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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】圧縮機及び空調装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/06 20060101AFI20231109BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20231109BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
F04C29/06 B
F04B39/00 101F
F25B1/00 371Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023046141
(22)【出願日】2023-03-23
(65)【公開番号】P2023152858
(43)【公開日】2023-10-17
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2022059440
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 達也
(72)【発明者】
【氏名】菊竹 大樹
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-141489(JP,A)
【文献】特開2005-113867(JP,A)
【文献】実開昭56-079683(JP,U)
【文献】国際公開第2013/168194(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/06
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機であって、
両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、
前記ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、
前記圧縮機構(30)が有する流体流出口(32b)と前記ケーシング(20)内の空間との間に配置されるマフラ(38)と、
を備え、
前記ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードの全域で、該第1共鳴モードの共鳴周波数が、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードの共鳴周波数と異なるように、前記ケーシング(20)または前記マフラ(38)の寸法が設定され、
前記圧縮機構(30)の上側に配置されるとともに該圧縮機構(30)を駆動する電動機(40)を備え、
前記第1共鳴モードの共鳴周波数は、前記マフラ(38)の容積と、前記電動機(40)の下端と前記ケーシング(20)の底面との間に形成されるとともに油面に応じて変化する一次空間(60)の容積とをパラメータとする共鳴周波数であり、
前記第2共鳴モードの共鳴周波数は、前記ケーシング(20)のうち前記一次空間(60)を形成する部分の内径をパラメータとする共鳴周波数である
圧縮機。
【請求項2】
請求項1の圧縮機において、
前記ケーシング(20)内への初期充填油量の油面高さで、前記第1共鳴モードの共鳴周波数が前記第2共鳴モードの共鳴周波数より低い圧縮機。
【請求項3】
請求項1の圧縮機(10)において、
前記ケーシング(20)内に潤滑油が貯留されない状態で、前記第1共鳴モードの共鳴周波数が前記第2共鳴モードの共鳴周波数より高い圧縮機。
【請求項4】
請求項1の圧縮機(10)において、
前記圧縮機構(30)が1シリンダの圧縮機構である圧縮機。
【請求項5】
蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路(1)を備えた空調装置であって、
前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)が、請求項1の圧縮機である空調装置。
【請求項6】
請求項5の空調装置において、
前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)は、両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、前記ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、前記圧縮機構(30)が有する流体流出口(32b)と前記ケーシング(20)内の空間との間に配置されるマフラ(38)とを備え、前記ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードと、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードを有する圧縮機(10)であり、
前記冷媒回路(1)内の潤滑油を前記圧縮機(10)内に回収した状態の油面で、前記第1共鳴モードの共鳴周波数が前記第2共鳴モードの共鳴周波数より低い空調装置。
【請求項7】
蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路(1)を備えた空調装置であって、
前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)は、両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、前記ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、前記圧縮機構(30)が有する流体流出口(32b)と前記ケーシング(20)内の空間との間に配置されるマフラ(38)とを備え、前記ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードと、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードを有する圧縮機(10)であり、
全運転領域における定常運転時に、常に第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より低くなるように前記圧縮機(10)の油面高さを制御する運転を行う空調装置。
【請求項8】
蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路(1)を備えた空調装置であって、
前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)は、両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、前記ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、前記圧縮機構(30)が有する流体流出口(32b)と前記ケーシング(20)内の空間との間に配置されるマフラ(38)とを備え、前記ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードと、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードを有する圧縮機(10)であり、
全運転領域における定常運転時に、常に第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より高くなるように前記圧縮機(10)の油面高さを制御する運転を行う空調装置。
【請求項9】
蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路(1)を備えた空調装置であって、
前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)は、両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、前記ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、前記圧縮機構(30)が有する流体流出口(32b)と前記ケーシング(20)内の空間との間に配置されるマフラ(38)とを備え、前記ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードと、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードを有する圧縮機(10)であり、
第1共鳴モードと第2共鳴モードの共鳴周波数が合致するポイントで前記圧縮機(10)の運転を回避し、定常運転を行わない空調装置。
【請求項10】
請求項からの何れかの空調和装置において、
前記圧縮機(10)は、前記圧縮機構(30)の上側に配置されるとともに該圧縮機構(30)を駆動する電動機(40)を備え、
前記第1共鳴モードの共鳴周波数は、前記マフラ(38)の容積と、前記電動機(40)の下端と前記ケーシング(20)の底面との間に形成されるとともに油面に応じて変化する一次空間(60)の容積とをパラメータとする共鳴周波数であり、
前記第2共鳴モードの共鳴周波数は、前記ケーシング(20)のうち前記一次空間(60)を形成する部分の内径をパラメータとする共鳴周波数である空調装置。
【請求項11】
請求項1の空調装置において、
第1共鳴モードと第2共鳴モードの共鳴周波数が合致するポイントを避けるように圧縮機(10)の回転速度を制御して第1共鳴モードの共鳴周波数を制御する運転を行う空調装置。
【請求項12】
請求項1の空調装置において、
前記圧縮機(10)の吐出側に接続された油分離器(7)を有する油戻し回路(6)から前記圧縮機(10)への油戻し量を調整することにより油面高さを制御して第1共鳴モードの共鳴周波数を制御する運転を行う空調装置。
【請求項13】
請求項1の空調装置において、
前記圧縮機(10)が1シリンダの圧縮機である空調装置。
【請求項14】
請求項の空調装置において、
前記圧縮機構(30)の回転速度N(rps)が、120≦Nである空調装置。
【請求項15】
請求項13の空調装置において、
前記圧縮機構(30)の回転速度N(rps)が、120≦Nである空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機及び空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機には、ケーシング内の圧縮機構が有する流体流出口(吐出ポート)とケーシング内の高圧空間との間にマフラが設けられたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の圧縮機では、マフラ内の共鳴周波数と、マフラとケーシングの間の空間における共鳴周波数を一致させる構成を採用し、騒音を抑えようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭55-17914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮機では、一般に、ケーシング内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードと、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードの共鳴周波数が存在する。そして、これらの2つの共鳴モードの共鳴周波数が潤滑油の油面変動により一致すると騒音が大きくなる。しかしながら、特許文献1の圧縮機ではこの騒音への対応は考慮されていない。
【0006】
本開示の目的は、第1共鳴モードの共鳴周波数と第2共鳴モードの共鳴周波数がケーシング内の油面変動により一致して発生する騒音を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、
圧縮機であって、
両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、
前記ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、
前記圧縮機構(30)が有する流体流出口(32b)と前記ケーシング(20)内の空間との間に配置されるマフラ(38)と、
を備え、
前記ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードの全域で、該第1共鳴モードの共鳴周波数が、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードの共鳴周波数と異なるように、前記ケーシング(20)または前記マフラ(38)の寸法が設定されている。
【0008】
この第1の態様では、第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数と異なるため、圧縮機(10)の運転中に2つの共鳴モードの重なりが生じない。よって、騒音の増大を抑制できる。
【0009】
本開示の第2の態様は、
第1の態様の圧縮機において、
前記圧縮機構(30)の上側に配置されるとともに該圧縮機構(30)を駆動する電動機(40)を備え、
前記第1共鳴モードの共鳴周波数は、前記マフラ(38)の容積と、前記電動機(40)の下端と前記ケーシング(20)の底面との間に形成されるとともに油面に応じて変化する一次空間(60)の容積とをパラメータとする共鳴周波数であり、
前記第2共鳴モードの共鳴周波数は、前記ケーシング(20)のうち前記一次空間(60)を形成する部分の内径をパラメータとする共鳴周波数である。
【0010】
この第2の態様では、特に騒音の増大に影響する2つの共鳴モードの重なりを抑制することで、騒音の増大を抑制できる。
【0011】
本開示の第3の態様は、
第1または第2の態様の圧縮機において、
前記ケーシング(20)内への初期充填油量の油面高さで、前記第1共鳴モードの共鳴周波数が前記第2共鳴モードの共鳴周波数より低い。
【0012】
この第3の態様では、圧縮機(10)の運転中は常に第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より低い状態となり、圧縮機(10)の運転中に2つの共鳴モードの重なりが生じないので騒音の増大を抑制できる。
【0013】
本開示の第4の態様は、
第1または第2の態様の圧縮機において、
前記ケーシング(20)内に潤滑油が貯留されない状態で、前記第1共鳴モードの共鳴周波数が前記第2共鳴モードの共鳴周波数より高い。
【0014】
この第4の態様では、圧縮機(10)の運転中は常に第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの周波数より高い状態となり、圧縮機(10)の運転中に2つの共鳴モードの重なりが生じないので騒音の増大を抑制できる。
【0015】
本開示の第5の態様は、
第1または第2の態様の圧縮機において、
前記圧縮機構(30)が1シリンダの圧縮機構である。
【0016】
この第5の態様では、1シリンダの圧縮機構を有する圧縮機において、2つの共鳴モードの重なりが生じないので騒音の増大を抑制できる。
【0017】
本開示の第6の態様は、
蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路を備えた空調装置であって、
前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)が、第1または第2の圧縮機である。
【0018】
この第6の態様では、第1から第4の何れかの態様の圧縮機(10)を備えた冷凍装置において、2つの共鳴モードの重なりに起因する圧縮機(10)の騒音を抑制できる。
【0019】
本開示の第7の態様は、
蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路(1)を備えた空調装置であって、
前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)は、両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、前記ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、前記圧縮機構(30)が有する流体流出口(32b)と前記ケーシング(20)内の空間との間に配置されるマフラ(38)とを備え、前記ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードと、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードを有する圧縮機(10)であり、
前記冷媒回路(1)内の潤滑油を前記圧縮機(10)内に回収した状態の油面で、前記第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より低い。
【0020】
この第7の態様では、運転中は常に第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの周波数より低くなる。よって、2つの共鳴モードの共鳴周波数の重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0021】
本開示の第8の態様は、
蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路(1)を備えた空調装置であって、
前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)は、両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、前記ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、前記圧縮機構(30)が有する流体流出口(32b)と前記ケーシング(20)内の空間との間に配置されるマフラ(38)とを備え、前記ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードと、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードを有する圧縮機(10)であり、
全運転領域における定常運転時に、常に第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より低くなるように前記圧縮機(10)の油面高さを制御する運転を行う。
【0022】
この第8の態様では、圧縮機(10)の油面高さを制御する運転を行うことにより、常に第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より低くなる。よって、2つの共鳴モードの共鳴周波数の重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0023】
本開示の第9の態様は、
蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路(1)を備えた空調装置であって、
前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)は、両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、前記ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、前記圧縮機構(30)が有する流体流出口(32b)と前記ケーシング(20)内の空間との間に配置されるマフラ(38)とを備え、前記ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードと、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードを有する圧縮機(10)であり、
全運転領域における定常運転時に、常に第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より高くなるように前記圧縮機(10)の油面高さを制御する運転を行う。
【0024】
この第9の態様では、圧縮機(10)の油面高さを制御する運転を行うことにより、常に第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より高くなる。よって、2つの共鳴モードの共鳴周波数の重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0025】
本開示の第10の態様は、
蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒回路(1)を備えた空調装置であって、
前記冷媒回路(1)の圧縮機(10)は、両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、前記ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、前記圧縮機構(30)が有する流体流出口(32b)と前記ケーシング(20)内の空間との間に配置されるマフラ(38)とを備え、前記ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードと、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードを有する圧縮機(10)であり、
第1共鳴モードと第2共鳴モードの共鳴周波数が合致するポイントで前記圧縮機(10)の運転を回避し、定常運転を行わない。
【0026】
この第10の態様では、運転中に2つの共鳴モードの共鳴周波数が合致するポイントが生じない。よって、2つの共鳴モードの共鳴周波数の重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0027】
本開示の第11の態様は、
第7から第10の何れかの態様の空調装置において、
前記圧縮機(10)は、前記圧縮機構(30)の上側に配置されるとともに該圧縮機構(30)を駆動する電動機(40)を備え、
前記第1共鳴モードの共鳴周波数は、前記マフラ(38)の容積と、前記電動機(40)の下端と前記ケーシング(20)の底面との間に形成されるとともに油面に応じて変化する一次空間(60)の容積とをパラメータとする共鳴周波数であり、
前記第2共鳴モードの共鳴周波数は、前記ケーシング(20)のうち前記一次空間(60)を形成する部分の内径をパラメータとする共鳴周波数である。
【0028】
この第11の態様では、特に騒音の増大に影響する2つの共鳴モードの重なりを抑制することで、騒音の増大を抑制できる。
【0029】
本開示の第12の態様は、
第11の態様の空調装置において、
第1共鳴モードと第2共鳴モードの共鳴周波数が合致するポイントを避けるように圧縮機(10)の回転速度を制御して第1共鳴モードの共鳴周波数を制御する運転を行う。
【0030】
この第12の態様では、第9の態様と同様に、運転中に2つの共鳴モードの共鳴周波数が合致するポイントが生じない。よって、2つの共鳴モードの共鳴周波数の重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0031】
本開示の第13の態様は、
第11の態様の空調装置において、
前記圧縮機(10)の吐出側に接続された油分離器(7)を有する油戻し回路(6)から前記圧縮機(10)への油戻し量を調整することにより油面高さを制御して第1共鳴モードの共鳴周波数を制御する運転を行う。
【0032】
この第13の態様では、油戻し運転をすることにより油面高さを調整することで、2つの共鳴モードの共鳴周波数の重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0033】
本開示の第14の態様は、
第11の態様の空調装置において、
前記圧縮機(10)が1シリンダの圧縮機構(30)を有する圧縮機である。
【0034】
この第14の態様では、1シリンダの圧縮機構(30)を有する圧縮機を備えた冷媒回路を有する空調装置において、2つの共鳴モードの共鳴周波数の重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0035】
本開示の第15の態様は、
第6または第14の態様の空調装置において、
前記圧縮機構(30)の回転速度N(rps)が、120≦Nである。
【0036】
この第15の態様では、比較的高速回転で運転される圧縮機(10)において、2つの共鳴モードの共鳴周波数の重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、実施形態1に係る圧縮機の断面図である。
図2図2は、第1共鳴モードの共鳴周波数を求める数式である。
図3図3は、第2共鳴モードの共鳴周波数を求める数式である。
図4】電動機の下部の一次空間容積と第1共鳴モード及び第2共鳴モードの共鳴周波数の関係を示すグラフである。
図5】実施形態における一次空間容積と第1共鳴モード及び第2共鳴モードの共鳴周波数の関係を示すグラフである。
図6】実施形態1の変形例1における一次空間容積と第1共鳴モード及び第2共鳴モードの共鳴周波数の関係を示すグラフである。
図7】一次空間容積と第1共鳴モード及び第2共鳴モードの共鳴周波数が合致する状態を示すグラフである。
図8】実施形態2の変形例1における圧縮機への油戻し運転の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0039】
この実施形態に係る圧縮機(10)は、揺動ピストン式の圧縮機(10)であり、図1に示すように冷媒回路(1)に接続されている。冷媒回路(1)は、この圧縮機(10)と、放熱器(2)、膨張機構(3)、及び蒸発器(4)とが順に冷媒配管(5)で接続され、冷媒が循環することにより蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。膨張機構(3)は、一般に開度調整が可能な膨張弁が用いられるが、開度が固定のキャピラリチューブなど、別の要素部品でもよい。
【0040】
圧縮機(10)はケーシング(20)を備える。ケーシング(20)は、円筒状の胴体部(21)の軸方向の一端(上端)に第1端板(22)を備え、他端(下端)に第2端板(23)を備える縦長円筒状の密閉容器である。ケーシング(20)の内部には、冷媒回路(1)の冷媒を圧縮する圧縮機構(30)と、圧縮機構(30)を駆動する可変速の電動機(40)とが収容され、それぞれ、胴体部(21)の内周面に固定されている。電動機(40)はケーシング(20)内で第1端板(22)との間に第1空間(S1)を介して配置され、圧縮機構(30)は電動機(40)との間に第2空間(S2)を介して配置されている。
【0041】
電動機(40)は、共に円筒状に形成されたステータ(41)及びロータ(42)を備える。ステータ(41)は、ケーシング(20)の胴体部(21)に固定される。ステータ(41)の中空部にはロータ(42)が配置される。ロータ(42)の中空部には、ロータ(42)を貫通するように駆動軸(45)が固定され、ロータ(42)と駆動軸(45)とが一体で回転する。
【0042】
駆動軸(45)は、上下に延びる主軸部(46)を有する。駆動軸(45)には、主軸部(46)の下端寄りに偏心部(47)が一体に形成される。偏心部(47)は、主軸部(46)よりも大径に形成される。偏心部(47)の軸心は、主軸部(46)の軸心に対して所定距離だけ偏心している。
【0043】
主軸部(46)の下端部には給油ポンプ(48)が設けられている。給油ポンプ(48)は、ケーシング(20)の底部に形成される油溜め部の潤滑油に浸漬する。給油ポンプ(48)は、駆動軸(45)の回転に伴って潤滑油を駆動軸(45)内の給油路(図示せず)へ汲み上げた後で、圧縮機構(30)の各摺動部へ供給する。
【0044】
圧縮機構(30)は、環状に形成されたシリンダ(31)を有する。シリンダ(31)の軸方向一方端(上端)にはフロントヘッド(32)が固定され、シリンダ(31)の軸方向他方端(下端)にはリアヘッド(33)が固定される。シリンダ(31)、フロントヘッド(32)及びリアヘッド(33)は、上側から下側に向かってフロントヘッド(32)、シリンダ(31)及びリアヘッド(33)の順に積層され、例えば複数のボルトによって締結されて互いに固定される。この圧縮機構(30)は、1つのシリンダと1つのピストンを有する、いわゆる1シリンダの圧縮機構である。
【0045】
駆動軸(45)は、圧縮機構(30)を上下に貫通する。フロントヘッド(32)とリアヘッド(33)には、駆動軸(45)を偏心部(47)の上下両側で支持する軸受部(32a,33a)が形成される。
【0046】
シリンダ(31)の上端がフロントヘッド(32)によって閉塞される一方、下端がリアヘッド(33)に閉塞され、シリンダ(31)の内部の空間がシリンダ室(35)を構成する。シリンダ(31)(シリンダ室(35))には、駆動軸(45)の偏心部(47)に摺動自在に嵌合する筒状のピストン(34)が収容される。ピストン(34)は、駆動軸(45)が回転すると、シリンダ室(35)の中で偏心回転運動をする。詳細は図示していないが、ピストン(34)の外周面には、該外周面から径方向外側へ延びるブレードが一体に形成される。ブレードは、ピストン(34)に設けられたブッシュ(図示せず)に保持されて、駆動軸(45)の回転に伴って揺動し、ピストン(34)の自転が規制される。
【0047】
シリンダ(31)には、シリンダ室(35)に通じる吸入ポート(31a)が形成される。吸入ポート(31a)には、胴体部(21)に固定された吸入管(36)が接続される。吸入管(36)には、ケーシング(20)に固定されたアキュムレータ(37)が接続される。
【0048】
フロントヘッド(32)には、吐出ポート(32b)が、駆動軸(45)の軸心と平行な方向に沿って形成される。吐出ポート(32b)は、吐出弁(図示せず)で開閉される。フロントヘッド(32)の上面には、吐出ポート(32b)及び吐出弁を覆うようにマフラ(38)が取り付けられている。マフラ(38)は、その内部に区画されるマフラ空間(38a)が、上部の吐出開口(38b)を通じてケーシング(20)の内部空間に連通するように形成される。
【0049】
前記ケーシング(20)には、前述したように、前記吸入ポート(31a)に接続される吸入管(36)が取り付けられ、冷媒がアキュムレータ(37)及び吸入管(36)を通って前記圧縮機構(30)へ吸入される。
【0050】
ケーシング(20)には、第1端板(22)を貫通して吐出管(39)が取り付けられている。吐出管(39)の下側の端部は、ケーシング(20)の内部に開口する。圧縮機構(30)の流体流出口である吐出ポート(32b)は、マフラ(38)の吐出開口(38b)を通じてケーシング(20)の内部空間に連通している。圧縮機構(30)から吐出された冷媒は、ケーシング(20)の内部空間と吐出管(39)を通じてケーシング(20)の外へ流出する。
【0051】
ケーシング(20)の第1端板(22)には、電動機(40)へ電力を供給するための電気配線を接続するターミナル(50)が設けられている。
【0052】
以上のように、この実施形態の圧縮機は、両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、圧縮機構(30)が有する吐出ポート(32b)とケーシング(20)内の空間(第2空間(S2))との間に配置されるマフラ(38)とを備えている。
【0053】
この圧縮機(10)には、ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードと、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードとが存在する。この圧縮機(10)は、第1共鳴モードの全域で、その第1共鳴モードの共鳴周波数fが、第2共鳴モードの共鳴周波数fと異なるように、ケーシング(20)またはマフラ(38)の寸法や形状が定められている。
【0054】
第1共鳴モードの共鳴周波数fは、マフラ容積と一次空間(60)の容積を主なパラメータとした共鳴の周波数であり、図2に示す数式で求められる。ここで、一次空間(60)は、電動機(40)の下端からケーシング(20)の底面までの間に形成されるとともに油面に応じて変化する空間である。一次空間は、ケーシング(20)に溜まった油を除く空間である。したがって、ケーシング(20)内の油面が変化すると、一次空間(60)の容積も変化する。一次空間(60)容積は、電動機(40)の下部空間の容積と、フロントヘッド下部空間の容積を含む。この第1共鳴モードでは、圧縮機(10)ごとに定められるマフラ(38)の吐出開口面積、吐出開口長さ、電動機下部空間(第2空間(S2))の容積等に対して、油面の変化により一次空間(60)の容積が変化すると、共鳴周波数fが変化する。具体的には、図4のグラフに示すように、油面の低下により一次空間(60)の容積が大きくなると、共鳴周波数fが小さくなり、油面の上昇により一次空間(60)の容積が小さくなると、共鳴周波数fが大きくなる。
【0055】
第2共鳴モードの共鳴周波数fは、ケーシング(20)の断面において発生する共鳴の周波数であり、図3に示すように、主に電動機下部空間(第2空間(S2))におけるケーシング(20)の内径をパラメータとした数式で求められる。言い換えると、第2共鳴モードの共鳴周波数fは、ケーシング(20)のうち一次空間(60)を形成する部分の内径をパラメータとする。厳密には、第2共鳴モードの共鳴周波数fは、フロントヘッド下方の容積の状態(油面変化)に対してわずかに値が変化するが、ケーシング(20)の内径に反比例し、図4のグラフに示すようにほぼ一定の値である。
【0056】
図2において、Apはマフラ(38)の吐出開口(38b)の面積、Lpはマフラ(38)の吐出開口(38b)の軸方向長さを開口端補正した値、Vは一次空間(60)の容積、Vmはマフラの容積、βは補正係数である。吐出開口(38)の長さLpの開口端補正は、
吐出開口長さ=マフラの板厚+(開口端補正係数×マフラの吐出開口の水力直径(1つ分))
で求められる。開口端補正係数は、マフラ(38)の開口端の位置と音波の腹の位置とのずれを補正するのに用いられる。一般にはこの開口端補正係数の値には0.3が用いられ、マフラ(38)の吐出開口(38b)の直径(水力直径)をdとすると0.3dが補正値となる。補正係数βは、FEM解析(有限要素法解析)と実測との合わせ込みで決められる値である。
【0057】
この実施形態では、マフラ(38)の吐出開口(38b)の面積Apが5.84×10-5(m)、開口端補正をした吐出開口(38b)の長さLpが2.83×10-3(m)、マフラの容積Vmが2.32×10-5(m)、一次空間(60)の容積Vが1.90×10-4(m)、補正係数βが0.84である例を1つの実施例とすると、音速cが243(m/s)である場合、第1共鳴モードの共鳴周波数fは約1027Hzとなる。
【0058】
また、図3において、補正係数αは、FEM解析と実測との合わせ込みで決められる値、モード係数λは、第2共鳴モードによって決まる定数、Rは胴体部内周面の半径である。実施例において、補正係数αが0.73、モード係数λが1.84、半径R1が4.5×10-2(m)であり、音速cを243(m/s)とすると、第2共鳴モードの共鳴周波数fは約1154Hzとなる。
【0059】
一方、従来の圧縮機(比較例とする)では、例えば、マフラの吐出開口の面積Apが4.75×10-5(m)、開口端補正をした吐出開口長さLpが2.65×10-3(m)、マフラの容積Vmが1.55×10-5(m)、一次空間(60)の容積Vが1.56×10-4(m)、補正係数βが0.84であり、音速cを243(m/s)とすると、第1共鳴モードの共鳴周波数fは約1160Hzとなる。また、この比較例では、補正係数αが0.73、モード係数λが1.84、半径Rが前期実施例と同様に4.5×10-2(m)であり、音速cを243(m/s)とすると、第2共鳴モードの共鳴周波数fは前記実施例と同様に約1154Hzとなる。
【0060】
以上のように、本実施形態では第1共鳴モードの共鳴周波数fと第2共鳴モードの共鳴周波数fとの周波数差が大きいのに対して、従来の圧縮機では第1共鳴モードの共鳴周波数fと第2共鳴モードの共鳴周波数fとの周波数差が小さい。そのため、従来の圧縮機では第1共鳴モードの共鳴周波数fが変動すると2つの共鳴モードの共鳴周波数が一致しやすい。
【0061】
図4に示すように、第1共鳴モードの共鳴周波数fと第2共鳴モードの共鳴周波数fとが合致するポイントが存在すると、2つの共鳴モードの重なりにより音が増幅されて騒音が大きくなる。
【0062】
本実施形態では、前述したように、第1共鳴モードの全域で、その第1共鳴モードの共鳴周波数fが第2共鳴モードの共鳴周波数fと異なるように、ケーシング(20)またはマフラ(38)の寸法が設定されているため、2つの共鳴モードの重なりが生じない。
【0063】
具体的に、実施形態1の圧縮機(10)では、図5に示すように、ケーシング(20)内への初期充填油量の油面高さで、第1共鳴モードの共鳴周波数fが第2共鳴モードの共鳴周波数fより小さくなるように、ケーシング(20)またはマフラ(38)の寸法が定められている。具体的には、例えばマフラの吐出開口の直径、マフラの吐出開口の数、マフラの吐出開口の面積、マフラの板厚、マフラ空間(38a)の容積、胴体部(21)の内径、一次空間(60)の容積などが、前記実施例で説明したように、f<fとなるように定められている。初期充填油量の油面高さの状態で、図2図3の数式に示されたパラメータの設定によりf<fになるようにすると、圧縮機(10)の運転中は常にf<fとなる。その結果、第1共鳴モードの共鳴周波数fと第2共鳴モードの共鳴周波数fとが合致するポイントが運転中は常に生じず、2つの共鳴モードの重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0064】
高速(例えば定常運転時の回転速度N(rps)が120≦N)で運転する時は、圧縮機の油上りにより初期充填油量の油面高さから油面が大きく変化するため、2つの共鳴モードの重なりが発生しないこの圧縮機(10)がより好ましい。言い換えると、従来の圧縮機では高速運転時の油面低下により2つの共鳴モードの重なりが生じるが、本実施形態では油面が低下してもその重なりが生じないため高速運転が容易になる。
【0065】
-実施形態1の効果-
高速回転で運転される圧縮機(10)では、ケーシング(20)から吐出される油の量が多くなり、油面が下がる傾向がある。また、ケーシング(20)を小型化することで直径が小さくなると、油量の変化に対する油面の変動が大きくなる。そのため、従来は、第1共鳴モードの共鳴周波数と第2共鳴モードの共鳴周波数が合致しやすくなる。
【0066】
本実施形態では、第1共鳴モードの共鳴周波数と第2共鳴モードの共鳴周波数が異なるように、ケーシング(20)またはマフラ(38)の寸法や形状を設定している。このことにより、油面が変動しても2つの共鳴モードの共鳴周波数が合致しない。よって、2つの共鳴モードの重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。また、圧縮機(10)を小型化し、且つ高速運転することにより油面が変動しやすくなるのに対しても、2つの共鳴モードの重なりが生じないので騒音の増大を抑えられる。なお、本実施形態は、圧縮機を小型化、高速化しない場合であっても騒音の低減に高い効果を有する。
【0067】
-実施形態1の変形例-
<変形例1>
変形例1の圧縮機では、図6に示すように、ケーシング(20)内に潤滑油が貯留されない状態で、第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より大きくなるように、マフラの吐出開口の直径、マフラの吐出開口の数、マフラの吐出開口の面積、マフラの板厚、マフラ空間(38a)の体積、胴体部(21)の内径、一次空間(60)の容積などの各部の寸法や形状が定められる。ケーシング(20)内に油がない状態で、図2図3の数式に示されたパラメータの設定によりf>fになるようにすると、圧縮機(10)の通常運転中に油面が形成されているときは共鳴周波数fがさらに大きくなるため、常にf>fとなる。その結果、第1共鳴モードの共鳴周波数fと第2共鳴モードの共鳴周波数fとが合致するポイントが運転中に常に生じず、2つの共鳴モードの重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0068】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。
【0069】
実施形態2は、冷媒回路(1)を備えた空調装置に関する。この空調装置の圧縮機(10)は、前述と同様に、両端に端板(22,23)を備えた円筒状のケーシング(20)と、ケーシング(20)内に収容された圧縮機構(30)と、圧縮機構(30)が有する流体流出口(32b)とケーシング(20)内の空間との間に配置されるマフラ(38)とを備えている。この圧縮機(10)では、ケーシング(20)内に貯留される潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化する第1共鳴モードと、潤滑油の油面変化によって共鳴周波数が変化しない第2共鳴モードが存在する。
【0070】
この空調装置では、冷媒回路(1)内の潤滑油を圧縮機(10)内に回収した状態での油面で、第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より低くなるように、冷媒回路(1)の油量や配管長などが定められる。この実施形態2では、必ずしも圧縮機(10)のケーシング(20)やマフラ(38)の寸法構成自体を、第1共鳴モードの共鳴周波数と第2共鳴モードの共鳴周波数が異なるように設定しなくてもよいが、実施形態1のように構成された圧縮機の使用を除外するものではない。
【0071】
この実施形態2においても、潤滑油の油面が最も高い状態で第1共鳴モードの共鳴周波数fが第2共鳴モードの共鳴周波数fより低くなるため、図5に示した例と同様に、運転中に共鳴周波数f,fの合致するポイントが生じない。図7に示すように2つの共鳴モードの共鳴周波数f,fが合致するポイントが生じると騒音が大きくなるが、この実施形態2では2つの共鳴モードの共鳴周波数f,fの重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0072】
-実施形態2の変形例-
<変形例1>
変形例1の空調装置は、実施形態2と同様に第1共鳴モードと第2共鳴モードが存在する圧縮機を備えた冷媒回路(1)を有する。
【0073】
この空調装置では、全運転領域の定常運転時に、常に第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より低くなるように圧縮機(10)の油面高さを制御する運転が行われる。
【0074】
具体的には、図8に示すように冷媒回路(1)に設けられた油戻し回路(6)による圧縮機(10)への油戻し量を調整する運転を行う。
【0075】
この圧縮機(10)には、油面高さを検出する油面計(図示せず)が設けられている。油戻し回路(6)は、圧縮機(10)の吐出側に接続された油分離器(7)と、アキュムレータ(37)と圧縮機(10)との間の吸入管(37a)に接続された油戻し管(7a)とを有する。油戻し管(7a)には油戻し弁(7b)が設けられている。油戻し弁(7b)は、全閉と全開の2つの位置に調整可能な開閉弁を用いてもよいし、任意の開度に調整可能な開度調整弁を用いてもよい。
【0076】
油戻し運転では、圧縮機(10)の回転速度を速くすることにより冷媒循環量を多くし、油戻し弁(7b)を開くことにより冷媒回路(1)内の油を回収する。なお、圧縮機(10)の回転速度を速くすると油上がり(圧縮機から流出する油)も多くなるため、油上がりを抑えるために回転速度は一般に中程度の速度に設定される。また、冷媒回路の高低差圧が大きくなると油上り量が多くなるため、油戻し運転時は一般に低負荷(低差圧)の運転が実施される。
【0077】
圧縮機(10)の油面が下がったことを油面計で検知すると、油面を確保するために中速・低負荷の油戻し運転が実施される。このことにより油面が上昇する。逆に高速・高差圧の条件では油上り量が多くなるため、油面を低く抑えたい場合は高速・高差圧の運転が行われる。
【0078】
この変形例1では、以上のようにして常に第1共鳴モードの共鳴周波数fが第2共鳴モードの共鳴周波数fより低くなるように圧縮機(10)の油面高さを制御する運転が行われる。よって、2つの共鳴モードの共鳴周波数f,fが合致するポイントが生じないので、2つの共鳴モードの共鳴周波数の重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0079】
<変形例2>
変形例2の空調装置は、実施形態2及びその変形例1と同様に第1共鳴モードと第2共鳴モードが存在する圧縮機を備えた冷媒回路(1)を有する。
【0080】
この空調装置では、変形例1とは異なり、全運転領域の定常運転時に、常に第1共鳴モードの共鳴周波数が第2共鳴モードの共鳴周波数より高くなるように圧縮機(10)の油面高さを制御する運転が行われる。
【0081】
この変形例2においても、2つの共鳴モードの共鳴周波数f,fが合致するポイントが生じないため、変形例1と同様に2つの共鳴モードの共鳴周波数の重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0082】
<変形例3>
変形例3の空調装置は、実施形態2及びその変形例1,2と同様に第1共鳴モードと第2共鳴モードが存在する圧縮機を備えた冷媒回路(1)を有する。
【0083】
この空調装置では、第1共鳴モードと第2共鳴モードの共鳴周波数f,fが合致するポイントを避けるように圧縮機(10)の回転速度を制御して第1共鳴モードの共鳴周波数を制御する運転が行われる。言い換えると、圧縮機(10)の回転速度を調整して第1共鳴モードの共鳴周波数fが第2共鳴モードの共鳴周波数fと合致しないように油面高さを調整する運転が行われる。実施形態2で油面高さを調整する運転は、第1共鳴モードと第2共鳴モードの共鳴周波数が合致するポイントで前記圧縮機(10)の運転を回避し、定常運転を行わないようにすることで実施できる。
【0084】
この変形例3においても、2つの共鳴モードの共鳴周波数f,fが合致するポイントが生じないため、変形例1,2と同様に2つの共鳴モードの共鳴周波数f,fの重なりに起因する騒音の増大を抑制できる。
【0085】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0086】
例えば、前記実施形態では、圧縮機(10)を小型化、高速化する場合について説明したが、本開示の構成は、圧縮機を小型化、高速化する場合に限らず、従来と同様の一般的な大きさの圧縮機を通常の回転速度で運転する場合、通常の大きさの圧縮機を高速回転で運転する場合、さらに小型の圧縮機を通常の回転速度で運転する場合などであっても、騒音を抑制するのに有効である。また、実施形態の数値は、それに限定されるものではない。
【0087】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本開示は、圧縮機及び空調装置について有用である。
【符号の説明】
【0089】
1 冷媒回路
6 油戻し回路
7 油分離器
10 圧縮機
20 ケーシング
22 第1端版
23 第2端板
30 圧縮機構
32b 吐出ポート(流体流出口)
38 マフラ
40 電動機
60 一次空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8