(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】電池パックの異常検出装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231109BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20231109BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231109BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20231109BHJP
G01R 31/3835 20190101ALI20231109BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/42 P
H02J7/00 Y
H02H7/18
G01R31/3835
(21)【出願番号】P 2019125518
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】八木下 幸成
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】岸川 武
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久貴
(72)【発明者】
【氏名】石本 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸治
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩真
(72)【発明者】
【氏名】中尾 允俊
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143635(JP,A)
【文献】特開2008-021417(JP,A)
【文献】特開2012-095411(JP,A)
【文献】特開2014-158508(JP,A)
【文献】特開2020-136224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02H7/00
H02H7/10-7/20
G01R31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが電池ケース内に収容された電池パックにおける異常を検出する異常検出装置であって、
複数の前記電池セルの電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段の検出結果に基づいて、前記電池パックでの熱連鎖の発生を検出する熱連鎖検出手段と、を備え、
前記熱連鎖検出手段は、複数の前記電池セルのうちの一つで急峻な電圧低下を検出した後、予め設定された第1の時間内に他の電池セルの少なくとも一つで急峻な電圧低下を検出した場合に、前記電池パックで熱連鎖が発生していると判定する
ことを特徴とする電池パックの異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックの異常検出装置であって、
前記熱連鎖検出手段は、複数の前記電池セルで急峻な電圧低下を検出した際、電圧低下を検出した各電池セルにおいて電圧低下が継続している場合に、前記電池パックで熱連鎖が生じていると判定する
ことを特徴とする電池パックの異常検出装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の電池パックの異常検出装置であって、
前記電池セルが、内圧の上昇により開弁する安全弁を備えている場合、
前記熱連鎖検出手段は、前記安全弁が閉弁している状態で前記電池セルの急峻な電圧低下を検出したことを条件に、前記電池パックで熱連鎖が発生していると判定する
ことを特徴とする電池パックの異常検出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の電池パックの異常検出装置であって、
前記熱連鎖検出手段によって熱連鎖の発生が検出された場合に、その旨を乗員に報知する報知手段を、備えている
ことを特徴とする電池パックの異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が備える電池パックの異常(特に、熱連鎖)を検出する電池パックの異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機(モータ)を動力源として備える電気自動車やハイブリッド車等の電動車両には、電動機に電力を供給するための電池パックが搭載されている。電池パックは、複数の電池セルと、これら複数の電池セルを収容するケースとを備えており、各電池セルはケース内で電気的に接続されている。
【0003】
各電池セルの構造は様々あるが、例えば、正極板、負極板及びセパレータを含む発電要素を電解液と共に容器内に収容し、この容器を蓋部材によって密閉するようにしたものがある。このような電池セルにおいては、例えば、容器内に金属ごみ等の異物が混入していると、この異物によって内部短絡(ショート)が発生してしまう虞がある。
【0004】
内部短絡が生じると、容器内の温度が上昇すると共にガスが発生し、容器内の圧力が上昇してしまうことがある。このため電池セルには、一般的に、容器内の圧力が所定値まで上昇すると開弁する安全弁が設けられ、圧力上昇による破裂を抑制している。
【0005】
また、複数の電池セルが容器内に密封されている電池パックにおいては、内部短絡に伴い安全弁が開弁すると、その電池セルの熱の影響を受けて、隣接する正常な電池セルでも内圧が上昇して安全弁が開弁してしまうといった状況(いわゆる熱連鎖)に陥る虞がある。このため、電池パックにおいては各電池セルの異常(安全弁の開弁)を適切に検出し、早期に対処することが好ましい。
【0006】
電池セルにおける安全弁の開弁(内部圧力の上昇)を検出するための技術は様々提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の技術では、電池セルの容器(外装)の一部(例えば、安全弁)に薄肉部が設けられており、容器内の圧力上昇に伴い変形する薄肉部の変形を歪みセンサ等によって検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のように安全弁(薄肉部)の変形を歪みセンサ等で検出することにより、内圧の上昇を検出することができ、また安全弁の開弁も検出することができる。このような内圧の上昇や安全弁の開弁を検出することで、熱連鎖の発生を検出することもできる。
【0009】
しかしながら、例えば、電池パック(電池セル)の構造によっては、安全弁に対して歪みセンサ等を設けることができない場合もあり、熱連鎖の発生をより適切に検出できる技術の開発が望まれている。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、熱連鎖の発生を適切に検出できる電池パックの異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、複数の電池セルが電池ケース内に収容された電池パックにおける異常を検出する異常検出装置であって、複数の前記電池セルの電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段の検出結果に基づいて、前記電池パックでの熱連鎖の発生を検出する熱連鎖検出手段と、を備え、前記熱連鎖検出手段は、複数の前記電池セルのうちの一つで急峻な電圧低下を検出した後、予め設定された第1の時間内に他の電池セルの少なくとも一つで急峻な電圧低下を検出した場合に、前記電池パックで熱連鎖が発生していると判定することを特徴とする電池パックの異常検出装置にある。
【0012】
ここで、前記熱連鎖検出手段は、前記電池セルの一つで急峻な電圧低下を検出してから、予め設定された第2の時間が経過した後に、他の電池セルの少なくとも一つで急峻な電圧低下を検出した場合に、前記電池パックで熱連鎖が生じていると判定することを特徴とする電池パックの異常検出装置にある。
【0013】
また前記熱連鎖検出手段は、複数の前記電池セルで急峻な電圧低下を検出した際、電圧低下を検出した各電池セルにおいて電圧低下が継続している場合に、前記電池パックで熱連鎖が生じていると判定することが好ましい。
【0014】
また前記電池セルが、内圧の上昇により開弁する安全弁を備えている場合、前記熱連鎖検出手段は、前記安全弁が閉弁している状態で前記電池セルの急峻な電圧低下を検出したことを条件に、前記電池パックで熱連鎖が発生していると判定することが好ましい。
【0015】
また前記熱連鎖検出手段によって熱連鎖の発生が検出された場合に、その旨を乗員に報知する報知手段を、備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電池パックの異常検出装置によれば、電池パックにおける熱連鎖の発生を適切に検出することができる。また熱連鎖の発生を早期に検出することができる。したがって、電池パックで熱連鎖が発生した際、乗員は早期に適切な対処をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】電池パックの使用態様の一例を示す図である。
【
図3】電池パックが備える電池モジュールの概略構成を示す斜視図である。
【
図4】電池モジュールを構成する電池セルの外観を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る異常検出装置の概略構成を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る異常検出装置の概略構成を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、電池パックの使用態様の一例を示す図であり、
図2は、電池パックの概略構成を示す斜視図である。
図3は、電池パックが備える電池モジュールの概略構成を示す斜視図であり、
図4は、電池モジュールを構成する電池セルの外観を示す図である。また
図5は、本実施形態に係る異常検出装置の概略構成を示す図である。
【0019】
本発明に係る異常検出装置は、電動車両に搭載された電池パックに設けられ、電池パックの異常、具体的には、電池パックにおける熱連鎖の発生を検出する。異常検出装置について説明する前に、まずは異常検出装置が設けられる電池パックの構成について簡単に説明する。
【0020】
図1に示す車両1は、例えば、電気自動車やハイブリッド車両等の電動車両であり、図示しないモータ(電動機)に電力を供給するための電池パック10が搭載されている。
【0021】
電池パック10は、
図2に示すように、パックトレイ11及びパックカバー12とで構成される電池ケース13と、この電池ケース13内に収容される電池モジュール20と、を備えている。
【0022】
電池ケース13内には、
図2及び
図3に示すように、電池モジュール20が複数収容されており、各電池モジュール20は、近接して並設された複数の電池セル(二次電池)30を備えている。これらの電池セル30は、図示は省略するがバスバー等によって直列に接続されている。なお電池モジュール20が備える電池セル30の数は、特に限定されるものではない。
【0023】
各電池セル30は、例えば、リチウムイオン電池等の密閉型の二次電池であり、
図4に示すように、容器31と、容器31を封止する蓋部材32と、を備えている。容器31の内部には、正極板、負極板及びセパレータを含む電極体(発電要素)が電解液と共に収容されている。また電極体は、公知の構造であるため、ここでの説明は省略する。
【0024】
蓋部材32には、容器31内に収容された電極体の正極板又は負極板にそれぞれ接続される正極端子部材33及び負極端子部材34が設けられている。蓋部材32にはさらに、これら正極端子部材33及び負極端子部材34間に安全弁35が設けられている。
【0025】
安全弁35は、蓋部材32の他の部分よりも相対的に脆弱に形成されており、例えば、容器31内で内部短絡(ショート)が生じた際等に、容器31の内圧が所定値に達すると開弁するように構成されている。これにより容器31の内圧が上昇した場合でも、容器31内のガスが開弁した安全弁35から外部に噴出する。したがって、内圧の上昇による容器31の破裂を抑制することができる。
【0026】
そして、本実施形態に係る異常検出装置100は、このような電池パック10に設けられて、電池パック10の異常として熱連鎖の発生を検出する。詳しくは以下に説明するが、異常検出装置100は、電池セル30にて急峻な電圧低下が検出された場合に、その電圧低下に基づいて熱連鎖の発生の有無を判定するようにした点に特徴がある。
【0027】
図5に示すように、異常検出装置100は、本実施形態では、各電池セル30の電圧(セル電圧)をそれぞれ検出する複数の電圧センサ110と、熱連鎖の発生を検出する熱連鎖検出手段を含む制御部120と、熱連鎖が発生した際に乗員に対する警告を行う警告報知部130と、備えている。
【0028】
なお電圧センサ110の構成は特に限定されず、各電池セル30の電圧を検出できるものであればよい。また警告報知部130は、例えば、警告ランプ等で構成され、熱連鎖の発生が検出された際に、警告ランプを点滅あるいは点灯させることで乗員に対する警告報知を行う。警告報知部130は、熱連鎖が発生していることを乗員に対して報知することができるものであればよく、例えば、画像や音声によって報知する構成であってもよい。
【0029】
制御部120は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されている。そして制御部120には、各電池セル30に設けられた電圧センサ110のそれぞれと、例えば、警告ランプ等で構成される警告報知部130と、が接続されている。
【0030】
制御部120は、電圧検出手段121と、熱連鎖検出手段122と、報知手段123と、を備えている。
【0031】
電圧検出手段121は、電池パック10が備える各電池セル30の電圧を検出する。本実施形態では、電圧検出手段121は、各電池セル30に設けられた電圧センサ110で計測された電圧情報を適宜取得して記録する。
【0032】
熱連鎖検出手段122は、電圧検出手段121の検出結果に基づいて、電池パック10での熱連鎖の発生を検出する。具体的には、熱連鎖検出手段122は、複数の電池セル30のうちの一つで急峻な電圧低下を検出した後、予め設定された第1の時間T1内に他の電池セル30の少なくとも一つで急峻な電圧低下を検出した場合に、電池パック10で熱連鎖が発生していると判定する。
【0033】
すなわち熱連鎖検出手段122は、第1の時間T1(例えば、1時間程度)内に複数の電池セル30にて、急峻な電圧低下が検出された場合に、電池パック10で熱連鎖が発生していると判定する。
【0034】
このように複数の電池セル30での急峻な電圧低下に基づいて、電池パック10での熱連鎖の発生の有無を判定することで、判定の正確性を向上することができる。
【0035】
電池パック10で熱連鎖以外の異常が生じた場合でも、電池セル30の電圧低下が生じることはある。このため、単なる電池セル30の電圧低下に基づいて熱連鎖を正確に検出することは難しい。しかしながら、上述のように第1の時間T1内に複数の電池セル30にて急峻な電圧低下が検出されている場合、電池パック10で熱連鎖が発生している可能性が高い。したがって、上述のように複数の電池セル30での急峻な電圧低下に基づく判定を行うことで、電池パック10における熱連鎖の発生を適切に検出することができる。
【0036】
ここで、電池セル30での急峻な電圧低下とは、電池セル30の電圧が比較的短時間で0(V)付近まで低下することをいう。本実施形態では、電池セル30の電圧Vaが、予め設定された第2の時間T2(例えば、5~10秒程度)内に、予め設定された第1の電圧V1以下まで低下している場合(電圧Vaが0(V)付近まで低下している場合)に、熱連鎖検出手段122は、電池セル30の急峻な電圧低下が生じたと判断する。
【0037】
なお第1の時間T1は、電池パック10(電池セル30)の性能等を考慮して適宜設定されればよく、特に限定されるものではない。また第2の時間T2も、特に限定されず、電池パック10(電池セル30)の性能等を考慮して適宜設定されればよい。
【0038】
また熱連鎖検出手段122は、電池セル30の一つで急峻な電圧低下を検出してから、予め設定された第3の時間T3(<T1)が経過した後に、他の電池セル30の少なくとも一つで急峻な電圧低下を検出した場合に、電池パック10で熱連鎖が生じていると判定することが好ましい。これにより、熱連鎖の発生をより正確に検出することができる。
【0039】
熱連鎖により複数の電池セル30での急峻な電圧低下が生じる場合、一つの電池セル30での電圧低下が生じてから次の電池セル30で電圧低下が生じるまで、ある程度の時間を要する。言い換えれば、複数の電池セル30での電圧低下が、ほぼ同時に発生している場合には、その電圧低下は熱連鎖によるものではないと判断することができる。
【0040】
したがって、上述のように電池セル30の一つで急峻な電圧低下を検出してから第3の時間T3(<T1)が経過した後に、他の電池セル30で急峻な電圧低下を検出したことを条件に、電池パック10で熱連鎖が生じていると判定することで、熱連鎖の発生をより正確に検出することができる。
【0041】
また熱連鎖検出手段122は、複数の電池セル30で急峻な電圧低下を検出した際、電圧低下を検出した各電池セル30において電圧低下が継続している場合に、電池パック10で熱連鎖が生じていると判定することが好ましい。これにより、熱連鎖の発生の有無をさらに正確に判定することができる。
【0042】
例えば、電池セル30の電圧は、一時的な異常により低下することも考えられ、その場合、時間の経過に伴って電圧は上昇する(回復する)。これに対し、熱連鎖により電池セル30の急峻な電圧低下が生じた場合、電池セル30の電圧がその後に上昇(回復)することはない。言い換えれば、電池セル30の電圧が低下したとしても、その後に上昇(回復)した場合、電池パック10で熱連鎖は発生していないと判断できる。
【0043】
したがって、上述のように電圧低下が検出された各電池セル30において電圧低下が継続していることを条件に、電池パック10で熱連鎖が生じていると判定することで、熱連鎖の発生の有無をさらに正確に判定することができる。
【0044】
さらに熱連鎖検出手段122は、電池セル30の安全弁35が閉弁している状態で電池セル30の急峻な電圧低下を検出した場合に、電池パック10で熱連鎖が発生していると判定することが好ましい。言い換えれば、本実施形態に係る異常検出装置100は、電池セル30の安全弁35が閉弁している状態であっても、電池セル30の急峻な電圧低下に基づいて、電池パック10での熱連鎖の発生を適切且つ早期に検出することができる。
【0045】
電池セル30の安全弁35が開弁した場合、電池セル30の急峻な電圧低下を検出するまでもなく、電池セル30の熱連鎖の発生を容易に検出することができるが、安全弁35が閉弁している状態では、熱連鎖の発生を検出することが難しい。
【0046】
しかしながら、上述のように電池セル30の急峻な電圧低下に基づいて電池パック10での熱連鎖の発生の有無を判定することで、電池セル30の安全弁が閉弁している状態であっても、電池パック10での熱連鎖の発生を適切且つ早期に検出することができる。
【0047】
報知手段123は、熱連鎖検出手段122によって電池パック10での熱連鎖の発生が検出された場合に、そのことを乗員(運転者)に対して報知(警告)する。報知手段123は、例えば、警告ランプ(警告報知部)130を点灯・点滅させることで、電池パック10で熱連鎖が発生していることを、乗員に対して報知する。
【0048】
このように本実施形態に係る異常検出装置100によれば、電池パック10における熱連鎖の発生を適切且つ早期に検出することができる。したがって、車両1の乗員は、電池パック10において熱連鎖が発生した際に、早期に適切な対応をとることができるようになる。
【0049】
ここで、
図6のフローチャートを参照して、本実施形態に係る異常検出装置100による異常検出制御の一例について説明する。より詳細には、電池セル30の安全弁35が閉弁している状態で、熱連鎖検出手段122が電池パック10の熱連鎖を検出する際の制御の一例について説明する。
【0050】
例えば、電池パック10からモータへの電力供給が開始されると、異常検出装置100は、
図6に示すように、まずステップS1で各電池セル30の電圧(セル電圧)Vaの検出を開始する。ステップS2で、複数の電池セル30の何れか一つで急峻な電圧低下が発生しているか否かを判定する。例えば、上述のように、セル電圧Vaが、第2の時間T2内に第1の電圧V1以下まで低下した場合に、電池セル30で急峻な電圧低下が生じていると判定する。
【0051】
ここで、何れの電池セル30においても急峻な電圧低下が発生していない場合には(ステップS2:No)、ステップS1に戻り、セル電圧Vaの検出を継続する。一方、電池セル30の一つで急峻な電圧低下が発生していると判定された場合(ステップS2:Yes)、ステップS3に進み、電池セル30での急峻な電圧低下を検出した時点からの経過時間Taの計測を開始する。
【0052】
次いで、ステップS4で、他の電池セル30での急峻な電圧低下が発生しているか否かを判定する。ステップS4にて、他の電池セル30での急峻な電圧低下が発生していないと判定された場合には(ステップS4:No)、ステップS3に戻り、経過時間Taの計測を継続する。
【0053】
一方、他の電池セル30で急峻な電圧低下が発生したと判定された場合には(ステップS4:Yes)、ステップS5に進み、経過時間Taが第1の時間T1以内であるか否かを判定する。経過時間Taが第1の時間T1以内であれば(ステップS5:Yes)、ステップS6に進み、さらに二つの電池セル30での電圧低下が発生した時間差Tdが、上述した第3の時間T3(<T1)以上であるか否かを判定する。
【0054】
ステップS6にて、時間差Tdが第3の時間T3以上である場合には(ステップS6:Yes)、ステップS7に進み、電圧低下が検出された各電池セル30において、電圧低下が継続しているか否かを判定する。そして各電池セル30において電圧低下が継続している場合には(ステップS7:Yes)、熱連鎖検出手段122が電池パック10で熱連鎖が発生していると判断する。そして、ステップS8にて、電池パック10で熱連鎖が発生している旨を乗員に対して報知し、一連の処理を終了する。
【0055】
なおステップS5にて経過時間Taが第1の時間T1を超えた場合(ステップS5:No)、ステップS6にて時間差Tdが第3の時間T3よりも短い場合(ステップS6:No)、ステップS7にて各電池セル30において電圧低下が継続していない場合(ステップS7:No)には、熱連鎖検出手段122は電池パック10で熱連鎖が発生していないと判断する。すなわち、電池パック10では、熱連鎖以外の何らかの異常が生じているものと判断する。そして、ステップS9にて、電池パック10にて熱連鎖以外の何らかの異常が生じている旨を乗員に対して報知し、一連の処理を終了する。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、第1の時間内に2つの電池セルで急峻な電圧低下を検出した場合に、電池パックで熱連鎖が発生していると判定する例を説明したが、判定条件はこれに限定されるものではない。例えば、第1の時間内に3つ以上の電池セルで急峻な電圧低下を検出した場合に、電池パックで熱連鎖が発生していると判定するようにしてもよい。
【0058】
また上述の実施形態では、熱連鎖検出手段は、制御装置の一機能(プログラム)として実装されたが、このような態様に限定されない。熱連鎖検出手段は、例えば、同等の機能を果たす電子回路として実装されていてもよいし、制御装置と通信可能なサーバ装置に実装されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 車両
10 電池パック
11 パックトレイ
12 パックカバー
13 電池ケース
20 電池モジュール
30 電池セル
31 容器
32 蓋部材
33 正極端子部材
34 負極端子部材
35 安全弁
100 異常検出装置
110 電圧センサ
120 制御部
121 電圧検出手段
122 熱連鎖検出手段
123 報知手段
130 警告報知部