(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】セラミックスグリーンシート積層助剤およびセラミックスグリーンシート組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 35/634 20060101AFI20231109BHJP
C04B 35/622 20060101ALI20231109BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20231109BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C04B35/634 880
C04B35/634 200
C04B35/622
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
B28B1/30 101
(21)【出願番号】P 2021503641
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009320
(87)【国際公開番号】W WO2020179856
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2019040143
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】吉川 文隆
(72)【発明者】
【氏名】松崎 健太
(72)【発明者】
【氏名】砂田 和輝
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-181252(JP,A)
【文献】特開昭61-222953(JP,A)
【文献】特開2007-261911(JP,A)
【文献】特開2013-023662(JP,A)
【文献】特開2018-143969(JP,A)
【文献】特開平07-025665(JP,A)
【文献】特開2011-096754(JP,A)
【文献】特開平07-033533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)を0.01~5質量%、成分(B)を1~25質量%および成分(C)を70~98質量%を含有し、かつ前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計量を100質量部としたときにポリエーテル基とカルボキシル基を有するポリマーを0.1~10質量部含有することを特徴とする、セラミックスグリーンシート組成物。
成分(A): 式(1)で表される化合物からなるセラミックスグリーンシート間積層ずれ抑制添加剤
Z-[O-(AO)n-H]x ・・・ (1)
(式(1)において、
Zは、炭素数1~22であって、1~6個の水酸基を有する化合物からすべての水酸基を除いた残基を示し、
xは1~6の数を示し、
AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を示し、
nは5~450の数を示し、
x×nは、10~450の範囲であり、
炭素数2~4の前記オキシアルキレン基AOに含まれるオキシエチレン基EOの重量割合は0~80重量%であり、
分子量は500~35,000の範囲である。)
成分(B): ポリビニルブチラール
成分(C): セラミックス粉末
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスグリーンシートを積層する工程で用いられる積層助剤、および該積層助剤を含有するセラミックスグリーンシート組成物に関する。さらに詳しくは、少量の添加量にてセラミックスグリーンシート間の剥がれや積層ずれを抑制するとともに、シート強度の低下や、焼成時の残渣の増加を抑制できる積層助剤、およびこの積層助剤を含有するセラミックスグリーンシート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックスコンデンサ(MLCC)や積層チップインダクタなどの電子部品は、主にチタン酸バリウムやフェライトなどのセラミックスやバインダー樹脂からなるグリーンシートを積層する工法で製造されている。
【0003】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、MLCCの小型化・大容量化が求められてきている。小型化・大容量化は、その構成部品であるセラミックスグリーンシート、および導電層を薄層化するとともに、多層化することにより実現することができる。
【0004】
薄膜化によりグリーンシートの強度が低下すると、積層時にグリーンシートが破れるなどの不具合が生じる。そのため、高強度のバインダーが選定される場合が多く、例えばポリビニルブチラールが広く用いられている。しかしながら、高強度のバインダーは従来のバインダーより硬度が高く、シート間の接着性が従来品より低下する傾向がある。接着性が低下すると、グリーンシートの積層工程や熱圧着工程で層間の剥離を起こし、欠陥を生じることがある。
【0005】
グリーンシートの接着性が低下した場合、可塑剤を多量に添加して樹脂を軟化させることにより接着性を得ることができる。しかしながら、樹脂が軟化することにより樹脂強度が低下すると、熱圧着時に変形し、寸法精度が悪化するため、接着性と樹脂の強度を両立させる必要があった。このような課題に対して、特許文献1にはポリビニルブチラールと特定の可塑剤を組合せることにより、樹脂の強度を低下させることなく層間の剥離を抑制する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、昨今グリーンシートの薄層化と多層化が進むにつれて、グリーンシート間の不具合がますます起こり易くなっている。とくに積層工程や熱圧着工程で負荷を掛ける際にグリーンシート同士が滑ることにより、積層ずれが生じ、製品の品質不安定化の原因となっている。このような問題に対して、従来の層間の剥離を防止するだけでは不十分であり、積層工程や熱圧着工程における積層ずれを抑える方法が求められていた。
【0008】
上記の通り、本発明の課題は、シート強度を低下させることなく、セラミックグリーンシート間の剥がれと積層ずれを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するポリエーテル化合物が上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は下記の〔1〕である。
〔1〕 下記成分(A)を0.01~5質量%、成分(B)を1~25質量%および成分(C)を70~98質量%を含有し、かつ前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計量を100質量部としたときにポリエーテル基とカルボキシル基を有するポリマーを0.1~10質量部含有することを特徴とする、セラミックスグリーンシート組成物。
成分(A): 式(1)で表される化合物からなるセラミックスグリーンシート間積層ずれ抑制添加剤
Z-[O-(AO)n-H]x ・・・ (1)
(式(1)において、
Zは、炭素数1~22であって、1~6個の水酸基を有する化合物からすべての水酸基を除いた残基を示し、
xは1~6の数を示し、
AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を示し、
nは5~450の数を示し、
x×nは、10~450の範囲であり、
炭素数2~4の前記オキシアルキレン基AOに含まれるオキシエチレン基EOの重量割合は0~80重量%であり、
分子量は500~35,000の範囲である。)
成分(B): ポリビニルブチラール
成分(C): セラミックス粉末
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シート強度の低下や焼成時の残渣の増加を起こさずに、セラミックグリーンシート間の剥がれや積層ずれを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について説明する。なお、本明細書では、「セラミックスグリーンシート添加用のセラミックスグリーンシート間積層ずれ抑制添加剤」を「積層助剤」と略称することがある。
【0013】
(積層助剤)
本発明の積層助剤は、下記の式(1)で示されるポリエーテル化合物である。
Z-[O-(AO)n-H]x ・・・ (1)
【0014】
式(1)中のZは、炭素数1~22であって、1~6個の水酸基を有するアルコール化合物からすべての水酸基を除いた残基である。すなわち、アルコール化合物は(Z(OH)x)で表され、アルコール化合物からすべての(OH)を除いた残基がZである。このアルコール化合物としては、メタノール、エタノール、n-ブタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5―トリメチルヘキサノール、ドデカノール、オクタデカノール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,3-シクロヘキサントリオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、1,2,6-シクロヘキサントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ジグリセリン、1,2,3,4-ブタンテトラオール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、トリグリセリン、グルコース、リビトール、キシリトール、マンノース、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
【0015】
zの炭素数は、2以上が更に好ましく、また,10以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。
【0016】
式(1)中のxは、Zに結合するAO鎖の数であり、上記アルコール(Z(OH)x)が有する水酸基の数に相当する。xは1~6であり、好ましくは1~5、更に好ましくは1~4、最も好ましくは1~3である。xが6を越える場合、積層助剤が高粘度となりハンドリング性が悪くなる場合がある。このような観点から、アルコールとしてはメチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、2-エチルヘキサノール、3,5,5―トリメチルヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンを使用することが好しく、メチルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、グリセリンが更に好ましい。
【0017】
式(1)中のAOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、具体的にはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドを付加重合して得られる。これらアルキレンオキシドは積層ずれを抑制する点からエチレンオキシド、プロピレンオキシドを用いることが好ましく、プロピレンオキシドを用いることが最も好ましい。また、これらの1種または2種以上のものを組み合わせることができる。2種類以上のものを付加するとき、順序は特に関係なくブロック状でもランダム状でもよいが、セラミックスグリーンシートの強度が低下し難い点からランダム状が好ましい。
【0018】
nはAOの平均付加モル数を示し、AOが2種以上の場合は各AOの合計平均付加モル数であり、5~450の数を示している。
【0019】
式(1)に含まれるAOすべての平均付加モル数[x×n]は、10~450であり、更に好ましくは25~450、特に好ましくは30~450であり、特に好ましくは50~400であり、最も好ましくは50~200である。x×nが10を下回る場合、セラミックグリーンシート間の剥がれと積層ずれを十分に抑制することができない場合や、シート強度を低下させる場合がある。[x×n]が450を越える場合、積層助剤の粘度が高くハンドリング性が悪くなる。
【0020】
本発明の積層助剤は、樹脂との溶解性向上の点からオキシエチレン基(EO)を含有しても良いが、AOに含まれるEOの重量割合[EO重量/AO重量×100]は80重量%が上限である。AOに含まれるEOの重量割合は、0~60重量%であることが好ましく、0~50重量%がさらに好ましい。AOに含まれるEOの重量割合が80重量%を超える場合、樹脂への溶解性が高くなる一方で強度の低下を起こす場合がある。
【0021】
本発明の積層助剤の分子量はゲル浸透クロマトグラフを用いて測定することができ、好ましい分子量は500~35,000、より好ましくは2,000~35,000、さらに好ましくは2,500~30,000、さらに好ましくは3,000~25,000、最も好ましくは3,000~10,000である。分子量が35,000を超えると、式(1)で示される、ポリエーテル化合物が高粘度となり、ハンドリング性が悪化したり、溶剤溶解性が低下する傾向がある。一方で、分子量が500以下の場合、セラミックグリーンシート間の剥がれと積層ずれを十分に抑制することができない場合や、シート強度を低下させる場合がある。
【0022】
(セラミックスグリーンシート組成物)
本発明のセラミックスグリーンシート組成物は、積層助剤(成分(A))0.01~5質量%、ポリビニルブチラール(成分(B))を1~25質量%およびセラミックス粉末(成分(C))を70~98質量%を含有する。
ただし、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計量を100重量%とする。
【0023】
本発明の積層助剤の含有量は0.01~5質量%であり、好ましくは0.05~3質量%、より好ましくは0.1~2質量%である。積層助剤の含有量が0.01質量%未満の場合、グリーンシートの剥離やすべりを十分に抑制する事ができない。一方で、積層助剤の含有量が5質量%を越える場合、グリーンシートの強度が不十分となる場合がある。
【0024】
セラミックスグリーンシート組成物中のポリビニルブチラール(成分(B))は、一般的にグリーンシートに用いられるものであれば限定はされないが、分子量が大きいポリビニルブチラールは接着性が不足し易い傾向がある。ポリビニルブチラールの重量平均分子量は、500,000以下であることが好ましく、300,000以下であることがさらに好ましく、200,000以下であることが特に好ましい。また、グリーンシートの薄膜化により強度が求められることから、ポリビニルブチラールの重量平均分子量を50,000以上とすることが好ましく、100,000以上とすることがさらに好ましい。
ポリビニルブチラールの含有量は1~25質量%であり、好ましくは1~15質量%であり、3~10質量%が特に好ましい。
【0025】
セラミックスグリーンシート組成物中のセラミックス粉末(成分(C))は、一般的にグリーンシートに用いられるものであれば限定はされず、ケイ酸塩鉱物、その他のケイ酸化合物、炭酸化合物、硫酸化合物、水酸化化合物、酸化化合物、窒化化合物、炭化化合物、チタン酸化合物などの各粉体が挙げられる。例えば、カオリン、クレー、タルク、マイカ、ベントナイト、ドロマイト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、炭化ケイ素、炭化タングステン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、カーボンブラック、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ(シングルウォールナノチューブ、ダブルウォールナノチューブ、マルチウォールナノチューブ)などの各粉体が挙げられる。
【0026】
セラミックス粉として好ましくは、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化インジウムスズなどの酸化化合物の粉体、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムなどのチタン酸化合物の粉体であり、チタン酸化合物の粉体がより好ましく、チタン酸バリウムが特に好ましい。
【0027】
セラミックス粉末の平均粒径は特に限定されないがグリーンシートの薄膜化に伴い、平均粒径がより小さいセラミックス粉末が用いられる傾向がある。この観点から、平均粒径が300nm以下のセラミックス粉末と組合せることが好ましく、平均粒径が50~200nm以下のセラミックス粉末と組み合わることがより好ましい。なお分散体の平均粒子径はSEM(走査型電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)を用いる電子顕微鏡法やマイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって測定することができる。
【0028】
セラミックス粉末の含有量は70~98質量%であり、80~95質量%が好ましく、85~95質量%がより好ましい。
【0029】
セラミックスグリーンシート組成物は、上記配合物以外に共通の成分として、その他セラミックス添加材、可塑剤、分散剤、帯電防止剤等を含有して良い。特に可塑剤と本発明の積層助剤を組み合わせることにより、効率的に層間の剥れと、積層ずれを抑制する事ができる。この場合には、成分(A)、(B)および(C)の合計量を100質量部としたとき、可塑剤の量は0.01~20質量部とすることが好ましく、0.1~10質量部とすることが更に好ましい。
【0030】
さらに分散剤としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ポリエーテル基やアミノ基などの極性基を側鎖に有するポリマーを一般的に用いることができ、ポリエーテル基とカルボキシル基を双方有するポリマーが好ましい。ポリオキシアルキレン基を有するビニルエーテルと無水マレイン酸とのポリマーを例示できる。分散剤を添加する場合には、成分(A)、(B)および(C)の合計量を100質量部としたとき、分散剤の量は0.01~20質量部とすることが好ましく、0.1~10質量部とすることが更に好ましい。
【0031】
組成物には溶剤を加えることができる。こうした溶剤としては、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン系、エタノールやイソプロパノールなどのアルコール系、トルエンやキシレン等の芳香族系の用剤を例示できる。これらは単独で用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いても良く、アルコール系と芳香族系を併用するのが好ましい。溶剤を添加する場合には、成分(A)、(B)および(C)の合計量を100質量部としたとき、溶剤の量は20~500質量部とすることが好ましく、50~300質量部とすることが更に好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0033】
(積層助剤)
積層助剤として、表1に示す組成の積層助剤1~7および比較品1、2を使用した。表1中の積層助剤3、4のEOとPOの付加形態はランダム、積層助剤6、7のEOとPOの付加形態は、EO-POの順でブロックである。
【0034】
(セラミックスグリーンシートの成形1)
0.5リッターポリポットにYTZ粒径2mmメディアをポット容積の50%充填し、そのポットに、表2、表3、表4に示す各組成で各材料を投入した。MASUDA UNIVERSAL BALL MILL MODEL UBM-2を用いて回転数は60rpmにて5時間攪拌した後、メディアをろ別し、セラミックス組成物スラリーを得た。
【0035】
得られたスラリーを、ドクターブレードコーターを用いて、成形スピード1.5m/分でPETフィルム上に塗付した。この工程では、ブレードの溝は140μmとし、PETフィルムは厚み32μmのものを使用した。さらに、塗付したスラリーを40℃、60℃、75℃、85℃、85℃にて各10分間乾燥し、目的のセラミックスグリーンシートを得た。
【0036】
(シート物性および接着性の評価)
下記方法にてシート強度と、接着強度、静摩擦係数を評価した。結果を表2、表3、表4に示す。
【0037】
(シート強度の測定方法)
表に記載した各グリーンシートを用いて、幅3cm×長さ10cmの試験片を作成した。各試験片について、AIKOH製MODEL9502Bを用いて引っ張り強度[N/mm2]を測定した。
結果を、下記を基準として評価した。
◎: 16.0[N/mm2]以上
○: 15.0~16.0[N/mm2]
×: 15.0[N/mm2]未満
【0038】
(シート間の接着強度の測定方法)
表に記載した各グリーンシートを重ね合せ、500kg/cm2、60℃にて1分間圧着させた。圧着したグリーンシートを幅2.5cm×長さ25cmに切断し、試験片を作成した。JIS K-6854-1(はく離接着強さ試験方法)を参考にし、各試験片の一方の面を台へ固定し、もう一方の面を、AIKOH製MODEL9502Bを用いて500mm/分で引っ張ることにより接着面をはく離した。その際に要した力[N]を試験片幅で除して、接着強度(N/m)を算出した。この結果を、下記を基準として評価した。
◎: 15.0[N/m]以上
○: 10.0~15.0[N/m]
×: 10.0[N/m]未満
【0039】
(シート間の摩擦係数の測定方法)
表に記載した各グリーンシートを用いて、シート同士の静摩擦係数と動摩擦係数を測定した。摩擦係数の測定には摩擦感テスター(機種:TL201Tt、株式会社トリニティーラボ製)を使用し、接触子がサンプルと接触する部位(正方形1cm×1cm)にグリーンシートを貼付することにより、シート間の摩擦係数を測定した。測定条件は、温度25℃、摩擦子移動速度5mm/秒、加重25g/cm2とした。この結果を、下記を基準として評価した。
◎: 10.0以上
○: 5.0~10.0
×: 5.0未満
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
(セラミックスグリーンシートの成形2)
セラミックスグリーンシートの成形1で用いたチタン酸バリウム粉末をアルミナ粉末に変えて、その他は同様にしてシート物性と接着性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0045】
【0046】
表2、表3、表4、表5に示した結果から分かるように、実施例1~13は、シート強度、接着強度、静摩擦係数において良好な結果が得られた。
【0047】
一方で、比較例1、比較例5は、AOに含まれるEOの重量割合が本発明の範囲を外れているため、十分な静摩擦係数が得られず、シート強度も低下した。
比較例2は、AOに含まれるEOの重量割合が本発明の範囲を外れているため、十分な、接着強度、静摩擦係数が得られなかった。
比較例3、比較例4については、積層助剤を含有していないため、接着強度、静摩擦係数が不十分であった。