IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 ▲高▼▲橋▼監理の特許一覧

<>
  • 特許-浮上式住宅 図1
  • 特許-浮上式住宅 図2
  • 特許-浮上式住宅 図3
  • 特許-浮上式住宅 図4
  • 特許-浮上式住宅 図5
  • 特許-浮上式住宅 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】浮上式住宅
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020143023
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022031043
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504196492
【氏名又は名称】株式会社高橋監理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 龍夫
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-201303(JP,A)
【文献】実公昭57-023606(JP,Y2)
【文献】特開2013-032686(JP,A)
【文献】特開2015-148126(JP,A)
【文献】登録実用新案第3008912(JP,U)
【文献】登録実用新案第3174403(JP,U)
【文献】特開平04-272373(JP,A)
【文献】実開昭58-044314(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0247333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の氾濫等により水害が発生した場合、水の力により木造住宅を浮上させるための浮上式住宅において、
木造住宅を囲うように出隅に複数本の垂直柱を建て、床下の内部に床下浮力部材で形成した床下浮力室を土台と一体になるように構築し、
基礎コンクリートの外面に複数個のステンレス製床下通気口を設置すると共に、前記ステンレス製床下通気口と相対する基礎コンクリートの内面に洪水等の水の力により開閉する断熱開閉フタを取り付け、
木造住宅の外壁面と対置する複数本の垂直柱との間を概ね等間隔になるように構成し、
木造住宅の出隅の外壁面に、木造住宅が概ね水平を保った状態で浮上することが出来るように垂直柱を緩く挿入することができるガイド金具を取り付け、
増水した水の力により、概ね水平状態を保った状態で木造住宅を水面に浮上させるように構成したことを特徴とする浮上式住宅。
【請求項4】
ガイド金具は、外壁の出隅に固定するための外壁固定部と垂直柱を抱え込むように概ね菱形に形成した菱形ガイド部で構成し、前記菱形ガイド部の各々内面にローラーを取り付け、ガイド金具を左右対称に二分割し、二分割した双方の菱形ガイド部の両端部を互いにボルトとナットで固定するように構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の浮上式住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台風等の自然災害における住宅の浸水や破損を防ぐため、氾濫した河川の洪水等から住宅を守るための浮上式住宅に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化や環境変化などにより、以前にも増して短時間あたりの降水量が非常に多くなっており、河川の氾濫による水害の発生が数多く見受けられるようになった。
水害による住宅の直接的な被害は、住宅の床下浸水や床上浸水である。
とりわけ床上浸水の場合は、家財道具の損壊に留まらず住宅の流失や崩壊まで発展することもあり甚大な被害が発生した。
【0003】
また、増水した河川の水により下水が逆流してマンホール等から下水が噴き出し住宅内部に浸水するという水害も発生している。
【0004】
このような住宅等への浸水被害を防ぐための対策としては、
(1)敷地を盛土し、宅地の地盤を高くしたうえで住宅を建築する。
(2)住宅の周囲にコンクリートを打設して擁壁を構築すると共に、敷地の出入口(門扉)に洪水等の水害が発生した場合に備えて土のう、止水板、止水装置等を設置する。
これまでは、このような対策が行われてきた。
【0005】
しかしながら、上記のような水害対策をしていても、市町村が作成した洪水ハザードマップで表示した特別警戒水位以上の高さの水が押し寄せ、住宅の2階部分まで浸水したといった事例も数多く報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点を解決するためになされたもので、氾濫した河川の洪水等の水の力で水平状態を保った状態で安全に浮き上がらせることができる木造住宅を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、河川の氾濫等により水害が発生した場合、水の力により木造住宅を浮上させるための浮上式住宅において、木造住宅を囲うように出隅に複数本の垂直柱を建て、床下の内部に床下浮力部材で形成した床下浮力室を土台と一体になるように構築し、基礎コンクリートの外面に複数個のステンレス製床下通気口を設置すると共に、前記ステンレス製床下通気口と相対する基礎コンクリートの内面に洪水等の水の力により開閉する断熱開閉フタを取り付け、木造住宅の外壁面と対置する複数本の垂直柱との間を概ね等間隔になるように構成し、木造住宅の出隅の外壁面に、木造住宅が概ね水平を保った状態で浮上することが出来るように垂直柱を緩く挿入することができるガイド金具を取り付け、増水した水の力により、概ね水平状態を保った状態で木造住宅を水面に浮上させるように構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構造に加え、木造住宅の土台に成形した全てのアンカーボルト用穴の概ね下部3分の1を逆すり鉢状に削り取り、増水した水の力により浮上した木造住宅が元の位置に戻る際、基礎コンクリートに埋め込んだアンカーボルトがアンカーボルト用穴に確実に挿入されるように構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構造に加え、垂直柱を角形鋼管で成形し木造住宅の四隅に設置したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造に加え、ガイド金具は、外壁の出隅に固定するための外壁固定部と垂直柱を抱え込むように概ね菱形に形成した菱形ガイド部で構成し、前記菱形ガイド部の各々内面にローラーを取り付け、ガイド金具を左右対称に二分割し、二分割した双方の菱形ガイド部の両端部を互いにボルトとナットで固定するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、河川の氾濫等により水害が発生した場合、水の力により木造住宅を浮上させるための浮上式住宅において、木造住宅を囲うように出隅に複数本の垂直柱を建て、床下の内部に床下浮力部材で形成した床下浮力室を土台と一体になるように構築し、基礎コンクリートの外面に複数個のステンレス製床下通気口を設置すると共に、前記ステンレス製床下通気口と相対する基礎コンクリートの内面に洪水等の水の力により開閉する断熱開閉フタを取り付け、木造住宅の外壁面と対置する複数本の垂直柱との間を概ね等間隔になるように構成し、木造住宅の出隅の外壁面に、木造住宅が概ね水平を保った状態で浮上することが出来るように垂直柱を緩く挿入することができるガイド金具を取り付け、増水した水の力により、概ね水平状態を保った状態で木造住宅を水面に浮上させるように構成したことにより、簡単な構造と安価な費用で、安全性の高い浮上式住宅を建築することが可能になった。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、木造住宅の土台に成形した全てのアンカーボルト用穴の概ね下部3分の1を逆すり鉢状に削り取り、増水した水の力により浮上した木造住宅が元の位置に戻る際、基礎コンクリートに埋め込んだアンカーボルトがアンカーボルト用穴に確実に挿入されるように構成したことにより、浮上した住宅を確実に元の位置に戻すことが可能になった。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、垂直柱を角形鋼管で成形し木造住宅の四隅に設置したことにより、簡単な構造と安価な費用で安全性の高い浮上式住宅を提供することが可能になった。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、ガイド金具は、外壁の出隅に固定するための外壁固定部と垂直柱を抱え込むように概ね菱形に形成した菱形ガイド部で構成し、前記菱形ガイド部の各々内面にローラーを取り付け、ガイド金具を左右対称に二分割し、二分割した双方の菱形ガイド部の両端部を互いにボルトとナットで固定するように構成したことにより、概ね水平状態を保った状態で浮上式住宅を水面に浮上させることが可能になった。
【実施例
【0015】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図6には、この発明の実施の形態を示す。
【0017】
図1は、本発明の浮上式住宅の基礎コンクリート9と、基礎コンクリート9の上面に設置する基礎パッキン10と、基礎パッキン10の上面に取り付ける土台11と、さらに基礎コンクリート9に埋設したアンカーボルト8が土台11を貫通して配置された状態を示すと共に、基礎コンクリート9の角部から等間隔になるように4本の垂直柱7(肉厚6mm、辺の長さ150mm×150mm、長さ約7mの角形鋼管)をコンクリート製の柱基礎12に埋設して垂直に固定した状態を示す。
【0018】
このように構成した基礎コンクリート9の外面に、洪水等の水を床下16に導くため複数のステンレス製床下通気口3(白蟻が浸入するのを防止するため網目1mm以下の金網を使用する)を取り付けると共に、ステンレス製床下通気口3と相対する基礎コンクリート9の内面に、洪水等による水の力で開口するように構成した断熱開閉フタ6を取り付けた状態を示す。
【0019】
図2は、洪水等により浮上式住宅1の床下に浸水した水を利用して浮上式住宅1を浮上させるための床下浮力部材25を示す。床下浮力部材25は床下16の形状に合わせてステンレス鋼板で形成した箱に発泡スチロールを収納した状態で形成される。
【0020】
図3は、図2で説明した床下浮力部材25を土台11に固定した状態を示すと共に、土台11の上部に2階建ての浮上式住宅1を構築した状態を一点鎖線で示す。
【0021】
図4は、図1図3で説明した垂直柱7を点線で表示すると共に、一点鎖線で表示した浮上式住宅1の出隅の外壁面に、浮上式住宅1を水平状態を保った状態で浮上させることが出来るように、図4aで示す菱形ガイド部31に垂直柱7を挿入した状態のガイド金具30を取り付けた状態を示す。さらに図4aでは4本の垂直柱7に挿入した状態のガイド金具30を平面図で示す。
【0022】
ガイド金具30は図4aの平面図で示すとおり、概ね菱形をした菱形ガイド部31と、その菱形ガイド部31を浮上式住宅1の出隅の外壁38に取り付けるための外壁固定部(A)48、外壁固定部(B)36で構成し、ガイド金具30を構成する一方のフレームは、厚さ4.5mm、巾80mmの平板鋼板を、端部から概ね長さ100mmの位置で135度折り曲げガイド金具30を外壁38に取り付けるための外壁固定部(A)48を成形し、さらに概ね長さ80mmの位置で135度折り曲げ合体部(C)35を成形し、さらに概ね長さ250mmの位置で270度折り曲げたあと、さらに概ね長さ290mmの位置で135度折り曲げることによりへの字枠(A)32を成形し、さらに折り曲げた先端に概ね長さ60mmの合体部(B)49が成形される。このように成形したへの字枠(A)32の2箇所の辺部に洪水等の水の力で浮上式住宅1が水の上に浮かび上がる際に、ガイド金具30と垂直柱7との接触を軽減させ浮上式住宅1を水平を保った状態で浮かび上がらせるため、厚さ2.3mm、巾80mmの平板鋼板をコの字形に折り曲げたローラー用フレーム42の内側に、直径50mm、巾60mmに形成した丸形のローラー43を取り付けたローラー金物44が取り付けられる。このように外壁固定部(A)48、合体部(C)35、への字枠(A)32、合体部(B)49で構成したガイド金具30の一方のフレームと、同一形状をした他方のフレームを左右対称に相対させて配置し、合体部(A)34と合体部(B)49をボルト40とナット45で固定すると共に、合体部(C)35と合体部(D)50をボルト39とナット47で固定することによりガイド金具30が形成される。このようにガイド金具30を構成し、柱基礎12から約1mの高さの外壁38にガイド金具30の外壁固定部(A)48、外壁固定部(B)36をコーチボルト37(規格はM12、長さ90mm)で固定させることにより、垂直柱7とガイド金具30との摩擦を低減させることが可能となり、洪水等の水の力により浮上式住宅1が概ね水平を保った状態で安全に浮上することが可能となった。
【0023】
図5は、図4で説明した浮上式住宅1が洪水等の水の力で浮上した状態を示す。
【0024】
図6は、図1図5で示した土台11のアンカーボルト用穴51に成形した逆すり鉢状開口部52を点線で示す。逆すり鉢状開口部52は、下部の直径が約85mm、深さは約30mmで成形される。このようにアンカーボルト用穴51の下部を逆すり鉢状に成形することにより、図5で示した洪水等の水が引く際に、基礎コンクリート9に埋設したアンカーボルト8の先端が、位置調整を行うことなく自動的に安定した状態で元のアンカーボルト用穴51に戻ることが可能になった。
【0025】
以上、実施の形態に基づいて、本発明に係る浮上式住宅について詳細に説明してきたが、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の改変をなしても、本発明の技術的範囲に属するのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係る、4本の垂直柱を基礎コンクリートと土台の四隅に設置した状態を示す。
図2】同実施の形態に係る、図1で示した土台に取り付ける床下浮力部材を配置した状態を示す。
図3】同実施の形態に係る、図2で示した床下浮力部材を土台に取り付けた状態を示す。
図4】同実施の形態に係る、図3で示した垂直柱に取り付けるためのガイド金具を示す。
図5】同実施の形態に係る、洪水等の水の力により浮上式住宅が浮き上がった状態を示す。
図6】同実施の形態に係る、土台に成形した逆すり鉢状開口部を示す。
【符号の説明】
【0027】
1 浮上式住宅
2 洪水流入口
3 ステンレス製床下通気口
4 蝶番
5 枠
6 断熱開閉フタ
7 垂直柱
8 アンカーボルト
9 基礎コンクリート
10 基礎パッキン
11 土台
12 柱基礎
13 金網
14 枠
15 ネジ
16 床下
25 床下浮力部材
30 ガイド金具
31 菱形ガイド部
32 への字枠(A)
33 への字枠(B)
34 合体部(A)
35 合体部(C)
36 外壁固定部(B)
37 コーチボルト
38 外壁
39 ボルト
40 ボルト
42 ローラー用フレーム
43 ローラー
44 ローラー金物
45 ナット
46 シャフト
47 ナット
48 外壁固定部(A)
49 合体部(B)
50 合体部(D)
51 アンカーボルト用穴
52 逆すり鉢状開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6