指摘と併せて、解凍容器1の包装に操作指示として記載するか、又は解凍容器1入りの冷凍寿司5の販売時に操作指示書として添付することで、解凍操作者に確実に操作指示が伝達されることが好ましい。このようにして、家庭においても再現性良く冷凍寿司5を調理することができ、良好な食味を呈する寿司を楽しむことができる。
【0039】
上述の調理方法の原理は、蓋部と中底部と下底部から構成された一体型の解凍容器入りの冷凍寿司に限定して適用されるものではなく、冷凍寿司を配置し保管する構成と、水を収容する構成とが別個に設けられた、別体型の解凍容器にも適用できる。
【0040】
すなわち、本発明は、他の実施形態において、蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された底部から構成された解凍容器入りの冷凍寿司の調理方法も提供する。水を収容可能な水保持容器が別個に用意される。この水保持容器に水を注入し、水保持容器の上方に、蓋部が被せられた解凍容器入りの冷凍寿司を載置して、冷凍寿司の寿司飯が接する底部の下方側に水が収容された状態とし、続いて、水が注入された水保持容器及び解凍容器入りの冷凍寿司を電子レンジで加熱することによって、冷凍寿司の調理方法を実施することができる。
【0041】
なお一体型の解凍容器について上述した好適な構成、例えば、細孔及び凸部の設定は、必要に応じて、別体型の解凍容器における蓋部と底部から構成された解凍容器にも適用することができる。
【0042】
水保持容器は水を収容して密閉可能な構成、例えばキャップ付き容器、であってもよい。この場合、水保持容器の上方に解凍容器を安定的に載置できるよう、水保持容器の上部は、解凍容器の底部の面積と同程度以上の面積を備えた略平面状であることが好ましい。
【0043】
水保持容器はまた、水を収容できる開口形状の構成であってもよい。この場合、水保持容器に収容した水に解凍容器が水没することを防止するための構成が必要となる。例えば、水保持容器は、その一部として、水保持容器に収容した水の水面と、解凍容器の底部下面とが一定の距離を保てるような、解凍容器の底部を支える台部と脚部とからなる支持台を備えていてもよい。
【0044】
密閉可能な構成又は開口形状の構成いずれの場合も、水保持容器の側面には、下底部4について上述したのと同様に、水の適量の目安となる目盛り線を設けてあってもよい。配置された冷凍寿司の大きさや個数が異なる、複数種類の解凍容器への適用のために、一の水保持容器に、複数種類の目盛り線が設けてあってもよい。例えば、「握り寿司8貫加熱時用の水量目盛り」と「握り寿司12貫加熱時用の水量目盛り」とを併設する等である。
【0045】
本発明の他の実施形態における調理方法によれば、蓋部と底部から構成された解凍容器入りの冷凍寿司の調理すべき数又は種類が複数である場合に、より少ない数、例えば単一の水保持容器を繰り返し利用して、冷凍寿司の調理方法を実施することができる。従って、業務用途等で、多数の解凍容器入りの冷凍寿司の調理を効率良く実施したい場合に好ましく利用することが可能である。
【0046】
[付記]
本明細書は、上述の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
【0047】
[1]蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司を配置するための中底部と、水を収容可能な下底部から構成されており、冷凍寿司の寿司飯が接する中底の下方側に水が収容された状態で電子レンジによる加熱が行われる、冷凍寿司の解凍容器。
【0048】
[2]蓋部と中底部とは、互いに嵌合するよう構成されている、[1]に記載の冷凍寿司の解凍容器。
【0049】
[3]中底部には、電子レンジによる加熱によって加温された水の蒸気が通過できる細孔が設けてある、[1]又は[2]に記載の冷凍寿司の解凍容器。
【0050】
[4]中底部と下底部とは、互いに嵌合したとき、その間隙に、電子レンジによる加熱によって水が沸騰しないように十分な量の水を収容できる空間が形成されるよう構成されている、[1]から[3]いずれか一項に記載の冷凍寿司の解凍容器。
【0051】
[5]中底部に配置すべき冷凍寿司が握り寿司である場合に、その数に応じた凸部が設けられ、凸部は寿司ネタの端部が中底部の底面に接触しない状態を維持するのに十分な高さを備えている、[1]から[4]いずれか一項に記載の冷凍寿司の解凍容器。
【0052】
[6][1]から[5]いずれか一項に記載の冷凍寿司の解凍容器において、中底部に、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された、解凍容器入りの冷凍寿司。
【0053】
[7]蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された中底部と、水を収容可能な下底部から構成されており、冷凍寿司の寿司飯が接する中底の下方側に水が収容された状態で電子レンジによる加熱が行われる、解凍容器入りの冷凍寿司。
【0054】
[8][1]から[5]いずれか一項に記載の冷凍寿司の解凍容器において、中底部に、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された、解凍容器入りの冷凍寿司の調理方法であって、下底部に水を注入して、冷凍寿司の寿司飯が接する中底部の下方側に水が収容された状態とする工程、及び、下底部に水が注入された解凍容器入りの冷凍寿司を電子レンジで加熱する工程を含む、冷凍寿司の調理方法。
【0055】
[9]蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された中底部と、水を収容可能な下底部から構成された解凍容器入りの冷凍寿司の調理方法であって、下底部に水を注入して、冷凍寿司の寿司飯が接する中底部の下方側に水が収容された状態とする工程、及び、下底部に水が注入された解凍容器入りの冷凍寿司を電子レンジで加熱する工程を含む、冷凍寿司の調理方法。
【0056】
[10]蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司が配置された底部から構成された解凍容器入りの冷凍寿司の調理方法であって、水を収容可能な水保持容器に水を注入する工程、水保持容器の上方に解凍容器入りの冷凍寿司を載置して、冷凍寿司の寿司飯が接する底部の下方側に水が収容された状態とする工程、及び、水が注入された水保持容器及び解凍容器入りの冷凍寿司を電子レンジで加熱する工程を含む、冷凍寿司の調理方法。
【0057】
[11]解凍容器において、蓋部と底部とは、互いに嵌合するよう構成されている、[10]に記載の冷凍寿司の調理方法。
【0058】
[12]解凍容器の底部において、底部に配置すべき冷凍寿司が握り寿司である場合に、その数に応じた凸部が設けられ、凸部は寿司ネタの端部が底部の底面に接触しない状態を維持するのに十分な高さを備えている、[10]又は[11]に記載の冷凍寿司の調理方法。
【符号の説明】
【0059】
1 解凍容器
2 蓋部
3 中底部
3a 凸部
4 下底部
5 冷凍寿司
5a 寿司ネタ
5b 寿司飯
6 水
【要約】
【課題】
廉価で製作可能な簡易な構成を備え、かつ安定的に望ましい冷凍寿司の解凍を実現できる解凍容器、及び解凍容器を用いた冷凍寿司の調理方法を提供する。
【解決手段】
蓋部と、寿司ネタを上にして冷凍寿司を配置するための中底部と、水を収容可能な下底部から構成されており、冷凍寿司の寿司飯が接する中底の下方側に水が収容された状態で電子レンジによる加熱が行われる、冷凍寿司の解凍容器。下底部に水を注入して、冷凍寿司の寿司飯が接する中底部の下方側に水が収容された状態とする工程、及び、下底部に水が注入された解凍容器入りの冷凍寿司を電子レンジで加熱する工程を含む調理方法。
【選択図】
図3