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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】人工芝および人工芝製運動競技場
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/08 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
E01C13/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020008534
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2020118028
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2019008833
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514149107
【氏名又は名称】ビーエム長野株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 新吾
(72)【発明者】
【氏名】石原 道也
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3206608(JP,U)
【文献】特開2018-115450(JP,A)
【文献】特開2011-231234(JP,A)
【文献】特開2006-077048(JP,A)
【文献】特開2008-289952(JP,A)
【文献】特開2006-081530(JP,A)
【文献】実開昭57-128608(JP,U)
【文献】特開2018-123522(JP,A)
【文献】特開2001-254310(JP,A)
【文献】特表2010-523855(JP,A)
【文献】特開2019-019502(JP,A)
【文献】国際公開第2007/010324(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布より人工芝葉を間隔を置いて上方へ突出させ、前記人工芝葉の間に充填物を充填するように構成した人工芝であって、
前記充填物の上層部をヤシ殻充填層により構成し、
前記ヤシ殻充填層は、ヤシ殻を乾燥した成分と、ヤシ殻を炭化させたヤシ殻活性炭を混合した充填物により構成した
ことを特徴とする人工芝。
【請求項2】
請求項1に記載の人工芝において、
ヤシ殻の乾燥した成分は、粉末とチップと繊維を乾燥時には分離し、施工時において、前記乾燥した成分を再度混合する
ことを特徴とする人工芝。
【請求項3】
請求項1に記載の人工芝において、
ヤシ殻の乾燥した成分は、ヤシ殻を構成する部分において、中果皮と外果皮の部分を選別して取り出し、粉末とチップと繊維とにより構成した
ことを特徴とする人工芝。
【請求項4】
請求項1に記載の人工芝において、
ヤシ殻活性炭は、ヤシ殻の中の、内果皮の部分を取り出して焼成し炭化させた
ことを特徴とする人工芝。
【請求項5】
請求項1に記載の人工芝において、
前記充填物のうち下部の充填層を珪砂とし、上部の充填層をヤシ殻充填層により構成した
ことを特徴とする人工芝。
【請求項6】
請求項5に記載の人工芝において、
ヤシ殻充填層と珪砂の間にゴムチップ層を介装した
ことを特徴とする人工芝。
【請求項7】
請求項1に記載の人工芝において、
前記充填物の上部を、前記ヤシ殻充填層と、コルクチップから構成されるコルクチップ充填層とを含む構成とした
ことを特徴とする人工芝。
【請求項8】
基布より人工芝葉を間隔を置いて上方へ突出させ、前記人工芝葉の間に充填物を充填するように構成した人工芝であって、
前記充填物の上層部をヤシ殻-コルクチップ混合充填層により構成し、
前記ヤシ殻-コルクチップ混合充填層は、ヤシ殻を乾燥した成分と、ヤシ殻を炭化させたヤシ殻活性炭と、コルクチップとを混合した充填物により構成した
ことを特徴とする人工芝。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の人工芝を基礎層の上に敷設して構成する人工芝製運動競技場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填層の充填物としてヤシ殻を使用し、充填層を有機天然材により構成した人工芝および人工芝製運動競技場に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工芝製運動競技場は、人工芝を砕石舗装等の基礎層の上に敷くことにより施工・造成するものであるが、従来の人工芝製運動競技場は、次のような不具合が発生していたのである。
【0003】
即ち、従来の人工芝製運動競技場は、そのクッション性を担保するために、天然芝では土にあたる部分を、他の素材を転用した充填材として、芝の目の間に詰めていく必要があった。そして、日本及びその他諸外国では、古タイヤを粉砕した黒ゴムチップを、充填材として使用していたのである。
【0004】
多くの改良点や改善要望がユーザーからありながらも、特段の理由もなく、黒ゴムチップの使用が、当たり前として認識されていたのである。このような状況において、黒ゴムチップの発がん性が疑われることとなり、それをきっかけに、黒ゴムチップのネガティブな面が大きくクローズアップされてきたのである。
【0005】
黒ゴムチップにより靴やボールなどが汚れ、さらに汚れが落ちにくく、真夏では温度が70℃に達するなど、高温となり熱中症の誘発の可能性があることが問題視されてきた。
また、上記の問題を解決する充填材として、従来にも、ヤシ殻は使用されていたが、性能面において改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭62-63701号公報
【文献】特開2018-115450号公報
【文献】特開2018-123523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明においては、人工芝製運動競技場に敷設される人工芝において、充填剤としてヤシ殻を構成する内果皮や中果皮や外果皮の全てを100%使用し、有機天然素材により構成したものである。即ち、該ヤシ殻充填層は、ヤシ殻を乾燥した成分と、ヤシ殻を炭化させたヤシ殻活性炭を混合した充填物により構成したものである。
【0008】
また、ヤシ殻の乾燥した成分は、粉末とチップと繊維により構成したものである。また、ヤシ殻の乾燥した成分は、粉末とチップと繊維とを、乾燥時においては分離し、施工時においては、該乾燥した成分を再度混合することにより構成したものである。これらのヤシ殻構成成分のブレンドにより、天然素材であるヤシ殻が、人工芝製運動競技場の温度上昇を抑制し、夏場の人工芝製運動競技場の不快な暑さを抑制するものである。
【0009】
また、細かい繊維が人工芝製運動競技場に降った雨水等の必要な水分を保水確保し、ヤシ殻の粗い繊維は余分な水分を排水し、ヤシ殻活性炭は、防臭・抗菌の効果をも発揮するのである。また、これらの作用により人工芝製運動競技場を常にベストな状態に保ち、快適なプレーの環境を整えることができるのである。
【0010】
そして、人工芝製運動競技場におけるプレイヤーは自身のプレーに專念することができて、チームのパーフォーマンスのみに集中できるようになるのである。また、ヤシ殻は、プランテーションで収穫されたヤシの実の殻だけを使用しているので、環境保護の面からしても、無駄な森林伐採が一切なく、地球環境への負荷が少ないエコロジーな人工芝製運動競技場及びその施工方法となるのである。
【0011】
また、材料が100%天撚有機質素材であり、添加物は一切含んでいないので、プレイヤーの人体に対して悪影響を与えることがなく、健康上からも安全な素材となっているのである。また、施工後の降雨などで水分を含んだ後は、ヤシ殻により構成した充填材が、人工芝に絡み付くために保水し、雨水と共に流れ出すことが少なく、排水管等を詰まらせるリスクを軽減することができるのである。もし仮に充填材が下水道に流れ出したとしても、公害の原因となることもないのである。
【0012】
また、ヤシ殻製の充填材は、クッション性やボールバウンド性の面においても良好であり、プレー感は天然芝に極めて近いものとなる。また、ヤシ殻は腐食等による劣化が遅いので、多くの効果効用を長時間持続させることができるのである。
【0013】
また、ヤシ殻製の充填材に、さらに同じく100%天然有機質素材であるコルクチップを混合することにより、コルクチップの熱伝導率が極めて低い特性を備えつつ、ヤシ殻活性炭の保水性を備えた人工芝が提供できるのである。このような人工芝を敷設することで、コルクチップの熱伝導率が極めて低い特性を利用して、夏場の人工芝製運動競技場の不快な暑さを効果的に抑制するものである。また、ヤシ殻よりも衝撃吸収性に優れたコルクチップを混合することにより、クッション性やボールバウンド性の面においてもさらに良好となり、プレー感が向上する。また、ヤシ殻活性炭とコルクチップを混合することにより、コルクチップのみを充填した場合と比べて保水性が向上する。これにより、乾いたコルクチップ同士で発生しやすい静電気による浮き上がりを防止することができるのである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
次に、上記課題を解決するための手段について説明する。
【0015】
請求項1においては、基布23より人工芝葉21を間隔を置いて上方へ突出させ、前記人工芝葉21の間に充填物を充填する構成した人工芝であって、前記充填物の上部をヤシ殻充填層22により構成し、前記ヤシ殻充填層22は、ヤシ殻の乾燥した成分と、ヤシ殻を炭化させたヤシ殻活性炭Dを混合した充填物としたものである。
【0016】
請求項2においては、請求項1記載の人工芝において、ヤシ殻の乾燥した成分は、粉末CとチップEと繊維A・・を乾燥時には分離し、施工時において、前記分離した成分を再度混合するものである。
【0017】
請求項3においては、請求項1記載の人工芝において、ヤシ殻の乾燥した成分は、ヤシ殻Yを構成する部分において、中果皮Nと外果皮Tの部分を選別して取り出し、粉末CとチップEと繊維A・・とにより構成したものである。
【0018】
請求項4においては、請求項1記載の人工芝において、ヤシ殻活性炭Dは、ヤシ殻Yの中の、内果皮Sの部分を取り出して焼成し炭化させたものである。
【0019】
請求項5においては、請求項1に記載の人工芝において、前記充填物のうち下部の充填層を珪砂25とし、上部充填層をヤシ殻充填層22により構成したものである。
【0020】
請求項6においては、請求項5記載の人工芝において、ヤシ殻充填層22と珪砂25の間にゴムチップ層24を介装したものである。
【0021】
請求項7においては、請求項1に記載の人工芝において、前記充填物の上部を、前記ヤシ殻充填層と、コルクチップから構成されるコルクチップ充填層とを含む構成としたものである。
【0022】
請求項8においては、基布より人工芝葉を間隔を置いて上方へ突出させ、前記人工芝葉の間に充填物を充填するように構成した人工芝であって、
前記充填物の上層部をヤシ殻-コルクチップ混合充填層により構成し、
前記ヤシ殻-コルクチップ混合充填層は、ヤシ殻を乾燥した成分と、ヤシ殻を炭化させたヤシ殻活性炭と、コルクチップとを混合した充填物により構成したものである。
【0023】
請求項9においては、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の人工芝を基礎層の上に敷設して構成する人工芝製運動競技場である。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、次のような効果を奏するものである。
【0025】
まず、ヤシ殻充填層22には雨水が長時間保水されるので、長時間にわたり蒸発作用が行われ、気化熱が冷却機構として作用し真夏日の人工芝製運動競技場の温度上昇を抑制する効果がある。従来のゴムチップ仕様の人工芝製運動競技場においては、表面の温度が約70℃であったが、本発明の人工芝製運動競技場においては、表面の温度が45℃前後となっているのである。
【0026】
次に、ヤシ殻充填層がクッション機構として、適度なクッション性を持ち、競技者の膝や腰への負担を軽減する効果がある。また、ボールバウンドなど、使用感は天然芝に極めて近いものにする効果がある。
【0027】
また、排水、保水、防臭、抗菌機構として、繊維の中の細かい繊維が必要な水分を確保し、粗い繊維は余分な水分を排水することができるのである。また、適度にブレンドされたヤシ活性炭は防臭、抗菌に作用する効果があり、従来から使用されてきたヤシ殻製の充填材に比べて機能面で優れているのである。
【0028】
また、ヤシ殻充填層が塩水を濾過するので、塩害予防機構として作用し、水による洗浄を実施するため、施設建造物への塩害を防止する効果がある。また、ヤシ製品であるヤシ殻充填層は、腐食などの劣化が遅く、多くの効果効能が長く持続するのである。
【0029】
また、100%有機質天然素材であるため、公害リスクを軽減して作用し、仮に下水道に流れ出したとしても公害になることがないのである。
【0030】
また、ヤシ殻製の充填材に、さらに同じく100%天然有機質素材であるコルクチップを混合することにより、コルクチップの熱伝導率が極めて低い特性を備えつつ、ヤシ殻活性炭の保水性を備えた人工芝が提供できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】人工芝製運動競技場の第一実施例を示す側面断面図である。
図2】人工芝製運動競技場の第二実施例を示す側面断面図である。
図3】人工芝のヤシ殻充填層の材料となるヤシ殻の断面図である。
図4】人工芝製運動競技場の第三実施例を示す側面断面図である。
図5】人工芝製運動競技場の第四実施例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ヤシ殻を充填層22として人工芝葉21の間に充填する人工芝製運動競技場について説明する。
【0033】
図1は、人工芝製運動競技場の第一実施例を示す側面断面図である。人工芝製運動競技場においては、人工芝2を支持するための基礎層1として、砕石舗装を施工している。また、該基礎層1は一般的なコンクリート舗装であってもよい。
【0034】
該基礎層1の表面に人工芝2を敷設・施工するのである。人工芝製運動競技場を構成する人工芝2は、第一実施例においては、下から順番に、基礎層1の上に、基布23と、珪砂25と、ヤシ殻充填層22が層積みされており、その間に基布23に縫込み固定された人工芝葉21が突出されている。
【0035】
該人工芝葉21は基布23に対して列状に間隔を置いて縫込み固定されている。該人工芝葉21の条の間隔は約15mm程度である。そして、該1条に沿って約10本の単位人口芝葉21が、一束としてまとめて5mmから8mmの間隔を置いて株状に突出し、全体として人工芝葉21を構成している。
【0036】
人工芝2は、人工芝葉21どうしが良く絡み合うので、人工芝葉21の芝目が常に立っている。強く復元性のある形状をした人工芝となるように、前記人工芝葉21の条の間隔と、株の間隔を構成している。このように構成した基布23の上の人工芝葉21の間に、図1に示す如く、下層に珪砂25を充填し、その上にヤシ殻充填層22を充填しているのである。
【0037】
特に、珪砂25やヤシ殻充填層22が、人工芝葉21の芝の目に入って行き易いように、縫い目のピッチや本数、間隔などをも工夫しているのである。また、水の浸透性なども考慮して、基布23のコーティングや、基布23に間隔を置いて開口している直径3乃至6mmほどの水抜き穴の数、位置などをも構成しているのである。
【0038】
第一実施例においては、図示する如く基礎層1の上に直接的に人工芝2の基布23を載置している。基布23のうえに珪砂25の層を20乃至25mmにわたり層積みしている。さらにその上に25乃至30mmにわたりヤシ殻充填層22を層積みしている。そして、該ヤシ殻充填層22の上面から人工芝葉21の上端が5乃至10mm程度が突出するように充填されているのである。
【0039】
この構成は、日本サッカー協会の認定を受けることも可能な人工芝製運動競技場及びその施工方法に構成されているのである。図2は、人工芝製運動競技場の第二実施例を示す側面断面図である。図2においては、充填層としてクッション性がさらに要求される場合の人工芝製運動競技場の構成を開示している。
【0040】
第二実施例の場合には、珪砂25の充填層とヤシ殻充填層22の充填層の間にゴムチップ層24の充填層を介装している。珪砂25の層は20乃至25mm程度と、第一実施例の場合と同じであるが、ヤシ殻充填層22の層を12.5乃至15mmとして、ゴムチップ層24を12.5乃至15mmとして、第一実施例のヤシ殻充填層22の半分をゴムチップ層24としている。
【0041】
ヤシ殻を充填層22として人工芝葉21の間に充填する人工芝製運動競技場である。そして、ヤシ殻充填層22は、ヤシ殻成分の中の乾燥した成分と、ヤシ殻成分を焼成したヤシ殻活性炭Dをブレンドしたものである。ヤシ殻を乾燥した成分は、粉末Cと、チップEと短い繊維Аと、長い繊維Bから構成されている。ヤシ殻活性炭Dはヤシ殻の内果皮S(シェル)の部分を12時間程度加熱処理して炭化し炭にしたものである。
【0042】
次に、ヤシ殻充填層22を構成する部材の製造工程を説明する。図3は、ヤシ殻充填層22の主要な原材料となるヤシ殻の断面図である。ヤシ殻Yは外側から順に、外果皮T、中果皮N、内果皮Sにより構成されており、内果皮Sはシェルとも呼ばれ、その内部にヤシ樹液が封じ込められている。ヤシ殻充填層22は、内果皮Sの内部のヤシ樹液を抜いた後に、さらにヤシ殻の部分からヤシ油を搾油もした後の廃棄物であるヤシ殻Yを原料とするのである。
【0043】
[粉末と長繊維の分離]
山岳地のヤシ畑で生産されたヤシの実のみを原料として採取し、ヤシの実からヤシ樹液と内果皮S(シェル)を取り除いた後に、中果皮Nと外果皮Tを繊維に沿って縦に2~3分割し、約3ヶ月間水に漬けて柔らかくし、長い繊維Bを掻き取り易くする。
【0044】
円筒型の回転体に剣山状に鋲をつけた繊維掻き取り機を回転させ、水を含み柔らかくなった中果皮Nを、その繊維に対して縦方向に鋲に押し付け、太い長い繊維Bから粉末C状の中果皮Nと、細かいチップEを取り出す。即ち、固形上の中果皮Nの部位、及び短い繊維Аを掻き取り、分離するのである。
【0045】
その後、約3年間野積みし、天日乾燥、及び年2回の雨季によるアク抜き後、目の粗い回転式篩い機に投入し、粉末Cと短い繊維Аを落下させ、残った長い繊維Bを取り除く。
【0046】
[篩い掛け・水洗い洗浄・乾燥]
上記で篩い分けした粉末Cには、細い繊維が残っているため、目の細い回転式篩い機で長い繊維Bと粉末Cを分離させる。但し、この状態の粉末Cは濡れている状態で完全には長い繊維Bを取り除くことはできないが、乾燥効率を高めるために予め短い繊維Аを、あらかた取り除く前処理6を行う。長い繊維Bを取り除いた粉末Cを、水洗い洗浄し、24時間真水に漬け込み、その後、水分を絞った原料をコンクリート敷きの乾燥場に敷きレーキで攪拌しながら天日乾燥する。
【0047】
[再篩い掛け]
上記で篩った粉末C(ヤシ中果皮N部位)、細かいチップE(固形のヤシ殻中果皮N部位)と、短い繊維Аが混ざった原料を、天日乾燥後、前記の処理で取り切れなかった長い繊維Bを、8mm目の細い振動篩い機でさらに取り除く。
【0048】
[ヤシ殻炭と混ぜる]
最初に取り除いたヤシの内果皮S(シェル)を、12時間熱処理し、炭に加工してヤシ殻活性炭Dとする。該ヤシ殻活性炭Dを粉砕処理しながら、3mmの網で篩を掛けて、約3mmのヤシ殻炭を製造する。
【0049】
前記において篩い分けした、粉末CとチップEと短い繊維Аと長い繊維Bが混ざった原料に対し、ヤシ殻活性炭Dを約20%(使用状況により配合割合は調整する)投入し、よく撹拌する。
【0050】
このようにして製造したヤシ殻活性炭Dは、内果皮Sを取り出して、炭化及び賦活工程処理によって0.8nm以下のサブミクロ孔、0.8~2nmのミクロ孔、2~50nmのメソ孔、50nm以上のマクロ孔をもつ炭素となる。この細孔はヤシ殻活性炭Dの内部で網目状に存在し、比表面積が非常に大きくなり、様々な物質を吸着するのである。
【0051】
ヤシ殻活性炭Dは上記の性質により、臭いを吸い取る脱臭作用、空気や水や油等を浄化する浄化作用、空気中の水分を調湿する調湿作用を行うのである。その他に、静電気除去や、電磁波吸収、遠赤外線放射等の作用も行うのである。これらの作用により前述した人工芝製運動競技場に対する効果を奏することができるのである.とくに、ヤシ殻活性炭Dが、ヤシ殻充填層22を構成する成分の中で、重量比率において10~30%であると、従来のヤシ殻製の充填材に比べて、ヤシ殻活性炭Dに基づく脱臭作用等の効果が顕著に得られて好ましい。
【0052】
次に、本発明のヤシ殻充填層22を構成する主たる成分の大きさと、それらの体積比率の最適な数値は次のとおりである。
粉末C : 1-8mm、 40%
チップE : 1-5mm、 10%
短い繊維А : 1-3mm、 15%
長い繊維B : 1-8mm、 15%
ヤシ殻活性炭D : 3mm、 20%
また、重量比率は以下のとおりである。
粉末C : 1-8mm、60%
チップE : 1-5mm、 4%
短い繊維А : 1-3mm、 3%
長い繊維B : 1-8mm、 3%
ヤシ殻活性炭D : 3mm、 30%
【0053】
[圧縮ポリ袋包装]
次に、原料のヤシ殻成分の、篩掛けの状況を検査し、圧縮包装機のホッパーに投入する。ホッパーに投入された原料は、予めポリ袋が装填されている圧縮包装機の圧縮チューブにスクリューコンベアーで投入され、ポリ袋内で圧縮される。ポリ袋の開口部をヒートシーラーで留め圧縮機から取り出しコンテナに積み出荷する。
【0054】
次に、本発明の基本的な施工工程について説明する。まず、砕石舗装の基礎層1の上に人工芝2を載置する。次に、人工芝2を構成する人工芝葉21の間に、珪砂25を充填する。珪砂25の充填作業は、大型のタンクと開閉シャッターを具備し、トラクターで牽引される散布充填機により行う。そして、人工芝葉21の間に充填した珪砂25の表面をブラッシングしてならす。ブラッシング施工はトラクターにより牽引する牽引型のブラシにより行う。該ブラシは鉄板の下面に人工芝葉21の条列に合致するように突起を突出した構成となっている。
【0055】
珪砂25をブラッシングして人工芝葉21の間に押し込んだ後に、さらにヤシ殻充填層22を充填する。ヤシ殻充填層22の充填作業は大型のタンクと開閉シャッターを具備し、トラクターで牽引される散布充填機により行う。該ヤシ殻充填層22の充填後に、前記した牽引型のブラシによりヤシ殻充填層22の表面をブラッシングして、ヤシ殻充填層22を人工芝葉21の間に押し込みを行う。第二実施例の場合には、ゴムチップ層24の充填とブラッシング施工を追加するものである。
【0056】
また、第三実施例においては、図示する如く基礎層1の上に直接的に人工芝2の基布23を載置している。基布23のうえに珪砂25の層を10乃至15mmにわたり層積みしている。さらにその上に、10乃至15mmにわたりコルクチップ充填層26を層積みしている。さらにその上に10乃至15mmにわたりヤシ殻充填層22を層積みしている。コルクチップ充填層26は、コルクチップFが充填されている。コルクチップFは、コルクガシの樹皮を剥離して加工した粉粒であり、弾力性に富み空気を豊富に含む。また、ヤシ殻充填層22は、粉末Cと、チップEと短い繊維Аと、長い繊維Bから構成されるヤシ殻成分の中の乾燥した成分と、ヤシ殻成分を焼成したヤシ殻活性炭Dをブレンドしたもので構成されている。そして、ヤシ殻充填層22の上面から人工芝葉21の上端が20乃至30mm程度が突出するように充填されているのである。
【0057】
ヤシ殻活性炭Dは臭いを吸い取る脱臭作用、空気や水や油等を浄化する浄化作用、空気中の水分を調湿する調湿作用を行うのである。また、コルクチップ充填層26のコルクチップFは、ガスのような空気を含んだ独特の細胞構造により、熱伝導率が極めて低く、衝撃吸収性、耐水性、温度上昇の抑制に優れている。
これらの作用により前述した人工芝製運動競技場に対する効果を奏することができるのである。
【0058】
また、第四実施例においては、図示する如く基礎層1の上に直接的に人工芝2の基布23を載置している。基布23の上に珪砂25の層を10乃至15mmにわたり層積みしている。さらにその上に10乃至15mmにわたりヤシ殻-コルクチップ混合充填層27を層積みしている。ヤシ殻-コルクチップ混合充填層27には、ヤシ殻由来の成分の他に、コルクチップFが混合されている。ヤシ殻-コルクチップ混合充填層27において、粉末Cと、チップEと短い繊維Аと、長い繊維Bから構成されるヤシ殻成分の中の乾燥した成分と、ヤシ殻成分を焼成したヤシ殻活性炭Dと、コルクチップFとを混合している。コルクチップFは、コルクガシの樹皮を剥離して加工した粉粒であり、弾力性に富み空気を豊富に含む。そして、該ヤシ殻-コルクチップ混合充填層27の上面から人工芝葉21の上端が20乃至30mm程度が突出するように充填されているのである。
【0059】
次に、本発明のヤシ殻-コルクチップ混合充填層27を構成する主たる成分の大きさと、それらの重量比率の最適な数値は次のとおりである。
ヤシ殻:コルクチップ=1:2
また、ヤシ殻とコルクチップそれぞれの粒径は次のとおりである。
ヤシ殻 : 1-8mm
コルクチップ : 1-2mm
【0060】
ヤシ殻活性炭Dは臭いを吸い取る脱臭作用、空気や水や油等を浄化する浄化作用、空気中の水分を調湿する調湿作用を行うのである。また、コルクチップFは、ガスのような空気を含んだ独特の細胞構造により、熱伝導率が極めて低く、衝撃吸収性、耐水性、温度上昇の抑制に優れている。一方、コルク単体で充填物を構成した場合には、乾いたコルクチップ同士の接触で静電気が発生し、当該静電気によってコルクチップFが人工芝から浮き上がりやすくなるという問題があった。そこで、ヤシ殻素材、とくに粉末CやチップEにおける保水性を利用することで、コルクチップを適度に保湿し、静電気の発生を起こり難くすることで浮き上がりを防止することができるのである。
これらの作用により前述した人工芝製運動競技場に対する効果を奏することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の人工芝製運動競技場は、ヤシ殻充填層22が人工芝葉21の目に入っていきやすいように、基布23に対する人工芝葉21の縫い目のピッチや本数、間隔などを開発し、水の浸透性なども考慮した基布のコーティングや、水抜き穴の数、位置などを調整して、ヤシ殻充填層22の人工芝葉21がよく絡みあい、芝目が常に立っているので、強く復元性のある特殊な形状をした人工芝とすることができたのである。これにより、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、野球等のグラウンドとして利用することができるのである。
【符号の説明】
【0062】
1 基礎層
2 人工芝
21 人工芝葉
22 ヤシ殻充填層
23 基布
24 ゴムチップ
25 珪砂
26 コルクチップ層
27 ヤシ殻-コルクチップ混合充填層
A 短い繊維
B 長い繊維
C 粉末
D ヤシ殻活性炭
E 細かいチップ
F コルクチップ
Y ヤシ殻
T 外果皮
N 中果皮
S 内果皮
図1
図2
図3
図4
図5