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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】マッサージ器
(51)【国際特許分類】
   A61H 23/02 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
A61H23/02 332
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019040357
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020141849
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505167222
【氏名又は名称】株式会社TENGA
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 仁
(72)【発明者】
【氏名】武内 さや
(72)【発明者】
【氏名】松浦 努
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204932218(CN,U)
【文献】特開2003-024408(JP,A)
【文献】中国実用新案第206499445(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107095778(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 23/02
A61H 19/00
A45D 44/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加振部、振動を発生する振動モータ、及び前記振動モータを支持し、前記振動モータが発生した振動を前記加振部に伝達するヘッドベースを備えたヘッドユニットと、前記振動モータの電源となる電池と、前記ヘッドベースに支持された前記振動モータ、及び前記電池を収容し、且つ把持部を備えたボディと、ゲル状樹脂によって作製され、前記ヘッドベースを支持する緩衝部材と、を備えたマッサージ器であって、
前記ボディは、円筒状の外側ボディ片と、外周面が前記外側ボディ片の内周面と密着整合される円筒状部分、及び前記緩衝部材の一面が固定される内底面を有する内側ボディ片と、を備え、
前記ヘッドベースは、前記振動モータのモータ本体が差し込まれる筒状部と、前記筒状部に設けられたベース側フランジ部と、を備え、
前記加振部は、硬質樹脂によって作製され、且つ底部が前記ベース側フランジ部に固定されるドーム形状のヘッドと、軟質樹脂によって作製され、且つ前記ヘッドを覆う軟質カバーと、を備え、
前記軟質カバーの外周部には、外周縁が前記ボディの開口縁に固定されるカバー側フランジ部を設け、
前記緩衝部材は、前記ヘッドベースを前記ボディに対して浮動状態で支持し、且つ前記軟質カバーよりも柔軟であることを特徴とするマッサージ器。
【請求項2】
前記把持部は、前記外側ボディの外周面であり、
前記緩衝部材は、前記内側ボディ前記円筒状部分の内周面に前記内底面側の端部においてのみ接触していることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ器。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記他面の中心部に軸方向に貫通する中心穴を有し、
前記ヘッドベースの前記筒状部は、前記中心穴内に配置されることを特徴とする請求項2に記載のマッサージ器。
【請求項4】
前記緩衝部材は、含油ゲル状樹脂によって作製され、
前記軟質カバーは、シリコン樹脂で作製され、且つ前記ヘッドベースをも覆う構成を備え、
前記緩衝部材と前記軟質カバーの間に、前記軟質カバーと前記緩衝部材の接触を防止するインシュレータシートを配置したことを特徴とする請求項1に記載のマッサージ器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顔面、頭部、頸部、その他の敏感な身体部位を局部的にマッサージするのに適し、しかも振動モータの振動により使用者の手に生じるしびれ等の違和感、不快感を効果的に減少させることができる使用感の優れたマッサージ器に関する。
【背景技術】
【0002】
片手で把持できる程度に小型で、振動モータの振動によりツボ等の身体部位を局部的に刺激することによって血流の促進、老廃物の除去等といった効果を発揮する小型マッサージ器が種々提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
何れのマッサージ器にあっても、振動モータの振動が皮膚と接触する加振部分のみならず、使用者が把持する把持部を経由して手指に伝わるため、手指のしびれ、違和感、疲労感等の不快感をもたらすという問題がある。
つまり、従来のマッサージ器は、把持する手指の使用感を十分に配慮した構成とはなっていなかった。従って、特に手指の皮膚が弱かったり、感覚が敏感な使用者は勿論、手指の感覚が正常な者にあっても、中・長時間の使用により手指のしびれ等の不快感に耐えがたくなって使用を中止せざるを得なくなり、折角購入しても使用しなくなるというクレームが報告されている。
【0003】
また、外殻をなすケースの材質、その他の部品の組み付け構造によっては、振動モータの振動周波数との共振により不快な振動が発生して手指のしびれなどの不快感が増幅されたり、耳障りな振動音が発生することも報告されている。
このため、皮膚が弱い者のみならず、健常者の目、耳、こめかみ等の顔面部位、頸部、その他の敏感な身体部位を時間を掛けて効果的にマッサージする手段としては不向きとされていた。
更に振動モータから加振部に伝達されるべき振動エネルギーの多くが把持部に分散されるため、振動モータの効率が低下して電池の消耗が促進されるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-358088公報
【文献】特開2008-264031公報
【文献】特開2010-88558公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、マッサージ器において、振動モータの振動が把持部を振動させることにより使用者にもたらされる手指のしびれ、違和感、疲労感、その他の不快感をなくして快適な使用感を維持し、更に振動音を静音化する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、加振部、振動を発生する振動モータ、及び前記振動モータを支持し、前記振動モータが発生した振動を前記加振部に伝達するヘッドベースを備えたヘッドユニットと、前記振動モータの電源となる電池と、前記ヘッドベースに支持された前記振動モータ、及び前記電池を収容し、且つ把持部を備えたボディと、ゲル状樹脂によって作製され、前記ヘッドベースを支持する緩衝部材と、を備えたマッサージ器であって、前記ボディは、円筒状の外側ボディ片と、外周面が前記外側ボディ片の内周面と密着整合される円筒状部分、及び前記緩衝部材の一面が固定される内底面を有する内側ボディ片と、を備え、前記ヘッドベースは、前記振動モータのモータ本体が差し込まれる筒状部と、前記筒状部に設けられたベース側フランジ部と、を備え、前記加振部は、硬質樹脂によって作製され、且つ底部が前記ベース側フランジ部に固定されるドーム形状のヘッドと、軟質樹脂によって作製され、且つ前記ヘッドを覆う軟質カバーと、を備え、前記軟質カバーの外周部には、外周縁が前記ボディの開口縁に固定されるカバー側フランジ部を設け、前記緩衝部材は、前記ヘッドベースを前記ボディに対して浮動状態で支持し、且つ前記軟質カバーよりも柔軟であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマッサージ器によれば、振動モータの振動が把持部を振動させることにより使用者にもたらされる手指のしびれ、違和感、疲労感、その他の不快感をなくして快適な使用感を維持し、更に振動音を静音化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)(b)(c)(d)及び(e)は本発明の一実施形態に係るマッサージ器の外観構成を示す正面図、右側面図、上面図、底面図、及び背面図であり、同図(f)は外観斜視図、同図(g)は(a)のA-A断面図、同図(h)は(b)のB-B断面図である。
図2】(a)及び(b)はマッサージ器にキャップを被せた状態を示す正面図、及びC-C断面図である。
図3】本発明のマッサージ器の各構成部品を示す分解斜視図である。
図4】ボディ、防振ゲル、及びヘッドユニットの位置関係を示す分解斜視図である。
図5】(a)乃至(e)は防振ゲルによりヘッドユニットを支持した状態を示す外観斜視図、正面図、平面図、底面図、及びD-D断面図である。
図6】(a)乃至(f)は防振ゲル単体の正面図、平面図、底面図、E-E縦断面図、F-F横断面図、F-F断面斜視図である。
図7】(a)(b)及び(c)は防振ゲルの中立状態を示す斜視図、右捻り状態を示す斜視図、及び左捻り状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)(b)(c)(d)及び(e)は本発明の一実施形態に係るマッサージ器の外観構成を示す正面図、右側面図、上面図、底面図、及び背面図であり、同図(f)は外観斜視図、同図(g)は(a)のA-A断面図、同図(h)は(b)のB-B断面図である。図2(a)及び(b)はマッサージ器にキャップを被せた状態を示す正面図、及びC-C断面図である。図3は本発明のマッサージ器の各構成部品を示す分解斜視図である。図4はボディ、防振ゲル、及びヘッドユニットの位置関係を示す分解斜視図である。図5(a)乃至(e)は防振ゲルによりヘッドユニットを支持した状態を示す外観斜視図、正面図、平面図、底面図、及びD-D断面図である。図6(a)乃至(f)は防振ゲル単体の正面図、平面図、底面図、E-E縦断面図、F-F横断面図、F-F断面斜視図である。図7(a)(b)及び(c)は防振ゲルの中立状態を示す斜視図、右捻り状態を示す斜視図、及び左捻り状態を示す斜視図である。
【0010】
本発明に係るマッサージ器1は、図1に示すように、把持部12を備えたボディ10と、加振部50、52、及び加振部を振動させる振動モータ40を備えたヘッドユニット30と、を備え、ボディ10に固定した防振ゲル(ゲル状樹脂製緩衝部材)60によりヘッドユニット30を浮動状態で支持した構成が特徴的である。
言い換えれば、振動モータ40及び加振部50、52からボディ10(把持部12)へ向かう振動の伝搬経路に防振ゲル60の少なくとも一部を配置することによりボディ10(把持部12)への振動伝達を減衰、或いは遮断して、振動モータからの振動エネルギーの大半が効率よく加振部50、52に伝達されるようにしている。また、ボディへ向かう振動エネルギーを減衰、遮断することにより把持部を把持する手指の震え、振動による操作性の低下や、手指のしびれ等の不快感、違和感を解消することができる。
【0011】
図2図3中における符号100は、マッサージ器1のほぼ全体を覆うための着脱自在なキャップである。
以下、マッサージ器1の構成を詳細に説明する。
【0012】
マッサージ器1は、ボディ10、ヘッドユニット30、防振ゲル(緩衝部材)60、充電式の電池80、プリント基板85、スイッチ片90などから概略構成されている。
ボディ10は、大径で略円筒状の外側ボディ片11と、小径で略円筒状の内側ボディ片15と、を備えている。
外側ボディ片11の外面は使用者が使用時に手指で把持する把持部12を構成しており、上面は大径の開口部11aとなっており、下面中央にはスイッチ片90を装備する小径の開口部11bが形成されている。外側ボディ片の外面下部には図示しない充電用のケーブルの端子と接続するためのコネクタ13が配置されており、コネクタは電池80と電気的に接続されている。
内側ボディ片15は、外側ボディ片11よりも軸方向長が短尺であり、上面は大径の開口部15aとなっており、下面中央には電池やプリント基板とモータとを接続する図示しないハーネスを挿通するための小径の開口部15bが形成されている。内側ボディ片の外面は、外側ボディ片11の内面と密着整合するように寸法設定されている。内側ボディ片15はその上端縁を外側ボディ片11の上端縁と同等の高さ位置に配置した状態で押さえリング54により回転方向、上下方向へ位置ズレ不能に固定される。
【0013】
ヘッドユニット30は、ヘッドベース32と、振動モータ40と、硬質樹脂から成り、且つ下面が開放したドーム形状体であってモータを覆うヘッド50と、ヘッド50の外面に内面で接触した状態で配置されるシリコン樹脂などの軟質樹脂から成るドーム状の軟質カバー52と、軟質カバーの下面開口の周縁から張り出したフランジ部52aを外側ボディ片11と内側ボディ片15の上部外周縁に対して固定するための押さえリング54と、を概略備えている。軟質カバーのフランジ部52aは、内側の環状の凹所52`と、凹所52`の外周に張り出された鍔部52a”と、を備え、鍔部52a”が両ボディ片11、15の上部外周縁に添設された状態となる。押さえリング54のリング状の各部は縦断面形状が逆U字状をなしており、軟質カバーの鍔部52a”を介して両ボディ片11、15の上部外周縁に跨がって被さる形で組み付けられることにより軟質カバー52を両ボディ片に固定する。
軟質カバー52の外周部に設けたフランジ部52aが両ボディ片11、15の上部外周縁に添設されていることにより、加振部としての軟質カバー52のドーム状部分の振動が両ボディ片に伝達されることを阻止する防振、吸振機能を発揮している。
【0014】
加振部を構成するヘッド50、及び軟質カバー52は、マッサージ器1を組み立てた状態では、各ボディ片11、15の上端開口縁から上方に突出しており、ヘッドベース32が防振ゲル60により浮動状態で支持されているため、防振ゲル60のクッション作用によりヘッドユニット30全体として弾性的に出没、傾倒、変位自在となっている。
ヘッドベース32は、上部開口から振動モータ40を差し込んで内部に収容して内底面にて脱落不能に支持する中空の筒状部34と、筒状部の上端部に設けたフランジ36と、を備え、フランジ36にはヘッド50の底面のネジ穴をネジ止めするための穴36aが貫通形成されている。つまり、ヘッド50の底部のネジ穴50aはフランジ36上にビスB1によりネジ止め固定される。
【0015】
振動モータ40は、モータ本体42と、モータ本体の出力軸に固定された振動片44と、を備えており、振動片が偏心回転することにより発生する振動がヘッド50、及び軟質カバー52を振動させる。振動モータ40は、モータ本体42がヘッドベースの筒状部34内に収容されて位置決め固定されることにより、振動片44の回転による振動をヘッドベースを介して加振部(ヘッド50、軟質カバー52)に対して確実に伝達する。また、振動モータからヘッド50、及び軟質カバー52に伝達された振動は、防振ゲル60の防振作用によって減殺されてボディ側へ伝達されない。
ヘッドベース32のフランジ36の下面と防振ゲル60の上面との間にはフィルム状、且つドーナツ状のインシュレータシート55が配置されて挟圧保持されることにより、シリコン樹脂製の軟質カバー52のフランジ部52aが防振ゲル上部と接触することを防止している。つまり、軟質カバー52は、ヘッド50とヘッドベース32を覆う形状を有しているため、インシュレータシート55が存在しない場合には防振ゲル上面と軟質カバーの下面とが直接接触してしまう。軟質カバー52を構成するシリコン樹脂が防振ゲルを構成するゲル状エラストマーや軟質ウレタンと接触すると、防振ゲル中の油分から受ける影響でシリコン樹脂が膨潤して劣化するため、インシュレータシート55を介在させている。
【0016】
防振ゲル(緩衝部材)60は、高い柔軟性(低反発性)を有した超軟質樹脂素材、例えば含油ゲル状樹脂製エラストマー、超軟質ウレタン等から構成されている。防振ゲル60は、軟質カバー52の素材として用いるシリコンゴム等よりも大幅に柔軟性が高いため、振動発生源である振動モータ40及び加振部とボディ10の内周壁(特に把持部12)との間に防振ゲルを配置してボディ内壁の少なくとも一部と接触させることにより高い柔軟性、クッション性(防振性)を確保し、振動モータ(加振部)からボディ(把持部)に伝達されようとする振動を吸収、緩和することができる。
【0017】
本例では、ボディ10とヘッドユニット30とに対して防振ゲル60を固定するために螺子止めを行っている。即ち、防振ゲルは中心部に軸方向に貫通する中心穴(ヘッドユニット保持穴)62を有し、この中心穴内にヘッドベース32の筒状部34を弾性的に圧入した状態でヘッドベースに組み付けられる。防振ゲル60の中心穴62の内壁上部には内壁を周回する円形溝62aが形成されており、この円形溝内に硬質樹脂から成る小径のインナーリング70を予め嵌合させておく。防振ゲル上面とインナーリングには夫々対応する位置に小孔60a、70aが形成されており、各小孔をビスB2により連結固定する。また、ビスB2の先端は防振ゲル上面の小孔60aを越えてインシュレータシート55の小孔55aを経てヘッドベース32のネジ穴36bに螺着される。つまり、ビスB2は、インナーリング70、インシュレータ55を介して防振ゲルをヘッドベース32に対して固定する。
【0018】
次に、防振ゲル60の外周面下部には外周面を周回する円形溝64が形成されており、円形溝64内には硬質樹脂から成るアウターリング75が嵌合される。アウターリング75の下面には所定の周方向ピッチでスペーサとして機能する小突起75aが突設されており、各小突起75aは内側ボディ片15の内底面と接することにより防振ゲル60の底面を内側ボディ片内底面に位置決めする。アウターリング75には周方向に所定のピッチで穴75bが形成されており、各穴75b内にビスB3を差し込んで内側ボディ片15の内底面に螺着することにより、防振ゲルの下部は内側ケース内底面に固定される。つまり、防振ゲル60は中心穴62内にヘッドベースの筒状部34を弾性的に保持する一方で、上面側はインナーリング70を介してヘッドユニット30に固定され、下面側はアウターリング75を介して内側ボディ片内底面に固定され、外周面(本例では下部のみ)は内側ボディ片内壁と接触している。言い換えれば、ボディ10により下部を固定(拘束)された防振ゲル60は、上部においてヘッドユニット30と固定されることにより、ヘッドユニットを浮動状態で支持した状態となっている。防振ゲルとボディとの接触面積をゼロ、或いは少なくすることによっても、振動源としての振動モータ、加振部からボディへの振動伝搬を大幅に減衰、減殺することができる。ただ、仮に防振ゲルとボディとの接触面積を広くしたとしても、防振ゲルの減衰効果により振動源からの振動はボディに到達する前に無害な程度に減衰される。つまり、図示の例では防振ゲル60はその軸方向下部のみにおいてボディ内周面(内側ボディ片内周面)と接触しているが、これは一例に過ぎず、ボディ内周面との接触面積をゼロとしてもよいし、接触面積を図示のものよりも大きくしてもよい。
【0019】
このため、防振ゲル60は、振動モータ40、及び加振部50、52の回転により発生する回転方向への振動、応力を自ら回転方向へ捻れ変形することにより吸収緩和し、把持部を把持する使用者の手指に伝達される振動を減殺することができる。図7(b)及び(c)は防振ゲルがその中心軸を中心として左右に捻れを起こしている状態を示しており、このように回転方向、周方向へ柔軟に変形することができるために、回転方向への応力を効率的に吸収緩和することができる。
防振ゲル60とヘッドユニット30(加振部)とが一体化されているため、振動モータ、及び加振部の振動に起因して伝搬される回転方向以外の方向への振動、例えば振動モータ、及び加振部が生成する軸方向、その他の方向への振動についても防振ゲルは効果的に吸収緩和することができる。
【0020】
また、防振ゲルは、加振部を構成する軟質カバー52が被マッサージ部(皮膚)と接触することにより発生する軸方向への応力を自ら伸縮することにより吸収緩和することができるため、被マッサージ部に対する加振部のクッション性を高めて使用感、接触感を良好にすることができる。
【0021】
従来、振動モータとボディ片底部との間に金属製のコイルバネを配置することにより、振動モータが生成する軸方向への振動を弾性的に受承するようにしたマッサージ器は種々提案されているが、振動モータや加振部の外径方向位置に把持部(外側ボディ片の把持部)が存在する場合には把持部12への振動伝達を充分に解消することが難しく、手指のしびれ等の不快感を解消することができなかった。仮に振動モータの外径方向に位置する把持部への振動を減衰するために振動モータと把持部との間にコイルバネ、板ばね等の緩衝材を配置するとすれば、部品点数が増大して構造が複雑化し、大型化するという問題がある。
【0022】
一方、掌サイズの小型マッサージ器にあっては振動モータの外径方向に把持部が位置することとなるため、把持部12に伝達される振動による手指のしびれを解消すべしという要請が強いが、コイルバネから成る緩衝部材によっては振動モータから把持部に伝わる振動を解消することが困難である。
【0023】
一方、小型マッサージ器において、振動モータとボディ片底部との間にコイルバネや板ばねを配置することは、マッサージ器の軸方向長の大型化を招くため、設計上は回避したい選択である。
【0024】
本発明の防振ゲル60はその中心穴62内に、モータ本体42を内蔵したヘッドベースの筒状部34を可動な状態で支持しているため、ヘッドユニット30全体をボディから浮いた状態で弾性的に支持することができる。このため、ヘッドユニット30からの軸方向への振動、変位のみならず、外径方向への振動、変位、捻れ方向への振動、変位を防振ゲルが吸収緩和してボディへの到達を減殺することができ、把持部12を把持する手指への振動、衝撃を大幅に減衰させることが可能となる。
【0025】
図6(e)(f)の各断面図に示すように、防振ゲル60は、中心部に軸方向に貫通する中心穴62を有した空洞体であり、該中心穴内に振動モータが配置され、外周面にてボディ内壁面と対面(接触、非接触)している。各断面図に示すように外周壁65の内壁から中心部に向けて複数のリブ66を突出させることによりリブ間に空所を多数形成した空洞構造であることにより、緩衝部材として必要な形状、強度(保形性)を保ちつつ、質量を低減して高価なゲル状樹脂材料のコストを低減している。また、空洞構造であるため、加振部からの圧力により潰れながら捻れ方向へ変形することが容易となり、皮膚と接する加振部のクッション効果を高めることができる。
【0026】
また、モータ本体42を内蔵したヘッドベースの筒状部34を防振ゲルの中心穴62内に収納するため、マッサージ器全体の軸方向長を短縮することが可能となる。
また、防振ゲル60は、防振モータの外径側を中心とした位置にあり、振動モータ底部と外側ボディ片内底面(或いは、内側ボディ片内底面)との間に介在しないため、マッサージ器の軸方向寸法が大型化することを防止できる。
なお、防振ゲルの一部が振動モータ底部と外側ボディ片内底面(或いは、内側ボディ片内底面)との間に介在する(突出する)構成としても、把持部への振動伝搬の減衰性能に支障はないため、防振ゲルが防振モータの外径側にのみに位置していることは必須の要件ではない。
【0027】
把持部12の位置が震動源である振動モータ40や加振部の軸方向長の外径側にある場合に把持部を把持した手指に対する振動の伝搬を減衰させる効果が最大となるが、把持部が振動モータ等の振動源の軸方向長L(図1(g))の範囲内に位置していることは必須ではない。即ち、ボディが軸方向に長尺であるために振動モータの軸方向長Lの範囲よりも下方、或いは上方寄りの位置に把持部の全部、又は一部が存在している場合であっても、振動モータから手指に伝わる振動によりしびれ等の不快感が発生することがあるので、この場合にも防振ゲルを振動モータの外径側、その他のボディ内壁の適所に配置することにより減衰効果を充分に発揮できる。
ヘッドユニット30は防振ゲル60により浮いた状態(浮動状態)で保持されているため、軸方向、径方向、傾斜方向等々任意の方向に変位可能であり、手指で把持したマッサージ器の加振部を被マッサージ部に対して任意の角度、任意の強度で接触させることが可能であり、操作性を高めることができる。
【0028】
<本発明の実施態様の構成、作用、効果のまとめ>
第1の態様に係るマッサージ器は、加振部50、52、及び該加振部を振動させる振動モータ40を備えたヘッドユニット30と、振動モータの電源となる電池80と、振動モータ、及び電池を収容し、且つ外面に把持部を備えたボディ10と、を備え、ボディに固定したゲル状樹脂製の防振ゲル60によりヘッドユニットを前記ボディに対して浮動状態(ボディと非接触)で支持したことを特徴とする。
手指で把持しつつ加振部を被マッサージ部に当接させるタイプの従来のマッサージ器にあっては、振動モータの振動が把持部から手指に伝わることを防止する対策が採られていない。ボディにより支持された加振部にクッション性を付与するためにコイルバネ、板ばね等の金属製弾性部材を使用することは知られているが、柔軟性に限界があり、把持部への振動の伝搬を防止することはできない(振動の減衰機能なし)。
【0029】
態様においては、非常に柔軟なゲル状樹脂材料から成る緩衝部材を用いて加振部にクッション性を与えると共に、把持部への防振用、緩衝用(ダンパー)として兼用している。
ボディが長尺で把持部が振動源となる振動モータや加振部から充分に離間している場合には手指がしびれる等の不具合は発生しにくいが、ボディが短尺で加振部と振動モータ等との距離が接近している場合には従来は振動モータ等からの振動が直接把持部を振動させる原因となる。そこで、本態様では、振動モータや加振部からの振動が伝達される範囲であって使用者が把持する把持部との間に振動伝達を遮断するための極めて柔軟性の高いゲル状樹脂材料から成る緩衝部材を配置することにより、振動が使用者にもたらす手指のしびれ、違和感、疲労感、その他の不快感をなくして快適な使用感を維持し、更に振動音を静音化することができる。
【0030】
また、金属製のコイルバネ、板ばねによっては実現できない高い柔軟性を有したゲル状樹脂製緩衝部材を用いたことにより、加振部が皮膚に触れて振動を加える際の圧力の加減をソフトに調整することが可能となり、使用感を更に高めることができる。特に、敏感な患部や皮膚にダメージを与えることなく血流促進、老廃物の除去、疲労回復等といった本来のマッサージ効果を発揮できる。
【0031】
第2の態様に係るマッサージ器は、振動モータ40と把持部12との間に緩衝部材60の少なくとも一部を配置したことを特徴とする。
振動モータの外径側に把持部が位置するマッサージ器にあっては、振動モータの外径方向位置、特に振動モータと把持部との間に緩衝部材の少なくとも一部を配置することにより緩衝効果を高めることができる。振動モータからの振動は接触している部材を介して種々な方向へ伝搬するが、振動モータを緩衝部材内部に浮動状態で支持した場合には振動モータの軸方向長Lを中心とした範囲に緩衝部材を接触させて配置することにより振動を効果的に減衰させてボディに到達することを阻止することができる。
この場合、緩衝部材は振動モータの軸方向全長をカバーする必要はなく、少なくとも振動モータの軸方向の一部をカバーする軸方向長を有していれば振動減衰は可能である。
なお、「振動モータ40と把持部12との間」とは、把持部が振動モータの軸方向長Lの範囲内にある場合のみならず、把持部が振動モータの軸方向長Lの範囲からずれた位置にある場合も含む。つまり、把持部が振動モータの軸方向長Lの外径方向に位置しない場合も含む。
【0032】
第3の態様に係るマッサージ器は、振動モータの軸方向長Lの範囲内に把持部の少なくとも一部が位置していることを特徴とする。
振動モータの軸方向長L内に把持部が存在する小型のマッサージ器において、振動モータと把持部との間に緩衝部材が存在しない場合には把持部の振動は耐えがたいものとなる。
態様ではボディにより支持された緩衝部材により振動モータを宙づり状態(浮動状態、ボディと非接触状態)としているため、振動モータに対する把持部の位置関係、距離がどのような状態であっても、振動モータからボディに伝達される振動を減衰することが可能となる。特に、振動モータの軸方向長Lの範囲内に把持部の少なくとも一部が位置している小型マッサージ器に対して本態様の緩衝部材による振動源の支持構造を適用することにより、振動を効果的に減衰させてボディに到達することを阻止することができる。
【0033】
第4の態様に係るマッサージ器では、緩衝部材60は、中心部に軸方向に貫通する中心穴62を有し、該中心穴内に振動モータ40が配置され、外周面にてボディ内壁面と対面(接触、非接触)していることを特徴とする。
緩衝部材60の軸方向長内に振動モータが配置されているため、マッサージ器の全長を短くすることが可能となった。
緩衝部材60は振動モータや加振部からの振動を把持部に伝達しない役割を有するため、振動の伝搬経路に配置されて減衰機能を発揮できれば足りるため、緩衝部材の外周面がボディ内壁と接触していることは要件ではない。
緩衝部材の内部は空洞であるため、必要な保形性を保持しつつ質量を少なくしており、材料費のコストダウンを図ることができる。また、空洞の存在により潰れながら捻れ変形することが可能となり、振動源から受ける回転方向への応力を減衰することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1…マッサージ器、10…ボディ、11…外側ボディ片、11a…開口部、11b…開口部、12…把持部、13…コネクタ、15…内側ボディ片、15a…開口部、15b…開口部、30…ヘッドユニット、32…ヘッドベース、34…筒状部、36…フランジ、36a…穴、36b…ネジ穴、40…振動モータ、42…モータ本体、44…振動片、50…ヘッド、50a…ネジ穴、52…軟質カバー、52a…フランジ部、54…押さえリング、55…インシュレータシート、55a…小孔、60…緩衝部材(防振ゲル)、60a…小孔、62…中心穴、62a…円形溝、64…円形溝、70…インナーリング、75…アウターリング、75a…小突起、75b…穴、80…電池、85…プリント基板、90…スイッチ片。
図1
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図7