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特許7381888超音波探傷システムおよび超音波探傷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】超音波探傷システムおよび超音波探傷方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
G01N29/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020045069
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021148440
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】宮下 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】中谷 建太朗
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132663(JP,A)
【文献】特開2013-148597(JP,A)
【文献】特開2005-195349(JP,A)
【文献】特開昭59-148864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N29/00-G01N29/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に垂直な断面が略四角形の被探傷材の欠陥を、フェイズドアレイ法による超音波探傷を行うことにより検出する超音波探傷システムであって、
前記被探傷材の表面に沿って配置可能な複数の超音波振動子をそれぞれが有する4つの超音波プローブであって、前記略四角形の四辺の各辺に対して1つずつ配置された4つの超音波プローブと、
前記超音波プローブから前記被探傷材に対して超音波を送信することにより当該超音波プローブで受信される反射エコーに基づいて、前記被探傷材の欠陥を検出する欠陥検出手段とを有し、
前記略四角形の四辺のうちの一辺に対して設置された前記超音波プローブである第1の超音波プローブを用いて垂直探傷を行う場合の探傷範囲と、当該略四角形の四辺のうち、当該一辺に対し両側に位置する二辺に対して設置された前記超音波プローブである第2の超音波プローブおよび第3の超音波プローブを用いて、前記略四角形の四辺のうち当該一辺に対向する一辺に向けて斜角探傷を行う場合の探傷範囲と、の少なくとも一部は相互に重なっており、
前記欠陥検出手段は、前記第1の超音波プローブ、前記第2の超音波プローブ、および前記第3の超音波プローブにより前記探傷範囲に対して超音波を送信することにより当該超音波プローブで受信される反射エコーのうち、少なくとも2つの反射エコーの強度が閾値を上回る場合に、前記被探傷材に欠陥がある判定し、そうでない場合に、前記被探傷材に欠陥がないと判定することを特徴とする超音波探傷システム。
【請求項2】
前記被探傷材の長手方向の同一の位置において、前記4つの超音波プローブのそれぞれを前記第1の超音波プローブとして前記垂直探傷ことを特徴とする請求項に記載の超音波探傷システム。
【請求項3】
前記被探傷材の皮下部の欠陥を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波探傷システム。
【請求項4】
前記4つの超音波プローブの超音波の送信面と前記被探傷材の当該超音波の入射面との間の領域のそれぞれに水が配置され、
前記超音波プローブの超音波の送信面と前記被探傷材の当該超音波の入射面との間の領域に配置される水と、当該超音波プローブと異なる前記超音波プローブの超音波の送信面と前記被探傷材の当該超音波の入射面との間の領域に配置される水とは連通していないことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の超音波探傷システム。
【請求項5】
ボリュームフォーカスフェイズドアレイ法による超音波探傷を行うことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の超音波探傷システム。
【請求項6】
前記欠陥検出手段は、前記被探傷材に欠陥があるか否かを判定することを、前記被探傷材の長手方向の複数の位置のそれぞれで行うことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の超音波探傷システム。
【請求項7】
前記欠陥検出手段は、前記超音波プローブで受信される反射エコーの強度の代表値を、前記被探傷材の長手方向の複数の位置のそれぞれで導出し、導出した結果に基づいて、前記反射エコーに基づく強度の代表値と、前記被探傷材の長手方向の位置との関係を示すエコー強度-位置関係を導出することを、前記複数の超音波プローブの探傷範囲のそれぞれについて行う反射エコー処理手段と、
前記エコー強度-位置関係における前記反射エコーの強度の代表値と、当該エコー強度-位置関係に対する閾値とを比較した結果に基づいて、前記被探傷材の欠陥の有無を判定する欠陥判定手段と、を更に有し、
前記欠陥判定手段は、前記第1の超音波プローブ、前記第2の超音波プローブ、および前記第3の超音波プローブの探傷範囲についての前記エコー強度-位置関係の同一の位置において前記反射エコーの強度の代表値が閾値を上回る場合に当該位置に欠陥があると判定することを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の超音波探傷システム。
【請求項8】
前記欠陥判定手段は、前記第1の超音波プローブ、前記第2の超音波プローブ、および前記第3の超音波プローブの探傷範囲についての前記エコー強度-位置関係のうち、何れの位置においても前記反射エコーの強度の代表値が閾値を上回らない前記エコー強度-位置関係に対する前記閾値を、前記第1の超音波プローブ、前記第2の超音波プローブ、および前記第3の超音波プローブの探傷範囲についての前記エコー強度-位置関係のうち、前記反射エコーの強度の代表値が前記閾値を上回る前記エコー強度-位置関係と前記閾値とを比較した結果に基づいて変更することを特徴とする請求項に記載の超音波探傷システム。
【請求項9】
前記欠陥判定手段は、前記第1の超音波プローブ、前記第2の超音波プローブ、および前記第3の超音波プローブの探傷範囲についての前記エコー強度-位置関係のうち、何れの位置においても前記反射エコーの強度の代表値が閾値を上回らない前記エコー強度-位置関係に対する前記閾値を変更する位置の範囲を、前記第1の超音波プローブ、前記第2の超音波プローブ、および前記第3の超音波プローブの探傷範囲についての前記エコー強度-位置関係のうち、前記反射エコーの強度の代表値が前記閾値を上回る前記エコー強度-位置関係の前記閾値を上回る位置の範囲に基づいて決定することを特徴とする請求項またはに記載の超音波探傷システム。
【請求項10】
前記被探傷材は、角鋼であることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の超音波探傷システム。
【請求項11】
長手方向に垂直な断面が略四角形の被探傷材の表面に沿って配置可能な複数の超音波振動子をそれぞれが有する4つの超音波プローブであって、前記略四角形の四辺の各辺に対して1つずつ配置された4つの超音波プローブを用いて、前記被探傷材の欠陥を、フェイズドアレイ法による超音波探傷を行うことにより検出する超音波探傷方法であって、
前記超音波プローブから前記被探傷材に対して超音波を送信することにより当該超音波プローブで受信される反射エコーに基づいて、前記被探傷材の欠陥を検出する欠陥検出工程を有し、
前記略四角形の四辺のうちの一辺に対して設置された前記超音波プローブである第1の超音波プローブを用いて垂直探傷を行う場合の探傷範囲と、当該略四角形の四辺のうち、当該一辺に対し両側に位置する二辺に対して設置された前記超音波プローブである第2の超音波プローブおよび第3の超音波プローブを用いて、前記略四角形の四辺のうち当該一辺に対向する一辺に向けて斜角探傷を行う場合の探傷範囲と、の少なくとも一部は相互に重なっており、
前記欠陥検出工程は、前記第1の超音波プローブ、前記第2の超音波プローブ、および前記第3の超音波プローブにより前記探傷範囲に対して超音波を送信することにより当該超音波プローブで受信される反射エコーのうち、少なくとも2つの反射エコーの強度が閾値を上回る場合に、前記被探傷材に欠陥がある判定し、そうでない場合に、前記被探傷材に欠陥がないと判定することを特徴とする超音波探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷システムおよび超音波探傷方法に関し、特に、被探傷材の欠陥を超音波探傷するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
角鋼等の被探傷材の欠陥を非破壊で検査する手法として超音波探傷がある。このような超音波探傷の手法として、垂直探傷法と斜角探傷法とがある。垂直探傷法は、被探傷材の表面から内部に向かって当該表面に垂直な方向に超音波を入射させ、その反射エコーを受信する手法である。斜角探傷法は、被探傷材の表面から内部に向かって当該表面に隣接する他の表面に向かって斜め方向に超音波を入射させ、その反射エコーを受信する手法である。
【0003】
このような超音波探傷により被探傷材の内部の欠陥を検査する技術として、特許文献1~3に記載の技術がある。
特許文献1には、縦波により屈折角度を65~80°として入射面に隣接する面と対向面との角部の表層部の斜角探傷を行うことと、横波により屈折角度を40~50°として入射面に隣接する面の表層部の斜角探傷を行うことと、表面波にて被探傷材の表面およびその近傍の探傷を行うこととが記載されている。特許文献1では、縦波または横波で検出され且つ表面波でも検出された欠陥は表面近傍に存在するものとし、縦波または横波でしか検出されない欠陥は皮下に存在するものとする。
【0004】
特許文献2には、超音波の入射面に隣接する面の下部の角部付近を斜角探傷することと、当該角部からの反射エコーが最大となるときの超音波の走査位置を検知することと、当該走査位置を基準にして所望の探傷範囲が探傷できるように超音波の走査範囲および探傷ゲート範囲を補正することと、当該補正後の走査範囲および探傷ゲート範囲で斜角探傷を行うこととが記載されている。
【0005】
特許文献3には、垂直探傷法により被探傷材の内部を探傷し、斜角探傷法により被探傷材を探傷し、表面波を用いて被探傷材の表面を探傷することが記載されている。
特許文献4には、表面波探傷法等により被探傷材の表面欠陥のみを含む表面欠陥情報を得ることと、斜角探傷法により表面欠陥と表面皮下欠陥の探傷情報を含む斜角探傷情報を得ることと、斜角探傷情報から表面欠陥情報を差し引くことにより、表面皮下欠陥を抽出することとが記載されている。また、特許文献4には、超音波プローブ(探触子)と被探傷材の入射面との間の領域に水を配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭58-216950号公報
【文献】特開昭59-148860号公報
【文献】特開昭59-148864号公報
【文献】特開昭59-148865号公報
【文献】特許第5279090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~4に記載の技術では、被探傷材の表面の状態や、超音波プローブと被探傷材との間の領域の状態についての検討がなされていない。このため、例えば、超音波の入射面(表面)が平坦でない場合や、超音波プローブと被探傷材の入射面との間の水中に気泡が発生している場合に発生するノイズを欠陥であると誤検知する虞がある。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、被探傷材の内部に存在する欠陥を超音波探傷する際の誤検知を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の超音波探傷システムは、長手方向に垂直な断面が略四角形の被探傷材の欠陥を、フェイズドアレイ法による超音波探傷を行うことにより検出する超音波探傷システムであって、前記被探傷材の表面に沿って配置可能な複数の超音波振動子をそれぞれが有する4つの超音波プローブであって、前記略四角形の四辺の各辺に対して1つずつ配置された4つの超音波プローブと、前記超音波プローブから前記被探傷材に対して超音波を送信することにより当該超音波プローブで受信される反射エコーに基づいて、前記被探傷材の欠陥を検出する欠陥検出手段とを有し、前記略四角形の四辺のうちの一辺に対して設置された前記超音波プローブである第1の超音波プローブを用いて垂直探傷を行う場合の探傷範囲と、当該略四角形の四辺のうち、当該一辺に対し両側に位置する二辺に対して設置された前記超音波プローブである第2の超音波プローブおよび第3の超音波プローブを用いて、前記略四角形の四辺のうち当該一辺に対向する一辺に向けて斜角探傷を行う場合の探傷範囲と、の少なくとも一部は相互に重なっており、前記欠陥検出手段は、前記第1の超音波プローブ、前記第2の超音波プローブ、および前記第3の超音波プローブにより前記探傷範囲に対して超音波を送信することにより当該超音波プローブで受信される反射エコーのうち、少なくとも2つの反射エコーの強度が閾値を上回る場合に、前記被探傷材に欠陥がある判定し、そうでない場合に、前記被探傷材に欠陥がないと判定することを特徴とする。
【0010】
本発明の超音波探傷方法は、長手方向に垂直な断面が略四角形の被探傷材の表面に沿って配置可能な複数の超音波振動子をそれぞれが有する4つの超音波プローブであって、前記略四角形の四辺の各辺に対して1つずつ配置された4つの超音波プローブを用いて、前記被探傷材の欠陥を、フェイズドアレイ法による超音波探傷を行うことにより検出する超音波探傷方法であって、前記超音波プローブから前記被探傷材に対して超音波を送信することにより当該超音波プローブで受信される反射エコーに基づいて、前記被探傷材の欠陥を検出する欠陥検出工程を有し、前記略四角形の四辺のうちの一辺に対して設置された前記超音波プローブである第1の超音波プローブを用いて垂直探傷を行う場合の探傷範囲と、当該略四角形の四辺のうち、当該一辺に対し両側に位置する二辺に対して設置された前記超音波プローブである第2の超音波プローブおよび第3の超音波プローブを用いて、前記略四角形の四辺のうち当該一辺に対向する一辺に向けて斜角探傷を行う場合の探傷範囲と、の少なくとも一部は相互に重なっており、前記欠陥検出工程は、前記第1の超音波プローブ、前記第2の超音波プローブ、および前記第3の超音波プローブにより前記探傷範囲に対して超音波を送信することにより当該超音波プローブで受信される反射エコーのうち、少なくとも2つの反射エコーの強度が閾値を上回る場合に、前記被探傷材に欠陥がある判定し、そうでない場合に、前記被探傷材に欠陥がないと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被探傷材の内部に存在する欠陥を超音波探傷する際の誤検知を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】超音波プローブと角鋼との配置の一例を示す第1の図である。
図2】超音波プローブと角鋼との配置の一例を示す第2の図である。
図3A】超音波プローブにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲の一例を示す図である。
図3B】超音波プローブにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲の第1の例を示す図である。
図3C】超音波プローブにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲の第1の例を示す図である。
図3D】角鋼の表面の領域の状態および超音波プローブと角鋼との間の領域の状態が正常でない様子の一例を外典的に示す図である。
図3E】超音波プローブにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲の第2の例を示す図である。
図3F】超音波プローブにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲の第2の例を示す図である。
図3G図3Aに示す探傷範囲と、図3Eに示す探傷範囲と、図3Fに示す探傷範囲とを合成した様子を示す図である。
図4】欠陥検出装置の機能的な構成の一例を示す図である。
図5】断面エコー波形群の一例を概念的に示す図である。
図6】最大エコー強度と、角鋼の長手方向(Y軸方向)の位置との関係の一例を概念的に示す図である。
図7】エコー強度-位置関係を導出して記憶する処理の一例を説明するフローチャートである。
図8】角鋼Mの欠陥の有無を判定して出力する処理の一例を説明するフローチャートである。
図9】垂直探傷を行った場合のエコー強度-位置関係の具体例を示す図である。
図10】斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。本実施形態では、長手方向に垂直な断面が略四角形の被探傷材が角鋼である場合を例に挙げて説明する。尚、各図では、説明および表記の都合上、構成の一部を省略化または簡略化して示す。また、各図に示すX-Y-Z座標は、各図における向きの関係を示すものである。X-Y-Z座標の表記において、○の中に●を示したものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示し、○の中に×を示したものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。
図1は、超音波プローブ110a~110dと角鋼Mとの配置の一例を示す図であり、角鋼Mの軸方向(長手方向、Y軸方向)に垂直に切った場合の断面(X-Z断面)を示す図である。図2は、超音波プローブ110a~110dと角鋼Mとの配置の一例を示す図であり、角鋼Mの(長手方向に平行な)表面(超音波プローブ110aから送信される超音波の入射面)を、その上方から見た図である。
【0014】
図1において、超音波プローブ110a~110dは、フェイズドアレイ法により超音波探傷を行うための超音波プローブであり、フェイズドアレイプローブである。フェイズドアレイプローブは、被探傷材の表面(被探傷材の表面の法線方向と被探傷材の軸方向との双方に垂直な方向)に沿って配置可能な複数の超音波振動子を有する。一般的なフェイズドアレイ法では、個々の超音波振動子の超音波を発信するタイミング(即ち位相)をずらして、各超音波振動子の位置を変えずに、超音波の伝搬方向や、その収束位置(フォーカス)を変更する。かかる方法では、超音波の伝搬方向と、その収束位置(フォーカス)とを変更することにより、各超音波振動子の位置を変えずに、垂直探傷と斜角探傷との双方を行うことができる。
【0015】
このような一般的なフェイズドアレイ法を用いてもよいが、本実施形態では、ボリュームフォーカスフェイズドアレイ法により超音波探傷を行う場合を例に挙げて説明する。ボリュームフォーカスフェイズドアレイ法は、一度にアレイプローブの全ての超音波振動子から超音波を送信し、その後、全ての超音波振動子で反射エコーを受信し、反射エコーの信号を信号処理する。本実施形態では、特許文献5に記載のボリュームフォーカスフェイズドアレイ法により超音波探傷を行う場合を例に挙げて説明する。ボリュームフォーカスフェイズドアレイ法自体は、特許文献5に記載されているので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0016】
また、図1において、本実施形態では、超音波プローブ110a~110dに対してホルダー120a~120dが取り付けられている。ホルダー120a~120dは中空の領域を有する。超音波プローブ110a~110dにおける超音波の送信面は、ホルダー120a~120dの中空の領域に、ホルダー120a~120dの先端側を向くように配置される。また、ホルダー120a~120dの先端側(角鋼Mと接する側)は開口している。
【0017】
図1に示すように、ホルダー120a~120dの先端が角鋼Mに接触するように、超音波プローブ110a~110dと共にホルダー120a~120dを移動させ、ホルダー120a~120dの中空の領域内に水を供給する。このとき、ホルダー120a~120dのそれぞれに個別に水が供給される。このようにして超音波プローブ110a~110dにおける超音波の送信面と角鋼Mとの間の領域には水が配置される。本実施形態では、超音波プローブ110a~110dにおける超音波の送信面と角鋼Mとの間の領域に配置される水は分離された状態(連通していない状態)である。即ち、本実施形態では、局部水浸式(水柱式)の超音波探傷を行う。尚、超音波プローブ110a~110dにおける超音波の送信面と角鋼Mとの間の領域に配置される水が分離されない水浸式(水没式)の超音波探傷を行ってもよいが、局部水浸式(水柱式)の超音波探傷を行うことが好ましい。この理由については後述する。
【0018】
角鋼Mの長手方向(Y軸方向)における超音波プローブ110a~110dの位置が同じである場合には、超音波プローブ110a~110dからの超音波の送受信を順番に行う必要がある。また、本実施形態では、角鋼Mの長手方向の複数の位置のそれぞれにおいて、超音波プローブ110a~110dからの超音波の送受信を行う。従って、超音波プローブ110a~110dからの超音波の送受信を順番に行うと、当該超音波の送受信の時間を確保するために、角鋼Mの搬送速度の低減または角鋼Mの搬送の一時停止を行わなければならない。これに対し、本実施形態では、図2に示すように、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)における超音波プローブ110a~110dの位置は相互に異なる。このようにすれば、超音波プローブ110a~110dからの超音波の送受信を継続して行うことができる。従って、角鋼Mの搬送が遅くなることを抑制することができるので好ましい。
【0019】
次に、角鋼Mにおける探傷範囲の一例について説明する。
図3Aは、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲の一例を示す図である。図3Bは、超音波プローブ110aにより+斜角探傷(第1の斜角探傷)を行う場合の探傷範囲の一例を示す図である。図3Cは、超音波プローブ110aにより-斜角探傷(第2の斜角探傷)を行う場合の探傷範囲の一例を示す図である。ここでは、超音波の送信方向に向かって右側への斜角探傷を+斜角探傷とし、左側への斜角探傷を-斜角探傷とする。
【0020】
図3Aにおいて、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲を探傷範囲311とする。垂直探傷を行う場合には、超音波の入射面(図3Aでは面P1)に対向する対向面(図3A図3Cに示す例では面P3)の近傍に僅かに不感帯が存在する。このため、探傷範囲311と面P3とは僅かに離れている。超音波の伝搬方向における超音波の入射面(図3Aでは面P1)と探傷範囲311との間の距離は、予め設定されている。
【0021】
図3Bにおいて、超音波プローブ110aにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲を探傷範囲312とする。図3Cにおいて、超音波プローブ110aにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲を探傷範囲313とする。超音波の伝搬方向における超音波の入射面(図3Aでは面P1)と探傷範囲312、313との間の距離は、予め設定されている。
尚、斜角探傷を行う場合、超音波の入射面に隣接する隣接面(図3A図3Cに示す例では面P2、P4)と、対向面(図3A図3Cに示す例では面P4)とがなすコーナ部の領域は、例えば、特許文献5に記載されている擬似セクタースキャンを行うことにより、探傷を行うことができる。
【0022】
図3A図3Cでは、超音波プローブ110aにおける探傷範囲について示す。その他の超音波プローブ110b~110dにおける探傷範囲についても、超音波プローブ110aにおける探傷範囲と同様に定められる。従って、ここでは、その詳細な説明を省略する。尚、超音波プローブ110a~110dの探傷範囲は、大きさおよび形状が同じであり、位置が異なる。
【0023】
特許文献5に記載のように、超音波プローブ110a~110dのそれぞれで垂直探傷、+斜角探傷、-斜角探傷、および擬似セクタースキャンを行うことにより、角鋼Mの略全ての領域に対して超音波探傷を行うことができる。しかしながら、超音波の入射面(図3A図3Cに示す例では面P1)の状態や、超音波プローブと当該超音波プローブから送信される超音波の入射面との間の領域の状態が正常でない場合がある。図3Dは、角鋼Mの面P1の状態および超音波プローブ110aと角鋼Mとの間の領域の状態が正常でない様子の一例を概念的に示す図である。
【0024】
図3Dに示すように、超音波プローブ110aと面P1との間の領域に気泡Bがある状態で、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行うと、気泡Bによって、実際には存在しない欠陥B'が探傷される虞がある。また、このような気泡Bにより超音波の乱反射や減衰が生じる虞がある。また、面P1に凹部Dがある場合にも、凹部Dにより超音波の乱反射や減衰が生じる虞がある。
【0025】
そこで、本実施形態では、相互に異なる超音波プローブにより行われる、垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷のうち、少なくとも2つの探傷による探傷範囲の少なくとも一部(全部または一部)が相互に重なるように探傷範囲を設定する。そして、少なくとも一部が重なっている少なくとも2つの探傷範囲で欠陥が検出された場合に、当該探傷範囲に欠陥があると判定する。一方、少なくとも一部が重なっている探傷範囲の1つでしか欠陥が検出されなかった場合には、当該欠陥はノイズであると判定する。尚、少なくとも一部が重なっている全ての探傷範囲で欠陥が検出されなかった場合には、当該探傷範囲に欠陥はないと判定する。
【0026】
図3Eは、超音波プローブ110bにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲の一例を示し、図3Fは、超音波プローブ110dにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲の一例を示す。図3Eにおいて、超音波プローブ110bにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲を探傷範囲322とする。図3Fにおいて、超音波プローブ110dにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲を探傷範囲343とする。図3Gは、図3Aに示す探傷範囲311と、図3Eに示す探傷範囲322と、図3Fに示す探傷範囲343とを合成した様子を示す図である。また、図3Gには、超音波プローブ110b~110cにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲321、331、341も示す。
【0027】
図3A図3C図3E図3Fに示す例では、角鋼Mの内部の領域のうち表面に近い領域(いわゆる皮下部)における欠陥の検出を目的として、探傷範囲311~313、322、343を設定する。この場合、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲311が、探傷範囲322、343の少なくとも1つと重なる。従って、これらの探傷範囲311、322、343の少なくとも2つにおいて欠陥が検出された場合に、探傷範囲311(またはその周辺)に欠陥があると判定される。
【0028】
全ての図示は省略するが、超音波プローブ110bにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲321は、超音波プローブ110cにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲と、超音波プローブ110aにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲313との少なくとも1つと重なる。従って、これらの探傷範囲の少なくとも2つにおいて欠陥が検出された場合に、探傷範囲321(またはその周辺)に欠陥があると判定される。
【0029】
同様に、超音波プローブ110cにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲331は、超音波プローブ110dにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲と、超音波プローブ110bにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲との少なくとも1つと重なる。従って、これらの探傷範囲の少なくとも2つにおいて欠陥が検出された場合に、探傷範囲331(またはその周辺)に欠陥があると判定される。
【0030】
また、超音波プローブ110dにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲341は、超音波プローブ110aにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲312と、超音波プローブ110cにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲との少なくとも1つと重なる。従って、これらの探傷範囲の少なくとも2つにおいて欠陥が検出された場合に、探傷範囲341(またはその周辺)に欠陥があると判定される。
【0031】
尚、図3A図3C図3E図3Fに示す例では、探傷範囲311、321、331、341以外の探傷範囲は、その他の探傷範囲と重ならないようにしている。
以上のように本実施形態では、例えば、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲311と、超音波プローブ110bにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲322と、超音波プローブ110dにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲343とのうち、少なくとも2つにおいて欠陥が検出された場合に、探傷範囲311(またはその周辺)に欠陥があると判定される。
【0032】
従って、例えば、図3Gにおいて、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲311と、超音波プローブ110b(110d)により+斜角探傷(-斜角探傷)を行う場合の探傷範囲322(343)のうち探傷範囲311とは異なる範囲との双方において、欠陥が検出されることがあり得る。本実施形態では、欠陥の見逃しを防止するため、このような場合にも、探傷範囲311(またはその周辺)に欠陥があるものとする。このことは、その他の探傷範囲321、331、341についても同じである。ただし、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、角鋼Mの軸に垂直な断面における欠陥の位置を特定することにより、探傷範囲311、321、331、341内の欠陥のみを検出することができる。
【0033】
図3A図3C図3E図3Fに示す例では、角鋼Mの内部の領域のうち相対的に表面に近い領域(いわゆる皮下部)における欠陥の検出を目的として、探傷範囲311~313、321、322、331、341、343を設定している。即ち、本実施形態では、いわゆる皮下探傷を行っており、垂直探傷、斜角探傷は、それぞれ垂直皮下探傷、斜角皮下探傷である。
【0034】
図4は、欠陥検出装置400の機能的な構成の一例を示す図である。欠陥検出装置400は、超音波プローブ110a~110dにより得られた反射エコーを入力して、角鋼Mの内部の欠陥を検出するための処理を行う装置である。欠陥検出装置400のハードウェアの構成は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、信号処理回路、および各種のインターフェースを備える情報処理装置や、専用のハードウェアを用いることにより実現される。以下に、欠陥検出装置400が有する機能の一例を説明する。ここでは、角鋼Mは、Y軸の正の方向に向かって搬送ロール上において搬送されるものとする。また、図2に示すように、角鋼Mの先頭の位置を検出するセンサ210が角鋼Mの搬送ラインに配置されているものとする。本実施形態では、超音波プローブ110a~110d、ホルダー120a~120d、センサ210、および欠陥検出装置400を用いることにより、超音波探傷システムが構成される。
【0035】
<被探傷材検出部401>
被探傷材検出部401は、センサ210から出力される信号に基づいて、角鋼Mを検出する。
【0036】
<超音波出力指示部402>
超音波出力指示部402は、被探傷材検出部401により角鋼Mの先頭が検出された後に、送信処理を行い、超音波プローブ110a~110dに対して超音波の送信動作を制御する制御信号を出力する。
超音波出力指示部402から出力される制御信号に基づいて、ボリュームフォーカスフェイズドアレイ法に従って超音波振動子が励振され、超音波が送信される。本実施形態では、超音波プローブ110a~110dは、例えば、垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷を順番に行うことを一周期における処理として、当該処理を所定の測定周期で繰り返す。尚、超音波プローブ110a~110dから超音波を送信するための具体的な構成は、特許文献5に記載されているので、その詳細な説明を省略する。
【0037】
また、このような超音波の送信に先立って、欠陥検出装置400から出力される制御信号に基づいて、ホルダー120a~120dの先端が角鋼Mに接触するように、超音波プローブ110a~110dと共にホルダー120a~120dが移動し、ホルダー120a~120dの中空の領域内に水が供給される。尚、センサ210により角鋼Mの先頭が検出された時刻と、角鋼Mの搬送速度と、センサ210から超音波プローブ110a~110dまでの距離Y1~Y4とに基づいて、ホルダー120a~120dの先端を接触できる位置まで角鋼Mが到達しているか否かを判断することができる。
【0038】
<反射エコー取得部403>
反射エコー取得部403は、超音波プローブ110a~110dが超音波を送信することにより超音波プローブ110a~110dが受信する反射エコーの信号を入力し、受信処理を行う。反射エコーの信号を受信するための具体的な構成は、特許文献5に記載されているので、その詳細な説明を省略する。
【0039】
<位置導出部404>
位置導出部404は、センサ210により角鋼Mの先頭が検出された測定周期(時刻)と、角鋼Mの搬送速度と、角鋼Mの長手方向の長さとに基づいて、各測定周期において、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)のどの位置が、超音波プローブ110a~110dと対向しているのかを示す情報を導出する。以下の説明では、この情報を、必要に応じて、測定周期-位置対応情報と称する。
【0040】
<反射エコー処理部405>
反射エコー処理部405は、反射エコー取得部403で受信処理が行われた反射エコーの信号に対して信号処理を行う。これにより、超音波プローブ110a~110dで受信された反射エコーのそれぞれについて、各測定周期における断面エコー波形が得られる。断面エコー波形は、反射エコー(超音波)の強度と、超音波の伝搬方向に沿った超音波の入射面からの距離との関係を示すものである。
【0041】
図5は、断面エコー波形群510の一例を概念的に示す図である。
前述したように本実施形態では、超音波プローブ110a~110dは、例えば、垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷を順番に行うことを一周期における処理として、当該処理を所定の測定周期で繰り返す。また、超音波プローブ110a~110dは、複数の超音波振動子を有し、ボリュームフォーカスフェイズドアレイ法により超音波探傷を行う。従って、同一の測定周期tにおいて、超音波振動子の数に応じた数の断面エコー波形が、垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷のそれぞれについて得られる。
【0042】
図5において、例えば、測定周期t1において、垂直探傷による断面エコー波形群511と、+斜角探傷による断面エコー波形群512と、-斜角探傷による断面エコー波形群513の数は、それぞれ、垂直探傷、+斜角探傷、-斜角探傷で使用された超音波振動子の数に応じた数である。各測定周期t1~tNにおいて、このような断面エコー波形群511、512、513が得られる。更に、超音波プローブ110a~110dのそれぞれについて、各測定周期t1~tNにおける断面エコー波形群511、512、513が得られる。ここで、測定周期t1、tNは、それぞれ、角鋼Mが超音波プローブ110a~110dと対向を開始した測定周期、角鋼Mが超音波プローブ110a~110dと対向しなくなった直前の測定周期である。従って、測定周期t1~tNは、超音波プローブ110a~110dによって異なる。
【0043】
尚、図5に示す例では、垂直探傷により得られた断面エコー波形に、表面エコー511aと底面エコー511bとを示すが、これらは、探傷範囲311、321、331、341とは異なる領域でのエコーである。このため、反射エコー取得部403は、表面エコー511aおよび底面エコー511bを抽出せず、探傷範囲311、321、331、341内の欠陥エコー511cのみを抽出する。このように、探傷範囲311、321、331、341と異なる領域のエコーは抽出されない。同様に、反射エコー取得部403は、+斜角探傷により得られたエコー波形に含まれる表面エコー512bを抽出せず、探傷範囲312、322内の欠陥エコー512bのみを抽出する。また、反射エコー取得部403は、-斜角探傷により得られた断面エコー波形に含まれる表面エコー513bを抽出しない。尚、図5では、-斜角探傷では、欠陥エコーが検出されていない例を示す。
【0044】
次に、反射エコー処理部405は、同一の測定周期tにおいて得られた垂直探傷による断面エコー波形群511から、探傷範囲311、321、331、341内の欠陥エコーであって、強度(波形のピークの高さ)が最大となる欠陥エコーの強度を抽出することを、測定周期t1~tNのそれぞれの断面エコー波形群511について行う。以下の説明では、このようにして抽出される欠陥エコーの強度を、必要に応じて、垂直探傷による最大エコー強度と称する。
【0045】
同様に、反射エコー処理部405は、同一の測定周期tにおいて得られた+斜角探傷による断面エコー波形群512から、探傷範囲312、322内の欠陥エコーであって、強度(波形のピークの高さ)が最大となる欠陥エコーの強度を抽出することを、測定周期t1~tNのそれぞれの断面エコー波形群512について行う。以下の説明では、このようにして抽出される欠陥エコーの強度を、必要に応じて、+斜角探傷による最大エコー強度と称する。
また、反射エコー処理部405は、同一の測定周期tにおいて得られた-斜角探傷による断面エコー波形群512から、探傷範囲313、343内の欠陥エコーであって、強度(波形のピークの高さ)が最大となる欠陥エコーの強度を抽出することを、測定周期t1~tNのそれぞれの断面エコー波形群513について行う。以下の説明では、このようにして抽出される欠陥エコーの強度を、必要に応じて、-斜角探傷による最大エコー強度と称する。
【0046】
反射エコー処理部405は、以上のようにして、垂直探傷による最大エコー強度、+斜角探傷による最大エコー強度、および-斜角探傷による最大エコー強度を導出することを、超音波プローブ110a~110dで得られた反射エコーのそれぞれに対して行う。以下の説明では、垂直探傷による最大エコー強度、+斜角探傷による最大エコー強度、および-斜角探傷による最大エコー強度を、必要に応じて、最大エコー強度と総称する。尚、ここでは、探傷範囲内の欠陥エコーとして、強度(波形のピークの高さ)が最大となる欠陥エコーの強度を抽出する場合を例に挙げて説明するが、探傷範囲内の欠陥エコーの最大値以外の代表値(例えば、中央値または平均値)を用いてもよい。
【0047】
次に、反射エコー処理部405は、位置導出部404により導出された測定周期-位置対応情報に基づいて、各測定周期t1~tNにおいて、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)のどの位置が、超音波プローブ110a~110dと対向しているのかを判別する。反射エコー処理部405は、この判別の結果に従って、測定周期t1~tNに対応する角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の位置を、超音波プローブ110a~110dのそれぞれについて導出する。
【0048】
そして、反射エコー処理部405は、各測定周期t1~tNの垂直探傷による最大エコー強度の値を、各測定周期t1~tNに対応する角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の位置の値にすることを、超音波プローブ110a~110dのそれぞれについて行う。このようにすることによって、垂直探傷による最大エコー強度と、角鋼Mの長手方向の位置との関係が、超音波プローブ110a~110dのそれぞれについて得られる。
【0049】
同様に、反射エコー処理部405は、各測定周期t1~tNの+斜角探傷による最大エコー強度の値を、各測定周期t1~tNに対応する角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の位置の値にすることを、超音波プローブ110a~110dのそれぞれについて行う。このようにすることによって、+斜角探傷による最大エコー強度と、角鋼Mの長手方向の位置との関係が、超音波プローブ110a~110dのそれぞれについて得られる。
また、反射エコー処理部405は、各測定周期t1~tNの-斜角探傷による最大エコー強度の値を、各測定周期t1~tNに対応する角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の位置の値にすることを、超音波プローブ110a~110dのそれぞれについて行う。このようにすることによって、-斜角探傷による最大エコー強度と、角鋼Mの長手方向の位置との関係が、超音波プローブ110a~110dのそれぞれについて得られる。
【0050】
図6は、最大エコー強度と、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の位置との関係の一例を概念的に示す図である。前述したように、ここでは、垂直探傷による最大エコー強度、+斜角探傷による最大エコー強度、および-斜角探傷による最大エコー強度を、最大エコー強度と総称する。
図6(a)および図6(b)に示すプロット(●)が最大エコー強度である。例えば、最大エコー強度を用いて補間処理またはカーブフィッティングを行うことにより、最大エコー強度と、角鋼Mの長手方向の位置との関係を示す曲線が得られる。
以上のようにして、垂直探傷による最大エコー強度と角鋼Mの長手方向の位置との関係を示す曲線、+斜角探傷による最大エコー強度と角鋼Mの長手方向の位置との関係を示す曲線、および-斜角探傷による最大エコー強度と角鋼Mの長手方向の位置との関係を示す曲線が、超音波プローブ110a~110dのそれぞれについて得られる。
【0051】
<記憶部406>
記憶部406は、反射エコー処理部405により超音波プローブ110a~110dのそれぞれについて導出された、垂直探傷による最大エコー強度と角鋼Mの長手方向の位置との関係を示す曲線、+斜角探傷による最大エコー強度と角鋼Mの長手方向の位置との関係を示す曲線、および-斜角探傷による最大エコー強度と角鋼Mの長手方向の位置との関係を示す曲線を示す情報を記憶する。以下の説明では、記憶部406に記憶される情報の少なくとも一部を総称する場合、必要に応じて、これらを、エコー強度-位置関係と称する。
【0052】
<欠陥判定部407>
欠陥判定部407は、記憶部406により記憶されたエコー強度-位置関係に基づいて、角鋼Mの内部に欠陥があるか否かを判定する。
前述したように、本実施形態では、垂直探傷を行う場合の探傷範囲311、321、331、341(またはその周辺)の欠陥の有無を探傷する。欠陥判定部407は、角鋼Mの長手方向の各位置において、以下の3つの探傷範囲のうち、少なくとも2つの探傷範囲で欠陥がある場合に、当該位置に欠陥があると判定する。3つの探傷範囲の一つ目は、垂直探傷を行う場合の探傷範囲311、321、331、341である。3つの探傷範囲の二つ目は、+斜角探傷を行う場合の探傷範囲のうち当該探傷範囲311、321、331、341と一部の領域が重なる探傷範囲である。3つの探傷範囲の三つ目は、-斜角探傷を行う場合の探傷範囲のうち当該探傷範囲311、321、331、341と一部の領域が重なる探傷範囲である。
【0053】
欠陥の有無の判定基準の一例をより具体的に説明すると、欠陥判定部407は、角鋼Mの長手方向の各位置において、以下の第1~第4の条件のうち、少なくとも1つの条件を満足する場合に、当該位置に欠陥があると判定する。
第1の条件は、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲311と、超音波プローブ110bにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲322と、超音波プローブ110dにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲343とのうち、少なくとも2つの探傷範囲で欠陥があるという条件である。
【0054】
第2の条件は、超音波プローブ110bにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲321と、超音波プローブ110cにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲と、超音波プローブ110aにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲313とのうち、少なくとも2つの探傷範囲で欠陥があるという条件である。
【0055】
第3の条件は、超音波プローブ110cにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲331と、超音波プローブ110dにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲と、超音波プローブ110bにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲とのうち、少なくとも2つの探傷範囲で欠陥があるという条件である。
【0056】
第4の条件は、超音波プローブ110dにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲341と、超音波プローブ110aにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲312と、超音波プローブ110cにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲とのうち、少なくとも2つの探傷範囲で欠陥があるという条件である。
以下の説明では、第1の条件~第4の条件について、同一の条件に含まれる3つの探傷範囲(垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷による探傷範囲)を、必要に応じて、探傷範囲セットと称する。例えば、第1の条件についての探傷範囲セットは、探傷範囲311、322、343からなる。
【0057】
本実施形態では、超音波プローブ110a~110dにより垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷を行う場合のそれぞれについて、図6に示すようなエコー強度-位置関係が得られる。即ち、図6に示すようなエコー強度-位置関係が12(=4×3)個得られる。
欠陥判定部407は、このようなエコー強度-位置関係において、最大エコー強度と閾値との比較を、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の各位置(横軸の各位置)において行うことにより、当該位置における欠陥の有無を判定する。
【0058】
本実施形態では、エコー強度-位置関係のそれぞれに対して第1の閾値が予め設定されている。欠陥判定部407は、エコー強度-位置関係において、最大エコー強度が第1の閾値TH1を上回るか否かを判定する。例えば、図6(a)に示すエコー強度-位置関係601が、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行った場合のエコー強度-位置関係であるとする。この場合、エコー強度-位置関係601において、最大エコー強度(縦軸)が第1の閾値TH1を上回る横軸(角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の位置)の範囲は、位置YLから位置YHまでの範囲である。
【0059】
全てのエコー強度-位置関係に対してこのようにして第1の閾値との比較を行ってもよいが、欠陥の向き等によって、各探傷法(垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷)による欠陥の検出のし易さ(反射エコーの強度)が異なる。そこで、本実施形態では、欠陥判定部407は、以下のように、第1の閾値を第2の閾値に変更することにより、欠陥の検出精度を向上させる。第2の閾値は、第1の閾値よりも、欠陥が検出され易くなる値(第1の閾値よりも小さい値)である。ここでは、第1の閾値から所定の値を減算した値を第2の閾値とする。
【0060】
図6に示す例を参照しながら、第1の閾値を第2の閾値に変更する処理の一例を説明する。図6(a)に示すように、同一の探傷範囲セットに含まれる3つの探傷範囲におけるエコー強度-位置関係において、第1の閾値TH1を上回るエコー強度-位置関係601がある場合、欠陥判定部407は、当該エコー強度-位置関係601において、第1の閾値TH1を上回る角鋼Mの長手方向の位置の範囲YL~YHを導出する。第1の閾値TH1を上回るエコー強度-位置関係の数が2つである場合、第1の閾値TH1を上回る角鋼Mの長手方向の位置の範囲YL~YHは2つ得られる。この場合、欠陥判定部407は、当該2つの範囲YL~YHのうち、広い方の範囲を選択する。
【0061】
次に、欠陥判定部407は、第1の閾値TH1を上回る角鋼Mの長手方向の位置の範囲YL~YHを、下限値側および上限値側のそれぞれに対し所定値YAだけ広げた範囲YL'(=YL-YA)~YH'(=YH+YA)を導出する(図6(b)を参照)。
次に、欠陥判定部407は、図6(b)に示すように、エコー強度-位置関係601と同一の探傷範囲セットに含まれるエコー強度-位置関係のうち、何れの位置においても第1の閾値TH1を上回らないエコー強度-位置関係602の範囲YL'~YH'における閾値を第1の閾値TH1から第2の閾値TH2に変更する。そして、欠陥判定部407は、エコー強度-位置関係602における当該範囲YL'~YH'については、最大エコー強度が第2の閾値TH2を上回るか否かを判定する。
【0062】
欠陥判定部407は、以上のようにして、記憶部406に記憶されている全てのエコー強度-位置関係に対し、最大エコー強度が閾値(第1の閾値TH1または第2の閾値TH2)を上回っているか否かを、角鋼Mの長手方向の各位置において行う。
そして、欠陥判定部407は、同一の探傷範囲セットに含まれる3つの探傷範囲における3つのエコー強度-位置関係から、最大エコー強度が閾値(第1の閾値TH1または第2の閾値TH2)を上回っている横軸の値(角鋼Mの長手方向の位置)を導出する。
【0063】
そして、欠陥判定部407は、当該3つのエコー強度-位置関係のうち2つ以上のエコー強度-位置関係において、角鋼Mの長手方向の同一の位置で最大エコー強度が閾値(第1の閾値TH1または第2の閾値TH2)を上回っている場合、当該位置に欠陥があると判定する。この場合、欠陥判定部407は、当該探傷範囲セットに含まれる垂直探傷を行う場合の探傷範囲(またはその周辺)に欠陥があると判定する。
一方、欠陥判定部407は、当該3つのエコー強度-位置関係のうち1つのエコー強度-位置関係でしか、最大エコー強度が閾値(第1の閾値TH1または第2の閾値TH2)を上回っていない角鋼Mの長手方向の位置と、当該3つのエコー強度-位置関係のうち何れのエコー強度-位置関係でも、最大エコー強度が閾値(第1の閾値TH1または第2の閾値TH2)を上回っていない角鋼Mの長手方向の位置とについては、当該3つのエコー強度-位置関係からでは欠陥が見つからないと判定する。
【0064】
例えば、前述した第1の条件では、探傷範囲セットは、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲311と、超音波プローブ110bにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲322と、超音波プローブ110dにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲343である。図6(a)に示すエコー強度-位置関係601が、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行った場合のエコー強度-位置関係であり、図6(b)に示すエコー強度-位置関係602が、超音波プローブ110bにより+斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係であるとする。この場合、2つのエコー強度-位置関係601、602において、角鋼Mの長手方向の位置の範囲YL~YHで、最大エコー強度が閾値(第1の閾値TH1または第2の閾値TH2)を上回る。従って、欠陥判定部407は、角鋼Mの長手方向の位置の範囲YL~YHにおいて、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲311(またはその周辺)に欠陥があると判定する。一方、欠陥判定部407は、角鋼Mの長手方向のその他の位置については、第1の条件では、欠陥が見つからないと判定する。
【0065】
尚、図6(a)および図6(b)に示すエコー強度-位置関係601、602では、角鋼Mの長手方向の位置の範囲YL~YH以外の範囲では、欠陥が見つからないと判定される。しかしながら、その他のエコー強度-位置関係では、角鋼Mの長手方向の位置の範囲YL~YH以外の範囲において、最大エコー強度が閾値(第1の閾値TH1または第2の閾値TH2)を上回ることがある。即ち、第1の条件において、欠陥が見つからないと判定された角鋼Mの長手方向の位置であっても、第2~第4の条件において、当該位置に欠陥があると判定されることがあり得る。欠陥判定部407は、角鋼Mの長手方向の同一の位置において、第1~第4の条件の全ての条件で欠陥が見つからないと判定した場合、当該位置には欠陥がないと判定する。
尚、第1の閾値TH1および第2の閾値TH2は、全てのエコー強度-位置関係で同じであっても、少なくとも一部のエコー強度-位置関係で異ならせてもよい。
【0066】
ここで、水柱式(局部水浸式)の超音波探傷を行うことが好ましい理由について説明する。前述したように、本実施形態では、欠陥判定部407は、角鋼Mの長手方向の各位置において、第1~第4の条件の少なくとも1つを満足する場合に、当該位置に欠陥があると判定する。例えば、第1の条件を満足するか否かを判定するためには、超音波プローブ110aによる垂直探傷の結果と、超音波プローブ110bによる+斜角探傷の結果と、超音波プローブ110dによる-斜角探傷の結果とが用いられる。従って、第1の条件を満足するか否かを判定するための超音波探傷において、超音波は、超音波プローブ110a、110b、110dと角鋼Mとの間に配置されている水の中を伝搬する。同様に、第2の条件を満足するか否かを判定するための超音波探傷において、超音波は、超音波プローブ110b、110c、110aと角鋼Mとの間に配置されている水の中を伝搬する。また、第3の条件を満足するか否かを判定するための超音波探傷において、超音波は、超音波プローブ110c、110d、110bと角鋼Mとの間に配置されている水の中を伝搬する。また、第4の条件を満足するか否かを判定するための超音波探傷において、超音波は、超音波プローブ110d、110a、110cと角鋼Mとの間に配置されている水の中を伝搬する。
【0067】
従って、例えば、超音波プローブ110a~110dと角鋼Mとを同一の水槽内に配置して、超音波プローブ110a~110dにおける超音波の送信面と角鋼Mとの間の領域に配置される水が分離されないようにすると(即ち、水浸式(水没式)の超音波探傷を採用すると)、超音波プローブ110a~110dと角鋼Mとの間のそれぞれに気泡が同時期に発生する可能性がある。気泡の発生位置の分布が等方的であったり、発生した気泡が移動したりするからである。これに対し、超音波プローブ110a~110dにおける超音波の送信面と角鋼Mとの間の領域に配置される水が連通しないようにすれば(即ち、局部水浸式(水柱式)の超音波探傷を採用すれば)、或る領域で気泡が発生しても、その他の領域で同時期に気泡が発生する可能性は、水浸式に比べて低くなる。従って、欠陥の検出精度が低下することを抑制することができる。
【0068】
<出力部408>
出力部408は、欠陥判定部407による欠陥の探索結果を示す情報を出力する。出力の形態として、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、外部装置への送信、および欠陥検出装置400の内部または外部の記憶媒体への記憶の少なくとも1つを採用することができる。欠陥判定部407による欠陥の探索結果を示す情報には、例えば、欠陥があると判定された、角鋼Mの長手方向の位置を含めることができる。また、欠陥判定部407による欠陥の探索結果を示す情報には、例えば、欠陥があると判定された、角鋼Mの断面領域(探傷範囲311、321、331、341(またはその周辺))を含めることができる。欠陥が1つもなければ、そのことを示す情報が、欠陥の探索結果を示す情報になる。
【0069】
次に、図7のフローチャートを参照しながら、欠陥検出装置400がエコー強度-位置関係を導出して記憶する処理の一例を説明する。
まず、ステップS701において、被探傷材検出部401は、センサ210から出力される信号に基づいて、角鋼Mの先頭がセンサ210で検出されるまで待機する。そして、角鋼Mの先頭がセンサ210で検出されると、処理はステップS702に進む。ステップS702~S709は、所定の測定周期で繰り返し行われる。また、ここでは、垂直探傷、+斜角探傷、-斜角探傷の順で超音波探傷を行うものとする。従って、同一の測定周期において、ステップS702~S704の処理は3回繰り返される。
【0070】
処理がステップS702に進むと、超音波出力指示部402は、送信処理を行い、超音波プローブ110a~110dに対して超音波の送信動作を制御する制御信号を出力する。同一の測定周期における1回目のステップS702の処理では、超音波出力指示部402は、超音波の送信動作として超音波プローブ110a~110dに対して垂直探傷を行うための送信動作を制御する制御信号を出力する。同一の測定周期における2回目のステップS702の処理では、超音波出力指示部402は、超音波の送信動作として超音波プローブ110a~110dに対して+斜角探傷を行うための送信動作を制御する制御信号を出力する。同一の測定周期における3回目のステップS702の処理では、超音波出力指示部402は、超音波の送信動作として超音波プローブ110a~110dに対して-斜角探傷を行うための送信動作を制御する制御信号を出力する。
【0071】
また、欠陥検出装置400は、ホルダー120a~120dの先端を接触できる位置に角鋼Mが到達した最初のタイミングにおいては、ステップS702において、以下の処理を行う。即ち、欠陥検出装置400は、前述した超音波の送信動作に先立って、当該ホルダー120a~120dの先端が角鋼Mに接触するように、超音波プローブ110a~110dと共にホルダー120a~120dを移動させ、ホルダー120a~120dの中空の領域内に水を供給させることを指示する制御信号を、ホルダー120a~120dの位置および水の供給を制御する制御装置に送信する。
尚、超音波出力指示部402は、ホルダー120a~120dのうち、ホルダーの先端を接触できる位置に角鋼Mが到達していないホルダーに対応する超音波プローブに対しては、前述した超音波の送信動作を制御する制御信号を出力しない。
【0072】
次に、ステップS703において、反射エコー取得部403は、超音波プローブ110a~110dが超音波を送信することにより超音波プローブ110a~110dが受信する反射エコーの信号を入力し、受信処理を行う。同一の測定周期における1回目のステップS703の処理では、反射エコー取得部403は、垂直探傷による反射エコーの信号を入力する。同一の測定周期における2回目のステップS703の処理では、反射エコー取得部403は、+斜角探傷による反射エコーの信号を入力する。同一の測定周期における3回目のステップS703の処理では、反射エコー取得部403は、-斜角探傷による反射エコーの信号を入力する。
【0073】
次に、ステップS704において、欠陥検出装置400は、現在の測定周期において、垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷を行ったか否かを判定する。この判定の結果、現在の測定周期において、垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷を行っていない場合、処理はステップS702に戻る。そして、現在の測定周期において、垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷が行われるまで、ステップS702~S704の処理が繰り返し導出される。そして、現在の測定周期において、垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷が行われると、処理はステップS705に進む。
【0074】
処理がステップS705に進むと、位置導出部404は、現在の測定周期において、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)のどの位置が、超音波プローブ110a~110dと対向しているのかを示す情報(現在の測定周期における測定周期-位置対応情報)を導出する。
次に、ステップS706において、反射エコー処理部405は、ステップS703で受信処理が行われた反射エコーの信号に対して信号処理を行い、現在の測定周期における断面エコー波形群を導出する。断面エコー波形は、反射エコー(超音波)の強度と、超音波の伝搬方向に沿った超音波の入射面からの距離との関係を示すものである。図5に示すように、同一の測定周期tにおいて、垂直探傷による断面エコー波形群511と、+斜角探傷による断面エコー波形群512と、-斜角探傷による断面エコー波形群513とが、超音波プローブ110a~110dのそれぞれについて得られる。
【0075】
次に、ステップS707において、反射エコー処理部405は、現在の測定周期における最大エコー強度を導出する。具体的に反射エコー処理部405は、現在の測定周期における垂直探傷による断面エコー波形群から、現在の測定周期における垂直探傷による最大エコー強度を導出することと、現在の測定周期における+斜角探傷による断面エコー波形群から、現在の測定周期における+斜角探傷による最大エコー強度を導出することと、現在の測定周期における-斜角探傷による断面エコー波形群から、現在の測定周期における-斜角探傷による最大エコー強度を導出することとを行う。
【0076】
次に、ステップS708において、反射エコー処理部405は、ステップS708で導出された現在の測定周期における最大エコー強度を、ステップS705で導出された現在の測定周期における測定周期-位置対応情報に基づいて、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の位置における最大エコー強度に変換し、現在の測定周期に対応する角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の位置における最大エコー強度を導出する。例えば、反射エコー処理部405は、ステップS708で導出された現在の測定周期における垂直探傷による最大エコー強度が、角鋼Mの長手方向のどの位置の値であるのかと、ステップS708で導出された現在の測定周期における+斜角探傷による最大エコー強度が、角鋼Mの長手方向のどの位置の値であるのかと、ステップS708で導出された現在の測定周期における-斜角探傷による最大エコー強度が、角鋼Mの長手方向のどの位置の値であるのかと、を特定する。
【0077】
次に、ステップS709において、欠陥検出装置400は、角鋼Mに対する検査が終了したか否かを判定する。例えば、欠陥検出装置400は、センサ210により角鋼Mの尾端が検出された時刻と、角鋼Mの搬送速度と、角鋼Mの搬送方向におけるセンサ210から超音波プローブ110dまでの距離とに基づいて、角鋼Mが超音波プローブ110dよりも下流側に位置したか否かを判定する。そして、欠陥検出装置400は、角鋼Mが超音波プローブ110dよりも下流側に位置した最初のタイミングで、角鋼Mに対する検査が終了したと判定する。この判定の結果、角鋼Mに対する検査が終了していない場合、処理は、ステップS702に戻り、次の測定周期におけるステップS702~S709の処理が実行される。ステップS702~S709の処理は、角鋼Mに対する検査が終了するまで、所定の測定周期で繰り返し実行される。
【0078】
そして、角鋼Mに対する検査が終了したと判定されると、処理はステップS710に進む。処理がステップS710に進むと、反射エコー処理部405は、各測定周期においてステップS708で導出した、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の位置における最大エコー強度の値に基づいて、エコー強度-位置関係を導出する(図6のエコー強度-位置関係601、602を参照)。例えば、反射エコー処理部405は、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の各位置における垂直探傷による最大エコー強度に基づいて、垂直探傷を行った場合のエコー強度-位置関係を導出する。同様に反射エコー処理部405は、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の各位置における+斜角探傷による最大エコー強度に基づいて、+斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係を導出する。また、反射エコー処理部405は、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の各位置における-斜角探傷による最大エコー強度に基づいて、-斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係を導出する。本実施形態では、4つの超音波プローブ110a~110dにより、垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷を行うので、エコー強度-位置関係は、12個導出される。
【0079】
次に、ステップS711において、反射エコー処理部405は、ステップS710で導出したエコー強度-位置関係を記憶部406に記憶させる。そして、図7のフローチャートによる処理が終了する。
【0080】
次に、図8のフローチャートを参照しながら、欠陥検出装置400が角鋼Mの欠陥の有無を判定して出力する処理の一例を説明する。図8のフローチャートは、図7のフローチャートによる処理が終了した後に実行される。
まず、ステップS801において、欠陥判定部407は、探傷範囲セットを1つ選択する。探傷範囲セットは、第1の条件~第4の条件のそれぞれに含まれる3つの探傷範囲(垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷による探傷範囲)である。ステップS801の処理は、第1の条件~第4の条件を選択する処理である。ステップS802~S806の処理は、第1の条件~第4の条件のうち、ステップS801で選択された探傷範囲セットに対応する条件を満足するか否かを判定する処理である。従って、ステップS801~S806の処理は、4回繰り返される。
【0081】
次に、ステップS802において、欠陥判定部407は、図7のフローチャートのステップS711で記憶された12個のエコー強度-位置関係のうち、ステップS801で選択された探傷範囲セットに含まれる探傷範囲におけるエコー強度-位置関係を読み出す。例えば、第1の条件は、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲311と、超音波プローブ110bにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲322と、超音波プローブ110dにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲343とのうち、少なくとも2つの探傷範囲で欠陥があるという条件である。従って、欠陥判定部407は、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行った場合のエコー強度-位置関係と、超音波プローブ110bにより+斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係と、超音波プローブ110dにより-斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係との3つのエコー強度-位置関係を読み出す。
【0082】
次に、ステップS803において、欠陥判定部407は、ステップS802で読み出した3つのエコー強度-位置関係のうち、第1の閾値TH1から第2の閾値TH2に閾値を変更する必要があるエコー強度-位置関係があるか否かを判定する。例えば、欠陥判定部407は、ステップS802で読み出した3つのエコー強度-位置関係の中に、第1の閾値TH1を上回るエコー強度-位置関係と、角鋼Mの長手方向の何れの位置においても第1の閾値TH1を上回らないエコー強度-位置関係と、がある場合に、閾値を変更する必要があるエコー強度-位置関係があると判定し、そうでない場合に、閾値を変更する必要があるエコー強度-位置関係はないと判定する。この判定の結果、閾値を変更する必要があるエコー強度-位置関係がない場合、処理はステップS804を省略して後述するステップS805に進む。
【0083】
一方、閾値を変更する必要があるエコー強度-位置関係がある場合、処理はステップS804に進む、処理がステップS804に進むと、欠陥判定部407は、角鋼Mの長手方向の何れの位置においても第1の閾値TH1を上回らないエコー強度-位置関係に対する閾値を第2の閾値TH2に変更する。例えば、欠陥判定部407は、図6に示したように、第1の閾値TH1を上回るエコー強度-位置関係601において、第1の閾値TH1を上回る角鋼Mの長手方向の位置の範囲YL~YHを導出し、当該範囲YL~YHを、下限値側および上限値側のそれぞれに対し所定値YAだけ広げた範囲YL'(=YL-YA)~YH'(=YH+YA)を導出する。そして、欠陥判定部407は、角鋼Mの長手方向の何れの位置においても第1の閾値TH1を上回らないエコー強度-位置関係602の範囲YL'~YH'における閾値を第1の閾値TH1から第2の閾値TH2に変更する。
【0084】
次に、ステップS805において、欠陥判定部407は、ステップS802で読み出した3つのエコー強度-位置関係と閾値(第1の閾値TH1または第2の閾値TH2)とを比較した結果に基づいて、欠陥の有無を判定する。欠陥判定部407は、欠陥がある場合、欠陥が存在する角鋼Mの長手方向の位置と、欠陥が存在する角鋼Mの断面領域とを特定する。
例えば、欠陥判定部407は、ステップS802で読み出した3つのエコー強度-位置関係において、最大エコー強度の値が、閾値(第1の閾値TH1または第2の閾値TH2)を上回る角鋼Mの長手方向の位置を導出する。そして、欠陥判定部407は、当該3つのエコー強度-位置関係のうち2つ以上のエコー強度-位置関係において、角鋼Mの長手方向の同一の位置で最大エコー強度が閾値(第1の閾値TH1または第2の閾値TH2)を上回っている場合、当該位置に欠陥があると判定し、そうでない場合、当該3つのエコー強度-位置関係からでは欠陥が見つからないと判定する。また、欠陥判定部407は、当該欠陥が存在する角鋼Mの断面領域は、ステップS801で選択された探傷範囲セットに含まれる垂直探傷を行う場合の探傷範囲(またはその周辺)であると判定する。欠陥判定部407は、このような判定を、角鋼Mの長手方向の全ての位置において行う。
【0085】
次に、ステップS806において、欠陥検出装置400は、第1の条件~第4の条件に対応する4つの探傷範囲セットが、ステップS801で選択されたか否かを判定する。この判定の結果、第1の条件~第4の条件に対応する4つの探傷範囲セットが、ステップS801で選択されていない場合、処理はステップS801に戻る。そして、4つの探傷範囲セットについてステップS801~S805の処理が行われるまでステップS801~S806の処理が繰り返し実行される。これにより、第1の条件~第4の条件を満足するか否かが、角鋼Mの長手方向の全ての位置で判定される。
【0086】
そして、第1の条件~第4の条件に対応する4つの探傷範囲セットが、ステップS801で選択されると、処理はステップS807に進む。処理がステップS807に進むと、出力部408は、ステップS805における欠陥の探索結果を示す情報を出力する。出力部408は、欠陥の探索結果を示す情報として、例えば、欠陥が存在する角鋼Mの長手方向の位置と、欠陥が存在する角鋼Mの断面領域とを含む情報を出力することができる。また、出力部408は、欠陥が1つもなければ、そのことを示す情報を、欠陥の探索結果を示す情報として出力する。そして、図8のフローチャートによる処理が終了する。
【0087】
図9および図10は、エコー強度-位置関係の具体例を示す図である。ここでは、長手方向の長さが10600(mm)の角鋼Mについてのエコー強度-位置関係を示す。図9および図10において、横軸は、角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の位置を示す。ここでは、角鋼Mの尾端の位置を0(mm)として横軸の値を表記する。また、図9および図10において、縦軸は、最大エコー強度を示す。最大エコー強度の単位は、例えばdBであるが、ここでは、最大エコー強度を相対値で示す(ここでの最大エコー強度は無次元量である)。
【0088】
図9(a)、図9(b)、図9(c)、図9(d)は、それぞれ、超音波プローブ110a、110b、110c、110dによる垂直探傷を行った場合のエコー強度-位置関係である。図10(a)、図10(b)、図10(c)、図10(d)は、それぞれ、超音波プローブ110a、110b、110c、110dによる斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係である。図10では、+斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係と、-斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係とを合成して示す。例えば、図10(a)は、超音波プローブ110aによる+斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係と、超音波プローブ110aによる-斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係とを合成したものである。
【0089】
前述したように、第1の条件は、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲311と、超音波プローブ110bにより+斜角探傷を行う場合の探傷範囲322と、超音波プローブ110dにより-斜角探傷を行う場合の探傷範囲343とのうち、少なくとも2つの探傷範囲で欠陥があるという条件である。この条件に対応するエコー強度-位置関係は、図9(a)、図10(b)、および図10(d)に示すエコー強度-位置関係である。
【0090】
図9(a)、図10(b)、および図10(d)において、横軸(角鋼Mの長手方向(Y軸方向)の位置)が4500(mm)付近から5300(mm)付近の範囲で、最大エコー強度が大きくなっている。実際に角鋼Mを確認した結果、当該範囲内において、超音波プローブ110aにより垂直探傷を行う場合の探傷範囲311内に欠陥があった。
【0091】
従って、図10(b)、図10(d)において、横軸が4500(mm)付近から5300(mm)付近の範囲で、最大エコー強度が大きくなっているのは、それぞれ、超音波プローブ110bによる+斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係と、超音波プローブ110dによる-斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係に起因するものであると推測される(即ち、超音波プローブ110bによる-斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係と、超音波プローブ110dによる+斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係による寄与は小さいと考えられる)。
【0092】
このような3つのエコー強度-位置関係のうち2つ以上のエコー強度-位置関係において閾値を上回るか否かを判定することによって、エコー強度-位置関係に対する閾値を小さく設定しても、超音波の入射面の凹部や、超音波が伝搬する水の中の気泡によるノイズを欠陥であると誤検知することを抑制することができる。例えば、図9(a)において、仮に、横軸が8500(mm)付近で最大エコー強度が大きくなっていたとしても(閾値を上回ったとしても)、図10(b)および図10(d)において、横軸が8500(mm)付近で最大エコー強度が大きくなっていなければ(閾値を上回っていなければ)、横軸が8500(mm)付近で欠陥があるとは判定されない。従って、ノイズを欠陥として検出することを抑制するために閾値を大きく設定する必要がなくなるため、欠陥を適切に検出することができる。
【0093】
また、図9(a)における最大エコー強度に比べて、図10(b)および図10(d)に示す最大エコー強度は小さい。従って、例えば、全てのエコー強度-位置関係に対する第1の閾値TH1を同じにしている場合、図9(a)におけるエコー強度-位置関係では、最大エコー強度が閾値を上回らない可能性がある。これに対し、図9(a)におけるエコー強度-位置関係に対する閾値を、図10(b)および図10(d)におけるエコー強度-位置関係に基づいて、第1の閾値TH1よりも小さい第2の閾値THに変更すれば、図9(a)におけるエコー強度-位置関係でも、欠陥を検出し易くすることができる。即ち、欠陥の向き等によってエコー強度が小さい場合でも当該欠陥を検出し易くすることができる。
【0094】
以上のように本実施形態では、欠陥検出装置400は、相互に異なる超音波プローブにより行われる、垂直探傷、+斜角探傷、および-斜角探傷のうち、少なくとも2つの探傷による探傷範囲の少なくとも一部が相互に重なるように探傷範囲を設定する。欠陥検出装置400は、垂直探傷を行った場合のエコー強度-位置関係と、当該垂直探傷における探傷範囲と一部が重なる探傷範囲を+斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係と、当該垂直探傷における探傷範囲と一部が重なる探傷範囲を-斜角探傷を行った場合のエコー強度-位置関係とを導出する。欠陥検出装置400は、これら3つのエコー強度-位置関係のうち2つ以上のエコー強度-位置関係において、角鋼Mの長手方向の同一の位置で最大エコー強度が閾値を上回っている場合、当該位置に欠陥があると判定する。従って、超音波の入射面の状態や、超音波プローブと当該超音波プローブから送信される超音波の入射面との間の領域の状態に基づくノイズを、角鋼Mの内部に存在する欠陥であると誤検知することを抑制することができる。
【0095】
また、本実施形態では、水柱式の超音波探傷を行うので、前述した3つのエコー強度-位置関係のそれぞれに、気泡によるノイズが含まれることを抑制することができる。従って、角鋼Mの内部に存在する欠陥をより高精度に検知することができる。
【0096】
また、本実施形態では、欠陥検出装置400は、前述した3つのエコー強度-位置関係のうち、最大エコー強度が第1の閾値を上回るエコー強度-位置関係において、当該最大エコー強度が第1の閾値を上回る位置を特定する。そして、欠陥検出装置400は、前述した3つのエコー強度-位置関係のうち、何れの位置においても最大エコー強度が第1の閾値を上回らないエコー強度-位置関係の、当該特定した位置を含む位置の閾値を、第1の閾値から当該第1の閾値よりも小さい第2の閾値に変更する。従って、第2の閾値に変更したエコー強度-位置関係における欠陥の検知の精度を向上させることができる。よって、角鋼Mの内部に存在する欠陥をより高精度に検知することができる。
【0097】
尚、以上説明した本発明の実施形態のうち、欠陥検出装置400が有する機能は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0098】
110a~110d:超音波プローブ、120a~120d:ホルダー、311~313・321~322・331・341・343:探傷範囲、400:欠陥検出装置、401:被探傷材検出部、402:超音波出力指示部、403:反射エコー取得部、404:位置導出部、405:反射エコー処理部、406:記憶部、407:欠陥判定部、408:出力部
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10