(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】飼料用添加剤及び飼料
(51)【国際特許分類】
A23K 20/163 20160101AFI20231109BHJP
A23K 40/30 20160101ALI20231109BHJP
A23K 20/24 20160101ALI20231109BHJP
【FI】
A23K20/163
A23K40/30 A
A23K20/24
(21)【出願番号】P 2020506685
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2019011163
(87)【国際公開番号】W WO2019177172
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2018049061
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】上原 章敬
(72)【発明者】
【氏名】前川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】中川 一輝
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-531728(JP,A)
【文献】特開2002-306085(JP,A)
【文献】国際公開第2006/082824(WO,A1)
【文献】OYOFO, B. A., DELOACH, J. R., CORRIER, D. E., NORMAN, J. O., ZIPRIN, R. L., and MOLLENHAUER, H. H.,Prevention of Salmonella typhimurium Colonization of Broilers with D-Mannose,POULTRY SCIENCE,1989年10月,Vol. 68, No. 10,pp. 1357 - 1360
【文献】IJI, P. A, SAKI, A. A, and TIVEY, D. R,Intestinal development and body growth of broiler chicks on diets supplemented with non-starch polys,Animal Feed Science and Technology,2001年02月15日,Vol. 89, No. 3-4,pp. 175 - 188
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 20/163
A23K 10/10
A23K 40/30
A23K 20/24
C12P 19/04
C12P 19/06
C12P 19/08
C12P 19/10
Science Direct
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラム陰性細菌を凝集させる性質を有する多糖を含むコアと、コアの被覆剤とから構成される、被覆型の、家畜の増体効果又は飼料効率向上剤
であって、コアがさらに、塩化カルシウム、クエン酸鉄、炭酸亜鉛、硫酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の無機陽イオンの塩を含む、前記家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
【請求項2】
前記多糖が、構成糖として、マンノース(Man)、グルコース(Glc)、ガラクトース(Gal)、グルクロン酸(GlcA)、マンヌロン酸、およびグルロン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多糖である、請求項1記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
【請求項3】
前記多糖が、プルラン、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、アラビックガム、キトサン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン、コンドロイチン、タラガム、ローカストビーンガム、アルギン酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、又はアンモニウム塩)、アルギン酸エステル及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
【請求項4】
前記多糖が、ザントモナス カンペストリス(Xanthomonas campestris)、アウレオバシジウム プルランス(Aureobasidium pullulans)、又はリポマイセス スタルキー(Lypomyces Starkey)、褐藻(Phaeophyta)の培養産物である、請求項1記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
【請求項5】
前記被覆剤が植物硬化油を含有する、請求項1~4のいずれか1項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
【請求項6】
前記植物硬化油が、菜種油、亜麻仁油、サフラワー油、ひまわり油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ゴマ油、コメ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、又はヤシ油の硬化油である、請求項5記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
【請求項7】
多糖が、プルラン、キサンタンガム又はアラビックガムであり、被覆剤が、菜種硬化油及び/又はシェラックである、請求項1~6のいずれか1項に記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
【請求項8】
前記被覆剤により形成される被覆層が、菜種硬化油から形成される層と、シェラックから形成される層の2層構造である、請求項7記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
【請求項9】
シェラックから形成される層がコアに接しており、その上に、菜種硬化油から形成される層が形成されている、請求項8に記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤を含有する飼料。
【請求項11】
グラム陰性細菌を凝集させる性質を有する多糖
及び塩化カルシウム、クエン酸鉄、炭酸亜鉛、硫酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の無機陽イオンの塩を含むコアと、コアの被覆剤とから構成される被覆剤の、家畜の増体効果又は飼料効率向上剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜、特に単胃動物に好適な飼料用添加剤及び前記添加剤を含有する飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の成長を促進する、あるいは畜産成績を向上させる飼料添加組成物にはさまざまな種類がある。成長促進又は畜産成績向上のアプローチの一つとして、病原菌を家畜の体内から除去し、腸内環境を改善することがあげられる。
病原菌は、家畜の腸管の上皮細胞に結合し、そこで増殖する。マンノースは、家畜の腸管の上皮細胞へのサルモネラ菌の結合を阻止すること(例えば非特許文献1)が知られている。増殖出来なければ病原菌は死滅するから、マンノースにより、病原菌の上皮細胞への結合を止めれば、最終的には病原菌を体内から排除できると期待できる。しかし、他方、悪玉菌がマンノースを資化してしまうこと(例えば特許文献1)もまた知られている。
これらを踏まえ、マンノースを2分子縮合させた形態であるβ1,4-マンノビオースとすることにより飼料効率を改善した技術が報告されている(特許文献2)。また、単糖であるマンノースをオリゴ糖(3,4糖)の形態にした飼料添加組成物も報告されている(特許文献3)。オリゴ糖よりも多糖の方が安価であることから、多糖もまた飼料に使用されている。マンノースを構成糖として含ませた多糖に、畜産動物の腸内のサルモネラ等の病原菌を減少させる効果があることもまた報告されている(特許文献4)。多糖の飼料効果については、P.A.Ijiらにより、粘度の高い多糖は粘度の低い多糖よりも増体効果(増体効率ともいう)が低かったこと、および小腸の発達を妨げることが報告されている(非特許文献2)。
さらに、マンナンを含有する天然物にβ-マンノシダーゼ及びα-マンノシダーゼを順次又は同時に作用させることにより製造したα-マンノビオース含有組成物を含むことを特徴とする飼料用添加剤が報告されている(特許文献5)。特許文献5では、動物体内でのサルモネラ菌の定着を抑制してサルモネラ菌を体外へ効率的に排出することができると報告されている。しかし、製造工程においてマンナンの他にβ-マンノシダーゼおよびα-マンノシダーゼを準備する必要がある。特許文献5ではまた、マンノビオースよりも大きな分子量のマンノオリゴ糖やマンノース系多糖体のサルモネラ菌定着抑制効果は小さいという知見が報告されている(段落番号0005等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/027753号
【文献】国際公開第2011/027753号
【文献】米国特許出願公開第2009/0186852号明細書
【文献】米国特許第6126961号明細書
【文献】特許4294302号
【非特許文献】
【0004】
【文献】B.A.OYOFO et al., Poultly Science, 68, p.1357, 1989
【文献】P.A.Iji et al., Animal feed science and technology (2001) vol. 8(3-4) pp175-188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、健康な家畜にも増体効果を示すことができ、かつ、経済的な、多糖類を含む飼料用添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、グラム陰性細菌を凝集させる効果のある多糖をコーティングしてニワトリに給餌することで、増体効果と飼料効率を高めることができることを見出した。この知見に基づき、マンノースを構成糖として含まない多糖であっても、グラム陰性細菌を凝集させる効果のある多糖であれば、コーティングすることで家畜の増体効果を高めることができる飼料用添加剤に係る発明を完成させた。すなわち、下記各発明を提供する。
1.グラム陰性細菌を凝集させる性質を有する多糖を含むコアと、コアの被覆剤とから構成される、被覆型の、家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
2.前記多糖が、構成糖として、マンノース(Man)、グルコース(Glc)、ガラクトース(Gal)、グルクロン酸(GlcA)、マンヌロン酸、及びグルロン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多糖である、前記1項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
3.前記多糖が、プルラン、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、アラビックガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、コンドロイチン、タラガム、ローカストビーンガム、アルギン酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、又はアンモニウム塩)、アルギン酸エステル及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記1項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
4.前記多糖が、ザントモナス カンペストリス(Xanthomonas campestris)、アウレオバシジウム プルランス(Aureobasidium pullulans)、又はリポマイセス スタルキー(Lypomyces Starkey)、褐藻(Phaeophyta:昆布)の培養産物である、前記1項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
5.被覆剤が植物硬化油を含有する、前記1~4のいずれか1項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
6.前記植物硬化油が、菜種油、亜麻仁油、サフラワー油、ひまわり油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ゴマ油、コメ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、又はヤシ油の硬化油である、前記5項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
7.多糖が、プルラン、キサンタンガム又はアラビックガムであり、被覆剤が、菜種硬化油及び/又はシェラックである、前記1~6のいずれか1項に記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
8.前記被覆剤により形成される被覆層が、菜種硬化油から形成される層と、シェラックから形成される層の2層構造である、前記7項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
9.シェラックから形成される層がコアに接しており、その上に、菜種硬化油から形成される層が形成されている、前記8項に記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
10.前記コアがさらに、2価の無機陽イオンの塩を含む、前記1~9のいずれか1項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
11.2価の無機陽イオンの塩が、Mg、Ca又はFeの塩である、前記10項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
12.2価の無機陽イオンの塩が、Caの塩である、前記11項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤。
13.グラム陰性細菌を凝集させる性質を有する多糖を含むコアと、コアの被覆剤とから構成される被覆剤の、家畜の増体効果又は飼料効率向上剤としての使用。
14.前記1~11のいずれか1項記載の家畜の増体効果又は飼料効率向上剤を含有する飼料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の被覆型飼料用添加剤により、健康な家畜にも増体効果を示すことができ、かつ、経済的な、多糖類を含む飼料用添加剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】Ca
2+存在下又は非存在下での、Pullulan 0.5%を含有する大腸菌懸濁液及びCa
2+単独の光学濃度の経時変化を示す。
【
図1B】Ca
2+存在下又は非存在下での、Pullulan 0.05%を含有する大腸菌懸濁液の光学濃度の経時変化を示す。
【
図1C】Ca
2+存在下又は非存在下での、Xanthan Gum 0.05%を含有する大腸菌懸濁液の光学濃度の経時変化を示す。
【
図1D】Ca
2+存在下又は非存在下での、Xanthan Gum 0.005%を含有する大腸菌懸濁液の光学濃度の経時変化を示す。
【
図2】胃液及び腸液条件下での、1層被覆型飼料用添加剤(XG-1)及び2層被覆型飼料用添加剤(XG-2)からのXanthan Gumの溶出率の経時変化を示す。
【
図3】胃液及び腸液条件下での、2層被覆型飼料用添加剤(Coated Arabic Gum)からのArabic Gumの溶出率の経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の被覆型増体効果又は飼料効率向上剤(以降、まとめて「被覆型飼料用添加剤」と称する)は、グラム陰性細菌を凝集させる性質を有する多糖を含むコアと、その被覆剤とから構成される。
【0010】
〔コア〕
本発明で用いる多糖は、Eschericha coli等のグラム陰性細菌を凝集させる性質を有する。多糖は、一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
凝集能は、グラム陰性細菌の培養物を含む懸濁液の光学濃度が、多糖添加により低下するか否かにより判断することができる。多糖添加前の懸濁液は白濁しているが、凝集能を有する多糖が存在すると、グラム陰性細菌は凝集して沈降し、懸濁液の透明度が増す。多糖を添加しない懸濁液中の菌体も自然に沈降するため、多糖を懸濁液に添加した場合に、一定時間、例えば12~24時間での菌体の自然沈降による懸濁液の光学濃度の低下分を超えた場合に、多糖による凝集効果が認められたと判断できる。ここでいう一定時間は、当業者であれば、飼料を投与する対象の家畜の種類に応じ、飼料が胃に到達してから腸を通過するまでの時間を勘案し、適宜調整することができる。本明細書では、自然沈降による光学濃度の低下は実験系の振れを考慮して、ある凝集時間での菌体の自然沈降による懸濁液の光学濃度の2倍以上低下した場合に凝集効果が認められたと判断する。ここでいう凝集時間は、前記一定時間、又は前記懸濁液の光学濃度を経時的に測定し、プラトーに達した時間Xを指す。例えば、凝集時間Xにおいて光学濃度がプラトーに達した場合に、懸濁液の0時間における光学濃度とX時間における光学濃度との差を「ΔODsample[0,X]」とし、陰性対照の0時間における光学濃度とX時間における光学濃度との差を「ΔODnc[0,X]」とすると、ΔODsample[0,X]≧ΔODnc[0,X]×2のときに、凝集効果あり、と判断する。
また、ΔODsample[0,X]とΔODnc[0,X]との差を、プラトーに達した時間である凝集時間で除すことにより、凝集速度を求めることができる。プラトーに達する前であっても、多糖添加から特定の時間を目安にして凝集速度を求めることができる。この「特定の時間」は、飼料が家畜の胃に到達したときから腸を通過するまでの時間に相当し、家畜の種類により異なる。例えば、ニワトリの場合、4時間とすることができる。
【0011】
本発明者らが多糖を網羅的に調べたところ、構成糖として、マンノース(Man)、グルコース(Glc)、ガラクトース(Gal)、グルクロン酸(GlcA)、マンヌロン酸及びグルロン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する多糖に、優れた凝集能が認められることを見出した。このような多糖としては、プルラン(Pullulan, PLN)、キサンタンガム(Xanthan Gum, XG)、グアーガム(Guar Gum)、カラギーナン(Carrageenan、特にκ-カラギーナン)、アラビックガム(Arabic Gum)、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethylcellulose, CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン、コンドロイチン(chondroitin),アルギン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩)、アルギン酸エステル(例えば、アルギン酸プロピルアルコール)等があげられる。したがって、前記グラム陰性細菌を凝集させる性質を有する多糖が、構成糖として、マンノース(Man)、グルコース(Glc)、ガラクトース(Gal)、及びグルクロン酸(GlcA)からなる群から選ばれる少なくとも1種を有するのが好ましい。
【0012】
本発明者はまた、構成糖として前記所定の糖を有さない多糖であっても、優れた凝集能を有することを突き止めた。このような多糖としては、キトサン(chitosan)及びペクチン(Pectin)があげられる。
以上述べたとおり、前記グラム陰性細菌を凝集させる性質を有する多糖はまた、プルラン、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン(特にκ-カラギーナン)、アラビックガム、キトサン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストラン、コンドロイチン、タラガム、ローストビーンガム、 アルギン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩)、アルギン酸エステル(例えば、アルギン酸プロピルアルコール)及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。アラビックガム、プルラン又はキサンタンガムがより好ましい。アラビックガム又はキサンタンガムがさらに好ましい。アラビックガムが特に好ましい。
【0013】
本発明で用いる多糖は、所望の効果が得られればその純度は制限されない。例えば、微生物に生産させて得られた多糖を発酵液ごと用いることができる。凍結乾燥にて発酵液中の固形物を得ることもできるし、噴霧造粒にて発酵液を固形物として得ることもできる。多糖を生産する微生物としては、例えば、リポマイセス スタルキー(Lypomyces Starkey)の産出するガラクトグルコマンナン(galactoglucomannan, GGM)は、特開平7-298873号公報、特開平9-131199号公報に記載の方法にて得ることができる。前記グラム陰性細菌を凝集させる性質を有する多糖はまた、ザントモナス カンペストリス(Xanthomonas campestris)、アウレオバシジウム プルランス(Aureobasidium pullulans)、又はリポマイセス スタルキー(Lypomyces Starkey)の培養産物であるのが好ましい。本発明で用いる多糖としては、植物、藻類、甲殻類、又は魚類からの分泌物や抽出物をそのまま用いることもできる。藻類では、褐藻(Phaeophyta)の中でも、例えば、Marcocystis pyriferaやLaminaria hyperboreaの産出するアルギン酸を含有する産物も利用できる。本発明で用いる多糖としては、市販品をそのまま用いることもできる。アラビックガム、プルラン又はキサンタンガムの培養産物がより好ましい。アラビックガム又はキサンタンガムの培養産物がさらに好ましい。
【0014】
本発明で用いる多糖の粘度は限定されない。参考として、多糖類の粘度を下表に示した(温度25℃、濃度は表中に記載)。粘度の高い多糖は、粘度の低い多糖よりも増体効果に劣るとの報告があるが(上で引用したP.A.Iji et al., Animal feed science and technology(2001) vol. 8(3-4) pp175-188)、本発明者らは、粘度に関わらず多糖を被覆剤で被覆することにより、被覆無しの低粘度の多糖と同等以上の増体効果を発揮させることができることを見出した。
【0015】
【0016】
コアは、2価金属イオンを含んでいてもよい。2価金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛等のイオンがあげられる。このうち、カルシウムイオンが特に好ましい。2価金属イオンは、塩素等のハロゲン;クエン酸、グルコン酸、コハク酸等の有機酸;炭酸、硫酸等の無機酸等との化合物の形態であってもよい。例えば、塩化カルシウム、クエン酸鉄、炭酸亜鉛、硫酸マグネシウムがあげられる。このうち、塩化カルシウムが特に好ましい。
2価金属イオンの配合量は、塩素等との化合物の形態として、多糖重量に対して0.2~3倍であることが好ましく、0.3~3倍であるのがより好ましく、0.3~2倍であるのがさらに好ましい。
【0017】
コアは、賦形剤を含んでもよい。賦形剤としては、成形の向上のために一般に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、ソルビトール、コーンスターチ、タルク、酵母ベントナイト、もみ殻、流動パラフィン、グラム陰性細菌を凝集させる性質を有する多糖以外の多糖、単糖、二糖等があげられる。コアが賦形剤を含む場合、賦形剤の量は、コア100質量部に対して、通常、0.1~100質量部であるのが好ましい。
コアはまた、飼料に含まれ得る任意の添加剤を含んでもよい。コアが任意の添加剤を含む場合、任意の添加剤の量は、コア100質量部に対して、通常、0.1~100質量部であるのが好ましい。
【0018】
〔被覆剤〕
被覆剤は、腸溶性被膜を形成し得る物質であって、家畜が摂取しても安全な物質であれば、特に制限なく用いることができる。被覆剤は、一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。被覆剤は、取扱の容易性および経済性の観点から、植物硬化油や、錠剤の被覆剤として慣用の物質である、シェラック(セラック)、ツェイン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びマルチトール等であるのが好ましい。植物硬化油としては、菜種油、亜麻仁油、サフラワー油、ひまわり油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ゴマ油、コメ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、又はヤシ油の硬化油があげられる。前記植物硬化油は、菜種油、亜麻仁油、サフラワー油、ひまわり油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ゴマ油、コメ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、又はヤシ油の硬化油であるのが好ましい。被覆剤としては、なかでも、菜種硬化油及びシェラックが好ましい。菜種硬化油の層は、短時間でコアを溶出させることができるので好ましい。セラックの層は、(胃を通過後の)中性ないしアルカリ性でコアを溶出させることができるので好ましい。
【0019】
被覆剤は、本発明の被覆型飼料用添加剤の全質量を基準として、5~90質量%となる量であるのが好ましく、20~30質量%となる量であるのがより好ましい。被覆剤はまた、飼料に含まれ得る任意の添加剤を含んでもよい。
コーティングは、単層でもよく、2層以上の複数層でもよい。複数層コーティングの方が、体内での溶出率を制御しやすいので好ましい。特に、最も外側の層を菜種硬化油の層とし、コアに接する最も内側の層をセラックの層とすると、被覆剤が胃で溶けずに腸で溶けるので好ましい。
本発明の被覆型飼料用添加剤の胃液中の溶出率は60%未満が望ましく、また腸液中の溶出率は70%以上であることが望ましい。このような溶出率を達成するには、2層膜や多層膜にしたり、各層の被膜剤の種類や被膜厚さを制御したりすることにより調整することができる。
【0020】
多糖が、プルラン、キサンタンガム又はアラビックガムであり、被覆剤が、菜種硬化油及びシェラックからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが特に好ましい。
多糖が、キサンタンガム又はアラビックガムであり、被覆剤が、菜種硬化油及びシェラックからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが特に好ましい。
多糖が、アラビックガムであり、被覆剤が、菜種硬化油及びシェラックからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが特に好ましい。
多糖が、アラビックガムであり、被覆剤が、菜種硬化油及びシェラックの2層であるのが特に好ましい。この場合、シェラックから形成される層がコアに接しており、その上に、菜種硬化油から形成される層が形成されているのがさらに特に好ましい。
コアが、アラビックガムとCa2+を含有し、被覆剤が、菜種硬化油及びシェラックの2層であるのが特に好ましい。この場合、Ca2+の配合量が、化合物の形態として、多糖重量に対して0.3~2倍であるのが更に特に好ましい。とりわけ、シェラックから形成される層がコアに接しており、その上に、菜種硬化油から形成される層が形成されているのが最も好ましい。
【0021】
〔被覆方法〕
前記コアを被覆する方法は特に限定されないが、例えば、市販の流動層型噴霧造粒機にて、粉末ないし顆粒状のコアを流動させながら、融点より高い温度に加熱して液状とした被覆剤を噴霧することにより、被覆型飼料用添加剤を得ることができる。粉末ないし顆粒状の多糖から得られた被覆型飼料用添加剤が0.05~5mm程度の大きさにすると、取扱が容易になるので好ましい。また、被覆剤を加熱するときの温度は、被覆剤の融点以上であれば特に制限されないが、被覆剤の融点より5℃~15℃程度高いことが好ましい。
【0022】
〔飼料〕
本発明の被覆型飼料用添加剤は、そのまま家畜に与えることもできるし、トウモロコシ、大豆粉、米ぬか、魚粉、ビール酵母等の賦形剤ないし希釈剤と一緒にして飼料とすることもできる。本発明の飼料はまた、飼料に含まれ得る任意の添加剤を含んでもよい。本発明の飼料は、毎日連続して摂取するのが適当である。飼料の摂取量は、家畜の大きさにより異なるが、例えばニワトリの場合、前記コアの1日あたりの摂取量としては、被覆型飼料用添加剤以外の飼料に対して1~200ppm程度、好ましくは10~100ppmとなるように与えるのが望ましい。なお、本明細書において、「ppm」は「ppm by mass」を意味する。
本明細書において、「家畜」とは、人間に飼養される生き物を意味する。具体的には、牛、羊、山羊等の反芻動物、馬、豚、鶏、犬、魚等の単胃動物を含む。本発明の飼料を、単胃動物に与えるのが特に好ましい。
本発明の被覆型飼料用添加剤の給餌方法は特に制限されない。
【実施例】
【0023】
実施例1-1:多糖のスクリーニング1
Eschericha coli MG1655をLBプレートにて37℃で24時間培養し、得られた培養物を生理食塩水4mlに懸濁した。懸濁液の光学濃度(OD)は2.0程度となるように調整した。この懸濁液0.5mlをバイアル瓶に添加し、そこに、表1に示す各多糖溶液5mlを加え、E.coliと各多糖とを反応させた。バイアル瓶を36℃にて静置し、光学濃度を自動連続計測することで、各多糖がE.coli MG1655を凝集する効果を評価した。
はじめに、多糖を添加しない懸濁液の12時間後の自然沈降による光学濃度の低下分の2倍以上の光学濃度の低下を示した多糖を、凝集効果のある多糖と判断した。表1中、Gellan Gum及びAlginic acidが、凝集効果が認められなかった多糖である。 次に、凝集時間をXとして、以下の式を用い、凝集速度を比較した。なお、凝集時間Xは、懸濁液とPolysaccharideとを一緒にした時から、プラトーに達するまでの時間とした。凝集するもののプラトーに達しなかった場合には、多糖を懸濁液に投与してから4時間までの凝集速度を算出した。なお、「4時間」は、飼料がニワトリの胃に到達してから腸を通過するまでの時間を想定している。光学濃度は、ADVANTEC社製Biophoto-recorderTVS062CA を用いて、OD660nmで測定した。
<式1>Max. Agglomeration Rate (/h) = (ΔODsample[0,X] - ΔODnc[0,X]) / X
なお、「ΔODsample[0,X]」は、上で調製した懸濁液の0時間における光学濃度とX時間における光学濃度との差を、「ΔODnc[0,X]」は、陰性対照の0時間における光学濃度とX時間における光学濃度との差を意味する。
各多糖について求めた凝集速度(「Agglomeration Rate」)を、反応時間(「RT」)と共に表1に示す。
なお、使用した多糖およびその誘導体は、いずれも市販品である。Xanthan Gum及びPullulanの生産菌はそれぞれ、Xanthomonas compestris 及び Aureobasidium pullulans である。
【0024】
【表1】
実施例1-2:多糖のスクリーニング2
表2に記載した種々の糖を、特許4294302号の試験例1に記載された凝集抑制試験(凝集抑制最低濃度試験)と、本明細書の実施例1-1の凝集試験とにより評価した。
腸管上皮細胞表面にはマンナン糖鎖が存在し、その糖鎖に病原菌が結合するところ、特許4294302号の凝集抑制試験は、試験例1の記載によると、酵母表面に存在するマンナン糖鎖を腸管上皮細胞表面に存在するマンナン糖鎖とみなし、病原菌における糖鎖への結合部位に表2記載の糖が結合すれば、病原菌は酵母表面の糖鎖に結合することができなくなり、その結果、病原菌が家畜体内へ侵入することを抑制することができるとの前提で、表2記載の糖が病原菌(サルモネラ菌)に結合したか否かを、サルモネラ菌の凝集の有無により評価した試験と理解できる。すなわち、前記凝集抑制試験によれば、表2記載の糖が存在する場合にサルモネラ菌が凝集しなければ、その糖は、サルモネラ菌の腸管上皮細胞への結合を阻止することができると評価できる。凝集抑制効果を有するか否かは、当該特許公報の試験例1の段落0019の記載に従って判断した。
一方、本明細書の実施例1-1の凝集試験は、その表面電荷により互いに反発し、分散して存在する病原菌が、多糖の存在により反発力が抑制されて凝集することにより、病原菌が家畜体内へ侵入することを抑制することができるとの仮説のもと、表1記載の多糖が病原菌(大腸菌)を凝集させたか否かを評価した試験である。実施例1-1に記載したのと同様に、糖を添加しない懸濁液の12時間後の自然沈降による光学濃度の低下分の2倍以上の光学濃度の低下を示した糖を、凝集効果を有する糖と判断した。
サルモネラ菌も大腸菌もグラム陰性細菌に属するから、試験物質がグラム陰性細菌を認識する活性を評価している点で両試験は共通する。
前記凝集抑制試験において凝集抑制効果が見られた物質を〇で印し、一方で本明細書の凝集試験においては凝集効果が見られた物質を〇で印した。結果を表2に併記した。
表2によれば、前記凝集抑制試験でスクリーニングされるグラム陰性菌認識活性を示す物質であっても、凝集試験において凝集能を示さない物質もあり、それぞれ異なる評価系であることが分かる。たとえば、前記凝集抑制試験では抑制効果を示さなかったPullulanは、前記凝集試験では凝集効果を示し、一方で、前記凝集抑制試験で抑制効果を示したMethyl α-D-mannopyranoside、Gellan GumやAlginic acidは、前記凝集試験では凝集効果を示さなかった。
【0025】
【0026】
実施例1-3:2価金属イオン存在下での凝集能
種々の濃度の各多糖溶液に、10mMになるようにCaCl2を加えたこと以外は実施例1-1と同様にしてODを測定し、多糖とCaCl2との併用効果を検証した。
Ca塩を併用した場合の結果を
図1A~
図1D、および表3に示す。
図1A~
図1Dから、Ca
2+を併用すると、同濃度の多糖単独の場合よりも、ODを低くすることができ、また、凝集時間Xを短縮することができることが分かった。
本試験で実施した2価金属イオンと多糖の併用効果は、特許4294302号実施の凝集試験では得られない効果で、本明細書で記載した評価法でのみ見出せる知見である。
【0027】
【0028】
実施例2:被覆型飼料用添加剤の調製
コア材として、Arabic Gum(和光純薬社製)、Pullulan(Carbosynth Limited社製)、Xanthan Gum (Sigma-Aldrich社製) を使用し、被覆剤として、菜種硬化油(融点67℃)及び天然樹脂Shellacを使用した。粉末ないし顆粒状にしたコアに、融点より高い温度に加熱することにより液状とした被覆剤の所定量を噴霧することにより、被覆型飼料用添加剤を得た。
一層コーティングでは、コア80質量部に対して菜種硬化油20質量部を被覆した。
二層コーティングでは、コア77質量部に対して、第一層(内側層)にShellac5質量部、第2層(外側層)に菜種硬化油17質量部を被覆した。
【0029】
実施例3:腸溶性試験
(人工胃液処理)Merck Millipore社製の純水製造装置を用いて製造した純水に、0.2% NaClおよび0.2% pepsin(from Porcine stomach Mucosa ,1:5,000, 2,500unit/mg)を加え、pH2に調整後、実施例2で調製した被覆型飼料用添加剤(コアはXanthan Gum又はArabic Gum)を投入し、37℃で2時間酵素処理を行った。この間の光学濃度を自動連続計測することで溶出率を測定した。なお、「2時間」は、飼料が鶏の胃に到達してから通過するまでの時間を想定している。
(人工腸液処理)人工胃液処理後、0.2% trypsin(from Porcine Pancreas, 1:5,000, 4,500unit/mg)を加え、pH6に調整後、37℃で2時間酵素処理を行った。この間の光学濃度を自動連続計測することで溶出率を測定した。なお、「2時間」は、飼料が鶏の腸に到達してから通過するまでの時間を想定している。
なお、両処理における光学濃度は、ADVANTEC社製Biophoto-recorderTVS062CA を用いて、OD190nmで測定した。また、両処理におけるpH調整剤として塩酸及び水酸化ナトリウムを使用した。
結果を
図2及び
図3に示す。
図2から、1層コーティング(XG-1)では、胃液処理開始から2時間での溶出率が70%を超えたのに対し、2層コーティング(XG-2)では、胃液処理開始から2時間での溶出率が50%以下に抑えられる一方、腸液処理では80%を超えた。この結果から、外層に菜種硬化油層を、内層にShellac層を施した飼料用添加剤の方が、被覆剤として菜種硬化油層のみを施した飼料用添加剤よりも、放出コントロールに優れることが分かった。Xanthan Gum(XG)で得られた知見を活かし、Arabic Gumでも同様に2層コーティングを実施したところ、胃液処理開始から2時間での溶出率が50%以下に抑えられる一方、腸液処理では80%を超えた(
図3)。この結果から、Arabic Gumでも外層に菜種硬化油層を、内層にShellac層を施した飼料用添加剤の方が、被覆剤として菜種硬化油層のみを施した飼料用添加剤よりも、放出コントロールに優れることが分かった。
【0030】
実施例4-1:Coated-Polysaccharideを用いたトリ成長試験
実施例2で調製した2層コーティングの被覆型飼料用添加剤(コアはArabic Gum, Pullulan)を、表4に示す組成の飼料マトリックス中に、コア材の量が100ppmとなるように添加し、飼料組成物を得た。平飼い鶏舎にて、1区画、初生雛ブロイラー25羽を用い、飼料組成物を与え、3反復で0-21日齢を22日間飼育することにより、トリの増体効果(Body Weight Gain;BWG)及び飼料効率(Feed Conversion Ratio;FCR = Feed/BGW)を評価した。
なお、陽性対照として、慣用の抗菌性発育促進物質(Antimicrobial Growth Promoter;AGP)であるAvilamycinを用いた。Avilamycinは、市販品(ELANCO社のSurmax200(登録商標)、被覆なし)をそのまま用いた。
結果は、陰性対照を100として示した。結果を表5に示す。
【0031】
【0032】
【0033】
表5の結果から、Coated Arabic Gum及びCoated Pullulanのいずれも、Avilamycinと同等の増体効果及び飼料効率を示したことから、これらの有効性が実証できた。
【0034】
実施例4-2:Coated-Polysaccharideを用いたトリ成長試験-Ca2価イオン相乗効果
実施例2で調製した2層コーティングの被覆型飼料用添加剤(コアはPullulan)と、コアにCaCl2を含ませた以外は同様にして調製した2層コーティングの被覆型飼料用添加剤とを、表4に示す組成の飼料マトリックス中に、コア材の量が表6に示す濃度となるようにそれぞれ添加し、飼料組成物を得た。得られた飼料組成物を用い、実施例4-1と同様にトリ成長試験を実施した。Coated-PLN(100ppm), Coated-PLN w/CaCl2(Coated-PLN及びCaCl2とも10ppmずつ) 給与で、各々1,2%の増体改善を確認した。
なお、コアにCaCl2を含ませた被覆型飼料用添加剤は、Pullulan:CaCl2・2H2O =10:3(質量比)で混合し、これらの合計量100質量部に対し、セラック5質量部、菜種硬化油17質量部を、この順で2層コーティングした。
【0035】
【表6】
Coated Pullulanだけでは、増体効果および飼料効率の効果は弱いが、Pullulanの添加量を1/10とし、かつ塩化カルシウム(10ppm)を添加だけで、より増体効果および飼料効率の効果を発揮できた。
【0036】
実施例4-3:トリにおけるサルモネラ感染試験によるArabic Gum およびCoated-Arabic Gumの評価
実施例2で調製した2層コーティングの被覆型飼料用添加剤(コアはArabic Gum)を、表4に示す組成の飼料マトリックス中に、コア材の量が100ppmとなるように添加し、飼料組成物を得た。0日齢ブロイラーを感染試験用飼育設備へ導入後(6羽/反復、2反復/試験区)、Salmonella Typhimurium(ST)を経口投与し、試験飼料を21日間給与し、増体効果及び飼料効率を評価した。
なお、陽性対照として、慣用の抗菌性発育促進物質(Antimicrobial Growth Promoter;AGP)であるAvilamycinを用いた。Avilamycinは、市販品(ELANCO社のSurmax200(登録商標)、被覆なし)をそのまま用いた。
結果は、陰性対照を100として示した。結果を表7に示す。
【0037】
【表7】
その結果、コーティングを施さないアラビアゴムには増体効果や飼料効率に対する効果は弱いが、被覆したアラビアゴムにはアビラマイシンと同等以上の増体効果および飼料効率改善効果を示した。