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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】製袋充填方法、製袋充填システム
(51)【国際特許分類】
   B65B 9/213 20120101AFI20231109BHJP
   B65B 55/10 20060101ALI20231109BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20231109BHJP
   B65B 9/13 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B65B9/213
B65B55/10 A
B65B55/04 B
B65B9/13
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019216595
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084678
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】上杉 知宏
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/144536(WO,A1)
【文献】特開2007-015725(JP,A)
【文献】特開2005-082219(JP,A)
【文献】特開2010-132332(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03009362(EP,A1)
【文献】特開2014-166869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 9/213
B65B 55/10
B65B 55/04
B65B 9/13
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製袋充填方法であって、
殺菌工程と、乾燥工程と、圧着工程と、製袋充填工程を備え、
前記殺菌工程では、紙基材を含まず、かつ接着層を有する筒状積層フィルムが扁平化されて構成される多重積層フィルムであって、互いに対向する内側積層フィルムと外側積層フィルムを有する多重積層フィルムを殺菌剤に接触させることによって前記多重積層フィルムを殺菌し、
前記製袋充填工程では、前記殺菌後の前記多重積層フィルムをヒートシールすることによって下端が閉じた筒状にして形成した筒状体内に内容物を充填した後に前記筒状体の上端をヒートシールして密閉し、
前記乾燥工程および前記圧着工程は、前記殺菌工程の後であって前記製袋充填工程の前に実行され、
前記乾燥工程では、エアーの吹き付けによって前記多重積層フィルムの表面の液滴を除去した後、外部よりも高温とされた内部空間を有する乾燥装置に前記多重積層フィルムを通過させ、
前記圧着工程は第1圧着工程と、第2圧着工程を含み、
前記第1圧着工程は、前記乾燥工程の前に実行され、
前記第1圧着工程では、第1の一対の圧着部材で前記多重積層フィルムを挟むことにより、前記内側積層フィルムと前記外側積層フィルムを圧着し、
前記第2圧着工程では、前記乾燥装置の内部に配置された第2の一対の圧着部材で前記多重積層フィルムを挟むことにより、前記内側積層フィルムと前記外側積層フィルムを圧着する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記内側積層フィルム及び前記外側積層フィルムのそれぞれは、添加剤を含有する内層と、前記添加剤を含有していない外層を含んでおり、
前記筒状体を構成する前記多重積層フィルムのうち、前記外側積層フィルムの前記外層は、前記筒状体の外側の最表面に位置し、前記内側積層フィルムの前記外層は、前記内容物と接する、方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
前記殺菌剤は、殺菌液であり、
前記殺菌工程は、前記多重積層フィルムを前記殺菌液に浸漬させることによって行う、方法。
【請求項4】
製袋充填システムであって、
殺菌装置と、乾燥装置と、ブロー装置と、製袋充填装置と、第1の一対の圧着部材と、第2の一対の圧着部材を備え、
前記殺菌装置では、紙基材を含まず、かつ接着層を有する筒状積層フィルムが扁平化されて構成される多重積層フィルムであって、互いに対向する内側積層フィルムと外側積層フィルムを有する多重積層フィルムを殺菌剤に接触させることによって前記多重積層フィルムを殺菌し、
前記第1の一対の圧着部材は、前記殺菌装置と前記ブロー装置との間に配置されており、前記殺菌後の前記多重積層フィルムを挟むことにより、前記内側積層フィルムと前記外側積層フィルムを圧着し、
前記ブロー装置は、前記殺菌装置と前記乾燥装置との間に配置されており、前記多重積層フィルムにエアーを吹き付けることによって前記多重積層フィルムの表面の液滴を吹き飛ばして除去し、
前記乾燥装置では、外部よりも高温とされた内部空間に前記殺菌後の前記多重積層フィルムを通過させることによって、前記多重積層フィルムの表面を乾燥させ、
前記第2の一対の圧着部材は、前記乾燥装置の内部に配置されており、前記殺菌後の前記多重積層フィルムを挟むことにより、前記内側積層フィルムと前記外側積層フィルムを圧着し、
前記製袋充填装置では、前記第2の一対の圧着部材を通過した前記多重積層フィルムをヒートシールすることによって下端が閉じた筒状にして形成した筒状体内に内容物を充填した後に前記筒状体の上端をヒートシールして密閉する、システム。
【請求項5】
請求項に記載の製袋充填システムであって、
前記内側積層フィルム及び前記外側積層フィルムのそれぞれは、添加剤を含有する内層と、前記添加剤を含有していない外層を含んでおり、
前記筒状体を構成する前記多重積層フィルムのうち、前記外側積層フィルムの前記外層は、前記筒状体の外側の最表面に位置し、前記内側積層フィルムの前記外層は、前記内容物と接する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製袋充填方法及び製袋充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接着層を有する積層フィルムを過酸化水素水からなる殺菌剤に接触させることによって殺菌した後に、積層フィルムに対して製袋充填を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-81142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、積層フィルムの接着層が殺菌剤に接触すると、積層フィルムに剥がれが生じてしまう場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、積層フィルムの剥がれを抑制可能な製袋充填方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、製袋充填方法であって、殺菌工程と、製袋充填工程を備え、前記殺菌工程では、接着層を有する筒状積層フィルムが扁平化されて構成される多重積層フィルムを殺菌剤に接触させることによって前記多重積層フィルムを殺菌し、前記製袋充填工程では、前記殺菌後の前記多重積層フィルムをヒートシールすることによって下端が閉じた筒状にして形成した筒状体内に内容物を充填した後に前記筒状体の上端をヒートシールして密閉する、方法が提供される。
【0007】
本発明では、筒状積層フィルムが扁平化されて構成される多重積層フィルムを殺菌剤に接触させている。このような多重積層フィルムは、幅方向の端縁において接着層が露出しないので、接着層が殺菌剤に接触することがない。このため、殺菌剤によって積層フィルムに剥がれが生じることが抑制される。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記殺菌剤は、殺菌液であり、前記殺菌工程は、前記多重積層フィルムを前記殺菌液に浸漬させることによって行う、方法である。
好ましくは、前記記載の方法であって、前記多重積層フィルムは、互いに対向する内側積層フィルムと外側積層フィルムを備え、前記殺菌工程の後であって前記製袋充填工程の前に、前記内側積層フィルムと前記外側積層フィルムを圧着する圧着工程を備える、方法である。
好ましくは、製袋充填システムであって、殺菌装置と、製袋充填装置を備え、前記殺菌装置では、接着層を有する筒状積層フィルムが扁平化されて構成される多重積層フィルムを殺菌剤に接触させることによって前記多重積層フィルムを殺菌し、前記製袋充填装置では、前記殺菌後の前記多重積層フィルムをヒートシールすることによって下端が閉じた筒状にして形成した筒状体内に内容物を充填した後に前記筒状体の上端をヒートシールして密閉する、システムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、筒状積層フィルム2の層構成を示す図であり、図1Bは、図1A中の領域Bの拡大図である。
図2図2Aは、多重積層フィルム1の層構成を示す図であり、図2Bは、図2A中の領域Bの拡大図である。
図3図3Aは、包装袋10の斜視図である。図3Bは、縦シール部22近傍の断面図である。
図4】製袋充填の方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.多重積層フィルム1
図1図2に示すように、多重積層フィルム1は、筒状積層フィルム2が扁平化されて構成される。図1に示すように、筒状積層フィルム2は、筒状の積層フィルムであり、内層2aと、接着層2bと、中間層2cと、接着層2dと、外層2eを備える。内層2a、中間層2c、外層2eは、接着層2b,2dによって互いに接着されている。
【0012】
図2に示すように、多重積層フィルム1は、互いに対向する内側積層フィルム11と外側積層フィルム12を備える。内側積層フィルム11と外側積層フィルム12は、それぞれ、層2a~2eに由来する層11a~11e及び12a~12eを備える。内層11a、中間層11c、外層11eは、接着層11b,11dによって互いに接着されている。内層12a、中間層12c、外層12eは、接着層12b,12dによって互いに接着されている。
【0013】
内側積層フィルム11と外側積層フィルム12は、幅方向の端縁1aにおいて互いに繋がっている。このため、多重積層フィルム1は、幅方向の端縁1aにおいて接着層11b,12b,11d,12d(以下、接着層11b等)が露出せず、後述する殺菌工程において、接着層11b等が殺菌剤に接触することがないので、殺菌剤によって、多重積層フィルム1を構成する積層フィルム11,12に剥がれが生じることが抑制される。また、特許文献1のような幅方向の端縁において接着層が露出した構成だと、端縁から層間に殺菌剤が侵入する虞があるが、本実施形態ではそのような虞がない。さらに、特許文献1の構成では、積層フィルムの剥がれを抑制するために、接着強度が特に高い特殊な接着剤を用いる場合があるが、このような接着剤を用いると積層フィルムの柔軟性が低減されて、積層フィルムがゴワゴワになってしまう場合がある。このような積層フィルムを用いて製袋充填を行って包装袋10(図3を参照)を作製すると、包装袋10に折れ曲がりが生じやすく、折れ曲がりの部位において包装袋10が破れやすくなる場合がある。一方、本実施形態では、接着層11b等が殺菌剤に接触しないので、特殊な接着剤を用いる必要がなく、包装袋10の破れの発生が抑制される。
【0014】
多重積層フィルム1は、一例では、共押出成形によって形成された筒状パリソンを膨張させて(つまり、インフレーション成形することによって)筒状積層フィルム2を形成し、筒状積層フィルム2を押し潰してして扁平化することによって形成することができる。筒状積層フィルム2は、例えば、一対の圧着部材(例:ローラ)で挟むことによって扁平化することができる。これによって、端縁1aで繋がった内側積層フィルム11と外側積層フィルム12で構成される多重積層フィルム1が得られる。一対の圧着部材によってフィルム11,12が互いに圧着されるので、フィルム11,12の内層11a,12aは互いに密着(疑似接着)している。なお、図2では、図示の便宜上、内層11a,12aを離間させて表している。多重積層フィルム1は、ロール状に巻かれて、図4に示すロール状原反Fとなる。多重積層フィルム1を用いた製袋充填方法では、多重積層フィルム1はロール状原反Fが巻き戻されて供給されることが好ましい。多重積層フィルム1の厚さは、例えば20~300μmであり、70~140μmが好ましい。
【0015】
内層11a,12a及び外層11e,12eは、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂で構成されることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン一エチレン共重合体等のポリオレフィン樹脂、比較的低融点あるいは低軟化点のポリアミドあるいはコポリアミド樹脂、ポリエステルあるいはコポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂などが挙げられる。
【0016】
内層11a,12aがヒートシール性を有する場合、多重積層フィルム1に対してヒートシールを行って多重積層フィルム1を袋状にしたときに、ヒートシール部(図2の縦シール部22及び横シール部23,24)において内層11a,12aが溶着されてヒートシール部の剛性が向上する。内層11a,12aの溶着が不要な場合は内層11a,12aは省略可能である。
【0017】
多重積層フィルム1を用いて製袋充填したときに、内層11a,12aは内容物に接触することがなく、内側積層フィルム11の外層11eは、内容物に接触する。このため、内容物へ添加剤が移行することを抑制すべく、外層11eを構成する材料は無添加であることが好ましい。特に、内容物が、牛乳のように、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」の対象となっているものである場合には、外層11eを構成する材料を無添加にする技術的意義が顕著である。一方、多重積層フィルム1の柔軟性を向上させる等の目的で、内層11a,12aには柔軟剤などの添加剤を添加してもよい。
【0018】
中間層11c,12cは、内層11a,12a及び外層11e,12eよりも融点が高い材料で構成されることが好ましい。この場合、内層11a,12a及び外層11e,12eは溶融するが、中間層11c,12cが溶融しない温度でヒートシールすることによって、安定してヒートシールを行うことができる。このような材料としては、ポリアミドを含有する樹脂が挙げられる。中間層11c,12cの構成樹脂は、ポリアミドのみであってもよく、その他の樹脂を含有していてもよい。その他の樹脂としては、中間層11c,12cの剛性を高める樹脂が好ましい。中間層11c,12cを構成する全樹脂に対するポリアミドの含有量は、50質量%以上であることが好ましい。この含有量は、具体的には例えば、50、60、70、80、90、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
接着層11b等は、接着性を有する材料で構成されることが好ましく、接着性を有する材料としては、例えば上述したポリオレフィンにカルボキシル基を導入した酸変性ポリオレフィン(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン)を添加したものや、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられる。
【0020】
2.包装袋10
図3に示すように、本発明の一実施形態の包装袋10は、多重積層フィルム1が袋状にされて構成される。
【0021】
包装袋10は、縦シール部22と、横シール部23,24を備える。縦シール部22は、内側積層フィルム11が内面側になるようにフィルム1を筒状に湾曲させて、内側積層フィルム11の両端の外層11e同士を重ね合わせた状態で、重ね合わせ部15を端縁部を除いて帯状にヒートシールすることによって形成することができる。上記端縁部が、縦シール部22に隣接した引き剥がし部16,17となる。引き剥がし部16,17を把持して引っ張ることによって縦シール部22を容易に剥離させることができる。
【0022】
なお、包装袋10は、縦シール部22又は横シール部23,24を切り裂くことによって開封するようにしてもよい。この場合、引き剥がし部16,17は省略可能である。また、縦シール部22又は横シール部23,24に、切り込み又は切り欠きを設けて、切り裂きやすくしてもよい。
【0023】
3.製袋充填方法
次に、図4を用いて、フィルム1を用いた製袋充填方法について説明する。この方法は、殺菌装置3と製袋充填装置8を有する製袋充填システム100を用いて実施可能である。本実施形態の製袋充填方法は、殺菌工程と、製袋充填工程を備える。以下、各工程について詳細に説明する。
【0024】
3-1.殺菌工程
殺菌工程は、殺菌装置8を用いて実施することができる。殺菌工程では、ロール状原反Fから繰り出されたフィルム1を殺菌剤に接触させることによってフィルム1を殺菌する。
【0025】
具体的には、まず、ロール状原反Fから繰り出されたフィルム1は、ローラ4aを経て殺菌装置3に導かれる。ロール状原反Fから殺菌装置3までの経路途中にはセンサ119が配されており、フィルム1に長さ方向において一定間隔で印刷されたレジマークを検知して、製袋充填システム100の軌道上に一定の長さのフィルム1を一定の時間間隔で送り出せるようになっている。また、ロール状原反Fと殺菌装置3の間に横シール機を配置し、フィルム1の長手方向(フィルム1の流れ方向)の端部を横シールするようにしてもよい。これによって、フィルム1の長手方向の端部から、内側積層フィルム11と外側積層フィルム12の間に殺菌剤が侵入することが抑制することができる。一方、フィルム1の長手方向の端部が殺菌剤に接触しないようにフィルム1を製袋充填システム100に設置してもよい。この場合、ロール状原反Fと殺菌装置3の間の横シール機が不要である。
【0026】
殺菌装置3は、フィルム1の殺菌が可能な装置であり、殺菌剤を含む液体である殺菌液3a中にフィルム1を浸漬させることによってフィルム1を殺菌するものであってもよく、殺菌剤のミスト又はガスをフィルム1に接触させることによってフィルム1を殺菌するものであってもよい。殺菌剤としては、過酸化水素が例示される。殺菌装置3内では、フィルム1は、ローラ4b,4cによってガイドされ、乾燥装置7に向かって移動する。
【0027】
ところで、ロール状原反Fから繰り出された直後のフィルム1では、内側積層フィルム11と外側積層フィルム12が密着した状態になっているが、フィルム1が殺菌装置3を通過する際に、内側積層フィルム11と外側積層フィルム12の密着度が低下してしまう場合がある。内側積層フィルム11と外側積層フィルム12の密着度が低下すると、フィルム1を袋状にする際に不具合が生じる原因となる。
【0028】
そこで、本実施形態では、殺菌工程の後であって製袋充填工程の前に、内側積層フィルム11と外側積層フィルム12を圧着する圧着工程を行う。この工程は、具体的には、一対の圧着部材(例:ローラ)5でフィルム1を挟むことによって行うことができる。圧着工程を行うことによって製袋の際の不具合の発生を低減することができる。本実施形態では、一対の圧着部材5を二箇所に設けているが、一箇所又は三箇所以上に設けてもよい。
【0029】
また、殺菌工程の後であって製袋充填工程の前に乾燥工程を行うことが好ましい。この工程を行うことによって、殺菌工程においてフィルム1に水分や殺菌剤が付着した場合でも、包装袋10内に意図しない水分や殺菌剤が混入することを抑制することができる。
【0030】
本実施形態では、乾燥工程は、ブロー装置6と、乾燥装置7によって行われる。ブロー装置6では、エアー6aをフィルム1に吹き付けることによって、フィルム1の表面の水滴を吹き飛ばして除去する。ブロー装置6は、フィルム1の両側のそれぞれに設けられており、フィルム1の両面の水滴除去が可能になっている。
【0031】
乾燥装置7の内部空間7aは、乾燥装置7の外部よりも高温になっており、フィルム1が内部空間7aを通過する間に乾燥するようになっている。フィルム1は、入口7bを通じて内部空間7a内に入り、内部空間7a内ではローラ4d,4e,4fによって案内されて、出口7cを通じて内部空間7aから出るようになっている。
【0032】
乾燥装置7から出たフィルム1は、ローラ4gによってフォーマ112に導かれる。
【0033】
3-2.製袋充填工程
製袋充填工程は、製袋充填装置8を用いて実施することができる。製袋充填工程では、殺菌後のフィルム1をヒートシールすることによって下端が閉じた筒状にして形成した筒状体13内に内容物Wを充填した後に筒状体13の上端をヒートシールして密閉する。以下、この工程を詳細に説明する。
【0034】
<フィルム1を筒状にする第1工程>
フィルム1は、フォーマ112を通過する間に筒状に湾曲されて、湾曲した先端の両側縁部が重ね合わされた形態(つまり、内側積層フィルム11の両端の外層11e同士が重ね合わされた形態)となる。重ね合わされた部分には重ね合わせ部15が形成される。
【0035】
<縦シール部22を形成する第2工程>
次に、フィルム1の重ね合わせ部15を縦シール機113にてヒートシールし、縦シール部22を形成する。縦シール機113は、一対のシールバーを備え、フィルム1が一定の時間間隔で移動するタイミングに合わせて、重ね合わせ部15を一対のシールバーで所定時間挟持することでヒートシールを行う。
【0036】
<下側の横シール部23を形成する第3工程>
次に、開閉自在なしごきロール115を閉じて、フィルム1から形成された筒状体13をしごく。これにより筒状体13が扁平化する。そして、扁平化した筒状体13の所定位置を横シール機116にてヒートシールし、横シール部23を形成する。横シール機116は、一対のシールバーを備え、上記所定位置を一対のシールバーで所定時間挟持することでヒートシールを行う。これによって、筒状体13の下端が閉じられる。
【0037】
<内容物を充填する第4工程>
次に、しごきロール115を開いたのち、ホッパ111により所定量の内容物Wを投入して筒状体13に充填する。
【0038】
<袋上部の横シール部24を形成する第5工程>
次に、送りロール114を回転させることで、分離前の包装袋10aとともに筒状体13及びこれに続くフィルム1を所定の長さだけ繰り出す。横シール機116の一対のシールバーを所定時間閉じて、所定位置をヒートシールすることで、上側の横シール部24を形成して包装袋10を密閉するとともに、これに連なる軌道上の上流に位置する次の包装袋の下側の横シール部23を形成する。
【0039】
<連続状の袋の境界線を切断する第6工程>
プレス兼カッター118を閉じて分離前の包装袋10aの下側の横シール部23及びそれに連続する上側の横シール部24を挟圧するとともに、カッター刃118aで両者の境界を二分割して包装袋10をコンベア130上へ落下させる。
【0040】
これにより、内容物Wが充填された包装袋10が製造される。製造直後の状態では、包装袋10を構成する内側積層フィルム11と外側積層フィルム12は、密着された状態であり、このままでは、包装袋10に強い衝撃が加わったときに内側積層フィルム11と外側積層フィルム12が同時に損傷して内容物Wが漏出されやすい。しかし、時間の経過と共に、内容物Wが内側積層フィルム11に染み込むことによって、内側積層フィルム11と外側積層フィルム12の密着状態が解除され、両者の間に隙間ができやすくなる。この状態では、内側積層フィルム11と外側積層フィルム12が同時に損傷しにくいので、内容物Wの漏出が抑制される。
【0041】
4.その他の実施形態
・多重積層フィルム1及び筒状積層フィルム2の層構成は、適宜変更可能である。上記実施形態では、筒状積層フィルム2は、接着層を含めて5層構成であるが、これよりも少なくても多くてもよい。
【0042】
・多重積層フィルム1をヒートシールして包装袋10とする形式は、適宜変更可能である。上記実施形態では、重ね合わせ部15は、合掌貼り形式であるが、重ね合わせ部15を封筒貼り形式としてもよい。
・乾燥工程は不要な場合には省略可能である。また、乾燥工程は、ブロー装置6と乾燥装置7のうちの一方のみを用いて行ってもよく、自然乾燥によって行ってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 :多重積層フィルム
1a :端縁
2 :筒状積層フィルム
2a :内層
2b :接着層
2c :中間層
2d :接着層
2e :外層
3 :殺菌装置
3a :殺菌液
4a :ローラ
4b :ローラ
4c :ローラ
4d :ローラ
4e :ローラ
4f :ローラ
4g :ローラ
5 :圧着部材
6 :ブロー装置
6a :エアー
7 :乾燥装置
7a :内部空間
7b :入口
7c :出口
8 :製袋充填装置
10 :包装袋
10a :包装袋
11 :内側積層フィルム
11a :内層
11b :接着層
11c :中間層
11d :接着層
11e :外層
12 :外側積層フィルム
12a :内層
12b :接着層
12c :中間層
12d :接着層
12e :外層
13 :筒状体
15 :重ね合わせ部
16 :引き剥がし部
17 :引き剥がし部
22 :縦シール部
23 :横シール部
24 :横シール部
100 :製袋充填システム
111 :ホッパ
112 :フォーマ
113 :縦シール機
114 :送りロール
115 :ロール
116 :横シール機
118 :プレス兼カッター
118a :カッター刃
119 :センサ
130 :コンベア
F :ロール状原反
W :内容物
図1
図2
図3
図4