IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ハイブリッド車両の制御装置 図1
  • 特許-ハイブリッド車両の制御装置 図2
  • 特許-ハイブリッド車両の制御装置 図3
  • 特許-ハイブリッド車両の制御装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/02 20060101AFI20231109BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20231109BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20231109BHJP
   B60W 20/10 20160101ALI20231109BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20231109BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20231109BHJP
【FI】
B60W10/02 900
B60K6/44 ZHV
B60W10/06 900
B60W20/10
F02D29/06 D
B60L50/16
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019131404
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021014242
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】川越 雅典
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030506(JP,A)
【文献】特開2001-263388(JP,A)
【文献】特開2011-016390(JP,A)
【文献】特開2014-084815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
F02D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪に駆動力を伝える電動モータと、
発電機に駆動力を伝えると共に、断接により動力の伝達が制御され、接状態にされて動力が伝達される状態が、動力伝達手段であるクラッチを動作させることで前記駆動輪に駆動力を伝えるエンジンと、
前記動力伝達手段の動作を制御することで、前記電動モータによる前記駆動輪の駆動、前記電動モータ及び前記エンジンによる前記駆動輪の駆動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記電動モータにより前記駆動輪に駆動力を伝えている状態から、前記エンジンを始動して、前記電動モータ及び前記エンジンにより前記駆動輪に駆動力を伝える状態に切り替える際に、前記駆動輪側の速度と前記エンジン側の速度の差が所定値以下になった後、車両の加速に使われるトルクを一定に保つために、前記エンジン側のトルクを用いて前記エンジン側の速度を加速させ、前記エンジン側の加速度を前記駆動輪側の加速度に近づけた後に、前記クラッチを断状態から接状態に動作させる
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行用モータ(電動モータ)で駆動輪を駆動させると共に、電動モータとエンジンとを組み合わせて車両の駆動力を得るようにしたハイブリッド車両が実用化されている(特許文献1参照)。ハイブリッド車両は、電動モータだけで駆動力を得るEVモード、電動モータ、及び、エンジンにより駆動力を得るパラレルモードを有している。また、電動モータで駆動力を得ると共に、エンジンにより発電駆動力を得るシリーズモードを有している。
【0003】
EVモードからパラレルモードに切り替えられる場合、クラッチを接続することによりエンジンの駆動力を駆動輪に伝える構成になっている。このため、パラレルモードへの切り替え時には、電動モータによる駆動輪側の回転速度と、エンジン側からの回転速度とを近似させてクラッチを接続し、トルクの急変を抑制している。
【0004】
パラレルモードへの切り替え時には、電動モータによる駆動輪側の回転速度と、エンジン側からの回転速度とを近似させてクラッチを接続して、ショックを抑制するようにしている。しかし、例えば、車両の加速時にクラッチを接続してエンジンの駆動力を駆動輪に伝える時に、電動モータの駆動力が低下してトルクが急激に減少する虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-98322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、電動モータにより駆動力を得ている運転中(加速運転中)における、電動モータ、及び、エンジンにより駆動力を得る運転への切り替え時に、エンジンを接続することによる電動モータの駆動力の低下をなくした状態で、エンジンを接続することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明のハイブリッド車両の制御装置は、駆動輪に駆動力を伝える電動モータと、発電機に駆動力を伝えると共に、断接により動力の伝達が制御され、接状態にされて動力が伝達される状態が、動力伝達手段であるクラッチを動作させることで前記駆動輪に駆動力を伝えるエンジンと、前記動力伝達手段の動作を制御することで、前記電動モータによる前記駆動輪の駆動、前記電動モータ及び前記エンジンによる前記駆動輪の駆動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記電動モータにより前記駆動輪に駆動力を伝えている状態から、前記エンジンを始動して、前記電動モータ及び前記エンジンにより前記駆動輪に駆動力を伝える状態に切り替える際に、前記駆動輪側の速度と前記エンジン側の速度の差が所定値以下になった後、車両の加速に使われるトルクを一定に保つために、前記エンジン側のトルクを用いて前記エンジン側の速度を加速させ、前記エンジン側の加速度を前記駆動輪側の加速度に近づけた後に、前記クラッチを断状態から接状態に動作させることを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、電動モータにより駆動力を得ている運転中(加速運転中)に、動力伝達手段を動作させてエンジンにより駆動輪に駆動力を伝える際に、駆動輪側の速度とエンジン側の速度の差が所定値以下になった後、エンジン側のトルクを用いてエンジン側を加速させるので、エンジン側の加速度を駆動輪側の加速度に近づけて駆動輪にエンジンの駆動力を伝えることができる。
そして、クラッチを用いて、エンジンの接続を制御することができ、クラッチを接続することで、エンジンの駆動力を駆動輪に伝えることができる。
【0009】
このため、電動モータにより駆動力を得ている運転中(加速運転中)における、電動モータ、及び、エンジンにより駆動力を得る運転への切り替え時に、エンジンを接続することによる電動モータの駆動力の低下を抑制した状態(なくした状態)で、エンジンを接続することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハイブリッド車両の制御装置は、電動モータにより駆動力を得ている運転中(加速運転中)における、電動モータ、及び、エンジンにより駆動力を得る運転への切り替え時に、エンジンを接続することによる電動モータの駆動力の低下をなくした状態で、エンジンを接続することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例に係る制御装置が搭載されたハイブリッド車両の概略構成図である。
図2】制御装置のブロック構成図である。
図3】運転状態の切替え時のフローチャートである。
図4】運転状態の切替え動作のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には本発明の一実施例に係る制御装置が搭載されたハイブリッド車両の全体の概略構成、図2には制御装置の機能を説明するブロック構成を示してある。
【0017】
図1に示すように、ハイブリッド車両(車両)1の駆動輪2には、電動モータ3、及び、エンジン4の駆動力が伝えられるようになっている。電動モータ3の駆動力は伝達機構5を介して駆動輪2に伝達される。乗員のペダル操作に応じた電力が図示しないバッテリから電動モータ3に供給され、駆動輪2に駆動力が伝えられる(EVモード)。
【0018】
エンジン4には発電機6が接続され、発電機6は図示しないバッテリに接続されている。そして、エンジン4は、動力伝達手段としてのクラッチ11を介して伝達機構5に接続されている。EVモードの状態で、クラッチ11を動作させる(断状態から接状態に動作させる)ことにより、エンジン4から駆動輪2に駆動力が伝達される(パラレルモード)。
【0019】
車両1には各種装置を総括的に制御する制御装置12が設けられ、クラッチ11を挟んだ、電動モータ3による回転速度の状況Vm(下流側のクラッチの速度:下流速度Vm)、エンジン4による回転速度の状況Ve(上流側のクラッチの速度:上流速度Ve)、車速センサー13の情報が入力される。
【0020】
そして、制御装置12には運転モード(EVモード、パラレルモード)の指令が入力され、エンジン4、クラッチ11に動作の指令が出力される。それぞれの運転モードは、車両1の走行状態に応じて適宜選択されて切替えられる。
【0021】
図2に示すように、制御装置12には、電動モータ3の運転を制御するモータ運転機能21と、エンジン4の運転を制御するエンジン運転機能22を有している。また、下流速度Vm、上流速度Veを比較する比較機能23、エンジン4を加速させる加速機能24、クラッチ11を動作させるクラッチ操作機能25を有している。
【0022】
EVモードからパラレルモードに切り替えられる場合(モータ運転機能21、エンジン運転機能22)、クラッチ11を接続する(接状態に動作させる)ことにより、エンジン4の駆動力を駆動輪2に伝えるようになっている。パラレルモードへの切り替え時には、電動モータ3による駆動輪2側の回転速度(下流速度Vm)と、エンジン4側からの回転速度(上流速度Ve)とを近似させてクラッチ11を接続し、トルクの急変を抑制している。
【0023】
この場合、クラッチ11の接続時に、電動モータ3の駆動力が低下して、トルクが急激に減少する虞があった。このため、クラッチ11を動作させる際に(接状態に動作させる際に)、エンジン4を始動して下流速度Vmと上流速度Veが近似した後に(比較機能23)、エンジン4側のトルクを用いてエンジン側を加速させて(加速機能24)、クラッチ11を接状態に動作させるようにしている(クラッチ操作機能25)。
【0024】
このため、エンジン4側の速度を加速させるので、エンジン4側の加速度を駆動輪2側の加速度に近づけて駆動輪2にエンジン4の駆動力を伝えることができる。従って、電動モータにより駆動力を得ている運転中(加速運転中)における、EVモードからパラレルモードへの切り替え時に、エンジン4を接続することによる電動モータ3の駆動力の低下をなくした状態で、エンジン4を接続することが可能になる。つまり、急激なトルクの低下を無くすことが可能になる。
【0025】
図3図4に基づいてパラレルモードへの切り替えの状況を具体的に説明する。図3には切替え時のフローチャート、図4には切替え動作のタイムチャートを示してある。
【0026】
図3に示すように、ステップS1でエンジン4が始動され、ステップS2で上流速度Ve、及び、下流速度Vmが読み込まれる。ステップS3で上流速度Veと下流速度Vmの差(上流速度Ve-下流速度Vm)が所定値Vb以下になったか否かが判断される。
【0027】
即ち、図4(d)に示すように、EVモードの運転時に加速され、時刻t1でエンジン4が始動される。時刻t2でエンジン4が減速される。図4(b)に実線で示すように、下流速度Vmは一定の加速度で上昇し、図4(b)に点線で示すように、上流速度Veは上昇して下流速度Vmよりも高くなった後に低下する。そして、時刻t3で下流速度Vmと上流速度Veの差が所定値Vbとなる。
【0028】
図4(a)に示すように、時刻t1から時刻t3までのエンジン4の回転速度は、上流側のクラッチの速度(上流速度Ve)と同様に、上昇した後に低下し、時刻t1から時刻t3までのトルクの状況は、図4(c)に示すように、一定となっている。
【0029】
図3に示すように、ステップS3で上流速度Veと下流速度Vmの差(上流速度Ve-下流速度Vm)が所定値Vb以下になったと判断された場合(時刻t3)、ステップS4でエンジン4が加速される。ステップS3で上流速度Ve-下流速度Vmが所定値Vb以下にはなっていないと判断された場合、ステップS2の処理を繰り返す。
【0030】
図3に示すように、ステップS5で上流速度Veの上流側加速度と下流速度Vmの下流側加速度が略等しくなったか否かが判断され、ステップS5で上流側加速度と下流側加速度が略等しくなったと判断された場合、ステップS6でクラッチ11が接状態に動作され終了となる。ステップS5で上流側加速度と下流側加速度が略等しくなってないと判断された場合、ステップS4に移行してエンジン4の加速を継続する。
【0031】
即ち、図4(d)に示すように、時刻t3から時刻t4の時間でエンジン4が加速され、時刻t4で上流速度Veと下流速度Vmが同じ状況で変化する状態になる。図4(b)に実線で示す下流速度Vmと、点線で示す上流速度Veが同じ状況で上昇する状態になる。
【0032】
図4(a)に示すように、時刻t3から時刻t4までのエンジン4の回転速度は上昇を開始し、時刻t3から時刻t4までのトルクの状況は、図4(c)に示すように、一定となっている。
【0033】
図4(d)に示すように、時刻t4から時刻t5の時間でクラッチ11が接動作され、時刻t6以降の時間がパラレルモードの加速運転とされる。図4(a)に示すように、時刻t4以降の時間は、エンジン4の回転速度が一定の状態を保ち、図4(b)に実線で示す下流速度Vmと、点線で示す上流速度Veが同じ状況で上昇する。
【0034】
そして、時刻t4の直後のクラッチ11の接動作時に若干トルクが変動するが、時刻t5までのクラッチ11の接動作時にはトルクが一定になり、急激な低下は発生しない。
【0035】
図に示したように、電動モータ3により駆動力を得ている運転中(加速運転中)における、EVモードからパラレルモードへの切り替え時に、エンジン4を接続することによる電動モータ3の駆動力の低下が抑制された状態で(低下をなくした状態で)、エンジン4が接続され(クラッチ11が接動作され)、急激なトルクの低下を無くすことが可能になる。
【0036】
このため、上述したハイブリッド車両の制御装置は、電動モータ3により駆動力を得る運転中(加速運転中)に、エンジン4を接続することによる電動モータ3の駆動力の低下をなくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ハイブリッド車両(車両)
2 駆動輪
3 電動モータ
4 エンジン
5 伝達機構
6 発電機
11 クラッチ
12 制御装置
13 車速センサー
21 モータ運転機能
22 エンジン運転機能
23 比較機能
24 加速機能
25 クラッチ操作機能
図1
図2
図3
図4