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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】バルブ装置および流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/02 20060101AFI20231109BHJP
   F16K 31/122 20060101ALI20231109BHJP
   F16K 51/02 20060101ALN20231109BHJP
【FI】
F16K31/02 A
F16K31/122
F16K51/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019156404
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021032391
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】日高 敦志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊英
(72)【発明者】
【氏名】滝本 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/100968(WO,A1)
【文献】特開2002-364770(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123852(WO,A1)
【文献】特開2007-192269(JP,A)
【文献】特許第6336692(JP,B1)
【文献】国際公開第2004/079243(WO,A1)
【文献】特開平04-050581(JP,A)
【文献】特開2020-034135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00 - 31/05
F16K 31/12 - 31/165
F16K 31/36 - 31/42
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に離着座可能な弁体と、
前記弁体に接続された操作部材と、
前記操作部材を移動させる主アクチュエータであって、駆動流体によって動作する主アクチュエータと、
前記主アクチュエータに供給される駆動流体の圧力を調整する圧力調整器と、
前記主アクチュエータによって前記操作部材とともに移動可能に設けられ、電気的な駆動により伸長可能な副アクチュエータと、
前記副アクチュエータを前記弁体の方向に付勢する弾性部材と
前記弾性部材と前記副アクチュエータとの間に介在する蓋材であって、前記弁体が前記弁座に着座した状態においても、前記弁体の方向への移動が規制されておらず、前記弾性部材の付勢力を前記副アクチュエータへ伝達することができるように配置された蓋材と
を備え
前記駆動流体の圧力の調整と、前記副アクチュエータの伸長度の調整とによって、閉から最大開度までの間の任意の弁開度に連続的に制御できるように構成されている、バルブ装置。
【請求項2】
流路ブロックに対して固定されるバルブ筐体であって、前記副アクチュエータの一部、前記蓋材、および前記弾性部材を収容する上部カバーを含むバルブ筐体をさらに備え、
前記上部カバーの内周面に沿って前記蓋材が摺動可能であり、前記上部カバーの内周面は、前記弁体が前記弁座に着座した状態においても前記蓋材の移動を規制しないように構成されており、
前記上部カバーの位置または前記弾性部材の付勢力を調節することによって、前記弁体が前記弁座に着座した状態における弁体押圧力を調整することが可能なように構成されている、請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記圧力調整器によって圧力が調整された駆動流体によって前記主アクチュエータが前記弾性部材の付勢力に抗して前記操作部材を移動させ、かつ、前記副アクチュエータの伸長によって前記弾性部材の付勢力を増加させて前記操作部材を移動させるように構成されている、請求項1または2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記主アクチュエータは、前記操作部材に係合するピストンを有する空気駆動式のアクチュエータを含み、
前記副アクチュエータは、ピエゾアクチュエータを含み、
前記圧力調整器は、電空レギュレータを含む、請求項1から3のいずれかに記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記操作部材のフランジ部を前記弁体の方向に付勢する主弾性部材をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載のバルブ装置。
【請求項6】
流路に設けられた絞り部と、
前記絞り部の上流側に設けられ、請求項1から5のいずれかに記載のバルブ装置によって構成されるコントロール弁と、
前記絞り部と前記コントロール弁との間の流体圧力を測定する圧力センサと、
前記圧力センサの出力に基づいて前記コントロール弁の開閉動作を制御する制御部と
を備える、流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置および流量制御装置に関し、特に、半導体製造設備、薬品製造装置または化学プラント等に用いるガス供給システムにおいて好適に用いられるバルブ装置および流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造設備又は化学プラント等において、プロセスチャンバなどにガスを適切な流量で供給することが要求される。ガス流量の制御装置としては、マスフローコントローラ(熱式質量流量制御器)や圧力式流量制御装置が知られている。
【0003】
圧力式流量制御装置は、コントロール弁と絞り部(例えばオリフィスプレートや臨界ノズル)とを組み合せた比較的簡単な機構によって各種流体の質量流量を高精度に制御することができるので広く利用されている。圧力式流量制御装置は、一次側供給圧が大きく変動しても安定した流量制御が行えるという優れた流量制御特性を有している。
【0004】
圧力式流量制御装置には、絞り部の上流側の流体圧力(以下、上流圧力PUと呼ぶことがある)を制御することによって流量を調整するものがある。上流圧力PUは、絞り部の上流側に配置されたコントロール弁の開度調整によって制御される。
【0005】
圧力式流量制御装置に用いられるコントロール弁として、圧電素子駆動装置(以下、ピエゾアクチュエータと呼ぶことがある)によって金属ダイヤフラム弁体を開閉させるように構成された圧電素子駆動式バルブが用いられている。特許文献1には、コントロール弁として用いられる圧電素子駆動式バルブが開示されている。圧電素子駆動式バルブは、高速動作が可能であり、その開度を圧力センサの出力に基づいてフィードバック制御することによって、上流圧力および流量を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-192269号公報
【文献】特許第6336692号
【文献】国際公開第2004/079243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧電素子駆動式バルブは、小流量のガスの流量制御を精度よく行うことができるが、その一方で、大流量のガスを流すことが困難な場合がある。これは、圧電素子の伸長によって制御できる弁開閉の範囲には限度があるからである。圧電素子駆動式バルブのリフト量は、例えば35~40μm程度に設定されているが、このような変位量では10slm(standard liter/min)以上のガスを流すことは困難である。
【0008】
このため、大流量が求められる近年の用途においては、従来の圧電素子駆動式バルブでは流量が不足することがあった。なお、1つのラインに対して、コントロール弁を有する並列な2流路を設けて流量不足を補う方法も考えられるが、この場合には、コストの増加や装置の複雑化・肥大化を招くことになる。
【0009】
特許文献2には、空気圧を用いて開閉動作を行う主アクチュエータと、開度調整用のピエゾアクチュエータとを組み合わせたバルブ装置が開示されている。このように構成されたバルブ装置は、プロセスチャンバの手前の流路に設けられ、ALD(Atomic Layer Deposition)などのプロセスを行う際に、ガスをパルス的に供給するための開閉弁として好適に利用することができる。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載のバルブ装置では、最大流量の確保はできるものの、基本的には開閉弁としての使用が想定されているため、小流量から大流量までの広い流量範囲にわたって精度よく流量制御を行うことは困難な場合があった。このため、圧力式流量制御装置のコントロール弁として使用することは困難であった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、小流量から大流量までの流量制御を精度よく行うことができ、圧力式流量制御装置のコントロール弁としても利用し得るバルブ装置およびこれを備えた流量制御装置を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態によるバルブ装置は、弁座に離着座可能な弁体と、前記弁体に接続された操作部材と、前記操作部材を移動させる主アクチュエータであって駆動流体によって動作する主アクチュエータと、前記主アクチュエータに供給される駆動流体の圧力を調整する圧力調整器と、前記主アクチュエータによって前記操作部材とともに移動可能に設けられ、電気的な駆動により伸長可能な副アクチュエータと、前記副アクチュエータを前記弁体の方向に付勢する弾性部材とを備える。
【0013】
ある実施形態において、上記のバルブ装置は、前記圧力調整器によって圧力が調整された駆動流体によって前記主アクチュエータが前記弾性部材の付勢力に抗して前記操作部材を移動させ、かつ、前記副アクチュエータの伸長によって前記弾性部材の付勢力を増加させて前記操作部材を移動させるように構成されている。
【0014】
ある実施形態において、上記のバルブ装置は、前記駆動流体の圧力の調整と、前記副アクチュエータの伸長度の調整とによって、閉から最大開度までの間の任意の弁開度に制御できるように構成されている。
【0015】
ある実施形態において、前記主アクチュエータは、前記操作部材に係合するピストンを有する空気駆動式のアクチュエータを含み、前記副アクチュエータは、ピエゾアクチュエータを含み、前記圧力調整器は、電空レギュレータを含む。
【0016】
ある実施形態において、上記のバルブ装置は、前記操作部材のフランジ部を前記弁体の方向に付勢する主弾性部材をさらに備える。
【0017】
本発明の実施形態による流量制御装置は、流路に設けられた絞り部と、前記絞り部の上流側に設けられ、上記のいずれかのバルブ装置によって構成されるコントロール弁と、前記絞り部と前記コントロール弁との間の流体圧力を測定する圧力センサと、前記圧力センサの出力に基づいて前記コントロール弁の開閉動作を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態のバルブ装置および流量制御装置によれば、小流量から大流量までの流量制御を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態によるバルブ装置を示す断面図である。
図2図1のバルブ装置を含むバルブ駆動系を示す図である。
図3】主アクチュエータの操作圧力とCv値との関係とを示すグラフである。
図4】本発明の実施形態によるバルブ装置を備えた流量制御装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態にかかるバルブ装置100を示す。バルブ装置100は、ダイヤフラム弁体34を開閉動作させるための操作部材30と、操作部材30を比較的大きく移動させるための主アクチュエータ10と、操作部材30を比較的小さく移動させるための副アクチュエータ20とを備えている。
【0022】
バルブ装置100は、ノーマルクローズ型のバルブであり、主アクチュエータ10および副アクチュエータ20が駆動されていないとき、ダイヤフラム弁体34は、操作部材30を介して主弾性部材42(ここではコイルばね)などから受ける付勢力によって弁座(図示せず)に押し付けられている。弁座は、通常、ダイヤフラム弁体34の中央部に対面する環状の突出面として設けられている。
【0023】
主アクチュエータ10、副アクチュエータ20、および、操作部材30は、いずれも、バルブ筐体40の内側に配置されている。本実施形態において、バルブ筐体40は、ボンネット40a、中間筐体40b、上部筐体40c、および、上部カバー40dによって構成されており、これらは互いにネジ締め固定されている。このうち、ボンネット40aは、図示しない流路ブロックにネジ締め固定されており、バルブ筐体40の全体が流路ブロックに対して固定された状態にある。
【0024】
バルブ装置100において、操作部材30はステンレス鋼製の筒体を含み、バルブ筐体40に対して、上下方向(弁体の開閉方向)に移動可能に配置されている。操作部材30の下方先端には、ダイヤフラム弁体34の中央部に接するダイヤフラム押さえ32が固定されており、操作部材30の上下移動によって、ダイヤフラム弁体34を弁座に押しつけたり、ダイヤフラム弁体34を弁座から離間させたりすることができる。なお、操作部材30の材料としては、ステンレス鋼以外にも、インバー材等を用いることも可能であり、特に材質について限定されず、状況等によって使用する材料を選定すればよい。ダイヤフラム押さえ32は、例えば合成樹脂(例えば四フッ化エチレン樹脂)や合成ゴムやアルミニウムやステンレス鋼、インバー材などから形成され得る。
【0025】
また、ダイヤフラム弁体34は、例えば、ステンレス鋼製またはコバルトニッケル合金製の円形薄板(例えば厚さ15~100μm)であり、中央部が上方へ僅かに膨出した逆皿形に形成されていてよい。ダイヤフラム弁体34は、1枚のダイヤフラムから形成されていてもよいし、2~4枚のダイヤフラムの積層体から形成されていてもよい。ダイヤフラム弁体34の周縁部は、ステンレス合金製の押さえアダプタ36を挟んで、ボンネット40aと流路ブロックとの間に固定されている。
【0026】
本明細書において、便宜上、ダイヤフラム弁体34の開閉方向(または操作部材30の移動方向)を上下方向D1、D2と規定している。ただし、バルブ装置100の姿勢によって、弁体の開閉方向は水平方向や斜め方向であってもよく、本明細書における上下方向D1、D2は、実際の鉛直方向とは異なるものであってもよい。また、上下は逆であってもよい。
【0027】
本実施形態において、操作部材30を移動させる主アクチュエータ10としては、駆動流体としての圧縮空気を用いて操作部材30を上下動させる空気駆動式のアクチュエータが用いられている。主アクチュエータ10は、環状の第1~第3のピストン12a、12b、12cを含んでいる。第1~第3のピストン12a、12b、12cは、操作部材30の外周面に設けられた段差部に当接するようにして操作部材30の周囲に嵌合されており、操作部材30と共に上下方向D1、D2に沿って移動可能である。
【0028】
第1~第3のピストン12a、12b、12cの内周面と操作部材30との間、および、第1~第3のピストン12a、12b、12cの外周面と外側のバルブ筐体40との間には、Oリング16が設けられている。また、第1~第3のピストン12a、12b、12cの下面側には第1~第3のピストン圧力室14a、14b、14cが設けられている。一方で、第1~第3のピストン12a、12b、12cの上面側には、外部と連通する隙間が設けられ、この隙間は典型的には大気圧に維持されている。第1~第3のピストンの下面側の圧力室14a、14b、14cと上記の隙間とは、Oリング16によって隔離されており、圧力室14a、14b、14cはシールされた状態にある。
【0029】
圧力室14a、14b、14cには、供給管50を介して、空気源からの圧縮空気が送られる。供給管50からの空気は、図1からわかるように、バルブ筐体40に設けられた細穴および操作部材30に設けられた細穴を通り、操作部材30とその内周側に配された筒状壁面部材38との間の隙間に流れ込み、第1および第2圧力室14a、14bへと到達する。
【0030】
主アクチュエータ10は、第1~第3のピストン12a、12b、12cを空気圧によって上方に押し上げることによって、係合する操作部材30を上方向D1に移動させることができる。また、供給管50および圧力室14a、14b、14cには、電空レギュレータ55(図2参照)を介して、任意の圧力の圧縮空気が供給される。電空レギュレータ55は、主アクチュエータ10の操作圧力を任意の大きさに調整する機能を有している。なお、電空レギュレータ55を備える空気駆動型弁は、特許文献3に開示されている。
【0031】
また、操作部材30を移動させる副アクチュエータ20としては、ピエゾアクチュエータが用いられている。副アクチュエータ20は、操作部材30の内側において、操作部材30に対して摺動可能に配置されている。
【0032】
副アクチュエータ20では、ピエゾ素子(圧電素子ともいう)への印加電圧を制御することによって自身の伸長度が制御される。副アクチュエータ20としては、圧電素子を積層したものを金属容器内に密封した金属密封型積層ピエゾアクチュエータ(例えば日本特殊陶業社製)や、一本の圧電素子によって構成されたピエゾアクチュエータが用いられる。圧電素子への電圧の印加は、上部から延びる配線24を介して行われる。
【0033】
副アクチュエータ20の下端部には半球状の突出部22が設けられており、この突出部22は、操作部材30に固定された受け台33によって支持されている。また、副アクチュエータ20の上方には、上部弾性部材(ここでは皿バネ)25が設けられている。
【0034】
上部弾性部材25は、副アクチュエータ20の上面を覆う蓋材26と、バルブ筐体40の上部カバー40dの下面との間に配置されており、蓋材26および副アクチュエータ20を下方向に付勢することができる。上部弾性部材25は、バルブ閉状態のときに、例えば100~400Nの力で副アクチュエータ20を下側に押すように設けられる。
【0035】
以上の構成において、主アクチュエータ10および副アクチュエータ20が駆動していない状態において、ダイヤフラム弁体34は、操作部材30のフランジ部35を下側に押し付ける主弾性部材42の付勢力と、副アクチュエータ20を下側に押し付ける上部弾性部材25の付勢力とによって、弁座に押し付けられている。主弾性部材42は、閉状態での弁体の押しつけ力を十分なものにするために、閉状態において比較的大きい力(例えば300~600N)のばね荷重を下方に付与するように設定されている。
【0036】
一方、開弁するときには、主アクチュエータ10に開度対応の操作圧力を有する圧縮空気が供給され、主弾性部材42および上部弾性部材25の付勢力に抗して、第1~第3のピストン12a、12b、12cによって操作部材30を上側に持ち上げる。このとき、荷重のバランスがとられているので、操作部材30の移動は比較的滑らかに行われ、操作部材30の変位を操作圧力によって調整しやすい。また、特に上部弾性部材25は、組み立て時等に皿バネの枚数の調整などにより弾性力の調節を行うことが比較的容易であるので、実際の主アクチュエータ10の操作圧力に適合する適切な弾性力に調整しやすいという利点がある。
【0037】
本構成によれば、主アクチュエータ10の操作圧力と弁開度とを概ねリニアな関係とすることができ、また、操作部材30の変位を、上部弾性部材25の最大変位に対応する大きさまで増加させることができる。これにより、ダイヤフラム弁体34の最大開度を大きくすることができ、小流量から大流量までのガスを、駆動流体の操作圧力に応じた流量で流すことが可能になる。
【0038】
また、主アクチュエータ10による操作部材30の移動と共に、操作部材30の内側に配された副アクチュエータ20も、上部弾性部材25によって下側に付勢されながら、上側に移動する。このとき、副アクチュエータ20に電圧を印加して副アクチュエータ20を伸長させれば、上部弾性部材25の変位を増加させながら(すなわち、上部弾性部材25をさらに縮めながら)、下方向への付勢力を増加させることができる。これにより、操作部材30の変位を下方向に微調整することができる。
【0039】
したがって、主アクチュエータ10の操作圧力と、副アクチュエータ20の印加電圧との双方を組み合わせて制御することによって、小流量から大流量までの広い範囲にわたって、精度よく流量制御を行うことが可能になる。
【0040】
また、バルブ装置100を圧力式流量制御装置のコントロール弁として用いる場合、弁開度は、絞り部上流側の圧力センサの出力(上流圧力PU)に基づいてフィードバック制御によって調整される。このとき、圧力の揺らぎなどによって弁開度の連続的な微調整が必要になることがある。このときにも、バルブ装置100では、主アクチュエータ10の操作圧力を一定に維持したまま、応答性に優れる副アクチュエータ20の電圧制御によって弁開度を圧力変動に適切に追従させることができる。
【0041】
図2は、バルブ装置100を含むバルブ駆動系150を示す。バルブ駆動系150は、バルブ装置100に圧縮空気を供給するためのガスソースGSと、ガスソースGSとバルブ装置100との間の流路に介在する電空レギュレータ55と、バルブ装置100および電空レギュレータ55の動作を制御するコントローラ60とを備えている。
【0042】
電空レギュレータ55は、バルブ装置100の主アクチュエータ10に供給する圧縮空気の圧力を制御するために設けられている。電空レギュレータ55は、一種の比例制御弁であり、設定圧力を示す入力信号と圧力センサ信号との差が解消するように給気弁および排気弁を駆動することによって、ガスソースGSからの圧縮空気G0を圧力調整し、設定圧力に制御された圧縮空気G1を出力するように構成されている。ただし、電空レギュレータ55に限られず、主アクチュエータ10に供給される圧縮空気の圧力(操作圧力)を任意に調整できる限り、他の種々の態様の圧力調整器を用いることもできる。
【0043】
外部からバルブ開度制御信号が入力されると、コントローラ60は、粗調整用操作圧指令A1を電空レギュレータ55に出力するとともに、微調整用ピエゾ指令A2をバルブ装置100の副アクチュエータ20に出力する。これにより、主アクチュエータ10の操作圧力と副アクチュエータ20の駆動電圧とに対応した開度にバルブを調整することができる。コントローラ60は、典型的には、CPU、ROMやRAMなどのメモリ(記憶部)M、A/Dコンバータ等を内蔵しており、バルブ制御を実行するように構成されたコンピュータプログラムを含んでいてよく、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって実現され得る。
【0044】
コントローラ60は、バルブ装置100が設けられた流路に備えられた流量計や各種センサの出力を受け取って、指令A1または指令A2を更新して、バルブ装置100の弁開度をフィードバック制御により調整するように構成されていてもよい。また、主アクチュエータ10の操作圧力とバルブ開度との関係がリニアでない場合などには、予めメモリに記憶された操作圧力とバルブ開度(または流量など)との関係を示すテーブルに基づいて粗調整用操作圧指令A1を出力するとともに、必要に応じて微調整用ピエゾ指令A2を出力するようにしてもよい。
【0045】
図3は、主アクチュエータ10の操作圧力と、Cv値(Coefficient of flow)との関係を示すグラフである。Cv値は、バルブにおける流体の流れやすさを示す指標であり、具体的には、下記の式で与えられる。
Cv=(Q/6900)×(Gg・T/(P1-P2)・P2)1/2
【0046】
上記式において、Qは流量(sccm)、Ggは気体の比重、P1はバルブの一次側圧力(kPa abs)、P2はバルブの二次側圧力(kPa abs)、Tは温度(K)である。Cv値は、バルブの一次側と二次側との圧力差が一定の場合の流量に対応するものであり、比例弁などにおいては概ね弁開度に対応するものである。
【0047】
図3のラインB1に示すように、主アクチュエータ10の操作圧力が開始圧力P0よりも小さく、操作部材30を上方に持ち上げる力が主弾性部材42および上部弾性部材25の付勢力の合計よりも小さいときは、弁は閉じた状態に維持される。一方、操作圧力が開始圧力P0を超えたときは、操作圧力が増加するにつれてCv値もリニアに増加する。なお、本実施形態において、ラインB1は、副アクチュエータ20のリフト分(または上部弾性部材25の変位増加分)と操作圧力との関係にも対応する。
【0048】
また、図3の矢印B3で示すように、副アクチュエータ20のピエゾ素子に印加する電圧を例えば0~100Vの間で変動させることによって、主アクチュエータ10の操作圧力が一定のときにもCv値を所定幅で変化させることができる。すなわち、主アクチュエータ10と副アクチュエータ20とを組み合わせることによって、ハッチングで示すCv値調整範囲B2の範囲内でCv値を調整することができる。このように、副アクチュエータ20を用いれば、主アクチュエータ10では制御しきれない微妙な弁開度の調整も行うことが可能になる。
【0049】
なお、図3では、副アクチュエータ20の定常状態においてピエゾ素子に電圧を印加しない場合を示しており、この場合には、副アクチュエータ20への電圧印加により操作部材30は押し下げられ、Cv値調整範囲B2はラインB1の下側に設けられる。ただし、これに限らず、副アクチュエータ20の定常状態において所定電圧を印加するようにしてもよい。この場合、Cv値調整範囲B2は、ラインB1の上下を覆うように、あるいは、ラインB1の上側に設けられる。
【0050】
また、上記のように、操作圧力が開始圧力P0未満のときはバルブ装置100は閉状態を維持する。したがって、閉状態においても、開始圧力P0未満の所定圧力を主アクチュエータ10に常時与えておけば、立ち上がりの応答性を向上させ得る。
【0051】
図4は、バルブ装置100を備えた圧力式の流量制御装置200の構成を示す。流量制御装置200は、微細開口(オリフィス)を有する絞り部1と、絞り部1の上流側に設けられたコントロール弁としてのバルブ装置100と、絞り部1とバルブ装置100との間に設けられた圧力センサ2および温度センサ3とを備えている。絞り部1としては、オリフィスプレートなどのオリフィス部材の他に、臨界ノズルまたは音速ノズルを用いることもできる。オリフィスまたはノズルの口径は、例えば10μm~2500μmに設定される。オリフィスは複数個が設けられていてもよい。また、流量制御装置200の下流側は、遮断弁5を介して図示しないプロセスチャンバに接続されている。
【0052】
制御部4は、ADコンバータを介して圧力センサ2および温度センサ3に接続されるとともに、バルブ装置100の副アクチュエータ20およびバルブ装置100の主アクチュエータ10に任意圧力の圧縮空気を供給する電空レギュレータ(圧力調整器)55にも接続されている。制御部4は、圧力センサ2および温度センサ3の出力などに基づいて制御信号を生成し、バルブ装置100の動作を制御する。
【0053】
流量制御装置200は、臨界膨張条件PU/PD≧約2(ただし、PU:絞り部上流側のガス圧力(上流圧力)、PD:絞り部下流側のガス圧力(下流圧力)であり、約2は窒素ガスの場合)を満たすとき、絞り部1を通過するガスの流速は音速に固定され、流量は下流圧力PDによらず上流圧力PUによって決まるという原理を利用して流量制御を行う。臨界膨張条件を満たすとき、絞り部1の下流側の流量Qは、Q=K1・PU(K1は流体の種類と流体温度に依存する定数)によって与えられ、流量Qは、圧力センサ2によって測定される上流圧力PUに比例する。また、他の態様において、絞り部1の下流側に圧力センサ(図示せず)を備える場合、上流圧力PUと下流圧力PDとの差が小さく、臨界膨張条件を満足しない場合であっても流量を算出することができ、測定された上流圧力PUおよび下流圧力PDに基づいて、Q=K2・PD m(PU-PDn(ここでK2は流体の種類と流体温度に依存する定数、m、nは実際の流量を元に導出される指数)から流量Qを算出することができる。また、流量Qは、温度センサ3の出力する温度も加味して演算されてもよい。
【0054】
流量制御を行うために、目標流量が制御部4に入力される。制御部4は、圧力センサ2の出力(上流圧力PU)などに基づいて流量を演算により求め、この演算流量が入力された目標流量に近づくようにバルブ装置100をフィードバック制御する。より具体的には、目標流量に対応するように、電空レギュレータ55に操作圧力の制御信号を送るとともに、副アクチュエータ20のピエゾ素子に印加する電圧の制御信号を送る。
【0055】
バルブ装置100の実際の動作制御は、種々の態様で行われてよい。一例をあげると、まず、入力された目標流量に基づいて、予め設定された複数の操作圧力値のうちの適切な1つが選択され、電空レギュレータ55は選択された操作圧力に設定される(段階的制御)。そして、操作圧力が設定圧力に達した後は、圧力センサ2の出力に基づいて演算流量が求められ、この演算流量と目標流量とが一致するように副アクチュエータ20のピエゾ素子駆動電圧をフィードバック制御する。これによって、応答性および制御精度に優れた副アクチュエータ20の特長を生かしながら、小流量から大流量まで適切に流量制御を行うことが可能である。なお、演算により求められた流量は、流量出力値として表示されてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施形態を説明したが、種々の改変が可能である。例えば、上記には副アクチュエータとしてピエゾアクチュエータを用いる態様を説明したが、これに限られず、電気駆動型高分子材料または電気活性高分子材料などの電気的な駆動により変形可能な材料を含むアクチュエータを用いることもできる。なお、電気的な駆動とは、素子に電圧を印加することや、素子に電流を流すこと、あるいは、素子の周囲に電界を形成することなどを含む。また、ピエゾアクチュエータの代わりに、磁力を利用するソレノイドを含むアクチュエータを用いることもできる。
【0057】
また、上記にはノーマルクローズ型のバルブ装置を説明したが、ノーマルオープン型のバルブ装置であってもよい。この場合にも、主アクチュエータの操作圧力と副アクチュエータの駆動電圧との制御によって弁の開度調整を行うことができる。さらに、上記では、バルブ装置の使用温度については特に言及してないが、適正な材質を用いることによって、高温や低温でも使用できる構造とすることができる。また、ピエゾ素子の下端部とダイヤフラム押さえとの間にエクステンション(隔離部材、図示無し)を挿入可能な構造とすることによって、ピエゾ素子に温度(高温または低温)の影響が及ばないようにすることもできる。
【0058】
また、上記には圧力式の流量制御装置を説明したが、他の方式の流量制御装置、例えば、熱式流量センサを備える熱式質量流量制御器のコントロール弁として上記のバルブ装置を用いることも可能である。さらに、ALDプロセスなどにおいて、流量制御装置の下流に設けられる高速開閉弁として上記のバルブ装置を利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の実施形態にかかるバルブ装置は、例えば、圧力式流量制御装置のコントロール弁として好適に利用される。
【符号の説明】
【0060】
10 主アクチュエータ
12a、12b、12c ピストン
14a、14b、14c 圧力室
20 副アクチュエータ
22 突出部
24 配線
25 上部弾性部材
26 蓋材
30 操作部材
32 ダイヤフラム押さえ
34 ダイヤフラム弁体
36 押さえアダプタ
38 筒状壁面部材
40 バルブ筐体
40a ボンネット
40b 中部筐体
40c 上部筐体
40d 上部カバー
42 主弾性部材
50 供給管
55 電空レギュレータ(圧力調整器)
60 コントローラ
100 バルブ装置
150 バルブ駆動系
200 流量制御装置
図1
図2
図3
図4