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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】耐油剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/26 20060101AFI20231109BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20231109BHJP
   C08F 220/02 20060101ALI20231109BHJP
   D21H 21/14 20060101ALI20231109BHJP
   D21H 17/37 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C08L33/26
C08L33/00
C08F220/02
D21H21/14 Z
D21H17/37
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022109251
(22)【出願日】2022-07-06
(65)【公開番号】P2023010658
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2021113736
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【弁理士】
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】柴田 俊
(72)【発明者】
【氏名】上原 徹也
(72)【発明者】
【氏名】野口 太甫
(72)【発明者】
【氏名】仲村 尚子
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102771(JP,A)
【文献】特開平10-204792(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054856(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
D21H 17/00
D21H 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)炭化水素基含有重合体および(2)両性ポリアクリルアミド重合体を含む耐油剤組成物であって、
炭化水素基含有重合体が
a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位、及び
(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位
を有する、耐油剤組成物。
【請求項2】
さらに、(3)アニオン性ポリアクリルアミド重合体を含む、請求項に記載の耐油剤組成物。
【請求項3】
パルプまたはパルプスラリーに添加される、請求項1又は2に記載の耐油剤組成物。
【請求項4】
炭化水素基含有重合体の量が、パルプ(固形重量)に対して、0.03~3.0重量%であり、両性ポリアクリルアミド重合体の量が、パルプ(固形重量)に対して、0.3重量%超~3.0重量%である、請求項に記載の耐油剤組成物。
【請求項5】
(1)炭化水素基含有重合体
を含んでなる液、および
(2)両性ポリアクリルアミド重合体
を含んでなる液
を有する耐油剤キットであって、
炭化水素基含有重合体が
a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位、及び
(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位
を有する、耐油剤キット。
【請求項6】
紙の構成材料またはパルプもしくはパルプスラリーに、(1)炭化水素基含有重合体および(2)両性ポリアクリルアミド重合体を添加すること、を含む、耐油紙の製造方法であって、
炭化水素基含有重合体が
a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位、及び
(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位
を有する、耐油紙の製造方法。
【請求項7】
さらに(3)アニオン性ポリアクリルアミド重合体を添加することを含む、請求項に記載の耐油紙の製造方法。
【請求項8】
パルプまたはパルプスラリーに、
(1)炭化水素基含有重合体および(2)両性ポリアクリルアミド重合体を、この順で添加する、または、
(1)炭化水素基含有重合体、(2)両性ポリアクリルアミド重合体、および(3)アニオン性ポリアクリルアミド重合体を、この順で添加する、請求項に記載の耐油紙の製造方法。
【請求項9】
パルプスラリーの電気伝導度は、0.1~2000μS/cmであり、パルプスラリーのpHは、4~9であり、パルプスラリーに使用される水の硬度は、5000ppm以下である請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか一項に記載の製造方法で得られる、耐油紙。
【請求項11】
(1)炭化水素基含有重合体および(2)両性ポリアクリルアミド重合体を紙の内部に含む耐油紙であって、
炭化水素基含有重合体が
a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位、及び
(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位
を有する、耐油紙。
【請求項12】
請求項に記載の耐油剤キットにおける(1)炭化水素基含有重合体および(2)両性ポリアクリルアミド重合体を紙の内部に含む、請求項11に記載の耐油紙。
【請求項13】
パルプモールド製品である、請求項11又は12に記載の耐油紙。
【請求項14】
食品包装材又は食品容器である、請求項11又は12に記載の耐油紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐油剤組成物、および該耐油剤組成物で処理された紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙には、耐油性が要求されることがある。
例えば、紙からできている食品包装材および食品容器は、食品の水分および油分が染み出すことを防止することが要求される。したがって、耐油剤が紙に内添または外添により適用されている。
【0003】
紙に耐油性を与える幾つかの提案がなされている。
特許文献1(特開2009-102771号公報)は、耐油紙を製造する際、炭素数1~6のペルフルオロアルキル基を有する単量体(a)に基づく重合単位(a’)を有するカチオン性含フッ素共重合体(A)を含有する組成物(I)と、両性ポリアクリルアミド系樹脂(B)を含有する組成物(II)とからなる耐油処理剤を、紙の構成材料に添加することを開示している。
特許文献2(国際出願公開2020/054856号公報)は、(a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位、および(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位を有する非フッ素共重合体を含んでなる紙用耐油剤を開示している。
特許文献3(国際出願公開2020/241709号公報)は、(1)非フッ素重合体、および(2)無機粒子または有機粒子から選択された少なくとも1種の粒子、を含んでなる、紙の内部に添加される紙用耐油剤であって、粒子(2)の量が、非フッ素重合体(1)と粒子(2)の合計重量に対して、1~99.9重量%である紙用耐油剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-102771号公報
【文献】国際出願公開2020/054856号公報
【文献】国際出願公開2020/241709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、紙に対して優れた耐油性を与えることができる耐油剤(耐油剤組成物)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、炭化水素基含有重合体、および両性ポリアクリルアミド重合体を含む耐油剤組成物に関する。紙の処理において、耐油剤組成物を外添または内添してよいが、耐油剤組成物を内添することが好ましい。
本開示の好ましい態様は、次のとおりである。
[態様1]
(1)炭化水素基含有重合体および(2)両性ポリアクリルアミド重合体を含む耐油剤組成物。
[態様2]
炭化水素基含有重合体が、
(a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位、および
(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位
を有する重合体である、態様1に記載の耐油剤組成物。
[態様3]
さらに、(3)アニオン性ポリアクリルアミド重合体を含む、態様1又は2に記載の耐油剤組成物。
[態様4]
パルプ(スラリー)に添加される、態様1~3のいずれかに記載の耐油剤組成物。
[態様5]
炭化水素基含有重合体の量が、パルプ(固形重量)に対して、0.03~3.0重量%であり、両性ポリアクリルアミド重合体の量が、パルプ(固形重量)に対して、0.3重量%超~3.0重量%である、態様4に記載の耐油剤組成物。
[態様6]
(1)炭化水素基含有重合体
を含んでなる液、および
(2)両性ポリアクリルアミド重合体
を含んでなる液
を有する耐油剤キット。
[態様7]
紙の構成材料またはパルプ(スラリー)に、(1)炭化水素基含有重合体および(2)両性ポリアクリルアミド重合体を添加すること、を含む、耐油紙の製造方法。
[態様8]
さらに(3)アニオン性ポリアクリルアミド重合体を添加することを含む、態様7に記載の耐油紙の製造方法。
[態様9]
パルプ(スラリー)に、
(1)炭化水素基含有重合体および(2)両性ポリアクリルアミド重合体を、この順で添加する、または
(1)炭化水素基含有重合体、(2)両性ポリアクリルアミド重合体、および(3)アニオン性ポリアクリルアミド重合体を、この順で添加する、態様7又は8に記載の耐油紙の製造方法。
[態様10]
パルプスラリーの電気伝導度は、0.1~2000μS/cmであり、パルプスラリーのpHは、4~9であり、パルプスラリーに使用される水の硬度は、5000ppm以下である態様7~9のいずれか一項に記載の製造方法。
[態様11]
態様7~10のいずれか一項の製造方法で得られる、耐油紙。
[態様12]
(1)炭化水素基含有重合体および(2)両性ポリアクリルアミド重合体を紙の内部に含む耐油紙。
[態様13]
態様6に記載の耐油剤キットにおける(1)炭化水素基含有重合体と(2)両性ポリアクリルアミド重合体とを紙の内部に含む、態様12に記載の耐油紙。
[態様14]
パルプモールド製品である、態様12又は13に記載の耐油紙。
[態様15]
食品包装材又は食品容器である、態様12~14のいずれかに記載の耐油紙。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、紙に、高い耐油性、特に、優れた高温耐油性が付与される。
パルプ(スラリー)に両性ポリアクリルアミド重合体を添加することによって、炭化水素基含有重合体(非フッ素耐油剤)の使用量を低減することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において、炭化水素基含有重合体は、非フッ素重合体であり、耐油剤として機能する。
一つの実施態様において、炭化水素基含有重合体と両性ポリアクリルアミド重合体を使用する。
他の実施態様において、炭化水素基含有重合体と両性ポリアクリルアミド重合体とアニオン性アクリルアミド重合体を使用する。
炭化水素基含有重合体と両性ポリアクリルアミド重合体との重量比は、10:90~90:10、20:80~80:20、30:70~70:30、または40:60~60:40であってよい。
【0009】
炭化水素基含有重合体の量の下限は、パルプ(固形重量)に対して、0.6重量%超、0.65重量%、0.7重量%、0.75重量%、0.8重量%、0.85重量%、0.9重量%または1重量%であってよい。あるいは、炭化水素基含有重合体の量の下限は、パルプ(固形重量)に対して、0.05重量%、0.1重量%、0.15重量%、0.2重量%、0.25重量%または0.3重量%であってよい。
炭化水素基含有重合体の量の上限は、パルプ(固形重量)に対して、4重量%、3.5重量%、3重量%、3.5重量%、3重量%、2.5重量%または2重量%であってよい。あるいは、炭化水素基含有重合体の量の上限は、パルプ(固形重量)に対して、0.5重量%未満、0.45重量%、0.4重量%、0.35重量%、0.3重量%、または0.25重量%であってよい。
【0010】
例えば、炭化水素基含有重合体の量は、パルプ(固形重量)に対して、0.03~3.0重量%または0.05~2.5重量%であってよい。炭化水素基含有重合体の量は、パルプ(固形重量)に対して、0.6重量%超~3.0重量%、0.7~2.5重量%または0.8~2.0重量%であってよい。あるいは、0.03~0.5重量%未満、0.05~0.5重量%未満、0.10~0.45重量%または0.15~0.4重量%。例えば0.2~0.4重量%であってよい。
【0011】
両性ポリアクリルアミド重合体の量は、パルプ(固形重量)に対して、0.3重量%超~3.0重量%、0.4~3.0重量%未満または0.5~2.5重量%、例えば0.8~2.0重量%または1~2重量%であってよい。
【0012】
アニオン性アクリルアミド重合体の量は、パルプ(固形重量)に対して、0.01~3.0重量%、0.05~2.5重量%、0.1~2重量%または0.2~1.5重量%または0.3~1重量%であってよい。
【0013】
(1)炭化水素基含有重合体
炭化水素基含有重合体は、炭化水素基を有するアクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリエーテル系重合体、シリコーン系重合体、ウレタン系重合体などであってよい。エステル結合、アミド結合および/またはウレタン結合を有する重合体が好ましい。特にアクリル系重合体(すなわち、炭化水素基含有アクリル系重合体)が好ましい。アクリル系重合体は、エステル結合および/またはアミド結合を有することが好ましい。
【0014】
炭化水素基含有重合体は、単独重合体または共重合体であってよい。炭化水素基含有重合体は、共重合体であることが好ましい。
【0015】
単独重合体は、1種の単量体から形成される繰り返し単位のみを有する。単独重合体は、炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体のみから形成されることが好ましい。
共重合体は、2種以上の単量体から形成される繰り返し単位を有する。
【0016】
炭化水素基含有重合体は、
(a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成される繰り返し単位、および
(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成される繰り返し単位を有することが好ましい。
さらに、炭化水素基含有重合体は、単量体(a)および(b)に加えて、
(c)イオン供与基を有する単量体
によって形成されている繰り返し単位を有することが好ましい。
炭化水素基含有重合体は、単量体(a)、(b)および(c)に加えて、
(d)他の単量体
から形成される繰り返し単位を有していてもよい。
【0017】
(a)長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)は、炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有する。炭素数7~40の長鎖炭化水素基は、炭素数7~40の直鎖状または分岐状の炭化水素基であることが好ましい。長鎖炭化水素基の炭素数は、10~40、例えば、12~30、特に15~30であることが好ましい。あるいは、長鎖炭化水素基の炭素数は、18~40であってよい。
【0018】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y(R)
[式中、Rは、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基(特に、-CH-、-CH=)、-C-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体であることが好ましい。
【0019】
は、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。Xの例は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基である。Xは、水素原子、メチル基、塩素原子であることが好ましい。Xは水素原子であることが特に好ましい。
【0020】
は、2価~4価の基である。Yは、2価の基であることが好ましい。
は、炭素数1の炭化水素基、-C-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上によって構成される基(但し、炭化水素基を除く)であることが好ましい。炭素数1の炭化水素基の例として、-CH-、枝分かれ構造を有する-CH=または枝分かれ構造を有する-C≡が挙げられる。
【0021】
は、-Y’-、-Y’-Y’-、-Y’-C(=O)-、-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-、-Y’-R’-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-、-Y’-R’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-Y’-、または-Y’-R’-Y’-R’-
[式中、Y’は、直接結合、-O-、-NH-または-S(=O)-であり、
R’は-(CHm-(mは1~5の整数である)または-C-(フェニレン基)である。]
であってよい。
【0022】
の具体例は、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C-、-O-(CHm-O-、-NH-(CHm-NH-、-O-(CHm-NH-、-NH-(CHm-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-、-O-(CHm-C(=O)-O-、-NH-(CHm-O-C(=O)-、-NH-(CHm-C(=O)-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、-O-(CHm-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-O-(CHm-O-C-、-O-(CHm-NH-S(=O)-、-O-(CHm-S(=O)-NH-、-NH-(CHm-O-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-O-、-NH-(CHm-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-O-C-、-NH-(CHm-NH-C-、-NH-(CHm-NH-S(=O)-、または-NH-(CHm-S(=O)-NH-である[式中、mは1~5、特に2または4である。]。
【0023】
は、-O-、-NH-、-O-(CHm-O-C(=O)-、-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、-O-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-S(=O)-、-O-(CHm-S(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-S(=O)-、または-NH-(CHm-S(=O)-NH-
[式中、mは1~5の整数、特に2または4である。]
であることが好ましい。Yは、-O-または-O-(CHm-NH-C(=O)-、特に-O-(CHm-NH-C(=O)-であることがより好ましい。
【0024】
は、直鎖状または分岐状の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、特に直鎖状の炭化水素基であってよい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。炭化水素基の炭素数は、12~30、例えば16~26または15~26、特に18~22または17~22であることが好ましい。
【0025】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)の例は、
(a1)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-R
[式中、Rは、炭素数7~40の炭化水素基であり、
は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および
(a2)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z(-Y-R)
[式中、Rは、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O-または-NH-であり、
は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である。
【0026】
(a1)アクリル単量体
アクリル単量体(a1)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-R
[式中、Rは、炭素数7~40の炭化水素基であり、
は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O-または-NH-である。]
で示される化合物である。
【0027】
アクリル単量体(a1)は、Yが-O-である長鎖アクリレートエステル単量体、またはYが-NH-である長鎖アクリルアミド単量体である。
は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。Rにおいて、炭化水素基の炭素数は、12~30、例えば16~26、特に18~22であることが好ましい。
は、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。水素原子、メチル基または塩素原子であることが好ましい。
【0028】
長鎖アクリレートエステル単量体の好ましい具体例は、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ステアリルαクロロアクリレート、イコシルαクロロアクリレート、ベヘニルαクロロアクリレートである。
長鎖アクリルアミド単量体の好ましい具体例は、ステアリル(メタ)アクリルアミド、イコシル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミドである。
【0029】
(a2)アクリル単量体
アクリル単量体(a2)は、アクリル単量体(a1)とは異なる単量体である。アクリル単量体(a2)は、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-、または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基を有する(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミドである。
アクリル単量体(a2)は、式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z(-Y-R)
[式中、Rは、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
は、-O-または-NH-であり、
は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、あるいは2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示される化合物であってよい。
【0030】
は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。Rにおいて、炭化水素基の炭素数は、12~30、例えば16~26または15~26、特に18~22または17~22であることが好ましい。
【0031】
は、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。水素原子、メチル基または塩素原子であることが好ましい。
【0032】
は、-Y’-、-Y’-Y’-、-Y’-C(=O)-、-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-、-Y’-R’-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-、-Y’-R’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-Y’-、または-Y’-R’-Y’-R’-
[式中、Y’はそれぞれ独立して、直接結合、-O-、-NH-または-S(=O)-であり、
R’は-(CH-(mは1~5の整数である)、炭素数1~5の不飽和結合を有する直鎖状の炭化水素基、炭素数1~5の枝分かれ構造を有する炭化水素基、または-(CH-C-(CH-(lはそれぞれ独立して0~5の整数であり-C-はフェニレン基である)である。]
であってよい。
【0033】
の具体例は、直接結合、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-NH-S(=O)-、-S(=O)-NH-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C-、-NH-C-、-O-(CHm-O-、-NH-(CHm-NH-、-O-(CHm-NH-、-NH-(CHm-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-、-O-(CHm-C(=O)-O-、-NH-(CHm-O-C(=O)-、-NH-(CHm-C(=O)-O-、-O-(CHm-O-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-O-、-O-(CHm-C(=O)-NH-、-O-(CHm-NH-C(=O)-、-O-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-O-(CHm-O-C-、-NH-(CHm-O-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-O-、-NH-(CHm-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-、-NH-(CHm-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CHm-O-C-、-NH-(CHm-NH-C
[式中、mは1~5の整数である。]
である。
【0034】
は、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-NH-S(=O)-、-S(=O)-NH-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C-であることが好ましい。Yは、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-または-NH-C(=O)-NH-であることがさらに好ましい。
【0035】
Zは、直接結合、あるいは2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、直鎖構造を有しても、枝分かれ構造を有していてもよい。Zの炭素数は、2~4、特に2であることが好ましい。Zの具体例は、直接結合、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-、-CHCHCHCHCH-、枝分かれ構造を有する-CHCH=、枝分かれ構造を有する-CH(CH-)CH-、枝分かれ構造を有する-CHCHCH=、枝分かれ構造を有する-CHCHCHCHCH=、枝分かれ構造を有する-CHCH(CH-)CH-、枝分かれ構造を有する-CHCHCHCH=である。
Zは直接結合でないことが好ましく、YおよびZは同時に直接結合であることはない。
【0036】
アクリル単量体(a2)は、CH2=C(-X)-C(=O)-O-(CHm-NH-C(=O)-R、CH=C(-X)-C(=O)-O-(CH-O-C(=O)-NH-R、CH=C(-X)-C(=O)-O-(CH-NH-C(=O)-O-R、CH=C(-X)-C(=O)-O-(CH-NH-C(=O)-NH-Rであることが好ましい[ここで、RおよびXは上記と同意義である。]。
アクリル単量体(a2)は、CH2=C(-X)-C(=O)-O-(CHm-NH-C(=O)-Rであることが特に好ましい。
【0037】
アクリル単量体(a2)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドと長鎖アルキルイソシアネートを反応させることによって製造できる。長鎖アルキルイソシアネートとしては例えば、ラウリルイソシアネート、ミリスチルイソシアネート、セチルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、オレイルイソシアネート、ベヘニルイソシアネートなどがある。
あるいは、アクリル単量体(a2)は、側鎖にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルメタクリレートと長鎖アルキルアミンまたは長鎖アルキルアルコールを反応させることでも製造できる。長鎖アルキルアミンとしては例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベヘニルアミンなどがある。長鎖アルキルアルコールとしては例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどがある。
【0038】
長鎖炭化水素基含有アクリル単量体の好ましい例は、次のとおりである。
ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ステアリルαクロロアクリレート、ベヘニルαクロロアクリレート;
ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド;
【0039】

【0040】



【0041】



【0042】




【0043】



[上記式中、nは7~40の数であり、mは1~5の数である。]
上記の化学式の化合物は、α位が水素原子であるアクリル化合物であるが、具体例は、α位がメチル基であるメタクル化合物およびα位が塩素原子であるαクロロアクリル化合物であってよい。
【0044】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)の融点は10℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましい。
【0045】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)としては、X、X及びXが水素原子である、アクリレートであることが好ましい。
【0046】
アクリル単量体(a2)は、式:
12-C(=O)-NH-R13-O-R11
[式中、R11は、エチレン性不飽和重合性基を有する有機残基、
12は、炭素数7~40の炭化水素基、
13は、炭素数1~5の炭化水素基である。]
で示されるアミド基含有単量体であることが好ましい。
【0047】
11は、エチレン性不飽和重合性基を有する有機残基であり、炭素同士の二重結合があれば特に限定されない。具体的には-C(=O)CR14=CH、-CHR14=CH、-CHCHR14=CH等のエチレン性不飽和重合性基を有する有機残基が挙げられ、R14は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。またR11はエチレン性不飽和重合性基以外に種々の有機性基を有してよく、例えば鎖式炭化水素、環式炭化水素、ポリオキシアルキレン基、ポリシロキサン基等の有機性基が挙げられ、これら有機性基は種々の置換基で置換されていても良い。R11は-C(=O)CR14=CHであることが好ましい。
【0048】
12は、炭素数7~40の炭化水素基、好ましくはアルキル基であり、鎖式炭化水素基、環式の炭化水素基等が挙げられる。そのなかで、鎖式炭化水素基であることが好ましく、直鎖状の飽和炭化水素基であることが特に好ましい。R12の炭素数は、7~40であるが、好ましくは11~27、特に好ましくは15~23である。
【0049】
13は、炭素数1~5の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。炭素数1~5の炭化水素基は直鎖状または分岐鎖状のいずれでも良く、不飽和結合を有していても良いが、好ましくは直鎖状が良い。R13の炭素数は、2~4が好ましく、特に2であることが好ましい。R13は、アルキレン基であることが好ましい。
【0050】
アミド基含有単量体は、R12が1種類であるもの(例えば、R12が炭素数17である化合物のみ)、またはR12が複数の組み合わせであるもの(例えば、R12の炭素数が17である化合物と、R12の炭素数が15である化合物との混合物)であってよい。
【0051】
アミド基含有単量体の例は、カルボン酸アミドアルキル(メタ)アクリレートである。
アミド基含有単量体の具体例としては、パルミチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ベヘニン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ミリスチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ラウリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、イソステアリン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、オレイン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、ターシャリーブチルシクロヘキシルカプロン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、アダマンタンカルボン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、ナフタレンカルボン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、アントラセンカルボン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、パルミチン酸アミドプロピル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドプロピル(メタ)アクリレート、パルミチン酸アミドエチルビニルエーテル、ステアリン酸アミドエチルビニルエーテル、パルミチン酸アミドエチルアリルエーテル、ステアリン酸アミドエチルアリルエーテル、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
アミド基含有単量体は、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。アミド基含有単量体は、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートを含む混合物であってよい。ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートを含む混合物において、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートの量は、アミド基含有単量体全体の重量に対して、例えば55~99重量%、好ましくは60~85重量%、更に好ましくは65~80重量%であってよく、残りの単量体は、例えば、パルミチン酸アミドエチル(メタ)アクリレートであってよい。
【0053】
(b)親水性基を有するアクリル単量体
親水性基を有するアクリル単量体(b)は、単量体(a)以外の単量体であって、親水性単量体である。親水性基は、オキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数は2~6である。)であることが好ましい。特に、親水性基を有するアクリル単量体(b)は、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよび/またはポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリルアミドであることが好ましい。ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリルアミドは、一般式:
CH=CXC(=O)-O-(RO)-X (b1)、
CH=CXC(=O)-O-(RO)-C(=O)CX=CH (b2)、または
CH=CXC(=O)-NH-(RO)-X (b3)
[式中、
は、各々独立に水素原子またはメチル基、
は、各々独立に水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立に炭素数2~6のアルキレン基、
nは、1~90の整数
である。]
で示されるものであることが好ましい。nは、例えば1~50、特に1~30、特別に1~15あるいは2~15であってよい。あるいは、nは、例えば1であってよい。
Rは、直鎖または分岐のアルキレン基であってよく、例えば、式-(CH-または-(CHx1-(CH(CH))x2-[式中、x1およびx2は0~6、例えば2~5であり、x1およびx2の合計は1~6である。-(CHx1-と-(CH(CH))x2-の順序は、記載の式に限定されず、ランダムであってもよい。]で示される基であってよい。
-(RO)-において、Rは2種類以上(例えば、2~4種類、特に2種類)であってよく、-(RO)-は、例えば、-(RO)n1-と-(RO)n2-[式中、RとRは、相互に異なって、炭素数2~6のアルキレン基であり、n1およびn2は、1以上の数であり、n1とn2の合計は2~90である。]の組み合わせであってよい。
【0054】
一般式(b1)および(b2)、(b3)中のRは特にエチレン基、プロピレン基またはブチレン基であることが好ましい。一般式(b1)および(b2)、(b3)中のRは2種類以上のアルキレン基の組み合わせであっても良い。その場合、少なくともRのひとつはエチレン基、プロピレン基またはブチレン基であることが好ましい。Rの組合せとしては、エチレン基/プロピレン基の組合せ、エチレン基/ブチレン基の組合せ、プロピレン基/ブチレン基の組合せが挙げられる。単量体(b)は2種類以上の混合物であっても良い。その場合は少なくとも単量体(b)のひとつは一般式(b1)または(b2)、(b3)中のRがエチレン基、プロピレン基またはブチレン基であることが好ましい。また、一般式(b2)で示されるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用する場合、単独で単量体(b)として使用することは好ましくなく、単量体(b1)と併用することが好ましい。その場合も、一般式(b2)で示される化合物は使用される単量体(b)の中で30重量%未満にとどめることが好ましい。
【0055】
親水性基を有するアクリル単量体(b)の具体例は、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=CHCOO-CH2CH2O-H
CH2=CHCOO-CH2CH2CH2O-H
CH2=CHCOO-CH2CH(CH3)O-H
CH2=CHCOO-CH(CH3)CH2O-H
CH2=CHCOO-CH2CH2CH2CH2O-H
CH2=CHCOO-CH2CH2CH(CH3)O-H
CH2=CHCOO-CH2CH(CH3)CH2O-H
CH2=CHCOO-CH(CH3)CH2CH2O-H
CH2=CHCOO-CH2CH(CH2CH3)O-H
CH2=CHCOO-CH2C(CH3)2O-H
CH2=CHCOO-CH(CH2CH3)CH2O-H
CH2=CHCOO-C(CH3)2CH2O-H
CH2=CHCOO-CH(CH3)CH(CH3)O-H
CH2=CHCOO-C(CH3)(CH2CH3)O-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)2-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)4-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)5-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)6-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)5-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)9-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)23-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)90-CH3
【0056】
CH2=CHCOO-(CH2CH(CH3)O)9-H
CH2=CHCOO-(CH2CH(CH3)O)9-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH(CH3)O)12-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)2-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)3-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)8-(CH2CH(CH3)O)6-CH2CH(C2H5)C4H9
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)23-OOC(CH3)C=CH2
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)20-(CH2CH(CH3)O)5-CH2-CH=CH2
【0057】
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)9-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)COO-CH(CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH(CH3)CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(CH2CH3)O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2C(CH3)2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH(CH2CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-C(CH3)2CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH(CH3)CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)COO-C(CH3)(CH2CH3)O-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)2-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)4-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)6-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)9-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)9-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)23-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)90-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)9-H
【0058】
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)9-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)12-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)2-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)3-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)8-(CH2CH(CH3)O)6-CH2CH(C2H5)C4H9
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)23-OOC(CH3)C=CH2
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)20-(CH2CH(CH3)O)5-CH2-CH=CH2
【0059】
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH2CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH(CH3)O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH(CH3)CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH2CH2CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH2CH(CH3)O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH(CH3)CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH(CH3)CH2CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH(CH2CH3)O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2C(CH3)2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH(CH2CH3)CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-C(CH3)2CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH(CH3)CH(CH3)O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-C(CH3)(CH2CH3)O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)2-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)4-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)6-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)9-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)9-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)23-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)90-CH3
【0060】
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)9-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)9-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)12-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)2-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)3-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)8-(CH2CH(CH3)O)6-CH2CH(C2H5)C4H9
【0061】
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH(CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH2CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH2CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH(CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH(CH3)CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH(CH2CH3)O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2C(CH3)2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH(CH2CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-C(CH3)2CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH(CH3)CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-C(CH3)(CH2CH3)O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)2-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)4-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)6-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)9-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)9-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)23-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)90-CH3
【0062】
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)9-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)9-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)12-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)2-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)3-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)8-(CH2CH(CH3)O)6-CH2CH(C2H5)C4H9
【0063】
単量体(b)としては、Xが水素原子である、アクリレートまたはアクリルアミドであることが好ましい。特に、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、またはヒドロキシエチルアクリルアミドであることが好ましい。
【0064】
(c)イオン供与基を有する単量体
イオン供与基を有する単量体(c)は、単量体(a)および単量体(b)以外の単量体である。単量体(c)は、オレフィン性炭素―炭素二重結合およびイオン供与基を有する単量体であることが好ましい。イオン供与基は、アニオン供与基および/またはカチオン供与基である。
【0065】
アニオン供与基を有する単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基またはリン酸基を有する単量体が挙げられる。アニオン供与基を有する単量体の具体例は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、リン酸(メタ)アクリレート、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸など、またはそれらの塩である。
【0066】
アニオン供与基の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはアンモニウム塩、例えばメチルアンモニウム塩、エタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩などが挙げられる。
【0067】
カチオン供与基を有する単量体において、カチオン供与基の例は、アミノ基、好ましくは、三級アミノ基および四級アミノ基である。三級アミノ基において、窒素原子に結合する2つの基は、同じかまたは異なって、炭素数1~5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6~20の芳香族基(アリール基)または炭素数7~25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C-CH-))であることが好ましい。四級アミノ基において、窒素原子に結合する3つの基は、同じかまたは異なって、炭素数1~5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6~20の芳香族基(アリール基)または炭素数7~25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C-CH-))であることが好ましい。三級アミノ基および四級アミノ基において、窒素原子に結合する残りの1つの基が、炭素―炭素二重結合を有していてよい。カチオン供与基は塩の形でもよい。
【0068】
塩であるカチオン供与基は、酸(有機酸または無機酸)との塩である。有機酸、例えば炭素数1~20のカルボン酸(特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸)が好ましい。ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそれらの塩が好ましい。
【0069】
カチオン供与基を有する単量体の具体例は、次のとおりである。
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(CH3)2 およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(CH2CH3)2 およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(CH3)2 およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(CH2CH3)2 およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHC(O)N(H)-CH2CH2CH2-N(CH3)2 およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(-CH3)(-CH2-C6H5) およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(-CH2CH3)(-CH2-C6H5)およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHCOO-CH2CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=CHCOO-CH2CH2-N+(-CH3)2(-CH2-C6H5)Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=CHCOO-CH2CH(OH)CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(OH)CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(OH)CH2-N+(-CH2CH3)2(-CH2-C6H5)Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3Br-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3I-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3O-SO3CH3
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)(-CH2-C6H5)2Br-
【0070】
イオン供与基を有する単量体(c)としては、メタアクリル酸、アクリル酸及びジメチルアミノエチルメタクリレートが好ましく、メタアクリル酸及びジメチルアミノエチルメタクリレートであることがより好ましい。
【0071】
(d)他の単量体
他の単量体(d)は、単量体(a)、(b)および(c)以外の単量体である。そのような他の単量体としては、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ハロゲン化ビニルスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール化(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、アルキルビニルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、アルキルビニルケトン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、短鎖アルキル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、ポリジメチルシロキサン基を有する(メタ)アクリレート、N-ビニルカルバゾールが挙げられる。
【0072】
単量体(a)から形成される繰り返し単位の量は、炭化水素基含有重合体(特にアクリル系重合体)に対して、30~95重量%、好ましくは40~88重量%、より好ましくは50~85重量%であってよい。
単量体(b)から形成される繰り返し単位の量は、炭化水素基含有重合体に対して、5~70重量%、好ましくは8~50重量%、より好ましくは10~40重量%であってよい。
単量体(c)から形成される繰り返し単位の量は、炭化水素基含有重合体に対して、0.1~30重量%、好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは1~15重量%であってよい。
単量体(d)から形成される繰り返し単位の量は、炭化水素基含有重合体に対して、0~20重量%、例えば1~15重量%、特に2~10重量%であってよい。
【0073】
炭化水素基含有重合体の重量平均分子量は、1000~10000000、好ましくは5000~8000000、より好ましくは10000~4000000であってよい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた値である。
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味する。例えば、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0074】
炭化水素基含有重合体(特にアクリル系重合体)は、耐油性の観点から、ブロック共重合体であるよりも、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0075】
炭化水素基含有重合体の重合は、特に限定されず塊状重合、溶液重合、乳化重合、放射線重合などの種々重合方法を選択できる。例えば一般的には有機溶剤を用いた溶液重合や、水または有機溶剤と水を併用する乳化重合が選定される。重合後に水で希釈して水に乳化することで処理液に調製される。
本開示においては、重合(例えば、溶液重合または乳化重合、好ましくは溶液重合)後、水を加えてから脱溶剤して、重合体を水に分散させることが好ましい。乳化剤を加える必要なく、自己分散型の製品を製造することができる。
【0076】
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコールなどのグリコール類、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類などが挙げられる。
【0077】
重合開始剤として、例えば過酸化物、アゾ化合物または過硫酸系の化合物を使用し得る。重合開始剤は、一般に、水溶性および/または油溶性である。
油溶性重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2、4-ジメチル4-メトキシバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-イソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジ-第三級-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、過ピバル酸t-ブチル等が好ましく挙げられる。
【0078】
また、水溶性重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチルアミジン2塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]硫酸塩水和物、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸バリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が好ましく挙げられる。
重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01~5重量部の範囲で用いられる。
【0079】
また、分子量調節を目的として、連鎖移動剤、例えば、メルカプト基含有化合物を使用してもよく、その具体例として2-メルカプトエタノール、チオプロピオン酸、アルキルメルカプタンなどが挙げられる。メルカプト基含有化合物は単量体100重量部に対して、10重量部以下、0.01~5重量部の範囲で用いられる。
【0080】
具体的には、炭化水素基含有重合体は、以下のようにして製造できる。
溶液重合では、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、重合開始剤を添加して、例えば40~120℃の範囲で1~10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤は、一般に、油溶性重合開始剤であってよい。
【0081】
有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコールなどのグリコール類、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルペンタン、2-エチルペンタン、イソパラフィン系炭化水素、流動パラフィン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット、ミネラルターペン、ナフサなどの炭化水素系溶媒などである。溶剤の好ましい例として、例えば、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)などが挙げられる。有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50~2000重量部、例えば、50~1000重量部の範囲で用いられる。
【0082】
乳化重合では、単量体を乳化剤などの存在下、水中に乳化させ、窒素置換後、重合開始剤を添加し、40~80℃の範囲で1~10時間、撹拌して重合させる方法が採用される。重合開始剤は、水溶性重合開始剤、例えば、2,2’-アゾビスイソブチルアミジン2塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]硫酸塩水和物、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸バリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、および
油溶性重合開始剤、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2、4-ジメチル4-メトキシバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-イソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジ-第三級-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、過ピバル酸t-ブチルが用いられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01~10重量部の範囲で用いられる。
【0083】
放置安定性の優れた重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に粒子化し、油溶性重合開始剤を用いて重合することが望ましい。また、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5~20重量部の範囲で用いられる。アニオン性および/またはノニオン性および/またはカチオン性の乳化剤を使用することが好ましい。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0084】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール又はイソプレングリコールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1~50重量部、例えば10~40重量部の範囲で用いてよい。NMP又はDPM又は3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール又はイソプレングリコール(好ましい量は、組成物に対して例えば1~20重量%、特に3~10重量%)を添加することにより、組成物(特に、エマルション)の安定性が向上する。また、低分子量の単量体としては、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられ、単量体の総量100重量部に対して、1~50重量部、例えば10~40重量部の範囲で用いてよい。
【0085】
(2)両性ポリアクリルアミド重合体
両性ポリアクリルアミド重合体は、(メタ)アクリルアミドと、カチオン性単量体と、アニオン性単量体との共重合体である。両性ポリアクリルアミド重合体は、(メタ)アクリルアミドと、カチオン性単量体と、アニオン性単量体とを重合することによって製造できる。両性ポリアクリルアミド重合体は、アクリルアミド重合体(好ましくは、アニオン性アクリルアミド重合体)を、マンニッヒ変性またはホフマン変性することによっても製造できる。
【0086】
カチオン性単量体としては、3級アミノ基、又は4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーを挙げることができる。
【0087】
3級アミノ基を有するビニルモノマーとしては、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類、3級アミノ基を有するビニルモノマーの塩酸塩、及び硫酸塩等の無機酸塩類、並びに3級アミノ基を有するビニルモノマーのギ酸塩、及び酢酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
【0088】
4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーとしては、3級アミノ基を有するビニルモノマーと4級化剤との反応によって得られるビニルモノマーが挙げられる。4級化剤としては、メチルクロライド、及びメチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、及びベンジルブロマイド等のアラルキルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エピクロロヒドリン、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、並びにグリシジルトリアルキルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
これらの3級アミノ基、又は4級アンモニウム塩類を有するビニルモノマーは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0089】
アニオン性ビニルモノマーとしては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸、不飽和テトラカルボン酸、不飽和スルホン酸、不飽和ホスホン酸およびそれらの塩類等が挙げられる。
【0090】
不飽和モノカルボン酸およびそれらの塩類としては、アクリル酸、メタクリル酸、2-(メタ)アクリルアミド-N-グリコール酸、N-アクリロイルグリシン、3-アクリルアミドプロパン酸、4-アクリルアミドブタン酸およびそれらのナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属類またはアンモニウム塩等が挙げられる。
【0091】
不飽和ジカルボン酸およびそれらの塩類の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびそれらのナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属塩類またはアンモニウム塩等が挙げられる。
【0092】
不飽和トリカルボン酸およびそれらの塩類の例としてはアコニット酸、3-ブテン-1,2,3-トリカルボン酸、4-ペンテン-1,2,4-トリカルボン酸およびそれらのナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属塩類またはアンモニウム塩等が挙げられる。
【0093】
不飽和テトラカルボン酸およびそれらの塩類の例としては、1-ペンテン-1,1,4,4-テトラカルボン酸、4-ペンテン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、3-ヘキセン-1,1,6,6-テトラカルボン酸およびそれらのナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属塩類又はアンモニウム塩等が挙げられる。
【0094】
不飽和スルホン酸の例としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびそれらのナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。
【0095】
不飽和ホスホン酸の例としては、ビニルホスホン酸、α-フェニルビニルホスホン酸およびそれらのナトリウム、カリウム塩等のアルカリ金属塩類またはアンモニウム塩等が挙げられる。
【0096】
上記のアニオン性ビニルモノマーの中でも、紙力増強向上効果及び経済性の点で不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、具体的には、アクリル酸、2-アクリルアミド-N-グリコール酸、イタコン酸およびその塩類が特に好ましい。
【0097】
両性ポリアクリルアミド重合体に対して、(メタ)アクリルアミドの量は、70~99.8モル%または80~99モル%、カチオン性単量体の量は、0.1~15mol%または0.5~10モル%、アニオン性単量体の量は、0.1~15mol%または0.5~10モル%であってよい。
【0098】
両性ポリアクリルアミド重合体において、カチオン価は、-500~2000μeq/g、または-200~1000μeq/gであることが好ましい。あるいは、カチオン価は、-500~750μeq/g、-300~500μeq/g、または-200~300μeq/gであってよい。
カチオン価は以下の方法で算出する。まず、測定対象のポリアクリルアミド系樹脂試料(通常は水溶液)を0.05g精秤し、蒸留水にて100mlとする。このうち20mlを取り出し、0.1Nの塩酸を0.5ml、およびトルイジンブルー指示薬を2~3滴加える。この液を1/400(=0.0025)Nのポリビニル硫酸カリウム溶液(以下、PVSKという。)で滴定し、液が青色から赤紫へ変色した点を終点とする。
下記式(A)において、xはPSVK滴定量(ml)、FはPSVKのファクター、yはポリアクリルアミド系樹脂試料の質量(g)、zは試料中におけるポリアクリルアミド系樹脂の固形分濃度(質量%)を表わす。
【0099】
[数1]
【0100】
(3)アニオン性アクリルアミド重合体
アニオン性ポリアクリルアミド重合体は、(メタ)アクリルアミドと、アニオン性単量体との共重合体である。アニオン性ポリアクリルアミド重合体は、(メタ)アクリルアミドと、アニオン性単量体とを重合することによって製造できる。
【0101】
アニオン性単量体は、両性ポリアクリルアミド重合体について述べたアニオン性単量体(アニオン性ビニルモノマー)と同様のものである。
【0102】
アニオン性ポリアクリルアミド重合体に対して、(メタ)アクリルアミドの量は、70~99.8モル%または80~99モル%、アニオン性単量体の量は、0.2~30mol%または1~20モル%であってよい。
【0103】
(4)他の成分
耐油剤(耐油剤組成物)は、炭化水素基含有重合体(1)、カチオン性ポリアクリルアミド重合体(2)およびアニオン性ポリアクリルアミド重合体(3)以外の他の成分(4)を含んでよい。他の成分(3)の例としては、水性媒体、乳化剤などが挙げられる。
水性媒体は、水、または水と有機溶媒(水と混和性の有機溶媒)の混合物である。水性媒体の量は、炭化水素基含有重合体(1)と水性媒体の合計量に対して、50重量%~99.99重量%であってよい。
乳化剤の量は、炭化水素基含有重合体(1)100重量部に対して、0~30重量部、例えば0.1~10重量部であってよい。
【0104】
[耐油剤(耐油剤組成物)]
耐油剤(耐油剤組成物)は、溶液、エマルションまたはエアゾールの形態であってよい。耐油剤は、液状媒体を含んでよい。液状媒体は、例えば、有機溶媒および/または水、好ましくは、水性媒体である。水性媒体は、水、または水と有機溶媒(例えば、ポリプロピレングリコールおよび/またはその誘導体)の混合物である。
ディスパージョン(エマルション)の形態である場合、炭化水素基含有重合体は、水性媒体に分散している水分散型であって、炭化水素基含有重合体(1)を自己乳化させてもよいし、中和した塩の形で水性媒体に分散させてもよいし、あるいは乳化剤を使用して乳化してもよい。
【0105】
耐油剤のイオン電荷密度は-5000μeq/g以上、-2500μeq/g以上、-1500μeq/g以上、-500μeq/g以上、0μeq/g以上、100μeq/g以上、又は200μeq/g以上であってよく、好ましくは-2500μeq/g以上であり、より好ましくは-400μeq/g以上であり、例えば0μeq/g以上である。耐油剤のイオン電荷密度は7500μeq/g以下、5000μeq/g以下、2500μeq/g以下、1000μeq/g以下、500μeq/g以下、350μeq/g以下、300μeq/g以下、又は250μeq/g以下であってよく、好ましくは5000μeq/g以下、より好ましくは800μeq/g以下、例えば300μeq/g以下である。特に耐油剤のイオン電荷密度は-2500~5000 μeq/gであることが好ましく、-400~800 μeq/g(例えば、210μeq/g、250μeq/gまたは300μeq/g)であることがさらに好ましい。耐油剤のイオン電荷密度は例えば下記方法により測定することができる。ここで、耐油剤のイオン電荷密度は、カチオン性ポリアクリルアミド重合体(2)および/またはアニオン性ポリアクリルアミド重合体(3)を添加する前の耐油剤、特に炭化水素基含有重合体(1)(炭化水素基含有重合体(1)の水分散体)のイオン電荷密度であってもよい。
<イオン電荷密度の測定>
0.1g/Lのサンプルの水溶液を1/1000規定のポリビニルスルホン酸カリウム溶液を用い粒子電荷計(BTG製 MUTEK PCD-04)にてアニオン要求量を測定し、下記式(1)よりイオン電荷密度(カチオン電荷密度)を算出する。または、ポリビニルスルホン酸カリウムの代わりにポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム溶液を用いて同様にカチオン要求量を測定し、下記式(1)よりイオン電荷密度(アニオン電荷密度)を算出する。
[数2]
イオン電荷密度(μeq/g)=A/B (1)
A:カチオン要求量またはアニオン要求量(μeq/L)
B:サンプル溶液濃度(g/L)
【0106】
耐油剤は、紙基材を処理するために使用することができる。「処理」とは、耐油剤を、紙の内部および/または外部に適用することを意味する。
耐油剤は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。耐油剤は、内添処理により、主として紙の内部に存在する。
被処理物の紙基材としては、紙、紙でできた容器、紙でできた成形体(例えばパルプモールド)などが挙げられる。
炭化水素基含有重合体は、紙基材に(紙基材の内部または表面に)良好に定着する。
炭化水素基含有重合体(1)の量が、パルプ固形分100重量部に対して、0.01~75重量部、例えば0.1~60重量部になるように、耐油剤を使用することが好ましい。
【0107】
[耐油剤キット]
本明細書において、「耐油剤キット」とは、基材(特に紙原料、例えばパルプ、パルプスラリー等)に添加される耐油剤の成分を、別体として調製し、別々に保存したものである。
【0108】
本開示における耐油剤キットは、
(1)炭化水素基含有重合体
を含んでなる液、および
(2)両性ポリアクリルアミド重合体
を含んでなる液
を有してもよい。さらに、耐油剤キットは
(3)アニオン性ポリアクリルアミド重合体
を含んでなる液を含んでもよい。
【0109】
耐油剤キットを使用する際は、基材に対して、液(1)および液(2)を、好ましくは液(1)、液(2)、および液(3)を、全て同時に、少なくとも二種については同時に、または全て別々に、好ましくはこの順で別々に、添加してよい。例えば、基材に対して、まず液(1)を添加した後、液(2)および液(3)を、同時にまたは別々に、好ましくはこの順で別々に添加する方法が挙げられる。まず液(1)を添加することが、炭化水素基を効率よく基材へ定着させることができ、本開示の効果が良好となり得る点で好ましい。
【0110】
[紙の抄造]
紙は、従来既知の抄造方法によって製造できる。抄造前のパルプ又はパルプスラリー(パルプ(スラリー))に耐油剤を添加する内添処理方法、または抄造後の紙に耐油剤を適用する外添処理方法を用いることができる。本開示における耐油剤の処理方法は、内添処理方法が好ましい。内添処理において、本開示の耐油剤を使用しても、新しい装置を必要としない。
【0111】
内添処理方法において、耐油剤をパルプスラリーに混合して抄紙して、耐油剤によって処理された紙を製造できる。耐油剤によって処理された紙は、耐油性を有する耐油紙である。耐油紙は、薄紙であっても、厚紙であっても、あるいはパルプモールドであってもよい。
このように処理された紙は、室温または高温での簡単な乾燥後に、任意に、紙の性質に依存して300℃まで、例えば200℃まで、特に80℃~180℃の温度範囲をとり得る熱処理を伴うことで、優れた耐油性および耐水性を示す。
【0112】
本開示は、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナーおよび中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナーおよび金属合紙、クラフト紙などにおいて使用することができる。また、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙および中性情報用紙においても用いることができる。
【0113】
原料として使用するパルプ(パルプ原料)は、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプ、バガスパルプ、ケナフパルプ、竹パルプ等の非木材パルプのいずれであってもよく、これらの一種または二種以上の組み合わせであってよい。また、パルプ原料と、石綿や、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維の一種または二種以上との混合物も使用することができる。
【0114】
内添処理において、パルプ濃度が0.1~5.0重量%(例えば、0.3~4.0重量%)であるパルプスラリーを抄紙することが好ましい。パルプスラリーに添加剤(例えば、サイズ剤、紙力剤、凝集剤、歩留まり剤または凝結剤など)および炭化水素基含有重合体を添加することができる。
【0115】
紙層を形成する前のパルプスラリーに、添加剤(両性ポリアクリルアミド系重合体など)および炭化水素基含有重合体を添加する方法が好ましい。直接紙製容器を成型するパルプモールドでの内添も可能である。このとき、添加物質を予め混合した混合物を添加してもよく、各添加物質を別体として調製しておき、これらを同時に添加してもよく、一方を先に添加し、その後に他方を添加してもよい。まず炭化水素基含有重合体を添加した後、両性ポリアクリルアミド系重合体を添加することが、炭化水素基を効率よくパルプへ定着させることができる点で好ましい。
【0116】
パルプは一般にアニオン性であるので、添加剤および炭化水素基含有重合体が良好に紙に定着するように、添加剤および炭化水素基含有重合体の少なくとも一方はカチオン性または両性であることが好ましい。添加剤がカチオン性または両性であり、炭化水素基含有重合体がアニオン性である組み合わせ、添加剤がアニオン性であり、炭化水素基含有重合体がカチオン性または両性である組み合わせ、添加剤および炭化水素基含有重合体がカチオン性または両性である組み合わせを使用することが好ましい。
【0117】
耐油剤に加えて、他の成分(添加剤)を使用してもよい。他の成分の例は、カチオン性凝結剤、耐水剤、紙力増強剤、凝集剤、定着剤、歩留向上剤などである。
【0118】
カチオン性凝結剤、紙力増強剤、凝集剤、定着剤、歩留向上剤は、カチオン性または両性を有する高分子または無機物を使用できる。カチオン性凝結剤、紙力増強剤、凝集剤、定着剤、歩留向上剤により、通常アニオン性であり得るパルプに対して、炭化水素基含有重合体(1)からなる耐油剤を効果的に定着させることができ、最終的に得られるパルプモールド容器のガスバリア性および/または耐水耐油性を高めることができる。
【0119】
カチオン性凝結剤、紙力増強剤、凝集剤、定着剤、歩留向上剤としては、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、カチオン性ポリアクリルアミド(アクリルアミド-アリルアミン共重合体、アクリルアミド-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリルアミド-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリルアミド-4級化ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリルアミド-4級化ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート共重合体等)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、N-ビニルホルムアミド-ビニルアミン共重合体、メラミン樹脂、ポリアミドエポキシ系樹脂、硫酸バンド、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、塩化アルミニウム、塩化第二鉄等が挙げられる。特に、ポリアミドポリアミン-エピクロルヒドリン(PAE)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(poly-DADMAC)、ポリアクリルアミド(PAM)等を使用できる。
【0120】
耐油剤に加えて、耐水剤を使用してよい。本開示において「耐水剤」は、パルプスラリーに添加することにより、添加しない場合に比べて、パルプモールド製品の耐水性を向上させ得る成分(但し、上記した耐油剤を除く)を言う。耐水剤により、最終的に得られるパルプモールド容器の耐水性を高めることができる。なお、上記したカチオン性凝結剤は、一般的に、それ単独では耐水性を向上させ得ず、耐水剤とは区別して理解され得る。
【0121】
耐水剤としては、通常の抄紙においてサイズ剤等として用いられるものを使用できる。耐水剤の例は、カチオン性サイズ剤、アニオン性サイズ剤、ロジン系サイズ剤(例えば、酸性ロジン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤)であり、カチオン性サイズ剤が好ましい。なかでも、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体などのスチレン含有ポリマー、アルケニルコハク酸無水物、アルキルケテンダイマーが好ましい。
【0122】
またその他必要に応じて、紙用処理剤に製紙用薬品として通常使用される、染料、蛍光染料、スライムコントロール剤、防滑剤、消泡剤、ピッチコントロール剤等を使用してもよい。
【0123】
紙は、パルプモールド製品であることが好ましい。パルプモールド製品の製造は、パルプが水性媒体中に分散したスラリーに、耐油剤を添加して調合パルプスラリーを調製し、パルプモールド中間体を抄造し、脱水し、その後、少なくとも乾燥させてパルプモールド製品を得ることを含む製造方法によって製造できる。
【0124】
パルプ(スラリー)に対して、炭化水素基含有重合体及び両性ポリアクリルアミド重合体を、好ましくは炭化水素基含有重合体、両性ポリアクリルアミド重合体、およびアニオン性ポリアクリルアミド重合体を、全て同時に、二種については同時に、または全て別々に、好ましくはこの順で別々に添加してよい。例えば、パルプ(スラリー)に対して、まず炭化水素基含有重合体を添加した後、両性ポリアクリルアミド系重合体及びアニオン性ポリアクリルアミド重合体を同時にまたは別々に、好ましくはこの順で別々に添加する方法が挙げられる。まず炭化水素基含有重合体を添加することが、炭化水素基を効率よくパルプへ定着させることができ、本開示の効果が良好となり得る点で好ましい。
調合パルプスラリーにおける各成分の含有割合(全体基準)は、抄造および脱水に適した高い濾水度となり、かつ、パルプモールド製品に所望される物性に応じて適宜選択され得るが、例えば下記の通りであり得る:
・水性媒体 89.5~99.89重量%、例えば94.5~99.69重量%
・パルプ 0.1~5重量%、例えば0.3~2.5重量%
・炭化水素基含有重合体(耐油剤) 0.00001~1重量%、例えば0.0001~0.5重量%
・両性ポリアクリルアミド重合体 0.00001~1重量%、例えば0.0001~0.5重量%、
・アニオン性アクリルアミド重合体 0.00001~1重量%、例えば0.0001~0.5重量%、
・カチオン性凝結剤(固形分) 0~1重量%、例えば0.00005~0.5重量%、
・耐水剤(固形分) 0~1重量%、例えば0.00005~0.5重量%。
なお、上記において、各成分がディスパージョン等の形態である場合には、調合パルプスラリーにおける各成分の固形分の含有割合(全体基準)を示すものとする。
【0125】
別の観点から、調合パルプスラリーにおける水性媒体に対するパルプおよび耐油剤の各含有割合は、抄造および脱水に適した高い濾水度となるように適宜選択され得るが、例えば下記の通りであり得る:
・パルプ 0.1~5.58重量%、特に0.3~2.64重量%
・耐油剤(固形分) 0.001~2.79重量%、特に0.005~1.05重量%
【0126】
調合パルプスラリーの電気伝導度は、0.1~2000μS/cm、0.1~1000μS/cm、1~800μS/cmまたは10~500μS/cmが良い。この範囲にあると、高い耐油性能が得られる。
調合パルプスラリーのpHは、4~9が良く、5~8がより良く、6~7がさらに良い。この範囲にあると、高い耐油性能が得られる。
調合パルプスラリーに使用される水の硬度は、5000ppm以下が良く、3000ppm以下がより良く、1000ppm以下が特に良く、500ppm以下が特別によい。この範囲にあると、高い耐油性能が得られる。
【0127】
次に、調合パルプスラリーからパルプモールド中間体を抄造し、脱水し、その後、少なくとも乾燥させてパルプモールド製品を得る。
【0128】
抄造、脱水、乾燥は、パルプモールドとして従来既知の方法に従って実施できる。
【0129】
例えば、調合パルプスラリーを、多数の孔が設けられた所望の形状の型(必要に応じてフィルターが配置され得る)を用いて(例えば吸引および/または減圧により)漉いて、脱水することにより、調合パルプスラリーから水性媒体が少なくとも部分的に除去され、かつ、型に応じた形状を有するパルプモールド中間体を得ることができる。
【0130】
乾燥は、残留する水性媒体を効果的に除去し得る温度、例えば90~250℃、特に100~200℃にて実施し得る。乾燥時間は特に制限されず、パルプモールド中間体に残存する水性媒体が実質的に除去されるように選択され得る。乾燥雰囲気は特に限定されず、簡便には、周囲雰囲気(常圧下での空気)としてよい。
【0131】
乾燥の際および/またはその後、必要に応じて、パルプモールドにおいて従来既知の他の工程、例えばプレス成形(ヒートプレスを含む)等を実施してもよい。
【0132】
以上により、パルプモールド製品を製造することができる。かかるパルプモールド製品は、パルプおよび耐油剤を含み、高いガスバリア性と、優れた耐水性および耐油性とを実現することができる。
【0133】
パルプモールド製品に含まれるパルプ、耐油剤などの存在割合は、原料として使用したこれら成分の固形分の割合に実質的に等しいと考えて差し支えない(通常、乾燥およびプレス成形により水性媒体および存在する場合には他の液状媒体は除去され得るが、固形分は除去または分解されずに残存し得る)。
【0134】
パルプモールド製品において、パルプ(固形分)に対する各成分(パルプモールド製品に残存し得る成分)の含有割合は、パルプモールド製品に所望される物性に応じて適宜選択され得るが、例えば下記の通りであり得る。
・炭化水素基含有重合体 0.01~10重量%または0.01~5重量%、例えば0.05~2重量%
・両性ポリアクリルアミド重合体 0.01~10重量%または0.01~5重量%、例えば0.05~2重量%
・アニオン性アクリルアミド重合体 0~5重量%または0.01~2重量%、例えば0.05~1重量%
【0135】
パルプモールド製品は、耐油剤が内添されている(パルプスラリーに添加してパルプモールド法により製造されている)。よって、パルプモールド製品を使用後、製品全体を粉砕して元の原料に戻すことができ、リサイクル使用に適する。更に、かかるパルプモールド製品は、パルプ本来の生分解性を利用することができるので、環境への負荷を極めて小さくすること、好ましくは実質的になくすことができる。また、かかるパルプモールド製品では、製品の表面にパルプの風合いを保つことができ、表面をプラスチックフィルムでラミネート加工した場合等のように光沢が生じて外観を損なうことがない。
【0136】
かかるパルプモールド製品は、食品用の容器(トレイ等も含む)、例えば冷凍食品やチルド食品の保存用容器として好適に利用され得る。
【0137】
本開示のパルプモールド製品は、必要により、耐水性および耐油性に優れているため、食品に由来する水分や油分がパルプモールド製品(容器)に含浸せず、よって、水分や油分の含浸により容器の強度が低下したり、容器の底面に対向するテーブル面等が容器を透過した水分や油分で汚れたりすることを防止できる。
【0138】
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例
【0139】
次に、実施例、比較例および試験例を挙げて本開示を具体的に説明する。ただし、これらの説明が本開示を限定するものでない。
以下において、部、%または比は、特記しない限り、重量部、重量%または重量比を表す。
【0140】
以下において使用した試験方法は次のとおりである。
【0141】
[高温耐油性]
容器状に成形したパルプモールド製品に65℃または80℃の評価液(コーン油)を100ml注ぎ入れ、30分間静置した後に評価液を廃棄して、パルプモールド製品(容器)への評価液の染み具合を下記の基準に従い目視で評価した。
4:パルプモールド容器底の内側に油染みがほぼ見られない
3:パルプモールド容器底の外側に油染みが見られない
2:パルプモールド容器底の外側の面積の5%未満に油染みが見られる
1:パルプモールド容器底の外側の面積の5%以上50%未満に油染みが見られる
0:パルプモールド容器底の外側の面積の50%以上に油染みが見られる
【0142】
[成型性]
パルプモールド製品の成型時の脱水不良、接着不良の発生の有無を観測した。
○:脱水不良、成型不良あり
×:脱水不良、成型不良あり
【0143】
[炭化水素基含有重合体1の合成]
1Lのポリ容器にステアリン酸アミドエチルアクリレート90部、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)3部、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)7部、純水370部、酢酸1.1部、塩化アルキルビス(2-ヒドロキシアルキル)メチルアンモニウム10部を仕込み、80℃に加熱し、ホモミキサーで1分、2000rpmで攪拌した後、超音波で15分間、乳化分散させた。乳化分散物を窒素導入管、温度計、攪拌棒、還流管を備えた1000ccの四つ口フラスコに移し、窒素置換後、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ニ塩酸塩1部を添加し、60℃で4時間、反応させて重合体の水性分散液を得た。その後、純水を追加し、固形分濃度が25重量%の水分散体を調製した。水分散体のイオン電荷密度は、250 μeq/gであった。
【0144】
[炭化水素基含有重合体2の合成]
1Lのポリ容器にステアリン酸アミドエチルアクリレート90部、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)3部、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)7部、純水290部、酢酸0.8部、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド7部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル10部を仕込み、80℃に加熱し、ホモミキサーで1分、2000rpmで攪拌した後、超音波で15分間、乳化分散させた。乳化分散物を窒素導入管、温度計、攪拌棒、還流管を備えた1000ccの四つ口フラスコに移し、窒素置換後、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ニ塩酸塩1部を添加し、60℃で4時間、反応させて重合体の水性分散液を得た。その後、純水を追加し、固形分濃度が25重量%の水分散体を調製した。水分散体のイオン電荷密度は220 μeq/gであった。
【0145】
[実施例1]
ろ水度が550cc(カナディアンフリーネス)に、叩解した70部の広葉樹漂白クラフトパルプと30部の針葉樹漂白クラフトパルプとの混合物の0.5重量%の水分散液2000gをかき混ぜながら添加し、次いでアルキルケテンダイマー(AKD)(Solenis製Hercon(登録商標)79)の5%固形分水溶液を0.3g添加して1分間撹拌し続け、次いで合成した炭化水素基含有重合体1の水分散体を水で固形分10%に希釈したもの1.5gを添加して撹拌を1分間攪拌し続け、次いで両性ポリアクリルアミド1(製品名:T-FC109、星光PMC製)を含有する組成物を水で固形分10%に希釈したもの1.0g添加して1分間攪拌し続け、次いでアニオン性ポリアクリルアミド系を含有する組成物を水で固形分1%に希釈したもの0.5g添加して攪拌を1分間続けた。
上記パルプスラリーを、金属製の槽の中に入れた。その槽の下部には、多数の吸引孔を設けた金属製のパルプモールド成形型を、その上に網状体を配置した状態で存在させた。パルプモールド成形型の網状体が配置された側と反対側から、真空ポンプにより、パルプ含有水性組成物をパルプモールド成形型および網状体を介して吸引・脱水して、パルプ含有水性組成物に含まれる固形分(パルプ等)を網状体の上に堆積させて、パルプモールド中間体を得た。次に、得られたパルプモールド中間体を、60~200℃に加温された金属製のオスメス成形型で上下から加圧して乾燥させた。これにより、容器の形状に成形されたパルプモールド製品を製造した。得られたパルプモールド製品におけるパルプに対する各成分の含有割合および高温耐油性、成型性を評価した結果を表1に示す。
【0146】
[実施例2]
合成した炭化水素基含有重合体1の水分散体を水で固形分10%に希釈したもの2.0gを添加し、アニオン性ポリアクリルアミド(製品名:C-10、ハリマ化成製)を含有する組成物を添加しないことの他は、実施例1と同様に実験を行った。得られたパルプモールド製品におけるパルプに対する各成分の含有割合および高温耐油性、成型性を評価した結果を表1に示す。
【0147】
[実施例3]
合成した炭化水素基含有重合体1の水分散体を水で固形分10%に希釈したもの1.5gを添加し、両性ポリアクリルアミド1を含有する組成物を水で固形分10%に希釈したもの0.5g添加し、両性ポリアクリルアミド2(製品名:ハーマイドKS38、ハリマ化成製)を含有する組成物を水で固形分10%に希釈したもの1.5g添加することの他は、実施例2と同様に実験を行った。得られたパルプモールド製品におけるパルプに対する各成分の含有割合および高温耐油性、成型性を評価した結果を表1に示す。
【0148】
[実施例4]
炭化水素基含有重合体2の水分散体を水で固形分10%に希釈したもの1.5gを添加することの他は、実施例3と同様に実験を行った。得られたパルプモールド製品におけるパルプに対する各成分の含有割合および高温耐油性、成型性を評価した結果を表1に示す。
【0149】
[比較例1]
カチオン性ポリアクリルアミド(製品名:ポリストロン705、荒川化学工業製)を含有する組成物を水で固形分10%に希釈したもの1.0g添加し、両性ポリアクリルアミド1を含有する組成物を添加しないことの他は、実施例2と同様に実験を行った。得られたパルプモールド製品におけるパルプに対する各成分の含有割合および高温耐油性、成型性を評価した結果を表1に示す。
【0150】
[比較例2]
アニオン性ポリアクリルアミドを含有する組成物を水で固形分10%に希釈したもの1.0g添加し、両性ポリアクリルアミド1を含有する組成物を添加しないことの他は、実施例2と同様に実験を行った。得られたパルプモールド製品におけるパルプに対する各成分の含有割合および高温耐油性、成型性を評価した結果を表1に示す。
【0151】
[比較例3]
カチオン性澱粉(製品名:SBGUM―POSIT300、SANGUAN WONGSE IND.CO.,)を含有する組成物を水で固形分10%に希釈したもの5.0g添加し、両性ポリアクリルアミド1を含有する組成物を添加しないことの他は、実施例2と同様に実験を行った。得られたパルプモールド製品におけるパルプに対する各成分の含有割合および高温耐油性、成型性を評価した結果を表1に示す。
【0152】
[比較例4]
合成した水分散体を水で固形分10%に希釈したもの1.5gを添加することの他は、比較例3と同様に実験を行った。得られたパルプモールド製品におけるパルプに対する各成分の含有割合および高温耐油性、成型性を評価した結果を表1に示す。
【0153】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0154】
本開示の耐油剤は、種々の紙、特に、食品容器および食品包装材に用いられる紙に適用できる。耐油剤は、外添または内添、特に内添により、紙に組み込まれる。