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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】両面型三味線
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/12 20200101AFI20231109BHJP
   G10D 3/14 20200101ALI20231109BHJP
   G10D 3/02 20060101ALI20231109BHJP
   G10D 3/04 20200101ALI20231109BHJP
【FI】
G10D3/12
G10D3/14
G10D3/02
G10D3/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019113605
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2020204748
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591274668
【氏名又は名称】株式会社セベル・ピコ
(72)【発明者】
【氏名】二宮 朝保
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-016586(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 3/12
G10D 3/14
G10D 3/02
G10D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動膜を有する胴部10と、天神部21と基幹部22を有する棹部20と、
第1糸30を備えた三味線であって、
前記第1糸30の一端は、前記天神部の第1糸止部50に繋がり、
前記第1糸30の他端は、第2糸止部に繋がり、
前記胴部10の表面上と裏面上に前記第1糸30が張設されていることを特徴とする三味線。
【請求項2】
振動膜を有する胴部10と、天神部21と基幹部22を有する棹部20と、
第1糸30と第2糸35を備えた三味線であって、
前記第1糸30の一端は、前記天神部の第1糸止部50に繋がり、
前記第1糸30の他端は、第3糸止部に繋がり、
前記胴部10の表面上に前記第1糸30が張設されており、
前記第2糸35の一端は、第2糸止部に繋がり、
前記第2糸35の他端は、第4糸止部に繋がり、
前記胴部10の裏面上に前記第2糸35が張設されていることを特徴とする三味線。
【請求項3】
請求項1または2に記載の三味線において、
前記第2糸止部が、
前記基幹部22に配設されていることを特徴とする三味線。
【請求項4】
請求項1または2に記載の三味線において、
前記第1糸止部または前記第2糸止部のうちの少なくとも一方は、
前記第1糸30または前記第2糸35を通す糸通孔を有していることを特徴とする三味線。
【請求項5】
請求項2に記載の三味線において、
前記第3糸止部が、
前記棹部20に対向する対向面11の対極にある対極面12に配設されていることを特徴とする三味線。
【請求項6】
請求項5に記載の三味線において、
前記棹部20の先端部25が前記対極面12から突出した突出部を有し、
前記第3糸止部は、前記第1糸30の他端を接続する接続部材70を備えて、
前記先端部25の突出部に配設されていることを特徴とする三味線。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の三味線において、
サウンドホール16が、前記胴部10の裏面に設けられていることを特徴とする三味線。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の三味線において、
駒45が、前記胴部10の裏面に配設されていることを特徴とする三味線。
【請求項9】
請求項5に記載の三味線において、
前記第2糸止部は、前記胴部10の前記対向面11に形成された糸通孔13であることを特徴とする三味線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三味線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三味線の基本的な構造は、糸の振動が胴に伝わり、胴の内部で共鳴した音波が外部へ放射される。この構造により、演者の意図する音を奏でることが出来るようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の三味線において、演奏することの出来る領域は、糸が張られている棹の表面と胴の表面に限られていた。その為、演奏出来る音の種類が限定されていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、本発明における三味線は、振動膜を有する胴部10と、天神部21と基幹部22を有する棹部20と、第1糸30を備えており、第1糸30の一端は、天神部の第1糸止部50に繋がり、第1糸30の他端は、第2糸止部に繋がり、胴部10の表面上と裏面上に第1糸30が張設されている。
【0005】
または、本発明における三味線は、振動膜を有する胴部10と、天神部21と基幹部22を有する棹部20と、第1糸30と第2糸35を備えており、第1糸30の一端は、天神部の第1糸止部50に繋がり、第1糸30の他端は、第3糸止部に繋がり、胴部10の表面上に第1糸30が張設されており、第2糸35の一端は、第2糸止部に繋がり、第2糸35の他端は、第4糸止部に繋がり、胴部10の裏面上に第2糸35が張設されている。
【0006】
第2糸止部が、基幹部22に配設されており、第1糸止部および第2糸止部は、回転部を有する糸巻装置であることが好ましい。
また、第3糸止部が、棹部20に対向する対向面11の対極にある対極面12に配設されており、棹部20の先端部25が前記対極面12から突出しており、第1糸30の他端を接続する接続部材70が、先端部25に係止されていることが好ましい。
さらに、駒45が、胴部10の裏面に配設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、胴部の表面のみならず、胴部の裏面にも糸が設けられている為、胴部の裏面を利用して三味線の演奏をすることが可能になる。その結果、音の種類を増やすことが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】三味線100の平面図
図2】三味線100の側面図
図3】三味線100Aの側面図
図4】三味線100Bの側面図
図5】三味線100Cの側面図
図6】三味線100Dの側面図
図7】三味線100Eの平面図
図8】三味線100Eの側面図
図9】三味線100F及び棒状部材90を示した側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で扱う三味線は、胴部と棹部と糸を備えている。本発明における「胴部」とは、胴本体、振動膜(表皮や裏皮)等を包括した内容を意味し、「棹部」とは、後端側にある天神部、略中央部にある基幹部、先端側にある中木等を包括した内容を意味し、「糸止部」とは、広い意味で糸を三味線本体に結び付ける機能を有するものを指し、糸巻きやペグ等の糸巻装置、糸を通らせる孔(糸通孔)を包括した内容を意味し、「張設」とは、糸の端部の各々が糸止部に繋がり、三味線の胴から所望の音が出るように、糸が三味線本体に装着されている状態を意味する。本発明の三味線は、図示している形状に限定されるものではない。
【0010】
図1は三味線100の平面図であり、図2は三味線100の側面図である。
図示しているように、三味線100は、胴部10と棹部20と第1糸30を具備している。
胴部10は、振動膜である皮を備え、棹部20に対向する対向面11と、その対向面11に対極する対極面12を有している。
棹部20は、糸巻装置50が装着可能である天神部21と、棹の太さが膨張している部分(鳩胸)とその近傍部分を含む基幹部22と、胴部10の内部にある中木24を有している。
【0011】
第1糸30は、天神部21にある第1糸止部から、胴部10の表面・対極面・裏面を経由して、基幹部22にある第2糸止部まで張設されている。図示している例では、第1糸止部は、糸巻装置50(糸巻き)であり、第2糸止部は、糸巻装置60(ペグ)である。
第1糸30の一端が、第1糸止部に繋がり、第1糸30の他端が、第2糸止部に繋がることで、第1糸30の張力が生じる。
その張力は、胴部10と棹部20を合わせた三味線本体に対して、第1糸30を接近させる方向に働く。
【0012】
<副次的効果>
胴部10と棹部20との間に隙間が生じてしまうこともあるが、両端が糸止部に取り付けられた第1糸30の張力が、胴部10と棹部20との隙間を埋める方向に働くことになる。つまり、第1糸30が三味線の表面側と裏面側の両方で、胴部10と棹部20の間を狭める役割をする。これにより、胴部と棹部の緩みを抑えることも可能である。
【0013】
<サウンドホール14>
胴部10の裏面(底面)には、貫通孔であるサウンドホール14が形成されており、胴内部で共鳴した音波がサウンドホール14を通して直接的に外部へ放射される。サウンドホールはギター等の弦楽器にも位置や形状が異なるが形成されている。後従来の三味線と同様に、後述する図4以降で示される三味線には、サウンドホールはなく、胴の裏側に皮が張られている。サウンドホール14があることで、三味線の音の響き具合や音質を向上させることが出来る。
【0014】
<駒45>
図示しているように、第1糸30と胴部10の表面との間に、駒40が配設されており、第1糸30と胴部10の裏面との間に、駒45が配設されている。
駒40と駒45の大きさや形状を任意に設定することが可能であり、配置場所も図示している位置に限定されない。後述する図8で示すように、駒45が複数個設けられていてもよい。反対に、図示していないが、駒45が設けられてない場合もあり得る。
三味線を床に置いて、糸や皮を叩いて演奏する場合に、駒45は、胴部10の底面を床から浮かせることが出来る。これにより、サウンドホール16から放射される音の量を調整することが可能である。
【0015】
図3は三味線100Aの側面図である。
第1糸30の一端は、第1糸止部に繋がり、第1糸30の他端は、第3糸止部に繋がり、第2糸35の一端は、第2糸止部に繋がり、第2糸35の他端は、第4糸止部に繋がっている。図示しているように、三味線の表面側と裏面側で、糸は第1糸30と第2糸35に分かれており、胴部10の表面側に第1糸30が張設され、胴部10の裏面側に第2糸35が張設されている。
第3糸止部は、糸通孔14によって構成され、第4糸止部は、糸通孔15によって構成されており、糸通孔14と糸通孔15は、それぞれ胴部10の対極面12に形成されている。
ここでは、糸巻装置60が、鳩胸26の斜面に沿ってほぼ等間隔で配設されている。
【0016】
図4は三味線100Bの側面図である。
第1糸30の一端は、第1糸止部に繋がり、第1糸30の他端は、第3糸止部に繋がり、第2糸35の一端は、第2糸止部に繋がり、第2糸35の他端は、第4糸止部に繋がっている。図示しているように、中木24の先端部25が、胴部10の対極面12よりも外側に突出している。この第3糸止部は、中木24の先端部25と、接続部材70とによって構成されている。
この接続部材70は、従来の三味線における音緒に相当するものであり、第1糸30を結び付けることが出来る。
また、胴部10の裏側には、振動膜として裏皮が固着されており、この裏皮と第1糸30の間に、駒40を取り付けることが出来る。中木24の先端部25を、第4糸止部の構成の一つとして利用することも可能である。
【0017】
図5は三味線100Cの側面図である。
第1糸30の一端は、第1糸止部に繋がり、第1糸30の他端は、第2糸止部に繋がっている。この第2糸止部は、棹部20の基幹部22に形成された糸通孔23であり、この糸通孔23は、棹部20と略平行に設けられている。
第1糸30の他端と繋がる第2糸止部は、必ずしも棹部20自体に設ける必要は無く、後述するように胴部10に設けることも可能である。
【0018】
図6は三味線100Dの側面図である。
第1糸30の一端は、第1糸止部に繋がり、第1糸30の他端は、第2糸止部に繋がっている。この第2糸止部は、胴部10の対向面11に形成された糸通孔13である。
糸通孔13は第1糸30を挿通することが可能であり、かた結び等により他端の先端部が結ばれている第1糸30は、この糸通孔13の端部に止められている。
【0019】
図7は三味線100Eの平面図であり、図8は三味線100Eの側面図である。
第1糸30の一端は、第1糸止部に繋がり、第1糸30の他端は、第2糸止部に繋がっている。この第2糸止部は、棹部20の基幹部22に形成された糸通孔23であり、この糸通孔23は、棹部20の側面に設けられている。
このままであると、第1糸30の端部が外部に見えてしまうので、補助部材80を取り付けると、外観を綺麗に見せることが出来る。この補助部材80は、ネジ85によって棹部20に螺設されている。取り付け方法は、この方法に限定されず、ボンド等の接着剤によって棹部20に固着してもよい。
駒45が2個配設されている。駒45が複数設けられていることで、三味線を安定的に床に配置することが出来る。また、第2糸35と胴部10の裏面との間に駒45が配設されていれば、糸の張力により駒45が三味線から脱落することを防ぐことが出来る。
【0020】
図9は三味線100F及び棒状部材90を示した側面図である。
第1糸30の一端は、第1糸止部に繋がり、第1糸30の他端は、第2糸止部に繋がっている。図示しているように、第1糸止部は糸巻装置50(ペグ)であり、第2糸止部は糸巻装置60(ペグ)である。
糸巻装置50のギア-の大きさと、糸巻装置60のギア-の大きさを同一にすると、同じ比率(同一ギア比)で調弦をすることが出来る。糸巻装置50のギア-の大きさと、糸巻装置60ギア-の大きさに大小の変化を付けると、異なる比率(同一ギア比)で調弦をすることが出来る。
糸巻装置50のギア-の大きさと、糸巻装置60のギア-の大きさの比率を4:1、3:1、2:1、1:2、1:3、1:4などに設計することで、演奏中でも素早く調弦することが可能になり、効率的に調弦をすることが出来る。
また、胴部10の対極面12の角部を保護する保護部材95が設けられている。この保護部材95により、胴部10が第1糸30または第2糸35により傷付くことを防ぎ、三味線の耐久性を高めることが出来る。
【0021】
<第2糸35を胴部10の側面に配設>
図示していないが、第2糸35を胴部10の側面に配設させることも可能である。胴部10の側面に第2糸35があることで、第2糸35を弾いて演奏することが容易になる。
【0022】
<棒状部材90>
棒状部材90を用いて、胴部10の表面に張設された糸、または胴部10の裏面に張設された糸を叩くことで、糸の振動を胴部10の皮に伝えて、胴部10を響かせることが出来る。
棒状部材90は、略円柱または略角柱であり、長手方向に垂直な断面形状が、長手方向でほぼ同じになる。
勿論、太鼓用の棒状のバチを、この棒状部材90として利用することも可能である。
この棒状部材90で、胴部10の表面の皮、または胴部10の裏面の皮を叩いて、太鼓のように演奏することも出来る。
【0023】
<振動の伝達>
本発明の三味線では、胴部10の裏面側に駒45が設けられていない場合もある。その場合には、胴部10の裏皮と第2糸35が相当に接近するようになる。第1糸30を弾いた際に、駒40を介して、その振動が、胴部10の表皮に伝わり、その表皮の振動が胴部10の内部で共鳴する。そして、その振動が胴部10の裏皮にも伝わり、さらに、裏皮に接近している第2糸35にも伝わってくる。この第2糸35の振動が、胴部10内部の音響に影響を及ぼし、様々な楽音が生成される。このような構造から、重層的な音を生み出すことが可能となる。
【0024】
<素材>
胴部10や棹部20の素材は、木材、段ボール、薄板、プラスチック、紙などを利用することが可能であり、駒40や駒45の素材は、木材、セラミック、合成樹脂、プラスチック、合金、ステンレス鋼、金、銀、銅、アルミ、真鍮、チタン等の各種金属などを利用することが可能である。
【符号の説明】
【0025】
10…胴部
11…対向面
12…対極面
13…糸通孔(第2糸止部)
14…糸通孔(第3糸止部)
15…糸通孔(第4糸止部)
16…サウンドホール
20…棹部
21…天神部
22…基幹部
23…糸通孔(第2糸止部)
24…中木
25…先端部
26…鳩胸
30…第1糸
35…第2糸
40…駒
45…駒
50…糸巻装置(第1糸止部)
51…回転部
52…操作部
60…糸巻装置(第2糸止部)
61…回転部
70…接続部材(第3糸止部)
75…保護部材
80…補助部材
85…ネジ
90…棒状部材
91…先端部
95…保護部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9