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特許7381914回転子、モータ、圧縮機および空気調和装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】回転子、モータ、圧縮機および空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20231109BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20231109BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H02K1/28 A
H02K1/276
H02K21/16 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021185191
(22)【出願日】2021-11-12
(65)【公開番号】P2023072558
(43)【公開日】2023-05-24
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】片岡 義博
(72)【発明者】
【氏名】小川 達也
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 清隆
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0270751(US,A1)
【文献】特開2013-247781(JP,A)
【文献】特開2014-018056(JP,A)
【文献】特開2016-096665(JP,A)
【文献】特開2016-171646(JP,A)
【文献】特開2018-110483(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046228(WO,A1)
【文献】特開2015-133839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 1/276
H02K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(C)の周りに回転可能に設けられる、モータの回転子であって、
前記回転軸に沿って見た場合に前記回転子の内側から外側に向かって延び、かつ、平板状である、第1磁石(41)および第2磁石(42)と、
前記第1磁石の前記内側の端部と、前記第2磁石の前記内側の端部との間に配置され、かつ、前記回転軸に沿って見た場合に前記内側に向かって凸となる形状を有する第3磁石(43)と、
を備え、
前記回転軸に沿って見た場合に、前記回転子の周方向における前記第3磁石の中央部の厚みは、前記第1磁石および前記第2磁石の厚みよりも小さく、
前記回転軸に沿って見た場合に、前記第3磁石の前記内側の縁は、前記第3磁石の両端部において円弧形状を有し、前記第3磁石の中央部において直線形状を有する、
回転子(10)。
【請求項2】
前記回転軸に沿って見た場合に、前記周方向における前記第3磁石の両端部の厚みは、前記第1磁石および前記第2磁石の厚みと等しい、
請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記回転軸に沿って見た場合に、前記第3磁石の厚みは、前記周方向における両端部から中央部に向かって徐々に小さくなる、
請求項1または2に記載の回転子。
【請求項4】
前記回転軸に沿って見た場合に、前記第3磁石の前記外側の縁は、円弧であり、
前記第3磁石の前記内側の縁が有する前記円弧形状の中心は、前記第3磁石の前記外側の縁である円弧の中心よりも、前記外側に位置している、
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項5】
前記第1磁石、前記第2磁石および前記第3磁石は、フェライト磁石である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項6】
固定子(70)と、
請求項1から5のいずれか1項に記載の回転子と、
を備える、
モータ(100)。
【請求項7】
請求項6に記載のモータを備える、
圧縮機(200)。
【請求項8】
請求項7に記載の圧縮機を備える、
空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
回転子、モータ、圧縮機および空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2016-171646号公報)には、複数の永久磁石が内部に埋め込まれている、モータの回転子が記載されている。回転子の回転軸に沿って見た場合に、各永久磁石は、回転子の内側から外側に向かって延びる2つの平板磁石と、2つの平板磁石の内側の端部を連結する1つの湾曲磁石とから構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1(特開2016-171646号公報)に記載の回転子では、湾曲磁石は、平板磁石よりも、回転子の外周面から離れているため、モータの固定子から発生する磁界によって減磁しにくい。そのため、湾曲磁石の減磁耐力が過剰になるおそれがある。また、回転子に取り付けられるシャフトから、湾曲磁石が収容される回転子の孔までの距離が短くなるため、シャフトを回転子に焼き嵌めする際に、回転子コアの内径部の応力が増加したり、焼き嵌め時に湾曲磁石にかかる熱応力が増加したりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の回転子は、回転軸の周りに回転可能に設けられる、モータの回転子である。回転子は、第1磁石と第2磁石と第3磁石とを備える。第1磁石および第2磁石は、回転軸に沿って見た場合に回転子の内側から外側に向かって延び、かつ、平板状である。第3磁石は、第1磁石の内側の端部と、第2磁石の内側の端部との間に配置され、かつ、回転軸に沿って見た場合に内側に向かって凸となる形状を有する。回転軸に沿って見た場合に、回転子の周方向における第3磁石の中央部の厚みは、第1磁石および第2磁石の厚みよりも小さい。
【0005】
この回転子では、磁石の使用量を低減してコストダウンを図ることができる。また、この回転子では、シャフトを回転子に焼き嵌めすることによる回転子の内径部の応力を低減することができ、また、回転子の内径部を加熱してシャフトを焼き嵌めする際における、第3磁石に伝わる熱を低減して、第3磁石にかかる熱応力を低減することができる。
【0006】
第2観点の回転子は、第1観点の回転子であって、回転軸に沿って見た場合に、周方向における第3磁石の両端部の厚みは、第1磁石および第2磁石の厚みと等しい。
【0007】
この回転子では、磁石の使用量を低減してコストダウンを図ることができる。また、この回転子では、シャフトを回転子に焼き嵌めすることによる回転子の内径部の応力を低減することができ、また、回転子の内径部を加熱してシャフトを焼き嵌めする際における、第3磁石に伝わる熱を低減して、第3磁石にかかる熱応力を低減することができる。
【0008】
第3観点の回転子は、第1観点または第2観点の回転子であって、回転軸に沿って見た場合に、第3磁石の厚みは、周方向における両端部から中央部に向かって徐々に小さくなる。
【0009】
この回転子では、磁石の使用量を低減してコストダウンを図ることができる。また、この回転子では、シャフトを回転子に焼き嵌めすることによる回転子の内径部の応力を低減することができ、また、回転子の内径部を加熱してシャフトを焼き嵌めする際における、第3磁石に伝わる熱を低減して、第3磁石にかかる熱応力を低減することができる。
【0010】
第4観点の回転子は、第1乃至第3観点のいずれか1つの回転子であって、回転軸に沿って見た場合に、第3磁石の内側の縁および外側の縁は、円弧である。第3磁石の内側の縁である円弧の中心は、第3磁石の外側の縁である円弧の中心よりも、外側に位置している。
【0011】
この回転子では、磁石の使用量を低減してコストダウンを図ることができる。また、この回転子では、シャフトを回転子に焼き嵌めすることによる回転子の内径部の応力を低減することができ、また、回転子の内径部を加熱してシャフトを焼き嵌めする際における、第3磁石に伝わる熱を低減して、第3磁石にかかる熱応力を低減することができる。
【0012】
第5観点の回転子は、第1乃至第4観点のいずれか1つの回転子であって、第1磁石、第2磁石および第3磁石は、フェライト磁石である。
【0013】
この回転子では、磁石の使用量を低減してコストダウンを図ることができる。
【0014】
第6観点のモータは、固定子と、第1乃至第5観点のいずれか1つの回転子とを備える。
【0015】
このモータでは、回転子に埋め込まれる磁石の使用量を低減してコストダウンを図ることができる。
【0016】
第7観点の圧縮機は、第6観点のモータを備える。
【0017】
この圧縮機では、モータの回転子に埋め込まれる磁石の使用量を低減してコストダウンを図ることができる。
【0018】
第8観点の空気調和装置は、第7観点の圧縮機を備える。
【0019】
この空気調和装置では、圧縮機のモータの回転子に埋め込まれる磁石の使用量を低減してコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態の回転子10の平面図である。
図2】端板30および締結具50を外した状態の回転子10の平面図である。
図3】回転子10の端板30の平面図である。
図4図1のIV-IV線における断面図である。
図5】回転軸Cに沿って見た場合における、磁石収容孔22に収容される永久磁石40の平面図である。
図6】第1磁石41および第2磁石42の外観図である。
図7】第3磁石43の外観図である。
図8】モータ100の横断面図である。
図9】圧縮機200の縦断面図である。
図10】比較例としての、磁石収容孔22に収容される永久磁石140の横断面図である。
図11】第1変形例における、磁石収容孔22に収容される永久磁石40の横断面図である。
図12】第2変形例における、磁石収容孔22に収容される永久磁石40の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の一実施形態の回転子、回転子を備えるモータ、および、モータを備える圧縮機について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(1)回転子10の構成
図1図4に示されるように、回転子10は、主として、回転子コア20、端板30、永久磁石40、および締結具50を有する。図1では、永久磁石40が省略されている。回転子10には、シャフト60を取り付けるためのシャフト貫通孔11が形成されている。
【0023】
(1-1)回転子コア20
回転子コア20は、複数の鋼板が積層して形成されている。回転子コア20は、円柱形状を有する。回転子コア20は、その円柱形状の円形の2つの面の中心を通る回転軸Cを有する。回転子コア20には、主として、1つのシャフト収容孔21、複数の磁石収容孔22、および、複数の締結具収容孔23が形成されている。シャフト収容孔21、磁石収容孔22、および締結具収容孔23は、回転軸Cに沿って回転子コア20を貫く。
【0024】
シャフト収容孔21は、シャフト60が貫通し、シャフト60を保持するための孔である。回転軸Cに沿って見た場合、シャフト収容孔21は、円形状を有する。シャフト収容孔21の円形状の中心は、回転軸Cにある。
【0025】
磁石収容孔22は、永久磁石40が収容され、永久磁石40を保持するための孔である。回転軸Cに沿って見た場合、磁石収容孔22は、略U字形状を有する。回転軸Cに沿って見た場合に、磁石収容孔22は、回転子10の内側に向かって凸となる形状を有する。本実施形態では、回転子コア20は、6個の磁石収容孔22を有する。図1および図2に示されるように、6個の磁石収容孔22は、回転軸Cを中心に6回対称となる位置に配置されている。言い換えると、回転軸Cに沿って見た場合に、隣接する2個の磁石収容孔22は、回転子10の周方向に沿って60°離れている。磁石収容孔22は、図1に示されるIV-IV線に対して対称となる形状を有する。
【0026】
締結具収容孔23は、締結具50が収容され、締結具50を保持するための孔である。回転軸Cに沿って見た場合、締結具収容孔23は、円形状を有する。本実施形態では、回転子コア20は、6個の締結具収容孔23を有する。図1および図2に示されるように、6個の締結具収容孔23は、回転軸Cを中心に6回対称となる位置に配置されている。言い換えると、回転軸Cに沿って見た場合に、隣接する2個の締結具収容孔23は、回転子10の周方向に沿って60°離れている。締結具収容孔23は、図1に示されるIV-IV線上において、磁石収容孔22よりも、回転子10の外側に位置する。
【0027】
(1-2)端板30
端板30は、永久磁石40が磁石収容孔22から外れることを抑制するための部材である。図4に示されるように、回転子コア20の上面25および下面26に、それぞれ、1枚の端板30が取り付けられている。端板30の材質は、ステンレス鋼やアルミニウム等の非磁性体である。
【0028】
図3に示されるように、端板30は円板形状を有する。端板30には、1つのシャフト開口31、および、複数の締結具開口33が形成されている。
【0029】
シャフト開口31は、シャフト60が通過する孔である。回転軸Cに沿って見た場合、シャフト開口31は、円形状を有する。シャフト開口31の円形状の中心は、回転軸Cにある。端板30が回転子コア20に取り付けられた状態では、回転軸Cに沿って見た場合、シャフト開口31は、シャフト収容孔21と重なり合う。シャフト開口31の外径は、シャフト収容孔21の外径より大きい。シャフト貫通孔11は、シャフト収容孔21およびシャフト開口31から構成される。
【0030】
締結具開口33は、締結具50が通過する孔である。回転軸Cに沿って見た場合、締結具開口33は、円形状を有する。端板30が回転子コア20に取り付けられた状態では、回転軸Cに沿って見た場合、締結具開口33は、締結具収容孔23と重なり合う。締結具開口33の外径は、締結具収容孔23の外径より小さい。
【0031】
図4に示されるように、回転軸Cの方向における磁石収容孔22の両端は、それぞれ端板30によって塞がれている。これにより、磁石収容孔22に収容される永久磁石40が磁石収容孔22から外れることが抑制される。
【0032】
(1-3)永久磁石40
永久磁石40は、回転子コア20を着磁する。永久磁石40は、第1磁石41と第2磁石42と第3磁石43とから構成される。第1磁石41、第2磁石42および第3磁石43は、フェライト磁石である。第1磁石41、第2磁石42および第3磁石43は、ボンド磁石であってもよい。
【0033】
図5に示されるように、各磁石収容孔22には、1個の第1磁石41と、1個の第2磁石42と、1個の第3磁石43とが収容されている。図5に示される矢印Mは、永久磁石40の磁化方向を表す。
【0034】
第1磁石41および第2磁石42は、図6に示されるように、略平板状を有する。第1磁石41および第2磁石42の角部は、面取りされている。回転軸Cに沿って見た場合、第1磁石41および第2磁石42は、回転子10の内側から外側に向かって延びるように配置される。図6には、第1磁石41および第2磁石42に関して、回転軸Cに沿う方向の寸法L1、回転子10の内側から外側に向かう方向の寸法L2、および、回転子10の周方向の寸法L3が示されている。図4に示されるように、寸法L1は、回転軸Cの方向における磁石収容孔22の寸法と等しいか、わずかに短い。寸法L2は、回転子コア20の外側の表面と内側の表面との間の距離R(図2)の20%~80%である。寸法L3は、寸法L2の10%~100%である。寸法L3は、第1磁石41および第2磁石42の面取りされている角部を除いて、回転子10の内側から外側に向かう方向において一定である。
【0035】
第3磁石43は、図7に示されるように、回転軸Cに沿って見た場合に湾曲している形状を有する。第3磁石43の角部は、面取りされている。第3磁石43は、回転子10の内側における第1磁石41の第1端部41aと、回転子10の内側における第2磁石42の第2端部42aとの間に配置される。第3磁石43は、第1磁石41の第1端部41aと接触する第3端部43aと、第2磁石42の第2端部42aと接触する第4端部43bとを有する。図7には、第3磁石43に関して、回転軸Cに沿う方向の寸法L4が示されている。寸法L4は、寸法L1と同じである。
【0036】
回転軸Cに沿って見た場合に、第3磁石43は、回転子10の内側に向かって凸となる形状を有する。図5に示されるように、回転軸Cに沿って見た場合に、回転子10の内側における第3磁石43の縁である内縁43c、および、回転子10の外側における第3磁石43の縁である外縁43dは、円弧形状を有する。
【0037】
以下、回転軸Cに沿って見た場合における、第1磁石41および第2磁石42の厚みT3は、寸法L3であり、第3磁石43の厚みは、内縁43cと外縁43dとの間の距離であるとする。回転軸Cに沿って見た場合に、回転子10の周方向における第3磁石43の中央部43eの厚みT1は、第1磁石41および第2磁石42の厚みT3よりも小さい。また、回転軸Cに沿って見た場合に、回転子10の周方向における第3磁石43の両端部である第3端部43aおよび第4端部43bの厚みT2は、第1磁石41および第2磁石42の厚みT3と等しい。回転軸Cに沿って見た場合に、第3磁石43の厚みは、第3端部43aおよび第4端部43bから中央部43eに向かって徐々に小さくなる。第3磁石43の中央部43eの厚みT1は、第3磁石43の第3端部43aおよび第4端部43bの厚みT2よりも3%~50%小さい。
【0038】
第3磁石43の形状は、上記の条件を有するものであれば、特に限定されない。例えば、図5に示されるように、第3磁石43は、回転軸Cに沿って見た場合に、内縁43cの円弧の中心P1が、外縁43dの円弧の中心P2よりも、回転子10の外側により近い位置にある形状を有してもよい。
【0039】
本実施形態の回転子10は、6個の磁石収容孔22のそれぞれに永久磁石40が保持される、6極回転子である。回転子10の極数は、6極に限られない。例えば、回転子10の極数は、4極、8極または10極であってもよい。この場合、回転子コア20は、回転子10の極数と同じ数の磁石収容孔22を有する。
【0040】
(1-4)締結具50
締結具50は、回転子コア20と、2枚の端板30とを相互に固定する。締結具50は、例えば、リベット、ボルト、およびナットである。締結具50は、回転子コア20の上面25側の端板30の締結具開口33、回転子コア20の締結具収容孔23、および、回転子コア20の下面26側の端板30の締結具開口33、を通るように配置される。その後、締結具50の下端をかしめる等の方法によって、回転子コア20と、2枚の端板30とが相互に固定される。
【0041】
(2)モータ100の構成
図8に示されるように、モータ100は、主として、回転子10と、固定子70とを有する。回転子10は、回転軸Cの周りに回転可能に設けられる。回転子10のシャフト貫通孔11には、円柱形状のシャフト60が焼き嵌めによって固定されている。固定子70は、回転子10の外側において、回転子10を囲むように配置される。回転子10と固定子70との間には隙間が形成される。固定子70は、主として、固定子コア71と、コイル72とを有する。
【0042】
固定子コア71は、例えば、電磁鋼板等の強磁性体の材料から形成される。固定子コア71は、バックヨーク71aと、複数のティース71bとを有する。バックヨーク71aは、略円筒形状を有する。ティース71bは、バックヨーク71aの内周面から、バックヨーク71aの径方向に突出する。固定子コア71では、9個のティース71bが、バックヨーク71aの周方向において、等間隔に配置される。
【0043】
コイル72は、例えば、それぞれのティース71bに巻線が巻かれることによって形成される。周方向において隣接する2つのティース71bの間には、コイル72の巻線が収容される空間が形成されている。ティース71bとコイル72との間には、絶縁フィルム等の絶縁部材が配置される。固定子コア71は、9個のコイル72を有する。しかし、コイル72の数は特に限定されない。
【0044】
モータ100が駆動すると、固定子70のそれぞれのコイル72が所定のシーケンスに従って順次選択的に励磁されることにより、回転子10が、回転軸Cの周りをシャフト60と共に回転する。
【0045】
(3)圧縮機200の構成
圧縮機200は、冷凍装置に用いられる。冷凍装置は、例えば、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことによって、建物等の室内の冷房および暖房を行うことが可能な空気調和装置である。空気調和装置は、例えば、本実施形態の圧縮機200と、四方切替弁と、室外熱交換器と、膨張機構と、室内熱交換器とが接続される冷媒回路を備える。この場合、圧縮機200、四方切替弁、室外熱交換器および膨張機構は、空気調和装置の室外機に搭載され、室内熱交換器は、空気調和装置の室内機に搭載される。四方切替弁は、冷房運転時の冷媒回路と、暖房運転時の冷媒回路とを切り替える。冷房運転時では、室外熱交換器は放熱器(凝縮器)として機能し、室内熱交換器は吸熱器(蒸発器)として機能する。暖房運転時では、室外熱交換器は吸熱器として機能し、室内熱交換器は放熱器として機能する。圧縮機200は、空気調和装置のような冷凍装置の冷媒回路を循環する冷媒を圧縮する。圧縮機200は、例えば、回転式の圧縮機、または、スクロール式の圧縮機である。
【0046】
図9に示されるように、圧縮機200は、主として、ケーシング210と、圧縮機構215と、モータ100と、シャフト60と、吸入管219と、吐出管220とを備える。ケーシング210は、圧縮機構215、モータ100およびシャフト60が収容される密閉容器である。吸入管219および吐出管220は、ケーシング210を貫通し、ケーシング210と気密状に連結される。
【0047】
圧縮機構215は、外部の冷媒回路から吸入管219を介して供給された低圧の冷媒を圧縮する。圧縮機構215によって圧縮された冷媒は、ケーシング210内部の高圧空間S1に吐出され、吐出管220を介して外部の冷媒回路に供給される。圧縮機構215の内部には、圧縮室215aが形成される。圧縮機構215は、シャフト60に連結される。圧縮機構215は、回転するシャフト60によって供給される動力を利用して圧縮室215aの容積を増減させることにより、冷媒を圧縮する。
【0048】
モータ100は、圧縮機構215の上方または下方に配置される。モータ100の固定子70は、ケーシング210の内壁面に固定される。モータ100の回転子10は、固定子70の内側において回転自在に配置される。
【0049】
シャフト60は、その軸方向が鉛直方向に沿うように配置される。シャフト60は、モータ100の回転子10、および、圧縮機構215の圧縮室215aを形成する部材に連結される。モータ100の駆動によって回転子10が回転軸C周りに回転すると、シャフト60が回転して、圧縮機構215によって冷媒が圧縮される。
【0050】
(4)特徴
永久磁石が回転子の内部に埋め込まれているモータ(IPMモータ)では、永久磁石として、例えば、フェライト磁石または希土類磁石が用いられる。しかし、フェライト磁石は、希土類磁石と比較して磁力が小さい。そのため、フェライト磁石を用いる場合、モータの性能を向上させるために、図10に示されるように、磁石の表面積が大きくなるような電磁構造が採用される。図10は、図5と同様の断面図であり、回転子10の磁石収容孔22に収容され、略U字形状を有する永久磁石140が示されている。永久磁石140は、2つの平板状磁石141と、1つの湾曲磁石142とから構成される。平板状磁石141は、回転子10の外側から内側に向かって延びる。湾曲磁石142は、回転子10の内側に向かって凸となる形状を有する。湾曲磁石142の両端部は、各平板状磁石141の内側の端部と接触している。
【0051】
回転子10の外側の表面付近は、固定子70からの距離が短いので、コイル72から発生する磁界によって減磁しやすい。減磁の影響を抑えるため、図10に示されるように、平板状磁石141の外側の端部は、回転子10の外側の表面付近に位置している。従来、湾曲磁石142の厚みT12は、湾曲磁石142の両端部の間で一定であり、かつ、平板状磁石141の厚みT11と等しい。言い換えると、回転軸Cに沿って見た場合に、永久磁石140の厚みは長手方向において一定である。コイル72から発生する磁界による減磁の影響を低減して減磁耐力を向上させるために、永久磁石140の厚みT11,T12は大きく設定されている。
【0052】
一方、実施形態では、回転軸Cに沿って見た場合に、永久磁石40の厚みは長手方向において一定ではない。具体的には、図5に示されるように、第3磁石43の中央部43eの厚みT1は、第3磁石43の第3端部43aおよび第4端部43bの厚みT2より小さく、かつ、第1磁石41および第2磁石42の厚みT3より小さい。第3磁石43の中央部43eは、永久磁石40において、回転子10の外側の表面から最も離れている箇所であるので、第3磁石43の中央部43eは、コイル72から発生する磁界による減磁の影響を受けにくい箇所である。そのため、永久磁石140のように、湾曲磁石142の厚みT12を、平板状磁石141の厚みT11と同じにすると、特に湾曲磁石142の中央部142aにおいて減磁耐力が過剰となりやすい。
【0053】
実施形態では、第3磁石43の中央部43eの厚みT1は、第1磁石41および第2磁石42の厚みT3より小さい。コイル72から発生する磁界による減磁の影響を受けにくい、第3磁石43の中央部43eの厚みT1を小さくすることで、永久磁石40の容積が低減する。これにより、永久磁石40の使用量が低減できるので、回転子10のコストダウンを図ることができる。
【0054】
また、第3磁石43の中央部43eの厚みT1を小さくするために、内縁43cの円弧の中心を回転子10の外側に近付けることで、回転子10の内側の表面と、第3磁石43の中央部43eとの間の距離を増加させることができる。これにより、シャフト60を回転子10に焼き嵌めすることによる回転子10(回転子コア20)の内径部の応力を低減することができる。また、回転子10の内径部を加熱してシャフト60を焼き嵌めする際における、第3磁石43に伝わる熱を低減して、第3磁石43にかかる熱応力を低減することができる。回転子10の内径部とは、回転軸Cに沿って見た場合に、第3磁石43よりも内側の部分である。
【0055】
(5)変形例
(5-1)第1変形例
永久磁石40の変形例について、図面を参照しながら説明する。本変形例では、図11に示されるように、回転軸Cに沿って見た場合に、第3磁石43の中央部43eの厚みT1は、第3磁石43の第3端部43aおよび第4端部43bの厚みT2と等しく、かつ、第1磁石41および第2磁石42の厚みT3よりも小さい。そのため、回転軸Cに沿って見た場合に、第3磁石43の厚みは、第3磁石43の第3端部43aおよび第4端部43bから中央部43eに向かって一定である。この場合、例えば、回転軸Cに沿って見た場合に、第3磁石43の外縁43dの円弧の中心が、第3磁石43の内縁43cの円弧の中心と一致している。また、図11に示されるように、永久磁石40の厚みは、第1磁石41と第3磁石43との接触部、および、第2磁石42と第3磁石43との接触部において不連続的に変化する。第3磁石43の厚みT1は、第1磁石41および第2磁石42の厚みT3よりも5%~25%小さい。
【0056】
また、本変形例では、第3磁石43の中央部43eの厚みT1は、第3磁石43の第3端部43aおよび第4端部43bの厚みT2より小さくてもよい。例えば、回転軸Cに沿って見た場合に、第3磁石43の厚みは、第3端部43aおよび第4端部43bから中央部43eに向かって徐々に小さくなってもよい。
【0057】
本変形例においても、永久磁石40の容積を低減して、永久磁石40の使用量が低減できるので、回転子10のコストダウンを図ることができる。
【0058】
(5-2)第2変形例
永久磁石40の変形例について、図面を参照しながら説明する。本変形例では、図12に示されるように、回転軸Cに沿って見た場合に、第3磁石43の中央部43eの厚みT1は、第3磁石43の第3端部43aおよび第4端部43bの厚みT2よりも小さい。第3磁石43の第3端部43aおよび第4端部43bの厚みT2は、第1磁石41および第2磁石42の厚みT3と等しい。そのため、回転軸Cに沿って見た場合に、第3磁石43の厚みは、第3磁石43の第3端部43aおよび第4端部43bから中央部43eに向かって小さくなっている。本変形例では、第3磁石43の中央部43eの厚みT1は、第3磁石43の第3端部43aおよび第4端部43bの厚みT2よりも3%~50%小さい。
【0059】
本変形例では、例えば、図12に示されるように、回転軸Cに沿って見た場合に、第3磁石43の内縁43cは、第3端部43aおよび第4端部43bにおいて円弧形状を有する第1内縁部43c1と、中央部43eにおいて直線形状を有する第2内縁部43c2とから構成される。この場合、回転軸Cに沿って見た場合に、第2内縁部43c2は、回転子コア20の径方向と直交する方向に沿っている。第1内縁部43c1の円弧の中心は、第3磁石43の外縁43dの円弧の中心と一致してもよい。図12に示される第3磁石43は、回転軸Cに沿って見た場合に、図10に示される湾曲磁石142の内側(シャフト収容孔21の側)を直線状にカットした形状を有している。
【0060】
本変形例では、第3磁石43の中央部43eの厚みT1が、第3磁石43の第3端部43aおよび第4端部43bの厚みT2よりも小さければ、第2内縁部43c2は、回転軸Cに沿って見た場合に、直線形状以外の形状を有してもよい。例えば、第2内縁部43c2は、回転軸Cに沿って見た場合に、円弧形状を有してもよい。
【0061】
本変形例においても、永久磁石40の容積を低減して、永久磁石40の使用量が低減できるので、回転子10のコストダウンを図ることができる。また、シャフト60を回転子10に焼き嵌めすることによる回転子10の内径部の応力を低減することができる。また、回転子10の内径部を加熱してシャフト60を焼き嵌めする際における、第3磁石43に伝わる熱を低減して、第3磁石43にかかる熱応力を低減することができる。
【0062】
(5-3)第3変形例
実施形態では、永久磁石40は、第1磁石41と第2磁石42と第3磁石43とから構成される。しかし、永久磁石40は、第1磁石41と第2磁石42と第3磁石43とが一体となった1つの磁石から構成されてもよい。
【0063】
―むすび―
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0064】
10 :回転子
41 :第1磁石
42 :第2磁石
43 :第3磁石
70 :固定子
100 :モータ
200 :圧縮機
C :回転軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【文献】特開2016-171646号公報
図1
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