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特許7381896レンズ駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20231109BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20231109BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20231109BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20231109BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20231109BHJP
   G02B 7/04 20210101ALN20231109BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G02B7/02 Z
H04N23/50
H04N23/57
G03B30/00
G02B7/04 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020081215
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021175992
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝本 征宏
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014702(JP,A)
【文献】特開2018-173580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0355120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
G02B 7/02
H04N 23/50
H04N 23/57
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1固定部と、
前記第1固定部に対して光軸方向に離間して配置される第1可動部と、
前記第1固定部と前記第1可動部とを連結する支持部と、
前記第1可動部を移動させるための駆動部と、を備え、
前記駆動部の駆動力を受けて、前記第1可動部が前記光軸方向に直交する光軸直交面内で移動することにより振れ補正を行うレンズ駆動装置であって、
前記光軸方向から見た平面視において前記光軸直交面内の互いに直交するX方向及びY方向に拡がる矩形形状を有し、
前記支持部は、前記光軸方向に延在するサスペンションワイヤーで構成され、
前記X方向及び前記Y方向における前記第1可動部の移動可能ストロークが第1の移動ストロークL1の範囲に収まるように、前記第1可動部の移動を規制するXY方向移動規制部と、
前記X方向及び前記Y方向と45°をなす中間方向における前記第1可動部の移動可能ストロークが第2の移動ストロークL2の範囲に収まるように、前記第1可動部の移動を規制する中間方向移動規制部と、を備え、
前記第2の移動ストロークL2は、L1≦L2<√2×L1を満たし、
前記中間方向移動規制部は、前記矩形形状の四隅に対応する位置に設けられ、
それぞれの前記中間方向移動規制部は、
光軸方向受光側に突出するように前記第1固定部に設けられる固定側規制部と、
前記第1可動部に設けられる可動側規制部と、を有し、
前記固定側規制部及び前記可動側規制部は、それぞれ、前記中間方向において対向する中間方向対向面を有し、
前記固定側規制部は、前記サスペンションワイヤーを挟むように2つに分割して配置されている、
レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記可動側規制部は、前記第1可動部の平面視における外形よりも内側に凹むように設けられ、
前記固定側規制部及び前記可動側規制部は、それぞれ、前記光軸方向において対向する光軸方向対向面を有し、
前記固定側規制部の前記光軸方向対向面と前記可動側規制部の前記光軸方向対向面との離間距離は、前記第1固定部と前記第1可動部との離間距離よりも小さい、
請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記第1固定部及び前記第1可動部の少なくとも一方に露出した状態で配置され、
前記第1固定部と前記第1可動部との離間距離は、前記駆動部が配置されている部分の離間距離である、
請求項2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記第1固定部に配置されるコイルと、前記コイルと前記光軸方向に対向して前記第1可動部に配置されるマグネットと、を有し、
前記第1固定部と前記第1可動部との離間距離は、前記コイル及び前記マグネットが配置されている部分の離間距離である、
請求項3に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記第1可動部は、前記光軸方向に移動可能な第2可動部を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記第1の移動ストロークL1と前記第2の移動ストロークL2は同じである、請求項1からのいずれか一項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載のレンズ駆動装置と、
前記第1可動部に装着されるレンズ部と、
前記レンズ部により結像された被写体像を撮像する撮像部と、
を備えるカメラモジュール。
【請求項8】
情報機器または輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
請求項に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、
を備えるカメラ搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スマートフォン等の携帯端末には、小型のカメラモジュールが搭載されている。このようなカメラモジュールには、被写体を撮影するときのオートフォーカスを自動的に行うオートフォーカス機能(以下、「AF機能」と称する、AF:Auto Focus)及び撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して画像の乱れを軽減する振れ補正機能(以下、「OIS機能」と称する、OIS:Optical Image Stabilization)を有するレンズ駆動装置が適用される。
【0003】
AF機能及びOIS機能を有するレンズ駆動装置は、レンズ部を光軸方向に移動させるためのオートフォーカス駆動部(以下、「AF駆動部」と称する)と、レンズ部を光軸方向に直交する光軸直交面内で揺動させるための振れ補正駆動部(以下、「OIS駆動部」と称する)を備える。特許文献1では、AF駆動部及びOIS駆動部に、ボイスコイルモーター(VCM)が適用されている。
【0004】
オートフォーカス時に光軸方向に移動可能なオートフォーカス可動部(以下、「AF可動部」と称する)は、例えば、オートフォーカス固定部(以下、「AF固定部」と称する)に対して径方向に離間して配置される。振れ補正時に光軸直交面内で揺動する振れ補正可動部(以下、「OIS可動部」と称する)は、AF可動部、AF固定部及びAF駆動部を含むAFユニットで構成され、例えば、振れ補正固定部(以下、「OIS固定部」と称する)に対して光軸方向に離間して配置される。
【0005】
OIS可動部は、例えば、サスペンションワイヤー等のOIS支持部によって、OIS固定部に接続され、光軸直交面内で揺動可能となっている。このようなレンズ駆動装置においては、適正に振れ補正を行うことができる程度を示す保証ストロークが規定されている。そして、サスペンションワイヤーの強度などは、少なくとも、OIS可動部が保証ストロークの範囲内で移動するときに座屈等の不具合が生じないように設計されている。また、互いに直交するX方向及びY方向におけるOIS可動部の移動は、OIS可動部がカバーに当接するなどして、物理的に規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-210550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のように、OIS可動部のX方向及びY方向の移動を規制するだけでは、X方向及びY方向と45°をなす中間方向における移動可能ストローク(物理的に移動可能なストローク)は、X方向及びY方向における移動可能ストローク(例えば、保証ストロークと同じ)の√2倍となる。すなわち、OIS可動部は、中間方向において、保証ストロークを越えて移動可能となっている。
そのため、保証ストロークに基づいてサスペンションワイヤーを設計した場合、中間方向におけるOIS可動部の移動によって、サスペンションワイヤーに想定以上の負荷が加わり、座屈等の不具合を生じる虞がある。一方、中間方向におけるOIS可動部の移動可能ストロークを考慮してサスペンションワイヤーを設計した場合、ワイヤー径が増大する等して、レンズ駆動装置の小型化及び軽量化が阻害される虞がある。
【0008】
本発明の目的は、サスペンションワイヤーに想定以上の負荷が加わるのを抑制でき、信頼性の向上を図ることができるレンズ駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレンズ駆動装置は、
第1固定部と、
前記第1固定部に対して光軸方向に離間して配置される第1可動部と、
前記第1固定部と前記第1可動部とを連結する支持部と、
前記第1可動部を移動させるための駆動部と、を備え、
前記駆動部の駆動力を受けて、前記第1可動部が前記光軸方向に直交する光軸直交面内で移動することにより振れ補正を行うレンズ駆動装置であって、
前記光軸方向から見た平面視において前記光軸直交面内の互いに直交するX方向及びY方向に拡がる矩形形状を有し、
前記支持部は、前記光軸方向に延在するサスペンションワイヤーで構成され、
前記X方向及び前記Y方向における前記第1可動部の移動可能ストロークが第1の移動ストロークL1の範囲に収まるように、前記第1可動部の移動を規制するXY方向移動規制部と、
前記X方向及び前記Y方向と45°をなす中間方向における前記第1可動部の移動可能ストロークが第2の移動ストロークL2の範囲に収まるように、前記第1可動部の移動を規制する中間方向移動規制部と、を備え、
前記第2の移動ストロークL2は、L1≦L2<√2×L1を満たし、
前記中間方向移動規制部は、前記矩形形状の四隅に対応する位置に設けられ、
それぞれの前記中間方向移動規制部は、
光軸方向受光側に突出するように前記第1固定部に設けられる固定側規制部と、
前記第1可動部に設けられる可動側規制部と、を有し、
前記固定側規制部及び前記可動側規制部は、それぞれ、前記中間方向において対向する中間方向対向面を有し、
前記固定側規制部は、前記サスペンションワイヤーを挟むように2つに分割して配置されている
【0010】
本発明に係るカメラモジュールは、
上記のレンズ駆動装置と、
前記第1可動部に装着されるレンズ部と、
前記レンズ部により結像された被写体像を撮像する撮像部と、
を備える。
【0011】
本発明に係るカメラ搭載装置は、
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
上記のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サスペンションワイヤーに想定以上の負荷が加わるのを抑制でき、信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1A図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するスマートフォンを示す図である。
図2図2は、カメラモジュールの外観斜視図である。
図3図3は、レンズ駆動装置のカバーを外した状態を示す斜視図である。
図4図4は、レンズ駆動装置の概略構成を示す分解斜視図である。
図5図5は、レンズ駆動装置の詳細構成を示す分解斜視図である。
図6図6は、レンズ駆動装置の詳細構成を示す分解斜視図である。
図7図7は、レンズ駆動装置の中間方向移動規制部を示す斜視図である。
図8図8A図8Bは、レンズ駆動装置の光軸直交面内における移動規制構造を示す平面図である。
図9図9A図9Bは、レンズ駆動装置の光軸直交面内での移動可能ストロークを示す平面図である。
図10図10A図10Bは、車載用カメラモジュールを搭載するカメラ搭載装置としての自動車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1A図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールAを搭載するスマートフォンM(カメラ搭載装置の一例)を示す図である。図1AはスマートフォンMの正面図であり、図1BはスマートフォンMの背面図である。
【0016】
本実施の形態では、スマートフォンMの背面カメラOC1に、カメラモジュールAが適用されている。カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を備え、被写体を撮影するときのオートフォーカスを自動的に行うとともに、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して像ぶれのない画像を撮影することができる。
【0017】
図2は、カメラモジュールAの外観斜視図である。図2に示すように、実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。また、X方向及びY方向と45°をなす中間方向、すなわち、カメラモジュールAを光軸方向から見た平面視形状における対角方向をU方向、V方向として説明する。
【0018】
カメラモジュールAは、スマートフォンMで実際に撮影が行われる場合に、X方向が上下方向(又は左右方向)、Y方向が左右方向(又は上下方向)、Z方向が前後方向となるように搭載される。すなわち、Z方向が光軸方向であり、図中上側が光軸方向受光側(「マクロ位置側)ともいう)、下側が光軸方向結像側(「無限遠位置側」ともいう)となる。また、Z軸に直交するX方向及びY方向を「光軸直交方向」と称する。
【0019】
カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を実現するレンズ駆動装置1、円筒形状のレンズバレルにレンズが収容されてなるレンズ部2、及びレンズ部2により結像された被写体像を撮像する撮像部3等を備える。
【0020】
撮像部3は、レンズ駆動装置1の光軸方向結像側に配置される。撮像部3は、例えば、イメージセンサー基板41、撮像素子42、及びレンズ駆動装置1の駆動制御をおこなう制御部43等を有する。レンズ駆動装置1は、イメージセンサー基板41に搭載され、機械的かつ電気的に接続される。撮像素子42は、例えば、CCD(charge-coupled device)型イメージセンサー、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサー等により構成される。撮像素子42は、イメージセンサー基板41に実装され、レンズ部2により結像された被写体像を撮像する。制御部43は、レンズ駆動装置1の駆動制御をおこなう。制御部43は、イメージセンサー基板41に実装されてもよいし、カメラモジュールAが搭載されるカメラ搭載機器(実施の形態では、スマートフォンM)に設けられてもよい。
【0021】
レンズ駆動装置1は、図3に示すように、駆動装置本体(符号略)の外側をカバー25で覆われている。カバー25は、光軸方向から見た平面視で矩形形状の有蓋四角筒体であり、上面に開口251を有する。この開口251からレンズ部2が外部に臨む。カバー25は、レンズ駆動装置1のベース21に、例えば、接着により固定される。すなわち、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見た平面視において、X方向及びY方向に拡がる矩形形状を有している。以下の説明において、「平面視」とは光軸方向から見た平面視のことを意味する。
【0022】
図4は、レンズ駆動装置1の概略構成を示す分解斜視図である。図5図6は、レンズ駆動装置1の詳細構成を示す分解斜視図である。なお、図4図6では、カバー25を省略して示している。
機能的に説明すると、レンズ駆動装置1は、図4に示すように、OIS可動部M1、OIS固定部F1、OIS駆動部D1、OIS支持部S1、AF可動部M2、AF固定部F2、AF駆動部D2及びAF支持部S2を備える。
【0023】
OIS可動部M1は、振れ補正時に、OIS駆動部D1の駆動力を受けて光軸直交面内で揺動する部分であり、本実施の形態では、AF可動部M2、AF固定部F2、AF駆動部D2及びAF支持部S2を含むAFユニットで構成されている。
OIS固定部F1は、OIS可動部M1を支持する部分であり、本実施の形態では、ベース21で構成されている。OIS固定部F1は、例えば、OIS可動部M1に対して光軸方向結像側に離間して配置される。
OIS支持部S1は、OIS可動部M1とOIS固定部F1を連結する部分であり、OIS可動部M1を光軸直交面内で揺動可能に支持する。本実施の形態では、OIS支持部S1は、四隅に配置されるサスペンションワイヤー24で構成されている。
OIS駆動部D1は、OIS固定部F1に配置されるOIS用コイル23A~23Dと、OIS可動部M1に配置される駆動用マグネット14A~14D(OIS用マグネット)とで構成される。すなわち、OIS駆動部D1には、ムービングマグネット方式のボイスコイルモーターが適用されている。なお、OIS駆動部D1は、ムービングコイル方式のボイスコイルモーターで構成されてもよい。
【0024】
AF可動部M2は、オートフォーカス時に、AF駆動部D2の駆動力を受けて光軸方向に移動する部分であり、本実施の形態では、レンズホルダー11で構成されている。
AF固定部F2は、AF可動部M2を支持する部分であり、本実施の形態では、マグネットホルダー12で構成されている。AF固定部F2は、例えば、AF可動部M2対して径方向外側に離間して配置される。
AF支持部S2は、AF可動部M2とAF固定部F2を連結する部分であり、本実施の形態では、光軸方向受光側(上側)に配置される上側弾性支持部材15及び光軸方向結像側(下側)に配置される下側弾性支持部材16とで構成されている。
AF駆動部D2は、オートフォーカス時にAF可動部M2を駆動する部分であり、本実施の形態では、AF可動部M2に配置されるAF用コイル13と、AF固定部F2に配置される駆動用マグネット14A~14D(AF用マグネット)とで構成されている。すなわち、本実施の形態のAF駆動部D2には、ムービングコイル方式のボイスコイルモーターが適用されている。なお、AF駆動部D2は、ムービングマグネット方式のボイスコイルモーターで構成されてもよい。
【0025】
レンズ駆動装置1では、適正に振れ補正を行うことができる程度を示す保証ストロークが規定されている。すなわち、OIS可動部M1、OIS固定部F1、OIS駆動部D1及びOIS支持部S1は、保証ストロークを実現するように、構成部材の形状、大きさ及び強度等が設定されている。
【0026】
構造的に説明すると、レンズ駆動装置1は、図5図6に示すように、レンズホルダー11、マグネットホルダー12、AF用コイル13、駆動用マグネット14A~14D、上側弾性支持部材15、下側弾性支持部材16、ベース21、コイル基板22、OIS用コイル23A~23D、及びサスペンションワイヤー24等を有する。
【0027】
レンズホルダー11は、AF可動部M2として機能する部材であり、筒状のレンズ収容部111においてレンズ部2(図2参照)を保持する。レンズ収容部111には、レンズ部2が接着又は螺合により固定される。本実施の形態では、レンズホルダー11は、平面視で概略八角形状の外形を有している。また、レンズホルダー11の周面には、AF用コイル13が取り付けられる。
【0028】
レンズホルダー11は、上面(レンズ収容部111の上端面)に、上側弾性支持部材15が固定される上バネ固定部1112を有する。上バネ固定部112には、例えば、光軸方向受光側に突出する位置決めボス(符号略)が設けられ、この位置決めボスによって、上側弾性支持部材15が位置決めされるようになっている。
【0029】
レンズホルダー11は、下面に、下側弾性支持部材16が固定される下バネ固定部113を有する。下バネ固定部113には、例えば、光軸方向結像側に突出する位置決めボス(符号略)が設けられ、この位置決めボスによって、下側弾性支持部材16が位置決めされるようになっている。
【0030】
また、レンズホルダー11は、上面において、AF用コイル13の端部が接続される絡げ部114を有する。また、レンズホルダー11は、レンズ収容部111の外周面の上部に、径方向外側に突出する凸部115を有する。本実施の形態では、X方向及びY方向に対向する4箇所に、凸部115が設けられている。
【0031】
マグネットホルダー12は、4つの側部壁体122が連結された平面視で略矩形筒状の保持部材である。マグネットホルダー12は、レンズホルダー11の平面視における略八角形状の外形に対応する部分が切り欠かれた開口121を有する。
【0032】
マグネットホルダー12は、4つの側部壁体122の連結部(マグネットホルダー12の四隅)の内側に、マグネット保持部123を有する。マグネット保持部123に、駆動用マグネット14A~14Dが固定される。マグネット保持部123には、例えば、外部に連通する開口(符号略)が設けられ、マグネット保持部123と駆動用マグネット14A~14Dとの接触面に接着剤を注入できるようになっている。
【0033】
マグネットホルダー12は、側部壁体122の外周面において、連結部の上部に、径方向内側に円弧状に凹むワイヤー挿通部124を有する。ワイヤー挿通部124に、サスペンションワイヤー24が配置される。ワイヤー挿通部124を設けることにより、OIS可動部M1が揺動する際に、サスペンションワイヤー24とマグネットホルダー12が干渉するのを回避することができる。
【0034】
マグネットホルダー12は、側部壁体122の上面に、上側弾性支持部材15を固定するための上バネ固定部126を有する。上バネ固定部126において、ワイヤー挿通部124の周縁は、上側弾性支持部材15の取付面よりも下側に凹んで形成され、上側弾性支持部材15を取り付けたときに、隙間が形成されるようになっている。
また、マグネットホルダー12は、側部壁体122の下面に、下側弾性支持部材16を固定するための下バネ固定部127を有する。
【0035】
マグネットホルダー12は、側部壁体122の上部において、レンズホルダー11の凸部115と対応する位置に、光軸方向受光側から結像側に向かって凹む凹部125を有する。レンズホルダー11が光軸方向結像側に移動する際、マグネットホルダー12の凹部125にレンズホルダー11の凸部115が係止されることにより、レンズホルダー11の光軸方向結像側への移動が規制される。
【0036】
また、マグネットホルダー12の上面には、光軸方向受光側に突出する複数の突出部128が設けられている。突出部128を設けることにより、落下等により光軸方向の外力が作用したときに、カバー25とレンズ駆動装置1の主要部とが直接衝突するのを回避でき、レンズ駆動装置1の故障を抑制することができる。
【0037】
さらに、マグネットホルダー12は、OIS可動部M1のU方向及びV方向における移動を規制する可動側規制部129を有している。可動側規制部129は、ベース21の固定側規制部212とともに、中間方向移動規制部52を構成する(図7参照)。
本実施の形態では、可動側規制部129は、側部壁体122の外周面において、連結部の下部(ワイヤー挿通部124の下方)に、マグネットホルダー12の外形よりも内側(光軸側)に凹むように設けられている。可動側規制部129は、U方向又はV方向に垂直な中間方向対向面129aを有するとともに、光軸方向に垂直な光軸方向対向面129bを有する。
【0038】
AF用コイル13は、オートフォーカス時に通電される空芯コイルであり、レンズホルダー11のコイル巻線部の外周面に巻線される。AF用コイル13は、駆動用マグネット14A~14DとともにAF駆動部D2として機能するボイスコイルモーターを構成する。AF用コイル13の両端は、それぞれ、レンズホルダー11の絡げ部114に絡げられる。AF用コイル13には、例えば、サスペンションワイヤー24及び上側弾性支持部材15を介して通電が行われる。AF用コイル13の通電電流は、例えば、制御部43によって制御される。
【0039】
駆動用マグネット14A~14Dは、マグネットホルダー12のマグネット保持部123に、例えば、接着により固定される。本実施の形態では、駆動用マグネット14A~14Dは、平面視で、略等脚台形状を有している。これにより、マグネットホルダー12の角部のスペース(マグネット保持部123)を有効利用することができる。
【0040】
駆動用マグネット14A~14Dは、AF用コイル13に対して径方向に離間し、OIS用コイル23A~23Dに対して光軸方向に離間して配置される。駆動用マグネット14A~14Dは、AF用コイル13を径方向(U方向又はV方向)に横切るとともに、OIS用コイル23A~23Dを光軸方向(Z方向)に横切る磁界が形成されるように着磁される。駆動用マグネット14A~14Dは、AF用コイル13とともにAF駆動部D2として機能するボイスコイルモーターを構成する。また、駆動用マグネット14A~14Dは、OIS用コイル23A~23DとともにOIS駆動部D1として機能するボイスコイルモーターを構成する。すなわち、本実施の形態では、駆動用マグネット14A~14Dは、AF用マグネットとOIS用マグネットを兼用している。
【0041】
上側弾性支持部材15は、AF固定部F2であるマグネットホルダー12に対してAF可動部M2であるレンズホルダー11を光軸方向受光側で弾性的に支持する。上側弾性支持部材15は、例えば、チタン銅、ニッケル銅、ステンレス等で形成される。上側弾性支持部材15は、全体として平面視で矩形状、すなわちマグネットホルダー12と同等の形状を有する。上側弾性支持部材15は、2つの板バネで構成され、マグネットホルダー12上に互いに接触しないように配置される。上側弾性支持部材15は、例えば、一枚の板金をエッチング加工することにより形成される。
【0042】
上側弾性支持部材15は、レンズホルダー11に固定されるレンズホルダー固定部151、マグネットホルダー12に固定されるマグネットホルダー固定部152、及びレンズホルダー11の移動に伴い弾性変形するアーム部153を有する。
【0043】
レンズホルダー固定部151は、レンズホルダー11の上バネ固定部112に対応する形状を有している。レンズホルダー固定部151は、レンズホルダー11が光軸方向に移動するときに、レンズホルダー11とともに変位する。マグネットホルダー固定部152は、マグネットホルダー12の上バネ固定部126に対応する形状を有する。アーム部153は、レンズホルダー固定部151とマグネットホルダー固定部152を連結する。アーム部153は、曲がりくねった形状を有し、レンズホルダー11が移動するときに弾性変形しやすいようになっている。
【0044】
上側弾性支持部材15は、レンズホルダー11及びマグネットホルダー12に対して位置決めされ、例えば、接着により固定される。レンズホルダー固定部151の一部は、レンズホルダー11の絡げ部114に絡げられたAF用コイル13と、例えば、半田付けにより、電気的に接続される。また、マグネットホルダー固定部152の端部(角部)は、サスペンションワイヤー24と接続される(ワイヤー接続部154)。上側弾性支持部材15は、サスペンションワイヤー24とともに、端子金具27からAF用コイル13への給電経路を形成する。
【0045】
下側弾性支持部材16は、AF固定部F2であるマグネットホルダー12に対してAF可動部M2であるレンズホルダー11を光軸方向結像側で弾性的に支持する。下側弾性支持部材16は、例えば、チタン銅、ニッケル銅、ステンレス等で形成される。下側弾性支持部材16は、全体として平面視で矩形状、すなわちマグネットホルダー12と同等の形状を有する。下側弾性支持部材16は、例えば、一枚の板金をエッチング加工することにより形成される。
【0046】
下側弾性支持部材16は、レンズホルダー11に固定されるレンズホルダー固定部161、マグネットホルダー12に固定されるマグネットホルダー固定部162、及びレンズホルダー11の移動に伴い弾性変形するアーム部163を有する。
【0047】
レンズホルダー固定部161は、レンズホルダー11の下バネ固定部113に対応する形状を有している。レンズホルダー固定部161は、レンズホルダー11が光軸方向に移動するときに、レンズホルダー11とともに変位する。マグネットホルダー固定部162は、マグネットホルダー12の上バネ固定部128に対応する形状を有する。アーム部163は、レンズホルダー固定部161とマグネットホルダー固定部162を連結する。アーム部163は、曲がりくねった形状を有し、レンズホルダー11が移動するときに弾性変形しやすいようになっている。
下側弾性支持部材16は、レンズホルダー11及びマグネットホルダー12に対して位置決めされ、例えば、接着により固定される。
【0048】
ベース21は、平面視で矩形形状を有し、中央に円形の開口211が形成されている。カメラモジュールAにおいて、ベース21の光軸方向結像側に、撮像素子42を実装したイメージセンサー基板41が配置される。
【0049】
ベース21には、例えば、インサート成形により、端子金具26、27が埋め込まれている。
端子金具26は、イメージセンサー基板41の配線パターンと電気的に接続され、OIS用コイル23A~23D及び磁気センサー31A、31Bに給電するための電源ライン、並びに磁気センサー31A、31Bから出力される検出信号用の信号ラインを形成する。
端子金具27は、ベース21の四隅から露出し、サスペンションワイヤー24の他端と、はんだ付けにより接続される。4つの端子金具27のうちの2つは、イメージセンサー基板41の配線パターンと電気的に接続され、AF用コイル13に給電するための電源ラインを形成する。
【0050】
また、ベース21は、OIS可動部M1のU方向及びV方向における移動を規制する固定側規制部212を有している。固定側規制部212は、マグネットホルダー12の可動側規制部129とともに、中間方向移動規制部52を構成する(図7参照)。
本実施の形態では、固定側規制部212は、ベース21の四隅において、光軸方向受光側に突出するように設けられている。固定側規制部212は、例えば、三角柱形状を呈し、U方向又はV方向に垂直な中間方向対向面212aを有するとともに、光軸方向に垂直な光軸方向対向面212bを有する。なお、本実施の形態では、一つの隅部に対して、2つの固定側規制部212が、サスペンションワイヤー24を挟むように配置されているが、固定側規制部212の形態はこれに限定されない。例えば、2つの固定側規制部212の中間方向対向面212aが連結されてもよい。
【0051】
中間方向対向面212aは、マグネットホルダー12の中間方向対向面129aと、U方向又はV方向において対向する。OIS可動部M1が光軸直交面内で揺動する際、中間方向対向面129a、212aが当接することにより、OIS可動部M1のU方向及びV方向への移動が規制される。
また、光軸方向対向面212bは、マグネットホルダー12の光軸方向対向面129bと、光軸方向において対抗する。光軸方向対向面212b、129bの離間距離は、OIS可動部M1とOIS固定部F1との離間距離よりも小さく設定される。これにより、落下等により光軸方向の外力が作用したときに、レンズ駆動装置1の主要部(例えば、OIS用コイル23A~23Dと駆動用マグネット14A~14D等)が直接衝突するのを回避でき、レンズ駆動装置1の故障を抑制することができる。
【0052】
コイル基板22は、ベース21と同様に平面視で矩形形状の基板であり、中央に円形の開口221を有する。コイル基板22は、OIS用コイル23A~23D及び磁気センサー31A、31Bに給電するための電源ライン、並びに磁気センサー31A、31Bから出力される検出信号用の信号ラインを含む配線パターン(図示略)を有する。配線パターンは、ベース21に配置された端子金具26と電気的に接続される。
【0053】
OIS用コイル23A~23Dは、光軸方向において、駆動用マグネット14A~14Dと対向する位置に配置される。OIS用コイル23A~23Dは、例えば、コイル基板22の製造工程において、コイル基板22の内部に作り込まれる。
【0054】
OIS用コイル23A~23Dは、振れ補正時に通電される空芯コイルである。駆動用マグネット14A~14Dの径方向のエッジがOIS用コイル23A~23Dのそれぞれのコイル断面幅に入るように、すなわち、駆動用マグネット14A~14Dの底面から放射される磁界がOIS用コイル23A~23Dの対向する2辺を横切って駆動用マグネット14A~14Dに戻るように、OIS用コイル23A~23D及び駆動用マグネット14A~14Dの大きさや配置が設定される。ここでは、OIS用コイル23A~23Dは、駆動用マグネット14A~14Dの平面形状(ここでは略等脚台形形状)と同様の形状を有している。これにより、OIS可動部M1を光軸直交面内で揺動させるための駆動力(電磁力)を、効率よく発生させることができる。OIS用コイル23A~23Dの通電電流は、例えば、制御部43によって制御される。
【0055】
U方向に対向して配置されるOIS用コイル23A、23Cと、V方向に対向して配置されるOIS用コイル23B、23Dは、それぞれ結線されており、同じ電流が通電される。駆動用マグネット14A、14CとOIS用コイル23A、23Cとで、OIS可動部M1をU方向に揺動させるOIS用ボイスコイルモーターが構成される。また、駆動用マグネット14B、14DとOIS用コイル23B、23Dとで、OIS可動部M1をV方向に揺動させるOIS用ボイスコイルモーターが構成される。
【0056】
コイル基板22の下面には、磁気センサー31A、31Bが実装される。磁気センサー31A、31Bは、例えば、ホール素子又はTMR(Tunnel Magneto Resistance)センサー等で構成され、それぞれ、光軸方向において駆動用マグネット14A、14Bと対向する位置に配置される。本実施の形態では、磁気センサー31A、31Bは、それぞれ、OIS用コイル23A、23Bの空芯部分の裏面に配置されている。
【0057】
駆動用マグネット14A、14Bによって形成される磁界を、磁気センサー31A、31Bで検出することにより、光軸直交面内におけるOIS可動部M1の位置を特定することができる。すなわち、本実施の形態では、磁気センサー31A、31B及び駆動用マグネット14A、14Bにより、XY位置検出部が構成されている。なお、駆動用マグネット14A、14Bとは別に、OIS可動部M1のXY位置検出用のマグネットをOIS可動部M1に配置するようにしてもよい。つまり、本実施の形態では、駆動用マグネット14A、14Bが、XY位置検出用のマグネットを兼用している。
【0058】
サスペンションワイヤー24は、光軸方向に延在する線状部材であり、OIS可動部M1の揺動に伴い弾性変形する。サスペンションワイヤー24の一端(光軸方向受光側の端部、上端)はOIS可動部M1(本実施の形態では上側弾性支持部材15)に固定され、他端(光軸方向結像側の端部)はOIS固定部F1(本実施の形態ではベース21)に固定される。本実施の形態において、4本のサスペンションワイヤー24のうちの2本は、上側弾性支持部材15とともにAF用コイル13への給電経路として使用される。
【0059】
レンズ駆動装置1において振れ補正を行う場合には、OIS用コイル23A~23Dへの通電が行われる。具体的には、OIS用駆動部では、カメラモジュールAの振れが相殺されるように、振れ検出部(図示略、例えばジャイロセンサー)からの検出信号に基づいて、OIS用コイル23A~23Dの通電電流が制御される。このとき、磁気センサー31A、31Bの検出結果をフィードバックすることで、OIS可動部M1の揺動を正確に制御することができる。
【0060】
OIS用コイル23A~23Dに通電すると、駆動用マグネット14A~14Dの磁界とOIS用コイル23A~23Dに流れる電流との相互作用により、OIS用コイル23A~23Dにローレンツ力が生じる(フレミング左手の法則)。ローレンツ力の方向は、OIS用コイル23A~23Dの長辺部分における磁界の方向(Z方向)と電流の方向(U方向又はV方向)に直交する方向(V方向又はU方向)である。OIS用コイル23A~23Dは固定されているので、駆動用マグネット14A~14Dに反力が働く。この反力がOIS用ボイスコイルモーターの駆動力となり、駆動用マグネット14A~14Dを有するOIS可動部M1がXY平面内で揺動し、振れ補正が行われる。
【0061】
図8A図8Bは、レンズ駆動装置1の光軸直交面内における移動規制構造を示す平面図である。
図8A図8Bに示すように、OIS可動部M1のX方向及びY方向への移動は、マグネットホルダー12の外面とカバー25の内面とが当接することにより規制される。すなわち、カバー25及びマグネットホルダー12は、X方向及びY方向におけるOIS可動部M1の移動可能ストロークが第1の移動ストロークL1(例えば、保証ストローク+120μm)の範囲内に収まるように、OIS可動部M1の移動を規制するXY方向移動規制部51を構成する。つまり、カバー25の内面とマグネットホルダー12の外面は、第1の移動ストロークL1だけ離間している。
【0062】
一方、OIS可動部M1のU方向及びV方向(中間方向)への移動は、マグネットホルダー12の可動側規制部129(中間方向対向面129a)とベース21の固定側規制部212(中間方向対向面212a)とが当接することにより規制される。すなわち、可動側規制部129及び固定側規制部212は、中間方向におけるOIS可動部M1の移動可能ストロークが第2の移動ストロークL2の範囲内に収まるように、OIS可動部M1の移動を規制する中間方向移動規制部52を構成する。つまり、マグネットホルダー12の中間方向対向面129aとベース21の中間方向対向面212aは、第2の移動ストロークL2だけ離間している。そして、第2の移動ストロークL2は、L1≦L2<√2×L1を満たすように設定されている。
【0063】
従来のレンズ駆動装置のように、中間方向移動規制部52が設けられていない場合、OIS可動部M1の中間方向における移動可能ストロークは、第1の移動可能ストロークL1の√2倍となる(図9B参照)。これに対して、本実施の形態では、中間方向移動規制部52により、OIS可動部M1の中間方向における移動可能ストロークは、第1の移動可能ストロークL1と同等(少なくとも√2未満)になる。これにより、OIS可動部M1が揺動する際に、サスペンションワイヤー24に想定以上の負荷が加わるのを抑制することができる。特に、第2の移動ストロークL2を第1の移動ストロークL1と同じに設定することで、保証ストロークに基づく最低限の特性を有する適性品質のサスペンションワイヤー24を採用することができ、レンズ駆動装置1の小型化・軽量化を図ることができる。
【0064】
レンズ駆動装置1においてオートフォーカスを行う場合には、AF用コイル13に通電が行われる。AF用コイル13への給電は、ベース21からサスペンションワイヤー24及び上側弾性支持部材15を介して行われる。AF用コイル13に通電すると、駆動用マグネット14A~14Dの磁界とAF用コイル13に流れる電流との相互作用により、AF用コイル13にローレンツ力が生じる。ローレンツ力の方向は、駆動用マグネット14A~14Dによる磁界の方向とAF用コイル13に流れる電流の方向に直交する方向(Z方向)である。駆動用マグネット14A~14Dは固定されているので、AF用コイル13に反力が働く。この反力がAF用ボイスコイルモーターの駆動力となり、AF用コイル13が配置されているレンズホルダー11(AF可動部M2)が光軸方向に移動し、オートフォーカスが行われる。
【0065】
なお、オートフォーカスを行わない無通電時には、AF可動部M2(レンズホルダー11)は、例えば、AF支持部S2(上側弾性支持部材15及び下側弾性支持部材16)によって、無限遠位置とマクロ位置との間に吊られた状態(以下「基準状態」と称する)で保持される。すなわち、AF可動部M2が、AF支持部S2によって、AF固定部F2(マグネットホルダー12)に対して位置決めされた状態で、Z方向両側に変位可能に弾性支持される。オートフォーカスを行うときには、レンズホルダー11を基準状態からマクロ位置側へ移動させるか、無限遠位置側に移動させるかに応じて、電流の向きが制御される。また、レンズホルダー11の基準状態からの移動距離(ストローク)に応じて、電流の大きさが制御される。
【0066】
このように、レンズ駆動装置1は、OIS固定部F1(第1固定部)と、OIS固定部F1に対して光軸方向に離間して配置されるOIS可動部M1(第1可動部)と、OIS固定部F1とOIS可動部M1とを連結するOIS支持部S1(支持部)と、OIS可動部M1を移動させるためのOIS駆動部D1(駆動部)と、を備え、OIS駆動部D1の駆動力を受けて、OIS可動部M1が光軸方向に直交する光軸直交面内で移動することにより振れ補正を行う。
OIS支持部S1は、光軸方向に延在するサスペンションワイヤー24で構成され、光軸直交面内の互いに直交するX方向及びY方向におけるOIS可動部M1の移動可能ストロークが第1の移動ストロークL1の範囲に収まるように、OIS可動部M1の移動を規制するXY方向移動規制部51と、X方向及びY方向と45°をなすU方向及びV方向(中間方向)におけるOIS可動部M1の移動可能ストロークが第2の移動ストロークL2の範囲に収まるように、OIS可動部M1の移動を規制する中間方向移動規制部52と、を備える。そして、第2の移動ストロークL2は、L1≦L2<√2×L1を満たす用に設定されている。
【0067】
レンズ駆動装置1によれば、OIS可動部M1が揺動する際に、サスペンションワイヤー24に想定以上の負荷が加わるのを抑制することができる。したがって、レンズ駆動装置1の信頼性が向上する。
【0068】
また、レンズ駆動装置1は、光軸方向から見た平面視においてX方向及びY方向に拡がる矩形形状を有し、中間方向移動規制部52は、矩形形状の四隅に対応する位置に設けられている。
これにより、サスペンションワイヤー24の周囲のデッドスペースを有効利用して、OIS可動部M1の中間方向における移動を規制することができる。
【0069】
また、レンズ駆動装置1において、中間方向移動規制部52は、光軸方向受光側に突出するようにOIS固定部F1に設けられる固定側規制部212と、OIS可動部M1の平面視における外形よりも内側に凹むようにOIS可動部M1に設けられる可動側規制部129と、を有し、固定側規制部212及び可動側規制部129は、それぞれ、中間方向において対向する中間方向対向面212a、129aを有する。
これにより、中間方向対向面212a、129aの面接触によりOIS可動部M1の移動が規制されるので、OIS可動部M1の中間方向における移動を確実に規制することができる。
【0070】
また、レンズ駆動装置1において、OIS可動部M1は、光軸方向に移動可能なAF可動部M2(第2可動部)を有し、固定側規制部212及び可動側規制部129は、それぞれ、光軸方向において対向する光軸方向対向面212b、129bを有する。
これにより、落下等により光軸方向の外力が作用したときに、レンズ駆動装置1の主要部(例えば、OIS用コイル23A~23Dと駆動用マグネット14A~14D等)が直接衝突するのを回避でき、レンズ駆動装置1の故障を抑制することができる。
【0071】
また、レンズ駆動装置1において、第1の移動ストロークL1と第2の移動ストロークL2は同じである。これにより、保証ストロークに基づく最低限の特性を有する適性品質のサスペンションワイヤー24を採用することができ、レンズ駆動装置1の小型化・軽量化を図ることができる。
【0072】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0073】
例えば、実施の形態では、カメラモジュールAを備えるカメラ搭載装置の一例として、カメラ付き携帯端末であるスマートフォンMを挙げて説明したが、本発明は、情報機器または輸送機器であるカメラ搭載装置に適用できる。情報機器であるカメラ搭載装置とは、カメラモジュールとカメラモジュールで得られた画像情報を処理する制御部を有する情報機器であり、例えばカメラ付き携帯電話機、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、webカメラ、カメラ付き車載装置(例えば、バックモニター装置、ドライブレコーダー装置)を含む。また、輸送機器であるカメラ搭載装置とは、カメラモジュールとカメラモジュールで得られた画像を処理する制御部を有する輸送機器であり、例えば自動車を含む。
【0074】
図10A図10Bは、車載用カメラモジュールVC(Vehicle Camera)を搭載するカメラ搭載装置としての自動車Vを示す図である。図10Aは自動車Vの正面図であり、図10Bは自動車Vの後方斜視図である。自動車Vは、車載用カメラモジュールVCとして、実施の形態で説明したカメラモジュールAを搭載する。図10A図10Bに示すように、車載用カメラモジュールVCは、例えば前方に向けてフロントガラスに取り付けられたり、後方に向けてリアゲートに取り付けられたりする。この車載用カメラモジュールVCは、バックモニター用、ドライブレコーダー用、衝突回避制御用、自動運転制御用等として使用される。
【0075】
また例えば、中間方向移動規制部の構成は実施の形態で説明したものに限定されず、適宜変更可能である。例えば、中間方向移動規制部を構成する固定側規制部は、ベース21ではなく、カバー25に設けられてもよい。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1 レンズ駆動装置
2 レンズ部
11 レンズホルダー
12 マグネットホルダー
13 AF用コイル
14A~14D 駆動用マグネット
15 上側弾性支持部材
16 下側弾性支持部材
21 ベース
22 コイル基板
23A~23D OIS用コイル
24 サスペンションワイヤー
51 XY方向移動規制部
52 中間方向移動規制部
D1 OIS駆動部(駆動部)
F1 OIS固定部(第1固定部)
M1 OIS可動部(第1可動部)
S1 OIS支持部(支持部)
M スマートフォン
A カメラモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10