(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】電力デマンド制御方法、電力デマンド制御装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20231109BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J3/00 130
(21)【出願番号】P 2020005144
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】川口 千尋
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-284572(JP,A)
【文献】特開2002-165362(JP,A)
【文献】特開2004-129322(JP,A)
【文献】特開2017-073935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用電力量が時間経過に略比例して増加する第1電力消費設備と、
圧延処理を行うとともに、前記圧延処理に使用される電力量である圧延電力量が圧延条件に応じた負荷によって変動する第2電力消費設備と、
を含む複数の電力消費設備への供給電力を制御する電力デマンド制御方法であって、
所定のデマンド周期内に前記第1電力消費設備によって使用された第1実績使用電力量に基づいて、前記第1電力消費設備の第1デマンド予測値を求め、
所定のデマンド周期内に前記第2電力消費設備によって使用された第2実績使用電力量と、前記圧延処理で圧延される鋼板の圧下量と前記鋼板の幅と前記鋼板の圧延速度との積である圧下体積流量に比例する予測圧延電力量とに基づいて、前記第2電力消費設備の第2デマンド予測値を求め、
前記第1デマンド予測値と前記第2デマンド予測値との和が契約電力
よりも低い目標値を超過した場合に、前記複数の電力消費設備のうち予め定められた電力消費設備への供給電力を制御する
ことを特徴とする電力デマンド制御方法。
【請求項2】
使用電力量が時間経過に略比例して増加する第1電力消費設備と、
圧延処理を行うとともに、前記圧延処理に使用される電力量である圧延電力量が圧延条件に応じた負荷によって変動する第2電力消費設備と、
を含む複数の電力消費設備への供給電力を制御する電力デマンド制御装置であって、
所定のデマンド周期内に前記第1電力消費設備によって使用された第1実績使用電力量に基づいて、前記第1電力消費設備の第1デマンド予測値を求める第1算出手段と、
所定のデマンド周期内に前記第2電力消費設備によって使用された第2実績使用電力量と、前記圧延処理で圧延される鋼板の圧下量と前記鋼板の幅と前記鋼板の圧延速度との積である圧下体積流量に比例する予測圧延電力量とに基づいて、前記第2電力消費設備の第2デマンド予測値を求める第2算出手段と、
前記第1デマンド予測値と前記第2デマンド予測値との和が契約電力
よりも低い目標値を超過した場合に、前記複数の電力消費設備のうち予め定められた電力消費設備への供給電力を制御可能なデマンド制御手段と、
を含むことを特徴とする電力デマンド制御装置。
【請求項3】
使用電力量が時間経過に略比例して増加する第1電力消費設備と、
圧延処理を行うとともに、前記圧延処理に使用される電力量である圧延電力量が圧延条件に応じた負荷によって変動する第2電力消費設備と、
を含む複数の電力消費設備への供給電力を制御する電力デマンド制御装置に内蔵されたコンピュータに、
a)所定のデマンド周期内に前記第1電力消費設備によって使用された第1実績使用電力量に基づいて、前記第1電力消費設備の第1デマンド予測値を求めるステップと、
b)所定のデマンド周期内に前記第2電力消費設備によって使用された第2実績使用電力量と、前記圧延処理で圧延される鋼板の圧下量と前記鋼板の幅と前記鋼板の圧延速度との積である圧下体積流量に比例する予測圧延電力量とに基づいて、前記第2電力消費設備の第2デマンド予測値を求めるステップと、
c)前記第1デマンド予測値と前記第2デマンド予測値との和が契約電力
よりも低い目標値を超過した場合に、前記複数の電力消費設備のうち予め定められた電力消費設備への供給電力を制御するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電力消費設備への供給電力を制御する電力デマンド制御方法、およびそれに関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、製鉄所あるいは製鋼所などのように、複数の電力消費設備を備える電力需要家においては、電力会社との提携によって所定のデマンド周期内における契約電力が取り決められており、工場内には最大需要電力計(デマンド計)が設けられている。
【0003】
デマンド計によって計測された総使用電力が契約電力を超過しないように、たとえば特許文献1では、複数の電力消費設備が第1電力消費設備と第2電力消費設備とに分割されるとともに、両者のデマンド予測値がそれぞれ求められて、両デマンド予測値の和が契約電力未満で且つ契約電力に近似するように電力消費設備への供給電力が制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、上記の特許文献1に記載の技術には、デマンド予測値の予測精度に関して改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、デマンド予測値の予測精度の向上を図ることが可能な電力デマンド制御方法、およびそれに関連する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)使用電力量が時間経過に略比例して増加する第1電力消費設備と、圧延処理を行うとともに、前記圧延処理に使用される電力量である圧延電力量が圧延条件に応じた負荷によって変動する第2電力消費設備と、を含む複数の電力消費設備への供給電力を制御する電力デマンド制御方法であって、所定のデマンド周期内に前記第1電力消費設備によって使用された第1実績使用電力量に基づいて、前記第1電力消費設備の第1デマンド予測値を求め、所定のデマンド周期内に前記第2電力消費設備によって使用された第2実績使用電力量と、前記圧延処理で圧延される鋼板の圧下量と前記鋼板の幅と前記鋼板の圧延速度との積である圧下体積流量に比例する予測圧延電力量とに基づいて、前記第2電力消費設備の第2デマンド予測値を求め、前記第1デマンド予測値と前記第2デマンド予測値との和が契約電力よりも低い目標値を超過した場合に、前記複数の電力消費設備のうち予め定められた電力消費設備への供給電力を制御することを特徴とする電力デマンド制御方法。
【0008】
(2)使用電力量が時間経過に略比例して増加する第1電力消費設備と、圧延処理を行うとともに、前記圧延処理に使用される電力量である圧延電力量が圧延条件に応じた負荷によって変動する第2電力消費設備と、を含む複数の電力消費設備への供給電力を制御する電力デマンド制御装置であって、所定のデマンド周期内に前記第1電力消費設備によって使用された第1実績使用電力量に基づいて、前記第1電力消費設備の第1デマンド予測値を求める第1算出手段と、所定のデマンド周期内に前記第2電力消費設備によって使用された第2実績使用電力量と、前記圧延処理で圧延される鋼板の圧下量と前記鋼板の幅と前記鋼板の圧延速度との積である圧下体積流量に比例する予測圧延電力量とに基づいて、前記第2電力消費設備の第2デマンド予測値を求める第2算出手段と、前記第1デマンド予測値と前記第2デマンド予測値との和が契約電力未満で且つ前記契約電力よりも低い目標値を超過した場合に、前記複数の電力消費設備のうち予め定められた電力消費設備への供給電力を制御可能なデマンド制御手段と、を含むことを特徴とする電力デマンド制御装置。
【0009】
(3)使用電力量が時間経過に略比例して増加する第1電力消費設備と、圧延処理を行うとともに、前記圧延処理に使用される電力量である圧延電力量が圧延条件に応じた負荷によって変動する第2電力消費設備と、を含む複数の電力消費設備への供給電力を制御する電力デマンド制御装置に内蔵されたコンピュータに、a)所定のデマンド周期内に前記第1電力消費設備によって使用された第1実績使用電力量に基づいて、前記第1電力消費設備の第1デマンド予測値を求めるステップと、b)所定のデマンド周期内に前記第2電力消費設備によって使用された第2実績使用電力量と、前記圧延処理で圧延される鋼板の圧下量と前記鋼板の幅と前記鋼板の圧延速度との積である圧下体積流量に比例する予測圧延電力量とに基づいて、前記第2電力消費設備の第2デマンド予測値を求めるステップと、c)前記第1デマンド予測値と前記第2デマンド予測値との和が契約電力よりも低い目標値を超過した場合に、前記複数の電力消費設備のうち予め定められた電力消費設備への供給電力を制御するステップと、を実行させるためのプログラム。
【0010】
なお、上記(1)~(3)に記載の第1電力消費設備は、1つであってもよく、複数であってもよい。同様に、上記(1)~(3)に記載の第2電力消費設備も、1つであってもよく、複数であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、デマンド予測値の予測精度の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例に係るデマンド制御装置の系統図である。
【
図2】実績電力および予測電力等を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係るデマンド制御装置1の系統図である。
【0015】
たとえば冷間圧延工場内には、一定程度よりも少ない電力で稼働可能な小電力消費設備11と多量の電力(一定程度よりも多い電力)を使用する大電力消費設備12とを含む複数の電力消費設備10が設けられている。小電力消費設備11としては、各種プロセスラインおよび付帯設備などが例示され、大電力消費設備12としては、圧延設備が例示される。
【0016】
ここでは、小電力消費設備11の使用電力量は、時間経過に略比例して増加するものとする。
【0017】
圧延設備12は、鋼板の圧延処理を行う設備である。当該圧延設備12での圧延処理に使用される電力量は、圧延条件(圧延対象の鋼板の厚みH、幅Bおよび/または圧延速度V等)に応じた負荷によって変動(変化)する。圧延処理に使用される電力量は、圧延電力量などとも称される。
【0018】
電力会社から配電線を介して供給される電力は受電端2に与えられ、受電端2からの電力は、取引計器用変成器3を経て変圧器(不図示)によって変圧されて、小電力消費設備11および圧延設備12等に給電(供給)される。
【0019】
当該受電端2と取引計器用変成器3との間には遮断器4が介在しているとともに、取引計器用変成器3には取引用計器(WHM)5が接続されている。そして、当該取引用計器5によって各電力消費設備10の総使用電力が求められる(取得される)。
【0020】
取引用計器5には、総使用電力を例えば10kWH(キロワットアワー)/パルスのパルス信号に変換するパルス発信器が設けられており、当該総使用電力に対応するパルス信号は、デマンド制御手段9に入力される。また、圧延設備12と小電力消費設備11とのそれぞれの使用電力はパルス発信器付電力量計6によって電力量変化として検出されてデマンド制御手段9に与えられる(入力される)。
【0021】
また、圧延設備12の使用電力は、プロセスコンピュータなどによって実現される信号処理手段7に与えられて信号処理され、当該信号処理手段7からの使用電力量に関連する関連情報は、デマンド制御手段9に与えられる。当該関連情報は、たとえば、圧延設備12によって圧延される鋼板のコイル番号、圧延時間TM、圧延電力量Qmおよび/または停止時間等である。
【0022】
このように、デマンド制御手段9には、圧延設備12の使用電力量(kWH)と小電力消費設備11の使用電力量とがそれぞれ入力(取得)される。
【0023】
後述するように、デマンド制御手段9は、所定のデマンド周期DP(ここでは、30分周期)内に小電力消費設備11によって使用された実績使用電力量(使用電力量の実績値)Paに基づいて、小電力消費設備11のデマンド予測値Ra(kW(キロワット))を求める。また、デマンド制御手段9は、当該所定のデマンド周期DP内に圧延設備12によって使用された実績使用電力量Pb等に基づいて、圧延設備12のデマンド予測値Rb(kW)を求める。なお、ここでは、デマンド制御手段9が、各デマンド予測値Ra,Rbを求める算出手段としても機能するものとする。
【0024】
そして、デマンド制御手段9は、各デマンド予測値Ra,Rbの和R(=Ra+Rb)が契約電力(kW)未満で且つ当該契約電力に近似するように、複数の電力消費設備10のうち予め定められた電力消費設備への供給電力を制御する。たとえば、デマンド制御手段9は、当該契約電力よりも数%(たとえば3%)低い値である目標値をデマンド予測値Rが超過した際に、警報器8(ブザーまたは警報ランプ等)を動作させてオペレータ(操作者)に圧延設備12での鋼板の圧延速度Vを減速させる。
【0025】
なお、電力デマンド制御装置1には、CPU等を備えるコンピュータ(コンピュータシステム)が内蔵されており、当該コンピュータにおいて所定のソフトウエアプログラムが実行されることによって、デマンド制御手段9等の処理部が実現される。
【0026】
次に、
図2を参照して、デマンド予測値R(=Ra+Rb)の算出方法等について説明する。
【0027】
図2において、
T0は、所定のデマンド周期DPの開始時刻、
T1は、現在時刻(ここでは、次コイルの先端の溶接点が圧延設備12直前の位置に到達した時刻)、
T2は、時刻T1から所定時間ΔT経過後の時刻(ここでは、次コイルの圧延処理の完了予想時刻)、
TEは、所定のデマンド周期DPの終了時刻、
Paは、デマンド周期DP内において時刻T1の時点で(時刻T0から時刻T1までの間に)小電力消費設備11によって使用された実績使用電力量、
Pbは、デマンド周期DP内において時刻T1の時点で圧延設備12によって使用された実績使用電力量、
Qaは、時刻T2の時点で小電力消費設備11によって使用される予測使用電力量、
Qbは、時刻T2の時点で圧延設備12によって使用される予測使用電力量、
Qm1は、時刻T1から時刻T2までの期間ΔT内に圧延設備12での圧延処理に使用される予測圧延電力量、
Pkは、デマンド周期DPに対応する契約電力量(ここでは、契約電力/2)、
Qkは、デマンド周期DPでの目標電力量(たとえば、0.97Pk)、
を示している。
【0028】
まず、小電力消費設備11のデマンド予測値(デマンド周期DPの終了時刻TEでの最終デマンド予測値)Raは、下記の式(1)によって求められる。
【0029】
【0030】
なお、式(1)の右辺の括弧内の数値に対して値「60/DP」を乗じているのは、デマンド周期DP内の使用電力量(kWH)を使用電力(kW)に換算するためである。ここでは、デマンド周期DPが30分であるため、式(1)の右辺の括弧内の数値が2倍(=60/30)される。
【0031】
また、圧延設備12のデマンド予測値(最終デマンド予測値)Rbは、下記の式(2)によって求められる。
【0032】
【0033】
式(2)のQmは、現在時刻T1からデマンド周期DPの終了時刻TEまでの期間(=TE-T2)内に圧延設備12によって使用される予測圧延電力量(kWH)である。
【0034】
詳細には、予測圧延電力量Qmは、現在時刻T1からデマンド周期DPの終了時刻TEまでの間(デマンド周期DPの残り時間内)に圧延設備12に通板される複数のコイル(複数の圧延対象コイル)のそれぞれに関する圧延処理での予測圧延電力量Qmi(i=1,...,n(nは圧延対象コイルの数))の合計値である。
【0035】
各コイルに関する予測圧延電力量Qmiは、次のようにして求められる。ここでは、現在時刻T1後における1番目(i=1)のコイル(次コイル)に関する予測圧延電力量Qm1について説明する。
【0036】
まず、次コイルの圧延時間(予想圧延時間)TMが、下記の式(3)を用いて求められる。なお、下記の式(3)のLは次コイルの出側コイル長であり、Vは圧延速度である。
【0037】
【0038】
次に、次コイルに関する予測圧延電力量(次コイルの圧延処理に使用されると予測される電力量)Qm1が、下記の式(4)によって求められる。
【0039】
【0040】
上記の式(4)において、Fは圧下体積流量(次述)であり、Mは比例定数(後述)である。
【0041】
圧下体積流量Fは、圧延処理で圧延される鋼板(圧延対象の鋼板)の圧下量ΔHと当該鋼板の幅(短手方向の長さ)Bと当該鋼板の圧延速度Vとの積(=ΔH×B×V)により算出される。圧下量ΔHは、次コイルの入側厚みH1と出側厚みH2との差分(=H2-H1)であり、所定の圧下率rによって求められる。
【0042】
詳細には、圧延対象の鋼板の圧下量ΔHと幅Bとの積(ΔH×B)は、圧延処理による当該鋼板の断面積(鋼板の移動方向を垂線とする断面の面積)の変化量であり、当該鋼板の圧下体積流量Fは、この変化量(ΔH×B)に圧延速度Vを乗じて得られる体積流量(ΔH×B×V)である。
【0043】
圧延設備12に電力が供給された結果として当該鋼板が圧延される(圧下量ΔH分の断面積変化が生じる)ことから、本願出願人は、次コイルの圧下体積流量Fは単位時間あたりの圧延設備12の仕事(すなわち、電力(kW))に比例するとの思想を案出した。そして、これに上記の式(3)で求めた圧延時間TMを乗じることによって、次コイルの圧延処理での予測圧延電力量Qm1(kWH)が求められる。
【0044】
なお、式(4)における比例定数Mは、データテーブルにおいて、鋼種およびロール肌毎(鋼種とロール肌との組合せ毎)に経験に基づいて予め定められている。たとえば、次コイルが第1の鋼種且つ第1のロール肌である場合は、データテーブルにおいて第1の鋼種と第1のロール肌との組合せに関して予め定められた比例定数Mが用いられる。
【0045】
このようにして、次コイルの圧下体積流量Fに基づいて、次コイルに関する予測圧延電力量Qm1が求められる。
【0046】
同様にして、現在時刻T1後における2番目(i=2)以降の圧延対象コイルに関しても予測圧延電力量Qmiが求められる。
【0047】
そして、複数の圧延対象コイルのそれぞれに関する圧延処理での予測圧延電力量Qmi(i=1,...,n)の合計値Qmが求められ、上記の式(2)を用いてデマンド予測値Rbが求められる。
【0048】
これにより、デマンド予測値R(=Ra+Rb)を求めることができる。
【0049】
以上のように、圧延処理で圧延される鋼板の圧下体積流量Fに比例する予測圧延電力量Qmに基づいて、圧延設備12のデマンド予測値Rbが求められる。詳細には、圧下体積流量Fは、圧延処理にて圧延される鋼板の圧下量ΔHと幅Bと圧延速度Vとの積であり、圧延対象のコイル(コイルの鋼種等)によって変動する。このような圧下体積流量Fが、現在時刻T1以降に圧延される複数の圧延対象コイルのそれぞれに関して求められ、各圧下体積流量Fに応じた予測圧延電力量Qmiが求められる。そして、その合計値Qmに基づいて圧延設備12のデマンド予測値Rbが求められる。したがって、デマンド予測値Rの予測精度の向上を図ることが可能である。
【0050】
以上説明した実施形態によれば、以下のような発明を提供することができる。
【0051】
本発明の電力デマンド制御方法は、
使用電力量が時間経過に略比例して増加する第1電力消費設備(例えば、小電力消費設備11)と、
圧延処理を行うとともに、前記圧延処理に使用される電力量である圧延電力量が圧延条件に応じた負荷によって変動する第2電力消費設備(例えば、圧延設備12)と、
を含む複数の電力消費設備への供給電力を制御する電力デマンド制御方法であって、
所定のデマンド周期内に前記第1電力消費設備によって使用された第1実績使用電力量(例えば、実績使用電力量Pa)に基づいて、前記第1電力消費設備の第1デマンド予測値(例えば、デマンド予測値Ra)を求め、
所定のデマンド周期内に前記第2電力消費設備によって使用された第2実績使用電力量(例えば、実績使用電力量Pb)と、前記圧延処理で圧延される鋼板の圧下量と前記鋼板の幅と前記鋼板の圧延速度との積である圧下体積流量(例えば、圧下体積流量F)に比例する予測圧延電力量(例えば、予測圧延電力量Qm)とに基づいて、前記第2電力消費設備の第2デマンド予測値(例えば、デマンド予測値Rb)を求め、
前記第1デマンド予測値と前記第2デマンド予測値との和が契約電力よりも低い目標値を超過した場合に、前記複数の電力消費設備のうち予め定められた電力消費設備への供給電力を制御する
ことを特徴とするものである。
【0052】
なお、本発明は、上記の好ましい実施形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 デマンド制御装置
10 デマンド制御手段
11 小電力消費設備
12 圧延設備
Pa 時刻T1の時点で小電力消費設備によって使用された実績使用電力量
Pb 時刻T1の時点で圧延設備によって使用された実績使用電力量
Pk デマンド周期に対応する契約電力量
Qa 時刻T2の時点で小電力消費設備によって使用される予測使用電力量
Qb 時刻T2の時点で圧延設備によって使用される予測使用電力量
Qm1 時刻T1から時刻T2までの期間ΔT内に圧延設備にて使用される予測圧延電力量