(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】センサシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
(21)【出願番号】P 2022095747
(22)【出願日】2022-06-14
(62)【分割の表示】P 2019040602の分割
【原出願日】2019-03-06
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 英義
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】蓬郷 典大
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-092489(JP,A)
【文献】特開2000-146847(JP,A)
【文献】特開平07-049945(JP,A)
【文献】特許第7137761(JP,B2)
【文献】特開2019-028515(JP,A)
【文献】特開2014-085833(JP,A)
【文献】特開平10-062132(JP,A)
【文献】特開2005-083775(JP,A)
【文献】特開2020-144001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
G06T 1/00-G06T 7/90
G06N 3/00-G06N 99/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に照射した光を受光して前記対象物の状態を測定する複数の光センサと、
前記複数の光センサにより測定された複数の受光データに前記対象物の状態を示すデータを関連付けて、学習データを生成する学習データ生成部と、
前記学習データを用いた機械学習により、前記複数の光センサにより測定された複数の受光データを入力として、前記対象物の状態を示すデータを出力する学習済みモデルを生成する学習モデル生成部と、
前記複数の光センサのうちの各光センサに接続され、前記複数の受光データのうちの各光センサにより測定された受光データを取得する複数のスレーブユニットと、
前記複数のスレーブユニットに接続されたマスタユニットと、
を備え、
前記学習モデル生成部は、前記複数の光センサの配置に固有の前記学習済みモデルを生成
し、
前記マスタユニットは、
前記複数のスレーブユニットから取得した前記複数の受光データを記憶する記憶部と、
前記学習データ生成部と、
前記学習モデル生成部と、を備える、
センサシステム。
【請求項2】
前記学習データ生成部は、前記複数の受光データに前記対象物の形状が正常か否かを示すデータを関連付けて、前記学習データを生成し、
前記学習モデル生成部は、前記学習データを用いた機械学習により、前記複数の光センサにより測定された複数の受光データを入力として、前記対象物の形状が正常か否かを示すデータを出力する前記学習済みモデルを生成する、
請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記学習データ生成部は、前記複数の受光データに前記対象物の種類を示すデータを関連付けて、前記学習データを生成し、
前記学習モデル生成部は、前記学習データを用いた機械学習により、前記複数の光センサにより測定された複数の受光データを入力として、前記対象物の種類を示すデータを出力する前記学習済みモデルを生成する、
請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記学習済みモデルの出力に対する前記複数の受光データの貢献度を算出する貢献度算出部と、
前記貢献度に基づいて、前記複数の光センサのうち除外可能な光センサを推薦する推薦部と、をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記推薦部は、前記貢献度に基づいて、新たな光センサの追加を推薦する、
請求項4に記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記推薦部は、前記複数の受光データの相関に基づいて、前記複数の光センサの配置変更を推薦する、
請求項4又は5に記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記マスタユニットと前記複数のスレーブユニットとは、前記マスタユニットと前記複数のスレーブユニットのうちの各スレーブユニットとを個別に接続する第1の伝送路と、前記マスタユニットと前記複数のスレーブユニットのうちの全てのスレーブユニットとを接続する第2の伝送路と、によって接続されている、
請求項
1に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記複数のスレーブユニットのうちの各スレーブユニットは、該各スレーブユニットが前記対象物に関して判定した結果を示す信号を、前記第1の伝送路上で前記マスタユニットに送信する、
請求項
7に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記複数のスレーブユニットのうちの各スレーブユニットは、該各スレーブユニットの検出動作によって得られる検出情報を、前記第2の伝送路上で前記マスタユニットに送信する、
請求項
7又は
8に記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記マスタユニットは、前記複数のスレーブユニットのうちの各スレーブユニットに対するコマンドを、前記第2の伝送路上で該各スレーブユニットに送信する、
請求項
7から
9のいずれか一項に記載のセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばファイバセンサ等の光センサを複数配置して、対象物の有無だけでなく、
対象物の形状を測定することがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、検査対象物の画像を撮像する一以上の撮像手段、及び/
又は検査対象物に対して光を投光するための一以上の投光手段を計3台以上備え、撮像手
段で撮像された複数の画像に基づいて、各計測系の距離画像を複数生成し、生成された複
数の距離画像を比較した結果に基づいて、正常な状態からの状態変化の度合いを判定する
三次元画像処理装置が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、果菜物の階級に略対応して複数配列された検知センサによ
る検知に基づいて、支持ローラ上に載置された果菜物の大きさを判定する判定装置が記載
されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-045587号公報
【文献】特開2000-288480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の光センサによって一つの対象物を測定し、その測定結果を総合して判定を行う場
合、複数の光センサの特性を理解した上で、複数の光センサを適切に配置する必要がある
。
【0007】
ここで、複数の光センサによって対象物に関する総合判定を行うためには、測定環境や
対象物の種類に応じて複数の光センサの配置を調整する必要が生じることがある。そのた
め、複数の光センサを含むセンサシステムを導入する負担が大きくなってしまうことがあ
る。
【0008】
そこで、本発明は、導入負担を軽減して複数の光センサによる総合判定を行うことがで
きるセンサシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係るセンサシステムは、対象物に照射した光を受光して対象物の状態
を測定する複数の光センサと、複数の光センサにより測定された複数の受光データに対象
物の状態を示すデータを関連付けて、学習データを生成する学習データ生成部と、学習デ
ータを用いた機械学習により、複数の光センサにより測定された複数の受光データを入力
として、対象物の状態を示すデータを出力する学習済みモデルを生成する学習モデル生成
部と、を備える。
【0010】
この態様によれば、任意に配置した複数の光センサにより測定された複数の受光データ
と、対象物の状態を示すデータとを関連付けて学習データを生成し、複数の受光データか
ら対象物の状態を識別する学習済みモデルを生成することで、測定環境や対象物の種類に
応じて複数の光センサの配置を調整する負担が軽減され、導入負担を軽減して複数の光セ
ンサによる総合判定を行うことができる。
【0011】
上記態様において、学習モデル生成部は、複数の光センサの配置に対応した学習済みモ
デルを生成してもよい。
【0012】
この態様によれば、複数の光センサの個別の配置に適した学習済みモデルが生成され、
複数の光センサによって適切な総合判定を行うことができる。
【0013】
上記態様において、学習データ生成部は、複数の受光データに対象物の形状が正常か否
かを示すデータを関連付けて、学習データを生成し、学習モデル生成部は、学習データを
用いた機械学習により、複数の光センサにより測定された複数の受光データを入力として
、対象物の形状が正常か否かを示すデータを出力する学習済みモデルを生成してもよい。
【0014】
この態様によれば、測定環境や対象物の種類に応じて複数の光センサの配置を調整する
負担を軽減して、複数の光センサによって対象物の形状を総合判定することができる。
【0015】
上記態様において、学習データ生成部は、複数の受光データに対象物の種類を示すデー
タを関連付けて、学習データを生成し、学習モデル生成部は、学習データを用いた機械学
習により、複数の光センサにより測定された複数の受光データを入力として、対象物の種
類を示すデータを出力する学習済みモデルを生成してもよい。
【0016】
この態様によれば、測定環境や対象物の種類に応じて複数の光センサの配置を調整する
負担を軽減して、複数の光センサによって対象物の種類を総合判定することができる。
【0017】
上記態様において、学習済みモデルの出力に対する複数の受光データの貢献度を算出す
る貢献度算出部と、貢献度に基づいて、複数の光センサのうち除外可能な光センサを推薦
する推薦部と、をさらに備えてもよい。
【0018】
この態様によれば、総合判定の性能を保ちながら、複数の光センサの数を減らすことが
できる。
【0019】
上記態様において、推薦部は、貢献度に基づいて、新たな光センサの追加を推薦しても
よい。
【0020】
この態様によれば、光センサの追加によってより適切に対象物を測定できるようにして
、総合判定の性能を向上させることができる。
【0021】
上記態様において、推薦部は、複数の受光データの相関に基づいて、複数の光センサの
配置変更を推薦してもよい。
【0022】
この態様によれば、複数の光センサをより効率的に用いるように配置変更して、総合判
定の性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、導入負担を軽減して複数の光センサによる総合判定を行うことができ
るセンサシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係るセンサシステムの概要を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るセンサシステムの機能ブロックを示す図である。
【
図3】本実施形態に係るセンサシステムの物理的構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るセンサシステムにより実行される学習済みモデル生成処理のフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係るセンサシステムにより実行される推薦処理のフローチャートである。
【
図6】本実施形態の変形例に係るセンサシステムの概要を示す図である。
【
図7】本実施形態の変形例に係るセンサシステムの機能ブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一
の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係るセンサシステム1の概要を示す図である。センサシス
テム1は、マスタユニット10、第1スレーブユニット20a、第2スレーブユニット2
0b、第3スレーブユニット20c、第1光センサ30a、第2光センサ30b、第3光
センサ30c及びPLC40を備える。ここで、第1光センサ30a、第2光センサ30
b及び第3光センサ30cは、ラインLに配置され、ラインL上を搬送される対象物に照
射した光を受光して、対象物の状態を測定する。第1光センサ30a、第2光センサ30
b及び第3光センサ30cは、例えばファイバセンサであってよい。また、対象物は、例
えば製品を構成する部品であってよい。なお、対象物は、必ずしもラインL上を搬送され
るものでなくてもよく、例えば所定の経路を落下する錠剤であってもよい。
【0027】
第1スレーブユニット20a、第2スレーブユニット20b及び第3スレーブユニット
20cは、複数の光センサそれぞれに接続され、複数の光センサにより測定されるデータ
を取得する。より具体的には、第1スレーブユニット20aは第1光センサ30aに接続
され、第2スレーブユニット20bは第2光センサ30bに接続され、第3スレーブユニ
ット20cは第3光センサ30cに接続されている。PLC40は、制御装置に相当する
。そして、マスタユニット10は、複数のスレーブユニット及びPLC40と接続され、
複数のスレーブユニットからデータを収集して、そのデータを表示部16に表示したり、
PLC40に送信したりする。本明細書では、第1スレーブユニット20a、第2スレー
ブユニット20b、第3スレーブユニット20cをスレーブユニット20と総称し、第1
光センサ30a、第2光センサ30b、第3光センサ30cを光センサ30と総称する。
【0028】
なお、本実施形態に係るセンサシステム1の構成は一例であり、センサシステム1が備
える複数の光センサの数、複数のスレーブユニットの数は任意である。また、制御装置は
、必ずしもPLC40でなくてもよい。
【0029】
マスタユニット10は、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークを介して
PLC40に接続されてよい。スレーブユニット20は、マスタユニット10に物理的か
つ電気的に接続される。本実施形態において、マスタユニット10は、スレーブユニット
20から受信した情報を記憶部に記憶し、記憶された情報をPLC40に送信する。従っ
て、スレーブユニット20により取得されたデータは、マスタユニット10によって一元
化されてPLC40に伝送される。
【0030】
一例として、スレーブユニット20からマスタユニット10には、判定信号及び検出情
報が伝送される。判定信号とは、光センサ30により測定されたデータに基づき、スレー
ブユニット20によって判定された、ワークに関する判定結果を示す信号である。判定信
号は、例えば、光センサ30により測定された受光量と、所定の閾値とをスレーブユニッ
ト20によって比較して得られるオン信号又はオフ信号であってよい。検出情報は、スレ
ーブユニット20の検出動作によって得られる検出値である。検出動作は、例えば、投光
及び受光の動作であり、検出情報は、受光量であってよい。本明細書では、判定信号及び
検出情報を含む、スレーブユニット20から取得されるデータを受光データと総称する。
【0031】
スレーブユニット20は、マスタユニット10の側面に取り付けられてよい。マスタユ
ニット10とスレーブユニット20との通信には、パラレル通信又はシリアル通信が用い
られてよい。すなわち、マスタユニット10と、スレーブユニット20とがシリアル伝送
路及びパラレル伝送路で物理的に接続されてよい。例えば、パラレル伝送路上でスレーブ
ユニット20からマスタユニット10に判定信号が送信され、シリアル伝送路上で、スレ
ーブユニット20からマスタユニット10に検出情報が送信されてよい。なお、マスタユ
ニット10とスレーブユニット20とを、シリアル伝送路及びパラレル伝送路のうちのい
ずれか一方で接続してもよい。
【0032】
図2は、本実施形態に係るマスタユニット10の機能ブロックを示す図である。マスタ
ユニット10は、記憶部11、学習データ生成部12、学習モデル生成部13、貢献度算
出部14、推薦部15、表示部16及び通信部17を備える。
【0033】
記憶部11は、受光データ11a、学習データ11b及び学習済みモデル11cを記憶
している。受光データ11aは、複数の光センサ30により測定された受光量(検出情報
)と、複数のスレーブユニット20により生成された判定信号を含んでよい。学習データ
11b及び学習済みモデル11cについては、次に説明する。
【0034】
記憶部11は、複数のスレーブユニット20から取得したデータを記憶してよい。マス
タユニット10は、パラレル伝送路によってスレーブユニット20から対象物の通過状況
を示す判定信号を取得したり、シリアル伝送路によってスレーブユニット20から複数の
光センサ30により測定された検出情報を取得したりしてよい。
【0035】
学習データ生成部12は、複数の光センサ30により測定された複数の受光データ11
aに対象物の状態を示すデータを関連付けて、学習データを生成する。学習データ生成部
12は、例えば、複数の受光データ11aに対象物の形状が正常か否かを示すデータを関
連付けて、学習データを生成してよい。また、学習データ生成部12は、複数の受光デー
タ11aに対象物の種類を示すデータを関連付けて、学習データを生成してもよい。
【0036】
学習モデル生成部13は、学習データ11bを用いた機械学習により、複数の光センサ
30により測定された複数の受光データ11aを入力として、対象物の状態を示すデータ
を出力する学習済みモデル11cを生成する。学習モデル生成部13は、例えば、複数の
隠れ層を含むニューラルネットワークの重みを誤差逆伝播法により所定の損失関数につい
て最適化することで、学習済みモデル11cを生成してよい。
【0037】
このように、任意に配置した複数の光センサ30により測定された複数の受光データ1
1aと、対象物の状態を示すデータとを関連付けて学習データ11bを生成し、複数の受
光データ11aから対象物の状態を識別する学習済みモデル11cを生成することで、測
定環境や対象物の種類に応じて複数の光センサ30の配置を調整する負担が軽減され、導
入負担を軽減して複数の光センサ30による総合判定を行うことができる。
【0038】
学習モデル生成部13は、複数の光センサ30の配置に対応した学習済みモデル11c
を生成してよい。例えば、光センサ30を3台配置して一つの対象物の状態を識別する場
合、学習モデル生成部13は、3台の光センサ30の特定の配置に対して一つの学習済み
モデル11cを生成してよい。このようにして、複数の光センサ30の個別の配置に適し
た学習済みモデル11cが生成され、複数の光センサ30によって適切な総合判定を行う
ことができる。
【0039】
学習モデル生成部13は、学習データ11bを用いた機械学習により、複数の光センサ
30により測定された複数の受光データ11aを入力として、対象物の形状が正常か否か
を示すデータを出力する学習済みモデル11cを生成してもよい。光センサ30は、単体
では対象物の有無を判定することができるだけだが、複数の光センサ30を配置して、様
々な方向から一つの対象物を測定することで、対象物の形状を判定することができる。本
実施形態に係るセンサシステム1によれば、測定環境や対象物の種類に応じて複数の光セ
ンサ30の配置を調整する負担を軽減して、複数の光センサ30によって対象物の形状を
総合判定することができる。
【0040】
学習モデル生成部13は、学習データ11bを用いた機械学習により、複数の光センサ
30により測定された複数の受光データ11aを入力として、対象物の種類を示すデータ
を出力する学習済みモデル11cを生成してもよい。光センサ30は、単体では対象物の
有無を判定することができるだけだが、複数の光センサ30を配置して、様々な方向から
一つの対象物を測定することで、対象物の種類を判定することができる。本実施形態に係
るセンサシステム1によれば、測定環境や対象物の種類に応じて複数の光センサ30の配
置を調整する負担を軽減して、複数の光センサ30によって対象物の種類を総合判定する
ことができる。
【0041】
貢献度算出部14は、学習済みモデル11cの出力に対する複数の受光データ11aの
貢献度を算出する。本実施形態の場合、貢献度算出部14は、学習済みモデル11cの出
力に対する第1光センサ30aにより測定された受光データの貢献度と、学習済みモデル
11cの出力に対する第2光センサ30bにより測定された受光データの貢献度と、学習
済みモデル11cの出力に対する第3光センサ30cにより測定された受光データの貢献
度と、を算出してよい。
【0042】
推薦部15は、貢献度に基づいて、複数の光センサ30のうち除外可能な光センサ30
を推薦する。推薦部15は、例えば、第1光センサ30aにより測定された受光データの
貢献度と、第2光センサ30bにより測定された受光データの貢献度と、第3光センサ3
0cにより測定された受光データの貢献度と、をそれぞれ閾値と比較して、閾値以下の貢
献度が算出されている光センサ30を除外可能と判定してよい。推薦部15は、除外可能
な光センサ30を特定する情報を表示部16に表示したり、外部機器に出力したりしてよ
い。このようにして、総合判定の性能を保ちながら、複数の光センサ30の数を減らすこ
とができる。例えば、テスト段階では、光センサ30をN台配置して一つの対象物の状態
を示す複数の受光データを測定し(Nは0より大きい自然数)、推薦部15による推薦に
従って光センサ30を間引いていき、判定精度を所定値以上としつつ、光センサ30の台
数がM台となるように(Mは、0<M<Nを満たす自然数)、光センサ30の台数を減ら
すことができる。
【0043】
推薦部15は、貢献度に基づいて、新たな光センサの追加を推薦してもよい。推薦部1
5は、例えば、第1光センサ30aにより測定された受光データの貢献度と、第2光セン
サ30bにより測定された受光データの貢献度と、第3光センサ30cにより測定された
受光データの貢献度と、をそれぞれ閾値と比較して、いずれの貢献度も閾値以下である場
合に、新たな光センサ30の追加を推薦することとしてよい。推薦部15は、新たな光セ
ンサを追加する推薦を表示部16に表示したり、外部機器に出力したりしてよい。この場
合、推薦部15は、新たな光センサ30の配置を推薦してもよい。このようにして、光セ
ンサ30の追加によってより適切に対象物を測定できるようにして、総合判定の性能を向
上させることができる。例えば、テスト段階では、光センサ30をK台配置して一つの対
象物の状態を示す複数の受光データを測定し(Kは0より大きい自然数)、推薦部15に
よる推薦に従って光センサ30を追加していき、判定精度を所定値以上とし、光センサ3
0の台数をL台として(Lは、0<K<Lを満たす自然数)、総合判定の性能を向上させ
ることができる。
【0044】
推薦部15は、複数の受光データ11aの相関に基づいて、複数の光センサ30の配置
変更を推薦してもよい。推薦部15は、第1光センサ30aにより測定された受光データ
と、第2光センサ30bにより測定された受光データと、第3光センサ30cにより測定
された受光データと、の間の3通りの相関を算出して、相関が高い光センサ30を異なる
配置にするように配置変更を推薦してよい。ここで、推薦部15は、配置変更を推薦する
光センサ30を示すだけでもよいし、配置の候補を推薦してもよい。このようにして、複
数の光センサ30をより効率的に用いるように配置変更して、総合判定の性能を向上させ
ることができる。
【0045】
表示部16は、学習済みモデル11cの出力を表示したり、推薦部15による推薦内容
を表示したりする。表示部16は、例えば対象物に関する異常の有無を示す2値のランプ
を含んでよい。また、表示部16は、学習済みモデル11cの出力や推薦部15による推
薦内容を詳細に表示する液晶表示装置であってもよい。
【0046】
通信部17は、PLC40との通信を行うインターフェースである。通信部17は、P
LC40以外の外部機器との通信を行うものであってもよい。
【0047】
図3は、本実施形態に係るセンサシステム1の物理的構成を示す図である。マスタユニ
ット10は、PLC40との接続に用いられる入力/出力コネクタ101,102と、ス
レーブユニット20との接続に用いられる接続コネクタ106と、電源入力コネクタとを
備える。
【0048】
また、マスタユニット10は、MPU(Micro Processing Unit)110、通信ASI
C(Application Specific Integrated Circuit)112、パラレル通信回路116、シ
リアル通信回路118及び電源回路を備える。
【0049】
MPU110は、マスタユニット10における全ての処理を統括して実行するように動
作する。通信ASIC112は、PLC40との通信を管理する。パラレル通信回路11
6は、マスタユニット10とスレーブユニット20との間でのパラレル通信に用いられる
。同様に、シリアル通信回路118は、マスタユニット10とスレーブユニット20との
間でのシリアル通信に用いられる。
【0050】
スレーブユニット20は、両側壁部分に、マスタユニット10又は他のスレーブユニッ
ト20との接続コネクタ304,306が設けられている。スレーブユニット20は、マ
スタユニット10に対して一列に複数接続することが可能である。複数のスレーブユニッ
ト20からの信号は、隣り合うスレーブユニット20に伝送され、マスタユニット10に
伝送される。
【0051】
スレーブユニット20の両側面には、赤外線による光通信用の窓が設けられ、接続コネ
クタ304,306を利用して複数のスレーブユニット20を一つずつ連結して一列に配
置すると、互いに対向する光通信用の窓により、隣り合うスレーブユニット20間で赤外
線を利用した双方向光通信が可能となる。
【0052】
スレーブユニット20は、CPU(Central Processing Unit)400によって実現さ
れる各種の処理機能と、専用の回路によって実現される各種の処理機能とを有する。
【0053】
CPU400は、投光制御部403を制御し、発光素子(LED)401から赤外線を
放出させる。受光素子(PD)402が受光することによって生じた信号は、増幅回路4
04を介して増幅された後、A/Dコンバータ405を介してデジタル信号に変換されて
、CPU400に取り込まれる。CPU400では、受光データ、すなわち受光量をその
まま検出情報としてマスタユニット10に向けて送信する。また、CPU400では、受
光量が予め設定された閾値よりも大きいか否かを判定することによって得られるオン信号
又はオフ信号を、判定信号としてマスタユニット10に向けて送信する。
【0054】
さらにCPU400は、左右の投光回路411,413を制御することにより、左右の
通信用発光素子(LED)407,409から隣接するスレーブユニット20に対して赤
外線を放出する。隣接する左右のスレーブユニット20から到来する赤外線は左右の受光
素子(PD)406,408で受光された後、受光回路410,412を介しCPU40
0へと到来する。CPU400では、所定のプロトコルに基づいて、送受信信号を制御す
ることにより、左右の隣接するスレーブユニット20との間で光通信を行なう。
【0055】
受光素子406、通信用発光素子409、受光回路410、投光回路413は、スレー
ブユニット20間の相互干渉を防止するための同期信号を送受信するために利用される。
具体的には、各スレーブユニット20において、受光回路410と投光回路413とは直
接結線される。この構成により、受信した同期信号が、CPU400による遅延処理が施
されずに速やかに投光回路413を経て通信用発光素子409から隣接する別のスレーブ
ユニット20に送信される。
【0056】
CPU400は、さらに、表示部414を点灯制御する。また、CPU400は、設定
スイッチ415からの信号を処理する。CPU400の動作に必要な各種のデータは、E
EPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)416等の記録
媒体に記憶される。リセット部417から得られた信号は、CPU400へと送られ、計
測制御のリセットが行われる。発振器(OSC)418からCPU400には、基準クロ
ックが入力される。
【0057】
出力回路419は、受光量を閾値と比較して得られた判定信号の送信処理を行なう。前
述したように、本実施の形態において、判定信号はパラレル通信によってマスタユニット
10に向けて送信される。
【0058】
パラレル通信用の伝送路は、マスタユニット10と各スレーブユニット20とが個別に
接続された伝送路である。すなわち、複数のスレーブユニット20は、それぞれ、別々の
パラレル通信線によって、マスタユニット10に接続される。ただし、マスタユニット1
0に隣接するスレーブユニット20以外のスレーブユニット20と、マスタユニット10
とを接続するパラレル通信線は、他のスレーブユニット20を通過し得る。
【0059】
シリアル通信ドライバ420は、マスタユニット10から送信されたコマンド等の受信
処理、検出情報(受光量)の送信処理を行なう。本実施形態においては、シリアル通信に
RS-422プロトコルが用いられる。シリアル通信にRS-485プロトコルを利用し
てもよい。
【0060】
シリアル通信用の伝送路は、マスタユニット10及び全てのスレーブユニット20が接
続された伝送路である。すなわち、全てのスレーブユニット20は、マスタユニット10
に対して、シリアル通信線によってバス形式で信号伝達可能に接続される。
【0061】
図4は、本実施形態に係るセンサシステム1により実行される学習済みモデル生成処理
のフローチャートである。はじめに、センサシステム1に含まれる複数のスレーブユニッ
ト20は、複数の光センサ30の受光データを取得する(S10)。その後、受光データ
は、マスタユニット10に集約される。
【0062】
マスタユニット10は、受光データに対象物の形状が正常か否かを示すデータ及び対象
物の種類を示すデータを関連付けて、学習データを生成する(S11)。十分な量の学習
データが蓄積された後、マスタユニット10は、学習データを用いた機械学習により、複
数の光センサ30の配置に対応した学習済みモデルを生成する(S12)。
【0063】
その後、マスタユニット10は、複数の光センサ30により測定される受光データを学
習済みモデルに入力し、対象物の形状が正常か否かを判定したり、対象物の種類を判定し
たりしてよい。以上により、学習済みモデル生成処理が終了する。
【0064】
図5は、本実施形態に係るセンサシステム1により実行される推薦処理のフローチャー
トである。はじめに、センサシステム1に含まれるマスタユニット10は、学習済みモデ
ルの出力に対する複数の受光データの貢献度を算出する(S20)。
【0065】
その後、光センサ30を減らす場合(S21:YES)、マスタユニット10は、貢献
度に基づいて、複数の光センサ30のうち除外可能な光センサ30を推薦する(S22)
。一方、光センサ30を減らさず(S21:NO)、追加する場合、マスタユニット10
は、貢献度に基づいて、新たな光センサ30の追加を推薦する(S23)。光センサ30
を減らすか追加するかは、ユーザにより指定されてよいが、学習済みモデルの判定精度に
基づいてマスタユニット10により判定してもよい。
【0066】
その後、マスタユニット10は、必要に応じて、複数の受光データの相関に基づいて、
複数の光センサ30の配置変更を推薦する(S24)。以上により、推薦処理が終了する
。
【0067】
図6は、本実施形態の変形例に係るセンサシステム1Aの概要を示す図である。変形例
に係るセンサシステム1Aは、マスタユニット10Aが表示部を備えておらず、コンピュ
ータ50に接続されている点で、本実施形態に係るセンサシステム1と相違する。その他
の構成について、変形例に係るセンサシステム1Aは、本実施形態に係るセンサシステム
1と同様の構成を有する。
【0068】
図7は、本実施形態の変形例に係るセンサシステム1Aの機能ブロックを示す図である
。変形例に係るマスタユニット10Aは、記憶部11及び通信部17を備えるが、学習デ
ータ生成部12、学習モデル生成部13、貢献度算出部14、推薦部15及び表示部16
を備えない点で、本実施形態に係るマスタユニット10と相違する。
【0069】
変形例に係るマスタユニット10Aは、記憶部11に受光データ11a及び学習済みモ
デル11cを記憶する。マスタユニット10Aは、複数のスレーブユニット20から受光
データ11aを収集し、記憶部11に記憶するとともに、通信部17を介してコンピュー
タ50に転送する。また、マスタユニット10Aは、学習済みモデル11cをコンピュー
タ50から受信して、記憶部11に記憶する。マスタユニット10Aは、学習済みモデル
11cを用いて対象物の状態を判定する。
【0070】
コンピュータ50は、通信部51、記憶部52、学習データ生成部53、学習モデル生
成部54、貢献度算出部55、推薦部56及び表示部57を備える。
【0071】
通信部51は、マスタユニット10A及びPLC40との通信を行うインターフェース
である。通信部51は、マスタユニット10A及びPLC40以外の外部機器との通信を
行うものであってもよい。
【0072】
記憶部52は、受光データ52a、学習データ52b及び学習済みモデル52cを記憶
している。受光データ52aは、複数の光センサ30により測定された受光量(検出情報
)と、複数のスレーブユニット20により生成された判定信号を含んでよく、マスタユニ
ット10Aから転送されたものであってよい。学習データ52b及び学習済みモデル52
cについては、次に説明する。
【0073】
学習データ生成部53は、複数の光センサ30により測定された複数の受光データ52
aに対象物の状態を示すデータを関連付けて、学習データを生成する。学習データ生成部
53は、学習データ生成部12と同様の構成であってよい。
【0074】
学習モデル生成部54は、学習データ52bを用いた機械学習により、複数の光センサ
30により測定された複数の受光データ52aを入力として、対象物の状態を示すデータ
を出力する学習済みモデル52cを生成する。学習モデル生成部54は、学習モデル生成
部13と同様の構成であってよい。
【0075】
貢献度算出部55は、学習済みモデル52cの出力に対する複数の受光データ52aの
貢献度を算出する。貢献度算出部55は、貢献度算出部14と同様の構成であってよい。
【0076】
推薦部56は、貢献度に基づいて、複数の光センサ30のうち除外可能な光センサ30
を推薦したり、新たな光センサの追加を推薦したり、複数の受光データ52aの相関に基
づいて、複数の光センサ30の配置変更を推薦したりしてよい。推薦部56は、推薦部1
5と同様の構成であってよい。
【0077】
表示部57は、学習済みモデル52cの出力を表示したり、推薦部56による推薦内容
を表示したりする。表示部57は、例えば対象物に関する異常の有無を示す2値のランプ
を含んでよい。また、表示部57は、学習済みモデル52cの出力や推薦部56による推
薦内容を詳細に表示する液晶表示装置であってもよい。
【0078】
変形例に係るセンサシステム1Aによれば、任意に配置した複数の光センサ30により
測定された複数の受光データ52aと、対象物の状態を示すデータとを関連付けて学習デ
ータ52bを生成し、複数の受光データ52aから対象物の状態を識別する学習済みモデ
ル52cを生成することで、測定環境や対象物の種類に応じて複数の光センサ30の配置
を調整する負担が軽減され、導入負担を軽減して複数の光センサ30による総合判定を行
うことができる。
【0079】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定
して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件
、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができ
る。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可
能である。
【0080】
[付記1]
対象物に照射した光を受光して前記対象物の状態を測定する複数の光センサ(30)と
、
前記複数の光センサ(30)により測定された複数の受光データに前記対象物の状態を
示すデータを関連付けて、学習データを生成する学習データ生成部(12)と、
前記学習データを用いた機械学習により、前記複数の光センサ(30)により測定され
た複数の受光データを入力として、前記対象物の状態を示すデータを出力する学習済みモ
デルを生成する学習モデル生成部(13)と、
を備えるセンサシステム(1)。
【0081】
[付記2]
前記学習モデル生成部(13)は、前記複数の光センサ(30)の配置に対応した前記
学習済みモデルを生成する、
付記1に記載のセンサシステム(1)。
【0082】
[付記3]
前記学習データ生成部(12)は、前記複数の受光データに前記対象物の形状が正常か
否かを示すデータを関連付けて、前記学習データを生成し、
前記学習モデル生成部(13)は、前記学習データを用いた機械学習により、前記複数
の光センサ(30)により測定された複数の受光データを入力として、前記対象物の形状
が正常か否かを示すデータを出力する前記学習済みモデルを生成する、
付記1又は2に記載のセンサシステム(1)。
【0083】
[付記4]
前記学習データ生成部(12)は、前記複数の受光データに前記対象物の種類を示すデ
ータを関連付けて、前記学習データを生成し、
前記学習モデル生成部(13)は、前記学習データを用いた機械学習により、前記複数
の光センサ(30)により測定された複数の受光データを入力として、前記対象物の種類
を示すデータを出力する前記学習済みモデルを生成する、
付記1又は2に記載のセンサシステム(1)。
【0084】
[付記5]
前記学習済みモデルの出力に対する前記複数の受光データの貢献度を算出する貢献度算
出部(14)と、
前記貢献度に基づいて、前記複数の光センサ(30)のうち除外可能な光センサ(30
)を推薦する推薦部(15)と、をさらに備える、
付記1から4のいずれか一項に記載のセンサシステム(1)。
【0085】
[付記6]
前記推薦部(15)は、前記貢献度に基づいて、新たな光センサ(30)の追加を推薦
する、
付記5に記載のセンサシステム(1)。
【0086】
[付記7]
前記推薦部(15)は、前記複数の受光データの相関に基づいて、前記複数の光センサ
(30)の配置変更を推薦する、
付記5又は6に記載のセンサシステム(1)。
【符号の説明】
【0087】
1…センサシステム、1A…変形例に係るセンサシステム、10…マスタユニット、1
0A…変形例に係るマスタユニット、11…記憶部、11a…受光データ、11b…学習
データ、11c…学習済みモデル、12…学習データ生成部、13…学習モデル生成部、
14…貢献度算出部、15…推薦部、16…表示部、17…通信部、20a…第1スレー
ブユニット、20b…第2スレーブユニット、20c…第3スレーブユニット、30a…
第1光センサ、30b…第2光センサ、30c…第3光センサ、40…PLC、50…コ
ンピュータ、51…通信部、52…記憶部、52a…受光データ、52b…学習データ、
52c…学習済みモデル、53…学習データ生成部、54…学習モデル生成部、55…貢
献度算出部、56…推薦部、57…表示部、101,102…入力/出力コネクタ、10
6…接続コネクタ、110…MPU、112…通信ASIC、116…パラレル通信回路
、118…シリアル通信回路、304,306…接続コネクタ、400…CPU、401
…発光素子、402,406,408…受光素子、403…投光制御部、404…増幅回
路、405…A/Dコンバータ、407,409…通信用発光素子、410,412…受
光回路、411,413…投光回路、419…出力回路、420…シリアル通信ドライバ