(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20231109BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20231109BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20231109BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20231109BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/442 ZHV
B60K6/52
B60W20/13
F02D29/06 D
F02D29/06 J
(21)【出願番号】P 2019099773
(22)【出願日】2019-05-28
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】福岡 武志
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-047972(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0059841(US,A1)
【文献】特開2000-040532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/06
B60K 6/442
B60K 6/52
B60W 20/17
B60W 20/13
F02D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから供給される電力によって駆動する走行用モータと、前記バッテリに供給する電力を発電する発電機と、前記発電機を駆動するエンジンと、を有するハイブリッド車両を制御する制御装置であって、
前記バッテリの充電量を検出する充電状態検出部と、
前記充電状態検出部によって検出された前記バッテリの充電量が予め設定された始動閾値以下になると前記エンジンを始動させ前記バッテリの充電量が予め設定された停止閾値以上になると前記エンジンを停止させて、前記発電機の発電による前記バッテリの充電を実行する充電実行部と、
車両の周囲の外気温を検出する外気温検出部と、
前記外気温検出部によって検出される外気温が低いほど前記始動閾値と前記停止閾値との差が大きくなるように、前記始動閾値及び前記停止閾値の少なくとも一方を変更する閾値変更部と、を備
え、
前記充電実行部は、前記バッテリの充電を実行して前記バッテリの充電量が前記停止閾値以上になった際、前記エンジンの油温が閾値温度よりも低い状態である冷態である場合には、前記エンジンの油温が閾値温度よりも高い状態である温態となるまで前記バッテリの充電を継続して実行する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記閾値変更部は、外気温が低いほど前記停止閾値を高い値に変更する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記閾値変更部は、外気温が予め設定された設定温度よりも低い場合に、閾値の変更を実施する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
前記エンジンの状態を判定するエンジン状態判定部を備え、
前記閾値変更部は、前記エンジン状態判定部によって前記エンジン
の油温が閾値温度よりも低い状態である冷態であると判定された場合に、閾値の変更を実施する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置であって、
燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料残量検出部を備え、
前記充電実行部は、前記燃料残量検出部によって前記燃料タンク内の燃料残量が、予め設定された残量閾値以上である場合に、前記エンジンの
油温が閾値温度以上の状態である温態となるまで前記バッテリの充電を継続して実行する
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリから供給される電力によって駆動する走行用モータと、バッテリに供給する電力を発電する発電機と、この発電機を駆動するエンジンと、を有するハイブリッド車両を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行用モータとエンジンとを組み合わせて車両の駆動力を得るようにしたハイブリッド車両が開発され、実用化が進んでいる。ハイブリッド車両としては、発電機をエンジンにより駆動させて発電し、走行用モータに給電を行うバッテリを充電する車両(PHV)だけでなく、バッテリを外部の商用電源でも充電可能な車両(PHEV)の開発、実用化が進んでいる。
【0003】
このようなハイブリッド車両には、走行用モータのみを動力源として駆動輪を駆動させるEVモードと、走行用モータを動力源とすると共にエンジンにより発電機を駆動させてバッテリや走行用モータに電力を供給するシリーズモード、或いはエンジンと走行用モータとの両方を動力源とするパラレルモードと、が車両の走行状態やバッテリの充電量(充電状態)等に応じて切り替わるようになっているものがある。
【0004】
例えば、EV走行モード中にバッテリの充電量(SOC:State of Charge)に応じて、すなわちバッテリの残容量が少なくなると、走行モードをEV走行モードからHV走行モード(上記シリーズモード及びパラレルモード相当)に切り替えてエンジンを作動させ、発電機による発電によってバッテリの充電を行うようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ハイブリッド車両において上述のようにバッテリを充電する場合、エンジンは冷えた状態であることが多く、エンジンオイルが燃料によって希釈される現象、いわゆるオイルダイリューションが発生してしまう虞がある。
【0007】
エンジンオイルに混入した燃料は、エンジンの暖機が完了してエンジンオイルの温度を十分に上昇させることで、除去することができる。すなわち、エンジンオイルの温度が十分に上昇することで、エンジンオイルに混入した燃料は蒸散し、ブローバイガスとなって燃焼される。つまりエンジンオイルの温度を十分に上昇させることで、オイルダイリューションの発生を抑制することができる。
【0008】
しかしながら、上述のようにバッテリを充電する場合、一回あたりのエンジンの作動時間は比較的短い場合があり、エンジンオイルの温度が十分に上昇せずにオイルダイリューションの発生を抑制できない虞がある。特に、外気温が低い環境下では、エンジンオイルの温度が上昇しにくいため、オイルダイリューションの発生を適切に抑制できない虞がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、エンジンを作動させてバッテリの充電を行う際、外気温が低い環境下であっても、オイルダイリューションの発生を適切に抑制することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、バッテリから供給される電力によって駆動する走行用モータと、前記バッテリに供給する電力を発電する発電機と、前記発電機を駆動するエンジンと、を有するハイブリッド車両を制御する制御装置であって、前記バッテリの充電量を検出する充電状態検出部と、前記充電状態検出部によって検出された前記バッテリの充電量が予め設定された始動閾値以下になると前記エンジンを始動させ前記バッテリの充電量が予め設定された停止閾値以上になると前記エンジンを停止させて、前記発電機の発電による前記バッテリの充電を実行する充電実行部と、車両の周囲の外気温を検出する外気温検出部と、前記外気温検出部によって検出される外気温が低いほど前記始動閾値と前記停止閾値との差が大きくなるように、前記始動閾値及び前記停止閾値の少なくとも一方を変更する閾値変更部と、を備え、前記充電実行部は、前記バッテリの充電を実行して前記バッテリの充電量が前記停止閾値以上になった際、前記エンジンの油温が閾値温度よりも低い状態である冷態である場合には、前記エンジンの油温が閾値温度よりも高い状態である温態となるまで前記バッテリの充電を継続して実行することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置にある。
【0011】
ここで、前記閾値変更部は、外気温が低いほど前記停止閾値を高い値に変更することが好ましい。
【0012】
また前記閾値変更部は、外気温が予め設定された設定温度よりも低い場合に、閾値の変更を実施することが好ましい。
【0013】
また前記エンジンの状態を判定するエンジン状態判定部を備え、前記閾値変更部は、前記エンジン状態判定部によって前記エンジンの状態が冷態であると判定された場合に、閾値の変更を実施することが好ましい。
【0015】
またこの場合、制御装置は、燃料タンク内の燃料残量を検出する燃料残量検出部を備え、前記充電実行部は、前記燃料残量検出部によって前記燃料タンク内の燃料残量が、予め設定された残量閾値以上である場合に、前記エンジンの油温が閾値温度以上の状態である温態となるまで前記バッテリの充電を継続して実行することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
かかる本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、エンジンを駆動させてバッテリの充電を行う際、外気温が低い環境下であっても、エンジンを適切に暖機してエンジンオイルの温度を十分に上昇させることができる。したがって、バッテリの充電時におけるオイルダイリューションの発生を適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ハイブリッド車両の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】バッテリの充電量の変化及びエンジンの作動状態の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】バッテリの充電量の変化及びエンジンの作動状態の一例を示す図である。
【
図5】外気温と停止閾値との関係の一例を示す図である。
【
図6】外気温と停止閾値との関係の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係る充電時の制御を説明するフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態2に係る制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る充電時の制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態1)
まずは、ハイブリッド車両の構成の一例について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るハイブリッド車両(以下、単に「車両」ともいう)10は、走行用モータであるフロントモータ11及びリアモータ12と、エンジン13とを、走行用の駆動源として備えている。フロントモータ11の駆動力は前駆動伝達機構14を介して前輪15に伝達される。リアモータ12の駆動力は後駆動伝達機構16を介して後輪17に伝達される。フロントモータ11には、フロント(Fr)モータインバータ18を介してバッテリ19が接続されており、リアモータ12には、リア(Re)モータインバータ20を介してバッテリ19が接続されている。そして乗員のペダル操作に応じた電力が、バッテリ19からこれらインバータ18,20を介して各モータ11,12に供給される。
【0019】
エンジン13は、燃料タンク24から供給される燃料(ガソリン)が燃焼されることにより駆動されるガソリンエンジンである。このエンジン13には出力系25を介してジェネレータ(発電機)26が接続されている。ジェネレータ26は、ジェネレータインバータ27を介してバッテリ19(及びフロントモータ11)に接続されている。また出力系25は、ジェネレータ26に接続される一方で、クラッチ28を介して前駆動伝達機構14にも接続されている。
【0020】
本実施形態では、エンジン13は、出力系25を介して伝達されるジェネレータ26の回転により始動する。またエンジン13が始動された後は、エンジン13の駆動力は出力系25を介してジェネレータ26に伝達され、ジェネレータ26はエンジン13の駆動力により回転する。このジェネレータ26で発電された電力が、バッテリ19及び各モータ11,12に対して必要に応じて適宜供給される。車両10の運転状態に応じてクラッチ28によって出力系25と前駆動伝達機構14とが接続されると、エンジン13の駆動力は、ジェネレータ26に伝達されると共に前輪15にも伝達される。
【0021】
このような車両10では、車両10の走行状態に応じて、例えば、EVモード、シリーズモードと、パラレルモードとが適宜選択されるようになっている。なおEVモードは、フロントモータ11及びリアモータ12を駆動源とする走行モードである。シリーズモードは、エンジン13をフロントモータ11及びリアモータ12の電力供給源として用いる走行モードである。パラレルモードは、フロントモータ11及びリアモータ12とエンジン13との両方の駆動力により車両の各車輪15,17を駆動する走行モードである。
【0022】
したがって、車両10の運転状態に応じてEVモードが選択されている場合、エンジン13は停止しており、EVモードからシリーズモード又はパラレルモードに切り替わるとエンジン13が始動される。
【0023】
またハイブリッド車両である車両10では、バッテリ19の充電量(SOC)が比較的多い状態では、主にフロントモータ11及びリアモータ12のみで走行するように、走行モードが適宜選択される。一方、バッテリ19の充電量が少なくなると、エンジン13を適宜駆動させてバッテリ19の充電量の低下を抑えるように、走行モードが適宜選択される。
【0024】
例えば、
図2に一例を示すように、EVモードでの走行中に、バッテリ19の充電量(SOC)が100%から徐々に減少して予め設定された始動閾値Caに達すると、走行モードがEVモードからシリーズモードに切り替わり、エンジン13が始動して(OFFからONに切り替わり)、ジェネレータ26の発電によるバッテリ19の充電が開始される。そしてバッテリ19の充電量(SOC)が予め設定された停止閾値Cb(>Ca)まで回復すると、走行モードがシリーズモードからEVモードに切り替わり、エンジン13の駆動が停止して(ONからOFFに切り替わり)、バッテリ19の充電が終了される。その後は、バッテリ19の充電量が始動閾値Caと停止閾値Cbとの間で維持されるように、エンジン13の始動と停止とが繰り返されることになる。
【0025】
そして本発明は、このようにバッテリ19の充電量が所定範囲(Ca-Cb間)で維持されるようにバッテリ19を充電する際の制御に特徴がある。
【0026】
車両10には、車両10が備える各種装置を総括的に制御するECU(電子コントロールユニット)である制御装置30が設けられている。制御装置30は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えて構成されている。制御装置30は、車両10に設けられた各種センサからの信号に基づいて車両10の運転状態を把握し、それに基づいて各種装置を総括的に制御する。制御装置30が行う制御には、上記のようにバッテリ19を充電する際の制御が含まれる。以下、制御装置30によるバッテリ19を充電する際の制御について説明する。
【0027】
図3に示すように、制御装置30は、バッテリ19の充電を制御する充電制御部300を備えており、充電制御部300は、外気温検出部301と、充電状態検出部302と、充電実行部303と、閾値変更部304と、エンジン状態判定部305と、を備えている。
【0028】
外気温検出部301は、車両10の周囲の外気温を検出する。車両10は、車外の温度を常に計測する外気温センサ101を備えており、外気温検出部301は、この外気温センサ101の計測結果を所定のタイミングで取得する。なお外気温検出部301が外気温を検出する方法は、特に限定されるものではない。
【0029】
充電状態検出部302は、バッテリ19の充電量(充電状態:SOC)を検出する。例えば、充電状態検出部302は、バッテリ19に設けられた電圧センサ102で検出された電圧情報及び電流センサ103で検出された電流情報に基づいて、予め記憶されているマップ等からバッテリ19の充電量(充電率)を演算する。
【0030】
なお、バッテリ19は経年劣化により容量が減少する。このため、充電状態検出部302は、その時点の容量を基準として充電量を演算することが好ましい。また充電状態検出部302によるバッテリ19の充電状態の検出方法は、特に限定されるものではない。
【0031】
充電実行部303は、充電状態検出部302の検出結果に基づいてエンジン13を適宜始動・停止させてジェネレータ26の発電によるバッテリ19の充電を実行し、バッテリ19の充電量(充電率)が所定範囲となるように適宜制御する。
【0032】
具体的には、充電実行部303は、充電状態検出部302によって検出されたバッテリ19の充電量が予め設定された始動閾値Ca以下になると、エンジン13を始動させてジェネレータ26の発電によるバッテリ19の充電を開始し、バッテリ19の充電量が停止閾値Cb(>Ca)以上になるとエンジン13を停止させて、ジェネレータ26の発電によるバッテリ19の充電を終了する(
図2参照)。
【0033】
ここで、始動閾値Caは、イグニッションオン時には初期値である第1始動閾値Ca1に設定され、停止閾値Cbは初期値である第1停止閾値Cb1に設定されている。例えば、第1始動閾値Ca1は充電量25%程度に設定され、第1停止閾値Cb1は充電量33%程度に設定されている。そして従来は、外気温に拘わらず、これら第1始動閾値Ca1及び第1停止閾値Cb1にて、バッテリ19の充電(エンジン13の駆動)が制御されていた。このように外気温に拘わらず、バッテリ19の充電をこれら第1始動閾値Ca1及び第1停止閾値Cb1にて制御していると、例えば、外気温が極低温の環境下では、冷態始動されたエンジン13が十分に暖機されずにバッテリ19の充電が終了してしまい、いわゆるオイルダイリューションが発生する虞がある。
【0034】
そこで本発明では、始動閾値Ca及び停止閾値Cbの少なくとも一方を、必要に応じて変更することで、バッテリ19の充電時におけるオイルダイリューションの発生を抑制している。
【0035】
詳しくは、閾値変更部304は、バッテリ19の充電を実行するか否かの判断基準となる充電量の閾値(始動閾値Ca、停止閾値Cb)を、外気温検出部301によって検出された外気温等の条件に応じて変更する。その際、閾値変更部304は、外気温検出部301によって検出された外気温が低いほど、始動閾値Caと停止閾値Cbとの差が大きくなるように、始動閾値Ca及び停止閾値Cbの少なくとも一方を変更する。
【0036】
例えば、
図4に示すように本実施形態では、閾値変更部304は、始動閾値Caを第1始動閾値Ca1のまま維持し、停止閾値Cbを第1停止閾値Cb1から第2停止閾値Cb2(>Cb1)に変更する。これにより、外気温が低いほど始動閾値Caと停止閾値Cbとの差Cdが大きくなるようにしている。
【0037】
また閾値変更部304は、外気温が予め設定された設定温度Te1よりも低い場合に、閾値の変更を行っている。例えば、
図5に示すように、閾値変更部304は、外気温が予め設定された設定温度Te1(例えば、0℃)以上である場合、停止閾値Cbを第1停止閾値Cb1に維持し、外気温が設定温度Te1よりも低い場合に、停止閾値Cbを第1停止閾値Cb1から外気温に応じた第2停止閾値Cb2に変更する。第2停止閾値Cb2は、外気温の低下に伴い所定の傾きで直線的に増加するように予め設定されている。
【0038】
このように外気温に応じて停止閾値Cbを変更することで、外気温が低いほど始動閾値Caと停止閾値Cbとの差Cdは大きくなる。それにより、バッテリ19の充電時における一回あたりのエンジン13の駆動時間(連続駆動時間)Taは、外気温が低いほど長くなる(
図4参照)。したがって、外気温に拘わらず、バッテリ19の充電時にエンジン13を十分に暖機することができ、オイルダイリューションの発生を抑制することができる。
【0039】
また本実施形態では、外気温が設定温度Te1よりも低い場合に停止閾値Cbを第1停止閾値Cb1から第2停止閾値Cb2に変更するようにしている。このため、オイルダイリューションの発生を抑制しつつ、不要なエンジン13の駆動を抑制することができる。
【0040】
外気温が設定温度Te1以上である場合、エンジン13は比較的暖まり易いため、バッテリ19の充電時、停止閾値Cbが第1停止閾値Cb1であってもエンジン13は適切に暖機され、オイルダイリューションの発生は少ない。言い換えれば、停止閾値Cbが第1停止閾値Cb1であっても、バッテリ19の充電時にエンジン13を適切に暖機できる程度の値に、設定温度Te1が適宜設定されている。
【0041】
したがって、外気温が設定温度Te1よりも低い場合に停止閾値Cbを変更することで、オイルダイリューションの発生を抑制しつつ、エンジン13での燃料使用量の削減を図ることができる。
【0042】
なお本実施形態では、設定温度Te1が0℃に設定されているが、設定温度Te1は、これに限定されるものではなく、エンジン13の特性等を考慮して適宜決定されればよい。
【0043】
ところで、閾値変更部304は、本実施形態ではさらに、エンジン状態判定部305によってエンジン13の状態が冷態であると判定された場合に、停止閾値Cbの変更を行っている。
【0044】
エンジン状態判定部305は、エンジン13の状態が冷態であるか温態であるかを判定する。車両10は、エンジンオイルの温度(油温)を検出する油温センサ104を備えており、エンジン状態判定部305は、この油温センサ104の計測結果に基づいてエンジン13の状態が冷態であるか否かを判定する。なお車両10がエンジン13の冷却水の温度(水温)を検出する水温センサを備えている場合、エンジン状態判定部305は、この水温センサの検出結果に基づいてエンジン13の状態を判定するようにしてもよい。
【0045】
本実施形態では、エンジン状態判定部305は、予め設定した閾値温度Te2を基準としてエンジン13の状態が冷態であるか否かを判定する。具体的には、エンジン状態判定部305は、油温センサ104から取得した油温が閾値温度Te2よりも低い場合にエンジン13の状態が冷態であると判定し、油温が閾値温度Te2以上である場合にはエンジン13の状態は冷態ではない、つまり温態(暖機が完了した状態)であると判定する。
【0046】
エンジン13の状態が温態であれば、外気温に拘わらずオイルダイリューションの発生は生じ難い。したがって、エンジン13の状態が冷態であると判定された場合に停止閾値Cbの変更を行うようにすることで、オイルダイリューションの発生を抑制しつつ、エンジン13での燃料使用量の削減を図ることができる。
【0047】
ここで、エンジン13の状態が冷態であるか否かを判定する閾値温度Te2は、常に一定の値であってもよいが、エンジン13の状態に応じて適宜変更するようにしてもよい。例えば、エンジン13の駆動状態の履歴を記憶しておき、その履歴に基づいて閾値温度Te2を適宜変更するようにしてもよい。
【0048】
例えば、所定時間内にエンジン13を始動させた履歴が無い場合(第1の状態)、エンジン13はかなり冷えた状態であり、エンジン13の温度は上昇し難い。このため、第1の状態における閾値温度Te2は、最も高い第1の温度(例えば、80℃程度)に設定することが好ましい。
【0049】
また、例えば、最後にイグニッションがオンにされた後にエンジン13の状態が温態となった履歴が存在する場合(第2の状態)、エンジン13の温度は第1の状態に比べて上昇し易い。このため、閾値温度Te2は、第1温度よりも低い第2温度(例えば、60℃程度)に変更することが好ましい。
【0050】
また、例えば、最後にイグニッションがオンにされる前の所定時間内にエンジン13が温態となった履歴が存在する場合(第3の状態)、エンジン13の温度は第2の状態よりも上昇し難いが、第1の状態よりも上昇し易い。このため、第3の状態における閾値温度Te2は、第1温度よりも低く且つ第2の温度よりも高い第3温度(例えば、65℃程度)に変更することが好ましい。
【0051】
このように閾値温度Te2をエンジン13の状態に応じて適宜変更することで、エンジン13の必要以上の駆動を抑制することができる。したがって、バッテリ19の充電時におけるオイルダイリューションの発生を抑制しつつ、エンジン13での燃料使用量の削減を図ることができる。
【0052】
さらに、このような第1の状態、第2の状態及び第3の状態において、第2停止閾値Cb2の傾きを変更することが好ましい。例えば、
図6に示すように、第1の状態では、第2停止閾値Cb2の傾きを最も大きくし、第2の状態では、第2停止閾値Cb2の傾きを第1の状態よりも小さくし、第3の状態では、第2停止閾値Cb2の傾きを第1の状態よりも小さく且つ第2の状態よりも大きくすることが好ましい。
【0053】
これによりバッテリ19の充電時におけるオイルダイリューションの発生を抑制しつつ、バッテリ19の充電時におけるエンジン13の駆動時間を短縮することができる。したがって、オイルダイリューションの発生を抑制しつつ、エンジン13での燃料使用量をさらに削減することができる。
【0054】
以下、
図7のフローチャートを参照し、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御、特に、バッテリの充電に関する制御についてさらに説明する。
【0055】
図7に示すように、EVモードでの車両10の走行が開始されると、まずはステップS1で外気温を検出し、外気温が設定温度Te1(例えば、0℃)よりも低いか否かを判定する。そして外気温が設定温度Te1よりも低い場合には(ステップS1:Yes)、ステップS2に進み、エンジン13の状態を判定する。すなわちステップS2ではエンジン13の状態が冷態であるか否かを判定する。
【0056】
例えば、上述のように油温センサ104から取得した油温が閾値温度Te2よりも低い場合にエンジン13の状態が冷態であると判定し、油温が閾値温度Te2以上である場合にはエンジン13の状態は冷態ではない、つまり温態(暖機が完了した状態)であると判定する。
【0057】
エンジン13が冷態である場合には(ステップS2:Yes)、ステップS3に進み、停止閾値Cbを適宜変更する。上述のように、停止閾値Cbを初期値である第1停止閾値Cb1から外気温に応じた第2停止閾値Cb2に変更する。その後、ステップS4に進む。
【0058】
なおステップS1にて、外気温が設定温度Te1以上である場合(ステップS1:No)及びエンジン13の状態が温態である場合(ステップS2:No)には、停止閾値Cbを第1停止閾値Cb1から第2停止閾値Cb2に変更することなく、第1停止閾値Cb1のまま維持して、ステップS4に進む。
【0059】
ステップS4では、バッテリ19の充電量(SOC)を検出し、次いでステップS5では、検出したバッテリ19の充電量が始動閾値Ca以下であるか否かを判定する。バッテリ19の充電量が始動閾値Ca以下である場合には(ステップS5:Yes)、ステップS6に進み、エンジン13を始動させてジェネレータ26の発電によるバッテリ19の充電を実行する。
【0060】
なおステップS5でバッテリ19の充電量が始動閾値Caよりも多い場合には(ステップS5:No)、ステップS4に戻り、バッテリ19の充電量が始動閾値Ca以下となった時点で(ステップS5:Yes)、ステップS6に進む。
【0061】
その後、ステップS7にてバッテリ19の充電量が停止閾値Cb以上であるかを判定し、バッテリ19の充電量が停止閾値Cb以上になると(ステップS7:Yes)、ステップS8に進みエンジン13を停止させてバッテリ19の充電を終了する。
【0062】
このように、バッテリ19の充電を実行する際、外気温が設定温度Te1よりも低い場合に停止閾値Cbを第1停止閾値Cb1から第2停止閾値Cb2に変更することで、バッテリ19の充電時間は外気温が低いほど長くなる。つまりエンジン13の駆動時間Taは外気温が低いほど長くなる。したがって、エンジン13を停止させる際、外気温に拘わらず、エンジン13の温度(エンジンオイルの温度)を十分に上昇させることができる。よって、バッテリ19の充電時におけるオイルダイリューションの発生を適切に抑制することができる。
【0063】
(実施形態2)
本実施形態は、バッテリの充電を実行する際に、エンジンを停止するタイミングが異なる以外は、実施形態1と同様である。以下では、実施形態1との相違点について説明し、重複する説明は省略する。
【0064】
図8は、実施形態2に係るハイブリッド車両の制御装置を示すブロック図であり、
図9は、実施形態2に係るハイブリッド車両の制御、特に、バッテリの充電に関する制御を説明するフローチャートである。
【0065】
図8に示すように、本実施形態に係る制御装置30を構成する充電制御部300は、燃料残量検出部306をさらに備えている。
【0066】
燃料残量検出部306は、燃料タンク24内の燃料残量を検出する。本実施形態では、車両10が、燃料タンク24内に設けられて燃料残量を計測する燃料レベルセンサ105を備えており、燃料残量検出部306は、所定のタイミングで、燃料レベルセンサ105の計測結果を取得する。
【0067】
そして充電実行部303は、この燃料残量検出部306の検出結果に基づいて、バッテリ19の充電を停止するタイミングを適宜調整する。
【0068】
充電実行部303は、実施形態1と同様に、基本的には、バッテリ19の充電量が始動閾値Ca以下になると、エンジン13を始動させてジェネレータ26の発電によるバッテリ19の充電を開始し、バッテリ19の充電量が停止閾値Cb以上になるとエンジン13を停止させて、ジェネレータ26の発電によるバッテリ19の充電を終了する。
【0069】
さらに本実施形態では、充電実行部303は、バッテリ19の充電を実行してバッテリ19の充電量が停止閾値Cb以上になった際、エンジン13の状態が冷態である場合、或いはエンジン13の状態が冷態であると推定される場合には、エンジン13の状態が温態となるまで、或いはエンジン13の状態が温態となったと推定されるまで、バッテリ19の充電を継続して実行する。
【0070】
すなわち充電実行部303は、バッテリ19の充電量が停止閾値Cb以上になった際、エンジン13が十分に暖機されておらずエンジンオイルに混入した燃料が十分に蒸散していないと推定される場合には、燃料が十分に蒸散されたと推定されるまでバッテリ19の充電を継続して実行する。
【0071】
本実施形態では、充電実行部303は、バッテリ19の充電を開始すると、エンジン13の駆動時間(連続駆動時間)Taを計測し、バッテリ19の充電量が停止閾値Cb以上となった際、エンジン13の駆動時間Taが、予め設定された最小駆動時間Tmin(例えば、10分程度)よりも短い場合、エンジン13の状態は冷態であると判断する。すなわちエンジンオイルに混入した燃料が十分に蒸散していないと判断する。そして充電実行部303は、燃料残量が残量閾値以上であれば、エンジン13の駆動を継続する。
【0072】
実施形態1で説明したように、閾値変更部304は、外気温に応じて停止閾値Cbを適宜変更しているため、バッテリ19の充電量が停止閾値Cb以上になった際には、エンジン13の状態は基本的には温態となっている。しかしながら、車両10の周囲の環境によっては、バッテリ19の充電量が停止閾値Cb以上になった際に、エンジン13の温度が十分に上昇していないことも考えられる。
【0073】
本実施形態の構成によれば、このような場合でも、エンジン13の状態を確実に温態とすることができ、バッテリ19の充電時におけるオイルダイリューションの発生を適切に抑制することができる。さらに、燃料タンク24内の燃料残量を検出し、燃料残量が残量閾値以上である場合にバッテリ19の充電を継続して実行するようにしているため、燃料不足が生じることもない。なお残量閾値は、適宜決定されればよいが、例えば、タンク容量の1/3程度の量に設定されていることが好ましい。
【0074】
以下、
図9のフローチャートを参照し、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御、特に、バッテリの充電に関する制御についてさらに説明する。なおステップS1~ステップS7及びステップS8は実施形態1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0075】
図9に示すように、ステップS7にてバッテリ19の充電量が停止閾値Cb以上である場合には(ステップS7:Yes)、ステップS11に進み、エンジン13の駆動時間Taが最小駆動時間Tmin以上であるか否かを判定する。ここで、エンジン13の駆動時間Taが最小駆動時間Tmin以上である場合には(ステップS11:Yes)、ステップS8に進み、エンジン13を停止してバッテリ19の充電を終了する。
【0076】
一方、エンジン13の駆動時間Taが最小駆動時間Tminよりも短い場合には(ステップS11:No)、ステップS12に進み、燃料タンク24内の燃料残量が閾値残量以上であるか否かを判定する。そして燃料残量が残量閾値以上である場合(ステップS12:Yes)、エンジン13の駆動を継続し、エンジン13の駆動時間Taが最小駆動時間Tminに達した時点で(ステップS11:Yes)、ステップS8に進み、エンジン13を停止してバッテリ19の充電を終了する。
【0077】
このような本実施形態によれば、バッテリ19の充電時におけるオイルダイリューションの発生をより確実に抑制することができる。
【0078】
なお本実施形態では、エンジン13の駆動時間に基づいてエンジン13を停止するタイミングを決定したが、例えば、エンジン13の温度(エンジンオイルの油温、冷却水の水温)等に基づいてエンジン13を停止するタイミングを決定してもよい。
【0079】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、外気温が低いほど始動閾値と停止閾値との差が大きくなるように、停止閾値を変更するようにしたが、始動閾値を変更するようにしてもよい。すなわち、外気温が低いほど始動閾値を低い値に変更することで、外気温が低いほど始動閾値と停止閾値との差が大きくなるようにしてもよい。ただし、この場合、始動閾値の初期値は、上述の実施形態の場合よりも高い値に設定しておくことが好ましい。勿論、外気温が低いほど停止閾値を高い値に変更すると共に、始動閾値を低い値に変更するようにしてもよい。
【0080】
さらには、外気温が低いほど停止閾値を高い値に変更する場合、外気温が低いほど始動閾値を高い値に変更するようにしてもよい。ただし、始動閾値の変更量は、停止閾値の変更量よりも小さくする。
【0081】
この場合でも、外気温が低いほど始動閾値と停止閾値との差が大きくなるため、上述の実施形態と同様に、オイルダイリューションの発生を抑制することができる。また外気温が低いほどバッテリの出力が減少してエンジンの始動性が低下する虞があるが、外気温が低いほど始動閾値を高めることで、外気温に拘わらずエンジンの始動性を良好に維持することができる。
【0082】
また例えば、上述の実施形態では、ハイブリッド車両がガソリンエンジンを備える構成を例示したが、ハイブリッド車両はディーゼルエンジンを備える構成であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 車両(ハイブリッド車両)
11 フロントモータ
12 リアモータ
13 エンジン
14 前駆動伝達機構
15 前輪
16 後駆動伝達機構
17 後輪
18 フロントモータインバータ
19 バッテリ
20 リアモータインバータ
24 燃料タンク
25 出力系
26 ジェネレータ(発電機)
27 ジェネレータインバータ
28 クラッチ
30 制御装置
101 外気温センサ
102 電圧センサ
103 電流センサ
104 油温センサ
105 燃料レベルセンサ
300 充電制御部
301 外気温検出部
302 充電状態検出部
303 充電実行部
304 閾値変更部
305 エンジン状態判定部
306 燃料残量検出部