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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/16 20060101AFI20231109BHJP
   H01F 7/122 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H01F7/16 B
H01F7/16 H
H01F7/16 M
H01F7/122 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022505775
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020047879
(87)【国際公開番号】W WO2021181816
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2020044337
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】松井 健志
(72)【発明者】
【氏名】中川 雄介
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-199404(JP,A)
【文献】実開昭52-036253(JP,U)
【文献】特開平07-335434(JP,A)
【文献】特開平04-170009(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0074418(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/08-7/17
F16K 31/06
H02K 33/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに対して対向して配置された2つの電磁部を備え、
それぞれの電磁部は、コイルと、可動鉄心と、前記可動鉄心と前記シャフトとの間に組み込まれたロック機構とを備え、
前記ロック機構は、
前記シャフトの上を転動して楔となる転動体と、
前記可動鉄心に固定され前記転動体が当接する二つの内向する傾斜面を備える係合部材とを有し、
前記二つの内向する傾斜面のうち、前記可動鉄心の初期位置側を元側傾斜面、前記可動鉄心が励磁されて移動する側を先側傾斜面と称するとき、
当該アクチュエータはさらに、
前記可動鉄心内に配置され前記転動体を前記元側傾斜面に付勢する内部弾性体と、
前記可動鉄心の外に配置され前記コイルが非励磁のときに前記転動体を前記先側傾斜面に付勢する外部弾性体とを備え、
前記内部弾性体の付勢力より前記外部弾性体の付勢力の方が大きく設定されていて、
前記コイルが励磁されて前記可動鉄心が移動する方向には前記シャフトと係合し、
前記コイルが非励磁であって前記可動鉄心が戻る方向には前記シャフトと係合せず、
前記コイルが非励磁であって前記可動鉄心が初期位置にあるとき他方の電磁部の可動鉄心が戻る方向には前記シャフトと係合することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記コイルと可動鉄心の間に配置された固定鉄心と、
前記コイルが非励磁のときに前記可動鉄心が当接するストッパと、
前記ストッパの前記可動鉄心とは反対側に配置された永久磁石とを備え、
前記ストッパは前記永久磁石および前記可動鉄心以外の部材との間に磁気ギャップを有していて、
前記コイルが非励磁でかつ前記可動鉄心と前記ストッパが密着した状態では前記永久磁石から前記可動鉄心を通る第1の磁路が形成され、
前記コイルが励磁されて該コイルから前記可動鉄心を通る第2の磁路が形成されたときには、前記第1の磁路は、前記永久磁石から前記磁気ギャップを通り前記可動鉄心を通らない第3の磁路に切り替わることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータに関し、特に、双方向に能動的にシャフトを移動させることが可能なアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
コイルと可動鉄心を用いた一般的なアクチュエータは、可動鉄心がコイルで吸着できる距離になければならないので、シャフトのストロークを大きく取ることが難しい。
【0003】
これに対し、可動鉄心の動きに合わせてシャフトとの係合と解除を繰り返すことにより、シャフトを少しずつ繰り出して大きな移動距離を得る、いわゆるステップ送りの構成が提案されている。特許文献1には、可動鉄心でシャフトを送るときにロックする第1ロック機構と、可動鉄心が戻るときにシャフトが戻らないようにロックする第2ロック機構と、第1及び第2ロック機構のロックを解除する解除機構を備えたアクチュエータが記載されている。
【0004】
特許文献2には、第1および第2の係合部材(順方向傾斜面と逆方向傾斜面を備えた部材)をそれらが相互に接近および離間する方向に往復運動させる往復駆動源と、係合部材とシャフト間に組み込まれ楔部材(ローラ)の係合または解除を制御する第1および第2楔係合機構とを備える構成が開示されている。係合部材を相互に離接させる構成として、磁歪素子とコイルが使用されている。楔係合機構は、アクチュエータの両端にコイル部組立体を配置して、ローラが傾斜面に当たるようにしたり当たらないようにしたりして係合と解除を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許6610843号公報
【文献】特許4294701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の構成では、シャフトを送るときには徐々に送られるが、シャフトを戻すときには第1及び第2ロック機構を一度に解除する。この構成は、シャフトを瞬時に初期位置に戻せるという点においては優れているが、衝撃音が発生しやすい。仮に衝撃吸収材やダンパー機構などを設けるとアクチュエータの大型化やコストの増大を招くという問題がある。またコイルスプリングを用いてシャフトを戻すために、シャフトのストロークを長くしようとすると装置が大型化するという問題がある。
【0007】
特許文献2の構成ではウォームギアなどのモータ駆動と比較して慣性抵抗が小さくなるとしているが、磁歪素子の歪み量は極めて小さいため、アクチュエータの移動速度が遅いという問題がある。また第1および第2楔係合機構としてアクチュエータの両端にコイル部組立体が必要になるため、装置が大型化しやすく、コストも増大するという問題がある。
【0008】
本発明は、装置を大型化することなく、またコストを増大させることなく、双方向に能動的にシャフトを移動させることが可能なアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるアクチュエータの代表的な構成は、シャフトに対して対向して配置された2つの電磁部を備え、それぞれの電磁部は、コイルと、可動鉄心と、可動鉄心とシャフトとの間に組み込まれたロック機構とを備え、ロック機構は、コイルが励磁されて可動鉄心が移動する方向にはシャフトと係合し、コイルが非励磁であって可動鉄心が戻る方向にはシャフトと係合せず、コイルが非励磁であって可動鉄心が初期位置にあるとき他方の電磁部の可動鉄心が戻る方向にはシャフトと係合することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、対向配置された2つの電磁部のうち、一方を励磁し、他方を励磁しないように駆動すれば、励磁された方はシャフトを送り出し、励磁されていない方はシャフトの戻りを規制する。したがって双方向に能動的にシャフトを移動させることが可能となる。
【0011】
ロック機構は、シャフトの上を転動して楔となる転動体と、可動鉄心に固定され転動体が当接する二つの内向する傾斜面を備える係合部材とを有し、二つの内向する傾斜面のうち、可動鉄心の初期位置側を元側傾斜面、可動鉄心が励磁されて移動する側を先側傾斜面と称するとき、当該アクチュエータはさらに、可動鉄心内に配置され転動体を元側傾斜面に付勢する内部弾性体と、可動鉄心の外に配置されコイルが非励磁のときに転動体を先側傾斜面に付勢する外部弾性体とを備え、内部弾性体の付勢力より外部弾性体の付勢力の方が大きいことが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、可動鉄心が非励磁のときに初期位置にあるときは転動体を先側傾斜面に付勢するため、シャフトが他方の電磁部に向かって移動する方向には係合するワンウェイクラッチとして確実に機能する。そしてコイルが励磁されて可動鉄心が若干移動し、外部弾性体の付勢力が弱まると、可動鉄心とシャフトを係合してシャフトを送り出すことができる。すなわち、可動鉄心の位置によってロック機構の係合方向を切り替えることが可能となる。
【0013】
コイルと可動鉄心の間に配置された固定鉄心と、コイルが非励磁のときに可動鉄心が当接するストッパと、ストッパの可動鉄心とは反対側に配置された永久磁石とを備え、ストッパは永久磁石および可動鉄心以外の部材との間に磁気ギャップを有していて、コイルが非励磁でかつ可動鉄心とストッパが密着した状態では永久磁石から可動鉄心を通る第1の磁路が形成され、コイルが励磁されて該コイルから可動鉄心を通る第2の磁路が形成されたときには、第1の磁路は、永久磁石から磁気ギャップを通り可動鉄心を通らない第3の磁路に切り替わることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、永久磁石によって初期位置にある可動鉄心を吸着する。したがってシャフトに外力が加わった場合に、リターンスプリングの付勢力に加えて、永久磁石の吸着力が得られるため、外力による可動鉄心の移動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置を大型化することなく、またコストを増大させることなく、双方向に能動的にシャフトを移動させることが可能なアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態にかかるアクチュエータの全体構成図である。
図2】ロック機構について説明する図である。
図3】ロック機構の動作を説明する図である。
図4】ロック機構の動作を説明する図である。
図5】シャフトに大きな外力が働いた場合について説明する図である。
図6】磁路切替の動作を説明する図である。
図7】他の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は本実施形態にかかるアクチュエータの全体構成図であって、2つの電磁部が両方非励磁の状態を示している。本実施形態にかかるアクチュエータ100には左右の区別はなく、以下に「左右」の言葉を用いて説明するときは単に図面上の左右である。
【0019】
アクチュエータ100は、ハウジング102の中央にヨーク104が配置されていて、ヨーク104の左右に2つの電磁部(第1電磁部106a、第2電磁部106b)が配置されている。中央のヨーク104は電磁部106a、106bで共有している。電磁部106a、106bは対向して配置されていて、後述する可動鉄心210やロック機構300a、300bの配置や動作方向も逆向きになっている。
【0020】
電磁部106a、106bは同じ構造をしているため、代表して第1電磁部106aの構造について説明する。左右で呼び分ける必要がある場合には第1電磁部106aの部材については符号にaの枝番を付し、第2電磁部106bの部材については符号にbの枝番を付す。
【0021】
第1電磁部106aは、シャフト10を巻回するように配置されたコイル200と、可動鉄心210と、コイル200と可動鉄心210の間に配置された固定鉄心204と、を備える。固定鉄心204および可動鉄心210は共に円筒状の磁性体であって、コイル200の径方向内側に配置される。
【0022】
中央のヨーク104の内部には、可動鉄心210を初期位置へと付勢するリターンスプリング212が配置されている。コイル200が励磁されると可動鉄心210に磁束が通るため、可動鉄心210がリターンスプリング212の付勢力に抗して移動する。コイル200が非励磁となると、可動鉄心210はリターンスプリング212に押されて初期位置へと戻り、ストッパ214に当接する。
【0023】
図2はロック機構300aについて説明する図である。可動鉄心210とシャフト10との間には、ロック機構300aが備えられている。ロック機構300aは、シャフト10の上を転動して楔となる2以上の転動体302(ローラ)と、転動体302の姿勢を保持する保持器304と、可動鉄心210に固定された係合部材310とを備える。
【0024】
係合部材310は可動鉄心210の内側にはめ込まれたリング状の部材であり、内面に転動体302を収容するくぼみが形成されている。くぼみは二つの内向する傾斜面を備えている。二つの内向する傾斜面のうち、可動鉄心210の初期位置側(移動元側)を元側傾斜面314、可動鉄心210が励磁されて移動する側(移動先側)を先側傾斜面312と称する。転動体302が先側傾斜面312または元側傾斜面314に当接してシャフト10との間に挟まることにより、楔として機能してこれらを係合させる。
【0025】
可動鉄心210内には、保持器304を介して転動体302を元側傾斜面314に付勢する内部弾性体216が備えられている。内部弾性体216は、例えばコイルスプリングで構成することができる。また可動鉄心210の外には、コイル200が非励磁であって初期位置にあるときに転動体302を先側傾斜面312に付勢する外部弾性体218が備えられている。外部弾性体218は必要なストロークが短いため、例えば皿ばねで構成することができる。そして内部弾性体216の付勢力より外部弾性体218の付勢力の方が大きく設定されている。
【0026】
上記構成により、コイル200が非励磁のとき(可動鉄心210がストッパ214に当接しているとき)には、シャフト10が第2電磁部106bに向かって移動する方向に係合する(規制する)ワンウェイクラッチとして機能する。すなわちロック機構300a、300bは、他方の電磁部の可動鉄心210が戻る方向にはシャフト10と係合する。特に外部弾性体218で転動体302を先側傾斜面312に付勢していることから、確実に係合を機能させることができる。図中の白矢印はロック機構300aに対してシャフト10が相対的に移動可能であることを示していて、白矢印にバツがついている方向は相対的に移動不可能であることを示している。
【0027】
すると図1に示すように、第1電磁部106aと第2電磁部106bは対向して配置されていることから、ロック機構300a、300bは非励磁のときにはいずれも内側方向(相手方の電磁部に向かう方向)へのシャフト10の移動を規制する。したがって電力や制御を必要とすることなく、何もしていないときはシャフト10の移動がロックされる。
【0028】
図3および図4はロック機構の動作を説明する図である。図3(a)は可動鉄心210が初期位置にあり、上記したようにロック機構300aはシャフト10が移動する方向には係合する。逆に、シャフト10が第2電磁部106bから第1電磁部106aに向かって移動してくる方向には係合しない。すなわちシャフト10を送る方向(図示右方向)には移動させられない状態である。
【0029】
しかしながら図3(b)に示すように、コイル200が励磁されて可動鉄心210が若干移動すると、外部弾性体218のストロークが届かなくなるためその付勢力が弱まり、内部弾性体216の付勢力の方が大きくなる。すると内部弾性体216が保持器304を介して転動体302を元側傾斜面314に付勢する。したがってロック機構300aは、可動鉄心210が移動する方向にシャフト10と係合する。
【0030】
すなわち図3(c)に示すように、可動鉄心210の位置によってロック機構300aの係合方向を切り替えることが可能となる。切り替わる位置は、内部弾性体216と外部弾性体218の付勢力が拮抗する位置である。これにより、特許文献2(従来技術)のような係合と解除を制御するコイル部組立体などを用いることなく、簡潔な構成とすることができ、アクチュエータの小型化と低廉化を図ることができる。
【0031】
そして図4(a)に示すように、コイル200を励磁させて可動鉄心210を移動させると、第1電磁部106aのロック機構300aは係合し、第2電磁部106bのロック機構300bは係合しない。これにより、可動鉄心210が第2電磁部106bに向かって移動するにしたがってシャフト10を送ることができる。
【0032】
図4(b)に示すようにコイル200を非励磁とすると、第1電磁部106aの可動鉄心210の戻り方向に対して、ロック機構300aは係合しない。第2電磁部106bのロック機構300bは、コイル200が非励磁であって可動鉄心210が初期位置にあるため、第1電磁部106aの可動鉄心210が戻る方向にシャフト10と係合する。これにより、シャフト10を送った位置に残すことができる。したがって第1電磁部106aのコイル200の励磁と非励磁を繰り返すことにより、シャフト10を図示右方向に徐々に送る、ステップ送りをすることが可能となる。
【0033】
そして本発明の重要なことは、対向配置された2つの電磁部106a、106bのうち、励磁/非励磁を繰り返した方はシャフトを送り出し、非励磁を維持した方はシャフトの戻りを規制することである。これにより、双方向に能動的にシャフト10を移動させることが可能となる。したがって特許文献1(従来技術)のようにシャフト10が初期位置まで一度に戻ることがないため、衝撃緩和の構成が必要なく、シャフトのストロークに応じてサイズアップすることもなく、アクチュエータの小型化と低廉化を図ることができる。
【0034】
図5はシャフト10に大きな外力Fが働いた場合について説明する図である。上記したように、ロック機構300a、300bは非励磁のときにはいずれも内側方向へのシャフト10の移動を規制する。したがってシャフト10の移動がロックされるのであるが、シャフト10に強い外力Fが働いたとき、可動鉄心210が動いてしまう可能性がある。
【0035】
例えば図5に示すようにシャフト10の図示左側から外力Fが働いたとき、第1電磁部106aのロック機構300aは係合しているが、第2電磁部106bのロック機構300bは係合しない。このときリターンスプリング212の付勢力が外力Fに抗するが、リターンスプリング212はコイル200の吸引力より強くすることができないため、リターンスプリング212だけでシャフト10の保持力(固定力)を高めるのは難しい。
【0036】
そこで本実施形態では永久磁石と磁路切替構造を用いて、可動鉄心210の移動を抑え、シャフト10の保持力を高める構成を取っている。
【0037】
図5に示すように、アクチュエータ100はさらに、ストッパ214の可動鉄心210とは反対側に永久磁石220を配置し、固定鉄心204に接触し永久磁石220の外側を覆うカバー230を備えている。ストッパ214とカバー230との間には狭い磁気ギャップGが形成されている。すなわち、ストッパ214は永久磁石220および可動鉄心210以外の部材との間に磁気ギャップGを有している。
【0038】
図6は磁路切替の動作を説明する図である。図6(a)に示すように、コイル200が非励磁でかつ可動鉄心210とストッパ214が密着した状態では、永久磁石220からストッパ214、可動鉄心210、固定鉄心204およびカバー230を通る第1の磁路R1が形成される。
【0039】
一方、図6(b)に示すように、コイル200が励磁されて該コイル200からヨーク104、可動鉄心210、および固定鉄心204を通る第2の磁路R2が形成されると、第2の磁路R2の経路は磁気飽和する。特に第1の磁路R1と第2の磁路R2の共通する経路(破線の楕円で囲った位置)が飽和することにより、永久磁石220から出た磁束はこの経路を通りにくくなる。このため永久磁石220から出た磁束の経路は、永久磁石220からストッパ214、磁気ギャップG、およびカバー230を通る第3の磁路R3に切り替わる。第3の磁路R3は可動鉄心210を通らないため、コイル200による可動鉄心210の吸引力に影響を与えない。
【0040】
上記構成によれば、第1の磁路R1が可動鉄心210を通るため、永久磁石220によって初期位置にある可動鉄心210を吸着する。したがってコイル200が非励磁のときにシャフト10に外力Fが加わった場合に、リターンスプリング212の付勢力に加えて、永久磁石220の吸着力が得られるため、外力Fによる可動鉄心210の移動を抑制することができ、停止時のシャフト10の保持力を高めることができる。
【0041】
図7は他の実施形態を説明する図であって、全体構成図および部分拡大図である。図7に示すアクチュエータ100Aは、図1に示したアクチュエータ100と比較すると、可動鉄心210の動作方向が逆になっている。
【0042】
図7に示すアクチュエータ100Aは、左右に2つの電磁部(第1電磁部108a、第2電磁部108b)が配置されている。電磁部108a、108bは対向して配置されていて、可動鉄心210やロック機構300a、300bの配置や動作方向も逆向きになっている。
【0043】
シャフト10の中途部には凹部12が形成されていて、部分的に細くなっている。一方、ハウジング330の中央部に取り付けられたヨーク332は凹部12に対応した狭い幅になっている。これによりシャフト10のストロークを規制(移動範囲を規制)することができ、シャフト10の脱落を防止することができる。また、シャフト10を左右一方に十分に送ることによって、制御で位置の初期化を行うことができる。
【0044】
また、図1の構成では、組付け上の観点から固定鉄心204はハウジング102と別体であった。しかし図7の構成のように電磁部が反転した構造にする事で、固定鉄心320とハウジング330を一体化することができ、部品点数を減らすことができる。
【0045】
電磁部108a、108bは同じ構造をしているため、代表して第1電磁部108aを部分的に拡大している。
【0046】
部分拡大図を参照して、コイル200を励磁すると可動鉄心210が引き寄せられて、図示左側(装置外側)に向かって移動する。するとロック機構300aにおいて転動体302が元側傾斜面314に当接してシャフト10との間に挟まることにより、楔として機能してこれらを係合させる。そしてシャフト10が図示左方向に送られる。このとき第2電磁部108bにおいては転動体302の保持器304が外部弾性体218によって付勢されていることから、転動体302が先側傾斜面312に付勢されているため、シャフト10が図示左方向に送られることを妨げない。
【0047】
コイル200が非励磁になると可動鉄心210はリターンスプリング212によって初期位置に戻る。このとき内部弾性体216が保持器を図示右方向に付勢するため、ロック機構300aは機能せず、シャフト10と可動鉄心210は相対移動可能となる。一方、第2電磁部108bにおいては転動体302が先側傾斜面312に付勢されているため、ロック機構300bが機能して、シャフト10が図示右方向に戻ることを防止する。したがって第1電磁部108aのコイル200の励磁と非励磁を繰り返すことにより、シャフト10を図示左方向に徐々に送る、ステップ送りをすることが可能となる。同様にして、第2電磁部108bでは図示右方向にシャフト10をステップ送りすることができる。
【0048】
すなわち、図1に示したように2つの電磁部を内向きに対向配置しても、図7に示したように外向きに対向配置しても、同様に、双方向に能動的にシャフト10を移動させることが可能である。
【0049】
また図7の構成でも磁路切替の機能を有している。コイル200が非励磁でかつ可動鉄心210とストッパ214が密着した状態では、永久磁石220からストッパ214、可動鉄心210、固定鉄心320、ヨーク332を通る第1の磁路R1が形成される。
【0050】
一方、コイル200が励磁されて該コイル200からカバー230、可動鉄心210、固定鉄心320を通る第2の磁路R2が形成されると、第2の磁路R2の経路は磁気飽和する。このため永久磁石220から出た磁束の経路は、永久磁石220からストッパ214、磁気ギャップG、および固定鉄心320を通る第3の磁路R3に切り替わる。第3の磁路R3は可動鉄心210を通らないため、コイル200による可動鉄心210の吸引力に影響を与えない。
【0051】
第1の磁路R1が可動鉄心210を通るため、永久磁石220によって初期位置にある可動鉄心210を吸着する。したがってコイル200が非励磁のときにシャフト10に外力Fが加わった場合に、リターンスプリング212の付勢力に加えて、永久磁石220の吸着力が得られるため、外力Fによる可動鉄心210の移動を抑制することができ、停止時のシャフト10の保持力を高めることができる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、双方向に能動的にシャフトを移動させることが可能なアクチュエータとして利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
R1…第1の磁路、R2…第2の磁路、R3…第3の磁路、10…シャフト、12…凹部、100…アクチュエータ、102…ハウジング、104…ヨーク、106a…第1電磁部、106b…第2電磁部、200…コイル、204…固定鉄心、210…可動鉄心、212…リターンスプリング、214…ストッパ、216…内部弾性体、218…外部弾性体、220…永久磁石、230…カバー、300a、300b…ロック機構、302…転動体、304…保持器、310…係合部材、312…先側傾斜面、314…元側傾斜面、320…固定鉄心、332…ヨーク、F…外力、G…磁気ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7