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  • 特許-焼結鉱の製造方法および焼結機 図1
  • 特許-焼結鉱の製造方法および焼結機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法および焼結機
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/20 20060101AFI20231109BHJP
   F27B 21/08 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C22B1/20 J
C22B1/20 B
F27B21/08 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020014357
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021120479
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 一昭
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-026304(JP,A)
【文献】特開昭62-060829(JP,A)
【文献】特開2018-178148(JP,A)
【文献】特開平06-287646(JP,A)
【文献】特開昭63-213624(JP,A)
【文献】特開2013-082980(JP,A)
【文献】特開2012-026016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
F27B 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結機内に、凝結材を含む焼結鉱の原料を装入する際に、層高方向において二段となるように装入して、下段原料充填層および上段原料充填層を形成する工程と、
前記下段原料充填層および前記上段原料充填層を、下段用点火器および上段用点火器により、それぞれ点火するとともに、前記下段原料充填層の下方から酸素含有ガスを吸引する工程とを含み、
前記上段原料充填層と前記下段原料充填層のうち、前記下段原料充填層に対してのみ、表層への凝結材の散布を行い、
前記散布により、前記下段原料充填層における全凝結材配合量のうち2.0質量%以上を、前記下段用点火器により点火された前記下段原料充填層の表層に供給する、
ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
前記下段原料充填層の表層に散布して供給する凝結材量は、前記下段原料充填層における全凝結材配合量のうち11.0質量%未満とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
循環移動する複数の焼結パレットと、
前記焼結パレット内に、一部の凝結材を除いた下段系配合原料を装入して下段原料充填層を形成する下段用ホッパと、
前記下段原料充填層上に上段系配合原料を装入して上段原料充填層を形成する上段用ホッパと、
前記下段原料充填層の表面および前記上段原料充填層の表面にそれぞれ点火する下段用点火器および上段用点火器と、
前記下段原料充填層中および前記上段原料充填層中の酸素含有ガスを下方に吸引する下方吸引装置と
前記焼結パレットが前記下段用点火器から前記上段用ホッパまで搬送される区間内に配設され、前記下段原料充填層の表層に、前記一部の凝結材を散布して供給する凝結材散布装置と、を備え
前記上段原料充填層と前記下段原料充填層のうち、前記下段原料充填層に対してのみ、表層への凝結材の散布を行う、
ことを特徴とする焼結機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉原料用の焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法および焼結機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高炉製銑の主原料は、焼結鉱である。焼結鉱は、通常、次のように製造される。まず、焼結鉱製造用の原料として、鉄鉱石(粉)等の鉄原料、スケール・製鉄ダスト等の含鉄雑原料、橄欖岩等のMgO含有副原料、石灰石等のCaO含有副原料、返鉱、燃焼熱によって焼結鉱を焼結(凝結)させる燃料となる炭材(凝結材)などを、所定の割合で混合する。混合した配合原料を造粒して配合原料造粒物とする。次に、配合原料造粒物を、ホッパより、下方吸引式のドワイトロイド(DL)式焼結機のパレット(焼結パレット)上に搭載して、原料充填層を形成する。形成した原料充填層の上部(表面)から、点火炉(点火器)により原料充填層中の炭材に点火する。そして、パレットを連続的に移動させながらパレットの下方から空気を吸引する。吸引により原料充填層内に酸素を供給し、原料充填層中の炭材の燃焼を上部から下部に向けて進行させて、炭材の燃焼熱により原料充填層を順次焼結させる。焼結により得られた焼結部(シンターケーキ)は、所定の粒度に粉砕、篩分け等により整粒され、高炉の原料である焼結鉱となる。
【0003】
このようなDL式焼結機による焼結鉱の製造方法において、原料充填層の形成と点火を二段以上の多段で行う多段装入多段点火焼結法が提案されている。多段装入多段点火焼結法は、造粒した配合原料を焼結機の層高方向に順次に装入して多段(二段以上)の原料充填層を形成するとともに各原料充填層の表面に点火し、下方から空気を吸引することにより、各層の焼結反応を同時並行に進行させて焼結する方法である。
【0004】
図1は、多段装入多段点火焼結法の一例である二段装入二段点火焼結法に使用するDL式焼結機の概要図である。図1を参照して、造粒した配合原料を二段に装入して、上段原料充填層(以下、上段層という)と下段原料充填層(以下、下段層という)とを形成し、上段層と下段層のそれぞれに点火して焼結を実施する二段装入二段点火焼結法について説明する。
【0005】
図1に示す例では、上段層を形成する上段用配合原料と、下段層を形成する下段用配合原料とが別系統(2系統)で準備されて、別系統でDL式焼結機100のパレット(図示は省略)上に装入される。具体的には、下段用の原料は、下段原料槽群1Dの各原料槽(1D~1D)内に貯留され、必要な種類と量の原料が所定の割合で切り出されて配合される。配合された下段用の原料(下段用配合原料)は、下段用ドラムミキサー1Aに投入されて混合され、水分が加えられて造粒される。また、上段用の原料は、上段原料槽群2Dの各原料槽(2D~2D)内に貯留され、必要な種類と量の原料が所定の割合で切り出されて配合される。配合された上段用の原料(上段用配合原料)は、上段用ドラムミキサー2Aに投入されて混合され、水分が加えられて造粒される。
【0006】
造粒された下段用配合原料(下段用配合原料造粒物)は、下段用ホッパ1Bから、床敷鉱を敷きつめたパレット上に装入されて、下段層10(下段原料充填層)を形成する。下段層10は、パレットをパレット進行方向5へ移動させることにより、下段用点火器1C下まで移動し、そこで、下段用点火器1Cにより下段層10表面の炭材に点火される。点火後、パレット下の風箱(図示は省略)を介して、下方から空気を吸引する下方吸引6により、下段層10の焼結が開始される。下段層10の焼結は、引き続く下方吸引6により下方に進行し、下段層燃焼帯10Aを形成する。
【0007】
焼結が開始された下段層10が上段用ホッパ2B下まで移動したとき、上段用ドラムミキサー2Aにより造粒された上段用配合原料(上段用配合原料造粒物)が、上段用ホッパ2Bから、点火後の下段層10上に装入されて、上段層20(上段原料充填層)を形成する。上段層20は、パレットをパレット進行方向5へ移動させることにより、上段用点火器2C下まで移動し、そこで、上段用点火器2Cにより上段層20表面の炭材に点火される。点火後、下方吸引6により、上段層20の焼結が開始される。上段層20の焼結は、引き続く下方吸引6により下方に進行し、上段層燃焼帯20Aを形成する。
【0008】
下段層10の下段層燃焼帯10A、および、上段層20の上段層燃焼帯20Aは、その後の更なる下方吸引6により、同時並行で焼結が進行し下降する。下段層燃焼帯10A、上段層燃焼帯20Aがそれぞれの層の最下部まで到達すると、炭材の燃焼による焼結が終了し、焼結部3となる。最終的に、焼結が完了した焼結部3は、パレット終端より排鉱される。
【0009】
二段装入二段点火焼結法においては、原料充填層を二段にして、二段で同時に焼結を進行させるため、生産量をほぼ倍増させることができる。また、上段層20の焼結に使用された排ガスを、下方吸引により下段層10の焼結に再使用するため、排ガス量を低減(半減)させることができる。
【0010】
多段装入多段点火焼結法については、特許文献1~3などに開示がある。特許文献1には、多段装入多段点火焼結法は各層の原料の供給比率を変えることができるため、上段層20と下段層10の原料の粒度調整などにより、歩留の向上などが得られることが記載されている。
【0011】
特許文献2や特許文献3には、二段装入二段点火焼結法の問題点として、下段層10の焼結鉱の焼結強度が低下する点が指摘されている。具体的には、二段装入二段点火焼結法においては、上述のように、上段層20の焼結に使用されて酸素分圧が低下したガス(排ガス)が、下方吸引6により下段層10に供給され、下段層10の焼結に使われる。そのため、下段層10では低酸素分圧下での焼結となる。下段層10中の炭材の燃焼が不完全となり、焼結に必要な熱量が不足する。熱量不足により、下段層10の焼結反応の進行が妨げられ、下段層10の焼結鉱の強度が低下する。
【0012】
この問題の解決方法として、特許文献2には、下段層10の焼結鉱の焼結強度を向上させるべく、焼結しようとする製鉄原料中の固定炭素濃度を全層平均で3.3%以下とし、かつ上段層20の固定炭素濃度を低く、下段層10の固定炭素濃度を高くすることが記載されている。特許文献3には、下段系の配合原料のうち、炭材以外の主配合原料を造粒機で造粒する下段系造粒工程と、下段系造粒工程の後半から主配合原料の造粒物を焼結機の下段系ホッパ内に装入する前までの間に主配合原料に炭材を投入する炭材投入工程と、主配合原料の造粒物および炭材を焼結機内に装入して、焼結鉱を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開昭47-26304号公報
【文献】特開昭62-60829号公報
【文献】特開2018-178148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献2では、固定炭素濃度の全層平均濃度に上限を設け、さらに上段層20のコークス配合比を低くするため、上段層20への供給熱量が低下し、上段層20での焼結鉱の冷間強度低下を招くことになってしまう。特許文献3には、下段系の配合原料において炭材の後添加を行うことにより、炭材がガスと接触しやすくなり、炭材の燃焼が促進されて、下段層10の焼結鉱の生産性を改善するものであるが、炭材を後添加するための設備が必要となる。
【0015】
本発明は、上記の問題に鑑みて新規に創案された焼結鉱の製造方法および焼結機である。本発明の目的は、二段装入二段点火焼結法(以下、単に二段点火焼結法ともいう。)における下段原料充填層の焼結鉱の強度低下の抑制と、歩留の改善とを可能とする焼結鉱の製造方法および焼結機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)焼結機内に、凝結材を含む焼結鉱の原料を装入する際に、層高方向において二段となるように装入して、下段原料充填層および上段原料充填層を形成する工程と、
前記下段原料充填層および前記上段原料充填層を、下段用点火器および上段用点火器により、それぞれ点火するとともに、前記下段原料充填層の下方から酸素含有ガスを吸引する工程とを含み、
前記下段原料充填層における全凝結材配合量のうち2.0質量%以上を、前記下段用点火器により点火された前記下段原料充填層の表層に散布して供給する、
ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
(2)前記下段原料充填層の表層に散布して供給する凝結材量は、前記下段原料充填層における全凝結材配合量のうち11.0質量%未満とする、
ことを特徴とする(1)に記載の焼結鉱の製造方法。
(3)循環移動する複数の焼結パレットと、
前記焼結パレット内に、一部の凝結材を除いた下段系配合原料を装入して下段原料充填層を形成する下段用ホッパと、
前記下段原料充填層上に上段系配合原料を装入して上段原料充填層を形成する上段用ホッパと、
前記下段原料充填層の表面および前記上段原料充填層の表面にそれぞれ点火する下段用点火器および上段用点火器と、
前記下段原料充填層中および前記上段原料充填層中の酸素含有ガスを下方に吸引する下方吸引装置と、を備えた下方吸引式の焼結機であって、
前記焼結パレットが前記下段用点火器から前記上段用ホッパまで搬送される区間内において、前記下段原料充填層の表層に、前記一部の凝結材を散布して供給する凝結材散布装置が配設されている、
ことを特徴とする焼結機。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、下段原料充填層の表層(表面)に凝結材を散布することにより、二段点火焼結法による生産率改善効果を維持しつつ、歩留を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】二段点火焼結法に使用するDL式焼結機の概要図である。
図2】本発明の一実施形態である二段点火焼結法に使用するDL式焼結機の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
二段点火焼結法は、上述のように、下段原料充填層(下段層10)における焼結鉱の焼結強度の低下が問題となる。本発明者は、下段層焼結鉱の強度低下が問題となる二段点火焼結法について改善手段を種々検討した結果、凝結材を下段層10表層に散布することで、二段点火法の生産率改善効果を維持したまま、下段層10の焼結鉱の強度および歩留が改善されることを見出した。本発明者は、凝結材散布の条件が異なる焼結鍋試験を行い、凝結材散布量の適切な範囲を求めた。本発明は、かかる知見に基づいて創案された。
【0020】
本発明は、二段点火焼結法において、下段層表層に凝結材(炭材)散布を行うことにより、下段層への入熱を増加させることに特徴がある。具体的には、下段層(下段原料充填層10)における全凝結材配合量のうち2.0質量%以上を、点火された下段層の表層に散布して供給する。凝結材は、点火された下段層表層上に散布されることにより昇温し、着火温度に達して燃焼する。凝結材の燃焼により下段層表層の最高到達温度が上昇し、かつ下段層表層の下方の層への熱の供給量が増加する。また、下段用点火器1Cよりも下流側で凝結材を散布することにより、下段層燃焼帯10Aのパレット進行方向5における幅が拡大する。よって、下段層焼結鉱の強度および歩留が改善する。なお、下段層の表層に散布して供給する凝結材量は、下段層における全凝結材配合量のうち11.0質量%未満とすることが好ましい。なお、これらの設定根拠については、後述する実施例で述べる。下段層表層への凝結材の散布は、パレットが下段用点火器1Cから上段用ホッパ2Bまで搬送される区間内において、下段層の表面に凝結材を散布して供給する凝結材散布装置を配設することにより実現できる。
【0021】
ここに、散布する凝結材(炭材)の種類は問わない。散布する凝結材(炭材)は、例えば、通常焼結用に不適な揮発分を多く有する石炭も使用できる。凝結材(炭材)は点火後の下段層10の表面に散布されるため、散布された凝結材(炭材)から発生する揮発分は、すでに生成している下段層燃焼帯10Aを通過する際に燃焼するため、下段層燃焼帯10Aの最高到達温度を上昇させたり、下段層燃焼帯10Aの幅を拡大させたりすることができる。また、散布された凝結材(炭材)から発生する揮発分は、上記燃焼により排ガス中に漏れることがなく、排ガスの処理工程が複雑にならないためである。
散布する凝結材の粒度は、原料中に混合される凝結材より小さいほうが好ましい。例えば、散布する凝結材には、コークス製造工程で発生する石炭であるコークスダストが好ましい。散布する凝結材の粒度が小さければ、下段用点火器1Cによる点火後の下段層表面からの受熱を容易とし、燃焼性が向上するためである。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態である二段点火焼結法を実施するDL式焼結機100Xの概要図である。DL式焼結機100Xは、図1に示す従来例のDL式焼結機100と異なり、下段用点火器1Cのパレット進行方向下流側に配設された凝結材散布装置30を備えている。凝結材散布装置30は、下段用ホッパ1Bと上段用ホッパ2Bとの間に配設され、パレットが下段用点火器1Cから上段用ホッパ2Bまで搬送される区間内において、下段層の表面に凝結材を散布して供給する装置である。なお、凝結材散布装置30は、下段用点火器1Cの下流側に設置する。下段用点火器1Cにより表面に点火された下段層に、凝結材散布装置30による凝結材が散布されることにより、下段層燃焼帯10Aが拡大する。また、凝結材の散布量は、凝結材散布装置30の切出し量によって調整される。
凝結材散布装置30は、例えば、スリップスティックコンベア(特許第2982128号)を使用できる。コークスダストのような粒度の小さい凝結材には、投入部にフードを設けてそこに気流搬送で凝結材を吹き込む構成とすることもできる。
【0023】
本発明の二段点火焼結法による焼結鉱の製造方法は、例えば、凝結材散布装置30を備えたDL式焼結機100Xを使用して実施される。本発明の二段点火焼結法による焼結鉱の製造方法は、上述した従来例による焼結鉱の製造工程に、下段用点火器により表面が点火された下段層の表層に凝結材を散布して供給する工程を加えたものである。
【0024】
本発明の一実施形態である二段点火焼結法による焼結鉱の製造方法では、下段用配合原料は、パレット内に装入されて下段層を形成する原料と、下段層表層に散布される原料とに分けられる。下段用ホッパには、下段層表層に散布される原料(一部の凝結材)を除いた下段系配合原料を供給し、下段用ホッパ内の原料(一部の凝結材を除いた下段系配合原料)を焼結パレット内に装入して、下段原料充填層を形成する。形成した下段原料充填層の表層には、凝結材散布装置により、下段層表層に散布される原料(一部の凝結材)を散布する。下段層表層に散布される原料は、下段用配合原料の全凝結材配合量のうち2.0質量%以上を含んでいる。また、下段層の表層に散布して供給する凝結材量は、下段用配合原料の全凝結材配合量のうち11.0質量%未満とすることが好ましい。
【0025】
本実施形態の焼結鉱の製造方法によれば、下段用点火器1Cにより下段層の表面が点火され、点火された下段層表層に、凝結材散布装置30により凝結材を散布する。凝結材の散布により、下段層表層の温度が上昇して下段層表層の焼結反応がより進行する。また、下段層表層の温度の上昇により、下方吸引される酸素含有ガスの温度も上昇し、下段層表層の下側部分の焼結反応もより進行する。また、下段層の表面の点火後に、凝結材を散布することにより、下段層燃焼帯10Aを拡大することができ、焼結時間を延長させることが可能となる。よって、下段層の焼結鉱の強度を改善させることができ、歩留も改善させることができる。
【0026】
なお、図2に示した焼結機の実施形態は、本発明の一例であり、上段用配合原料と下段用配合原料とを別系統で準備して、パレット上に装入する二段点火焼結法により焼結鉱を製造しているが、上段用配合原料と下段用配合原料とを一系統で準備してもよい。上段用配合原料と下段用配合原料の原料配合や組成を、同一としてもよいからである。
【実施例
【0027】
本発明の効果を実証する実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
発明者は、DL焼結機による焼結を模擬できる焼結鍋試験(直径300mm)により、本発明の効果を確認した。焼結鍋試験装置は、DL焼結機のようにパレットによる原料充填層の移動こそないが、所定の大きさの容器に炭材を含む配合原料を装入して、上面から着火して下方吸引により焼結を進行させる試験装置である。
後述する表2に示すように、比較例1,2と、発明例の3つの実験を行った。
【0029】
(原料配合)
表1は、原料とその配合割合を示す。配合原料のうち、新原料である鉄鉱石A~D、橄欖岩、石灰石、および生石灰は、表1に示す割合で配合した。表1の鉄鉱石A~Dは異なる産地のものを使用した。また、凝結材である炭材(粉コークス)は、新原料を100質量%として外数で4.5質量%配合した。全試験ケースにおいて全原料の配合割合は一定である。なお、詳細は後述するが、炭材(粉コークス)については、一部の試験ケース(比較例2および発明例)においては、その一部を上段層表層または下段層表層に散布した。
【0030】
【表1】
【0031】
(試験ケース)
以下に、試験水準を示す(表2の上段参照)。二段装入二段点火を模した比較例1,2、および発明例の3試験を行った。
比較例1(二段装入二段点火):炭材散布なし
比較例2(二段装入二段点火):上段層表層に炭材散布
発明例 (二段装入二段点火):下段層表層に炭材散布
【0032】
比較例1においては炭材散布を実施せず、全層(上段層および下段層)均一のコークス濃度とした。すなわち、全成分を全層均一とした。
比較例2においては上段層表層のみに炭材散布を実施し、発明例においては下段層表層のみに炭材散布を実施した。比較例2および発明例においては、比較例1で使用した全炭材量(新原料に対して4.5質量%の炭材量)のうちの1.25質量%(新原料に対して0.056質量%)の粉コークスを上段層表層または下段層表層の散布用とし、残りの98.75質量%(新原料に対して4.444質量%)は、全層(上段層および下段層)で均一にとなるように配合した。なお、表2において、上段全コークスに示す割合とは、上段層表層散布量を上段層装入量と上段層表層散布量との和で除した値であり、下段全コークスに示す割合とは、下段層表層散布量を下段層装入量と下段層表層散布量との和で除した値である。
【0033】
また、原料充填層(上段層および下段層)を形成する原料としての炭材は、いずれも粒度が-5mm(5mm未満)のもの(5mmの篩目の篩下のもの)を使用し、散布用の炭材は-0.25mm(0.25mm未満)のもの(0.25mmの篩目の篩下のもの)を使用した。
【0034】
【表2】
【0035】
(造粒方法)
比較例1に使用する原料(上段層装入用および下段層装入用)と、比較例2および発明例に使用する原料(上段層装入用および下段層装入用)を、それぞれ一括して造粒した。造粒は、試験用ドラムミキサー(直径600mm、回転数25rpm)で4分間混合後、配合原料に対して6.5質量%の水分を添加し、さらに4分間処理した。
【0036】
(装入・点火方法)
鍋は、高さ500mmの円柱形の下段用鍋(φ300mm)と、高さ300mmの円柱形の上段用鍋(φ300mm)の2本を準備した。まず、下段用鍋および上段用鍋に造粒した原料を装入して、下段層の層高を500mm、上段層の層高を300mmとした。そして、層高500mmの下段用鍋をセットして、下段層の表面に1分間点火した。その後、下段用鍋の上に、層高300mmの上段用鍋をセットして、下段層の下面から270mm位置の温度上昇確認後(上下二段での焼結の進行を確認後)に、上段層の表面に1分間点火した。吸引圧は、点火開始から1500mmAq(14.7kPa)一定とした。炭材は、下段層または上段層の点火完了直後から1分間散布した。
【0037】
(焼結時間)
焼結時間は以下のように測定した。熱電対を下段用鍋の下面から440mm、350mm、200mm、風箱の位置にそれぞれ挿入し、層内温度を測定した。風箱は焼結鍋直下にあり排ガスが通過する場所であり、ここに装入した熱電対により排ガスの温度を測定した。上段層の焼結完了と下段層の焼結完了の遅い方を、原料充填層全体(上段層および下段層)としての焼結完了とみなすため、440mm位置の熱電対の2回目のピーク時刻(上段層の焼結完了)までの所要時間と、風箱位置の熱電対の1回目のピーク時刻(下段層の焼結完了)までの所要時間の2つのうち長い方を、原料充填層全体の焼結時間とした。焼結完了となった時刻から3分後に吸引を停止し、焼結終了とした。
【0038】
(焼結鉱強度)
焼結鉱強度は、JIS M8712(2009)に基づいて、冷間強度(回転強度指数TI)を測定した。ただし、供試試料の質量は15kgとした。なお、強度測定においては、上段焼結鉱の回収サンプル重量が少ないため、下段焼結鉱(下段用鍋内の焼結鉱)のみ測定をおこなった。
【0039】
(生産率)
生産率は、上述のように測定した焼結時間に基づいて、以下の式(5)により求めた。
生産率=成品量(t)/焼結面積(0.07m)/焼結時間(日) ・・・(5)
なお、成品量は、焼結後、得られた焼結ケーキを、2mの高さから4回落下処理を行い、粒径+5mm(5mm超)を焼結成品として重量を求めた。
【0040】
(試験結果)
表2の下段に、試験結果を示す。
全体(上段層および下段層)での歩留は、上段層のみに炭材を散布した比較例2においては、比較例1よりも下段層焼結鉱の強度および歩留が低下した。また、生産率も低下した。下段層のみに炭材を散布した発明例においては、生産率を維持しつつ、比較例1よりも下段層焼結鉱の強度および歩留がともに改善した。
【0041】
上段層の歩留は、比較例1に対して比較例2が低く、発明例ではさらに低い値となった。比較例2については、上段層表層の炭材散布により上段層表層近傍の歩留は改善し、上段層表層近傍よりも下側部分においては、原料に配合するコークス割合が少ないため歩留が低下したと想定される。表層での歩留改善よりも、下側部分での歩留低下の影響の方が大きかったため、比較例1よりも、上段層の歩留が低下したものと考えられる。また、発明例については、比較例2で得られたと考えられる、上段層表層近傍での歩留改善効果も得られないため、上段層の歩留が、比較例2よりも低くなったと考えられる。
【0042】
下段層の歩留は、比較例1に対して比較例2が低く、発明例では比較例1よりも改善している。比較例2については、原料に配合するコークス割合が少ないため、比較例1よりも歩留が低下したと想定される。発明例では、下段層表層の炭材散布により下段層表層の最高到達温度が上昇し、近傍の歩留が改善したことが想定される。また、下段層表層の到達温度の上昇は、下方吸引によりその下側部分の熱の供給量を増すことになる。表2に示すように、発明例では、二段点火焼成中の200mm位置における最高到達温度が比較例1および比較例2よりも高く、下段層の焼結鉱強度が改善したことが下段層の大きな歩留改善効果の発現要因であると考えられる。下段層においては、原料に配合するコークス割合を減らしたことによる歩留の低下要素はあるものの、二段点火中の下段層では酸素供給量がそもそも少ないため、原料へのコークス配合割合を減らしたとしても、到達温度の低下への影響は比較的小さいと考えられる。一方、炭材散布による熱供給量の増加による効果が表層近傍を超えて得られた結果、下段層では大きな歩留改善効果が発現したと考えられる。
【0043】
なお、発明例同様、二段装入二段点火を模し下段層表層散布のみを行った条件において、下段層表層に散布する炭材散布量の割合を、2.0%から段階的に増加させた実験も実施した。その結果、下段全コークスに対して、下段層表層に散布する炭材散布量の割合が11.0%を超える試験において、下段層の強度・歩留の改善が飽和した。よって、この試験結果に基づいて、下段層表層に散布する炭材散布量の割合の上限値として、11.0%未満という値を設定した。
【符号の説明】
【0044】
100…焼結機、1A…下段用ドラムミキサー、1B…下段用ホッパ、1C…下段用点火器、1D…下段用原料槽群(下段原料槽1D~1D)、2A…上段用ドラムミキサー、2B…上段用ホッパ、2C…上段用点火器、2D…上段用原料槽群(上段原料槽2D~2D)、3…焼結部、5…パレット進行方向、6…下方吸引、10…下段層、10A…下段層燃焼帯、20…上段層、20A…上段層燃焼帯、30…凝結材散布装置
図1
図2