(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】異常監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/00 20060101AFI20231109BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20231109BHJP
G01L 17/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
G08B21/00 L
B60C19/00 H
G01L17/00 301A
(21)【出願番号】P 2019001766
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2022-01-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹野 篤
(72)【発明者】
【氏名】辻 拓衛
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0214394(US,A1)
【文献】特開2003-211926(JP,A)
【文献】特開2018-120455(JP,A)
【文献】特開2020-023250(JP,A)
【文献】特開2007-182212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 19/00-31/00
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
B60C 1/00-19/12
B60C 23/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイヤを含む車両に設けられたタイヤの内腔または前記タイヤの近傍に設けられた複数のガスセンサと、複数の前記ガスセンサの検出結果に基づいて前記タイヤの異常の有無の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づくデータを出力する出力部とを含み、
前記ガスセンサは、前記タイヤに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出し、
前記揮発物質は、前記タイヤを製造するときに添加された添加剤に由来する物質であり、
前記判定部は、複数の前記ガスセンサの検出結果に基づいて判定を行
い、
複数の前記ガスセンサは、前記複数のタイヤそれぞれに対応して設けられており、
前記判定部は、複数の前記ガスセンサのそれぞれの検出結果を比較することにより、前記タイヤの異常の有無の判定を行う
異常監視システム。
【請求項2】
複数の前記ガスセンサは、前記車両の異なる位置に設けられており、
前記判定部は、複数の前記ガスセンサのそれぞれの検出結果を比較することにより、前記タイヤの異常の有無の判定を行う請求項1に記載の異常監視システム。
【請求項3】
複数の前記ガスセンサは、前記タイヤの近傍の位置に設けられているガスセンサと、前記タイヤの近傍より離れた位置に設けられているガスセンサとを含み、
前記判定部は、複数の前記ガスセンサのそれぞれの検出結果を比較することにより、前記タイヤの異常の有無の判定を行う請求項1に記載の異常監視システム。
【請求項4】
前記車両のタイヤは、温度上昇によってチアゾール系化合物のガスを揮発し、
前記ガスセンサは、少なくとも前記チアゾール系化合物のガスの濃度を検出する請求項1に記載の異常監視システム。
【請求項5】
前記車両のタイヤは、温度上昇によって前記チアゾール系化合物以外の種類のガスを揮発し、
前記チアゾール系化合物以外の種類のガスの濃度を検出するガスセンサをさらに含む請求項
4に記載の異常監視システム。
【請求項6】
前記ガスセンサは、複数種類のガスそれぞれに対応し、各ガスの濃度を検出するガスセンサを含み、
前記車両のタイヤは、温度上昇によって揮発する複数種類の物質であって、沸点が互いに所定温度以上異なる物質を含む請求項1に記載の異常監視システム。
【請求項7】
前記タイヤの外表面または前記タイヤの内腔の温度を検出する温度センサをさらに含み、
前記判定部は、前記ガスセンサの検出結果と前記温度センサの検出結果とに基づいて、前記タイヤの異常の有無を判定する請求項
6に記載の異常監視システム。
【請求項8】
前記判定部は、前記ガスセンサにおいてガスを検出した後、所定時間経過後に前記ガスセンサにおいて同じガスを検出している場合に、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する請求項1に記載の異常監視システム。
【請求項9】
前記判定部は、前記ガスセンサの検出結果を所定閾値と比較することによって、前記タイヤの異常の有無を判定する請求項1から請求項
8のいずれか1つに記載の異常監視システム。
【請求項10】
前記車両の走行速度を検出する速度センサをさらに含み、
前記判定部は、選択可能な複数種類の所定閾値を有し、
前記判定部は、複数種類の前記所定閾値のうち、前記速度センサの検出結果に基づいて選択した閾値を用いて前記判定を行う請求項
8に記載の異常監視システム。
【請求項11】
前記タイヤの内腔の空気圧を検出する空気圧センサと前記タイヤの外表面または前記タイヤの内腔の温度を検出する温度センサとの少なくとも一方をさらに含み、
前記判定部は、前記空気圧センサと前記温度センサとの少なくとも一方の検出結果と、前記ガスセンサの検出結果とに基づいて、前記タイヤの異常の有無を判定する
請求項1に記載の異常監視システム。
【請求項12】
前記車両の車輪近傍に設けられた制動装置の温度を検出する他の温度センサをさらに含み、
前記ガスセンサは、前記他の温度センサの近傍に設けられており、
前記他の温度センサの検出結果と前記ガスセンサの検出結果とに基づいて、前記タイヤの異常の有無を判定する
請求項1から請求項11のいずれか1つに記載の異常監視システム。
【請求項13】
複数のタイヤを含む車両に設けられたタイヤの内腔または前記タイヤの近傍に設けられた複数のガスセンサと、複数の前記ガスセンサの検出結果に基づいて前記タイヤの異常の有無の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づくデータを出力する出力部とを含み、
複数の前記ガスセンサは、前記車両の異なる位置に設けられており、
前記ガスセンサは、前記タイヤに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出し、
前記揮発物質は、前記タイヤを製造するときに添加された添加剤に由来する物質であり、
前記判定部は、複数の前記ガスセンサのそれぞれの検出結果を比較することにより、前記タイヤの異常の有無の判定を行う異常監視システム。
【請求項14】
複数のタイヤを含む車両に設けられたタイヤの内腔または前記タイヤの近傍に設けられた複数のガスセンサと、複数の前記ガスセンサの検出結果に基づいて前記タイヤの異常の有無の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づくデータを出力する出力部とを含み、
複数の前記ガスセンサは、前記車両の異なる位置に設けられており、
前記ガスセンサは、前記タイヤに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出し、
前記揮発物質は、前記タイヤを製造するときに添加された添加剤に由来する物質であり、
複数の前記ガスセンサは、前記タイヤの近傍の位置に設けられているガスセンサと、前記タイヤの近傍より離れた位置に設けられているガスセンサとを含み、
前記判定部は、複数の前記ガスセンサのそれぞれの検出結果を比較することにより、前記タイヤの異常の有無の判定を行う
異常監視システム。
【請求項15】
車両に設けられたタイヤの内腔または前記タイヤの近傍に設けられたガスセンサと、前記ガスセンサの検出結果に基づいて前記タイヤの異常の有無の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づくデータを出力する出力部とを含み、
前記車両のタイヤは、温度上昇によって揮発する複数種類の物質であって、沸点が互いに所定温度以上異なる物質を含み、
前記ガスセンサは、前記タイヤに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出し、
前記ガスセンサは、複数種類のガスそれぞれに対応し、各ガスの濃度を検出するガスセンサを含み、
前記揮発物質は、前記タイヤを製造するときに添加された添加剤に由来する物質である
異常監視システム。
【請求項16】
車両に設けられたタイヤの内腔または前記タイヤの近傍に設けられたガスセンサと、前記ガスセンサの検出結果に基づいて前記タイヤの異常の有無の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づくデータを出力する出力部と、前記車両の走行速度を検出する速度センサとを含み、
前記ガスセンサは、前記タイヤに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出し、
前記揮発物質は、前記タイヤを製造するときに添加された添加剤に由来する物質であり、
前記判定部は、選択可能な複数種類の所定閾値を有し、
前記判定部は、複数種類の前記所定閾値のうち、前記速度センサの検出結果に基づいて選択した閾値を用いて前記判定を行い、
前記判定部は、前記ガスセンサにおいてガスを検出した後、所定時間経過後に前記ガスセンサにおいて同じガスを検出している場合に、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する
異常監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両において、タイヤに異常が発生すると走行に支障が生じるおそれがある。このため、タイヤの異常を早期に検出することが望ましい。空気入りタイヤの材料が過熱され、タイヤ材料の分解を引き起こす破損温度レベルに達した際に発生する浮遊分子を検出するセンサを用いる技術が知られている(例えば、特許文献1)。この技術においては、センサによって、タイヤ全体の温度又はタイヤ空洞部内に含まれる空気の温度が破損温度レベルに達する前に検出する。
【0003】
また、自動車の故障の予兆として発生する物質及びその物質の濃度を検出するセンサを車両に設けておく技術が知られている(例えば、特許文献2)。この技術においては、故障の予兆として発生する物質の濃度の検出結果と閾値とを比較して、センサの検出結果が閾値以上である場合には、警報を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2005-530181号公報
【文献】特開2008-256387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されている技術においては、誤検出を回避したり、車両に設けられている複数のタイヤのうち、異常が発生した可能性があるタイヤを特定したりすることに関して改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、誤検出を回避し、車両に設けられている複数のタイヤのうち、異常が発生した可能性があるタイヤを容易に特定できる異常監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様による異常監視システムは、複数のタイヤを含む車両に設けられたタイヤの内腔または前記タイヤの近傍に設けられた複数のガスセンサと、複数の前記ガスセンサの検出結果に基づいて前記タイヤの異常の有無の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づくデータを出力する出力部とを含み、前記ガスセンサは、前記タイヤに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出し、前記揮発物質は、前記タイヤを製造するときに添加された添加剤に由来する物質であり、前記判定部は、複数の前記ガスセンサの検出結果に基づいて判定を行い、複数の前記ガスセンサは、前記複数のタイヤそれぞれに対応して設けられており、前記判定部は、複数の前記ガスセンサのそれぞれの検出結果を比較することにより、前記タイヤの異常の有無の判定を行う。
【0010】
また、異常監視システムにおいて、複数の前記ガスセンサは、前記車両の異なる位置に設けられており、前記判定部は、複数の前記ガスセンサのそれぞれの検出結果を比較することにより、前記タイヤの異常の有無の判定を行ってもよい。
【0011】
また、異常監視システムにおいて、複数の前記ガスセンサは、前記タイヤの近傍の位置に設けられているガスセンサと、前記タイヤの近傍より離れた位置に設けられているガスセンサとを含み、前記判定部は、複数の前記ガスセンサのそれぞれの検出結果を比較することにより、前記タイヤの異常の有無の判定を行ってもよい。
【0012】
また、前記車両のタイヤは、温度上昇によってチアゾール系化合物のガスを揮発し、前記ガスセンサは、少なくとも前記チアゾール系化合物のガスの濃度を検出するものであってもよい。
【0013】
さらに、前記車両のタイヤは、温度上昇によって前記チアゾール系化合物以外の種類のガスを揮発し、前記チアゾール系化合物以外の種類のガスの濃度を検出するガスセンサをさらに含んでもよい。
【0014】
前記ガスセンサは、複数種類のガスそれぞれに対応し、各ガスの濃度を検出するガスセンサを含み、前記車両のタイヤは、温度上昇によって揮発する複数種類の物質であって、沸点が互いに所定温度以上異なる物質を含んでもよい。
【0015】
前記タイヤの外表面または前記タイヤの内腔の温度を検出する温度センサをさらに含み、前記判定部は、前記ガスセンサの検出結果と前記温度センサの検出結果とに基づいて、前記タイヤの異常の有無を判定してもよい。
【0016】
前記判定部は、前記ガスセンサにおいてガスを検出した後、所定時間経過後に前記ガスセンサにおいて同じガスを検出している場合に、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定してもよい。
【0017】
前記判定部は、前記ガスセンサの検出結果を所定閾値と比較することによって、前記タイヤの異常の有無を判定してもよい。
【0018】
前記車両の走行速度を検出する速度センサをさらに含み、前記判定部は、選択可能な複数種類の所定閾値を有し、前記判定部は、複数種類の前記所定閾値のうち、前記速度センサの検出結果に基づいて選択した閾値を用いて前記判定を行ってもよい。
【0019】
前記タイヤの内腔の空気圧を検出する空気圧センサと前記タイヤの外表面または前記タイヤの内腔の温度を検出する温度センサとの少なくとも一方をさらに含み、前記判定部は、前記空気圧センサと前記温度センサとの少なくとも一方の検出結果と、前記ガスセンサの検出結果とに基づいて、前記タイヤの異常の有無を判定してもよい。
【0020】
前記車両の車輪近傍に設けられた制動装置の温度を検出する他の温度センサをさらに含み、前記ガスセンサは、前記他の温度センサの近傍に設けられており、前記他の温度センサの検出結果と前記ガスセンサの検出結果とに基づいて、前記タイヤの異常の有無を判定してもよい。
また、本発明のある態様による異常監視システムは、複数のタイヤを含む車両に設けられたタイヤの内腔または前記タイヤの近傍に設けられた複数のガスセンサと、複数の前記ガスセンサの検出結果に基づいて前記タイヤの異常の有無の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づくデータを出力する出力部とを含み、前記ガスセンサは、前記タイヤに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出し、前記揮発物質は、前記タイヤを製造するときに添加された添加剤に由来する物質であり、複数の前記ガスセンサは、前記複数のタイヤそれぞれに対応して設けられており、前記判定部は、複数の前記ガスセンサのそれぞれの検出結果を比較することにより、前記タイヤの異常の有無の判定を行う。
さらに、本発明のある態様による異常監視システムは、複数のタイヤを含む車両に設けられたタイヤの内腔または前記タイヤの近傍に設けられた複数のガスセンサと、複数の前記ガスセンサの検出結果に基づいて前記タイヤの異常の有無の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づくデータを出力する出力部とを含み、複数の前記ガスセンサは、前記車両の異なる位置に設けられており、前記ガスセンサは、前記タイヤに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出し、前記揮発物質は、前記タイヤを製造するときに添加された添加剤に由来する物質であり、前記判定部は、複数の前記ガスセンサのそれぞれの検出結果を比較することにより、前記タイヤの異常の有無の判定を行う。
また、本発明のある態様による異常監視システムは、複数のタイヤを含む車両に設けられたタイヤの内腔または前記タイヤの近傍に設けられた複数のガスセンサと、複数の前記ガスセンサの検出結果に基づいて前記タイヤの異常の有無の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づくデータを出力する出力部とを含み、複数の前記ガスセンサは、前記車両の異なる位置に設けられており、前記ガスセンサは、前記タイヤに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出し、前記揮発物質は、前記タイヤを製造するときに添加された添加剤に由来する物質であり、複数の前記ガスセンサは、前記タイヤの近傍の位置に設けられているガスセンサと、前記タイヤの近傍より離れた位置に設けられているガスセンサとを含み、前記判定部は、複数の前記ガスセンサのそれぞれの検出結果を比較することにより、前記タイヤの異常の有無の判定を行う。
さらに、本発明のある態様による異常監視システムは、車両に設けられたタイヤの内腔または前記タイヤの近傍に設けられたガスセンサと、前記ガスセンサの検出結果に基づいて前記タイヤの異常の有無の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づくデータを出力する出力部とを含み、前記車両のタイヤは、温度上昇によって揮発する複数種類の物質であって、沸点が互いに所定温度以上異なる物質を含み、前記ガスセンサは、前記タイヤに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出し、前記ガスセンサは、複数種類のガスそれぞれに対応し、各ガスの濃度を検出するガスセンサを含み、前記揮発物質は、前記タイヤを製造するときに添加された添加剤に由来する物質である。
また、本発明のある態様による異常監視システムは、車両に設けられたタイヤの内腔または前記タイヤの近傍に設けられたガスセンサと、前記ガスセンサの検出結果に基づいて前記タイヤの異常の有無の判定を行う判定部と、前記判定部の判定結果に基づくデータを出力する出力部と、前記車両の走行速度を検出する速度センサとを含み、前記ガスセンサは、前記タイヤに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出し、前記揮発物質は、前記タイヤを製造するときに添加された添加剤に由来する物質であり、前記判定部は、選択可能な複数種類の所定閾値を有し、前記判定部は、複数種類の前記所定閾値のうち、前記速度センサの検出結果に基づいて選択した閾値を用いて前記判定を行い、前記判定部は、前記ガスセンサにおいてガスを検出した後、所定時間経過後に前記ガスセンサにおいて同じガスを検出している場合に、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、誤検出を回避し、車両に設けられている複数のタイヤのうち、異常が発生した可能性があるタイヤを容易に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、車両におけるガスセンサの配置の例を示す図である。
【
図2】
図2は、車両におけるガスセンサの配置の例を示す図である。
【
図3】
図3は、異常監視システムの機能を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、異常監視システムの主要動作などの例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、車両に配置されているガスセンサの位置要素を考慮して判定する異常監視システムの判定動作の例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5の判定動作のより具体的な例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図5の判定動作のより具体的な例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、車両が貨物自動車である場合のガスセンサの配置の他の例を示す図である。
【
図9】
図9は、位置要素を考慮して判定する他の異常監視システムの例を示す図である。
【
図10】
図10は、車両の前面に設けられたガスセンサによるガスの検出結果を利用した判定動作の例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、車両の前面に設けられたガスセンサによるガスの検出結果を利用した判定動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、時間要素を考慮して判定する異常監視システムの例を示す図である。
【
図13】
図13は、異常監視システムの判定動作の例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、異常監視システムの判定動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、異常監視システムの判定動作の例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、異常監視システムの判定動作の例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、異常監視システムの判定動作の例を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、車両の走行速度を考慮して判定する異常監視システムの例を示す図である。
【
図19】
図19は、異常監視システムの判定動作の例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、タイヤの空気圧や温度を考慮して判定する異常監視システムの例を示す図である。
【
図21】
図21は、異常監視システムの判定動作の例を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、異常監視システムの判定動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、温度の変化に対する揮発量の変化の例を示す図である。
【
図24】
図24は、ガスクロマトグラフィーによって得られるクロマトグラムの例を示す図である。
【
図25】
図25は、ガスクロマトグラフィーによって得られるクロマトグラムの例を示す図である。
【
図26】
図26は、ガスクロマトグラフィーによって得られるクロマトグラムの例を示す図である。
【
図27】
図27は、ガスクロマトグラフィーによって得られるクロマトグラムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0024】
[ガスセンサの配置]
図1および
図2は、車両200におけるガスセンサの配置の例を示す図である。
図1および
図2は、車両200が貨物自動車である場合のガスセンサの配置の例を示す。
【0025】
図1において、車両200は、ガスセンサ1A、または、ガスセンサ1A’を備えている。ガスセンサ1A、ガスセンサ1A’は、いずれもタイヤTの車輪に対応している。ガスセンサ1Aは、タイヤTの車輪に対応して、タイヤTの近傍に設けられる。ガスセンサ1A’は、タイヤTの車輪に対応して、タイヤTの内部すなわち内腔に設けられる。ガスセンサ1A、ガスセンサ1A’は、いずれもタイヤTに対応して設けられていると考えることもできる。なお、車両200は、タイヤTの近傍のガスセンサ1AとタイヤTの内腔のガスセンサ1A’との両方を備えていてもよい。
【0026】
ここで、タイヤTの近傍とは、例えば、タイヤハウス201の内部表面、すなわちタイヤに面した位置である。ガスセンサ1Aは、タイヤTから揮発する物質を検出するため、タイヤTに面した位置に設けられていることが好ましい。
【0027】
タイヤTの内腔に設けられたガスセンサ1A’は、自身の動作に必要な電力を供給するための電池を内蔵していてもよい。また、タイヤTの外部の電池からガスセンサ1A’に電力が供給されてもよい。タイヤTの内腔において発電し、得られた電力をガスセンサ1A’に供給してもよい。
【0028】
ガスセンサ1A、1A’は、タイヤTに異常発熱が生じた際の揮発物質を検出する。揮発物質は、タイヤTを製造するときに添加された添加剤に由来する物質である。
【0029】
図2において、車両200は、前輪に2つのタイヤ、後輪に8つのタイヤを備えている。車両200の前輪のタイヤTFLおよびタイヤTFRは、同じ車軸SFの異なる車輪に取付けられている。
【0030】
図2において、車両200の後輪の前側の4つのタイヤTMR1、TMR2、TML1およびTML2は、同じ車軸SMに取付けられている。タイヤTMR1とタイヤTMR2とはダブルタイヤとして同じ車輪に取付けられている。タイヤTML1とタイヤTML2とはダブルタイヤとして同じ車輪に取付けられている。
【0031】
図2において、車両200の後輪の後側の4つのタイヤTRR1、TRR2、TRL1およびTRL2は、同じ車軸SRに取付けられている。タイヤTRR1とタイヤTRR2とはダブルタイヤとして同じ車輪に取付けられている。タイヤTRL1とタイヤTRL2とはダブルタイヤとして同じ車輪に取付けられている。
【0032】
本例では、複数のガスセンサ1A、1B、1Cおよび1Dを車両200に配置している。複数のガスセンサ1A、1B、1Cおよび1Dは、互いに異なる車輪に対応して設けられている。ガスセンサ1Aは、車両200の前輪のタイヤTFLの近傍(例えば、タイヤハウス内)に設けられている。ガスセンサ1Bは、車両200の前輪のタイヤTFRの近傍(例えば、タイヤハウス内)に設けられている。ガスセンサ1Cは、車両200の後輪の後側のタイヤTRL1の近傍(例えば、タイヤハウス内)に設けられている。ガスセンサ1Dは、車両200の後輪の後側のタイヤTRR1の近傍(例えば、タイヤハウス内)に設けられている。このように、複数のガスセンサ1A、1B、1Cおよび1Dは、車両200の異なる位置に設けられている。
【0033】
[異常監視システムの機能]
図3は、異常監視システム100の機能を示すブロック図である。
図3において、異常監視システム100は、制御部10と、記憶装置20と、警報部30とを備える。制御部10は、異常監視システム100の動作を統括的に制御する装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random-Access Memory)などを備える。また、制御部10は、取得部11と、判定部12と、入出力部(I/O)13とを有する。具体的には、制御部10のCPUが、各種のプログラムを読み込んで実行することにより、これらの機能が実現される。
【0034】
取得部11は、ガスセンサなど各種センサのデータを取得する。取得部11が取得したデータは、記憶装置20に記憶される。入出力部(I/O)13は、ガスセンサなど各種センサのデータを入力する入力部として機能する。また、入出力部(I/O)13は、判定部12の判定結果に基づくデータを出力する出力部として機能する。
【0035】
記憶装置20は、制御部10での処理に用いられる各種プログラム21や各種データ22を格納する装置である。記憶装置20は、例えば、不揮発性メモリあるいは磁気記憶装置により構成される。
【0036】
警報部30は、車両200の運転者に対して警報を出力する装置である。警報部30は、制御部10から出力される警報信号に基づいて警報を出力する。制御部10は、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定した場合に、警報信号を出力する。警報部30は、車両200の運転者に対して警報を出力する。警報は、例えば音声出力や表示出力によって行われる。また、警報部30は、車両200の運転者に対して警報を出力するとともに、外部装置に向けて警報を出力してもよい。
【0037】
[異常監視システムの主要な動作]
図4は、異常監視システム100の主要動作などの例を示すフローチャートである。
図4において、最初に、車両200の動力発生装置(図示せず)が始動したか否かの判定が行われる(ステップS1)。車両200の動力発生装置とは、例えば、エンジン、電動機である。例えば、車両200のイグニッションスイッチがオンになったことを検出したときに、動力発生装置が始動したと判定してもよい。
【0038】
ステップS1において、車両200の動力発生装置が始動したと判定された場合(ステップS1においてYes)、異常監視システム100は動作を開始する(ステップS2)。
【0039】
異常監視システム100においては、車両200の各タイヤについて、異常があるか否か判定部12が判定する(ステップS3)。ステップS3において、異常があると判定された場合(ステップS3においてYes)、警報部30による警報を出力する(ステップS4)。その後、異常監視システム100は動作を終了するか否か判定する(ステップS5)。動作を終了する場合、異常監視システム100の動作は終了する(ステップS5においてYes、ステップS6)。
【0040】
なお、ステップS1において、車両200の動力発生装置が始動していないと判定された場合(ステップS1においてNo)、ステップS1に戻る。ステップS3において異常なしと判定された場合(ステップS3においてNo)、および、ステップS5において動作を終了しない場合(ステップS5においてNo)、ステップS3に戻り、異常監視システム100は動作を継続する。
【0041】
[位置要素を考慮して判定する異常監視システム]
図5は、車両200に配置されているガスセンサの位置要素を考慮して判定する異常監視システム100の判定動作の例を示すフローチャートである。本例では、
図5の判定動作を、
図4に示す主要動作に対するサブルーチンとして行う。
【0042】
図5において、異常監視システム100は、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出したか否か判定する(ステップS11)。異常監視システム100は、ステップS11の判定の結果、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出した場合(ステップS11においてYes)、そのガスセンサによって検出されるガス濃度と他のガスセンサによって検出されるガス濃度とを比較し、その差異が所定の閾値以上か否か判定する(ステップS12)。つまり、検出されるガス濃度について、複数のガスセンサ間での差異が所定の閾値以上か否か判定する。
【0043】
異常監視システム100は、ステップS12の判定の結果、複数のガスセンサ間でのガス濃度の差異が所定の閾値以上である場合(ステップS12においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS13)。その後、異常監視システム100は、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS14)。
【0044】
異常監視システム100は、ステップS12の判定の結果、ガスセンサ間のガス濃度の差異が所定の閾値以上でない場合(ステップS12においてNo)、車両の周囲の環境要因などによる誤認識の可能性があると判定する(ステップS15)。その後、異常監視システム100は、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS14)。
【0045】
異常監視システム100は、ステップS11の判定の結果、いずれのガスセンサにおいてもガスを検出していない場合(ステップS11においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS14)。
【0046】
以上の動作によれば、複数のガスセンサにおいて検出したガスの濃度を比較し、それらの差が所定の閾値以上である場合に限って、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する。このため、車両の周囲の環境要因などによる誤認識の可能性を排除し、自車のタイヤの異常発熱の可能性をより正確に判定できる。タイヤの過度な温度上昇を事前に検出することにより、タイヤに異常発熱が発生してバーストしたり、車両の熱によりタイヤが加熱されて故障や火災が発生したりするのを未然に防止できる。
【0047】
また、タイヤが異常発熱する場合、複数のタイヤ全てにおいて異常発熱が同時に発生する場合は少ないため、複数のタイヤの検出結果を比較することにより、誤検出を抑止することができる。
【0048】
図6および
図7は、
図5の判定動作のより具体的な例を示すフローチャートである。
図6および
図7は、
図2のガスセンサ1Cおよび1Dを利用した判定動作を示す。ガスセンサ1Cは、車軸SRの同じ車輪にダブルタイヤとして取付けられているタイヤTRL1およびタイヤTRL2に対応して設けられている。ガスセンサ1Cは、タイヤTRL1およびタイヤTRL2を検出対象とする。ガスセンサ1Dは、車軸SRの同じ車輪にダブルタイヤとして取付けられているタイヤTRR1およびタイヤTRR2に対応して設けられている。ガスセンサ1Dは、タイヤTRR1およびタイヤTRR2を検出対象とする。
【0049】
図6において、異常監視システム100は、ガスセンサ1Cにおいてガスを検出したか否か判定する(ステップS11a)。異常監視システム100は、ステップS11aの判定の結果、ガスセンサ1Cにおいてガスを検出した場合(ステップS11aにおいてYes)、そのガスセンサ1Cによって検出されるガス濃度と、他のガスセンサ1Dによって検出されるガス濃度とを比較し、その差異が所定の閾値以上か否か判定する(ステップS12a)。
【0050】
異常監視システム100は、ステップS12aの判定の結果、ガス濃度の差異が所定の閾値以上である場合(ステップS12aにおいてYes)、ガスセンサ1Cが検出対象とする車輪位置のタイヤにおいて異常発熱の可能性があると判定する(ステップS13a)。その後、異常監視システム100は、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS14)。
【0051】
異常監視システム100は、ステップS12aの判定の結果、ガス濃度の差異が所定の閾値以上でない場合(ステップS12aにおいてNo)、車両の周囲の環境要因などによる誤認識の可能性があると判定する(ステップS15)。その後、異常監視システム100は、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS14)。
【0052】
異常監視システム100は、ステップS11aの判定の結果、ガスセンサ1Cにおいてガスを検出していない場合(ステップS11aにおいてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS14)。
【0053】
また、
図7において、異常監視システム100は、ガスセンサ1Cにおいてガスを検出したか否か判定する(ステップS11a)。異常監視システム100は、ステップS11aの判定の結果、ガスセンサ1Cにおいてガスを検出した場合(ステップS11aにおいてYes)、そのガスセンサ1Cによって検出されるガス濃度と、他のガスセンサ1Dによって検出されるガス濃度とを比較し、その差異が所定の閾値以上か否か判定する(ステップS12a)。
【0054】
異常監視システム100は、ステップS12aの判定の結果、ガス濃度の差異が所定の閾値以上である場合(ステップS12aにおいてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS13)。その後、異常監視システム100は、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS14)。
【0055】
異常監視システム100は、ステップS12aの判定の結果、ガス濃度の差異が所定の閾値以上でない場合(ステップS12aにおいてNo)、車両の周囲の環境要因などによる誤認識の可能性があると判定する(ステップS15)。その後、異常監視システム100は、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS14)。
【0056】
異常監視システム100は、ステップS11aの判定の結果、ガスセンサ1Cにおいてガスを検出していない場合(ステップS11aにおいてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS14)。
【0057】
図8は、車両が貨物自動車である場合のガスセンサの配置の他の例を示す図である。
図8の車両200aは、
図2に示す車両200とは異なり、車両の前面にガスセンサ1Fが設けられている。ガスセンサ1Fは、タイヤの近傍より離れた位置に設けられる。タイヤ近傍より離れた位置とは、タイヤから揮発するガスの影響を受けずに走行風を得られる車両前部の位置や、車体の上部、車体の側部(タイヤ近傍以外)、車体の後部など、車体の外輪郭部等の外気が直接当たりやすい位置である。ガスセンサ1Fは、外気を測定対象とし、外気に含まれるガスを検出することができる。このように、複数のガスセンサ1A、1B、1Cおよび1D、ならびにガスセンサ1Fは、車両200の異なる位置に設けられている。車両200に搭載されている、空調装置または換気装置の内部にガスセンサ1Fを設けても良い。その場合、空調装置または換気装置の外気導入口から通風路に取り込まれた空気を外気とみなし、ガスセンサ1Fの測定対象とする。つまり、車両200に搭載されている空調装置または換気装置における、外気を導入する通風路の経路内に設置されたガスセンサを用いても良い。なお、空気清浄装置が車両に設けられている場合、空気清浄装置のガスセンサを上記のガスセンサ1Fとして利用してもよい。
【0058】
図9は、位置要素を考慮して判定する他の異常監視システム100aの例を示す図である。
図9において、異常監視システム100aが
図3を参照して説明した異常監視システム100と異なる点は、制御部10が、車両200aの前面に設けられたガスセンサ1Fの検出結果を取得する点である。車両200aの前面に設けられたガスセンサ1Fは、車両200aの各タイヤの揮発ガスをほとんど検出しない。このため、車両200aの前面に設けられたガスセンサ1Fは、車両200aの周囲の環境要因によるガスを検出することができる。ガスセンサ1Fによるガスの検出結果を利用することにより、周囲の環境要因を考慮して、タイヤの異常発熱の可能性を判定することができる。
【0059】
図10は、車両200aの前面に設けられたガスセンサ1Fによるガスの検出結果を利用した判定動作の例を示すフローチャートである。
図10において、異常監視システム100aは、ガスセンサ1Fが検出するガスの濃度と、ガスセンサ1Aが検出するガスの濃度とを比較し、それらに差があるか否か判定する(ステップS21)。異常監視システム100aは、ステップS21の判定の結果、検出するガスの濃度に差がある場合(ステップS21においてYes)、次に、その差と、ガスセンサ1Fが検出するガスの濃度とガスセンサ1Bが検出するガスの濃度との差異との間に所定値以上の差があるか否か判定する(ステップS22)。
【0060】
異常監視システム100は、ステップS22の判定の結果、所定値以上の差がある場合(ステップS22においてYes)、ガスセンサ1Aの車輪位置のタイヤにおいて異常発熱の可能性があると判定する(ステップS23)。その後、異常監視システム100は、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS24)。
【0061】
異常監視システム100aは、ステップS22の判定の結果、所定値以上の差がない場合(ステップS22においてNo)、車両の周囲の環境要因などによる誤認識の可能性があると判定する(ステップS25)。その後、異常監視システム100aは、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS24)。
【0062】
異常監視システム100aは、ステップS21の判定の結果、検出するガスの濃度に差がない場合(ステップS21においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS24)。
【0063】
以上のように、車両の少なくともタイヤ近傍より離れた位置の外気を測定する外気用のガスセンサ1Fを設けておき、タイヤ内腔またはタイヤ近傍に設けられたガスセンサ1A~1Dにおける揮発物質の検出結果と外気用のガスセンサ1Fによる揮発物質の検出結果とを比較することにより、タイヤ異常の有無を判定できる。
【0064】
ここで、例えば、連続した高速走行時など、全てのタイヤの温度が徐々に上昇する場合には誤検出する可能性がある。このため、上記のようにタイヤ近傍やタイヤ内腔の検出結果とは別の外気についての検出結果と比較することにより、検出精度が向上する。また、外気についての検出結果と比較することにより、タイヤ以外のゴム部品、例えばファンベルト等の摺動部品の発熱に由来する揮発物質と区別することができる。
【0065】
図11は、車両200aの前面に設けられたガスセンサ1Fによるガスの検出結果を利用した判定動作の他の例を示すフローチャートである。
図11において、異常監視システム100aは、4つのガスセンサ1A~1Dが検出するガスの濃度について、突出した値があるか否か判定する(ステップS31)。突出した値がある場合とは、例えば、あるガスセンサが検出するガスの濃度が他のガスセンサが検出するガスの濃度に対して2倍以上である場合である。異常監視システム100aは、ステップS31の判定の結果、突出した値がある場合(ステップS31においてYes)、次に、その突出した値のガスの濃度とガスセンサ1Fが検出するガスの濃度とを比較し、それらに所定値以上の差があるか否か判定する(ステップS32)。
【0066】
異常監視システム100aは、ステップS32の判定の結果、所定値以上の差がある場合(ステップS32においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS33)。その後、異常監視システム100aは、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS34)。
【0067】
異常監視システム100aは、ステップS32の判定の結果、所定値以上の差がない場合(ステップS32においてNo)、車両の周囲の環境要因などによる誤認識の可能性があると判定する(ステップS35)。その後、異常監視システム100aは、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS34)。
【0068】
異常監視システム100aは、ステップS31の判定の結果、検出するガスの濃度に差がない場合(ステップS31においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS34)。
【0069】
[時間要素を考慮して判定する異常監視システム]
図12は、時間要素を考慮して判定する異常監視システム100bの例を示す図である。
図12において、異常監視システム100bが、
図3を参照して説明した異常監視システム100と異なる点は、制御部10がタイマー14を有する点である。タイマー14は、ガスセンサによる検出時点からの経過時間などを計測する。
【0070】
図13は、異常監視システム100bの判定動作の例を示すフローチャートである。本例では、
図13の判定動作を、
図4に示す主要動作に対するサブルーチンとして行う。
【0071】
図13において、異常監視システム100bは、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出したか否か判定する(ステップS41)。異常監視システム100bは、ステップS41の判定の結果、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出した場合(ステップS41においてYes)、タイマー14によって時間を計測し(ステップS42)、所定時間が経過するまで処理を待つ(ステップS42においてNo)。
【0072】
異常監視システム100bは、タイマー14による所定時間が経過した場合(ステップS42においてYes)、再び同じガスセンサにおいてガスを検出したか否か判定する(ステップS43)。異常監視システム100bは、ステップS43の判定の結果、再び同じガスセンサにおいてガスを検出した場合(ステップS43においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS44)。その後、異常監視システム100bは、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS45)。
【0073】
異常監視システム100bは、ステップS41の判定の結果、いずれのガスセンサにおいてもガスを検出していない場合(ステップS41においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS45)。異常監視システム100bは、ステップS43の判定の結果、同じガスセンサにおいてガスを検出していない場合(ステップS43においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS45)。
【0074】
以上の動作によれば、ガスセンサにおいてガスを検出した後、所定時間経過後にそのガスセンサにおいて再度同じガスを検出している場合に、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する。このため、ガスセンサの誤検出などの可能性を排除し、自車のタイヤの異常発熱の可能性をより正確に判定できる。
【0075】
図14は、異常監視システム100bの判定動作の他の例を示すフローチャートである。本例では、
図14の判定動作を、
図4に示す主要動作に対するサブルーチンとして行う。
【0076】
図14において、異常監視システム100bは、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出したか否か判定する(ステップS51)。異常監視システム100bは、ステップS51の判定の結果、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出した場合(ステップS51においてYes)、タイマー14によって時間を計測し、所定時間が経過するまで同じガスセンサにおいてガスを検出し続けるか否か判定する(ステップS52)。
【0077】
異常監視システム100bは、タイマー14による所定時間が経過するまで同じガスセンサにおいてガスを検出し続けた場合(ステップS52においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS53)。その後、異常監視システム100は、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS54)。
【0078】
異常監視システム100bは、ステップS51の判定の結果、いずれのガスセンサにおいてもガスを検出していない場合(ステップS51においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS54)。異常監視システム100bは、ステップS52の判定の結果、所定時間が経過する前に、同じガスセンサにおいてガスを検出しなくなった場合(ステップS52においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS54)。
【0079】
以上の動作によれば、ガスセンサにおいてガスを検出した後、所定時間継続してガスを検出した場合に限って、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する。このため、ガスセンサの誤検出などの可能性を排除し、自車のタイヤの異常発熱の可能性をより正確に判定できる。この場合においても、ガスセンサにおいてガスを検出した後、所定時間経過後にそのガスセンサにおいて同じガスを検出している場合に、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する。
【0080】
[複数種類のガスとガスセンサとのペアを用いる場合]
ところで、検出対象である複数種類のガスとガスセンサとのペアを複数用意しておき、すべてのペアのガスセンサにおいてガスを検出した場合に、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定してもよい。例えば、あるガスAとこのガスAを検出するガスセンサaとのペアと、他のガスBとこのガスBを検出する他のガスセンサbとのペアとを用意する。ガスAおよびガスBは、共に、タイヤから揮発する物質によるガスである。そして、ガスセンサaとガスセンサbとを同じタイヤの近傍に設けておく。ガスセンサaがガスAを検出し、かつ、ガスセンサbがガスBを検出した場合に、そのタイヤに異常発熱の可能性があると判定する。なお、ガスAに対応する物質をタイヤのトレッドのキャップゴムに添加し、ガスBに対応する物質をタイヤのサイドゴムに添加するなど、異なる場所に異なる物質を添加しておいてもよい。こうすることにより、ガスAを検出した場合にはタイヤのトレッドが異常発熱したことがわかり、ガスBを検出した場合にはタイヤのサイドゴムが異常発熱したことがわかる。つまり、検出したガスによって、タイヤにおいて異常発熱した箇所を特定することができる。
【0081】
図15は、異常監視システム100の判定動作の例を示すフローチャートである。本例では、
図15の判定動作を、
図4に示す主要動作に対するサブルーチンとして行う。
【0082】
図15において、異常監視システム100は、上記ガスセンサaにおいてガスAを検出したか否か判定する(ステップS61)。異常監視システム100は、ステップS61の判定の結果、ガスセンサaにおいてガスAを検出した場合(ステップS61においてYes)、次に、上記ガスセンサbにおいてガスBを検出したか否か判定する(ステップS62)。異常監視システム100は、ステップS62の判定の結果、ガスセンサbにおいてガスBを検出した場合(ステップS62においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS63)。その後、異常監視システム100は、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS64)。
【0083】
異常監視システム100は、ステップS61の判定の結果、上記ガスセンサaにおいてガスAを検出していない場合(ステップS61においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS64)。異常監視システム100は、ステップS62の判定の結果、上記ガスセンサbにおいてガスBを検出していない場合(ステップS62においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS64)。
【0084】
以上の動作によれば、すべてのペアのガスセンサにおいてガスを検出した場合に、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する。このため、ガスセンサの誤検出などの可能性を排除し、自車のタイヤの異常発熱の可能性をより正確に判定できる。
【0085】
検出対象である複数種類のガスとガスセンサとのペアの数を増加してもよい。
図16は、異常監視システム100の判定動作の例を示すフローチャートである。本例では、
図16の判定動作を、
図4に示す主要動作に対するサブルーチンとして行う。
【0086】
図16において、異常監視システム100は、ガスセンサaにおいてガスAを検出したか否か判定する(ステップS71)。異常監視システム100は、ステップS71の判定の結果、ガスセンサaにおいてガスAを検出した場合(ステップS71においてYes)、次に、ガスセンサbにおいてガスBを検出したか否か判定する(ステップS72)。異常監視システム100は、ステップS72の判定の結果、ガスセンサbにおいてガスBを検出した場合(ステップS72においてYes)、さらに、他のガスセンサcにおいてガスCを検出したか否か判定する(ステップS73)。異常監視システム100は、ステップS73の判定の結果、ガスセンサcにおいてガスCを検出した場合(ステップS73においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS74)。その後、異常監視システム100は、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS75)。
【0087】
異常監視システム100は、ステップS71の判定の結果、上記ガスセンサaにおいてガスAを検出していない場合(ステップS71においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS75)。異常監視システム100は、ステップS72の判定の結果、上記ガスセンサbにおいてガスBを検出していない場合(ステップS72においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS75)。異常監視システム100は、ステップS73の判定の結果、上記ガスセンサcにおいてガスCを検出していない場合(ステップS73においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS75)。
【0088】
以上の動作によれば、すべてのペアのガスセンサにおいてガスを検出した場合に、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する。このため、ガスセンサの誤検出などの可能性を排除し、自車のタイヤの異常発熱の可能性をより正確に判定できる。
【0089】
ところで、タイヤの製造において本来用いない物質をタイヤに添加しておき、その物質に由来して揮発するガスを検出するようにしてもよい。その物質は、タイヤ毎にユニークなものとしておけば、揮発するガスを検出することによって、異常発熱の可能性のあるタイヤを特定することができる。つまり、特定のガスを揮発する物質をタイヤに添加しておき、そのガスとガスセンサとのペアを用意する。特定のガスをタイヤごとにユニークなガスとすることにより、検出したガスにより、異常発熱の可能性があるタイヤをより正確に特定することができる。さらに、2種類以上の物質をタイヤ毎にユニークに組み合わせてタイヤに添加しておけば、多数のタイヤを備えた車両についても、ガスセンサで検出したガスの組合せによって、異常発熱の可能性のあるタイヤを特定することができる。
【0090】
検出対象である複数種類のガスとガスセンサとのペアを複数用意しておき、ペアの1つのガスセンサがガスを検出する毎に警告を出力するようにしてもよい。このとき、異常発熱の可能性の程度を段階的に警告することが好ましい。
図17は、異常監視システム100の判定動作の例を示すフローチャートである。本例では、
図17の判定動作を、
図4に示す主要動作に対するサブルーチンとして行う。
【0091】
図17において、異常監視システム100は、ガスセンサaにおいてガスAを検出したか否か判定する(ステップS81)。異常監視システム100は、ステップS81の判定の結果、ガスセンサaにおいてガスAを検出した場合(ステップS81においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS82)。この段階での異常発熱の可能性は「小」とする。このとき、異常監視システム100は、異常発熱の可能性は「小」であることを示す警告を行う。
【0092】
異常監視システム100は、ガスセンサbにおいてガスBを検出したか否か判定する(ステップS83)。異常監視システム100は、ステップS83の判定の結果、ガスセンサbにおいてガスBを検出した場合(ステップS83においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS84)。この段階での異常発熱の可能性は「中」とする。このとき、異常監視システム100は、異常発熱の可能性は「中」であることを示す警告を行う。
【0093】
異常監視システム100は、ガスセンサcにおいてガスCを検出したか否か判定する(ステップS85)。異常監視システム100は、ステップS85の判定の結果、ガスセンサcにおいてガスCを検出した場合(ステップS85においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS86)。この段階での異常発熱の可能性は「大」とする。このとき、異常監視システム100は、異常発熱の可能性は「大」であることを示す警告を行う。その後、異常監視システム100は、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS87)。
【0094】
異常監視システム100は、ステップS81の判定の結果、上記ガスセンサaにおいてガスAを検出していない場合(ステップS81においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS87)。異常監視システム100は、ステップS83の判定の結果、上記ガスセンサbにおいてガスBを検出していない場合(ステップS83においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS87)。異常監視システム100は、ステップS85の判定の結果、上記ガスセンサcにおいてガスCを検出していない場合(ステップS85においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS87)。
【0095】
[車両の速度を考慮して判定する異常監視システム]
ところで、車両の走行速度によってタイヤハウス内の気流の速度が異なるため、タイヤから発生したガスの拡散状態が異なる。車両の走行速度が大きい場合は、タイヤハウス内の気流の速度は大きい。車両の走行速度が小さい場合は、タイヤハウス内の気流の速度は小さい。このため、車両の走行速度がガスセンサの検出結果に影響し、判定に誤りが生じる可能性がある。また、車両が道路上で停止中や渋滞中においては、他の車両のタイヤから揮発するガスや車両の周囲の環境がガスセンサの検出結果に影響し、判定に誤りが生じる可能性がある。
【0096】
このような判定の誤りを避けて適切に判定するため、速度センサを追加し、車両の速度を考慮して判定してもよい。この場合、例えば、車両の走行速度が所定速度未満である場合と、所定速度以上である場合とで、異なる閾値を用いてタイヤの温度の異常を判定する。所定速度は、例えば、5km/hから60km/hの間に設定すると好ましい。所定速度を2段階とし、2種類の閾値を用いても良い。さらに、風速センサを追加し、自車両の位置における風速を考慮して判定してもよい。
【0097】
図18は、車両の走行速度を考慮して判定する異常監視システム100cの例を示す図である。
図18において、異常監視システム100cが、
図3を参照して説明した異常監視システム100と異なる点は、速度センサ2、風速センサ3を有する点である。速度センサ2は自車の走行速度を検出する。風速センサ3は、自車両の位置における風速を検出する。
【0098】
図19は、異常監視システム100cの判定動作の例を示すフローチャートである。本例では、
図19の判定動作を、
図4に示す主要動作に対するサブルーチンとして行う。
【0099】
図19において、異常監視システム100cは、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出したか否か判定する(ステップS91)。異常監視システム100cは、異常監視システム100cは、ステップS91の判定の結果、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出した場合(ステップS91においてYes)、速度センサ2で検出した走行速度が所定速度以上か否か判定する(ステップS92)。
【0100】
異常監視システム100cは、ステップS92の判定の結果、走行速度が所定速度以上である場合(ステップS92においてYes)、高速時の閾値を用い、ガスセンサによって検出したガスの濃度が高速時の閾値以上か否か判定する(ステップS93)。異常監視システム100cは、ステップS93の判定の結果、ガスセンサによって検出したガスの濃度が高速時の閾値以上である場合(ステップS93においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS94)。その後、異常監視システム100cは、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS95)。
【0101】
また、異常監視システム100cは、ステップS92の判定の結果、走行速度が所定速度以上でない場合(ステップS92においてNo)、低速時の閾値を用い、ガスセンサによって検出したガスの濃度が低速時の閾値以上か否か判定する(ステップS96)。異常監視システム100cは、ステップS96の判定の結果、ガスセンサによって検出したガスの濃度が低速時の閾値以上である場合(ステップS96においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS94)。その後、異常監視システム100cは、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS95)。
【0102】
異常監視システム100cは、ステップS91の判定の結果、いずれかのガスセンサにおいてもガスを検出していない場合(ステップS91においてNo)、または、ステップS93の判定の結果、ガスセンサによって検出したガスの濃度が高速時の閾値以上でない場合(ステップS93においてNo)、または、ステップS96の判定の結果、ガスセンサによって検出したガスの濃度が低速時の閾値以上でない場合(ステップS96においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS95)。
【0103】
以上のように車両の速度によって閾値を変えることでその影響を考慮した判定が可能になる。なお、タイヤハウス内の気流の速度は、風速の影響を受けるため、風速センサ3の検出結果を利用してもよい。風速センサ3によって検出する風速が所定値以上である場合と所定値未満である場合とで、判定部12において異なる閾値を用いて判定してもよい。
【0104】
[タイヤの空気圧や温度を考慮して判定する異常監視システム]
空気圧センサや、温度センサを追加し、タイヤの空気圧や温度を検出し、判定部12においてそれらの検出結果を考慮して判定してもよい。
【0105】
図20は、タイヤの空気圧や温度を考慮して判定する異常監視システム100dの例を示す図である。
図20において、異常監視システム100dが、
図3を参照して説明した異常監視システム100と異なる点は、空気圧センサ4、温度センサ5を有する点である。空気圧センサ4は、各タイヤの内腔に設置され、タイヤの空気圧を測定する。温度センサ5は、例えば、空気圧センサ4の筐体に併設されて、タイヤ内腔の空気の温度を測定するセンサである。また、タイヤの外表面の温度を測定する非接触式のセンサでもよい。空気圧センサ4がすでに設けられている場合については、その筐体内に温度センサを追加することが好ましい。このようにすれば、空気圧センサ4と温度センサとが、電源を共用することができる。なお、タイヤ内腔の温度が上昇するとタイヤ内腔の空気圧も上昇するので、空気圧と温度との両方を測定することは、一見、重複しているように思われる。現実には、タイヤがパンク(またはスローリーク)して空気圧が低下し、それによってタイヤたわみが大きくなって発熱する場合もある。したがって、そのような場合を検知するためには空気圧と温度との両方を測定することは有効である。
【0106】
本例では、タイヤの空気圧を検出する空気圧センサ4をさらに含み、上記ガスセンサ1A~1Dによる検出結果と、上記空気圧センサ4の測定値とを用いてタイヤの温度異常を判定する。温度上昇に伴い、タイヤ内腔の空気も暖められて空気圧が上昇する場合がある。このため、ガスセンサによるガスの検出結果と空気圧センサによる空気圧の測定結果との両方を用いてタイヤの温度異常を判定することにより、検出精度が向上する。タイヤが異常発熱した場合は、タイヤの空気圧も上昇するため、ガスの検出結果と空気圧センサの測定結果との両方を用いることによって、検出の精度を高めることができる。
【0107】
図21は、異常監視システム100dの判定動作の例を示すフローチャートである。本例では、
図21の判定動作を、
図4に示す主要動作に対するサブルーチンとして行う。
【0108】
図21において、異常監視システム100dは、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出したか否か判定する(ステップS101)。異常監視システム100dは、異常監視システム100dは、ステップS101の判定の結果、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出した場合(ステップS101においてYes)、空気圧センサ4において検出した空気圧の値が所定値以上か否か判定する(ステップS102)。
【0109】
異常監視システム100dは、ステップS102の判定の結果、空気圧の値が所定値以上である場合(ステップS102においてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS103)。その後、異常監視システム100dは、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS104)。
【0110】
異常監視システム100dは、ステップS102の判定の結果、空気圧の値が所定値以上でない場合(ステップS102においてNo)、車両の周囲の環境要因などによる誤認識の可能性があると判定する(ステップS105)。その後、異常監視システム100dは、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS104)。
【0111】
異常監視システム100dは、ステップS101の判定の結果、いずれのガスセンサにおいてもガスを検出していない場合(ステップS101においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS104)。
【0112】
ところで、
図21のステップS102において、温度センサ5において検出した温度の値も考慮して判定を行ってもよい。例えば、空気圧センサ4において検出した空気圧の値が所定値以上であり、かつ、温度センサ5において検出した温度の値が所定値以上である場合にステップS103の処理に進み、空気圧センサ4において検出した空気圧の値が所定値以上でない場合または温度センサ5において検出した温度の値が所定値以上でない場合にステップS105の処理に進むようにしてもよい。
【0113】
また、
図21のステップS102において、空気圧センサ4において検出した空気圧の値は考慮せず、温度センサ5において検出した温度の値を考慮して判定を行ってもよい。
図22は、異常監視システム100dの判定動作の他の例を示すフローチャートである。本例では、
図22の判定動作を、
図4に示す主要動作に対するサブルーチンとして行う。
【0114】
図22において、異常監視システム100dは、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出したか否か判定する(ステップS101)。異常監視システム100dは、異常監視システム100dは、ステップS101の判定の結果、いずれかのガスセンサにおいてガスを検出した場合(ステップS101においてYes)、温度センサ5において検出した温度の値が所定値以上か否か判定する(ステップS102a)。
【0115】
異常監視システム100dは、ステップS102aの判定の結果、温度の値が所定値以上である場合(ステップS102aにおいてYes)、自車のタイヤに異常発熱の可能性があると判定する(ステップS103)。その後、異常監視システム100dは、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS104)。
【0116】
異常監視システム100dは、ステップS102aの判定の結果、温度の値が所定値以上でない場合(ステップS102aにおいてNo)、車両の周囲の環境要因などによる誤認識の可能性があると判定する(ステップS105)。その後、異常監視システム100dは、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS104)。
【0117】
異常監視システム100dは、ステップS101の判定の結果、いずれのガスセンサにおいてもガスを検出していない場合(ステップS101においてNo)、
図4に示す主要動作に戻る(ステップS104)。
【0118】
[ガスセンサ]
上記の異常監視システムに用いて好適なガスセンサは、タイヤに含まれる物質の中で温度上昇に伴って揮発する物質を検出する。揮発する物質に対してガスセンシングを行うことで安価にタイヤの異常な温度上昇を検出できる。ガスセンサは、半導体式ガスセンサや、電気化学式ガスセンサ、バイオセンサ方式等、いずれでもよい。
【0119】
ガスセンサが検出することができるガスは予め決まっており、その特定のガスを検出する。検出対象のガスとガスセンサとは一対一に対応する。互いに異なる複数種類のガスをガスセンサで検出する場合、検出対象のガスそれぞれに対応するガスセンサを用意する必要がある。すなわち、ガスとガスセンサとのペアを複数用意する必要がある。
【0120】
[ガスセンサによる検出]
タイヤに配合した添加剤に含まれる物質は、化学反応を起こして配合時とは分子構造が異なるものもあるが、未反応のまま残っているものもある。また、添加剤に含まれる物質が、そのまま分子構造を変えずに揮発する場合もあるが、多くは分子構造の一部(~基など)が分離して揮発する。従って、ある添加剤に含まれる物質Xの分子構造と、それが原因となる揮発物質X’とは同一であるとは限らない。そのまま分子構造を変えずに揮発する物質X、および、分子構造の一部が分離して揮発する物質X’は、いずれも物質Xに由来する物質である。
【0121】
また、物質によって揮発し易さは異なり、揮発しやすい物質は沸点に到達する温度よりも低い温度で揮発する。
図23は、温度の変化に対する揮発量の変化の例を示す図である。
図23は、添加剤である物質Yおよび物質Zについて、揮発量の変化の例を示す。物質Y、物質Zは、それぞれ固有の沸点を有する。物質Y、物質Zは、それぞれ対応するガスセンサによって検出される。
【0122】
図23に示すように、物質Y、物質Zについては、沸点に到達する温度よりも低い温度で揮発が開始される。その後、タイヤの温度が上昇すると、物質Y、物質Zの揮発量が増加し、ガスの濃度が上昇する。物質Y、物質Zの揮発量は、ガスセンサによる検出濃度に比例する。物質Yの揮発量が対応するガスセンサの検出閾値THを超えると、物質Yがガスセンサによって検出される。物質Zの揮発量が対応するガスセンサの検出閾値THを超えると、物質Zがガスセンサによって検出される。
【0123】
図23に示すように、タイヤの温度を徐々に上げた場合、ある物質が揮発する濃度は温度に対して幅を持つ。このことより、ガスセンサにおいて濃度検出に閾値を設定し、濃度が閾値を超えた場合を「検出」と呼ぶのであって、物質の揮発が開始された時点が「検出」ではない。
【0124】
[ガスセンサによって検出される物質の例]
図24~
図27は、ガスクロマトグラフィーによって得られるクロマトグラムの例を示す図である。
図24~
図27は、加硫促進剤、加硫遅延剤、老化防止剤などの添加剤の残渣に由来して揮発する物質の例を示す。
図24は、タイヤのトレッド部のキャップゴムを120℃で加熱した場合のクロマトグラムの例を示す図である。
図25は、タイヤのトレッド部のキャップゴムを165℃で加熱した場合のクロマトグラムの例を示す図である。
図26は、タイヤのサイドゴムを120℃で加熱した場合のクロマトグラムの例を示す図である。
図27は、タイヤのサイドゴムを165℃で加熱した場合のクロマトグラムの例を示す図である。
図24~
図27において、横軸は保持時間、縦軸は強度である。
【0125】
図24を参照すると、120℃に加熱した場合、キャップゴムからベンゾチアゾール(Benzothiazole)の残渣が揮発したことがわかる。ベンゾチアゾールは、加硫促進剤であるN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドの残渣に由来して揮発したと考えられる。ベンゾチアゾールをガスセンサで検出することによって、タイヤの異常発熱の可能性を判定できる。つまり、温度上昇によってチアゾール系化合物のガスを揮発するタイヤについては、少なくともチアゾール系化合物のガスの濃度を検出するガスセンサを用いてガスを検出すればよい。
【0126】
図25を参照すると、165℃に加熱した場合、キャップゴムから、ベンゾチアゾールおよびキノリン(Quinoline)が揮発したことがわかる。ベンゾチアゾールは、加硫促進剤であるN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドの残渣に由来して揮発したと考えられる。キノリンは、老化防止剤であるポリ(2,2,4トリメチル1,2ジヒドロキノリン)の残渣に由来して揮発したと考えられる。ベンゾチアゾール、キノリンの少なくとも一方をガスセンサで検出することによって、タイヤの異常発熱の可能性を判定できる。
【0127】
図26を参照すると、120℃に加熱した場合、サイドゴムからメチルイソブチルケトン(Methyl Isobutyl ketone)およびベンゾチアゾールが揮発したことがわかる。ベンゾチアゾールは、加硫促進剤であるN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドに由来して揮発したと考えられる。メチルイソブチルケトン、ベンゾチアゾールの少なくとも一方をガスセンサで検出することによって、タイヤの異常発熱の可能性を判定できる。
【0128】
図27を参照すると、165℃に加熱した場合、サイドゴムからベンゾチアゾール、キノリンおよびフタルイミド(Phthalimide)が揮発したことがわかる。ベンゾチアゾールは、加硫促進剤であるN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドの残渣に由来して揮発したと考えられる。キノリンは、老化防止剤であるポリ(2,2,4トリメチル1,2ジヒドロキノリン)の残渣に由来して揮発したと考えられる。フタルイミドは、加硫遅延剤であるN‐(シクロヘキシルチオ)フタルイミドの残渣に由来して揮発したと考えられる。ベンゾチアゾール、キノリン、フタルイミドの少なくとも1つをガスセンサで検出することによって、タイヤの異常発熱の可能性を判定できる。
【0129】
以上のことから、上記の各ガスセンサは、少なくともチアゾール系化合物の濃度を検出するガスセンサを含むことが好ましい。これにより、ゴムに含まれる加硫促進剤の残渣が揮発したものを検出できる。特に、ベンゾチアゾールを検出できる。また、他にアミン系化合物の濃度を検出するセンサを追加しても良い。これにより、検出した物質の出所がタイヤであることの確かさが向上する。
【0130】
また、上記の各ガスセンサは、少なくともチアゾール系化合物の濃度を検出するガスセンサと、さらに他の種類のガスの濃度を検出するガスセンサとを含み、かつ、車両のタイヤは、温度上昇によって上記他の種類のガスが揮発することが好ましい。つまり、温度上昇によってチアゾール系化合物のガスおよびチアゾール系化合物以外の種類のガスを揮発するタイヤについては、チアゾール系化合物のガスの濃度を検出するガスセンサとともに、チアゾール系化合物以外の種類のガスを検出するガスセンサを用いてガスを検出すればよい。そして、両方のガスセンサにおいてガスを検出した場合に、タイヤに異常発熱の可能性があると判定することにより、判定の正確さを高めることができる。タイヤとの組み合わせにより、他の車両のタイヤで発生している異常なタイヤ温度上昇との区別がより高精度になる。上記他の種類のガスとしては、アミン系化合物や、ケトン類、キノリン(老化防止剤に由来する)、フタル酸誘導体(加硫遅延剤の残渣に由来する)が好ましい。さらに、一般的なタイヤには配合されない物質をタイヤに配合しておくのも好ましい。そのような物質に由来するガスについては、そのガスの検出に特化したガスセンサを用意すれば検出できる。
【0131】
さらに、上記の各ガスセンサは、複数種類のガスそれぞれに対応し、各ガスの濃度を検出するガスセンサを含み、かつ、車両のタイヤは、温度上昇によって揮発する複数種類の物質であって、沸点が互いに所定温度以上異なる物質を含むことが好ましい。上記所定温度は、例えば10℃である。これにより、沸点が互いに10℃以上異なる物質に由来するガスを順次検出することにより、タイヤの温度上昇を段階的に検出することができる。
【0132】
[変形例]
上記の各異常監視システムについては、以下の変形例が考えられる。
(1)マイクロカプセルに揮発物質を封入し、それをタイヤのゴムに混合しても良い。マイクロカプセルは、融点を自由に設計できるため、任意の温度に達した時に成分が揮発する。このため、異常温度に相当する温度に達した時に特定の成分が揮発するマイクロカプセルをタイヤのゴムに混合しておき、その成分をガスセンサで検出すれば、タイヤの異常発熱を段階的に検出できる。各温度に対応する揮発物質を別々のマイクロカプセルに封入し、それをタイヤのゴムに混合しておけば、ガスセンサは揮発物質を段階的に検出するので、タイヤの発熱を段階的に検出できる。
【0133】
(2)温度上昇に伴って揮発する成分を含む材料を、タイヤ表面の少なくとも一部に塗布しておいてもよい。摩耗に伴って消失しないようにするために、トレッド部の溝底や、タイヤサイド部の表面などに上記材料を塗布することが好ましい。この場合、タイヤ表面からガスが揮発するので、上記(1)のようにゴムに混合する場合よりも、ガスセンサの検出感度が向上する。
【0134】
(3)ガスセンサはタイヤハウスなどタイヤの外側でタイヤの近傍に設置されてもよいが、空気圧センサと一体的に各タイヤの内腔に設置されても良い。車両によっては、各タイヤの内腔に空気圧センサを設けることがあり、空気圧センサと一体的にガスセンサを設ければ、空気圧センサの電源とガスセンサの電源とを共用することができる。
【0135】
(4)車輪近傍の制動装置の温度を測定する他の温度センサと、その温度センサと一体にまたは近傍にガスセンサを備え、制動装置の温度の測定結果とガスの検出結果との両方を用いてタイヤの温度異常を判定してもよい。タイヤ自体が異常発熱している場合と、車体の異常発熱の輻射熱または熱伝導によりタイヤの温度が上昇している場合とを区別することができる。
【0136】
(5)各タイヤの内腔と外側近傍との両方にガスセンサを設けてもよい。こうすることにより、異常発熱が発生したタイヤについては、そのタイヤの内腔と外側近傍との両方のガスセンサが同じガスを検出する。これに対し、他の正常なタイヤについては内腔と外側との両方のガスセンサがガスを検出しないか、または外側近傍のガスセンサだけがガスを検出する。このため、各タイヤの内腔と外側近傍との両方にガスセンサを設けることにより、車両に設けられている複数のタイヤのうちの異常発熱が発生したタイヤを特定することができる。同じ車輪に取付けられているダブルタイヤについても、異常発熱が発生したタイヤを特定することができる。
【0137】
(6)制御部10から出力される警報信号を、異常監視システムの外部の装置に送信し、外部の装置から車両200の運転者や車両の外の運行管理者に警報を出力してもよい。例えば、警報信号を移動通信網に送信し、移動通信網内のサーバ装置から車両200の運転者や運行管理者が使用する通信端末(例えば、携帯電話機やスマートフォン)に制御信号を送信してよい。これにより、警報部30を設けなくても、携帯電話機やスマートフォンによって車両200の運転者や運行管理者に警報を伝えることができる。特に、車両200がトラックやバスである場合において、移動通信網を介して、運行管理センターのような組織に設けられている通信端末に信号を送信することが好ましい。
【0138】
(7)車両200にECU(Electronic Control Unit)が搭載されて走行制御システムが構築されている場合がある。その場合には、制御部10から出力される警報信号を車両200のECUに入力し、運転者に対して警報を出力するだけでなく、走行制御システムによって強制的又は自動的に速度制限を行ってもよい。例えば、高速道路を走行している場合に、制御部10から出力される警報信号をECUに入力することによって、自動的な速度抑制を行ってもよい。
【符号の説明】
【0139】
1A、1B、1C、1D、1F ガスセンサ
2 速度センサ
3 風速センサ
4 空気圧センサ
5 温度センサ
10 制御部
11 取得部
12 判定部
13 入出力部
14 タイマー
20 記憶装置
21 各種プログラム
22 各種データ
30 警報部
100、100a、100b、100c、100d 異常監視システム
200、200a 車両
201 タイヤハウス