(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】含フッ素重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 220/28 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
C08F220/28
(21)【出願番号】P 2022070210
(22)【出願日】2022-04-21
(62)【分割の表示】P 2020205258の分割
【原出願日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】灘野 亮
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 覚
(72)【発明者】
【氏名】兼子 譲
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-026410(JP,A)
【文献】特開2010-001273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F20
C07C67/48
C07C69/653
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1-1)で表される繰り返し単位と、下記式(2-1)で表される繰り返し単位とを含む含フッ素重合体であって、
前記式(1-1)で表される繰り返し単位を基準とする質量百万分率で表して、前記式(2-1)で表される繰り返し単位の含有量が
995ppm以下であることを特徴とする含フッ素重合体。
【化1】
【請求項2】
前記式(1-1)で表される繰り返し単位及び前記式(2-1)で表される繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含む請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項3】
成膜用溶液に用いられる請求項1又は2に記載の含フッ素重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素重合体(含フッ素化合物)は、フッ素の持つ撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性、低屈折率性、低誘電性などの特徴から先端材料分野を中心として幅広い応用分野で使用または開発が続けられている。特に、コーティング用途に関して言えば、低屈折率性と可視光の透明性を応用した反射防止膜、高波長帯(光通信波長帯)での透明性を応用した光デバイス、紫外線領域(特に真空紫外波長域)での透明性を応用したレジスト材料などの分野で活発な研究開発が行われている。これらの応用分野において共通の高分子設計としては、できるだけ多くのフッ素を導入することで各使用波長での透明性を実現しつつ、基材への密着性、高いガラス転移点(硬度)を実現させようとするものである。
【0003】
このような含フッ素重合体を構成する単量体として、特許文献1には、下記式(6)で表される重合性単量体が記載されている。
【0004】
【化1】
(式(6)中、R
1pは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、及び含フッ素アルキル基(当該含フッ素アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)からなる群より選ばれる基を表す。R
2pは2価ないし3価の有機基であって、当該有機基は、脂肪族炭化水素基(当該脂肪族炭化水素基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)、芳香環基、またはそれらの複合置換基から選ばれる基であって、その水素原子の一部又は全部がフッ素原子又は水酸基によって置換されていてもよい。R
3pは水素原子、炭化水素基、含フッ素アルキル基(当該含フッ素アルキル基は、直鎖または分岐鎖であり、環状構造を含むことができる)、又は芳香環基であって、当該炭化水素基、又は当該含フッ素アルキル基の内部に、エーテル基(-O-)、カルボニル基(-(C=O)-)から選ばれる2価連結基を含んでもよい。mは1~2の整数を表す。mが2であるとき、2つのR
3pは、お互いに同一のものを取ることも、異なるものを取ることもできる。)
【0005】
式(6)で表される重合性単量体は、ヘキサフルオロアセトンに由来する(CF3)2(OR3p)C-部位を有し、高いフッ素含量を有しながら同一分子内にバランスよく極性基を持たせることに成功した単量体化合物である。
当該重合性単量体は重合性にも優れ、当該重合性単量体を重合して得た含フッ素重合体は、フッ素原子によってもたらされる透明性と、極性基によってもたらされる密着性、加工性を併せ持ち、反射防止膜材料、光デバイス材料、レジスト材料等として優れた物性を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
式(6)で表される重合性単量体を用いて製造された含フッ素重合体をレジスト用材料として用いる場合、当該含フッ素重合体は、溶剤に溶解され、当該含フッ素重合体を含む成膜用溶液とされる。
当該成膜用溶液を、基材上やレジスト膜などの薄膜に塗布してベークすることにより膜を形成し、その後、当該膜を現像液に浸漬すると、基材上に残渣が生じることがあった。
【0008】
本開示では、現像液に浸漬した際に残渣が生じにくい膜を形成することができる成膜用溶液に用いられる含フッ素重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題を鑑み、鋭意検討を行った。その結果、重合性単量体を作製する際に生じる副反応物が、上記問題点の原因であることを突き止め、当該重合性単量体を重合させて含フッ素重合体を製造する際に、当該副反応物の含有量を少なくすることで、上記問題を解決できることを見出し、本開示に至った。
【0010】
すなわち、本開示は次の通りである。
【0011】
本開示の含フッ素重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位と、下記式(2)で表される繰り返し単位とを含む含フッ素重合体であって、上記式(1)で表される繰り返し単位を基準とする質量百万分率で表して、上記式(2)で表される繰り返し単位の含有量が1500ppm以下であることを特徴とする。
【0012】
【化2】
(式(1)及び式(2)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基またはt-ブチル基であり、R
3、R
4はそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、R
5は水素原子またはトリフルオロメチル基であり、R
6は水素原子、塩素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である。)
【0013】
本開示の含フッ素重合体では、R5がトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0014】
本開示の含フッ素重合体では、R3及びR4が水素原子であることが好ましい。
【0015】
本開示の含フッ素重合体では、R1がメチル基またはiso-プロピル基であり、R2が水素原子であることが好ましい。
【0016】
本開示の含フッ素重合体は、上記式(1)で表される繰り返し単位及び上記式(2)で表される繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0017】
本開示の含フッ素重合体は、成膜用溶液に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本開示は、現像液に浸漬した際に残渣が生じにくい膜を形成することができる成膜用溶液に用いられる含フッ素重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本開示の実施形態の一例であり、これらの具体的内容に限定はされない。その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
本明細書の「発明を実施するための形態」の欄において、「[」及び「]」、「<」及び「>」で表示する事項は、単なる記号であって、それ自体に意味を有しない。
【0021】
本開示の含フッ素重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位と、下記式(2)で表される繰り返し単位とを含む含フッ素重合体であって、上記式(1)で表される繰り返し単位を基準とする質量百万分率で表して、上記式(2)で表される繰り返し単位の含有量が1500ppm以下であることを特徴とする。
【0022】
【化3】
(式(1)及び式(2)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基またはt-ブチル基であり、R
3、R
4はそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、R
5は水素原子またはトリフルオロメチル基であり、R
6は水素原子、塩素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である。)
【0023】
本開示の含フッ素重合体は、レジスト膜や、レジスト膜及び/又はレジストパターンを保護する上層膜(以下、単に「上層膜」とも記載する)として使用することができる。この際、当該含フッ素重合体は、溶剤に溶解され、当該含フッ素重合体を含む成膜用溶液とされる。
【0024】
式(2)で表される繰り返し単位は、本開示の含フッ素重合体を製造する際に、避けがたい副反応物として合成される含フッ素単量体に由来する繰り返し単位である。
式(1)で表される繰り返し単位と式(2)で表される繰り返し単位とを含む含フッ素重合体において、式(2)で表される繰り返し単位の割合が多い場合、当該含フッ素重合体を含む成膜用溶液を、基材上やレジスト膜などの薄膜に塗布し、ベークすることにより膜を形成し、その後、当該膜を現像液に浸漬すると、残渣が残りやすくなる。
しかし、本開示の含フッ素重合体では、式(2)で表される繰り返し単位の割合が充分に少ない。そのため、本開示の含フッ素重合体を含む成膜用溶液を用いて膜を形成した場合、当該膜を現像液に浸漬すると、速やかに当該膜が溶解し、残渣が生じにくくなる。
【0025】
なお、本開示の含フッ素重合体では、式(1)で表される繰り返し単位を基準とする質量百万分率で表して、式(2)で表される繰り返し単位の含有量が1500ppm以下であるが、式(2)で表される繰り返し単位の含有量は、450ppm以下であることが好ましく、10~200ppmであることがより好ましい。
【0026】
本開示の含フッ素重合体を説明する上で、その製造方法は重要である。そこで、本開示の含フッ素重合体の製造方法について詳述する。
【0027】
本開示の含フッ素重合体の製造方法は、含フッ素単量体合成工程と、含フッ素単量体精製工程と、重合工程とを含む。各工程について以下に説明する。
【0028】
<含フッ素単量体合成工程>
含フッ素単量体合成工程では、下記式(3)で表されるジオールに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、不飽和カルボン酸の酸ハライド及び不飽和カルボン酸の無水物からなる群から選択される少なくとも1種(以下、「不飽和カルボン酸等」とも記載する)を反応させる。
これにより、主反応物である下記式(4)で表される含フッ素単量体と、副反応物である下記式(5)で表される含フッ素単量体とを含む組成物を得ることができる。
【0029】
【化4】
(式(3)、式(4)及び式(5)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基またはt-ブチル基であり、R
3、R
4はそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、R
5は水素原子またはトリフルオロメチル基であり、R
6は水素原子、塩素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である。)
【0030】
含フッ素単量体合成工程における反応では、式(3)で表されるジオールは、フッ素原子を含む含フッ素アルコール部位とフッ素原子を有していないアルキルアルコール部位の2種のアルコール部位を同一分子内に有する。含フッ素アルコール部位は電子吸引性で且つ嵩高いトリフルオロメチル基を有する。
含フッ素アルコール部位が電子吸引性であることと、その立体効果によりアルコール部位の非共有電子対の求核性が抑制され、不飽和カルボン酸等の付加反応は起こりにくいと推察され、式(4)で表される含フッ素単量体が主反応物として合成される。
【0031】
また、式(4)で表される含フッ素単量体には、含フッ素アルコール部位が残っている。この含フッ素アルコール部位では、わずかながら不飽和カルボン酸等の付加反応が起こる。そのため、式(4)で表される含フッ素単量体を合成する際に、避けがたい副反応物として式(5)で表される含フッ素単量体が合成されてしまう。
その結果、含フッ素単量体合成工程で得られる組成物には、主反応物である式(4)で表される含フッ素単量体と、副反応物である式(5)で表される含フッ素単量体とが含まれる。
【0032】
また、含フッ素単量体合成工程では、式(4)で表される含フッ素単量体の不飽和カルボン酸等の付加部位にさらに、不飽和カルボン酸等が付加し、下記式(7)で表される含フッ素単量体が合成される場合がある。
含フッ素単量体合成工程で得られる組成物には、式(7)で表される含フッ素単量体が含まれていてもよい。
【0033】
【化5】
(式(7)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基またはt-ブチル基であり、R
3、R
4はそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、R
5は水素原子またはトリフルオロメチル基であり、R
6は水素原子、塩素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である。)
【0034】
なお、本開示の含フッ素重合体は、式(7)で表される単量体に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0035】
なお、上記の通り、式(3)で表されるジオールにおいてフッ素原子を含む含フッ素アルコール部位には不飽和カルボン酸等の付加反応は起こりにくいので、フッ素原子を含む含フッ素アルコール部位のみに不飽和カルボン酸等の付加反応が起こった化合物はほとんど生じない。また、このような化合物が生じたとしても、反応性が高いフッ素原子を有していないアルキルアルコール部位に速やかに不飽和カルボン酸等の付加反応が起こり、式(5)で表される含フッ素単量体が合成される。
そのため、含フッ素単量体合成工程で得られる組成物には、式(3)で表されるジオールにおいてフッ素原子を含む含フッ素アルコール部位のみに不飽和カルボン酸等の付加反応が起こった化合物はほとんど検知されない。
【0036】
式(3)で表されるジオールにおいて、入手がしやすいという観点から、R1はメチル基またはiso-プロピル基であることが好ましく、R2~R4は水素原子であることが好ましく、R5はトリフルオロメチル基であることが好ましい。
このような式(3)で表されるジオールを用いた場合、製造される本開示の含フッ素重合体において、式(1)で表される繰り返し単位、及び、式(2)で表される繰り返し単位のR1はメチル基またはiso-プロピル基となり、R2~R4は水素原子となり、R5はトリフルオロメチル基となる。
【0037】
含フッ素単量体合成工程において用いる不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、不飽和カルボン酸の酸ハライド及び不飽和カルボン酸の無水物からなる群から選択される少なくとも1種としては、メタクリル化剤、アクリル化剤及びその他のエステル化剤等が挙げられる。
【0038】
含フッ素単量体合成工程において用いるメタクリル化剤としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸iso-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸iso-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル等のメタクリル酸エステル、メタクリル酸クロリド、メタクリル酸フルオリド、メタクリル酸ブロミド等の酸ハライド、メタクリル酸無水物、メタクリル酸等を例示することができる。
【0039】
含フッ素単量体合成工程において用いるアクリル化剤としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸iso-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル等のアクリル酸エステル、アクリル酸クロリド、アクリル酸フルオリド、アクリル酸ブロミド等の酸ハライド、アクリル酸無水物、アクリル酸等を例示することができる。
【0040】
含フッ素単量体合成工程において用いるエステル化剤としては、上記メタクリル化剤及び上記アクリル化剤に含まれないカルボン酸エステル、カルボン酸クロリド等の酸ハライド、カルボン酸無水物、カルボン酸等を例示することができる。
【0041】
これらの中では、メタクリル化剤を用いることが好ましく、メタクリル酸無水物及び/又はメタクリル酸クロリドを用いることがより好ましい。
【0042】
含フッ素単量体合成工程において、式(3)で表されるジオールに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、不飽和カルボン酸の酸ハライド及び不飽和カルボン酸の無水物からなる群から選択される少なくとも1種を反応させる際に、必要に応じて酸や塩基を加えてもよい。
【0043】
含フッ素単量体合成工程において、式(3)で表されるジオールに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、不飽和カルボン酸の酸ハライド及び不飽和カルボン酸の無水物からなる群から選択される少なくとも1種を反応させる際の反応条件としては、30~130℃で0.5~8時間であることが好ましい。
【0044】
含フッ素単量体合成工程において、副反応物として式(5)で表される含フッ素単量体の生成量は、不飽和カルボン酸等の種類、反応温度及び反応時間で変化する。
不飽和カルボン酸等の使用量を少なくしすぎると、式(5)で表される含フッ素単量体の生成量を少なくすることができるが、未反応の式(3)で表されるジオールが多く残るので、式(4)で表される含フッ素単量体と式(3)で表されるジオールとの分離が必要になる。
また、不飽和カルボン酸等の使用量を多くしすぎると、式(5)で表される含フッ素単量体の生成量が多くなる。また、不飽和カルボン酸等のホモポリマーが生成することがある。
このような理由から、使用する式(3)で表されるジオールと不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、不飽和カルボン酸の酸ハライド及び不飽和カルボン酸の無水物からなる群から選択される少なくとも1種とのモル量割合は、[使用する式(3)で表されるジオールのモル量]:[不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、不飽和カルボン酸の酸ハライド及び不飽和カルボン酸の無水物からなる群から選択される少なくとも1種のモル量]=1:0.7~1:1.3であることが好ましい。
【0045】
含フッ素単量体合成工程において得られる式(4)で表される含フッ素単量体として好ましい化合物は、下記式(4-1)で表される含フッ素単量体であるメタクリル酸5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-2-イル及び下記式(4-2)で表される含フッ素単量体であるメタクリル酸1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-トリフルオロメチルヘプタン-4-イルが挙げられる。
【0046】
【0047】
<含フッ素単量体精製工程>
含フッ素単量体精製工程では、含フッ素単量体合成工程により得られた組成物から式(5)で表される含フッ素単量体を除去し、式(4)で表される含フッ素単量体を基準とする質量百万分率で表して、式(5)で表される含フッ素単量体の含有量を1500ppm以下とする。
また、式(5)で表される含フッ素単量体の含有量は、450ppm以下であることが好ましく、10~200ppmであることがより好ましい。
【0048】
この工程を行うことにより、製造される本開示の含フッ素単量体において、式(1)で表される繰り返し単位を基準とする質量百万分率で表して、式(2)で表される繰り返し単位の含有量を1500ppm以下にすることができる。
【0049】
組成物から式(5)で表される含フッ素単量体を除去する方法としては、特に限定されないが、例えば、カラムクロマトグラフ、精密蒸留または晶析等の公知の方法を用いることができる。純度の高い式(4)で表される含フッ素単量体を得るためにこれらの方法を組合せてもよい。
以下、各方法について詳述する。
【0050】
[カラムクロマトグラフ]
一般的なカラム用筒状基材に、充填剤を詰め、移動相に有機溶剤を用いて、組成物を流すことで組成物中から式(5)で表される含フッ素単量体の除去を行う。
充填剤は、特に限定されず、シリカゲルやアルミナゲルが好ましく、アルミナゲルがより好ましい。充填剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
移動相は、特に限定されず、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、酢酸エチル等一般有機溶剤を使用することができる。また、移動相は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
カラムクロマトグラフを行う際の温度は0℃~40℃の範囲が好ましく、20℃~30℃の範囲であることがより好ましい。
充填剤の添加量(高さ)を増やすと多くの時間が必要になるが、充填剤の添加量(高さ)を増やすことで分離度は向上する。カラム用筒状基材として型番:ILC-B22-300、製造元:桐山製作所を用いる場合は、充填剤の高さは、5cm~15cmが望ましい。
【0051】
[精密蒸留]
精密蒸留を用いて組成物から式(5)で表される含フッ素単量体を除去する際に必要な蒸留塔の理論段数は、5段以上、40段以下である。
理論段数が5段未満では充分に式(5)で表される含フッ素単量体を除去することは困難である。蒸留塔の段数は高いほど、式(5)で表される含フッ素単量体を分離除去する能力が向上するが、40段を超えると、分離除去する能力が上限に近づき、費用対効果が向上しにくくなる。
【0052】
また、精密蒸留の際に、式(4)で表される含フッ素単量体が重合反応を起こす場合がある。このような重合反応が起きることを防ぐために、組成物に重合禁止剤を加えてもよい。
また、蒸留塔に酸素を導入してもよい。
【0053】
重合禁止剤としては、特に限定されないが、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、6-t-ブチル-2,4-キシレノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ヒドロキノン、カテコール、4-t-ブチルピロカテコール、2,5-ビステトラメチルブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、p-メトキシフェノール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1,2-ベンゾキノン、1,3-ベンゾキノン、1,4-ベンゾキノン、ロイコキニザリン、フェノチアジン、2-メトキシフェノチアジン、テトラエチルチウラム ジスルフィド、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジルまたは1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジンを例示することができる。
【0054】
市販される重合禁止剤としては、精工化学株式会社製のN,N´-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン(商品名、ノンフレックスF)、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(商品名、ノンフレックスH)、4,4´-ビス(a,a-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名、ノンフレックスDCD)、2,2´-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(商品名、ノンフレックスMBP)、N-(1-メチルヘプチル)-N´-フェニル-p-フェニレンジアミン(商品名、オゾノン35)、または和光純薬工業株式会社製のアンモニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシアミン(商品名、Q-1300)、またはN-ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩(商品名、Q-1301)を例示することができる。
【0055】
精密蒸留における重合禁止剤の使用量は、特に限定されないが、精密蒸留を行う前を基準として、式(4)で表される含フッ素単量体100質量部に対して0.01質量部以上、5質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上、1質量部以下であることがより好ましい。
式(4)で表される含フッ素単量体100質量部に対して重合禁止剤が0.01質量部未満であると、式(4)で表される含フッ素単量体が重合することを防ぎにくくなる。
式(4)で表される含フッ素単量体100質量部に対して重合禁止剤が5質量部を超えると、式(4)で表される含フッ素単量体の重合を防ぐ効果が上限に近づき、費用対効果が向上しにくくなる。
なお、組成物中の式(4)で表される含フッ素単量体の含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0056】
[晶析]
晶析を用いて、組成物から式(5)で表される含フッ素単量体を除去することができる。
晶析は、組成物を、良溶媒に溶解し、貧溶媒を添加したり、温度を下げることで、式(4)で表される含フッ素単量体を析出させ、結晶を成長させる操作である。
【0057】
晶析を行う際の溶媒の種類については、式(4)で表される含フッ素単量体が易溶または不溶であればよく特に制限がないが、アルコール類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロエーテル類、炭化水素類、芳香族炭化水素類または水が挙げられる。
【0058】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
ニトリル類としてはアセトニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-iso-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン等が挙げられる。
アミド類としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。
スルホキシド類としてはジメチルスルホキシド等が挙げられる。
エーテル類としてはジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
ハイドロフルオロカーボン類としては、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン等が挙げられる。
ハイドロフルオロエーテル類としては、メチル1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチルエーテル、メチルトリフルオロメチルエーテル、メチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロ-1-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,3,3-テトラフロオプロピル)(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル)エーテル、(メチル)(ノナフルオロブチル)エーテル、(メチル)(ノナフルオロイソブチル)エーテル、(エチル)(ノナフルオロブチル)エーテル、(エチル)(ノナフルオロイソブチル)エーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)ペンタン、2-トリフルオロメチルー3-エトキシ-ドデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,3-ヘキサフルオロ-4-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタン等が挙げられる。
炭化水素類としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
芳香族系炭化水素類としてはベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、パーフルオロベンゼン等が挙げられる。
これら溶媒より選ばれた少なくとも1種の化合物を良溶媒または貧溶媒として用いることが好ましい。
【0059】
晶析を行う際の溶媒の量は、晶析を行う前を基準として、式(4)で表される含フッ素単量体100質量部に対して50質量部以上、2000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上、1000質量部以下であることがより好ましい。
式(4)で表される含フッ素単量体100質量部に対して、溶媒の量が50質量部未満では晶析にて析出した式(4)で表される含フッ素単量体のスラリーの攪拌混合が難しい。
式(4)で表される含フッ素単量体100質量部に対して、溶媒を2000質量部を超えて加え溶解させたとしても、不純物を除去する効率は上限に近づき、費用対効果が向上しにくくなる。
なお、組成物中の式(4)で表される含フッ素単量体の含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0060】
<重合工程>
重合工程では、含フッ素単量体精製工程後の組成物を用いて式(4)で表される含フッ素単量体を重合することにより、式(1)で表される繰り返し単位を含む含フッ素重合体とする。
なお、含フッ素単量体精製工程後の組成物には、除去しきれない式(5)で表される含フッ素単量体が含まれるので、この式(5)で表される含フッ素単量体も重合する。そのため、得られる本開示の含フッ素重合体は、式(2)で表される繰り返し単位を含むことになる。
【0061】
なお、重合工程では、式(5)で表される含フッ素単量体のフッ素原子を含む含フッ素アルコール部位に付加反応した不飽和カルボン酸等が重合する場合もある。
そのため、得られる本開示の含フッ素重合体は、下記式(8)で表される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0062】
【化7】
(式(8)中、R
1、R
2はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基またはt-ブチル基であり、R
3、R
4はそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基であり、R
5は水素原子またはトリフルオロメチル基であり、R
6は水素原子、塩素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である。)
【0063】
また、重合工程では、式(5)で表される含フッ素単量体のフッ素原子を有していないアルキルアルコール部位に付加反応した不飽和カルボン酸等、及び、フッ素原子を含む含フッ素アルコール部位に付加反応した不飽和カルボン酸等の両方が重合する場合もある。
そのため、本開示の含フッ素重合体は、このような繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0064】
重合工程では、式(4)で表される含フッ素単量体及び式(5)で表される含フッ素単量体以外の別の単量体を含フッ素単量体精製工程後の組成物に加え、その組成物を用いて重合反応を行ってもよい。
この場合、得られる本開示の含フッ素重合体は、別の単量体に由来する繰り返し単位を含むことになる。つまり、本開示の含フッ素重合体は、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0065】
式(4)で表される含フッ素単量体及び式(5)で表される含フッ素単量体以外の別の単量体としては、例えば、以下の単量体が挙げられる。
すなわち、ヘキサフルオロイソプロパノール基(-C(CF3)2OH)を有する単量体、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、含フッ素アクリル酸エステル類、含フッ素メタクリル酸エステル類、スチレン類、含フッ素スチレン類、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、不飽和アミド類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、ビニルシラン類、ビニルスルホン酸またはビニルスルホン酸エステルアクリル酸、メタクリル酸マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、二酸化硫黄等である。
【0066】
また、別の単量体として、酸分解性基を含む単量体を用いてもよい。
酸分解性基を含む単量体を用いて含フッ素重合体を製造することで、含フッ素重合体をレジストとして用いた際に、基材に成膜したレジスト膜に波長300nm以下の電磁波または電子線等の高エネルギー線の露光により酸分解性基が分解しレジスト膜中で酸が発生する。
この酸により、現像における露光部のレジスト膜のアルカリ現像液への溶解性を向上させることができる。
【0067】
また、別の単量体として、ラクトン構造を有する単量体を用いてもよい。
ラクトン構造を有する単量体を用いて含フッ素共重合体を製造することで、含フッ素重合体をレジストとして用いた際に、含フッ素共重合体を含むレジスト膜と基材との密着性を向上させることができる。また当該含フッ素共重合体を用い、レジストパターン上の上層膜を形成した場合、下層のレジストパターンとの密着性を向上させるばかりでなく、現像する際に現像液との親和性を高めたり、高精細なレジストパターンを得ることが可能となる。
【0068】
これらの別の単量体は、1種が加えられてもよく、2種以上が加えられてもよい。
【0069】
ヘキサフルオロイソプロパノール基を有する単量体としては、以下の単量体を例示することができる。
【0070】
【化8】
(R
7は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基であり、水酸基の水素原子が保護基で置換されていてもよい。)
【0071】
アクリル酸エステル類としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートtert-ブチルアクリレート、3-オキソシクロヘキシルアクリレート、アダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、エチルアダマンチルアクリレート、ヒドロキシアダマンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート等を例示することができる。
【0072】
メタクリル酸エステル類としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、3-オキソシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、エチルアダマンチルメタクリレート、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート等を例示することができる。
【0073】
含フッ素アクリル酸エステルや、含フッ素メタクリル酸エステル類としては、フッ素原子またはフッ素原子を有するアルキル基をアクリル構造のα位に含有したアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであってもよく、エステル構造にフッ素原子またはフッ素原子を有するアルキル基を含有したアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであってもよい。
【0074】
含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル類において、アクリル構造のα位とエステル部位ともにフッ素原子またはフッ素原子を有するアルキル基を含有していてもよい。また、アクリル構造のα位にシアノ基が導入されていてもよい。
【0075】
含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル類において、アクリル構造のα位に導入するフッ素原子を有するアルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ-n-ブチル基を例示することができる。
【0076】
含フッ素アクリル酸エステルまたは含フッ素メタクリル酸エステル類において、エステル構造がパーフルオロアルキル基またはフルオロアルキル基等のフッ素化アルキル基を有してもよい。また、エステル構造に環状構造とフッ素原子とが共存していてもよい。さらに、その環状構造が、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基等を有する含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環または含フッ素シクロヘプタン環等を有していてもよい。また、エステル構造が、フッ素原子を有するt-ブチルエステル基であってもよい。
【0077】
この様な含フッ素アクリル酸エステルとしては、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1-ジヒドロヘプタフルオロ-n-ブチルアクリレート、1,1,5-トリヒドロオクタフルオロ-n-ペンチルアクリレート、1,1,2,2-テトラヒドロトリデカフルオロ-n-オクチルアクリレート、1,1,2,2-テトラヒドロヘプタデカフルオロ-n-デシルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、6-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル-2-イルアクリレート、6-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル-2-イル-2-(トリフルオロメチル)アクリレート、3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル-2-トリフルオロメチルアクリレート等を例示することができる。
【0078】
含フッ素メタクリル酸エステル類としては、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1-ジヒドロヘプタフルオロ-n-ブチルメタクリレート、1,1,5-トリヒドロオクタフルオロ-n-ペンチルメタクリレート、1,1,2,2-テトラヒドロトリデカフルオロ-n-オクチルメタクリレート、1,1,2,2-テトラヒドロヘプタデカフルオロ-n-デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6-[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル-2-イルメタクリレート、3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート等を例示することができる。
【0079】
スチレン類及び含フッ素スチレン類としては、スチレン、ヒドロキシスチレン、フッ素化スチレン等を挙げることができる。
【0080】
フッ素化スチレンとしては、フッ素原子またはトリフルオロメチル基で芳香環の水素を置換したスチレンとしての、ペンタフルオロスチレン、トリフルオロメチルスチレン、ビストリフルオロメチルスチレン等であってもよい。また、芳香環の水素を、ヘキサフルオロイソプロパノール基またはその水酸基を保護基で保護したヘキサフルオロイソプロパノール基で置換したスチレンであってもよい。また、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有のスチレン等であってもよい。
【0081】
ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基またはヒドロキシブチル基等のヒドロキシル基を構造中に有していてもよい。
また、これらの化合物は、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、芳香環、もしくはその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニル類またはアリルエーテル類を構造中に含有してもよく、これらを有する水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0082】
不飽和アミド類としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等を例示することができる。
【0083】
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等を例示することができる。
含フッ素オレフィン類としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン等を例示することができる。
【0084】
ノルボルネン部位を有する単量体としては、単量体中のノルボルネン部位は1個以上であってよく、ノルボルネン部位の水素原子がフッ素原子を含む官能基で置換されていてもよい。
このような単量体としては、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンと不飽和化合物とのDiels-Alder付加反応で合成されるノルボルネン化合物が挙げられる。
【0085】
ノルボルネン化合物を合成する際に用いられる不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-フルオロアクリル酸、α-トリフルオロメチルアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、含フッ素オレフィン、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、ホモアリルアルコール、含フッ素ホモアリルアルコール、2-(ベンゾイルオキシ)ペンタフルオロプロパン、2-(メトキシエトキシメチルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2-(テトラヒドロキシピラニルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2-(ベンゾイルオキシ)トリフルオロエチレン、2-(メトキメチルオキシ)トリフルオロエチレン、3-(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプテン-2-イル)-1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-2-プロパノール等を例示することができる。
【0086】
酸分解性基を有する単量体において、酸分解性基は、レジストが含む光酸発生剤から発生した酸により加水分解して含フッ素重合体から脱離するものであれば特に制限なく使用できる。この様な酸分解性基として、下記式(9)または式(10)で表される酸分解性基を有する単量体が好ましい。
【0087】
【化9】
(式(9)及び式(10)中、R
8、R
9、R
10、R
12はそれぞれ独立に炭素数1~25の直鎖状、炭素数3~25の分岐鎖状または環状のアルキル基であって、アルキル基が含む水素原子の一部または全部がフッ素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはヒドロキシル基で置換されていてもよい。R
8、R
9、R
10の中、いずれか2つは結合して環を形成していてもよい。R
11は水素原子、炭素数1~25の直鎖状、炭素数3~25の分岐鎖状または環状のアルキル基であって、アルキル基が含む水素原子の一部または全部がフッ素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはヒドロキシル基で置換されていてもよい。点線は結合手である。)
【0088】
式(9)及び式(10)で表される酸分解性基として、具体的には下記に示す酸分解性基を例示することができる。なお、点線は結合手である。
【0089】
【0090】
ラクトン構造を有する単量体としては、γ-ブチロラクトンやメバロニックラクトンから水素原子1つを除いた基等の単環式のラクトン構造、ノルボルナンラクトンから水素原子1つを除いた基等の多環式のラクトン構造等を有する単量体を例示することができる。
【0091】
これまで説明してきた別の単量体としては、下記式(11)で表される3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート及び下記式(12)で表される1,1,2,2-テトラヒドロヘプタデカフルオロ-n-デシルアクリレートが好ましい。
【0092】
【0093】
3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレートを加えた場合、得られる本開示の含フッ素重合体をレジスト膜または上層膜の成分とした場合、塗布液を調製する際の有機溶剤への溶解性が高まり、現像する際の現像液への溶解性を向上させる効果がある。
1,1,2,2-テトラヒドロヘプタデカフルオロ-n-デシルアクリレートを加えて得られる本開示の含フッ素重合体を上層膜の成分とした場合、上層膜の下層のレジスト膜への密着性が向上するとともに上層膜表面の撥水性が向上するため、水を露光媒体とする液浸露光にて露光時間の短縮が可能になる。また表面張力を低減でき、上層膜表面の平滑化、膜厚の均一化が図れる。
【0094】
別の単量体を加える場合、その量は特に限定されないが、重合後の本開示の含フッ素重合体において、含フッ素重合体に含まれる全ての繰り返し単位を100mоl%とした際に、別の単量体由来の繰り返し単位の割合が、1mol%以上、80mol%以下であることが好ましく、5mol%以上、70mol%以下であることがより好ましく、10mol%以上、60mol%以下であることがさらに好ましい。
別の単量体由来の繰り返し単位の割合が、1mol%未満であると、得られる含フッ素重合体をレジストとした際に期待される有機溶剤への溶解性が向上する効果、基材にレジスト膜を形成した際のレジスト膜と基材との密着性、レジストパターンの耐エッチング性が向上する効果が得られにくくなる。
別の単量体由来の繰り返し単位の割合が、80mol%を超えると、式(1)で表される繰り返し単位の割合が少なくなり、レジスト膜の透明性を向上させる効果、溶剤溶解性を向上させる効果が得られにくくなる。
【0095】
重合工程における重合反応は、特に限定されず、ラジカル重合反応、イオン重合反応、配位アニオン重合反応、リビングアニオン重合反応、カチオン重合反応であってもよい。
これらの中では、ラジカル重合反応であることが好ましい。
【0096】
重合反応がラジカル重合反応である場合、重合開始剤としては、重合反応が起こればよく特に限定されるものではないが、アゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物を用いることができる。
【0097】
アゾ系化合物としては、アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
過酸化物系化合物としては、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ-t-ブチルパーオキシド、i-ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素または過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
レドックス系化合物としては、酸化剤と還元剤の組み合わせで用い、酸化剤側として、過酸化水素、過硫酸塩、クメンヒドロペルオキシド等が挙げられ、還元剤側として、鉄(II)イオン塩、銅(I)イオン塩、アンモニア、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0098】
またラジカル重合反応では、重合溶剤を用いてもよい。
重合溶剤としては、ラジカル重合反応を阻害しないものであれば特に限定されず、有機溶剤であってもよく、水であってもよい。
有機溶剤としては、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、環状エーテル系溶剤、フロン系溶剤、芳香族系溶剤等を上げることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0099】
エステル系溶剤としては、酢酸、酢酸n-ブチル等を例示することができる。
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルイソブチルケトン等を例示することができる。
炭化水素系溶剤としては、トルエン、シクロヘキサン等を例示することができる。
アルコール系溶剤としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルを例示することができる。
【0100】
また、ラジカル重合反応において、メルカプタンのような分子量調整剤を用いてもよい。
ラジカル重合反応における反応温度は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始剤の種類により適宜変更されるが、20℃以上、200℃以下であることが好ましく、30℃以上、140℃以下であることがより好ましい。
【0101】
重合工程を行った後、合成された含フッ素重合体を含む溶液または分散液から、媒質である有機溶剤または水を除去する方法としては、公知の方法を使用することができる。
具体的には再沈殿、ろ過、減圧下での加熱留出等の方法を例示することができる。
【0102】
以上の工程を経て、式(1)で表される繰り返し単位と式(2)で表される繰り返し単位とを含む本開示の含フッ素重合体を製造することができる。
【0103】
本開示の含フッ素重合体の重量平均分子量は、5000~20000であることが好ましく、7000~12000であることがより好ましい。
【0104】
また、本明細書において含フッ素重合体の重量平均分子量は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定された数値のことを意味する。
【0105】
[GPC条件]
装置:東ソー社製、HLC-8320GPC
重合性単量体分析用カラム:東ソー社製、TSKgelシリーズ(G2500HXL、G2000HXL、G1000HXL、G1000HXLの順に直列に接続)
重合体分析用カラム:東ソー社製、TSKgelシリーズ(G2500HXL、G2000HXL、G1000HXL、G1000HXLの順に直列に接続)
温度プログラム:40℃(保持)
流速:1mL/分
検出器:示差屈折検出器(RI)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
基準物質:ポリスチレン標準液
【0106】
次に、本開示の含フッ素重合体の使用方法について説明する。
本開示の含フッ素重合体は、レジスト膜の成分として用いることができる。
また、本開示の含フッ素重合体はレジスト膜及び/又はレジストパターンを保護する上層膜の成分として使用することができる。
【0107】
特に、本開示の含フッ素重合体が、構造中にヘキサフルオロイソプロパノール基を含む場合、本開示の含フッ素重合体を用いることにより、液浸露光により、上層膜を形成することができる。この場合、上層膜が形成されるレジスト膜及び/又はレジストパターンは、ネガ型及びポジ型のいずれであってもよい。
【0108】
本開示の含フッ素重合体が、脂肪族鎖構造とヘキサフルオロイソプロパノール基を含む場合、波長300nm以下の波長における光透過率が高い特性を有することになる。この場合、本開示の含フッ素重合体を、レジスト膜を形成するために用いる際に、その露光において、波長300nm以下の電磁波を使用することが可能である。
【0109】
本開示の含フッ素重合体を、レジスト膜や上層膜を形成するために用いる場合、本開示の含フッ素重合体の重量平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜後のレジスト膜や上層膜の物性、例えばガラス転移温度Tgに影響する。
本開示の含フッ素重合体を、レジスト膜を形成するために用いる場合に、重量平均分子量が高いと、現像液への溶解速度が遅くなりやすい。重量平均分子量が低い場合、現像液への溶解速度が速くなる傾向がある。
【0110】
本開示の含フッ素重合体を、レジスト膜や上層膜を形成するために用いる場合、本開示の含フッ素重合体を溶剤または水と溶剤との混合液に溶解し希釈し成膜用溶液とする。
本開示の含フッ素重合体を、上層膜を形成するために用いる場合の溶剤は、上層膜が形成されるレジスト膜及び/又はレジストパターンを浸食しにくく、これらに含まれる添加剤が溶出しにくい溶剤であることが好ましい。
【0111】
本開示の含フッ素共重合体を溶解する溶剤としては、沸点が70℃~170℃であることが好ましい。
溶剤の沸点が70℃未満であると、蒸発が早すぎて均一な膜を形成しにくい。
溶剤の沸点が170℃を超えると塗膜の乾燥に時間がかかりスループットが低下しやすくなる。
【0112】
また、溶剤の種類としては、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤またはフッ素系溶剤等を挙げることができ、これらの中では、炭素数5~20のアルカンや脂環類の炭化水素系溶剤、炭素数1~20のアルコール系溶剤、並びに、炭素数5~20のアルカンや脂環類の炭化水素及び炭素数1~20のアルコールに含まれる水素原子の一部がフッ素原子で置換されたフッ素系溶剤等であることが好ましい。これらは1種単独を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する場合、炭化水素系溶剤とアルコール系溶剤の組成は質量比で表わして、炭化水素系溶剤:アルコール系溶剤=50~99.9:0.1~50である溶剤が好ましい。
【0113】
炭化水素系溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等を例示することができる。アルコール系溶剤としてノルマルブタノール、イソブタノール、ターシャリブタノール、メチルエチルカルビノール、ペンタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール等を例示することができる。
【0114】
また、含フッ素重合体を速やかに溶解することができるという観点から、溶剤は、フッ素系溶剤であることが好ましい。
【0115】
フッ素系溶剤として、具体的には、2-フルオロアニソール、3-フルオロアニソール、4-フルオロアニソール、2,3-ジフルオロアニソール、2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、5,8-ジフルオロー1,4-ベンゾジオキサン、2,3-ジフルオロベンジルアルコール、1,3-ジフルオロ-2-プロパノール、2',4'-ジフルオロプロピオフェノン、2,4-ジフルオロトルエン、トリフルオロアセトアルデヒドエチルヘミアセタール、トリフルオロアセトアミド、トリフルオロエタノール、2,2,2-トリフルオロエチルブチレート、エチルヘプタフルオロブチレート、エチルヘプタフルオロブチルアセテート、エチルヘキサフルオログルタリルメチル、エチル-3-ヒドロキシ-4,4,4-トリフルオロブチレート、エチル-2-メチル-4,4,4-トリフルオロアセトアセテート、エチルペンタフルオロベンゾエート、エチルペンタフルオロプロピオネート、エチルペンタフルオロプロピニルアセテート、エチルパーフルオロオクタノエート、エチル-4,4,4-トリフルオロアセトアセテート、エチル-4,4,4-トリフルオロブチレート、エチル-4,4,4-トリフルオロクロトネート、エチルトリフルオロスルホネート、エチル-3-(トリフルオロメチル)ブチレート、エチルトリフルオロピルベート、S-エチルトリフルオロアセテート、フルオロシクロヘキサン、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノール、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-7,7-ジメチル-4,6-オクタンジオン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタフルオロペンタン-2,4-ジオン、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-2-ペンタノール、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-2-ペンタノン、イソプロピル4,4,4-トリフルオロアセトアセテート、メチルパーフルオロデナノエート、メチルパーフルオロ(2-メチル-3-オキサヘキサノエート)、メチルパーフルオロノナノエート、メチルパーフルオロオクタノエート、メチル-2,3,3,3-テトラフルオロプロピオネート、メチルトリフルオロアセトアセテート、1,1,1,2,2,6,6,6-オクタフルオロ-2,4-ヘキサンジオン、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-デカノール、パーフルオロ(2,5-ジメチル-3,6-ジオキサンアニオニック)酸メチルエステル、2H-パーフルオロ-5-メチル-3,6-ジオキサノナン、1H,1H,2H,3H,3H-パーフルオロノナン-1,2-ジオール、1H,1H,9H-パーフルオロ-1-ノナノール、1H,1H-パーフルオロオクタノール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタノール、2H-パーフルオロ-5,8,11,14-テトラメチル-3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタデカン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリヘキシルアミン、パーフルオロ-2,5,8-トリメチル-3,6,9-トリオキサドデカン酸メチルエステル、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、1H,1H,2H,3H,3H-パーフルオロウンデカン-1,2-ジオール、トルフルオロブタノール1,1,1-トリフルオロ-5-メチル-2,4-ヘキサンジオン、1,1,1-トリフルオロ-2-プロパノール、3,3,3-トリフルオロ-1-プロパノール、1,1,1-トリフルオロ-2-プロピルアセテート、パーフルオロブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロデカリン、パーフルオロ(1,2-ジメチルシクロヘキサン)、パーフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン)、プロピレングリコールトリフルオロメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルトリフルオロメチルアセテート、トリフルオロメチル酢酸ブチル、3-トリフルオロメトキシプロピオン酸メチル、パーフルオロシクロヘキサノン、プロピレングリコールトリフルオロメチルエーテル、トリフルオロ酢酸ブチル、1,1,1-トリフルオロ-5,5-ジメチル-2,4-ヘキサンジオン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メチル-2-プロパノール、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブタノール、2-トリフルオロメチル-2-プロパノール,2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、3,3,3-トリフルオロ-1-プロパノール、4,4,4-トリフルオロ-1-ブタノール等を例示することができる。
これらは、1種単独を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
本開示の含フッ素重合体を、レジスト膜又は上層膜を形成するために用いる場合、成膜用溶液中の固形分濃度は、3質量%以上、25質量%以下、より好ましくは5質量%以上、15質量%以下となるように含フッ素重合体を溶剤で溶解することが好ましい。
上記範囲であると、厚さに斑がなく、速やかにレジスト膜又は上層膜を形成することができる。
【0117】
本開示の含フッ素重合体を、レジスト膜を形成するために用いる場合、成膜用溶液は、含フッ素重合体、溶剤以外にも光酸発生剤、クエンチャー、他非フッ素重合体等を含んでいてもよい。
本開示の含フッ素重合体を、上層膜を形成するために用いる場合、成膜用溶液は、含フッ素重合体、溶剤以外にも他非フッ素重合体等を含んでいてもよい。
【0118】
本開示の含フッ素重合体を、レジスト膜を形成するために用いる場合、成膜用溶液を基材に塗布し、ベークすることによりレジスト膜を形成してもよい。その後、形成したレジスト膜は、現像液に浸漬され、溶解することになる。
現像液は特に限定されず、例えば、濃度0.1質量%以上、10質量%以下のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いることができる。
本開示の含フッ素重合体では、式(1)で表される繰り返し単位を基準とする質量百万分率で表して、式(2)で表される繰り返し単位の含有量が1500ppm以下である。
そのため、形成されたレジスト膜を現像液に浸漬すると、速やかに溶解し、残渣が生じにくくなる。
【0119】
この場合において、当該成膜用溶液を塗布する基材としては、特に限定されず、シリコンウェハ、化合物半導体基板、絶縁性基板等に配置されるCPU(中央演算処理装置 Central Processing Unit)、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)を例示することができる。
成膜用溶液を塗布する際は、成膜用溶液を基材の上に直接塗布して、レジスト膜を形成してもよく、基材に、別の層を設けてから、その層の上に成膜用溶液を塗布し、レジスト膜を形成してもよい。
別の層としては、例えば、反射防止膜、SiO2膜、Si3N4膜等が挙げられる。
反射防止膜は、例えば、反射防止用コーティング剤(例えば、日産化学(株)製のARC類等)を用いて形成することができる。
基材としてシリコンウェハを用いる場合、酸化炉において、900℃、高温スチーム処理を行うことで、シリコンウェハの表面にSiO2膜を形成することができる。また、シリコンウェハの表面に形成されたSiO2膜にSiH2及びNH3を化学蒸着(CVD)処理することにより、Si3N4膜を形成することができる。
【0120】
本開示の含フッ素重合体を、レジスト膜を形成するために用いる場合、成膜用溶液を基材に塗布してレジスト膜を形成してもよい。その後、レジスト膜に露光又は液浸露光を行ってもよい。
また、本開示の含フッ素重合体を、上層膜を形成するために用いる場合、本成膜用溶液をレジスト膜及び/又はレジストパターン上に塗布し、上層膜を形成してもよい。その後、上層膜に露光又は液浸露光を行ってもよい。
【0121】
露光する電磁波の波長は特に限定されないが、高精細のパターンを得るためには波長300nm以下の電磁波が好ましい。
電磁波照射器としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)やArFエキシマレーザ(波長193nm)を用いることができる。これらの中では、ArFエキシマレーザが好ましい。
また、極端紫外線(EUV Extremeultraviolet、波長13.5nm)、X線、他に電子線(EB electron beam)も使用することができる。
【0122】
また、本開示の含フッ素重合体は、半導体デバイスを製造する際のレジスト膜の上層膜として用いることができる。この場合、上層膜を液浸露光してもよい。
【0123】
本開示の含フッ素重合体を用いる半導体デバイスは、特に限定されないが、シリコンウェハ、化合物半導体基板、絶縁性基板等に配置されるCPU(中央演算処理装置 Central Processing Unit)、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)を例示することができる。
【0124】
なお、液浸露光とは、露光装置のレンズと基材との間に液浸用液体を満たして露光処理を行うものである。
露光装置のレンズと基材との間を液浸用液体で満たすと、露光装置のレンズと基材との間が空気で満たされている場合よりも、レンズを通って基材に入射する露光光の入射角を小さくすることができる。そのため、レンズの開口数(numerical aperture)を大きくすることができ、解像度を向上させることができる。
また、従来の開口数を有するレンズを用いた露光においても、深度焦点を拡大することが可能であり、安定した歩留が確保できる。
【0125】
また、液浸露光を行う場合におけるパターン形成では、レジスト膜へ液浸用液体が侵入することに起因しパターン形成不良が発生する場合がある。また、レジスト膜から液浸用液体に各種成分が浸みだすことに起因しパターン形成不良が発生する場合がある。さらに、液浸露光後の基材の上に液滴が残留するとパターン欠陥となる場合がある。
液浸露光を行う場合、このようなパターン形成不良等を防ぐための上層膜を、レジスト膜の上に形成することが行われている。
本開示の含フッ素重合体は、このようなレジスト膜の上に形成する上層膜の材料として有用である。
【0126】
液浸露光を行う場合、まず、シリコンウェハ等の基材上に、レジスト溶液をスピンナー等で塗布する。その後、プレベークを行い、レジスト膜を形成する。
【0127】
次いで、本開示の含フッ素重合体を含む成膜用溶液を、形成したレジスト膜の表面にスピンナー等を用い均一な厚みに塗布する。その後、加熱処理することにより、レジスト膜の上に上層膜を形成することができる。
【0128】
上層膜が形成された基材を水等の露光媒体に浸漬した状態で、波長300nm以下の電磁波を、回路パターンが記載されたマスクまたはレチクルを介して、上層膜及びレジスト膜に照射する。この際、電磁波は、媒体(例えば水)と上層膜を通過し下層のレジスト膜に到達する。この際、レジスト膜は、上層膜が形成されていることによって露光媒体と直接触することがない。そのため、露光媒体がレジスト膜に浸漬し膨潤することなく、また、レジスト膜の成分が露光媒体に溶出することを防止することができる。
【0129】
露光された基材をベーク後、現像液を用いて現像処理する。通常、現像液にはアルカリ性水溶液としての濃度0.1質量%以上、10質量%以下のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を使用することができる。現像において、上層膜が溶解し、下層のレジスト膜の露光部のみが溶解する。
【0130】
本開示の含フッ素重合体では、式(1)で表される繰り返し単位を基準とする質量百万分率で表して、式(2)で表される繰り返し単位の含有量が1500ppm以下である。
そのため、形成された上層膜を現像液に浸漬すると、上層膜が速やかに溶解し、残渣が生じにくくなる。その結果、得られるレジストパターンのエッジ部分がシャープに形成される。
【0131】
以下、本開示の具体的な実施例を示すが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0132】
(式(4)で表される単量体の標準試料の作製)
<含フッ素単量体合成工程>
温度計、還流冷却器および攪拌器を備えた1Lの三口フラスコに、1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-1,3-ジオール(下記式(3-1)で表される化合物)100g(0.44mol)、メタクリル酸無水物74.6g(0.48mol)、メタンスルホン酸4.2g(0.044mol)、トルエン400gおよびフェノチアジン0.5gを入れた。その後、三口フラスコの底部を50℃に調温したオイルバスに浸し、攪拌しつつ、4時間反応させ組成物を得た。
組成物をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、副反応物であるメタクリル酸を除き、反応液中には、メタクリル酸5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-2-イル(式(4-1)で示される化合物)が94.5質量%、1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-1,3-ジオールが1.6質量%、メタクリル酸無水物が2.0質量%、その他の化合物が1.9質量%含まれていることが判明した。
【0133】
【0134】
<含フッ素単量体精製工程>
得られた組成物を分液ロートに入れ、重曹水400gを加え2回洗浄した後、有機層を採取し、硫酸マグネシウム30gを加え乾燥した後、硫酸マグネシウムを濾過により除去した。濾液に重合禁止剤としてフェノチアジンを0.7g添加し、溶剤留去をした後、減圧蒸留(8Torr=1.1kPa)を行い、80℃~82℃の留分を集め、留分112gを得た。収率は87%であった。
【0135】
留分をガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)で分析したところ、以下に示すように、目的物であるメタクリル酸5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-2-イル(式(4-1)で表される含フッ素単量体)の純度は97.0%であり、副反応物であるメタクリル酸1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2,4-ジイル(下記式(5-1)で表される含フッ素単量体)が含まれていた。
【0136】
【0137】
上述の操作を繰り返し、メタクリル酸5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-2-イル(式(4-1)で表される含フッ素単量体)が含まれる留分を3.0kg製造した。
得られた留分をオールダーショウ式蒸留塔にて精密蒸留し、圧力0.5kPaにて沸点80℃の留分2.76kgを得た。
得られた留分をGC-MSで測定したところ、メタクリル酸5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-2-イル(式(4-1)で表される含フッ素単量体)の純度は99.8%であった。
精密蒸留前にGC-MSで測定したメタクリル酸1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2,4-ジイル(式(5-1)で表される含フッ素単量体)の濃度は2,600ppmであったが、精密蒸留後は10ppmに減少していた。このようにして精密蒸留で純度を高めたメタクリル酸5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-2-イル(式(4-1)で表される含フッ素単量体)を含む組成物を得た。この組成物をメタクリル酸5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-2-イル(式(4-1)で表される含フッ素単量体)の標準試料とした。
【0138】
また、以下の方法によりメタクリル酸1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2,4-ジイル(式(5-1)で表される含フッ素単量体)の標準試料を作製した。
温度計、還流冷却器および攪拌器を備えた1Lの三口フラスコに、メタクリル酸5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-2-イル(式(4-1)で表される含フッ素単量体)の標準試料100gを入れ、さらにトリエチルアミン60g、N,N-ジメチルアミノピリジン4gおよびフェノチアジン1gを加えた。フラスコ底部を氷浴に浸け、攪拌しつつ無水メタクリル酸79gを滴下した後、室温に戻して一時間攪拌し反応液を得た。反応液を分液ロートに移し、トルエン300gで希釈後、希塩酸200mLを加え反応を終了させ、有機層を分取した。分取した有機層を水200gで2回洗浄した後にロータリーエバポレーターで溶剤を留去した。次いで、ビグリュー管を備えた蒸留装置にて蒸留を行った。減圧度0.5kPaで86℃~88℃の留分を採取し16gの油分を得た。GC-MSで測定した油分には、メタクリル酸1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2,4-ジイル(式(5-1)で表される含フッ素単量体)が96質量%、未反応のメタクリル酸5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-2-イル(式(4-1)で表される含フッ素単量体)が2.5質量%含まれていた。当該油分を、メタクリル酸1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2,4-ジイル(式(5-1)で表される含フッ素単量体)の標準試料とした。
【0139】
(重合工程に用いる原料組成物の作製)
作製したメタクリル酸5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-2-イル(式(4-1)で表される含フッ素単量体)の標準試料及びメタクリル酸1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2,4-ジイル(式(5-1)で表される含フッ素単量体)の標準試料を用い、表1に示す割合となるように、原料組成物A~Fを調製した。
【0140】
【0141】
(実施例1)
<重合工程>
室温(約20℃)にて、原料組成物A、100gを500mLの容器に仕込み、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業株式会社製、製品名V-601)6.26gを溶解させた2-ブタノン200gを加え、原料組成物Aの溶液とした後、滴下ロートへ移した。次いで、別途、2-ブタノン100gを仕込んだ500mLの反応器に本滴下ロートを取り付け、2-ブタノンを78℃まで昇温した。
【0142】
反応器内の2-ブタノンの温度を78±1℃に保持した状態で、窒素気流下、原料組成物Aの溶液を滴下ロートより、2時間かけて徐々に反応器内に滴下した。滴下終了後、温度78±1℃で6時間保持した後に冷却した。その際、30℃に下温するまで30分かけて徐々に冷却し、下記式(1-1)で表される繰り返し単位及び下記式(2-1)で表される繰り返し単位を含む含フッ素重合体を得た。得られた含フッ素重合体は、実施例1に係る含フッ素重合体である。
実施例1に係る含フッ素重合体の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したところ、重量平均分子量は9575であった(N=1)。
【0143】
【0144】
同様にして、実施例1に係る含フッ素重合体を5回製造し(N=2~6)、計6回の製造を行った。各々の製造における実施例1に係る含フッ素重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表2に示す。
【0145】
次いで、上記含フッ素重合体を含む反応液を、温度25℃に調整したn-ヘプタン中に、1時間をかけて攪拌しつつ徐々に滴下後、さらに1時間撹拌し含フッ素重合体のスラリーを得た。得られたスラリーを減圧濾過しケーキを得た。ケーキを乾燥することで、実施例1に係る含フッ素重合体の粉体を得た。
【0146】
(実施例2)~(実施例5)
原料組成物Aに換えて原料組成物B~原料組成物Eを使用した以外は、実施例1と同様にして、それぞれ、実施例2~実施例5に係る含フッ素重合体を製造した。そして、実施例2~実施例5に係る含フッ素重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表2に示す。
【0147】
(実施例6)
室温(約20℃)にて、原料組成物A80g、3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート(式(11)で表される単量体)20gを500mLの容器に仕込み、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬工業株式会社製、製品名V-601)6.26gを溶解させた2-ブタノン200gを加え、原料組成物Aとの混合溶液とした後、滴下ロートへ移した。次いで、別途、2-ブタノン100gを仕込んだ500mLの反応器に本滴下ロートを取り付け、2-ブタノンを78℃まで昇温した。
【0148】
反応器内の2-ブタノンの温度を78±1℃に保持した状態で、窒素気流下、上記混合溶液を滴下ロートより、2時間かけて徐々に反応器内に滴下した。滴下終了後、温度78±1℃で6時間保持した後に冷却した。その際、30℃に下温するまで30分かけて徐々に冷却して、下記式(1-1)で表される繰り返し単位、下記式(2-1)で表される繰り返し単位及び下記式(11-1)で表される繰り返し単位を含む含フッ素重合体を得た。得られた含フッ素重合体は、実施例6に係る含フッ素重合体である。
次に、反応液より、2-ブタノンを除去し、実施例6に係る含フッ素重合体の分子量をGPCで測定したところ、9669であった(N=1)。
【0149】
【0150】
同様にして、実施例6に係る含フッ素重合体の反応液を5回製造し(N=2~6)、計6回の製造を行った。各々の製造における実施例6に係る含フッ素重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表2に示す。
【0151】
(実施例7)
原料組成物Aに換えて原料組成物Cを使用した以外は、実施例6と同様にして、実施例7に係る含フッ素重合体を製造した。そして、実施例7に係る含フッ素重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表2に示す。
【0152】
(実施例8)
室温(約20℃)にて、原料組成物A95g、1,1,2,2-テトラヒドロヘプタデカフルオロ-n-デシルアクリレート(式(12)で表される単量体)5gを500mLの容器に仕込み、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)6.26gを溶解させた2-ブタノン200gを加え、原料組成物Aとの混合溶液とした後、滴下ロートへ移した。次いで、別途、2-ブタノン100gを仕込んだ500mLの反応器に本滴下ロートを取り付け、2-ブタノンを78℃まで昇温した。
【0153】
反応器内の2-ブタノンの温度を78±1℃に保持した状態で、窒素気流下、上記混合溶液を滴下ロートより、2時間かけて徐々に反応器内に滴下した。滴下終了後、温度78±1℃で6時間保持した後に冷却した。その際、30℃に下温するまで30分かけて徐々に冷却して下記式(1-1)で表される繰り返し単位、下記式(2-1)で表される繰り返し単位及び下記式(12-1)で表される繰り返し単位を含む含フッ素重合体を得た。得られた含フッ素重合体は、実施例8に係る含フッ素重合体である。
反応液より、2-ブタノンを除去し得られた実施例8に係る含フッ素共重合体の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したところ、重量平均分子量は9532であった(N=1)。
【0154】
【0155】
同様にして、実施例8に係る含フッ素重合体の反応液を5回製造し(N=2~6)、計6回の製造を行った。各々の製造における実施例8に係る含フッ素重合体の重量平均分子量を測定した結果を表2に示す。
【0156】
(実施例9)
原料組成物Aに換えて原料組成物Cを使用した以外は、実施例8と同様にして、実施例9に係る含フッ素重合体を製造した。そして、実施例9に係る含フッ素重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表2に示す。
【0157】
(比較例1)
原料組成物Aに換えて原料組成物Fを使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る含フッ素重合体を製造した。そして、比較例1に係る含フッ素重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表2に示す。
【0158】
(比較例2)
原料組成物Aに換えて原料組成物Fを使用した以外は、実施例8と同様にして、比較例2に係る含フッ素重合体を製造した。そして、比較例2に係る含フッ素重合体の重量平均分子量を測定した。結果を表2に示す。
【0159】
(繰り返し単位の含有量)
各実施例及び各比較例に係る含フッ素重合体について、式(1-1)で表される繰り返し単位及び式(2-1)で表される繰り返し単位の含有量を測定し、式(1-1)で表される繰り返し単位を基準とする質量百万分率で式(2-1)で表される繰り返し単位の含有量を算出した。結果を表2に示す。
なお、重合体における各繰り返し単位の式(2-1)で表される繰り返し単位の含有量は、以下のように測定した。
まず、各実施例及び各比較例における反応後の溶液をHPLCにより測定し、反応後の溶液中に原料となる単量体が残存していないことをHPLCで確認した。
それを踏まえ、各実施例及び各比較例に係る重合体の1H-NMR、19F-NMR又は13C-NMRの測定値から各実施例及び各比較例に係る重合体に含まれる式(2-1)で表される繰り返し単位の含有量を定量した。
【0160】
【0161】
[現像液への溶解性及び水への膨潤・溶解性評価]
各実施例及び各比較例に係る含フッ素重合体を、n-ヘプタン95質量%、n-ヘキシルアルコール5質量%の混合溶剤に溶解させ、それぞれ固形分濃度2.5質量%の成膜用溶液を得た。
【0162】
次いで、それぞれの成膜用溶液をシリコンウェハ上にスピンコートし、110℃でベークし、均一なレジスト膜を得た。
これらのレジスト膜を、現像液としての濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸漬し溶解させ、溶解性を評価した。
レーザー顕微鏡にて基材上の残渣の有無を評価した。レーザー顕微鏡はキーエンス社VX-1100を用いて行った。
結果を表3に示す。
評価基準は以下の通りである。
◎:現像液に浸漬させたところ、現像液に速やかに溶解し、膜が消失した。
〇:現像液に浸漬させたところ、60秒以内に溶解し、膜が消失した。
×:現像液に浸漬させ60秒後にとりだしたところ、膜は溶解しているものの膜のあった部位に点状の残渣が認められた。
【0163】
これらのレジスト膜を塗布した基材を半分にカットし、うち半分を純水に30分間浸漬させ、浸漬していない基材と比較し膜の膨潤及び溶解を評価した。
評価方法は以下の通りである。
レーザー顕微鏡にて上記浸漬有無の基材上を観察し評価した。レーザー顕微鏡はキーエンス社VX-1100を用いて行った。
結果を表3に示す。
評価基準は以下の通りである。
〇:膜の膨潤及び溶解が生じていなかった。
×:膜の膨潤及び溶解が生じていた。
【0164】
【0165】
表3に示すように、式(2-1)で表される繰り返し単位の含有割合が低い実施例1~9に係る含フッ素重合体を用いて作製したレジスト膜は現像液への溶解性が良好であった。
一方、式(2-1)で表される繰り返し単位の含有割合が高い比較例1及び2に係る含フッ素重合体を用いて作製したレジスト膜は現像液への溶解性が悪かった。