(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20231109BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20231109BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20231109BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20231109BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231109BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H02J7/02 J
B60L58/12
B60L58/18
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
H02J7/00 302D
H02J7/02 B
(21)【出願番号】P 2020004785
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】長野 洋
(72)【発明者】
【氏名】實政 直樹
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-164260(JP,A)
【文献】特開2015-012711(JP,A)
【文献】特開2006-036003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用履歴のある複数の電池パックと、
前記複数の電池パックの各々における性能を求める演算部とを備え、
前記演算部は、
前記複数の電池パックの各々における暫定電池効率を求める予備演算部と、
前記複数の電池パックの各々における第一電池容量及び第一電池効率を求める第一演算部と、を有し、
前記暫定電池効率は、前記複数の電池パックの各々における公称容量、前記複数の電池パックをまとめて所定の電力量を充放電したときの前記複数の電池パックの各々における電力量、及び充電状態の変化に基づいて求められる値であり、
前記第一電池容量及び前記第一電池効率は、前記暫定電池効率に対する前記公称容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて充放電したときの前記複数の電池パックの各々における第一充電電力量及び第一放電電力量に基づいて求められる値である、
蓄電システム。
【請求項2】
前記複数の電池パックの各々において、
前記第一充電電力量は、充電状態が0%の前記複数の電池パックをまとめて充電し、いずれか一つの電池パックの充電状態が100%となったときの値であり、
前記第一放電電力量は、前記いずれか一つの電池パックの充電状態が100%となった後、前記複数の電池パックをまとめて放電し、前記いずれか一つの電池パックの充電状態が0%となったときの値であり、
前記第一電池容量は、前記第一放電電力量に基づいて求められる値であり、
前記第一電池効率は、前記第一充電電力量に対する前記第一放電電力量の比率で求められる値である請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記第一電池容量は、前記いずれか一つの電池パックの充電状態が100%となったときの前記複数の電池パックの各々における充電状態に対する前記第一放電電力量の比率で求められる値である請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記演算部は、前記複数の電池パックの各々における第二電池容量及び第二電池効率を求める第二演算部を有し、
前記第二電池容量及び前記第二電池効率は、前記暫定電池効率又は前記第一電池効率に対する前記第一電池容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて充放電したときの前記複数の電池パックの各々における第二充電電力量及び第二放電電力量に基づいて求められる値である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記複数の電池パックの各々において、
前記第二充電電力量は、充電状態が0%の電池パックを含む前記複数の電池パックをまとめて充電し、いずれか一つの電池パックの充電状態が100%となったときの値であり、
前記第二放電電力量は、充電状態が100%の電池パックを含む前記複数の電池パックをまとめて放電し、いずれか一つの電池パックの充電状態が0%となったときの値であり、
前記第二電池容量は、前記第二放電電力量に基づいて求められる値であり、
前記第二電池効率は、前記第二充電電力量に対する前記第二放電電力量の比率で求められる値である請求項4に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記第二演算部は、前記第一電池容量と充電状態とから充電余地及び充電残量を求め、
前記第二充電電力量は、充電状態が0%の電池パックを含む前記複数の電池パックをまとめて充電する際、前記暫定電池効率又は前記第一電池効率に対する前記充電余地の比率に応じた電力量を充電し、いずれか一つの電池パックの充電状態が100%となったときの値であり、
前記第二放電電力量は、充電状態が100%の電池パックを含む前記複数の電池パックをまとめて放電する際、前記暫定電池効率又は前記第一電池効率に対する前記充電残量の比率に応じた電力量を放電し、いずれか一つの電池パックの充電状態が0%となったときの値である請求項5に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記演算部は、前記複数の電池パックの各々における第三充電効率及び第三放電効率を求める第三演算部を備え、
前記第三充電効率及び前記第三放電効率は、前記第二電池容量と、前記複数の電池パックをまとめて所定の電力量を充放電したときの前記複数の電池パックの各々における電力量、及び充電状態の変化とに基づいて求められる値である請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項8】
前記第二電池効率の平方根に対する前記第二電池容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて充電する充電制御部と、
前記第二電池効率の平方根に対する前記第二電池容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて放電する放電制御部と、を備える請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【請求項9】
前記第三充電効率に対する前記第二電池容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて充電する充電制御部と、
前記第三放電効率に対する前記第二電池容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて放電する放電制御部と、を備える請求項7に記載の蓄電システム。
【請求項10】
前記複数の電池パックの各々は、電動車両の電池パックである請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バッテリパックが搭載された電気自動車を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電池パックをまとめて充放電する際、全ての電池パックを効果的に使用できる蓄電システムについて十分に検討されていなかった。
【0005】
そこで、本開示は、使用履歴のある複数の電池パックをまとめて充放電する際、全ての電池パックを効果的に使用できる蓄電システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る蓄電システムは、
使用履歴のある複数の電池パックと、
前記複数の電池パックの各々における性能を求める演算部とを備え、
前記演算部は、
前記複数の電池パックの各々における暫定電池効率を求める予備演算部と、
前記複数の電池パックの各々における第一電池容量及び第一電池効率を求める第一演算部と、を有し、
前記暫定電池効率は、前記複数の電池パックの各々における公称容量、前記複数の電池パックをまとめて所定の電力量を充放電したときの前記複数の電池パックの各々における電力量、及び充電状態の変化に基づいて求められる値であり、
前記第一電池容量及び前記第一電池効率は、前記暫定電池効率に対する前記公称容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて充放電したときの前記複数の電池パックの各々における第一充電電力量及び第一放電電力量に基づいて求められる値である。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る蓄電システムは、使用履歴のある複数の電池パックをまとめて充放電する際、全ての電池パックを効果的に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る蓄電システムの概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《本開示の実施形態の説明》
電気自動車などの電動車両の普及に伴い、使用履歴のある電動車両の電池パックを再利用することが検討されている。複数の電池パックの各々が使用履歴のある電動車両の電池パックである場合、複数の電池パックをまとめて充放電する際、各電池パックを均等に充放電すると各電池パックの充電状態がばらつくおそれがある。各電池パックが同一車種の電池パックであっても、電池パックの使用履歴が異なり疲労具合が異なることがあるからである。また、各電池パックが異なる車種の電池パックである場合、電池パックの使用履歴や疲労具合は勿論、公称容量や効率などの仕様や性能も異なることがあるからである。そのため、全ての電池パックを効果的に使用できない。なお、複数の電池パックが同一の新品の電池パックの場合は、蓄電システムを暫く運用していると、各電池パックの劣化具合にばらつきが生じるおそれがある。その場合、各電池パックの充電状態が次第にばらつき、全ての電池パックを効果的に使用できなくなる。
【0010】
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の一態様に係る蓄電システムは、
使用履歴のある複数の電池パックと、
前記複数の電池パックの各々における性能を求める演算部とを備え、
前記演算部は、
前記複数の電池パックの各々における暫定電池効率を求める予備演算部と、
前記複数の電池パックの各々における第一電池容量及び第一電池効率を求める第一演算部と、を有し、
前記暫定電池効率は、前記複数の電池パックの各々における公称容量、前記複数の電池パックをまとめて所定の電力量を充放電したときの前記複数の電池パックの各々における電力量、及び充電状態の変化に基づいて求められる値であり、
前記第一電池容量及び前記第一電池効率は、前記暫定電池効率に対する前記公称容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて充放電したときの前記複数の電池パックの各々における第一充電電力量及び第一放電電力量に基づいて求められる値である。
【0012】
上記蓄電システムは、使用履歴のある複数の電池パックをまとめて充放電する際、全ての電池パックを効果的に使用できる。第一演算部において、予備演算部で求めた暫定電池効率を用いることで比較的高精度な各電池パックの第一電池容量及び第一電池効率が求まる。そのため、各電池パックの使用履歴が異なっていたり、各電池パックの性能が異なっていたりしても、複数の電池パックをまとめて充放電する際、比較的高精度な各電池パックの第一電池容量及び第一電池効率に基づいて各電池パックを充放電できる。よって、全ての電池パックの充電状態にばらつきが生じ難く、全ての電池パックを同時にほぼ満充電にしたりほぼ完全放電にしたりし易い。即ち、特定の電池パックの過充電や過放電が抑制されるので、特定の電池パックの異常発熱が抑制されて寿命の低下が抑制される。
【0013】
また、上記蓄電システムは、各電池パックの第一電池容量及び第一電池効率をまとめて求めることができる。そのため、上記蓄電システムは、第一電池容量及び第一電池効率を各電池パックごとに個々に求めなくてもよい。よって、上記蓄電システムは、第一電池容量及び第一電池効率を求める手間がかかり難い。
【0014】
更に、上記蓄電システムは、全ての電池パックの充電状態がばらつき難いため、各電池パックの充電状態を合わせるように調整するバランシングが不要である。よって、バランシングのために運転停止期間を設ける必要がない。
【0015】
(2)上記蓄電システムの一形態として、
前記複数の電池パックの各々において、
前記第一充電電力量は、充電状態が0%の前記複数の電池パックをまとめて充電し、いずれか一つの電池パックの充電状態が100%となったときの値であり、
前記第一放電電力量は、前記いずれか一つの電池パックの充電状態が100%となった後、前記複数の電池パックをまとめて放電し、前記いずれか一つの電池パックの充電状態が0%となったときの値であり、
前記第一電池容量は、前記第一放電電力量に基づいて求められる値であり、
前記第一電池効率は、前記第一充電電力量に対する前記第一放電電力量の比率で求められる値であることが挙げられる。
【0016】
上記の構成は、複数の電池パックの各々において、高精度な第一充電電力量及び第一放電電力量を求めることができるため、高精度な第一電池容量及び第一電池効率が求まる。
【0017】
(3)上記(2)の上記蓄電システムの一形態として、
前記第一電池容量は、前記いずれか一つの電池パックの充電状態が100%となったときの前記複数の電池パックの各々における充電状態に対する前記第一放電電力量の比率で求められる値であることが挙げられる。
【0018】
上記の構成は、複数の電池パックの各々において、より高精度な第一電池容量を求めることができる。即ち、より高精度な第一電池効率が求まる。
【0019】
(4)上記蓄電システムの一形態として、
前記演算部は、前記複数の電池パックの各々における第二電池容量及び第二電池効率を求める第二演算部を有し、
前記第二電池容量及び前記第二電池効率は、前記暫定電池効率又は前記第一電池効率に対する前記第一電池容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて充放電したときの前記複数の電池パックの各々における第二充電電力量及び第二放電電力量に基づいて求められる値であることが挙げられる。
【0020】
上記の構成は、使用履歴のある複数の電池パックをまとめて充放電する際、全ての電池パックをより効果的に使用できる。第二演算部において、第一演算部で求めた第一電池容量を用いることで、第一電池容量よりも高精度な第二電池容量が求まる。即ち、第一電池効率よりも高精度な各電池パックの第二電池効率が求まる。そのため、複数の電池パックをまとめて充放電する際、より高精度な各電池パックの第二電池容量と第二電池効率とに基づいて各電池パックを充放電できる。よって、全ての電池パックの充電状態が更にばらつき難い。
【0021】
(5)上記(4)の上記蓄電システムの一形態として、
前記複数の電池パックの各々において、
前記第二充電電力量は、充電状態が0%の電池パックを含む前記複数の電池パックをまとめて充電し、いずれか一つの電池パックの充電状態が100%となったときの値であり、
前記第二放電電力量は、充電状態が100%の電池パックを含む前記複数の電池パックをまとめて放電し、いずれか一つの電池パックの充電状態が0%となったときの値であり、
前記第二電池容量は、前記第二放電電力量に基づいて求められる値であり、
前記第二電池効率は、前記第二充電電力量に対する前記第二放電電力量の比率で求められる値であることが挙げられる。
【0022】
上記の構成は、複数の電池パックの各々において、高精度な第二充電電力量及び第二放電電力量を求めることができるため、高精度な第二電池容量及び第二電池効率が求まる。
【0023】
(6)上記(5)の上記蓄電システムの一形態として、
前記第二演算部は、前記第一電池容量と充電状態とから充電余地及び充電残量を求め、
前記第二充電電力量は、充電状態が0%の電池パックを含む前記複数の電池パックをまとめて充電する際、前記暫定電池効率又は前記第一電池効率に対する前記充電余地の比率に応じた電力量を充電し、いずれか一つの電池パックの充電状態が100%となったときの値であり、
前記第二放電電力量は、充電状態が100%の電池パックを含む前記複数の電池パックをまとめて放電する際、前記暫定電池効率又は前記第一電池効率に対する前記充電残量の比率に応じた電力量を放電し、いずれか一つの電池パックの充電状態が0%となったときの値であることが挙げられる。
【0024】
上記の構成は、複数の電池パックの各々においてより高精度な第二充電電力量及び第二放電電力量を求めることができるため、より高精度な第二電池容量及び第二電池効率を求めることができる。
【0025】
(7)上記(4)から上記(6)のいずれか1つの上記蓄電システムの一形態として、
前記演算部は、前記複数の電池パックの各々における第三充電効率及び第三放電効率を求める第三演算部を備え、
前記第三充電効率及び前記第三放電効率は、前記第二電池容量と、前記複数の電池パックをまとめて所定の電力量を充放電したときの前記複数の電池パックの各々における電力量、及び充電状態の変化とに基づいて求められる値であることが挙げられる。
【0026】
上記の構成は、使用履歴のある複数の電池パックをまとめて充放電する際、全ての電池パックをより効果的に使用できる。第三演算部において、第二演算部で求めた第二電池容量を用いることで高精度な各電池パックの第三充電効率及び第三放電効率が求まる。そのため、複数の電池パックをまとめて充放電する際、充電時には高精度な各電池パックの第三充電効率に基づいて各電池パックを充電でき、放電時には高精度な第三放電効率に基づいて各電池パックを放電できる。よって、充電時と放電時とで平均電力が異なる場合であっても、充電時と放電時のいずれにおいても全ての電池パックの充電状態がばらつき難い。
【0027】
(8)上記(4)から上記(6)のいずれか1つの上記蓄電システムの一形態として、
前記第二電池効率の平方根に対する前記第二電池容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて充電する充電制御部と、
前記第二電池効率の平方根に対する前記第二電池容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて放電する放電制御部と、を備えることが挙げられる。
【0028】
上記の構成は、充電時と放電時とで平均電力が実質的に同じである場合、全ての電池パックの充電状態がばらつき難い。
【0029】
(9)上記(7)の上記蓄電システムの一形態として、
前記第三充電効率に対する前記第二電池容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて充電する充電制御部と、
前記第三放電効率に対する前記第二電池容量の比率に応じて前記複数の電池パックをまとめて放電する放電制御部と、を備えることが挙げられる。
【0030】
上記の構成は、充電時と放電時とで平均電力が異なる場合であっても、充電時と放電時のいずれにおいても全ての電池パックの充電状態がばらつき難い。
【0031】
(10)上記蓄電システムの一形態として、
前記複数の電池パックの各々は、電動車両の電池パックであることが挙げられる。
【0032】
上記の構成は、複数の電動車両の電池パックを再利用できる。
【0033】
《本開示の実施形態の詳細》
本開示の実施形態の詳細を、以下に説明する。
【0034】
《実施形態》
〔蓄電システム〕
図1を参照して、実施形態に係る蓄電システム1を説明する。蓄電システム1は、使用履歴のある複数の電池パック3を備える。本形態に係る蓄電システム1の特徴の一つは、複数の電池パック3の各々における性能を演算する演算部6を有する点にある。以下、詳細に説明する。
図1の黒塗り矢印は充電を示し、白塗り矢印は放電を示している。
【0035】
[電池パック]
各電池パック3は、使用履歴のある電池パックである。使用履歴のある複数の電池パック3とは、中古で同じ又は異なる仕様、性能の電池パックの集合体が含まれることは勿論、新品で同じ又は異なる仕様、性能の電池パックの集合体で蓄電システム1を構築したが、蓄電システム1として使用中のものも含まれる。
【0036】
各電池パック3の使用履歴は、互いに同一であってもよいし、少なくとも1つの電池パック3の使用履歴が他の電池パック3と異なっていてもよい。勿論、全ての電池パック3の使用履歴が異なっていてもよい。各電池パック3における公称容量や効率などの仕様や性能は、互いに同一であってもよいし、少なくとも一つの電池パック3の仕様や性能が他の電池パック3と異なっていてもよい。勿論、全ての電池パック3の仕様や性能が互いに異なっていてもよい。
【0037】
各電池パック3は、二次電池である。二次電池としては、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などが挙げられる。
【0038】
各電池パック3は、電動車両に搭載されていた電池パックであることが好ましい。そうすれば、複数の電動車両の電池パックを再利用できる。電動車両としては、電気自動車やハイブリッド自動車が挙げられる。各電池パック3は、例えば、車種が同一の電気自動車に搭載されていたものでもよいし、少なくとも1つ電池パック3が、他の電池パック3と車種の異なる電気自動車に搭載されていたものでもよい。勿論、全ての電池パック3が、互いに車種の異なる電気自動車に搭載されていたものでもよい。
【0039】
各電池パック3は、コンバータ40、及び電気計器41を介して電力バス2につながる。各電池パック3は、電力バス2を介して充電したり放電したりする。電力バス2は、交流バスでもよいし、直流バスでもよい。電力バス2が直流バスの場合、電力バス2の先に交直変換するインバータを介し、電力バス2が交流バスの場合、電力バス2と電池パック3との間にインバータを介することが挙げられる。インバータの図示は省略する。各コンバータ40は、充電時、電力バス2の電圧を電池パック3の電圧に降圧し、放電時、電池パック3から出力される電圧を電力バス2の電圧に昇圧する。各電気計器41は、各電池パック3の充電電力と放電電力とを測定する電力計と、各電池パック3の充電電力量の積算値と放電電力量の積算値とを測定する電力量計とを有する。各電気計器41の測定結果は、後述する電力管理装置5に送られる。各電池パック3は、電池モジュール31と電池制御装置32とを有する。
【0040】
電池モジュール31は、複数の電池セルを組み合わせたものである。複数の電池セルは、バスバによって並列又は直列に接続されている。電池セル及びバスバの図示は省略する。バスバには、各電池セルの電圧を検知する電圧センサが取り付けられている。
図1の各電池モジュール31の網掛け箇所は、各電池モジュールの充電残量を模式的に示し、空白箇所は、各電池モジュール31の充電余地を模式的に示す。充電残量及び充電余地は後述する。
【0041】
電池制御装置32は、電力管理装置5からの指令によって、各電池パック3の充放電電力量を制御する。電力管理装置5としては、EMS(Energy Manegement System)が挙げられる。また、電池制御装置32は、電池モジュール31の電圧、電流、及び温度などを監視し、電池パック3の状態を管理する。電池制御装置32としては、BMS(Battery Management System)が挙げられる。
【0042】
[演算部]
演算部6は、各電池パック3の性能を求める。演算部6は、電力管理装置5に備わる。演算部6は、予備演算部60と、第一演算部61とを有する。演算部6は、更に、第二演算部62を有すること、又は第二演算部62と第三演算部63とを有することが好ましい。
【0043】
(予備演算部)
予備演算部60は、各電池パック3の暫定電池効率を求める。各電池パック3の暫定電池効率としては、暫定充電効率Eck(%)、暫定放電効率Edk(%)、及び暫定充放電効率E0k(%)が挙げられる。
【0044】
〈暫定充電効率Eck〉
各暫定充電効率Eckは、各電池パック3の「公称容量Ck×(充電時の充電状態の変化ΔSck/所定の充電電力量ΔWck)」、によって求められる値である。公称容量Ck(Wh)は、既知である。充電時の充電状態の変化量ΔSck(%)は、複数の電池パック3をまとめて充電した際の各電池パック3における充電前後の充電状態の差である。即ち、所定の充電電力量ΔWck(Wh)を各電池パック3に充電した後の充電状態と、所定の充電電力量ΔWck(Wh)を各電池パック3に充電する前の充電状態との差である。各充電状態は、BMSによって把握できる。
【0045】
〈暫定放電効率Edk〉
各暫定放電効率Edkは、各電池パック3の「上記公称容量Ck×(放電時の充電状態の変化ΔSdk/所定の放電電力量ΔWdk)」、によって求められる値である。放電時の充電状態の変化量ΔSdk(%)は、複数の電池パック3をまとめて放電した際の各電池パック3における放電前後の充電状態の差である。即ち、各電池パック3から所定の放電電力量ΔWdk(Wh)を放電した後の充電状態と、各電池パック3から所定の放電電力量ΔWdk(Wh)を放電する前の充電状態との差である。
【0046】
所定の充電電力量ΔWckと所定の放電電力量ΔWdkとは、異なっていてもよいものの、同一であることが好ましい。
【0047】
〈暫定充放電効率E0k〉
各暫定充放電効率E0kは、各電池パック3の「(放電電力量/充電電力量)×100」、によって求められる値である。上記充電電力量は、複数の電池パック3をまとめて充電し、各電池パック3の充電状態が第一充電状態から第二充電状態に変化するのに要した電力量である。上記放電電力量は、複数の電池パック3をまとめて放電し、各電池パック3の充電状態が上記第二充電状態から上記第一充電状態となるまで放電したときに得られる電力量である。
【0048】
(第一演算部)
第一演算部61は、各電池パック3の第一電池容量Wd’k(Wh)及び第一電池効率Ek(%)を求める。各電池パック3の第一電池容量Wd’k及び第一電池効率Ekは、各電池パック3の第一充電電力量Wck(Wh)及び第一放電電力量Wdk(Wh)に基づいて求められる値である。
【0049】
〈第一充電電力量Wck〉
各第一充電電力量Wckは、次のようにして求められる値である。まず、各電池パック3の充電状態を0%にする。次に、複数の電池パック3をまとめて充電する。その際、定格電力P(W)を各電池パック3に所定の比率で分配する。定格電力Pとは、本形態の蓄電システム1の所有者などが、蓄電システム1の用途に応じて決定する蓄電システム1全体の電力の目論見値である。蓄電システム1は、定格電力Pを満たすように複数の電池パック3を収集して構築される。各電池パック3に分配される比率は、以下の(1)又は(2)の比率が挙げられる。
(1)暫定充電効率Eckに対する公称容量Ckの比率Ck/Eck
(2)暫定充放電効率E0kに対する公称容量Ckの比率Ck/E0k
いずれか一つの電池パック3の充電状態が100%となるまで充電する。いずれか一つの電池パック3の充電状態が100%となったときの各電池パック3の充電電力量が、各電池パック3の第一充電電力量Wckである。複数の電池パック3の第一充電電力量Wckの合計が、蓄電システム1全体の第一充電電力量Wcs(Wh)である。
【0050】
〈第一放電電力量Wdk〉
各第一放電電力量Wdkは、次のようにして求められる値である。いずれか一つの電池パック3の充電状態が100%となった複数の電池パック3をまとめて放電する。その際、複数の電池パック3の放電電力の合計が定格電力P(W)となるように、各電池パック3を所定の比率で放電する。所定の比率は、以下の(1)又は(2)の比率が挙げられる。
(1)暫定放電効率Edk対する公称容量Ckの比率Ck/Edk
(2)暫定充放電効率E0k対する公称容量Ckの比率Ck/E0k
いずれか一つの電池パック3の充電状態が0%となるまで放電する。いずれか一つの電池パック3の充電状態が0%となったときの各電池パック3の放電電力量が、各電池パック3の第一放電電力量Wdkである。複数の電池パック3の第一放電電力量Wdkの合計が、蓄電システム1全体の第一放電電力量Wds(Wh)である。
【0051】
〈第一電池容量Wd’k〉
各第一電池容量Wd’kは、各電池パック3の「(第一放電電力量Wdk/充電状態Sf)×100」、によって求められる値である。各電池パック3の充電状態Sfは、第一充電電力量Wckを求める際にいずれか一つの電池パック3の充電状態が100%となったときの各電池パック3の充電状態である。
【0052】
〈第一電池効率Ek〉
各第一電池効率Ekは、各電池パック3の「第一放電電力量Wdk/第一充電電力量Wck」、によって求められる値である。
【0053】
〈蓄電システム全体の第一電池容量Wds〉
蓄電システム1全体の第一電池容量Wds(Wh)は、蓄電システム1全体の第一放電電力量Wds(Wh)である。
【0054】
〈蓄電システム全体の第一電池効率Es〉
蓄電システム1全体の第一電池効率Es(%)は、「蓄電システム1全体の第一放電電力量Wds/蓄電システム1全体の第一充電電力量Wcs」、によって求められる値である。
【0055】
(第二演算部)
第二演算部62は、各電池パック3の第二電池容量Wd”k及び第二電池効率E’kを求める。各電池パック3の第二電池容量Wd”k及び第二電池効率E’kは、各電池パック3の第二充電電力量Wc’k及び第二放電電力量Wd”kに基づいて求められる値である。
【0056】
〈第二充電電力量Wc’k〉
各第二充電電力量Wc’kは、次のようにして求められる値である。第一放電電力量Wdkを求める際にいずれか一つの電池パック3の充電状態が0%となった複数の電池パック3をまとめて充電する。その際、定格電力P(W)を各電池パック3に所定の比率で分配する。分配する比率は、以下の(1)又は(2)の比率が挙げられる。
(1)暫定充電効率Eckに対する第一電池容量Wd’kの比率Wd’k/Eck
(2)第一電池効率Ekに対する第一電池容量Wd’kの比率Wd’k/Ek
【0057】
所定の時間充電したら、定格電力P(W)を各電池パック3に分配する比率を以下の(1)又は(2)の比率に変更する。
(1)暫定充電効率Eckに対する充電余地Cakの比率Cak/EcK
(2)第一電池効率Ekに対する充電余地Cakの比率Cak/Ek
【0058】
各充電余地Cakは、各電池パック3の充電可能な残容量である。各充電余地Cakは、各電池パック3の「第一電池容量Wd’k×(100-充電状態Sk)」、によって求められる値である。充電状態Skは、定期的に求めるとよい。
【0059】
いずれか一つの電池パック3の充電状態が100%となるまで充電する。いずれか一つの電池パック3の充電状態が100%となったときの各電池パック3の充電電力量が、第二充電電力量Wc’kである。複数の電池パック3の第二充電電力量Wc’kの合計が、蓄電システム1全体の第二充電電力量Wc’s(Wh)である。
【0060】
〈第二放電電力量Wd”k〉
各第二放電電力量Wd”kは、次のようにして求められる値である。第二充電電力量Wc’kを求める際にいずれか一つの電池パック3の充電状態が100%となった複数の電池パック3をまとめて放電する。その際、複数の電池パック3の放電電力の合計が定格電力P(W)となるように、各電池パック3を所定の比率で放電する。所定の比率は、以下の(1)又は(2)の比率が挙げられる。
(1)暫定放電効率Edkに対する第一電池容量Wd’kの比率Wd’k/Eck
(2)第一電池効率Ekに対する第一電池容量Wd’kの比率Wd’k/Ek
【0061】
所定の時間充電したら、各電池パック3を放電する比率を以下の(1)又は(2)の比率に変更する。
(1)暫定放電効率Edkに対する充電残量Crkの比率Crk/Edk
(2)第一電池効率Ekに対する充電残量Crkの比率Crk/Ek
【0062】
各充電残量Crkは、放電可能な残容量である。各充電残量Crkは、各電池パック3の「第一電池容量Wd’k×充電状態Sk」、によって求められる値である。充電状態Skは、定期的に求めるとよい。
【0063】
いずれか一つの電池パック3の充電状態が0%となるまで放電する。いずれか一つの電池パック3の充電状態が0%となったときの各電池パック3の放電電力量が、第二放電電力量Wd”kである。複数の電池パック3の第二放電電力量Wd”kの合計が、蓄電システム1全体の第二放電電力量Wd”s(Wh)である。
【0064】
〈第二電池容量Wd”k〉
各第二電池容量Wd”k(Wh)は、各電池パック3の第二放電電力量Wd”kである。
【0065】
〈第二電池効率E’k〉
各第二電池効率E’k(%)は、各電池パック3の「第二放電電力量Wd”k/第二充電電力量Wc’k」、によって求められる値である。
【0066】
〈蓄電システム全体の第二電池容量Wd”s〉
蓄電システム1全体の第二電池容量Wd”s(Wh)は、蓄電システム1全体の第二放電電力量Wd”s(Wh)である。
【0067】
〈蓄電システム全体の第二電池効率E’s〉
蓄電システム1全体の第二電池効率E’s(%)は、「蓄電システム1全体の第二放電電力量Wd”s/蓄電システム1全体の第二充電電力量Wc’s」、によって求められる値である。
【0068】
(第三演算部)
第三演算部63は、各電池パック3の第三充電効率Fck及び第三放電効率Fdkを求める。
【0069】
〈第三充電効率Fck〉
各第三充電効率Fckは、各電池パック3の「第二電池容量Wd”k×(充電時の充電状態の変化ΔSck/所定の充電電力量ΔWck)」、によって求められる値である。充電時の充電状態の変化量ΔSckは、上述の通り、複数の電池パック3をまとめて充電した際の各電池パック3における充電前後の充電状態の差である。即ち、所定の充電電力量ΔWck(Wh)を各電池パック3に充電した後の充電状態と、所定の充電電力量ΔWck(Wh)を各電池パック3に充電する前の充電状態との差である。
【0070】
〈第三放電効率Fdk〉
各第三放電効率Fdkは、各電池パック3の「第二電池容量Wd”k×(放電時の充電状態の変化ΔSdk/所定の放電電力量ΔWdk)」、によって求められる値である。放電時の充電状態の変化量ΔSdkは、上述の通り、複数の電池パック3をまとめて放電した際の各電池パック3における放電前後の充電状態の差である。即ち、各電池パック3から所定の放電電力量ΔWdk(Wh)を放電した後の充電状態と、各電池パック3から所定の放電電力量ΔWdk(Wh)を放電する前の充電状態との差である。
【0071】
所定の充電電力量ΔWckと所定の放電電力量ΔWdkとは、異なっていてもよいものの、同一であることが好ましい。
【0072】
(演算手順)
演算手順としては、手順Iから手順IIIの3つの手順が挙げられる。手順Iから手順IIIは、いずれも以下のA過程からC過程を順に経る。
【0073】
A過程は、暫定電池効率を求める。
A過程は、暫定充電効率Eckを求めるA1過程及び暫定放電効率Edkを求めるA2過程を有する。又は、A過程は、A1過程及びA2過程を有さず、暫定充放電効率E0kを求めるA3過程を有する。
【0074】
B過程は、第一電池容量Wd’k及び第一電池効率Ekを求める。
B過程は、第一充電電力量Wckを求めるB1過程と、第一放電電力量Wdkを求めるB2過程とを有する。
【0075】
C過程は、第二電池容量Wd”k及び第二電池効率E’kを求める。
C過程は、第二充電電力量Wc’kを求めるC1過程と、第二放電電力量Wd”kを求めるC2過程とを有する。
【0076】
手順Iと手順IIとの相違点は、詳細は後述するものの、C過程で用いるパラメータにある。手順Iは、C過程において、暫定充電効率Eck及び暫定放電効率Edkを用いる。一方、手順IIは、C過程において、第一電池効率Ekを用いる。
【0077】
手順IIと手順IIIとの相違点は、詳細は後述するものの、A過程で経る過程と、B過程で用いるパラメータとにある。手順IIは、A過程において、A1過程及びA2過程を経て、B過程において、暫定充電効率Eck及び暫定放電効率Edkを用いる。一方、手順IIIは、A過程において、A3過程を経て、B過程において、暫定充放電効率E0kを用いる。
【0078】
〈手順I〉
手順Iは、A1過程、A2過程、B1過程、B2過程、C1過程、及びC2過程を順に経る。
【0079】
A1過程は、暫定充電効率Eckを求める。
A2過程は、A1過程の後、暫定放電効率Edkを求める。
所定の充電電力量ΔWck及び放電電力量ΔWdkが小さければ、暫定充電効率Eck及び暫定放電効率Edkを求める時間が短くなり、延いては手順Iに要する時間が短くなる。所定の充電電力量ΔWck及び放電電力量ΔWdkが大きければ、比較的高精度な暫定充電効率Eck及び暫定放電効率Edkが求まる。
【0080】
B1過程は、A2過程の後、各電池パック3の充電状態が0%の状態からいずれか一つの電池パック3の充電状態が100%となるまで、複数の電池パック3をまとめて充電する。その際、定格電力P(W)を各電池パック3に暫定充電効率Eckに対する公称容量Ckの比率Ck/Eckで分配する。
【0081】
B2過程は、B1過程によっていずれか一つの電池パック3の充電状態が100%となった複数の電池パック3のうちいずれか一つの電池パック3の充電状態が0%となるまで、複数の電池パック3をまとめて放電する。その際、複数の電池パック3の放電電力の合計が定格電力P(W)となるように、暫定放電効率Edk対する公称容量Ckの比率Ck/Edkで放電する。
【0082】
C1過程は、B2過程によって、いずれか一つの電池パック3の充電状態が0%となった複数の電池パック3をまとめて充電する。その際、定格電力P(W)を各電池パック3に暫定充電効率Eckに対する第一電池容量Wd’kの比率Wd’k/Eckで分配する。所定の時間充電したら、定期的に充電状態をモニタしつつ定格電力P(W)を各電池パック3に分配する比率を暫定充電効率Eckに対する充電余地Cakの比率Cak/Eckに変更して、いずれか一つの電池パック3の充電状態が100%となるまで、複数の電池パック3をまとめて充電する。
【0083】
C2過程は、C1過程によっていずれか一つの電池パック3の充電状態が100%となった複数の電池パック3をまとめて放電する。その際、複数の電池パック3の放電電力の合計が定格電力P(W)となるように、暫定放電効率Edkに対する第一電池容量Wd’kの比率Wd’k/Eckで放電する。所定の時間放電したら、定期的に充電状態をモニタしつつ各電池パック3を放電する比率を暫定放電効率Edkに対する充電残量Crkの比率Crk/Edkに変更して、いずれか一つの電池パック3の充電状態が0%となるまで、複数の電池パック3をまとめて放電する。
【0084】
〈手順II〉
手順IIは、手順Iと同様、A1過程、A2過程、B1過程、B2過程、C1過程、及びC2過程を順に経る。
【0085】
A1過程とA2過程とB1過程とB2過程とは、手順Iと同様である。B2過程後、B1過程で求めた各第一充電電力量WckとB2過程で求めた各第一放電電力量Wdkとの比率Wdk/Wckから、各第一電池効率Ekを求める。そして、C1過程では、定格電力P(W)を各電池パック3に各第一電池効率Ekに対する各第一電池容量Wd’kの比率Wd’k/Ekで分配する。所定の時間充電したら、定格電力P(W)を各電池パック3に分配する比率を各第一電池効率Ekに対する各充電余地Cakの比率Cak/Ekに変更する。
【0086】
〈手順III〉
手順IIIは、A3過程、B1過程、B2過程、C1過程、及びC2過程を順に経る。
【0087】
A3過程は、暫定充放電効率E0kを求める。B1過程では、定格電力P(W)を各電池パック3に暫定充放電効率E0kに対する公称容量Ckの比率Ck/E0kで分配する。B2過程では、複数の電池パック3の放電電力の合計が定格電力P(W)となるように、暫定充放電効率E0k対する公称容量Ckの比率Ck/E0kで放電する。C1過程とC2過程とは、手順IIと同じである。
【0088】
手順Iから手順IIIはいずれも、更に、D過程を経てもよい。D過程は、C過程後、第三充電効率Fck及び第三放電効率Fdkを求める。
【0089】
手順Iから手順IIIのいずれかの手順を経るタイミングは、蓄電システム1の運用前、又は蓄電システム1の運用後の定期検査時などが挙げられる。
【0090】
各電池パック3が中古の電池パックである場合、上記タイミングは、蓄電システム1の運用前であるとよい。そうすれば、蓄電システム1の運用前に各電池パック3の性能を高精度に把握できるため、蓄電システム1の運用時に、全ての電池パック3をまとめて充放電する際、全ての電池パックを効果的に使用できる。
【0091】
各電池パック3が新品の電池パックである場合、上記タイミングは、蓄電システム1の運用後の定期検査時であるとよい。新品の電池パックの場合、基本的には、各電池パック3の性能は公称値通りとなる。そのため、運用前に上記手順を経なくても、蓄電システム1の運用時に、全ての電池パック3をまとめて充放電する際、全ての電池パックを効果的に使用できる。蓄電システム1を暫く運用すると、各電池パック3の劣化具合に差が生じるおそれがある。そのため、定期検査時などに上記手順を経ると、劣化具合に差が生じても、各電池パック3の性能を高精度に把握できる。よって、再運用時に全ての電池パック3をまとめて充放電する際、全ての電池パックを効果的に使用できる。勿論、上記タイミングは、蓄電システム1の運用前と、運用後の定期検査時の両方であってもよい。
【0092】
[制御部]
蓄電システム1は、制御部7を有することが挙げられる。制御部7は、電力管理装置5に備わる。制御部7は、充電制御部71と放電制御部72とを有する。
【0093】
(充電制御部)
充電制御部71は、複数の電池パック3をまとめて充電する。その際、各電池パック3を以下の(1)又は(2)の比率で充電する。
(1)第二電池効率E’kの平方根に対する第二電池容量Wd”kの比率Wd”k/(E’k)1/2
(2)第三充電効率Fckに対する第二電池容量Wd”kの比率Wd”k/Fck
【0094】
特に、以下の(1)又は(2)の比率で充電することが好ましい。
(1)第二電池効率E’kの平方根に対する充電余地Cakの比率Cak/(E’k)1/2
(2)第三充電効率Fckに対する充電余地Cakの比率Cak/Fck
【0095】
各充電余地Cakは、各電池パック3の充電可能な残容量である。各充電余地Cakは、各電池パック3の「第二電池容量Wd”k×(100-充電状態Sk)」、によって求められる値である。
【0096】
(放電制御部)
放電制御部72は、複数の電池パック3をまとめて放電する。その際、各電池パック3を以下の(1)又は(2)の比率で放電する。
(1)第二電池効率E’kの平方根に対する第二電池容量Wd”kの比率Wd”k/(E’k)1/2
(2)第三放電効率Fdkに対する第二電池容量Wd”kの比率Wd”k/Fdk
【0097】
特に、以下の(1)又は(2)の比率で放電することが好ましい。
(1)第二電池効率E’kの平方根に対する充電残量Crkの比率Crk/(E’k)1/2
(2)第三放電効率Fdkに対する充電残量Crkの比率Crk/Fdk
【0098】
各充電残量Crkは、放電可能な残容量である。各充電残量Crkは、各電池パック3の「第二電池容量Wd”k×充電状態Sk」、によって求められる値である。
【0099】
充電時と放電時とで平均電力が実質的に同一な場合、充電制御部71及び放電制御部72はそれぞれ、上記(1)の比率で充電及び放電するとよい。その場合、全ての電池パック3の充電状態がばらつき難い。一方、上記平均電力が異なる場合、充電制御部71及び放電制御部72はそれぞれ上記(2)の比率で充電及び放電するとよい。その場合であっても、充電時と放電時のいずれにおいても全ての電池パック3の充電状態がばらつき難い。
【0100】
〔作用効果〕
本形態の蓄電システム1は、使用履歴のある複数の電池パック3をまとめて充放電する際、全ての電池パック3を効果的に使用できる。
【0101】
第一演算部61において、予備演算部60で求めた暫定電池効率を用いることで高精度な第一電池容量Wd’k及び第一電池効率Ekが求まる。そして、第二演算部62において、第一演算部61で求めた第一電池容量Wd’kを用いることで、第一電池容量Wd’kよりも高精度な第二電池容量Wd”kが求まる。即ち、第一電池効率Ekよりも高精度な第二電池効率E’kが求まる。そのため、複数の電池パック3をまとめて充放電する際、より高精度な各電池パック3の第二電池容量Wd”kと第二電池効率E’kとに基づいて各電池パック3を充放電できる。よって、全ての電池パック3の充電状態が更にばらつき難い。
【0102】
第三演算部63において、第二演算部62で求めた第二電池容量Wd”kを用いることで高精度な第三充電効率Fck及び第三放電効率Fdkが求まる。そのため、複数の電池パック3をまとめて充放電する際、充電時には高精度な第三充電効率Fckに基づいて各電池パック3を充電でき、放電時には高精度な第三放電効率Fdkに基づいて各電池パック3を放電できる。よって、充電時と放電時とで平均電力が異なる場合であっても、充電時と放電時のいずれにおいても全ての電池パック3の充電状態がばらつき難い。
【0103】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
1 蓄電システム
2 電力バス
3 電池パック
31 電池モジュール
32 電池制御装置
40 コンバータ
41 電気計器
5 電力管理装置
6 演算部
60 予備演算部
61 第一演算部
62 第二演算部
63 第三演算部
7 制御部
71 充電制御部
72 放電制御部