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  • 特許-重荷重用空気入りタイヤ 図1
  • 特許-重荷重用空気入りタイヤ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 1/00 20060101AFI20231109BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20231109BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B60C1/00 A
B60C1/00 Z
B60C11/00 D
B60C15/06 C
B60C15/06 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019160977
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021037864
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英征
(72)【発明者】
【氏名】竹内 瑞哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 建人
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188601(JP,A)
【文献】特開2016-003308(JP,A)
【文献】特開2003-063217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
B60C 11/00
B60C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴムが、少なくとも、天然ゴムおよびブタジエンゴムを含有するジエン系ゴムと補強性充填剤とを含み、
前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムの割合が30~50質量部であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記補強性充填剤の配合量が40~70質量部であり、
前記補強性充填剤中、窒素吸着比表面積(NSA)が100m/g以上のカーボンブラックが75質量%以上を占め、
前記キャップトレッドゴムの0℃における貯蔵弾性率(E’cap)と、リムクッションゴムの60℃における貯蔵弾性率(E’RC)との比が下記式を満たし
前記リムクッションゴムの厚みが、2.0mm~5.0mmであり、
前記(E’cap)が6~12MPaであり、かつ前記(E’RC)が6~10MPaである
ことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
1.0≦(E’cap)/(E’RC)≦2.0
【請求項2】
前記キャップトレッドゴムの0℃における貯蔵弾性率(E’cap)と、前記リムクッションゴムの60℃における貯蔵弾性率(E’RC)との比が下記式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
1.2≦(E’cap)/(E’RC)≦1.8
【請求項3】
前記キャップトレッドゴムは、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに、円筒又は円柱の高さが100μm以下の円筒状又は円柱状の多孔質珪藻土、および/または、硬度が60以下、平均粒径が1000μm以下かつカーボンブラックの配合量が20phr以下の低硬度加硫粉末ゴムを0.5~10質量部配合してなることを特徴とする請求項1または2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
冬用タイヤである、請求項1~3のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、優れたウェットトラクション性、氷上性能およびリム組み性を有する重荷重用空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは左右一対のビード部およびサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるとともにキャップトレッドとアンダートレッドとからなるトレッド部から主に構成されている。タイヤの内側にはベルト層およびカーカス層が設けられ、カーカス層の両端部はビードコアをタイヤ内側から外側へ包みこむように折り返されている。
またビードコアのタイヤ径方向内側およびタイヤ幅方向外側には、リムに対する接触面を構成するゴム層であるリムクッションゴムが配置されている。
【0003】
一方、トラックまたはバス用タイヤのような重荷重用空気入りタイヤとしては、安全かつ快適な運行が重視されている。そのため重荷重用空気入りタイヤは、雨天時等のウェット路面での坂道発進性(ウェットトラクション性)が求められる。ウェットトラクション性を高めるには、キャップトレッドを軟らかくする;ブタジエンゴムの配合量を減少させる;リムクッションゴムを硬くしてリムスリップを抑制する;等の手法がある。しかし、これらの手法では氷上性能やリム組み性が悪化するという問題点がある。
【0004】
なお、重荷重用空気入りタイヤのウェットトラクション性の向上を図る技術としては、例えば特許文献1~2に開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-48122号公報
【文献】特開平1-306304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、優れたウェットトラクション性、氷上性能およびリム組み性を有する重荷重用空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、キャップトレッドゴムの組成、キャップトレッドゴムの0℃における貯蔵弾性率(E’cap)と、リムクッションゴムの60℃における貯蔵弾性率(E’RC)との比、並びにリムクッションゴムの厚みを特定化することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0008】
1.タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴムが、少なくとも、天然ゴムおよびブタジエンゴムを含有するジエン系ゴムと補強性充填剤とを含み、
前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムの割合が30~50質量部であり、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記補強性充填剤の配合量が40~70質量部であり、
前記補強性充填剤中、窒素吸着比表面積(NSA)が100m/g以上のカーボンブラックが75質量%以上を占め、
前記キャップトレッドゴムの0℃における貯蔵弾性率(E’cap)と、リムクッションゴムの60℃における貯蔵弾性率(E’RC)との比が下記式を満たし、かつ
前記リムクッションゴムの厚みが、2.0mm~5.0mmである
ことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
1.0≦(E’cap)/(E’RC)≦2.0
2.前記キャップトレッドゴムの0℃における貯蔵弾性率(E’cap)と、リムクッションゴムの60℃における貯蔵弾性率(E’RC)との比が下記式を満たすことを特徴とする前記1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
1.2≦(E’cap)/(E’RC)≦1.8
3.前記キャップトレッドゴムは、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに、円筒又は円柱の高さが100μm以下の円筒状又は円柱状の多孔質珪藻土、および/または、硬度が60以下、平均粒径が1000μm以下かつカーボンブラックの配合量が20phr以下の低硬度加硫粉末ゴムを0.5~10質量部配合してなることを特徴とする前記1または2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
4.冬用タイヤである、前記1~3のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴムが、少なくとも、天然ゴムおよびブタジエンゴムを含有するジエン系ゴムと補強性充填剤とを含み、前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムの割合が30~50質量部であり、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記補強性充填剤の配合量が40~70質量部であり、前記補強性充填剤中、窒素吸着比表面積(NSA)が100m/g以上のカーボンブラックが75質量%以上を占め、前記キャップトレッドゴムの0℃における貯蔵弾性率(E’cap)と、リムクッションゴムの60℃における貯蔵弾性率(E’RC)との比が1.0≦(E’cap)/(E’RC)≦2.0を満たし、かつ前記リムクッションゴムの厚みが、2.0mm~5.0mmであることを特徴としているので、優れたウェットトラクション性、氷上性能およびリム組み性を有する。
【0010】
上述のように、ウェットトラクション性を高めるには、キャップトレッドを軟らかくする;ブタジエンゴムの配合量を減少させる;リムクッションゴムを硬くしてリムスリップを抑制する;等の手法が採られていた。しかし、これらの手法では氷上性能やリム組み性が悪化するという問題点があった。本発明では、キャップトレッドゴムの組成、キャップトレッドゴムの0℃における貯蔵弾性率(E’cap)と、リムクッションゴムの60℃における貯蔵弾性率(E’RC)との比、並びにリムクッションゴムの厚みを特定化したので、従来技術では達成困難であったウェットトラクション性、氷上性能およびリム組み性を高い次元で維持することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】空気入りタイヤの子午線断面図である。
図2】空気入りタイヤのビード部付近をリム組みした状態で示したタイヤ子午線方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に空気入りタイヤと言うことがある)は、タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴムの組成が特定される。
すなわち、本発明におけるキャップトレッドゴムは、少なくとも、天然ゴム(NR)およびブタジエンゴム(BR)を含有するジエン系ゴムと補強性充填剤とを含み、前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムの割合が30~50質量部であり、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記補強性充填剤の配合量が40~70質量部であり、前記補強性充填剤中、窒素吸着比表面積(NSA)が100m/g以上のカーボンブラックが75質量%以上を占める。
【0014】
前記BRの配合割合が30~50質量部の範囲外である場合、前記補強性充填剤の配合量が40~70質量部の範囲外である場合、前記カーボンブラックの配合割合が75質量%未満である場合、および/または、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が100m/g未満の場合は、ウェットトラクション性、氷上性能およびリム組み性をともに改善するという本発明の効果を奏することができない。
【0015】
ここで、本発明の効果向上の観点から、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は100~150m/gが好ましく、110~140m/gがさらに好ましい。
なお、本発明で言うNRとは、合成イソプレンゴム(IR)を含むものとする。また、窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K 6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0016】
本発明で使用されるジエン系ゴムは、NRおよびBR以外のジエン系ゴムを必要に応じて併用することもできる。例えば、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。本発明で使用されるジエン系ゴムは、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0017】
補強性充填剤としては、カーボンブラックのほか、とくに制限されないが、例えばシリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー等を挙げることができる。
【0018】
また、前記キャップトレッドゴムには、前記した成分に加えて、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのキャップトレッドゴムに一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0019】
また、前記キャップトレッドゴムは、氷上性能をさらに高めるという観点から、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに、円筒又は円柱の高さが100μm以下の円筒状又は円柱状の多孔質珪藻土、および/または、硬度が60以下、平均粒径が1000μm以下かつカーボンブラックの配合量が20phr以下の低硬度加硫粉末ゴムを0.5~10質量部配合してなることが好ましい。
【0020】
このような多孔質珪藻土を配合することにより、氷面に対する優れた引掻き効果および吸水効果とを同時に付与することができる。なお、通常の珪藻土は、大半が平板状であるため、氷面に対する引掻き効果及び吸水効果が十分に得られない虞がある。円筒状又は円柱状の多孔質珪藻土は、その高さLが好ましくは100μm以下、より好ましくは1~30μmであるとよい。高さLを100μm以下にすることにより、ゴム組成物の引張り強度及び耐摩耗性の低下を抑制することができる。また、円筒状又は円柱状の多孔質珪藻土の底面の直径Dに対する高さLの比L/Dが好ましくは0.2~3.0、より好ましくは0.3~2.0であるとよい。多孔質珪藻土の比L/Dをこのような範囲内にすることにより、さらに優れた氷面に対する引掻き効果と吸水効果とを同時に付与することができる。このような珪藻土としては、例えばメロシラ属に属する多孔質珪藻土を例示することができる。
【0021】
また、前記低硬度加硫粉末ゴムを配合することによっても、氷上性能を向上させることができる。
本発明において用いられる低硬度加硫粉末ゴムは、JIS K6253に準拠した硬度が60以下、好ましくは53以下であり、平均粒径が1000μm以下、好ましくは100~200μmであるものが好ましい。また、低硬度加硫粉末ゴムにおいて、カーボンブラックの配合量が20phr以下(すなわちジエン系ゴム100質量部に対してカーボンブラックの配合量が20質量部以下)、好ましくは5~10phrであるのが好ましい。なお、ジエン系ゴムとしてはとくに制限されないが、NRやBRが好ましい。前記硬度、平均粒径およびカーボンブラックの配合量の条件を満たすことにより、氷上性能を向上させることができる。
【0022】
前記多孔質珪藻土および/または前記低硬度加硫粉末ゴムの配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、0.5~10質量部が好ましく、2~6質量部がさらに好ましい。
【0023】
本発明において、リムクッションゴムの組成は、下記で説明する(E’cap)/(E’RC)の関係を満たすことができれば、とくに制限されず、適宜選択することができる。
例えば、ジエン系ゴム、シリカやカーボンブラック等の各種充填剤、カップリング剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのリムクッションゴムに一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0024】
また、本発明の空気入りタイヤにおけるその他の部材、例えばビード部やサイドウォール部等を構成する部材についても、各成分の配合割合はとくに制限されず、適宜選択することができる。
例えば前記その他の部材のゴム組成物として、ジエン系ゴム、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤等の一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0025】
本発明の空気入りタイヤは、キャップトレッドゴムの0℃における貯蔵弾性率(E’cap)と、リムクッションゴムの60℃における貯蔵弾性率(E’RC)との比が下記式を満たすことが必要である。
【0026】
1.0≦(E’cap)/(E’RC)≦2.0
【0027】
(E’cap)/(E’RC)がこの範囲外である場合は、前記本発明の効果を奏することができない。
前記(E’cap)および(E’RC)は、JIS K6394に準拠し、粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、0℃または60℃の条件で測定した貯蔵弾性率の値(MPa)とする。
【0028】
本発明において、(E’cap)は、6~12MPaが好ましく、7~11MPaがさらに好ましい。
また本発明において、(E’RC)は、6~10MPaが好ましく、7~9MPaがさらに好ましい。
【0029】
また本発明の効果がさらに向上するという観点から、(E’cap)/(E’RC)は、1.2~1.8が好ましい。
【0030】
なお前記(E’cap)および前記(E’RC)の調整は、例えば加硫剤、架橋剤、可塑剤や充填剤量の増減により可能である。
【0031】
図1は、空気入りタイヤの子午線断面図である。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
【0032】
一対のビード部3,3間にはタイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含むカーカス4が装架されている。カーカス4はビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられている。またビードコア5のタイヤ径方向内側およびタイヤ幅方向外側には、リムに対する接触面を構成するゴム層であるリムクッションゴム8が配置されている。
【0033】
一方、トレッド部1におけるカーカス4の外周側には、複数層のベルト層7がタイヤ全周にわたって埋設されている。これらベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。
【0034】
また、図2は、空気入りタイヤのビード部付近をリム組みした状態で示したタイヤ子午線方向断面図である。
図2の空気入りタイヤTにおいて、ビード部3にはビードコア5がタイヤ1周にわたるように埋設され、上記のようにこのビードコア5の回りにカーカス4の端部がタイヤ内側から外側へ折り返すように巻き上げられている。またリムクッションゴム8がリムに対する接触面を構成し、ビード部3はリムRに強固に嵌合している。
【0035】
本発明では、リムクッションゴム8の厚みが、2.0mm~5.0mmであることが必要である。
リムクッションゴム8の厚みとは、タイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した無負荷状態であるとき、ビードベース部からのビードコア5に向かう方向において、リム径の測定点Qからリムクッションゴム以外の部材(図2の形態ではカーカス4)までの、タイヤ径方向に沿ったリムクッションゴム8の長さRHである。
【0036】
ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
【0037】
リムクッションゴム8の厚みは、2mm~5mmであることがさらに好ましい。
【0038】
また本発明の重荷重用空気入りタイヤは、従来の重荷重用空気入りタイヤの製造方法に従って製造が可能である。また本発明の重荷重用空気入りタイヤは、優れたウェットトラクション性、氷上性能およびリム組み性を有することから、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤに好適である。
【実施例
【0039】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0040】
実施例1~3および比較例1~7
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を16リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、各種キャップトレッドゴム組成物を得た。
【0041】
一方、リムクッションゴムを常法にしたがい調製し、加硫剤、架橋剤、可塑剤や充填剤量を増減を増減することにより、各種60℃における貯蔵弾性率(E’RC)を有するリムクッションゴムを得た。
【0042】
(E’cap)および(E’RC)を上述のように測定し、(E’cap)/(E’RC)を求めた。結果を表1に示す。
【0043】
前記キャップトレッドゴムと、前記リムクッションゴムとを組み込み、タイヤサイズ275/80R22.5 151/148Jの各種試験タイヤを製造した。またキャップトレッドゴムおよびリムクッションゴム以外の各部材の条件は、各種試験タイヤ間で同一とした。
【0044】
得られた各種試験タイヤについて、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
リム組み性:リム組み性に関する評価は、上記試験タイヤにかかるリム組み作業およびリム外し作業に要した時間の合計時間を算出し、この算出結果に基づいて実施例1を基準(○)とした相対評価が行われる。(△)は前記合計時間が長く、実用上不利であることを示し、(×)は前記合計時間がかなり長く、実用上相当不利であることを示す。
【0046】
ウェットトラクション性:試験タイヤを12770ccの排気量の試験車両(トラクタヘッド)に装着し、空気圧をフロント900kPa、リヤ900kPaに調整し、水深1mmの舗装路面上を走行させ、時速6~21km/hの加速時における後輪のスリップ率を計測した。結果は、実施例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、ウェットトラクション性に優れることを意味する。
【0047】
氷上性能:試験タイヤを12770ccの排気量の試験車両(トラクタヘッド)に装着し、空気圧をフロント900kPa、リヤ900kPaに調整し、氷路面上を走行させ、時速40km/hからの制動距離が測定される。結果は、実施例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、氷上性能に優れることを意味する。
【0048】
【表1】
【0049】
*1:NR(RSS#3)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*3:カーボンブラック1(キャボットジャパン社製商品名ショウブラックN134、NSA=140m/g)
*4:カーボンブラック2(キャボットジャパン社製商品名ショウブラックN234、NSA=118m/g)
*5:カーボンブラック3(キャボットジャパン社製商品名ショウブラックN550、NSA=42m/g)
*6:珪藻土(円筒状の多孔質珪藻土、イーグルピッチャー社製LCS-3、円筒の高さL=3~12μm(実測値)、円筒のL/D=0.3~2(実測値))
*7:低硬度加硫粉末ゴム(ファインゴム、硬度=40、平均粒径=1000μm以下、カーボンブラックを10phr含む。)
*8:ステアリン酸(千葉脂肪酸(株)製工業用ステアリン酸N)
*9:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*10:老化防止剤(精工化学(株)製オゾノン6C)
*11:プロセスオイル(出光興産(株)製ダイアナプロセスNH-60)
*12:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
*13:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS-P)
【0050】
上記の表1から明らかなように、各実施例で調製された重荷重用空気入りタイヤは、キャップトレッドゴムの組成、キャップトレッドゴムの0℃における貯蔵弾性率(E’cap)と、リムクッションゴムの60℃における貯蔵弾性率(E’RC)との比、並びにリムクッションゴムの厚みを特定化したので、比較例に比べ、優れたウェットトラクション性、氷上性能およびリム組み性を有する。
比較例1は、BRを配合していないので、氷上性能が悪化した。
比較例2は、補強性充填剤の配合割合が本発明で規定する下限未満であるので、ウェットトラクション性および氷上性能が悪化した。
比較例3は、補強性充填剤の配合割合が本発明で規定する上限を超えているので、ウェットトラクション性および氷上性能が悪化した。
比較例4は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が本発明で規定する範囲外であるので、氷上性能が悪化した。
比較例5は、(E’cap)/(E’RC)が本発明で規定する上限を超えているので、ウェットトラクション性が悪化した。
比較例6は、(E’cap)/(E’RC)が本発明で規定する下限未満であるので、リム組み性が悪化した。
比較例7は、リムクッションゴムの厚みが本発明で規定する上限を超えているので、リム組み性およびウェットトラクション性が悪化した。
【符号の説明】
【0051】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス
5 ビードコア
7 ベルト層
8 リムクッションゴム
Q リム径の測定点
R リム
T 空気入りタイヤ
図1
図2