(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ヘビ毒を含む関節リウマチの予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/583 20150101AFI20231109BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231109BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231109BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20231109BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20231109BHJP
【FI】
A61K35/583
A61P19/02
A61P29/00 101
A61K8/98
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2021578233
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 KR2020008413
(87)【国際公開番号】W WO2021002642
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0079560
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0079559
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515131404
【氏名又は名称】アジュ ユニバーシティー インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】AJOU UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】ソン ソン ヒャン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0209468(US,A1)
【文献】RecName: Full=Long neurotoxin 2; AltName: Full=Neurotox. [online]. 2017-NOV-22 uploaded. NCBI Protein, ACCESSION No.P01388, [Retrieved on 2022-DEC-13]. Retrieved from the internet:<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/128942?sat=47&satkey=83993283>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 38/00-38/58
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アメリカヌママムシ(Agkistrodon piscivorus piscivorus)またはシンリンコブラ(Naja melanoleuca)に由来するヘビ
毒を含む、関節リウマチの予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記組成物が、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤をさらに含む、請求項1に記載の関節リウマチの予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の薬学組成物をヒト以外の関節リウマチの疑いのある個体に投与するステップを含む、関節リウマチの治療方法。
【請求項4】
アメリカヌママムシまたはシンリンコブラに由来するヘビ
毒を含む、関節リウマチの予防または改善用医薬部外品組成物。
【請求項5】
アメリカヌママムシまたはシンリンコブラに由来するヘビ
毒を含む、関節リウマチの予防または改善用食品組成物。
【請求項6】
アメリカヌママムシまたはシンリンコブラに由来するヘビ
毒を含む、関節リウマチの予防または改善用化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Agkistrodon piscivorus piscivorus(アメリカヌママムシ)またはNaja melanoleuca(シンリンコブラ)に由来するヘビ毒を含む、関節リウマチの予防または治療用組成物に関し、さらに詳しくは、本発明は、ヘビの一種であるAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒、その抽出物またはその分画物を含む、関節リウマチの予防または治療用薬学組成物、医薬部外品組成物、食品組成物、化粧料組成物、及び前記組成物を用いて関節リウマチを治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、関節炎とは、関節が損傷した後、損傷した部位に炎症が生じ、関節部位に回復されない結果をもたらす疾患を通称して呼ぶものであるが、損傷した部位に炎症が生じることから激しい痛みを引き起こすことが知られている。このような関節炎は、最終症状である炎症故に炎症性疾患の一種とみなされることもあるが、炎症は、生体内における関節損傷に由来する自然な生体内反応の一種であり、前記炎症が関節炎の発症原因ではないため、関節炎は、関節の損傷原因に応じて、変性疾患の一種である骨関節炎と、免疫疾患の一種である関節リウマチに大別される。
【0003】
そのうち、骨関節炎(osteoarthritis)は、関節軟骨を構成する細胞外マトリックス(extracellular matrix)の変性によって関節軟骨が徐々に損傷し、炎症や痛みを伴う慢性変性疾患であると定義されるが、中年または老年から主に発生し、骨関節炎の有病率は50歳以上が約40%を占め、年齢が上がるにつれて、男性よりも女性の方で高い有病率を示している。骨関節炎の原因としては、変性変化、免疫系の異常、感染、外傷、代謝障害など様々なものがあり、骨関節炎の発症に関連する要因としては、一酸化窒素(nitric oxide;NO)、サイトカイン(cytokine)、及びタンパク質加水分解酵素(proteolytic enzymes)などが知られている。
【0004】
また、関節リウマチは、主に関節を破壊する代表的な全身性慢性自己免疫疾患の一種であり、その発症には遺伝的・環境的因子が作用し、遺伝的な要因が約60%を占めることが知られている。関節リウマチでは、質病の活性度が調節されないと、時間経過に応じて不可逆的な関節変形や障害が生じ、これを調節するための免疫抑制剤及び生物学的製剤などに対する薬物反応の程度によって関節破壊に影響を与えることが知られている。
【0005】
このように、加齢とともに自然に発症する骨関節炎とは異なり、関節リウマチはその発症時期を予測することが不可能であり、先天性自己免疫疾患の一種であるため、完治することが不可能であることから、それを治療するのではなく症状を緩和させるために多くの研究が進められているが、炎症による痛みを緩和することを目的として、主に抗炎症剤を開発するための研究が活発に行われている。例えば、関節リウマチの症状を緩和する目的で、抗炎症剤の一種である非ステロイド系抗炎症剤が開発されているが、このような非ステロイド系抗炎症剤は、胃腸管、腎臓、心臓、肝臓などの体内の様々な臓器で副作用を引き起こすことが報告されており、より効果的な治療薬の開発が求められている。
【0006】
一方、ヘビ毒とは、毒ヘビ類の特殊な唾液腺である毒腺から分泌される様々な毒素の混合物を意味し、プロテアーゼを始めとする様々なタンパク質分解酵素と細胞に毒性を示す様々なポリペプチドとを含むことが知られている。このようなヘビ毒は、酸化に対しては比較的強く、たとえ無毒化されたとしても、その回復は可逆的であるが、還元に対しては非常に弱く、システインによって簡単に無毒化されることが知られている。近年では、前記ヘビ毒の薬理活性が究明されつつあり、それによって様々な疾患を治療する治療薬としての開発が加速している。例えば、特許文献1には、ヘビ毒に由来するディスインテグリンであるサクサチリンを含む動脈硬化症の予防または治療用組成物が開示されており、特許文献2には、マムシのヘビ毒を含むアトピー性皮膚疾患の緩和または治療用組成物が開示されており、特許文献3には、ヘビ毒を含む複合体を有効成分として含む炎症応答関連疾患の治療用製剤が開示されている。特許文献4には、AP(Agkistrodon piscivorus piscivorus)に由来するヘビ毒を有効成分として含む炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物が開示されており、特許文献5には、NM(Naja melanoleuca)に由来するヘビ毒を有効成分として含む炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物が開示されている。
【0007】
このような背景下で、本発明者らは、関節リウマチを効果的に治療することができる製剤を開発するために鋭意研究努力したところ、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒が自己免疫疾患の一種である関節リウマチの症状を改善することができることを確認し、本発明の完成に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0036908号公報
【文献】韓国公開特許第10-2016-0118417号公報
【文献】日本国特開2010-075194号公報
【文献】韓国登録特許第10-1802515号公報
【文献】韓国登録特許第10-1802514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒、その抽出物またはその分画物を含む、関節リウマチの予防または治療用薬学組成物を提供することを主な目的とする。
【0010】
本発明は、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒、その抽出物またはその分画物を含む、関節リウマチの予防または改善用医薬部外品組成物を提供することを他の目的とする。
【0011】
本発明は、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒、その抽出物またはその分画物を含む、関節リウマチの予防または改善用食品組成物を提供することをさらに他の目的とする。
【0012】
本発明は、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒、その抽出物またはその分画物を含む、関節リウマチの予防または改善用化粧料組成物を提供することをさらに他の目的とする。
【0013】
本発明は、前記組成物を用いて関節リウマチを治療する方法を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒、その抽出物またはその分画物を含む、関節リウマチの予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0015】
本発明の用語「抽出物」とは、目的の物質を様々な溶媒に浸漬した後、常温または加温状態で一定時間抽出して得られた液相成分、前記液相成分から溶媒を除去して得られた固形分などの結果物のことである。さらに、前記結果物に加えて、前記結果物の希釈液、それらの濃縮物、それらの調整剤物、精製物などをすべて含むものと包括的に解釈されてもよい。それにより、本発明で提供するAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒抽出物は、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を抽出処理して得られる抽出液、前記抽出液の希釈液や濃縮液、前記抽出液を乾燥して得られる乾燥物、前記抽出液の調整剤物または精製物、またはそれらの混合物など、抽出液自体及び抽出液を用いて形成可能なあらゆる剤形の抽出物を含むものとして解釈されてもよい。
【0016】
本発明のAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒抽出物を得る方法は、特に限定されることなく、当該技術分野において通常用いられる方法に従って抽出してもよい。前記抽出方法の非限定的な例としては、熱水抽出法、超音波抽出法、濾過法、還流抽出法などが挙げられ、これらは単独で行われてもよく、2種以上の方法を組み合わせて行われてもよい。
【0017】
本発明において前記抽出に用いられる溶媒の種類は、特に限定されることなく、当該技術分野において公知の任意の溶媒を用いてもよい。前記抽出溶媒の非限定的な例としては、水、アルコールまたはそれらの混合溶媒などが挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、1種以上混合して用いられてもよく、具体的には、水を用いてもよい。アルコールを溶媒として用いる場合には、具体的には、炭素数1~4のアルコールを用いてもよい。
【0018】
本発明の用語「分画物」とは、いくつかの様々な構成成分を含む混合物から特定の成分または特定の成分群を分離するために分画を行って得られた結果物のことである。
【0019】
本発明において前記分画物を得る分画方法は、特に限定されることなく、当該技術分野において通常用いられる方法に従って行ってもよい。前記分画方法の非限定的な例としては、様々な溶媒を処理して行う溶媒分画法、一定の分子量カットオフ値を有する限外濾過膜に通して行う限外濾過分画法、様々なクロマトグラフィー(サイズ、電荷、疎水性または親和性に応じた分離のために作製されたもの)を行うクロマトグラフィー分画法、及びそれらの組み合わせなどが挙げられる。具体的には、本発明のAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を抽出して得られた抽出物に所定の溶媒を処理し、前記抽出物から分画物を得る方法が挙げられる。
【0020】
本発明において前記分画物を得るために用いられる分画溶媒の種類は、特に限定されることなく、当該技術分野において公知の任意の溶媒を用いてもよい。前記分画溶媒の非限定的な例としては、水、炭素数1~4のアルコールなどの極性溶媒;ヘキサン(Hexan)、酢酸エチル(Ethyl acetate)、クロロホルム(Chloroform)、ジクロロメタン(Dichloromethane)などの非極性溶媒;またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、1種以上混合して用いられてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0021】
さらに、前記抽出物または分画物は、抽出後に乾燥粉末の形態で調製されて用いられてもよいが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明の用語「関節リウマチ」とは、複数の関節に同時に影響を及ぼす炎症性自己免疫疾患であり、慢性関節炎による関節の損傷を引き起こしたり、関節以外の他の臓器に侵入して全身に症状をもたらしたりする疾患のことである。
【0023】
前記自己免疫疾患とは、免疫機能に異常が生じ、免疫機能を担う免疫細胞が己の体の臓器や組織を攻撃して発生する疾患のことである。
【0024】
本発明の用語「予防」とは、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を含む組成物を投与することで、関節リウマチを抑制または遅延させるあらゆる行為のことである。
【0025】
本発明の用語「治療」とは、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を含む組成物を投与することで、関節リウマチの症状が改善または有利に変化するあらゆる行為のことである。
【0026】
本発明の薬学組成物は、組成物の総重量に対して、前記Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を0.001~80、具体的には0.001~70、さらに具体的には0.001~60重量%含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0027】
さらに、前記薬学組成物は、薬学組成物の製造に通常使用される薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んでもよく、前記担体は、非天然の担体(non-naturally occuring carrier)を含んでもよい。前記担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油が挙げられる。
【0028】
また、前記薬学組成物は、それぞれ通常の方法により錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、経皮吸収剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、貼付剤、パップ剤、ペースト剤、スプレー、皮膚乳化液、皮膚懸濁液、経皮伝達性パッチ、薬物含有包帯または坐剤の形態で剤形化して用いてもよい。具体的には、剤形化する場合は、通常用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような固形製剤は、少なくとも1種以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混合して調製してもよい。また、単なる賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような滑沢剤などを用いてもよい。経口用の液状物、流動パラフィン以外にも様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを添加して調製してもよい。非経口投与用製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、及び坐剤が含まれる。非水性溶剤及び懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが用いられてもよい。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いられてもよい。
【0029】
本発明の他の実施形態は、前記薬学組成物をヒト以外の関節リウマチの疑いのある個体に投与するステップを含む、関節リウマチの治療方法を提供する。
【0030】
本発明の用語「投与」とは、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を含む組成物を対象物に導入する行為のことである。
【0031】
本発明の用語「個体」とは、関節リウマチが発症しているか、あるいは発症する可能性のあるヒトを始めとするラット、マウス、家畜などのあらゆる動物のことである。具体的な例としては、ヒトを含む哺乳動物が挙げられる。
【0032】
本発明の薬学組成物は、薬学的に有効な量を投与する。前記用語「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量のことであり、有効用量の程度は、個体の種類及び症状の重さ、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与時間、投与経路及び排出率、治療期間、同時に用いられる薬物を含む要素、及び他の医学分野で周知の要素に応じて決定されてもよい。例えば、前記Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒は、1日当たり0.01~500mg/kg、具体的には0.1~50mg/kgの用量で投与してもよく、前記投与は、1日に1回または数回に分けて投与してもよい。
【0033】
前記薬学組成物は、個々の治療薬として投与するか、あるいは他の治療薬と組み合わせて投与してもよく、従来の治療薬と順次または同時に投与してもよい。そして、単一または複数投与してもよい。前記要素をすべて考慮して、副作用なしに最低限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定され得る。
【0034】
さらに、前記薬学組成物は、目的とする方法に従って経口投与するか、あるいは非経口投与(例えば、静脈内、皮下、皮膚、腹腔内または局所に適用)してもよく、投与量は、患者の状態及び体重、質病の重さ、薬物の形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者によって適宜選択され得る。
【0035】
本発明の別の実施形態は、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒またはその分画物を含む、関節リウマチの予防または改善用医薬部外品組成物を提供する。
【0036】
そのとき、前記抽出物、分画物、関節リウマチ、予防及び改善の定義は、前述のとおりである。
【0037】
本発明の用語「医薬部外品」とは、ヒトまたは動物の質病を治療、軽減、処置または予防することを目的に使用される繊維、ゴム製品またはその類似品、人体に対する作用が弱いか、あるいは人体に直接作用しない、器具または機械ではないものとその類似品、感染防止のために殺菌、殺虫、及び同様の用途で使用される製剤の1つに該当する物品であって、ヒトまたは動物の質病を診断、治療、軽減、処置または予防することを目的に用いられる物品のうち器具、機械または装置ではないもの、及びヒトまたは動物の構造及び機能に薬理学的影響を与える目的で使用する物品のうち器具、機械または装置ではないものを除く物品のことであり、皮膚外用剤及び個人衛生物品も含まれる。
【0038】
本発明のAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒は、関節リウマチの予防または改善を目的として医薬部外品組成物に添加する場合、前記Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒をそのまま添加するか、あるいは他の医薬部外品成分と組み合わせて用いられてもよく、通常の方法に従って適宜用いてもよい。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)に応じて適宜決定されてもよい。
【0039】
前記医薬部外品組成物には、特にこれに限定されないが、個人衛生用品、皮膚外用剤、消毒洗浄剤、シャワーフォーム、ウェットティッシュ、洗剤石鹸、ハンドソープ、マスクまたは軟膏剤が含まれる。前記皮膚外用剤は、特にこれに限定されないが、具体的には軟膏剤、ローション剤、スプレー剤、貼付剤、クリーム剤、酸剤、懸濁剤、ゲル剤またはゲルの形態で製造して用いられてもよい。前記個人衛生用品には、特にこれに限定されないが、具体的には石鹸、ウェットティッシュ、ティッシュペーパー、シャンプー、歯磨き粉、ヘアスタイリング製品、エアーフレッシュナーゲルまたは洗浄ゲルであってもよい。
【0040】
本発明の別の実施形態は、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒、その抽出物またはその分画物を含む、関節リウマチの予防または改善用食品組成物を提供する。
【0041】
そのとき、前記抽出物、分画物、関節リウマチ、予防及び改善の定義は、前述のとおりである。
【0042】
本発明の用語「改善」とは、前記抽出物を含む組成物を投与することで、治療される状態に関連するパラメータ、例えば、症状の重さを少なくとも低減するあらゆる行為のことである。
【0043】
本発明の用語「食品」とは、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を始めとする乳製品、各種スープ、清涼飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤、保健機能食品、及び健康食品などのことであり、通常の意味での食品が全て含まれる。
【0044】
本発明のAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒、その抽出物またはその分画物は、経口投与しても生体内に副作用を誘発しないため、これを摂取すると、高レベルの関節リウマチの予防または改善効果が期待されるため、健康増進目的に非常に有用に用いられ得る。
【0045】
前記保健機能(性)食品(functional food)とは、特定保健用食品(food for special health use;FoSHU)と同じ用語であり、栄養供給以外にも生体調節機能が効率的に現れるように加工された医学、医療効果の高い食品のことである。ここで、「機能(性)」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節したり、生理学的作用などの保健用途に有用な効果が得られたりすることを意味する。本発明の食品は、当該分野において通常用いられる方法によって製造可能であり、前記製造の際には、当該分野において通常添加する原料及び成分を添加して製造してもよい。また、前記食品の製剤は、食品として認められる製剤であれば、制限なく製造してもよい。
【0046】
本発明の食品組成物は、様々な形態の製剤で製造されてもよく、一般薬品とは異なり天然物を原料としているので、薬物の長期服用時に発生し得る副作用などがないといった利点があり、携帯性に優れるため、本発明の食品は、関節リウマチの予防または改善効果を高めるためのサプリメントとして摂取してもよい。
【0047】
前記健康食品(health food)とは、一般食品に比べて積極的な健康維持や増進効果を有する食品のことであり、健康補助食品(health supplement food)とは、健康補助目的の食品のことである。場合によっては、保健機能食品、健康食品、健康補助食品の用語が混用される。
【0048】
具体的には、前記保健機能食品は、本発明のAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒、その抽出物またはその分画物を飲料、お茶類、香辛料、ガム、菓子類などの食品素材に添加するか、あるいはカプセル化、粉末化、懸濁液などで製造した食品であり、これを摂取すると、健康上特定の効果をもたらすものを意味するが、一般薬品とは異なり、食品を原料としているので、薬品の長期服用時に発生し得る副作用がないといった利点がある。
【0049】
前記食品組成物は、生理学的に許容される担体をさらに含んでもよいが、担体の種類は特に限定されることなく、当該技術分野において通常使用される担体であれば、いずれでも用いられる。
【0050】
また、前記食品組成物は、食品組成物に通常使用されて臭気、味、視覚などを向上させ得る追加成分を含んでもよい。例えば、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ナイアシン(niacin)、ビオチン(biotin)、葉酸(folate)、パントテン酸(panthotenic acid)などが挙げられる。また、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、クロム(Cr)などのミネラル;リジン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸を含んでもよい。
【0051】
また、前記食品組成物は、防腐剤(ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなど)、殺菌剤(漂白粉と高度漂白粉、次亜塩素酸ナトリウムなど)、酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトールエン(BHT)など)、着色剤(タール色素など)、発色剤(亜硝酸ナトリウム、亜酢酸ナトリウムなど)、漂白剤(亜硫酸ナトリウム)、調味料(MSGグルタミン酸ナトリウムなど)、甘味料(ズルチン、シクラメート、サッカリン、ナトリウムなど)、香料(バニリン、ラクトン類など)、膨張剤(ミョウバン、D-錫酸水素カリウムなど)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、皮膜剤、ガム基礎剤、抑泡剤、溶剤、改良剤などの食品添加物を含んでもよい。前記添加物は、食品の種類に応じて選択され、適切な量で用いられる。
【0052】
本発明の食品組成物の一例として、健康飲料組成物として用いられてもよく、この場合、通常の飲料のように、様々な香味剤、天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。前記天然炭水化物は、グルコース、フルクトースなどの単糖類;マルトース、スクロースなどの二糖類;デキストリン、シクロデキストリンなどの多糖類;キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールであってもよい。甘味剤は、ソーマチン、ステビア抽出物などの天然甘味剤;サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味剤などを用いてもよい。前記天然炭水化物の割合は、本発明の健康飲料組成物の100mlに対して、一般に約0.01~0.04g、具体的には約0.02~0.03gである。
【0053】
前記以外に、健康飲料組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸、ペクチン酸の塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコールまたは炭酸化剤などを含有してもよい。その他に、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、または野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。これらの成分は、単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。これらの添加剤の割合はそれほど重要でないが、本発明の健康飲料組成物100重量部当たり0.01~0.1重量部の範囲で選択されるのが一般的である。
【0054】
本発明の別の実施形態は、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒またはその分画物を含む、関節リウマチの予防または改善用化粧料組成物を提供する。
【0055】
そのとき、前記抽出物、分画物、関節リウマチ、予防及び改善の定義は、前述のとおりである。
【0056】
前記Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒は、前記組成物に対して、薬学組成物と同様に前記Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を、組成物の総重量に対して0.1~20重量%の割合で含んでもよい。具体的には、組成物の総重量に対して、0.1~5重量%、より具体的には0.4~0.6重量%、さらに具体的には0.5重量%の割合で含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の化粧料組成物に含まれる成分としては、前記Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒以外に、化粧料組成物に通常用いられる成分が含まれ、例えば、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、キレート剤、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤、色素及び香料からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0058】
さらに、前記化粧料組成物は、通常調製されるあらゆる剤形で調製されてもよく、例えば、溶液、乳濁液、懸濁液、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、パウダー、スプレー、界面活性剤含有クレンジング、オイル、石鹸、液体洗浄剤、入浴剤、ファンデーション、化粧下地、美容液、化粧水、フォーム、パック、トナー、日焼け止めクリームまたはサン・オイルなどで剤形化されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本発明の剤形が溶液または乳濁液の場合、担体成分として、溶媒、可溶化剤または乳濁化剤が用いられ、例えば水、エタノール、イソプロパノール、炭酸ジエチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセリン脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルが用いられる。
【0060】
本発明の剤形が懸濁液の場合、担体成分として、水、エタノール、プロピレングリコールなどの液相の希釈剤や、エトキシ化ステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの懸濁剤や、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、またはトラガカントなどが用いられてもよい。
【0061】
本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルの場合、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛などが用いられてもよい。
【0062】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーの場合、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムまたはポリアミドパウダーが用いられてもよく、特にスプレーの場合、さらにハイドロクロロフルオロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルなどの推進剤を含んでもよい。
【0063】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングの場合、担体成分として、脂肪族アルコール硫酸塩、脂肪族アルコールエーテル硫酸塩、スルホコハク酸モノエステル、イセチオン酸塩、イミダゾリウム誘導体、メチルタウリン酸塩、サルコシン酸塩、脂肪酸アミドエーテル硫酸塩、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、エトキシ化グリセリン脂肪酸エステルなどが用いられてもよい。
【0064】
さらに、前記化粧料組成物に含まれる成分は、皮膚科学分野で一般的に使用される量で含まれてもよい。
【発明の効果】
【0065】
本発明のAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒は、自己免疫疾患の一種である関節リウマチの症状を改善、緩和、または治療することができるので、関節リウマチを始めとする様々な自己免疫疾患の治療薬の開発に広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料で処理した関節炎モデルマウスの損傷した関節部位を示す写真であり、関節炎のある関節部位にAgkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を2週間にかけて1日1回、皮膚外用剤で塗布してから症状の変化を示すが、対照群として用いられたPBSを塗布した群では、好転せず悪化することを確認した。
【
図2】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料とMTX(methotrexate)で処理した関節炎モデルマウスの回復した関節炎指数スコアの変化を示すグラフである。
【
図3】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料で処理した関節炎モデルマウスの損傷した関節部位を示す写真であり、関節炎のある関節部位にNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を2週間にかけて1日1回、皮膚外用剤で塗布してから症状の変化を示すが、対照群として用いられたPBSを塗布した群では、好転せず悪化することを確認した。
【
図4】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料とMTX(methotrexate)で処理した関節炎モデルマウスの回復した関節炎指数スコアの変化を示すグラフである。
【
図5】MTXを経口投与した関節炎モデルマウスの末梢血液単核球とリンパノードを対象にCCR1陽性細胞の流動細胞分析を行った結果を示すグラフである。
【
図6】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料で処理した関節炎モデルマウスの末梢血液単核球とリンパノードを対象にCCR1陽性細胞の流動細胞分析を行った結果を示すグラフである。
【
図7】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料で処理した関節炎モデルマウスの末梢血液単核球とリンパノードを対象にCCR1陽性細胞の流動細胞分析を行った結果を示すグラフである。
【
図8A】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図8B】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD25陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図8C】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図9A】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4及びCD25陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図9B】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD25及びFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図9C】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4及びFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図9D】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4、CD25及びFoxp3陽性である調節性T細胞(regulatory T cell)の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図10A】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図10B】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD25陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図10C】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図11A】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4及びCD25陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図11B】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD25及びFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図11C】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4及びFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図11D】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4、CD25及びFoxp3陽性である調節性T細胞(regulatory T cell)の変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図12A】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中CRP(C-rective protein)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図12B】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中AST(aspartate aminotransferase)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図12C】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中ALT(alanine transaminase)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図13A】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中CRP(C-rective protein)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図13B】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中AST(aspartate aminotransferase)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図13C】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中ALT(alanine transaminase)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図14】Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおける血漿中IL-17のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図15】Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおける血漿中IL-17のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図16】MTXを経口投与するか、あるいはAgkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を皮膚に塗布した関節炎モデルマウスの関節組織を示す顕微鏡写真である。
【
図17】MTXを経口投与するか、あるいはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を皮膚に塗布した関節炎モデルマウスの関節組織を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
実施例1:関節炎モデルマウスの作製
第2型コラーゲン溶液(10mM)、アジュバント(Complete freund’s adjuvant)及びオイル(mineral oil)を1:1:1(v/v/v)で混合して混合物を得、前記混合物50μLを8週齢ICRマウスの尾根底部から1cm部位の尾静脈に注射し、10日後、もう一度繰り返し注射した。注射後、10~15日が経過した時点で関節炎症状を示すマウスを選び、それを関節リウマチモデルマウスとして用いた。
【0069】
なお、前記選ばれた関節リウマチモデルマウスの症状のレベルを細かく区別するために、損傷重症度スコア(Severity score)を次のように付与し(表1)、損傷重症度スコアが2点以上の場合に、関節リウマチが発症していると判定した。
【0070】
【0071】
なお、本発明に用いたAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒試料は、Sigma-Aldrichから購入して使用した。
【0072】
実施例2:関節炎モデルマウスの症状に対するヘビ毒の治療効果
実施例2-1:関節炎モデルマウスの症状に対するAgkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒の治療効果
前記実施例1で作製した関節炎モデルマウスの損傷した関節部位の皮膚に、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料を2週間塗布し、前記ヘビ毒の治療効果を目視で検証した(
図1)。そのとき、対照群としては、PBSを塗布したマウスを用いた。
【0073】
図1は、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料で処理した関節炎モデルマウスの損傷した関節部位を示す写真である。
【0074】
また、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料を、関節炎モデルマウスの損傷した四肢(1対の前脚及び1対の後脚)の関節部位に処理した後、それぞれの損傷重症度スコアを測定した(
図2)。そのとき、対照群としてはPBSを塗布したマウスを用い、比較群としては、関節リウマチ治療薬として知られるMTX(methotrexate;メトトレキサート)を経口投与したマウスを用いた。
【0075】
図2は、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料とMTX(methotrexate)で処理した関節炎モデルマウスの回復した関節炎指数スコアの変化を示すグラフであり、D1は、処理後1日が経過した時点を示し、D11は、処理後11日が経過した時点を示し、(〇)は、各関節炎モデルマウスを示し、(-)は、同じ関節炎モデルマウスにおいて、1日が経過した時点で測定された損傷重症度スコアと、11日が経過した時点で測定された損傷重症度スコアの変化を繋いだものであり、赤色表示は、それぞれ1日及び11日が経過した時点で測定された損傷重症度スコアの平均値を示す。
【0076】
図2に示すように、対照群の場合には、1日と11日に測定された損傷重症度スコアに特段の差が認められなかったが、MTXを経口投与するか(比較群)、あるいはAgkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料で処理した場合には、1日に測定された損傷重症度スコアと比較して、11日に測定された損傷重症度スコアが著しく減少することを確認した。
【0077】
従って、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料は、関節リウマチの症状を改善する効果を奏することが分かった。
【0078】
実施例2-2:関節炎モデルマウスの症状に対するNaja melanoleucaに由来するヘビ毒の治療効果
前記実施例1で作製した関節炎モデルマウスの損傷した関節部位の皮膚に、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料を2週間塗布し、前記ヘビ毒の治療効果を目視で検証した(
図3)。そのとき、対照群としては、PBSを塗布したマウスを用いた。
【0079】
図3は、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料で処理した関節炎モデルマウスの損傷した関節部位を示す写真である。
【0080】
また、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料を、関節炎モデルマウスの損傷した四肢(1対の前脚及び1対の後脚)の関節部位に処理した後、それぞれの損傷重症度スコアを測定した(
図4)。そのとき、対照群としてはPBSを塗布したマウスを用い、比較群としては、関節リウマチ治療薬として知られるMTX(methotrexate;メトトレキサート)を経口投与したマウスを用いた。
【0081】
図4は、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料とMTX(methotrexate)で処理した関節炎モデルマウスの回復した関節炎指数スコアの変化を示すグラフであり、D1は、処理後1日が経過した時点を示し、D11は、処理後11日が経過した時点を示し、(〇)は、各関節炎モデルマウスを示し、(-)は、同じ関節炎モデルマウスにおいて、1日が経過した時点で測定された損傷重症度スコアと、11日が経過した時点で測定された損傷重症度スコアの変化を繋いだものであり、赤色表示は、それぞれ1日及び11日が経過した時点で測定された損傷重症度スコアの平均値を示す。
【0082】
図4に示すように、対照群の場合には、1日と11日に測定された損傷重症度スコアに特段の差が認められなかったが、MTXを経口投与するか(比較群)、あるいはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒試料で処理した場合には、1日に測定された損傷重症度スコアと比較して、11日に測定された損傷重症度スコアが著しく減少することを確認した。
【0083】
従って、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料は、関節リウマチの症状を改善する効果を奏することが分かった。
【0084】
実施例3:関節炎モデルマウスにおける流動細胞分析(Flow cytometry)
実施例3-1:メトトレキサートを経口投与した関節炎モデルマウスにおけるCCR1陽性細胞の変化
MTXを経口投与した関節炎モデルマウスから末梢血単核球(PBMC)とリンパノード(LN)を得、これを対象に流動細胞分析を行った。
【0085】
概して、末梢血単核球とリンパノードから分離した細胞に、抗マウスCCR1抗体を加え、4℃で30分間反応させた。次いで、流動細胞分析を行うために、BD cantoIIフローサイトメーター(flow cytometer)を使用した(
図5)。そのとき、対照群としては、PBSを投与したマウスを用いた。
【0086】
図5は、MTX(methotrexate)を経口投与した関節炎モデルマウスの末梢血液単核球とリンパノードを対象にCCR1陽性細胞の流動細胞分析を行った結果を示すグラフである。
【0087】
図5に示すように、関節リウマチ治療薬として知られるMTXを経口投与した関節炎モデルマウスでは、末梢血単核球とリンパノードの細胞表面と細胞質において、CCR1陽性細胞のレベルが増加することが分かった。
前記CCR1陽性細胞のレベルが増加した結果から、炎症の症状が改善されることが分かった。
【0088】
実施例3-2:Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を皮膚処理した関節炎モデルマウスにおけるCCR1陽性細胞の変化
前記実施例1で作製した関節炎モデルマウスの損傷した関節部位の皮膚に、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒試料を2週間皮膚に塗布し、前記マウスから末梢血液単核球(PBMC)とリンパノード(LN)を得た後、これを対象に、前記実施例3-1の方法で流動細胞分析を行った(
図6及び7)。そのとき、対照群としては、PBSを塗布したマウスを用いた。
【0089】
図6は、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料で処理した関節炎モデルマウスの末梢血液単核球とリンパノードを対象にCCR1陽性細胞の流動細胞分析を行った結果を示すグラフである。
【0090】
図7は、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料で処理した関節炎モデルマウスの末梢血液単核球とリンパノードを対象にCCR1陽性細胞の流動細胞分析を行った結果を示すグラフである。
【0091】
図6及び7に示すように、本発明のヘビ毒で処理した関節炎モデルマウスでは、末梢血単核球及びリンパノードにおけるCCR1陽性細胞のレベルが増加することを確認した。
【0092】
このような結果は、前記
図5に示された関節リウマチ治療薬として知られるMTXの経口投与結果と同様の結果であり、前記
図5の結果と比較すると、本発明のヘビ毒が関節リウマチに対する治療効果を奏することが分かった。
【0093】
実施例4:正常マウスにおける流動細胞分析(Flow cytometry)
実施例4-1:Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおけるCD4、CD25及びFoxp3陽性細胞の変化
Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒が調節性T細胞(regulatory T cell)の頻度を増加させることができるか否かを確認した。
【0094】
そのために、正常マウスに、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料0.1μgまたは1μgを経口投与し、そこからCD4陽性細胞、CD25陽性細胞及びFoxp3陽性細胞のレベルを流動細胞分析によって確認した(
図8Aないし8C)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与したマウスを用いた。なお、CD4陽性細胞とCD25陽性細胞は、実施例3-1の方法で確認した。最後に、Foxp3陽性細胞は、核内染色によって確認したが、概して、染色対象細胞を1x透過処理(permeabilization)緩衝液で2回洗浄した後、Fix/perm緩衝液で固定させ、抗マウスFoxp3抗体を加えてから、4℃で30分間反応させた。
【0095】
図8Aは、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフであり、
図8Bは、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD25陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフであり、
図8Cは、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【0096】
図8Aないし8Cに示すように、調節性T細胞のマーカーとして知られるCD4陽性、CD25陽性及びFoxp3陽性細胞のうち、CD25陽性及びFoxp3陽性細胞の頻度が、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料の経口投与によって増加することを確認した。
【0097】
従って、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料の経口投与は、調節性T細胞の主な特性であるCD25陽性及びFoxp3陽性細胞の頻度を個別に増加させているので、これからAgkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料の経口投与が調節性T細胞のレベルを増加させるものと分析された。
【0098】
実施例4-2:Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおける調節性T細胞の変化
前記実施例4-1の結果は、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料の経口投与が調節性T細胞のレベルを増加させるものという手がかりを提供したので、実際にAgkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料の経口投与が調節性T細胞のレベルを増加させることができるか否かを確認した。
【0099】
そのために、正常マウスに、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料0.1μgまたは1μgを経口投与し、そこからCD4陽性、CD25陽性及びFoxp3陽性を複合的に含む細胞のレベルを流動細胞分析によって確認した(
図9Aないし9D)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与したマウスを用いた。
【0100】
図9Aは、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4及びCD25陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフであり、
図9Bは、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD25及びFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフであり、
図9Cは、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4及びFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフであり、
図9Dは、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4、CD25及びFoxp3陽性である調節性T細胞(regulatory T cell)の変化を測定した結果を示すグラフである。
【0101】
図9Aないし
図9Dに示すように、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料は、調節性T細胞の主な特性として知られるCD4陽性、CD25陽性及びFoxp3陽性の各組み合わせのレベルを全て増加させることを確認した。
【0102】
従って、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料の経口投与は、調節性T細胞のレベルを増加させることができ、このような調節性T細胞のレベル増加により、関節リウマチの炎症症状を改善することができることが分かった。
【0103】
実施例4-3:Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおけるCD4、CD25、及びFoxp3陽性細胞の変化
Naja melanoleucaに由来するヘビ毒が調節性T細胞(regulatory T cell)の頻度を増加させることができるか否かを確認した。
【0104】
そのために、正常マウスに、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料0.1μgまたは1μgを経口投与し、そこからCD4陽性細胞、CD25陽性細胞及びFoxp3陽性細胞のレベルを流動細胞分析によって確認した(
図10Aないし10C)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与したマウスを用いた。なお、CD4陽性細胞とCD25陽性細胞は、実施例3-1の方法で確認した。最後に、Foxp3陽性細胞は、核内染色によって確認したが、概して、染色対象細胞を1x透過処理(permeabilization)緩衝液で2回洗浄した後、Fix/perm緩衝液で固定させ、抗マウスFoxp3抗体を加えてから、4℃で30分間反応させた。
【0105】
図10Aは、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフであり、
図10Bは、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD25陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフであり、
図10Cは、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフである。
【0106】
図10Aないし10Cに示すように、調節性T細胞のマーカーとして知られるCD4陽性、CD25陽性及びFoxp3陽性細胞のうち、CD25陽性及びFoxp3陽性細胞の頻度が、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料の経口投与によって増加することを確認した。
【0107】
従って、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料の経口投与は、調節性T細胞の主な特性であるCD25陽性及びFoxp3陽性細胞の頻度を個別に増加させているので、これからNaja melanoleucaに由来するヘビ毒試料の経口投与が調節性T細胞のレベルを増加させるものと分析された。
【0108】
実施例4-4:Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおける調節性T細胞の変化
前記実施例4-3の結果は、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料の経口投与が調節性T細胞のレベルを増加させるものという手がかりを提供したので、実際にNaja melanoleucaに由来するヘビ毒試料の経口投与が調節性T細胞のレベルを増加させることができるか否かを確認した。
【0109】
そのために、正常マウスに、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料0.1μgまたは1μgを経口投与し、そこからCD4陽性、CD25陽性及びFoxp3陽性を複合的に含む細胞のレベルを流動細胞分析によって確認した(
図11Aないし11D)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与したマウスを用いた。
【0110】
図11Aは、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4及びCD25陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフであり、
図11Bは、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD25及びFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフであり、
図11Cは、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4及びFoxp3陽性細胞の変化を測定した結果を示すグラフであり、
図11Dは、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおいて、投与量に応じたCD4、CD25及びFoxp3陽性である調節性T細胞(regulatory T cell)の変化を測定した結果を示すグラフである。
【0111】
図11Aないし
図11Dに示すように、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料は、調節性T細胞の主な特性として知られるCD4陽性、CD25陽性及びFoxp3陽性の各組み合わせのレベルを全て増加させることを確認した。
【0112】
従って、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒試料の経口投与は、調節性T細胞のレベルを増加させることができ、このような調節性T細胞のレベル増加により、関節リウマチの炎症症状を改善することができることが分かった。
【0113】
実施例5:正常マウスのメタボロームレベルに及ぼすAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒の効果
実施例5-1:CRP(C-reactive protein;C反応性タンパク質)の血中レベル
正常マウスにAgkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料を経口投与または皮膚塗布した後、各マウスの血漿を採取し、それから炎症標識因子である血漿中CRP(C-reactive protein)のレベルを比較した(
図12A)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与または皮膚塗布したマウスを用いた。
【0114】
図12Aは、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中CRP(C-rective protein)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【0115】
図12Aに示すように、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布すると、いずれも血漿中CRPのレベルが低下することを確認した。
【0116】
このように、炎症標識因子である血漿中CRPのレベルがAgkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒によって減少することを確認したので、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒が関節リウマチの炎症症状を改善できることが分かった。
【0117】
実施例5-2:AST(aspartate aminotransferase;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の血中レベル
正常マウスにAgkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料を経口投与または皮膚塗布した後、各マウスの血漿を採取し、それから血漿中AST(aspartate aminotransferase)のレベルを比較した(
図12B)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与または皮膚塗布したマウスを用いた。
【0118】
図12Bは、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中AST(aspartate aminotransferase)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【0119】
図12Bに示すように、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与すると、対照群と別段の差は示さなかったが、皮膚塗布すると、血漿中ASTのレベルが多少減少する傾向性を示した。
【0120】
このように、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与しても血漿中ASTのレベルが変化しなかったので、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒は、経口投与しても体内で別段の毒性を示さないものと分析された。
【0121】
実施例5-3:ALT(alanine transaminase;アラニントランスアミナーゼ)の血中レベル
正常マウスにAgkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒試料を経口投与または皮膚塗布した後、各マウスの血漿を採取し、それから血漿中ALT(alanine transaminase)のレベルを比較した(
図12C)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与または皮膚塗布したマウスを用いた。
【0122】
図12Cは、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中ALT(alanine transaminase)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【0123】
図12Cに示すように、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布すると、いずれも対照群に比べて血漿中ALTのレベルが低下することを確認した。特に、皮膚塗布した場合よりも経口投与した場合に、血漿中ALTのレベルが著しく低い値を示すことが分かった。
【0124】
このように、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与すると、血漿中ALTのレベルがむしろ減少する傾向性を示したので、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒は、経口投与しても体内で別段の毒性を示さないことが再度確認された。
【0125】
実施例5-4:CRP(C-reactive protein;C反応性タンパク質)の血中レベル
正常マウスにNaja melanoleucaに由来するヘビ毒試料を経口投与または皮膚塗布した後、各マウスの血漿を採取し、それから炎症標識因子である血漿中CRP(C-reactive protein)のレベルを比較した(
図13A)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与または皮膚塗布したマウスを用いた。
【0126】
図13Aは、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中CRP(C-rective protein)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【0127】
図13Aに示すように、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布すると、いずれも血漿中CRPのレベルが低下することを確認した。
【0128】
このように、炎症標識因子である血漿中CRPのレベルがNaja melanoleucaに由来するヘビ毒によって減少することを確認したので、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒が関節リウマチの炎症症状を改善できることが分かった。
【0129】
実施例5-5:AST(aspartate aminotransferase;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の血中レベル
正常なマウスにNaja melanoleucaに由来するヘビ毒試料を経口投与または皮膚塗布した後、各マウスの血漿を採取し、それから血漿中AST(aspartate aminotransferase)のレベルを比較した(
図13B)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与または皮膚塗布したマウスを用いた。
【0130】
図13Bは、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中AST(aspartate aminotransferase)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【0131】
図13Bに示すように、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与すると、対照群と別段の差は示さなかったが、皮膚塗布すると、血漿中ASTのレベルが多少増加する傾向性を示した。
【0132】
このように、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与しても血漿中のASTレベルは変化しなかったので、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒は、経口投与しても体内で特段の毒性を示さないものと分析された。
【0133】
実施例5-6:ALT(alanine transaminase;アラニントランスアミナーゼ)の血中レベル
正常マウスにNaja melanoleucaに由来するヘビ毒試料を経口投与または皮膚塗布した後、各マウスの血漿を採取し、それから血漿中ALT(alanine transaminase)のレベルを比較した(
図13C)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与または皮膚塗布したマウスを用いた。
【0134】
図13Cは、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布した正常マウスにおける血漿中ALT(alanine transaminase)のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【0135】
図13Cに示すように、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与または皮膚塗布すると、いずれも対照群に比べて血漿中ALTのレベルが低下することを確認した。特に、経口投与した場合よりも皮膚塗布した場合に、血漿中ALTのレベルが比較的低い値を示すことが分かった。
【0136】
このように、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与すると、血漿中ALTのレベルがむしろ減少する傾向性を示したので、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒は、経口投与しても体内で別段の毒性を示さないことを再度確認することができた。
【0137】
実施例6:サイトカインレベルの分析
正常マウスにAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒試料を経口投与した後、マウスの血漿を採取し、それから血漿中IL-17のレベルを比較した(
図14及び15)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与または皮膚塗布したマウスを用いた。
【0138】
図14は、Agkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおける血漿中IL-17のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【0139】
図15は、Naja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与した正常マウスにおける血漿中IL-17のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【0140】
図14及び15に示すように、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を経口投与すると、対照群に比べて血漿中IL-17のレベルが低下することを確認した。
【0141】
前記IL-17は、炎症誘発サイトカインとして知られているので、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒がIL-17レベルを低下させるという結果は、すなわちAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒が関節リウマチの炎症症状を改善することができることを意味するものと分析された。
【0142】
実施例7:関節炎モデルマウスの組織学的分析
前記実施例1で作製した関節炎モデルマウスにMTXを経口投与するか、あるいはAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を皮膚に塗布し、前記マウスから関節炎部位の組織を採取した後、その組織薄片を得て、組織内の炎症細胞の存在を確認するために顕微鏡で確認した(
図16及び17)。そのとき、対照群としては、PBSを経口投与したマウスを用いた。また、前記組織薄片は、採取した組織をdecalcification solutionで脱灰し、固定してパラフィンブロックにした後、細切して薄片を得てから、H&E染色を行って用意した。
【0143】
図16は、MTXを経口投与するか、あるいはAgkistrodon piscivorus piscivorusに由来するヘビ毒を皮膚に塗布した関節炎モデルマウスの関節組織を示す顕微鏡写真である。
【0144】
図17は、MTXを経口投与するか、あるいはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を皮膚に塗布した関節炎モデルマウスの関節組織を示す顕微鏡写真である。
【0145】
図16及び17に示すように、対照群の組織では、関節部位に炎症細胞が存在することを確認したが、MTXを経口投与するか、あるいはAgkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒を皮膚に塗布した関節炎モデルマウスの組織では、関節部位に炎症細胞が存在しないことを確認した。
【0146】
従って、Agkistrodon piscivorus piscivorusまたはNaja melanoleucaに由来するヘビ毒は、関節リウマチの炎症症状を改善できることが分かった。
【0147】
以上の説明から、本発明の属する技術の分野における当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施され得ることを理解できるはずである。そのことから、前述の実施形態は、あらゆる面において例示のものに過ぎず、限定するためのものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、前記発明の詳細な説明よりは添付の特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその等価概念から想到されるすべての変更または変形された形態も、本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。