IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キョーラク株式会社の特許一覧

特許7381849成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器
<>
  • 特許-成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器 図1
  • 特許-成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器 図2
  • 特許-成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器 図3
  • 特許-成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器 図4
  • 特許-成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器 図5
  • 特許-成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器 図6
  • 特許-成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器 図7
  • 特許-成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20231109BHJP
   B65D 6/18 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B65D81/38 F
B65D6/18 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019176403
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021054424
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】池口 尚宏
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-035972(JP,U)
【文献】特開2010-229841(JP,A)
【文献】特開2019-163079(JP,A)
【文献】特開2012-031621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
B65D 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱容器であって、
収容空間を有し、前記収容空間を取り囲む外周部の少なくとも一部が成形体で構成され、
前記成形体は、樹脂成形体とインサート部材とを備え、
前記インサート部材は、断熱部材と、蓄熱部材とを備え、
前記樹脂成形体は、前記インサート部材を被覆するように樹脂シートを成形したものであり、
前記蓄熱部材は、前記断熱部材及び前記樹脂成形体の少なくとも一方に接触し、
前記蓄熱部材は、蓄熱効果を有する部材を樹脂容器に収容したものであり、
前記樹脂容器は、前記樹脂シートと同じ樹脂材料で形成され、
前記樹脂シートが前記樹脂容器に溶着した、断熱容器
【請求項2】
形体の製造方法であって、
垂下された一対の樹脂シートにより断熱部材及び蓄熱部材で構成したインサート部材が挟まれるように配置を行って一対の金型を用いて賦形及び型締めを施すことにより、成形体を製造し、
前記成形体は、前記樹脂シートが前記インサート部材を被覆し、且つ前記蓄熱部材が前記断熱部材及び前記樹脂シートの少なくとも一方に接触するように構成される、製造方法。
【請求項3】
断熱容器の製造方法であって、
断熱容器の収容空間を取り囲む外周部の少なくとも一部を、請求項に記載の製造方法で製造された成形体で構成する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の輸送に用いられるコンテナ等の断熱容器では、収容する物品を所定の温度に保つために蓄熱部材が用いられる。
【0003】
特許文献1には、蓄熱部材の取り付けと取り外しが可能な断熱容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-14481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示されている断熱容器は、利用の度に蓄熱部材の取り付けと取り外しが必要であり手間が掛かる。
【0006】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、内部を所定の温度に保つことが可能で、利用の度に蓄熱部材の取り外しが不要な断熱容器を実現するための成形体、成形体の製造方法、及び断熱容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、成形体であって、中空の樹脂成形体と、断熱部材と、蓄熱部材とを備え、前記断熱部材は、前記樹脂成形体の内部に配置され、前記蓄熱部材は、前記断熱部材及び前記樹脂成形体の少なくとも一方に接触するように配置されるものが提供される。
【0008】
このような成形体によれば、内部を所定の温度に保つことが可能で、利用の度に蓄熱部材の取り外しが不要な断熱容器を実現することができる、という有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】断熱容器の平面斜視図。
図2】断熱容器の背面斜視図である。
図3】断熱容器の上面パネルを開けた状態の平面斜視図。
図4】断熱容器の長手側面パネル(成形体)の[図4A]表面及び[図4B]裏面。
図5図4に示した長手側面パネル(成形体)の断面図。
図6】成形体の製造方法。
図7】成形体の製造方法。
図8】成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.全体構成
第1節では、本実施形態に係る断熱容器1について説明する。断熱容器1は、例えば輸送用のコンテナである。図1は、断熱容器1の平面斜視図であり、図2は、断熱容器1の背面斜視図である。図3は、断熱容器1の上面パネル11を開けた状態の平面斜視図である。
【0012】
図1図3に示されるように、断熱容器1は、物品を収容可能な収容空間Sを有し、且つ成形体2によって構成される。断熱容器1は、上面パネル11と、下面パネル12と、短手側面パネル13と、長手側面パネル14と、ヒンジ15と、カードホルダ16と、凹取手部17と、積載固定部18と、ロック部材19と備える。以下、各構成について詳細に説明する。
【0013】
<上面パネル11>
断熱容器1の収容空間Sに物品を入れて保管、輸送する。そのため物品を出し入れするための開閉可能な上面パネル11が設けられる。具体的には、上面パネル11は、隣接する長手側面パネル14とヒンジ15を介して結合しており、開閉自在の構造となっている。
【0014】
<下面パネル12>
下面パネル12は、上面パネル11に対向する位置に設けられ、断熱容器1の床面として機能する。
【0015】
<短手側面パネル13>
短手側面パネル13は、断熱容器1の短手方向の側面として機能する。
【0016】
<長手側面パネル14>
図4は、断熱容器1の長手側面パネル14の[図4A]表面及び[図4B]裏面を示している。長手側面パネル14は、断熱容器1の長手方向の側面として機能する。長手側面パネル14は、成形体2が用いられる。成形体2については、後に詳述する。
【0017】
<ヒンジ15>
ヒンジ15は、上面パネル11と長手側面パネル14とを結合することで、上面パネル11の開閉自在構造を実現している。
【0018】
<カードホルダ16>
カードホルダ16は、短手側面パネル13と長手側面パネル14とにそれぞれ設けられている。カードホルダ16は、断熱容器1を用いた物品の輸送に関して、明細、伝票、担当者の名刺等が収容可能に構成される。ヒトが外観から視認できるように実施することが好ましいが、その形態は特に限定されるものではない。なお、一対ずつある短手側面パネル13及び長手側面パネル14の少なくとも1つに設けてもよい。
【0019】
<凹取手部17>
凹取手部17は、対向する一対の短手側面パネル13と、対向する一対の長手側面パネル14とにそれぞれ設けられている。すなわち、断熱容器1を輸送する際に、運搬者が持ち運びやすい構造を有している。なお、短手側面パネル13及び長手側面パネル14の少なくとも一方に設けてもよい。もちろん、凹取手部17に代えて、凸取手部を備えてもよい。
【0020】
<積載固定部18>
積載固定部18は、断熱容器1の保管及び輸送に際して、断熱容器1を積載して使用することを可能にする。具体的には、積載固定部18は、上面凸部18aと、下面凹部18bを備える。断熱容器1を積み重ねる場合、上面凸部18aと下面凹部18bとが嵌合する。このため、積載時に位置決めが容易にでき、バランス良く断熱容器1を積載することができる。断熱容器1同士が嵌合されているため、積載された断熱容器1は、横方向に荷重が掛かっても上側の断熱容器1が滑り落ちることが低減される。
【0021】
<ロック部材19>
ロック部材19は、不用意な上面パネル11の開閉を規制するように構成される。その形態は特に限定されるものではない。
【0022】
2.成形体2
第2節では、断熱容器1を構成する成形体2について説明する。
【0023】
図5は、図4に示した長手側面パネル14(成形体2)の断面図である。成形体2は、具体的には、成形体2は、中空の樹脂成形体21と、断熱部材22と、蓄熱部材23とを備える。断熱部材22は、樹脂成形体21の内部に配置される。ここでは、蓄熱部材23が樹脂成形体21及び断熱部材22両方に接触している。必ずしもこの形態に限定されず、蓄熱部材23は、断熱部材22及び樹脂成形体21の少なくとも一方と接触するように配置されればよい。このような構成により、断熱容器1の収容空間Sにおいて、蓄熱部材23が対向するように設けられることとなる。
【0024】
樹脂成形体21は、樹脂成形材料によって成形された成形体である。樹脂成形材料とは例えば、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、スチレン樹脂、ブタジエン樹脂及びその混合物などが挙げられる。
【0025】
断熱部材22は発泡体に限らず、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォームなど断熱効果を有するもの全てが対象となる。発泡体は、発泡剤を添加した樹脂により形成することができる。発泡体を形成する材料としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体或いは共重合体であるポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、エチレン-エチルアクリレート共重合体等のアクリル誘導体、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-プロピレン-ジエン類等のターポリマー、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂、及びフェノール樹脂、メラニン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0026】
蓄熱部材23は、水、酢酸ナトリウム、脂肪酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどの吸水性高分子ポリマー、など蓄熱効果を含む部材全てが対象となる。これら蓄熱効果を有する部材が容器に収容されることで蓄熱部材23が構成される。この容器に関して、特に樹脂成形体21と同じ材料で形成することで、成形の際に溶着させることができる。これにより、成形体2の強度強化及びガタツキ抑制といった有利な効果を奏する。
【0027】
さらに、図5に示されるように、成形体2においては、断熱部材22は、凹部221を備える。蓄熱部材23は、凹部221に配置される。蓄熱部材23を凹部221に配置する際には、嵌合、接着剤、両面テープ等の手法で、蓄熱部材23を断熱部材22に固定することが好ましい。
【0028】
蓄熱部材23は、断熱部材22と樹脂成形体21に挟まれた位置に配置されるが、断熱部材22は、凹部を備え、蓄熱部材23は、断熱部材22凹部に配置されることで、前述したように製造上の優位性が得られる。それに加えて、蓄熱部材23が断熱部材22凹部に嵌合されることで、蓄熱部材23の側面周囲が断熱部材22で囲まれるため、周囲温度との間で熱の移動が行われる時間がより遅くなる効果が得られる。成形体2がそのような構造を有する場合、蓄熱部材23の厚さは、断熱部材22の厚さより小さい方ことが望ましい。
【0029】
つまり、成形体2において、断熱部材22の厚さをDとし、蓄熱部材23の厚さをdとすると、(d/D)の値は、0.05~0.9である。
【0030】
具体的には例えば、(d/D)の値は、0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.11,0.12,0.13,0.14,0.15,0.16,0.17,0.18,0.19,0.2,0.21,0.22,0.23,0.24,0.25,0.26,0.27,0.28,0.29,0.3,0.31,0.32,0.33,0.34,0.35,0.36,0.37,0.38,0.39,0.4,0.41,0.42,0.43,0.44,0.45,0.46,0.47,0.48,0.49,0.5,0.51,0.52,0.53,0.54,0.55,0.56,0.57,0.58,0.59,0.6,0.61,0.62,0.63,0.64,0.65,0.66,0.67,0.68,0.69,0.7,0.71,0.72,0.73,0.74,0.75,0.76,0.77,0.78,0.79,0.8,0.81,0.82,0.83,0.84,0.85,0.86,0.87,0.88,0.89,0.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
さらに、成形体2においては、平面視において、断熱部材22の面積をS1とし、蓄熱部材23の面積をS2とすると、(S2/S1)の値は、0.05~0.9である。
【0032】
具体的には例えば、(S2/S1)の値は、0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.11,0.12,0.13,0.14,0.15,0.16,0.17,0.18,0.19,0.2,0.21,0.22,0.23,0.24,0.25,0.26,0.27,0.28,0.29,0.3,0.31,0.32,0.33,0.34,0.35,0.36,0.37,0.38,0.39,0.4,0.41,0.42,0.43,0.44,0.45,0.46,0.47,0.48,0.49,0.5,0.51,0.52,0.53,0.54,0.55,0.56,0.57,0.58,0.59,0.6,0.61,0.62,0.63,0.64,0.65,0.66,0.67,0.68,0.69,0.7,0.71,0.72,0.73,0.74,0.75,0.76,0.77,0.78,0.79,0.8,0.81,0.82,0.83,0.84,0.85,0.86,0.87,0.88,0.89,0.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
蓄熱部材23は熱容量が大きいため、多くの熱を蓄えることができる。周囲の温度が蓄熱部材23より低い場合は、多くの熱が蓄熱部材23から周囲に移動する。また、周囲の温度が蓄熱部材23より高い場合は、多くの熱が周囲から蓄熱部材23に移動する。そのため、周囲の温度が変化しても、蓄熱部材23と熱移動が長く続く間は、断熱容器1の収容空間Sは所定の温度に近づけて維持することができる。
【0034】
蓄熱部材23を保冷剤として使用する場合は、成形体2の周囲の温度が上昇した場合、熱伝導率の低い断熱部材22はゆっくりと温度が上昇する。上昇した熱は、蓄熱部材23に移動する。蓄熱部材23は熱容量が大きいため、長時間熱が蓄熱部材23に移動し続ける。その間、断熱容器1の収容空間Sは所定の温度を維持することができる。断熱容器1の収容空間Sは急激に温度が下降することが低減される。
【0035】
断熱容器1の収容空間Sに物品を入れて、所定の温度で管理された倉庫で保管、若しくはトラック等の輸送車で輸送する間に、断熱容器1の断熱部材22、蓄熱部材23及び収容空間Sは周囲温度に近づく。そのため、物品も所定の温度に近づけて管理することができる。
【0036】
物品を輸送後、コンビニエンスストア等の輸送先では、輸送車から成形体2を降ろして、所定の場所に運ばれる。断熱容器1を降ろしてから所定の場所まで移動する間、及び所定の場所で断熱容器1を保管する間、周囲の温度が管理温度と異なっても、断熱容器1の収容空間Sは管理温度に近づけて長く維持することができる。
【0037】
物品が食品であった場合は鮮度、精密機械である場合は品質を維持するため、所定の温度で管理することが望まれるが、管理下でない場所に長時間置かれると物品の鮮度、品質に影響を及ぼす。しかし、本発明の成形体2を用いることで、断熱容器1が、外気に長時間触れてもの収容空間Sの温度変化が抑えられ、物品の鮮度や品質の低下を防ぐ効果が得られる。
【0038】
まとめると、断熱容器1は、収容空間Sの内部を所定の温度に長時間保つことが可能で、利用の度に蓄熱部材23の取り外しが不要となり、従来の断熱容器における手間の問題が解消される、という有利な効果を奏する。
【0039】
3.成形体2の製造方法
第3節では、成形体2の製造方法について説明する。
3-1.成形機3の構成
成形機3は、樹脂供給装置4と、Tダイ5と、一対の金型71,72を備える。樹脂供給装置4は、ホッパー41と、押出機42と、アキュームレータ45とを備える。押出機42とアキュームレータ45は、連結管61を介して連結される。アキュームレータ45とTダイ5は、連結管62を介して連結される。以下、各構成について詳細に説明する。
【0040】
<ホッパー41、押出機42>
ホッパー41は、原料樹脂Mを押出機42のシリンダ43内に投入するために用いられる。原料樹脂Mの形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂Mは、ホッパー41からシリンダ43内に投入された後、シリンダ43内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ43内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ43の先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ43内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。スクリューの基端にはギア装置が設けられており、ギア装置によってスクリューが回転駆動される。シリンダ43内に配置されるスクリューの数は、1本でもよく、2本以上であってもよい。
【0041】
<アキュームレータ45、Tダイ5>
原料樹脂Mと発泡剤が溶融混練されてなる発泡樹脂は、シリンダ43の樹脂押出口から押し出され、連結管61を通じてアキュームレータ45内に注入される。アキュームレータ45は、シリンダ46とその内部で摺動可能なピストン47を備えており、シリンダ46内に溶融された原料樹脂Mが貯留可能になっている。そして、シリンダ46内に発泡樹脂が所定量貯留された後にピストン47を移動させることによって、連結管62を通じて発泡樹脂をTダイ5内に設けられたスリットから押し出して垂下させて2つの樹脂シート2sを形成する。
【0042】
<一対の金型71,72>
一対の樹脂シート2sは、一対の金型71,72間に導かれる。図6及び図7に示すように、一対の金型71,72には、それぞれ多数の減圧吸引孔(不図示)が設けられており、樹脂シート2sを減圧吸引して一対の金型71,72に沿った形状に賦形することが可能になっている。金型71,72は、凹部71c,72cを有する形状になっており、凹部71c,72cを取り囲むようにピンチオフ部71p,72pが設けられている。後述の型締工程において、ピンチオフ部71p,72pによって樹脂シート2sが食い切られる。
【0043】
3-2.製造方法の流れ
成形体2の製造方法は、垂下工程と、賦形工程と、インサート工程と、型締工程とを備える。以下、詳細に説明する。
【0044】
<垂下工程>
垂下工程では、一対の金型71,72の間に2つの樹脂シート2sを垂下させる。具体的には、図6及び図7に示すように、断熱部材22と蓄熱部材23とを一体化したインサート部材24を、一対の金型71,72間に配置し、インサート部材24の両面に2つの樹脂シート2sを垂下させる。
【0045】
そして、一対の金型71,72間に、溶融状態の発泡樹脂をTダイ5のスリットから押し出して垂下させて形成した一対の樹脂シート2sを垂下する。本実施形態では、Tダイ5から押し出された一対の樹脂シート2sをそのまま使用するダイレクト真空成形が行われるので、一対の樹脂シート2sは、成形前に室温にまで冷却されて固化されることがなく、固化された一対の樹脂シート2sが成形前に加熱されることもない。ここで、図6及び図7では、垂下工程中において、一対の樹脂シート2sの間にインサート部材24を図示しているが、垂下工程では、インサート部材24を他の場所に待機させておいてもよい。
【0046】
<賦形工程>
次に、一対の樹脂シート2sをそれぞれ一対の金型71,72の一部に当接させた後、一対の金型71,72の両方によって2枚の樹脂シート2sを減圧吸引して一対の金型71,72に沿った形状に賦形する。
【0047】
<インサート工程及び型締工程>
次に、インサート工程において、インサート部材24を一対の樹脂シート2sに溶着させる。そして、図8に示すように、型締工程において、一対の金型71,72を型締めする。すなわち、インサート工程において、蓄熱部材23は、断熱部材22と、2つの樹脂シート63a,63bとに挟まれた位置に配置される。最後に、一対の金型71,72から成形体を取り出し、バリ2bを除去することによって、図5に示される成形体2が得られる。
【0048】
4.変形例
第4節では、断熱容器1、成形体2等に係る変形例について説明する。すなわち、下記のような態様によって断熱容器1や成形体2を実施してもよい。
【0049】
断熱容器1はヒンジ15を備えるものであった。しかし、ヒンジ15を介して断熱容器1を開閉するのは一例であって、他にも上面パネル11の各側面に、長手側面パネル14の肉厚程度の幅の溝を形成し、長手側面パネル14に嵌合してもよい。また、上面パネル11の下面の周囲に板状の磁性体の材料を貼付し、対向する長手側面パネル14の上面に板状の鉄等の磁性体を貼付して、上面パネル11を長手側面パネル14に取り付けてもよい。
【0050】
断熱容器1の形状は直方体であるが、これに限らず、多面体の構造をしてもよい。上面パネル11と下面パネル12が四角形に限らず、五角形、六角形などの多角形でもよい。また、断熱容器1の形状は、直方体等ではなく、円筒でもよい。物品が円筒形状であれば、長手側面パネル14の有する蓄熱部材23から均等に効果を得られる。
【0051】
成形体2として、長手側面パネル14を例に説明した。しかしながら、上面パネル11、下面パネル12、短手側面パネル13、及び長手側面パネル14の少なくとも1つに対して、成形体2を採用すればよい。ただし、上面パネル11、下面パネル12、短手側面パネル13、及び長手側面パネル14のすべてに成形体2を用いるとコストがかさむため、費用対効果の面では、前述の長手側面パネル14、又は上面パネル11に成形体2を採用することが好ましい。
【0052】
5.結言
このように、内部を所定の温度に保つことが可能で、利用の度に蓄熱部材の取り外しが不要な断熱容器を実現するための成形体を提供することができる。
【0053】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記成形体において、前記断熱部材は、凹部を備え、前記蓄熱部材は、前記凹部に配置されるもの。
前記成形体において、前記断熱部材の厚さをDとし、前記蓄熱部材の厚さをdとすると、(d/D)の値は、0.05~0.9であるもの。
前記成形体において、平面視において、前記断熱部材の面積をS1とし、前記蓄熱部材の面積をS2とすると、(S2/S1)の値は、0.05~0.9であるもの。
断熱容器であって、物品を収容可能な収容空間を有し、且つ成形体によって構成され、前記成形体は、中空の樹脂成形体と、断熱部材と、蓄熱部材とを備え、前記断熱部材は、前記樹脂成形体の内部に配置され、前記蓄熱部材は、前記断熱部材と前記樹脂成形体とに挟まれた位置に配置され、前記収容空間において、前記蓄熱部材が対向するように設けられるもの。
もちろん、この限りではない。
【0054】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 :断熱容器
11 :上面パネル
12 :下面パネル
13 :短手側面パネル
14 :長手側面パネル
15 :ヒンジ
16 :カードホルダ
17 :凹取手部
18 :積載固定部
18a :上面凸部
18b :下面凹部
19 :ロック部材
2 :成形体
2b :バリ
2s :樹脂シート
21 :樹脂成形体
22 :断熱部材
221 :凹部
23 :蓄熱部材
24 :インサート部材
3 :成形機
4 :樹脂供給装置
41 :ホッパー
42 :押出機
43 :シリンダ
45 :アキュームレータ
46 :シリンダ
47 :ピストン
5 :Tダイ
61 :連結管
62 :連結管
63a :樹脂シート
63b :樹脂シート
71 :金型
71c :凹部
71p :ピンチオフ部
72 :金型
72c :凹部
72p :ピンチオフ部
M :原料樹脂
S :収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8