(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2019204941
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】ウォルターズ ケビン
(72)【発明者】
【氏名】長屋 隆志
(72)【発明者】
【氏名】本山 廉夫
(72)【発明者】
【氏名】河地 佑亮
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-046069(JP,A)
【文献】特開2019-028568(JP,A)
【文献】特開2006-099409(JP,A)
【文献】特開2005-045602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00- 1/04、 1/08- 1/31、
21/00-21/13、21/34-21/38
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G06T 1/00- 1/40、 3/00- 7/90
G06V 10/00-20/90、30/418、
40/16、40/20
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者に対して運転支援情報を表示することで当該運転者の運転操作を支援する運転支援装置であって、
自車両の後上方位置を視点とした仮想自車両を含む車両前方映像を生成し、該車両前方映像と共に前記運転支援情報を表示手段に表示させる支援情報表示部と、
前記自車両の前方に障害物が存在しているか否かを判定する障害物判定部と、
前記障害物が存在している場合に、前記障害物の側方に前記自車両が通過可能な通過スペースが存在しているか否かを判定するスペース判定部と、を備え、
前記支援情報表示部は、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定されると、前記運転支援情報として、前記障害物の側方を通過する時に前記自車両の走行を推奨する推奨走行ルートを、前記仮想自車両を基準とする画像として前記車両前方映像に重畳させて立体的に描写
し、
前記支援情報表示部は、前記推奨走行ルートとして、
前記仮想自車両が通過可能な大きさの通過枠を前記障害物に対応する領域に描写し、さらに、前記通過枠の側部から前記仮想自車両まで延びる仮想側壁を描写する
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置であって、
前記支援情報表示部は、前記通過枠を表示した後、前記自車両のステアリングの操舵角に応じて前記通過枠を前記自車両が走行する走行路の幅方向で移動させ、当該通過枠が前記通過スペースに対向する位置まで移動した時点で、前記仮想側壁をさらに描写する
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運転支援装置であって、
前記支援情報表示部は、前記自車両の移動に伴い、前記仮想自車両が前記仮想側壁に接触した状態となると、当該仮想側壁の表示色を変更する
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の運転支援装置であって、
前記支援情報表示部は、前記通過枠を常に前記障害物に対応する領域に描写する
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の運転支援装置であって、
前記支援情報表示部は、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定され且つ前記自車両と前記障害物との相対距離が予め設定された第1の距離閾値以下になると、前記推奨走行ルートを描写する
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項6】
請求項5に記載の運転支援装置であって、
前記支援情報表示部は、前記推奨走行ルートの描写に先立って、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定され且つ前記自車両と前記障害物との相対距離が前記第1の距離閾値よりも大きい第2の距離閾値以下になると、前記障害物の側方に前記仮想自車両に相当する大きさの立体画像を描写する
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の運転支援装置であって、
前記支援情報表示部は、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在しないと判定された場合、前記運転支援情報として、前記自車両の停車を案内する情報を表示させる
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項8】
運転者に対して運転支援情報を表示することで当該運転者の運転操作を支援する運転支援装置であって、
自車両の後上方位置を視点とした仮想自車両を含む車両前方映像を生成し、該車両前方映像と共に前記運転支援情報を表示手段に表示させる支援情報表示部と、
前記自車両の前方に障害物が存在しているか否かを判定する障害物判定部と、
前記障害物が存在している場合に、前記障害物の側方に前記自車両が通過可能な通過スペースが存在しているか否かを判定するスペース判定部と、を備え、
前記支援情報表示部は、
前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定されると、前記運転支援情報として、前記障害物の側方を通過する時に前記自車両の走行を推奨する推奨走行ルートを、前記仮想自車両を基準とする画像として前記車両前方映像に重畳させて立体的に描写し、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定され且つ前記自車両と前記障害物との相対距離が予め設定された第1の距離閾値以下になると、前記推奨走行ルートを描写し、前記推奨走行ルートの描写に先立って、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定され且つ前記自車両と前記障害物との相対距離が前記第1の距離閾値よりも大きい第2の距離閾値以下になると、前記障害物の側方に前記仮想自車両に相当する大きさの立体画像を描写する
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項9】
運転者に対して運転支援情報を表示することで当該運転者の運転操作を支援する運転支援装置であって、
自車両の後上方位置を視点とした仮想自車両を含む車両前方映像を生成し、該車両前方映像と共に前記運転支援情報を表示手段に表示させる支援情報表示部と、
前記自車両の前方に障害物が存在しているか否かを判定する障害物判定部と、
前記障害物が存在している場合に、前記障害物の側方に前記自車両が通過可能な通過スペースが存在しているか否かを判定するスペース判定部と、を備え、
前記支援情報表示部は、
前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定されると、前記運転支援情報として、前記障害物の側方を通過する時に前記自車両の走行を推奨する推奨走行ルートを、前記仮想自車両を基準とする画像として前記車両前方映像に重畳させて立体的に描写し、前記推奨走行ルートとして、前記仮想自車両が通過可能な大きさの通過枠を前記障害物に対応する領域に描写し、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定され且つ前記自車両と前記障害物との相対距離が予め設定された第1の距離閾値以下になると、前記推奨走行ルートを描写し、前記推奨走行ルートの描写に先立って、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定され且つ前記自車両と前記障害物との相対距離が前記第1の距離閾値よりも大きい第2の距離閾値以下になると、前記障害物の側方に前記仮想自車両に相当する大きさの立体画像を描写する
ことを特徴とする運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者に対して運転支援情報を表示することで運転操作を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的狭い道路(狭路)において、自車両が対向車両と円滑にすれ違うことができるように運転操作を支援するための運転支援情報を運転者に対して表示する運転支援装置が様々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の運転支援装置は、狭路(狭い道)を走行する際や、狭路におけるすれ違い時などにおいて、運転者が脱輪や対向車両との接触等を発生することなく容易に走行を行えるようにすることを目的として、ヘッドアップディスプレイ(HUD)を用いて、運転者に対し自動車の車幅情報(運転支援情報)を表示するものである。
【0004】
また、この運転支援装置は、車幅情報が、例えば、自車両が走行可能な走行可能幅として表示されたり、これから走行する自車両のタイヤの軌跡として表示されたりするように構成されている。そして、このような車幅情報に従って自車両を走行させることができれば、脱輪や対向車両との接触等の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る発明のように、HUDにおいて車幅情報を路面上に表示しただけでは、運転者は、実際にどの位置に自車両を移動させて対向車両とのすれ違いを行えばよいのか、瞬時に判断するのが難しい場合がある。このため、運転支援情報の表示の分かり易さについては、さらなる向上が望まれている。
なおこのような問題は、対向車両とのすれ違い時だけに生じるものではない。例えば、対向車両以外の障害物が自車両の前方に存在し、自車両がこの障害物の側方を通過する際にも、同様の問題が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、自車両の前方に障害物が存在する際に、運転支援情報をより分かり易く運転者に対して表示することができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、運転者に対して運転支援情報を表示することで当該運転者の運転操作を支援する運転支援装置であって、自車両の後上方位置を視点とした仮想自車両を含む車両前方映像を生成し、該車両前方映像と共に前記運転支援情報を表示手段に表示させる支援情報表示部と、前記自車両の前方に障害物が存在しているか否かを判定する障害物判定部と、前記障害物が存在している場合に、前記障害物の側方に前記自車両が通過可能な通過スペースが存在しているか否かを判定するスペース判定部と、を備え、前記支援情報表示部は、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定されると、前記運転支援情報として、前記障害物の側方を通過する時に前記自車両の走行を推奨する推奨走行ルートを、前記仮想自車両を基準とする画像として前記車両前方映像に重畳させて立体的に描写することを特徴とする運転支援装置にある。
【0009】
ここで、前記支援情報表示部は、前記推奨走行ルートとして、前記仮想自車両が通過可能な大きさの通過枠を前記障害物に対応する領域に描写することが好ましい。
【0010】
また前記支援情報表示部は、前記推奨走行ルートとして、前記通過枠の側部から前記仮想自車両まで延びる仮想側壁をさらに描写することが好ましい。
【0011】
さらに前記支援情報表示部は、前記通過枠を表示した後、前記自車両のステアリングの操舵角に応じて前記通過枠を前記自車両が走行する走行路の幅方向で移動させ、当該通過枠が前記通過スペースに対向する位置まで移動した時点で、前記仮想側壁をさらに描写することが好ましい。
【0012】
また前記支援情報表示部は、前記自車両の移動に伴い、前記仮想自車両が前記仮想側壁に接触した状態となると、当該仮想側壁の表示色を変更することが好ましい。
【0013】
また前記支援情報表示部は、前記通過枠を常に前記障害物に対応する領域に描写することが好ましい。
【0014】
また前記支援情報表示部は、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定され且つ前記自車両と前記障害物との相対距離が予め設定された第1の距離閾値以下になると、前記推奨走行ルートを描写することが好ましい。
【0015】
さらに前記支援情報表示部は、前記推奨走行ルートの描写に先立って、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在すると判定され且つ前記自車両と前記障害物との相対距離が前記第1の距離閾値よりも大きい第2の距離閾値以下になると、前記障害物の側方に前記仮想自車両に相当する大きさの立体画像を描写することが好ましい。
【0016】
また前記支援情報表示部は、前記スペース判定部によって前記通過スペースが存在しないと判定された場合、前記運転支援情報として、前記自車両の停車を案内する情報を表示させることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
かかる本発明に係る運転支援装置によれば、自車両の前方に障害物が存在する場合に、運転者に対して運転支援情報としての走行推奨ルートを分かり易く表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運転支援装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係るスペース判定部による判定内容を説明する図である。
【
図3】モニタ装置に表示される車両前方映像を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る運転支援情報の表示内容を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る運転支援情報の表示内容を説明する図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る運転支援情報の表示内容を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る運転支援情報の表示内容を説明する図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る運転支援装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図9】モニタ装置に表示された車両前方映像及び運転支援情報の一例を示す図である。
【
図10】モニタ装置に表示された車両前方映像及び運転支援情報の一例を示す図である。
【
図11】モニタ装置に表示された車両前方映像及び運転支援情報の一例を示す図である。
【
図12】モニタ装置に表示された車両前方映像及び運転支援情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る運転支援装置について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る運転支援装置は、車両(自車両)に搭載され、運転者の運転操作を支援するためのものである。より詳細には、運転支援装置は、自車両が走行する走行路(道路)上に存在する障害物の側方(主に、左側方)を安全に通過できるように(例えば、自車両が対向車両と安全にすれ違うことができるように)、運転者に対する運転支援情報の表示を行う。
【0020】
具体的には、運転支援装置は、自車両が走行している走行路の幅が比較的狭い状況において、自車両の前方に障害物(例えば、対向車両)が存在する場合に、自車両の後上方位置を視点とした仮想自車両の画像を含む車両前方映像を作成してモニタ装置(表示手段)に表示させると共に、この車両前方画像に運転支援情報を重畳させて表示させる。
【0021】
ここで、運転支援情報とは、運転者の運転操作を支援するための情報であり、自車両が障害物の側方を通過する時(例えば、自車両が対向車両とすれ違う時)に自車両の走行が推奨される走行ルート(以下、推奨走行ルートという)の情報が含まれる。
【0022】
そして本発明に係る運転支援装置は、詳しくは後述するが、障害物(例えば、対向車両)の側方に自車両が通過可能なスペース(以下、通過スペースという)が存在する場合に、この推奨走行ルートを仮想自車両を基準とする画像として車両前方映像に重畳させて立体的に描写する。
【0023】
運転者は、モニタ装置の画面を参照し、仮想自車両が推奨走行ルートを通過するように自車両の運転操作を行うことで、障害物の側方を安全に通過することができる。例えば、対向車両とのすれ違いを安全に行うことができる。また本発明では、運転支援情報としての推奨走行ルートを立体的に描写するようにしたので、運転者は、障害物の側方を通過する時(例えば、対向車両とすれ違う時)の推奨走行ルートを、モニタ装置の画面上でより容易に確認することができ、自車両の運転操作をさらに適切に行うことができるようになる。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る運転支援装置の概略構成を示すブロック図であり、
図2は、スペース判定部による判定内容を説明する図であり、
図3は、モニタ装置に表示される車両前方映像を説明するための図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援装置10は、撮像手段である複数台の車載カメラ20と、表示手段であるモニタ装置30と、制御装置50と、を備えている。
【0026】
車載カメラ(撮像手段)20は、自車両1の周囲を撮像するためのものであり、自車両1の前部や側部等にそれぞれ設置されている。これらの車載カメラ20は、自車両1と共に、自車両1が走行する走行路(道路)100や、走行路100上に存在する障害物(本実施形態では、走行路100上を自車両1に向かって走行する対向車両2)を撮像するために設けられている(
図2参照)。
【0027】
各車載カメラ20としては、例えば、CCDカメラ等が好適に用いられる。車載カメラ20は、走行路100や対向車両2を適切に認識できる解像度で撮像できるものであればよく、その構成は特に限定されるものではない。
【0028】
モニタ装置30は、例えば、液晶モニタ等で構成され、運転者に対する各種情報を表示するためのものであり、運転者の前方側、例えば、インストルメントパネルに設けられている。モニタ装置30には、詳しくは後述するが、自車両1の後上方位置を視点とした仮想自車両を含む車両前方映像が表示されると共に、運転者に対する運転支援情報が表示される。
【0029】
モニタ装置30は、運転者が視認可能に設けられていればよく、その構成や配置は特に限定されるものではない。例えば、自車両1にカーナビゲーション装置が搭載されている場合、このカーナビゲーション装置のモニタ装置を、運転支援装置10のモニタ装置30として利用してもよい。またモニタ装置30は、本実施形態では、音声メッセージや警告音等を発するスピーカー35を備えている。
【0030】
制御装置50は、運転支援装置10の動作を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されている。
【0031】
制御装置50は、障害物判定部51と、スペース判定部52と、支援情報表示部53と、を備えている。なお制御装置50は、CPUによって制御プログラムが実行されることによって、これら各部の機能が実現されるように構成されている。
【0032】
障害物判定部51は、自車両1が走行路100を走行している際、走行路100上に障害物が存在するか否かを判定する。本実施形態では、障害物判定部51は、障害物として、走行路100を自車両1側に向かって走行する対向車両2の有無を判定する。
【0033】
なお障害物には、走行中の対向車両2だけでなく、自車両1と同一方向に進行する先行車両も含まれる。また、走行中の車両だけでなく、走行路100に駐停車している車両(他車両)も障害物に含まれる。例えば、右折待ちの先行車両も障害物に含まれる。さらに、障害物には、走行路100の車両だけでなく、落下物や工事箇所等も含まれるものとする。
【0034】
本実施形態では、障害物判定部51は、障害物の有無として、自車両1に向かって走行路100を走行する対向車両2の有無を判定する。障害物判定部51は、車載カメラ20によって撮像された映像を解析することで、対向車両2の有無(障害物の有無)を判定する。
【0035】
なお対向車両2の有無(障害物の有無)の判定方法は、特に限定されず、例えば、自車両1が、レーダセンサ等の各種センサ類を備えるようにし、これらセンサ類の検出結果に基づいて対向車両2の有無を判定するようにしてもよい。
【0036】
スペース判定部52は、障害物判定部51によって対向車両2が存在すると判定されると、例えば、車載カメラ20の映像を解析することで、自車両1の前方の走行路100に、自車両1が走行できるスペースが存在しているか否かを判定する。より詳しくは、スペース判定部52は、対向車両2の側方(自車両1側)に、自車両1が通過して対向車両2とのすれ違いが可能なスペースが存在するか否かを判定する。本実施形態では、スペース判定部52は、対向車両2の側方の通過スペース(すれ違いの際に自車両1が通過するスペース)が、自車両1と対向車両2との安全なすれ違いが可能な程度に広い幅で確保されているか否かを判定する。
【0037】
例えば、
図2(a)に示すように、対向車両2の側方の通過スペース110の幅W1が、予め設定された判定閾値Waよりも広い場合に、スペース判定部52は、「通過スペースあり」と判定する。なお判定閾値Waは自車両1の車幅W2に所定値を加算した値に設定されている。一方、
図2(b)に示すように、例えば、対向車両2の走行位置等によって対向車両2の側方の通過スペース110の幅W1が判定閾値Wa以下となっている場合、スペース判定部52は、「通過スペースなし」と判定する。
【0038】
またスペース判定部52は、走行路100の道幅W3が予め設定された判定閾値Wb以下である場合に、対向車両2の側方に通過スペースが存在するか否かを判定する。すなわちスペース判定部52は、走行路100の道幅が所定幅よりも狭い場合に、上述のように通過スペース110の幅W1が判定閾値Waよりも大きいか否かを判定する。
【0039】
判定閾値Wbは、適宜設定されればよいが、例えば、自車両1の車幅W2と対向車両2の車幅W4との合計に所定値を加算した値に設定される。勿論、スペース判定部52は、走行路100の道幅に拘わらず、対向車両2が存在する状態では、通過スペースの有無を判定するようにしてもよい。
【0040】
なお制御装置50は、車載カメラ20によって撮像された映像を解析する映像解析部を、障害物判定部51及びスペース判定部52とは別に備えるようにしてもよい。すなわち障害物判定部51は、画像解析部による解析結果から対向車両2の有無を判定してもよく、スペース判定部52は、画像解析部による解析結果に基づいて通過スペースの有無を判定するようにしてもよい。また映像解析の方法は、公知の方法を採用すればよいため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0041】
支援情報表示部53は、スペース判定部52によって「通過スペースあり」と判定されると、仮想自車両1aを含む車両前方映像を作成してモニタ装置30に表示すると共に、運転支援情報としての推奨走行ルート200を、仮想自車両1aを基準とする画像として車両前方映像に重畳させて立体的に描写する(
図10等参照)。
【0042】
ここで、車両前方映像とは、
図3に示すように、自車両1の後方であり且つ自車両1よりも上方の後上方位置P1を視点とした自車両1の前方側の映像であり、車載カメラ20の映像に基づいて生成される。自車両1の後上方位置P1は、適宜設定さればよいが、例えば、自車両1の数車長程度後方で且つ自車両1の高さの数倍程度以内の高さの位置に設定されていることが好ましい。
【0043】
また仮想自車両1aとは、自車両1の後上方位置P1を視点とする自車両1の画像であり、例えば、コンピュータ・グラフィックス(CG)等により予め作成されている。仮想自車両1aは、予め撮像された自車両1の実写画像を加工したものであってもよい。
【0044】
また推奨走行ルート200とは、対向車両2とのすれ違い時(障害物の側方を通過する時)に自車両1の走行が推奨されるルートである。すなわち推奨走行ルート200とは、自車両1(仮想自車両1a)が対向車両2の側方の通過スペース110を通過して対向車両2と安全にすれ違うために推奨されるルートである。
【0045】
なお推奨走行ルート200は、スペース判定部52によって「通過スペースあり」と判定された段階で、例えば、通過スペース110の幅W1、自車両1と対向車両2との相対距離D1等に基づいて適宜設定される。
【0046】
そして支援情報表示部53は、仮想自車両1aの画像を含む車両前方映像と共に、運転支援情報としての推奨走行ルート200を、モニタ装置30に表示させる。具体的には、支援情報表示部53は、自車両1の推奨走行ルート200を、仮想自車両1aを基準とした画像として車両前方映像に重畳させて立体的に描写する。
【0047】
図4~
図7は、モニタ装置の表示内容を説明する模式図である。これらの図は、あくまで表示内容を説明するための図であり、モニタ装置に表示される映像・画像とは異なる。以下では、これら
図4~
図7を参照して、モニタ装置30に表示される推奨走行ルート200の表示の一例について説明する。なおモニタ装置30の表示例は
図9~
図12に示す。
【0048】
本実施形態では、支援情報表示部53は、
図4(a)に示すように、推奨走行ルート200の画像として、まずは仮想自車両1aを基準とする四角形状の通過枠201を描写(表示)する。この通過枠201の左右方向(道幅方向)の位置は、自車両1のステアリングの操作角に連動する。すなわち、運転者が自車両1のステアリングを操作すると、操舵角の変化に応じて通過枠201の位置が走行路100の道幅方向(左右方向)で移動する。
【0049】
通過枠201は、自車両1の進行方向における対向車両2に対応する領域に表示され、通過枠201の大きさは、その表示位置で、仮想自車両1aが通過可能な程度の大きさに設定される(
図11参照)。なお、ここでいう対向車両2に対応する領域とは、対向車両2及びその側方の通過スペース110を含む領域A1をいう。
【0050】
また支援情報表示部53は、対向車両2が移動した場合でも、通過枠201を常に対向車両2に対応する領域に表示する。例えば、
図4(b)に示すように、対向車両2の移動に伴って、通過枠201の表示位置を適宜変更する。その際、自車両1と対向車両2との相対距離の変化に伴い、必要に応じて通過枠201の大きさも変更する。
【0051】
なお通過枠201は、この領域A1内でも対向車両2の後方側に描写することが好ましい。勿論、通過枠201を描写する位置は、必ずしも対向車両2に対応する領域内でなくてもよく、対向車両2の近傍であればよい。
【0052】
支援情報表示部53は、
図5(a)に示すように、推奨走行ルート200として、さらに通過枠201の両側部から仮想自車両1aまで延びる仮想側壁202を所定のタイミングで描写する(
図12参照)。支援情報表示部53は、通過枠201が通過スペース110に対向する領域に位置している場合に、仮想側壁202を描写する。言い換えれば、支援情報表示部53は、自車両1が対向車両2とすれ違いできる位置に通過枠201がある場合に、仮想側壁202をさらに描写する。
【0053】
このとき、仮想側壁202の全面に所定の色を付けておくことが好ましく、さらに仮想側壁202で挟まれた推奨走行ルート200の路面には、仮想側壁202とは別の色を付けておくことが好ましい。なお
図5(a)では、仮想自車両1aに達しない長さで仮想側壁202を示しているが、実際には、仮想自車両1aに達する長さで描写される。
【0054】
一方、
図5(b)に示すように、通過枠201が対向車両2と重なっている状態では、支援情報表示部53は、仮想側壁202を描写しない。すなわち、自車両1が対向車両2とすれ違いできない位置に通過枠201がある場合、支援情報表示部53は、通過枠201が表示されていても仮想側壁202を描写しない。
【0055】
したがって、例えば、通過枠201が描写された時点では通過枠201が対向車両2と重なっている場合(
図5(b)の状態)、その後、通過枠201が通過スペース110に対向する領域まで移動すると(
図5(a)の状態)、通過枠201に加えて仮想側壁202がさらに描写される。
【0056】
また支援情報表示部53は、自車両1の走行位置に応じて、仮想側壁202の表示態様を適宜変更する。運転者が自車両1を走行させる際に自車両1が左右方向に移動し、例えば、
図6に示すように、仮想自車両1aが仮想側壁202(202A,202B)の一方に接触した状態となると、支援情報表示部53は、接触した状態となった仮想側壁202Aの表示色を変更する。
【0057】
すなわち自車両1の移動に伴い、仮想自車両1aが推奨走行ルート200を外れると、支援情報表示部53は、仮想側壁202の表示色を変更して、その旨を運転者に対して警告する。これにより、運転者は、仮想自車両1a(自車両1)が推奨走行ルート200から外れたことを容易に認識することができる。
【0058】
なお警告時には、仮想側壁202の表示色を変更すると共に、文字情報を表示したり、スピーカー35から音声或いは警告音(ブザー)等を適宜発するようにしてもよい。
【0059】
自車両1の運転者は、このように推奨走行ルート200が描写された仮想自車両1aを含む車両前方映像を参照して自車両1を移動させることで、対向車両2との安全なすれ違いを行うことができる。自車両1の運転者は、対向車両2とのすれ違いを行う際、モニタ装置30上で仮想自車両1aが仮想側壁202によって挟まれた推奨走行ルート200を走行するように自車両1を走行させることで、対向車両2との安全なすれ違いを行うことができる。
【0060】
ここで、支援情報表示部53は、スペース判定部52によって通過スペース110が存在すると判定されたことを条件として、推奨走行ルート200を描写するが、さらに自車両1と対向車両2との相対距離D1が予め設定された第1の距離閾値Da以下になったことを条件として、推奨走行ルート200を描写することが好ましい。すなわち支援情報表示部53は、自車両1と対向車両2とが、安全なすれ違いを行える範囲内で比較的近づいた時点で、推奨走行ルート200の表示を開始することが好ましい。
【0061】
これにより、すれ違い時の運転操作を適切に支援しつつ、推奨走行ルート200の表示時間を比較的短くすることができる。したがって、自車両1の運転者が、推奨走行ルート200の表示を煩わしく感じることを抑制することができる。
【0062】
また本実施形態では、支援情報表示部53は、推奨走行ルート200の描写に先立って、スペース判定部52によって「通過スペースあり」と判定され、さらに自車両1と対向車両2との相対距離D1が第1の距離閾値Daよりも大きく且つ第2の距離閾値Db(>Da)以下である場合には、通過スペース110に対向する位置に、自車両1に相当する大きさの立体画像を描写する。
【0063】
すなわち支援情報表示部53は、通過スペース110が存在しても、自車両1と対向車両2との相対距離D1が比較的長い場合には、推奨走行ルート200の描写に先立って、自車両1に相当する大きさの立体画像を通過スペース110に対向する位置に描写する。
【0064】
本実施形態では、
図7に示すように、自車両1の大きさに相当する直方体である立体画像300を、対向車両2の側方の通過スペース110に対向する領域に表示する。推奨走行ルート200を、あまり早い段階で表示してしまうと、運転者が煩わしさを感じてしまう虞があるため、この段階では、事前予告として立体画像300を表示している。
【0065】
ところで、スペース判定部52によって対向車両2の側方に通過スペース110が存在していない場合には、モニタ装置30には推奨走行ルート200は表示されない。その場合、運転支援情報の表示は必須ではないが、通過スペース110が存在していない旨を、運転支援情報として表示することが好ましい。
【0066】
例えば、運転者に対して、自車両1の停止(待機)を案内する情報(運転支援情報)を表示することが好ましい。具体的には、支援情報表示部53が、自車両1の停車を案内する停止領域、停止線等の画像をモニタ装置30に表示されている走行路100に重ねて表示させ、運転者に対して自車両1の停止(待機)を促すことが好ましい。勿論、文字情報や警告音等によって、運転者に対して自車両1の停止(待機)を促すようにしてもよい。
【0067】
図8は、運転支援情報の表示の一例を説明するフローチャートであり、
図9~
図12は、モニタ装置の表示例を示す図である。これらの図を参照して本実施形態に係る運転支援装置の動作についてさらに説明する。
【0068】
図8に示すように、ステップS1で自車両1の前方に対向車両2を検出すると(ステップS1:Yes)、ステップS2に進み、運転者に対する運転支援情報の表示処理を開始する。なお上述のように本実施形態では、走行路100の道幅が所定幅よりも狭いことも、運転支援情報の表示処理の開始条件となっている。運転支援情報の表示処理が開始されると、まずは対向車両2の側方に自車両1が通過可能な通過スペース110が存在しているか否かを判定する(ステップS3)。
【0069】
ここで、対向車両2の側方に通過スペース110が存在していない場合(ステップS3:No)、運転支援情報として自車両1の停止(待機)を案内する情報をモニタ装置30に表示する(ステップS4)。例えば、
図9に示すように、自車両1が停止(待機)すべき停止領域400を走行路100の映像に重ねて表示する。その後、ステップS3に戻る。
【0070】
一方、ステップS3で対向車両2の側方に通過スペース110が存在している場合(ステップS3:Yes)、ステップS5に進み、自車両1と対向車両2との相対距離D1が第2の距離閾値Db(>Da)以下になると(ステップS5:Yes)、ステップS6に進み、例えば、
図10に示すように、自車両1に相当する大きさの立体画像300を対向車両2の側方の通過スペース110に対向する領域に表示する。
【0071】
その後、通過スペース110が存在している状態で、自車両1と対向車両2との相対距離D1が第1の距離閾値Da(<Db)以下になると(ステップS7:Yes)、ステップS8に進み、推奨走行ルート200の描写(表示)を行う。すなわち推奨走行ルート200の仮想自車両1aを基準とした画像を、車両前方映像に重畳させて立体的に描写する。
【0072】
推奨走行ルート200として、
図11に示すように、まずは仮想自車両1aを基準とする四角形状の通過枠201を描写する(ステップS9)。次いで、この通過枠201が対向車両2と重なった状態であるか否か(通過枠201が通過スペース110に対向する領域にあるか否か)を判定する(ステップS10)。通過枠201が対向車両2と重なっている間は(ステップS10:Yes)、通過枠201のみの表示を継続する。
【0073】
そして、通過枠201が対向車両2と重ならない状態となった時点、つまり通過枠201が通過スペース110に対向する領域に位置した時点で(ステップS10:No)、
図12に示すように、仮想側壁202をさらに描写する(ステップS11)。仮想側壁202が描写されると、通過枠201及び仮想側壁202の表示位置は固定される。
【0074】
ここで、自車両1の移動に伴い仮想自車両1aが仮想側壁202と接触した状態になると(ステップS12:Yes)、仮想側壁202の表示色を変更し、運転者に対する警告を行う(ステップS13)。なお運転者への警告は、接触状態が解消した時点で終了し、仮想側壁202の表示色は元の状態に戻す。
【0075】
その後、自車両1と対向車両2とのすれ違いが終了し、仮想自車両1aが通過枠201を通過すると(ステップS14:Yes)、推奨走行ルート200の表示、つまり運転支援情報の表示を終了する(ステップS15)。
【0076】
なお通過枠201及び仮想側壁202が描写された後に、対向車両2の移動に伴って通過枠201が対向車両2と重なる状態となると、つまり対向車両2の側方に通過スペース110が存在していない状態となると、通過枠201及び仮想側壁202の表示を中止し、停止領域400を走行路100の映像に重ねて表示する(
図9参照)。
【0077】
このような運転支援情報の表示を行うようにした本実施形態に係る運転支援装置10によれば、自車両1の運転者は、迷いや不安を感じることなく、対向車両2とのすれ違いを安全に行うことができる。
【0078】
また上述のように推奨走行ルート200の画像を適切な位置に適切なタイミングで表示するようにしているため、推奨走行ルート200の表示時間が比較的短くなり、運転者が煩わしさを感じることを抑制することができる。
【0079】
例えば、自車両1と対向車両2とのすれ違い時に、通過スペース110内でも対向車両2の後方側に通過枠201が表示されるようにしている(
図4参照)。このような位置に通過枠201が表示されることで、自車両1と対向車両2とのすれ違いが完了した時点で、通過枠201を含む推奨走行ルート200の表示が終了することになる。これにより、推奨走行ルート200の表示時間を短縮することができ、運転者が煩わしさを感じることを抑制することができる。
【0080】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0081】
例えば、上述の実施形態では、自車両が対向車両とすれ違う際に、運転支援情報を表示する運転支援装置について説明したが、本発明に係る運転支援装置は、対向車両とのすれ違い以外、例えば、落下物や工事箇所、あるいは右折待ちの先行車両等の障害物の側方を自車両が通過する際に適用しても有効なものである。
【符号の説明】
【0082】
1 自車両
1a 仮想自車両
2 対向車両
10 運転支援装置
20 車載カメラ
30 モニタ装置
35 スピーカー
50 制御装置
51 障害物判定部
52 スペース判定部
53 支援情報表示部
100 走行路
110 通過スペース
200 推奨走行ルート
201 通過枠
202 仮想側壁
300 立体画像
400 停止領域