(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ガラス繊維連結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65H 69/06 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
B65H69/06
(21)【出願番号】P 2019228945
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】國友 晃
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-99181(JP,A)
【文献】特開2016-222431(JP,A)
【文献】特開平6-316378(JP,A)
【文献】特表2013-500914(JP,A)
【文献】特開昭60-15370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H69/00-69/08
C03C25/00-27/12
C03B37/00-37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第一ガラス繊維フィラメントと、前記第一ガラス繊維フィラメントに付着してなる第一被膜を含む第一ガラス繊維ストランドと、
複数の第二ガラス繊維フィラメントと、前記第二ガラス繊維フィラメントに付着してなる第二被膜を含む第二ガラス繊維ストランドと、
前記第一ガラス繊維ストランドと前記第二ガラス繊維ストランドとが連結した連結部と、
を有するガラス繊維連結体の製造方法であって、
前記第一ガラス繊維ストランドの一方の端部と、前記第二ガラス繊維ストランドの一方の端部を重ね合わせた後に気体を噴霧して前記連結部を形成する連結工程と、
前記気体を噴射して前記連結部を形成する前に、前記第一ガラス繊維ストランドの一方の端部と、前記第二ガラス繊維ストランドの一方の端部の少なくとも一方を加熱する加熱工程を有
し、
前記加熱工程における加熱温度が250℃以下である、
ガラス繊維連結体の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程において、
前記加熱温度をX(℃)、加熱時間をY(秒)とした場合、
Xが60℃以上であり、かつ、XとYの積X×Yが、200~1000(℃・秒)である、
請求項1に記載のガラス繊維連結体の製造方法。
【請求項3】
前記第一被膜及び前記第二被膜を構成する成分の軟化点は、前記加熱温度よりも低い、
請求項1または請求項2に記載のガラス繊維連結体の製造方法。
【請求項4】
前記第一被膜及び/または前記第二被膜を構成する成分がポリプロピレン樹脂を含む、
請求項1から請求項3のいずれかに記載のガラス繊維連結体の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程は、前記第一ガラス繊維ストランドの一方の端部と、前記第二ガラス繊維ストランドの一方の端部を重ね合わせた後に行われる、
請求項1から請求項
4のいずれかに記載のガラス繊維連結体の製造方法。
【請求項6】
連結部をヤーンによって被覆する被覆工程をさらに有する、
請求項1から請求項
5のいずれかに記載のガラス繊維連結体の製造方法。
【請求項7】
前記ヤーンは、軟化点が200℃以上の有機繊維を含む、
請求項
6に記載のガラス繊維連結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維フィラメントを含むガラス繊維ストランドを接合して、ガラス繊維連結体を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維フィラメントを複数本束ねて構成されるガラス繊維ストランドに関し、2本のガラス繊維ストランドの端部同士を接合してガラス繊維連結体を得る一般的な方法として、エアースプライスによる方法が知られている。エアースプライスによるガラス繊維ストランドの接合方法は、2本のガラス繊維ストランドの端部同士を重ね合わせて、重ね合わせた部分に高圧エアーを吹き付けることで、各ガラス繊維ストランドを構成するガラス繊維フィラメント同士を局部的に絡み合わせて接合する方法である。
【0003】
エアースプライスでガラス繊維ストランドを接合する場合には、各ガラス繊維ストランドの接合部である連結部における引張強度を高くすることが重要である。連結部における引張強度を高くするために、特許文献1に開示されるように、エアースプライスによる接合部に接着剤が塗布される。
【0004】
さらに、ガラス繊維ロービングについて、その尾部と頭部をエアースプライスにより接合するとともに、その接合部に接着剤を塗布することによって、複数のロービングを連結する技術が、特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2013-500914号公報
【文献】実開平2-64567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガラス繊維ストランドの接合に際し、接着剤を使用した場合には、接着剤の乾燥の為に多大な時間を要する。そのため、ガラス繊維連結体を製造するための時間が延びてしまう。
このため、ガラス繊維ストランドの接合に際し、接着剤を塗布することなく、連結部の引張強度を高める方法が望まれていた。
【0007】
本発明は、接着剤を用いることなく連結される構成でありながら、所望の優れた引張強度を有するガラス繊維連結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガラス繊維連結体の製造方法は、複数の第一ガラス繊維フィラメントと、前記第一ガラス繊維フィラメントに付着してなる第一被膜を含む第一ガラス繊維ストランドと、複数の第二ガラス繊維フィラメントと、前記第二ガラス繊維フィラメントに付着してなる第二被膜を含む第二ガラス繊維ストランドと、前記第一ガラス繊維ストランドと前記第二ガラス繊維ストランドとが連結した連結部と、を有するガラス繊維連結体の製造方法であって、前記第一ガラス繊維ストランドの一方の端部と、前記第二ガラス繊維ストランドの一方の端部を重ね合わせた後に気体を噴霧して前記連結部を形成する連結工程と、前記気体を噴射して前記連結部を形成する前に、前記第一ガラス繊維ストランドの一方の端部と、前記第二ガラス繊維ストランドの一方の端部の少なくとも一方を加熱する加熱工程を有する。
【0009】
このように、加熱工程を有することにより、第一ガラス繊維ストランド及び第二ガラス繊維ストランドを覆っている被膜が軟化するため、ガラス繊維フィラメントどうしが絡みやすくなる。そのため、接着剤を用いることなく連結された構成でありながら、所望の優れた引張強度を有するガラス繊維連結体を得ることができる。
なお、本発明において、上記の「前記気体を噴射して連結部を形成する前に、前記第一ガラス繊維ストランドの一方の端部と、前記第二ガラス繊維ストランドの一方の端部の少なくとも一方を加熱する加熱工程」とは、第一ガラス繊維ストランドの一方の端部と、第二ガラス繊維ストランドの一方の端部を重ね合わせる前に加熱する場合、または両者を重ね合わせた後に加熱する場合の何れかでもよいことを意味する。
【0010】
上記の構成において、前記加熱工程では、前記第一ガラス繊維ストランドの一方の端部と、前記第二ガラス繊維ストランドの一方の端部の少なくとも一方の温度X(℃)を60℃以上まで加熱し、温度X(℃)と加熱時間Y(秒)との積X×Yが、200~1000(℃・秒)であることが好ましい。
【0011】
このように、加熱温度と加熱時間を調整することで、ガラス繊維フィラメントどうしが絡みやすくなるとともに、加熱時間を短くできる。
【0012】
上記の構成において、前記第一被膜及び前記第二被膜を構成する成分の軟化点は、前記加熱温度よりも低いことが好ましい。
【0013】
これにより、被膜が十分に軟化するため、ガラス繊維フィラメントどうしがより絡みやすくなる。
【0014】
上記の構成において、前記加熱工程は、前記第一ガラス繊維ストランドの一方の端部と、前記第二ガラス繊維ストランドの一方の端部を重ね合わせた後に行われることが好ましい。
【0015】
このように、第一ガラス繊維ストランドの一方の端部と、第二ガラス繊維ストランドの一方の端部を重ね合わせた後に加熱工程を行うことにより、簡単に第一ガラス繊維ストランドと第二ガラス繊維ストランドの両方を加熱することができる。
【0016】
上記の構成において、連結部をヤーンによって被覆する被覆工程をさらに有することが好ましい。
【0017】
このように、連結部をヤーンによって被覆することで、連結部における引張強度を向上することができる。
【0018】
上記の構成において、前記ヤーンは、軟化点が200℃以上の有機繊維を含むことが好ましい。
【0019】
このように軟化点が高い有機繊維は柔軟性に優れるため、連結部が硬くなり、ガラス繊維連結体を加工する際において、加工の障害となることを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、接着剤を用いることなく連結される構成でありながら、所望の優れた引張強度を有するガラス繊維連結体を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体の製造に用いる際に用いる第一ロービングと第二ロービングの模式図、(b)本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体を示す模式図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体の製造工程を示す模式図。
【
図3】本発明の一実施形態に係るガラス繊維ストランドにおける糸継ぎ部およびラップ部の形成状況を示す模式図、( a ) 第二ストランドの先端部をラップ部によって包含させた態様を示す図、( b ) 糸継ぎ部の全範囲をラップ部によって包含させた態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0023】
始めに、本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体の製造方法において用いられるガラス繊維ストランド及び製造されるガラス繊維連結体について、
図1から
図3を用いて説明をする。
【0024】
なお、本実施形態では、構成して第一ロービング12と第二ロービング13とをそれぞれコイル状に巻いた所謂DWR(Direct Wound Roving)を用いる場合を例示して説明する。
図1(a)に示すように、本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体1は、第一ロービング12と第二ロービング13を連結して製造される。
ガラス繊維連結体1は、任意の用途に適用可能であるが、例えば、LFTP(熱可塑性長繊維強化樹脂)の素材として用いることができる。また、ガラス繊維連結体1は、成型部品等の製造に用いることもでき、長さ方向に引っ張られながら、連続的に製造装置等に供給される。
【0025】
第一ロービング12は、第一ガラス繊維ストランド2を巻いてコイル状に構成したものであり、第二ロービング13は、第二ガラス繊維ストランド3を巻いてコイル状に構成したものである。第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3は、いずれもガラス繊維フィラメント(第一ガラス繊維フィラメント、第二ガラス繊維フィラメント)を複数本集束して構成される。第一ガラス繊維ストランド2及び第二ガラス繊維ストランド3は、例えば、径が3~30μmである50~6000本の第一ガラス繊維フィラメント、第二ガラス繊維フィラメントを集束して構成される。
複数本の第一ガラス繊維フィラメント、第二ガラス繊維フィラメントを集束させるために集束剤が用いられる。第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3の製造時に用いる集束剤は、ポリプロピレン樹脂を含むことが好ましい。ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量は、5万以上、より好ましくは8万以上、さらに好ましくは10万以上である。このような構成によれば、LFTP等の製造時に、素材であるガラス繊維連結体1と溶融樹脂とを容易に親和させることができる。集束剤が100~200℃程度で乾燥されることにより、集束剤に含まれる水分が蒸発し、集束剤の被膜が形成される。第一ガラス繊維ストランド2を構成する被膜は第一被膜であり、第二ガラス繊維ストランド3を構成する被膜は第二被膜である。
なお、第一ガラス繊維ストランド2及び第二ガラス繊維ストランド3を構成する第一ガラス繊維フィラメント及び第二ガラス繊維フィラメントの本数、並びに、第一ガラス繊維ストランド2及び第二ガラス繊維ストランド3を構成する第一被膜及び第二被膜は同じであることが好ましい。
図1(b)に示すように、ガラス繊維連結体1は、第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3を、連結部4において連結して構成される。
【0026】
本説明では、ガラス繊維連結体1を構成する第一ガラス繊維ストランド2、第二ガラス繊維ストランド3のうち、第一ガラス繊維ストランド2を、第二ガラス繊維ストランド3よりも先に使用されるものとして規定しており、第二ガラス繊維ストランド3を、第一ガラス繊維ストランド2に続いて使用されるものとして規定している。
【0027】
そして、第一ガラス繊維ストランド2では、供給方向Xを基準として、先端部2aと後端部2bを規定しており、第二ガラス繊維ストランド3では、LFTPや成型部品の製造装置等に対する供給方向Xを基準として、先端部3aと後端部3bを規定している。
【0028】
図2(c)に示すように、連結部4は、第一ガラス繊維ストランド2の後端部2b側の端と第二ガラス繊維ストランド3の先端部3a側の端を、繊維方向が互いに略平行となる状態で所定の長さで重ね合わせて形成される部位である。連結部4の長さは、糸継ぎ長さAとして規定される。
【0029】
そして、連結部4は、複数のスプライス部5を有しており、第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3が連結されたガラス繊維連結体1となる。
【0030】
なお、本実施形態では、連結部4において、スプライス部5を3箇所備える態様のガラス繊維連結体1を例示しているが、ガラス繊維連結体1におけるスプライス部5の箇所数は1箇所以上であればよく、3箇所以上とすることが好ましい。また、ガラス繊維連結体1におけるスプライス部5の箇所数は、多くし過ぎても引張強度が高くならないため、6箇所以下とすることが好ましい。また、本実施形態では、連結部4の一部にスプライス部5が形成されているが、連結部4の糸継ぎ長さAと同じ長さのスプライス部5が形成されてもよい。
【0031】
スプライス部5は、後述するようにエアースプライスにより形成される部位であり、連結部4における局部に高圧エアーを吹き付けることによって、その局部において、第一ガラス繊維ストランド2の第一ガラス繊維フィラメントと第二ガラス繊維ストランド3の第二ガラス繊維フィラメントを絡み合わせて形成される。
【0032】
さらに、
図2(d)に示すように、ガラス繊維連結体1は、連結部4の少なくとも一部において、ラップ部6が形成されていることが好ましい。ラップ部6は、束ねた状態の第一および第二の各ガラス繊維ストランド2・3に、ヤーン7を巻き付けた部位である。なお、ガラス繊維ストランド1では、ラップ部6の長さをラップ長さBとして規定している。
【0033】
ガラス繊維連結体1では、連結部4の少なくとも一部にラップ部6を形成することによって、第一および第二の各ガラス繊維ストランド2・3を、ヤーン7で拘束することができるため、連結部4における引張強度を向上することができる。
なお、ラップ部6は、
図2(d)に示すように、スプライス部5と重ならない位置に形成されていてもよいが、ラップ部6は、
図3(a)に示すように、スプライス部5と重なるように形成されたり、
図3(b)に示すように、スプライス部5と重なるように形成されつつ、スプライス部5と重ならない位置に形成されていてもよい。このように、スプライス部5がヤーン7によって保護されることにより、連結部4における引張強度が高くなる。
【0034】
ヤーン7は、有機材料から成ることが好ましい。例えば、ヤーン7の軟化点は、200℃以上であることが好ましく、より好ましくは230℃ 以上、さらに好ましくは260℃ 以上である。具体的には、ヤーン7は、ポリエステル系樹脂繊維や、ポリアミド系樹脂繊維等であって良い。このような構成によれば、連結部4における引張強度を、より向上することができる。なお、上記は一例であり、ラップ部6の形成に用いるヤーン7の材質は、ガラス繊維連結体1の使用用途や使用するストランドの番手等に応じて適宜選択することができる。なお、ヤーン7の軟化点は350℃以下であることが好ましい。
【0035】
さらに、
図3(a)に示すように、ガラス繊維連結体1は、ラップ部6によって、連結部4を構成する第二ガラス繊維ストランド3の先端部3aを被覆する構成とすることが好ましい。このような構成により、ガラス繊維連結体1の供給時において、第二ガラス繊維ストランド3の先端部3aが使用時に引っ掛ることを防止できる
【0036】
さらに、
図3(a)に示すように、ガラス繊維連結体1では、第二ガラス繊維ストランド3の先端部3aを被覆するとともに、ラップ部6及び第二ガラス繊維ストランド3の先端部3aの両方を包含させる構成としている。このような構成により、連結部4における引張強度を向上しつつ、第二ガラス繊維ストランド3の先端部3aが使用時に引っ掛ることを防止できる。
【0037】
なお、ガラス繊維連結体1は、
図3(b)に示すように、ラップ部6によって、第一ガラス繊維ストランド2の後端部2b側の端及び第二ガラス繊維ストランド3の先端部3a側の端を覆うとともに、連結部4の全体を被覆する構成であってもよく、また、ラップ部6を複数箇所に設ける構成としてもよい。
【0038】
次に、本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体1の製造方法について、
図1及び
図2を用いて説明をする。
【0039】
まず、本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体1の製造方法では、
図2(b)に示すように、第一ガラス繊維ストランド2の後端部2b側の端と第二ガラス繊維ストランド3の先端部3a側の端を、繊維方向が互いに略平行となる状態で所定の長さで重ね合わせる(STEP-1)。
第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3の重なり部分が後に連結部4となる。重ね合わせ部の長さは、80mm~400mmであることが好ましい。重ね合わせ部の長さが短すぎると、エアースプライスを行いにくくなる。一方重ね合わせ部の長さが長すぎると、エアースプライス箇所を増やす必要があり、作業性が低下する。
【0040】
次に、第一ガラス繊維ストランド2の後端部2b側の端と第二ガラス繊維ストランド3の先端部3a側の端の少なくとも一方を加熱する(STEP-2)。
【0041】
第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3は、集束剤が乾燥されることにより形成された第一被膜及び第二被膜により覆われている。第一被膜により第一ガラス繊維フィラメントどうしが結束し、第二被膜により第二ガラス繊維フィラメントどうしが結束する。第一ガラス繊維ストランド2の後端部2b側の端と第二ガラス繊維ストランド3の先端部3a側の端の少なくとも一方を加熱することにより、被膜が軟化する。その結果、第一ガラス繊維フィラメントどうしの結束、及び第二ガラス繊維フィラメントどうしの結束が弱くなり、第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3を連結しやすくなる。
【0042】
なお、STEP-1の後にSTEP-2を行うことにより、第一ガラス繊維ストランド2の後端部2b側の端と第二ガラス繊維ストランド3の先端部3a側の端を同時に加熱することができる。これにより、第一被膜及び第二被膜の両方を軟化することができる。第一ガラス繊維ストランド2の後端部2b側の端と第二ガラス繊維ストランド3の先端部3a側の端を加熱する場合は、第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3の重なり部分に熱源を接触させる。また、第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3の重なり部分に、熱風を吹き付けるようにしてもよい。
【0043】
なお、加熱温度X(℃)は60℃以上が好ましく、加熱時間Y(秒)は、X×Yが200~1000(℃・秒)となるように設定することが好ましい。このように温度及び時間を設定することで、被膜を十分に軟化することができる。なお、加熱温度が高すぎる場合、被膜が焼失してしまい、黒く着色するため、250℃以下であることが好ましい。
【0044】
また、第一ロービング12の第一被膜及び第二ロービング13の第二被膜の軟化点は、加熱温度X(℃)よりも低いことが好ましい。これにより、被膜を十分に軟化することができる。なお、被膜の軟化点は、被膜が付着したガラス繊維ストランドから被膜を引きはがし、引きはがされた被膜成分をDSC示差走査熱量測定することで求められた値である。なお、DSC示差走査熱量測定することで求められる熱吸収のピーク値が120℃であることが好ましい。
【0045】
その後、
図2(c)に示すように、重ね合わせた部分に対してエアースプライスを行うことによって、複数のスプライス部5を形成する(STEP-3)。第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3は、複数のスプライス部5が形成されることによって連結部4が形成される。なお、STEP-3は、STEP-2の完了後、被膜が硬化する前に実行することが好ましい。そのため、STEP-3は、STEP-2の完了後、10秒以内に実行することが好ましい。
【0046】
なお、本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体1の製造方法では、スプライス部5を複数形成する構成としており、スプライス部5の箇所数は、1箇所~6箇所としている。また、本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体1の製造方法では、エアースプライスによってスプライス部5を形成するときのエアーの吐出圧力を、0.45~0.80MPaの範囲で設定している。
【0047】
次に、
図2(d)に示すように、本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体1の製造方法では、(STEP-3)において形成した連結部4の少なくとも一部にラップ部6を形成する(STEP-4)。
【0048】
本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体1の製造方法では、以上のような流れで、連結部4において複数のスプライス部5を形成し、第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3を連結して、ガラス繊維連結体1を製造する。
【0049】
なお、本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体1の製造方法では、ラップ部6のラップ長さBを、連結部4の糸継ぎ長さAに対して60%以下の長さとしている。
また、本発明の一実施形態に係るガラス繊維連結体1の製造方法では、エアースプライスによってスプライス部5を形成するときのエアーの吐出圧力を、0.45~0.80MPaの範囲で設定している。
【0050】
なお、本実施形態において、STEP-1、SPTP-2、STEP-3、STEP-4の順に実行したが、STEP-2、STEP-1、STEP-3、STEP-4の順に実行してもよい。STEP-2をSTEP-1よりも先に実行した場合、第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3を加熱しようとすると、個別に加熱する必要がある。第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3の少なくとも一方を加熱することでも、引張強度を向上させることができるが、第一ガラス繊維ストランド2と第二ガラス繊維ストランド3の両方を加熱した方が、より引張強度を向上させることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに詳細を説明する。但し、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0052】
(実施例1)
まず、ガラス繊維フィラメント4000本を束ね、表面が被膜(軟化点〇℃)により覆われたガラス繊維ストランドを巻き取ったロービングを2個準備した。次にそれぞれのロービングの一方端のガラス繊維ストランドを、80℃のヒーターに接触させて5秒間加熱した。
加熱完了後10秒以内に速やかに両方のガラス繊維ストランドどうしを重ね合わせた。なお、重ね合わせ部分の長さは15cmである。
そして、重ね合わせ部を、エアースプライサーによりスプライス部を生成した。エアースプライサーは、Airbond社の701HFWを使用した。エアー圧力は0.5MPaとした。エアースプライサーにより、1箇所のラップ部を、重ね合わせ部の中心部に生成した。これにより、連結部を有するガラス繊維連結体が製造される。
【0053】
次に、ガラス繊維連結体の連結部における引張強度を測定した。引張強度は、JIS R3420(2013年)に従った方法で測定した値である。
【0054】
(実施例2)
実施例2のガラス繊維連結体は、80℃のヒーターに接触させて30秒間加熱したこと以外は、実施例1と同じ方法で準備された。
そして、実施例1と同様の方法でガラス繊維連結体の連結部における引張強度を測定した。
【0055】
(実施例3)
実施例3のガラス繊維連結体は、140℃のヒーターに接触させて5秒間加熱したこと以外は、実施例1と同じ方法で準備された。
そして、実施例1と同様の方法でガラス繊維連結体の連結部における引張強度を測定した。
【0056】
(比較例1)
まず、ガラス繊維フィラメント4000本を束ね、表面が被膜(軟化点〇℃)により覆われたガラス繊維ストランドを巻き取ったロービングを2個準備した。次に、両方のガラス繊維ストランドどうしを重ね合わせた。なお、重ね合わせ部分の長さは15cmである。
そして、重ね合わせ部を、エアースプライサーによりラップ部を生成した。エアースプライサーは、Airbond社の701HFWを使用した。エアー圧力は0.5MPaとした。エアースプライサーにより、1箇所のラップ部を、重ね合わせ部の中心部に生成した。これにより、連結部を有するガラス繊維連結体が製造される。
【0057】
次に、ガラス繊維連結体の連結部における引張強度を測定した。引張強度は、実施例1と同様の方法でガラス繊維連結体の連結部における引張強度を測定した。
【0058】
実施例及び比較例における引張強度を表1に示す。
【0059】
【符号の説明】
【0060】
1…ガラス繊維連結体
2…第一ガラス繊維ストランド
3…第二ガラス繊維ストランド
4…連結部
5…スプライス部
6…ラップ部