(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】層間絶縁膜の製造方法及び層間絶縁膜
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20231109BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231109BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20231109BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231109BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H05K3/46 T
G03F7/004 512
G03F7/027 515
G03F7/004 501
H05K3/46 B
H05K1/03 610L
H05K1/03 610S
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020190239
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫也
(72)【発明者】
【氏名】西村 颯太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 壯一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 貴
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-062294(JP,A)
【文献】特開2019-174670(JP,A)
【文献】特開2017-219862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
G03F 7/004
G03F 7/027
H05K 1/03
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)光重合性化合物と、(D)エポキシ樹脂とを含有する感光性組成物の被膜を形成する工程と、
前記被膜に、320nm以上390nm以下の波長の紫外線を、3mW/cm
2以上300mW/cm
2以下の照度で露光する工程と、
前記露光工程後の被膜を140℃以上
220℃以下の温度で熱硬化させる工程と
を備える層間絶縁膜の製造方法。
【請求項2】
前記露光工程後に、
前記露光工程後の被膜をアルカリ現像する工程
をさらに備える請求項1に記載の層間絶縁膜の製造方法。
【請求項3】
前記感光性組成物が(E)有機フィラーをさらに含有する請求項1又は2に記載の層間絶縁膜の製造方法。
【請求項4】
前記熱硬化工程後に、
前記熱硬化工程後の被膜に、320nm以上390nm以下の波長の紫外線を、300mW/cm
2より大きい照度で照射する工程
をさらに備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の層間絶縁膜の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ現像工程後、前記熱硬化工程前に、
前記アルカリ現像工程後の被膜に、320nm以上390nm以下の波長の紫外線を、3mW/cm
2以上300mW/cm
2以下の照度で照射する工程
をさらに備える請求項2乃至4のいずれか一項に記載の層間絶縁膜の製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化工程後に、
前記熱硬化工程後の被膜を、表面粗化処理する工程
をさらに備える請求項1乃至5のいずれか一項に記載の層間絶縁膜の製造方法。
【請求項7】
前記熱硬化工程後に、
前記熱硬化工程後の被膜にメッキする工程
をさらに備える請求項1乃至6のいずれか一項に記載の層間絶縁膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の層間絶縁膜の製造方法により得られる層間絶縁膜。
【請求項9】
感光性組成物の3mW/cm
2以上300mW/cm
2以下の照度の320nm以上390nm以下の波長の紫外線、及び140℃以上
220℃以下の温度の熱による硬化物を含み、
前記感光性組成物が、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)光重合性化合物と、(D)エポキシ樹脂とを含有する層間絶縁膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、層間絶縁膜の製造方法及び層間絶縁膜に関し、詳しくは、被膜形成工程と、露光工程と、熱硬化工程とを備える層間絶縁膜の製造方法及び層間絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品、電気部品の小型化、高性能化の進行に伴い、用いられる半導体素子、半導体パッケージ、プリント配線板、フレキシブル配線板などは、高密度化、高精細化が進んでおり、微細な開口パターンを形成できる感光性の層間絶縁膜が求められている。このような層間絶縁膜には、解像性と共に、銅メッキ密着性、絶縁信頼性に優れることなどの特性が求められる。層間絶縁膜を形成する材料としては、エポキシ樹脂、エチレン性不飽和結合含有化合物、光重合開始剤、及び10員環以上の環状構造を有する窒素含有環式化合物を含有する感光性樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
最近では、さらなる高密度化のため、レーザー照射によるビア加工サイズが限界に達しており、レーザービア工法から、より小径のビアを形成できるフォトビア工法への転換が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、層間絶縁膜のパターンの微細化がますます進行する昨今にあっては、前記従来の材料を用いたのでは、層間絶縁膜の銅メッキ密着性を満足なものとすることはできていない。
【0006】
本開示の課題は、銅メッキ密着性に優れる層間絶縁膜を製造することができる層間絶縁膜の製造方法及び層間絶縁膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る層間絶縁膜の製造方法は、被膜形成工程と、露光工程と、熱硬化工程とを備える。前記被膜形成工程では、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)光重合性化合物と、(D)エポキシ樹脂とを含有する感光性組成物の被膜を形成する。前記露光工程では、前記被膜に、320nm以上390nm以下の波長の紫外線を、3mW/cm2以上300mW/cm2以下の照度で露光する。前記熱硬化工程では、前記露光工程後の被膜を140℃以上の温度で熱硬化させる。
【0008】
本開示の一態様に係る層間絶縁膜は、前記層間絶縁膜の製造方法により得られる。
【0009】
本開示の一態様に係る層間絶縁膜は、感光性組成物の3mW/cm2以上300mW/cm2以下の照度の320nm以上390nm以下の波長の紫外線、及び140℃以上の温度の熱による硬化物を含む。前記感光性組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)光重合性化合物と、(D)エポキシ樹脂とを含有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、銅メッキ密着性に優れる層間絶縁膜を製造することができる層間絶縁膜の製造方法及び層間絶縁膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例及び比較例における表面粗化工程後の層間絶縁膜の表面状態を示す走査型電子顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<層間絶縁膜の製造方法>
本実施形態の層間絶縁膜の製造方法は、被膜形成工程と、露光工程と、熱硬化工程とを備える。
【0013】
発明者らは、本開示の課題を解決するため、層間絶縁膜の製造方法について鋭意検討を行った。その結果、層間絶縁膜の製造を、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤と、(C)光重合性化合物と、(D)エポキシ樹脂とを含有する感光性組成物の被膜に、紫外線を露光した後、露光された被膜を熱硬化させて行う場合において、露光を特定範囲の照度(mW/cm2)で行い、かつ熱硬化を特定範囲の温度(℃)で行うことにより、銅メッキ密着性を向上させることができることを見出し、発明を完成させた。
【0014】
本実施形態の層間絶縁膜の製造方法が、前記構成を備えることで、前記効果を発揮する理由については、必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、露光工程において、特定範囲の照度で露光することにより、被膜に適度な架橋構造を形成させることができると考えられ、また、この適度な架橋構造が形成された被膜を、その後の熱硬化工程において、特定範囲の温度で加熱することにより、被膜に海島構造を形成させることができると考えられる。その結果、後述する表面粗化工程において、アンカー効果の高い粗化形状を得ることができ、この粗化形状により、優れた銅メッキ密着性が発揮されると考えられる。
【0015】
本実施形態の層間絶縁膜の製造方法は、前記工程に加えて、露光工程後に、露光工程後の被膜をアルカリ現像する工程(以下、アルカリ現像工程ともいう)、熱硬化工程後に、熱硬化工程後の被膜に、320nm以上390nm以下の波長の紫外線を、300mW/cm2より大きい照度で照射する工程(以下、後照射工程ともいう)、アルカリ現像工程後、熱硬化工程前に、アルカリ現像工程後の被膜に、320nm以上390nm以下の波長の紫外線を、3mW/cm2以上300mW/cm2以下の照度で照射する工程(以下、前照射工程ともいう)などをさらに備えていてもよい。
【0016】
また、本実施形態の層間絶縁膜の製造方法は、熱硬化工程後に、熱硬化工程後の被膜を、表面粗化処理する工程(以下、表面粗化工程ともいう)をさらに備えていてもよく、熱硬化工程後に、熱硬化工程後の被膜にメッキする工程(以下、メッキ工程ともいう)をさらに備えていてもよい。
【0017】
以下、各工程について説明する。
【0018】
[被膜形成工程]
本工程では、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)光重合性化合物と、(D)エポキシ樹脂とを含有する感光性組成物の被膜を形成する。感光性組成物については、後述する。
【0019】
本工程は、例えば感光性組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜の有機溶剤の除去など乾燥を行ってドライフィルムである被膜を形成することにより行う。塗布は、例えばポリエチレンテレフタレート製等のフィルム上に行う。塗布する方法としては、例えばスプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、スピンコート法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、アプリケーター法等が挙げられる。
【0020】
塗膜の乾燥のために塗膜を加熱してもよい。加熱温度は、40℃以上130℃以下であることが好ましく、70℃以上120℃以下であることがより好ましい。加熱時間は、1分以上5時間以下であることが好ましく、2分以上1時間以下であることがより好ましい。加熱は、1段階の温度で行ってもよく、2段階以上の温度で行ってもよい。
【0021】
形成される被膜の厚みは、1μm以上1000μm以下であることが好ましく、5μm以上500μm以下であることがより好ましく、10μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
得られた被膜は、例えば導体配線が形成されたコア材などの面に、例えば真空ラミネーター等を用いて、加熱ラミネートしてもよい。この際、導体配線の表層部分を、エッチング剤等により粗化処理してもよい。加熱ラミネートの温度は例えば50℃以上150℃以下であり、圧力は例えば0.1MPa以上2MPa以下であり、時間は例えば10秒以上10分以下である。このようにして、コア材上に形成された被膜を得ることができる。
【0023】
[露光工程]
本工程では、被膜形成工程で形成される被膜に、320nm以上390nm以下の波長の紫外線を、3mW/cm2以上300mW/cm2以下の照度(以下、照度(I)ともいう)で露光する。本工程は、例えば被膜に、所定の直径の円形形状を含むパターンの非露光部を有するネガマスクを介して、紫外線を露光することにより行う。照度及び露光量は、紫外線が露光又は照射される被膜の表面における値であり、公知の測定方法により測定することができる。
【0024】
露光工程において、前記特定範囲の照度(I)で露光することにより、被膜に適度な架橋構造を形成させることができると考えられる。照度(I)が3mW/cm2未満の場合、架橋の形成が不十分であり、300mW/cm2超の場合、過剰な架橋が形成されるため、表面粗化工程において形成される粗化形状のアンカー効果が不十分となり、銅メッキ密着性が悪化する。このような理由により、被膜形成工程から熱硬化工程までの間に、320nm以上390nm以下の波長の紫外線が、300mW/cm2超の照度で被膜に照射されないことが好ましい。
【0025】
320nm以上390nm以下の波長の紫外線を露光する光源としては、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等が挙げられる。
【0026】
照度(I)は、5mW/cm2以上であることが好ましく、10mW/cm2以上であることがより好ましく、20mW/cm2以上であることがさらに好ましく、30mW/cm2以上であることが特に好ましい。この場合、被膜の架橋構造がより適度になり、粗化形状のアンカー効果がより向上し、銅メッキ密着性がより向上する。照度(I)は、270mW/cm2以下であることが好ましく、250mW/cm2以下であることがより好ましく、220mW/cm2以下であることがさらに好ましく、200mW/cm2以下であることが特に好ましい。この場合、被膜の架橋構造がより適度になり、粗化形状のアンカー効果がより向上し、銅メッキ密着性がより向上する。
【0027】
露光工程における露光時間は、0.1秒以上1000秒以下であることが好ましく、0.5秒以上200秒以下であることがより好ましく、1秒以上100秒以下であることがさらに好ましい。
【0028】
露光工程における露光量は、30mJ/cm2以上であることが好ましく、100mJ/cm2以上であることがより好ましく、200mJ/cm2以上であることがさらに好ましい。この場合、被膜の架橋構造をより適度なものとすることができると考えられ、粗化形状のアンカー効果をより向上させることができ、銅メッキ密着性をより向上させることができる。露光量は、2000mJ/cm2以下であることが好ましく、1500mJ/cm2以下であることがより好ましく、1000mJ/cm2以下であることがさらに好ましい。この場合、解像性が向上する。
【0029】
感光性組成物において、露光工程後、アルカリ現像工程前における二重結合反応率(以下、二重結合反応率(I)ともいう)は、15%以上70%以下であることが好ましい。この場合、露光工程で形成された架橋構造がより適度なものであると考えられ、粗化形状のアンカー効果をより向上させることができる。この二重結合反応率(I)は、20%以上65%以下であることがより好ましく、30%以上60%以下であることがさらに好ましい。「二重結合反応率」とは、感光性組成物が含有する(C)光重合性化合物、(A)カルボキシル基含有樹脂などが有するエチレン性二重結合の架橋反応の反応率を意味する。二重結合反応率は、被膜の赤外線吸収スペクトル(IR)により測定することができる。具体的には、被膜形成工程で形成された被膜のIRスペクトルにおける1630cm-1のピークの面積の規格値(S0)と、紫外線の露光又は照射後における測定する被膜の1630cm-1のピークの面積の規格値(S1)とから、(S0-S1)×100/S0(%)の式で算出される。規格値(S0又はS1)とは、露光又は照射により面積が変化しない750cm-1のピークの面積の実測値(R0又はR1)に対する1630cm-1のピークの面積の実測値(P0又はP1)の比(P0/R0又はP1/R1)である。
【0030】
[アルカリ現像工程]
本工程では、露光工程後の被膜をアルカリ現像する。これにより、被膜をパターン化させることができる。本工程は、被膜にアルカリ現像液を接触させることにより行う。
【0031】
アルカリ現像液としては、例えば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液などが挙げられる。
【0032】
被膜にアルカリ現像液を接触させる方法としては、例えば被膜にアルカリ現像液を噴射する方法、アルカリ現像液に被膜を浸漬する方法などが挙げられる。アルカリ現像液との接触後に、純水等により被膜を洗浄することが好ましい。
【0033】
感光性組成物において、アルカリ現像工程後、熱硬化工程前における二重結合反応率(以下、二重結合反応率(II)ともいう)は、15%以上70%以下であることが好ましい。この場合、熱硬化工程前における被膜の架橋構造がより適度なものであると考えられ、粗化形状のアンカー効果をより向上させることができる。この二重結合反応率(II)は、20%以上65%以下であることがより好ましく、30%以上60%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
[前照射工程]
本工程では、アルカリ現像工程後、熱硬化工程前の被膜に、320nm以上390nm以下の波長の紫外線を、3W/cm2以上300mW/cm2以下の照度(以下、照度(II)ともいう)で照射する。熱硬化工程前に、アルカリ現像後の被膜に、紫外線を前記範囲の照度(II)で照射することにより、熱硬化工程前における被膜の架橋構造をより適度なものにすることができると考えられ、粗化形状のアンカー効果をより向上させることができ、銅メッキ密着性をより向上させることができる。照度(II)が3W/cm2未満であると、前照射工程によりアンカー効果はあまり向上しない。照度(II)が300mW/cm2を超えると、前照射工程により被膜の架橋構造が過剰なものになると考えられ、粗化形状のアンカー効果が低下し、銅メッキ密着性が低下する。
【0035】
320nm以上390nm以下の波長の紫外線を照射する光源としては、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等が挙げられる。
【0036】
照度(II)は、5mW/cm2以上であることが好ましく、7mW/cm2以上であることがより好ましく、10mW/cm2以上であることがさらに好ましい。照度(II)は、270mW/cm2以下であることが好ましく、250mW/cm2以下であることがより好ましい。
【0037】
前照射工程における露光量は、50mJ/cm2以上であることが好ましく、100mJ/cm2以上であることがより好ましく、200mJ/cm2以上であることがさらに好ましい。この露光量は、2000mJ/cm2以下であることが好ましく、1500mJ/cm2以下であることがより好ましく、1000mJ/cm2以下であることがさらに好ましい。
【0038】
[熱硬化工程]
本工程では、露光工程後の被膜を140℃以上の温度で熱硬化させる。これにより、適度な架橋構造が形成された被膜に海島構造が形成されることで、表面粗化工程において、アンカー効果の高い粗化形状が形成される。
【0039】
熱硬化させる方法としては、例えば被膜を加熱する方法等が挙げられる。加熱の方法としては、例えばホットプレート、加熱炉、熱風乾燥炉等による方法などが挙げられる。
【0040】
加熱温度は、140℃以上である。加熱温度が140℃未満であると、熱硬化工程における被膜の海島構造の形成が不十分となり、表面粗化工程において、アンカー効果の高い粗化形状を得ることができないと考えられ、銅メッキ密着性が悪化する。加熱温度は、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましい。加熱温度は、220℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。
【0041】
加熱時間は、1分以上500分以下であることが好ましく、10分以上200分以下であることがより好ましく、100分以上200分以下であることがさらに好ましい。加熱時間を前記範囲とすることで、被膜に海島構造を十分に形成させることができる。
【0042】
感光性組成物において、熱硬化工程後における二重結合反応率(以下、二重結合反応率(III)ともいう)は、80%以上100%以下であることが好ましい。この場合、熱硬化工程による加熱により、被膜の架橋がより適度に進行したと考えられ、粗化形状のアンカー効果をより向上させることができ、銅メッキ密着性をより向上させることができる。この二重結合反応率(I)は、90%以上100%以下であることがより好ましく、93%以上100%以下であることがより好ましい。
【0043】
[後照射工程]
本工程では、熱硬化工程後の被膜に、320nm以上390nm以下の波長の紫外線を、300mW/cm2より大きい照度(以下、照度(III)ともいう)で照射する。熱硬化工程後の被膜に、紫外線を前記範囲の照度(III)で照射することにより、被膜の架橋構造をより適度なものにすることができると考えられ、粗化形状のアンカー効果をより向上させることができ、その結果、銅メッキ密着性をより向上させることができる。
【0044】
320nm以上390nm以下の波長の紫外線を照射する光源としては、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等が挙げられる。
【0045】
照度(III)は、300mW/cm2超である。照度(III)が300mW/cm2以下であると、後照射工程によりアンカー効果はあまり向上しない。照度(III)は、400mW/cm2以上であることが好ましく、600mW/cm2以上であることがより好ましく、800mW/cm2以上であることがさらに好ましい。照度(III)の上限は、特に限定されないが、例えば2500mW/cm2以下であり、2000mW/cm2以下であることが好ましい。
【0046】
後照射工程における露光量は、300mJ/cm2以上であることが好ましく、500mJ/cm2以上であることがより好ましく、1000mJ/cm2以上であることがさらに好ましい。この露光量は、4000mJ/cm2以下であることが好ましく、3000mJ/cm2以下であることがより好ましく、2500mJ/cm2以下であることがさらに好ましい。
【0047】
感光性組成物において、後照射工程後における二重結合反応率(以下、二重結合反応率(IV)ともいう)は、95%以上100%以下であることが好ましい。この場合、後照射工程により、被膜の架橋がより適度に進行したと考えられ、粗化形状のアンカー効果をより向上させることができ、銅メッキ密着性をより向上させることができる。この二重結合反応率(IV)は、97%以上100%以下であることがより好ましく、99%以上100%以下であることがより好ましい。
【0048】
[表面粗化工程]
本工程では、熱硬化工程後の被膜を、表面粗化処理する。これにより、銅メッキ密着性をより向上させることができる。
【0049】
本工程によって、露光工程及び熱硬化工程において適度に形成された被膜の架橋構造により、アンカー効果の高い粗化形状を形成させる。
【0050】
表面粗化処理の方法としては、例えば過マンガン酸塩溶液、重クロム酸塩溶液等の酸化剤を用いる化学的処理、微粒子による物理的処理等を行う方法などが挙げられる。これらの中で、化学的処理を行う方法が好ましく、被膜を酸化剤溶液に接触させる方法がより好ましい。酸化剤として、デスミア液として入手可能な酸化剤を用いることができる。酸化剤を接触させる方法としては、例えば酸化剤溶液に被膜を浸漬させる方法等が挙げられる。過マンガン酸塩としては、例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。重クロム酸塩としては、例えば重クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム等が挙げられる。酸化剤溶液の温度としては、例えば50℃以上100℃以下であり、60℃以上90℃以下であることが好ましい。浸漬の時間としては、例えば1分以上30分以下であり、3分以上20分以下であることが好ましい。
【0051】
酸化剤溶液との接触の前に、デスミア用膨潤液等を用いて、被膜に膨潤処理を行うことが好ましい。膨潤処理における膨潤液の温度は、例えば50℃以上100℃以下であり、膨潤処理の時間は、例えば1分以上1時間以下である。膨潤処理の後、被膜の表面を湯洗することが好ましい。
【0052】
酸化剤溶液との接触の後に、被膜の表面を湯洗することが好ましく、また、中和液等により、被膜の表面におけるデスミア液の残渣を除去することが好ましく、残渣の除去後に、被膜の表面を水洗することが好ましい。
【0053】
[メッキ工程]
本工程では、熱硬化工程後の被膜にメッキする。本工程により、表面粗化工程で形成された高いアンカー効果の粗化形状を有する被膜に、メッキ層を形成することで、銅メッキ密着性に優れる層間絶縁膜を得ることができる。
【0054】
本工程は、通常、無電解メッキ処理により初期配線を形成させ、続いて電解メッキ処理により初期配線に金属層を形成させることにより行う。
【0055】
無電解メッキ処理及び電解メッキ処理は、公知の方法により行うことができる。無電解メッキ処理及び電解メッキ処理により金属が析出した被膜を、例えば100℃以上250℃以下、1分以上3時間以下の条件で加熱し、メッキ層を形成させることが好ましい。形成されるメッキ層の厚さは、例えば1μm以上200μm以下であり、10μm以上50μm以下であることが好ましい
【0056】
本実施形態の層間絶縁膜の製造方法は、被膜形成工程後に、
被膜形成工程により得られた被膜を、二重結合反応率が15%以上70%以下になるように、紫外線により硬化させる第1硬化工程と、
第1硬化工程後の被膜を、二重結合反応率が80%以上100%以下になるように、熱によりさらに硬化させる第2硬化工程と
を備えることが好ましい。
【0057】
第1硬化工程における二重結合反応率は、20%以上65%以下であることが好ましい。第2硬化工程における二重結合反応率は、85%以上100%以下であることが好ましく、90%以上100%以下であることがより好ましい。
【0058】
次に、感光性組成物について説明する。
【0059】
(感光性組成物)
感光性組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)光重合性化合物と、(D)エポキシ樹脂を含有する。感光性組成物は、前記成分以外に、本開示の効果を損なわない範囲において、(E)有機フィラー、(F)無機フィラー、(G)添加剤などを含有していてもよい。
【0060】
((A)カルボキシル基含有樹脂)
(A)カルボキシル基含有樹脂(以下、(A)樹脂ともいう)は、カルボキシル基を有する樹脂である。
【0061】
(A)樹脂は、(A1)ビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂(以下、(A1)樹脂ともいう)、(A2)ビフェニルノボラック骨格を有するカルボキシル基含有樹脂(以下、(A2)樹脂ともいう)などの光重合性を有する樹脂が好ましい。
【0062】
((A1)樹脂)
(A1)樹脂は、例えば下記式(1)で示され、式(1)中、R1~R8は各々独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子であるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(a2)との反応物である中間体と、酸無水物との反応物である。(A1)樹脂は、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、エチレン性不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させ、それにより得られた中間体と、酸無水物とを反応させることで合成される。
【0063】
【0064】
式(1)中、R1~R8は各々独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲンである。すなわち、式(1)におけるR1~R8の各々は、水素原子でもよいが、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子でもよい。芳香環における水素原子が低分子量のアルキル基又はハロゲン原子で置換されても、(A1)樹脂の物性に悪影響は与えられず、むしろ置換されることで(A1)樹脂を含有する感光性組成物の硬化物の耐熱性及び難燃性が向上する場合もあるからである。
【0065】
(A1)樹脂は、例えば以下の手順により合成することができる。まず、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基の少なくとも一部と、不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させることで、中間体を合成する。エポキシ基は、下記式(2)で示される基である。中間体は、エポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)との開環付加反応により生じた下記式(3)に示す構造を有する。すなわち、中間体は、式(3)に示す構造中に、エポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)との開環付加反応により生じた二級の水酸基を有する。式(3)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基である。
【0066】
【0067】
【0068】
次に、中間体中の二級の水酸基と酸無水物とを反応させる。これにより、(A1)樹脂が得られる。
【0069】
酸無水物としては、例えば酸二無水物(a3)、酸一無水物(a4)等が挙げられる。酸無水物が酸一無水物(a4)を含む場合、(A1)樹脂は式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格と、下記式(4)に示す構造とを有する。
【0070】
式(4)に示す構造は、中間体の式(3)で示される構造中の二級の水酸基と、酸一無水物(a4)における酸無水物基とが反応することで生じる。式(4)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基であり、Bは酸一無水物残基である。
【0071】
【0072】
酸無水物が酸二無水物(a3)を含む場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格と、下記式(5)で示される構造とを有する。
【0073】
式(5)で示される構造は、酸二無水物(a3)中の二つの酸無水物基と、中間体における二つの二級の水酸基とが、それぞれ反応することで生じる。すなわち、式(5)で示される構造は、二つの二級の水酸基同士を酸二無水物(a3)が架橋することで生成する。なお、中間体の一つの分子中に存在する二つの二級の水酸基同士が架橋される場合と、中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が架橋される場合とが、ありうる。中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が架橋されると、分子量を増大させることができる。式(5)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基であり、Dは酸二無水物残基である。
【0074】
【0075】
中間体中の二級の水酸基と酸無水物とを反応させることで(A1)樹脂を得ることができる。酸無水物が酸二無水物(a3)及び酸一無水物(a4)を含む場合、中間体中の二級の水酸基のうちの一部と酸二無水物(a3)とを反応させ、中間体中の二級の水酸基のうちの別の一部と酸一無水物(a4)とを反応させる。これにより、(A1)樹脂を合成できる。この場合、(A1)樹脂は、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格と、前記式(4)で示される構造と、前記式(5)で示される構造とを有する。
【0076】
(A1)樹脂が、さらに下記式(6)で示す構造を有することもありうる。式(6)で示される構造は、酸二無水物(a3)中の二つの酸無水物基のうち、一つのみが、中間体における二級の水酸基と反応することで生じる。式(6)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基であり、Dは酸二無水物残基である。
【0077】
【0078】
中間体の合成時にエポキシ化合物(a1)中のエポキシ基の一部が未反応のまま残存する場合、(A1)樹脂は式(2)で示される構造、すなわちエポキシ基を有することがありうる。また、中間体における式(3)で示される構造の一部が未反応のまま残存する場合に、(A1)樹脂は式(3)で示される構造を有することもありうる。
【0079】
酸無水物が酸二無水物(a3)を含む場合、(A1)樹脂の合成時の反応条件を最適化することで、(A1)樹脂中の式(2)で示される構造、及び式(6)で示される構造を低減し、又は殆どなくすことが可能である。
【0080】
前述のように、(A1)樹脂は、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有し、酸無水物が酸一無水物(a4)を含む場合は式(4)で示される構造を有し、酸無水物が酸二無水物(a3)を含む場合は式(5)で示される構造を有することができる。さらに、酸無水物が酸一無水物(a4)を含む場合、(A1)樹脂は、式(2)で示される構造と式(3)で示される構造とのうち少なくとも一方を有することがある。また、酸無水物が酸二無水物(a3)を含む場合、(A1)樹脂は、式(2)で示される構造と、式(6)で示される構造とのうち少なくとも一方を有することがある。またさらに、酸無水物が酸一無水物(a4)と酸二無水物(a3)を含む場合、(A1)樹脂は、式(2)で示される構造と、式(3)で示される構造と、式(6)で示される構造とのうち少なくとも一つを有することがある。
【0081】
また、エポキシ化合物(a1)自体が二級の水酸基を有する場合、すなわち例えば後述する式(7)においてn=1以上である場合には、(A1)樹脂は、エポキシ化合物(a1)中の二級の水酸基と酸無水物とが反応することで生じる構造を有することもある。
【0082】
なお、前述の(A1)樹脂の構造は技術常識に基づいて合理的に類推されたものであり、(A1)樹脂の構造を分析によって同定することは現実にはできない。その理由は次の通りである。エポキシ化合物(a1)自体が二級の水酸基を有する場合(例えば式(7)においてnが1以上である場合)には、エポキシ化合物(a1)中の二級の水酸基の数によって(A1)樹脂の構造が大きく変化してしまう。また、中間体と酸二無水物(a3)とが反応する際には、前述の通り、中間体の一つの分子中に存在する二つの二級の水酸基同士が酸二無水物(a3)で架橋される場合と、中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が酸二無水物(a3)で架橋される場合とが、ありうる。このため、最終的に得られる(A1)樹脂は、互いに構造の異なる複数の分子を含み、(A1)樹脂を分析してもその構造を同定することは難しい。
【0083】
(A1)樹脂は、不飽和基含有カルボン酸(a2)に由来するエチレン性不飽和基を有することで光反応性を有する。このため、(A1)樹脂は感光性組成物に感光性、具体的には紫外線硬化性を付与できる。また、(A1)樹脂は、酸無水物に由来するカルボキシル基を有することで、感光性組成物に、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液による現像性を付与できる。さらに、酸無水物が酸二無水物(a3)を含む場合、(A1)樹脂は、酸二無水物(a3)によって架橋されていることで分子量が調整されている。このため、酸価と分子量とが適度に調整された(A1)樹脂が得られる。酸無水物が酸二無水物(a3)及び酸一無水物(a4)を含む場合、酸二無水物(a3)及び酸一無水物(a4)の量、並びに酸二無水物(a3)に対する酸一無水物(a4)の量を制御することで、(A1)樹脂の分子量及び酸価を容易に調整できる。
【0084】
(A1)樹脂の重量平均分子量は700以上10000以下であることが好ましい。重量平均分子量が700以上であると、感光性組成物から形成される被膜のタック性を抑制すると共に、層間絶縁膜の絶縁信頼性及び耐メッキ性を向上することができる。また、重量平均分子量が10000以下であると、感光性組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。重量平均分子量は、900以上8000以下であることがより好ましく、1000以上5000以下であることがさらに好ましい。
【0085】
(A1)樹脂の酸価は60mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であることが好ましい。この場合、感光性組成物の現像性が特に向上する。酸価は80mgKOH/g以上135mgKOH/g以下であることがより好ましく、90mgKOH/g以上130mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0086】
(A1)樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量測定結果から算出される。GPCによる分子量測定は、例えば、次の条件の下で行うことができる。
【0087】
GPC装置:昭和電工社製のSHODEX SYSTEM 11
カラム:SHODEX KF-800P、KF-005、KF-003及びKF-001の4本直列
移動相:THF
流量:1mL/分
カラム温度:45℃
検出器:RI
換算:ポリスチレン
【0088】
(A1)樹脂の原料、及び(A1)樹脂の合成時の反応条件について詳しく説明する。
【0089】
エポキシ化合物(a1)は、例えば下記式(7)で示される構造を有する。式(7)中のnは、例えば0~20の範囲内の数である。(A1)樹脂の分子量を適切に制御するためには、nの平均は0~1の範囲内であることが特に好ましい。nの平均が0~1の範囲内であれば、特に酸無水物が酸二無水物(a3)を含む場合、酸二無水物(a3)の付加による過剰な分子量の増大が抑制されやすくなる。
【0090】
【0091】
不飽和基含有カルボン酸(a2)としては、例えば一分子中にエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物等が挙げられる。不飽和基含有カルボン酸(a2)としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、β-カルボキシエチルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などが挙げられる。不飽和基含有カルボン酸(a2)は、アクリル酸を含むことが好ましい。
【0092】
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とは、公知の方法により反応させることができる。例えばエポキシ化合物(a1)の溶剤溶液に不飽和基含有カルボン酸(a2)を加え、さらに必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは80℃以上120℃以下の温度で反応させることで、中間体を得ることができる。溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;ジアルキルグリコールエーテル類などが挙げられる。熱重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。触媒としては、例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類;トリフェニルフォスフィン、トリフェニルスチビンなどが挙げられる。
【0093】
触媒は、トリフェニルフォスフィンを含むことが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させることが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)との開環付加反応が特に促進され、通常95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくはほぼ100%の反応率(転化率)を達成することが可能である。このため、式(3)で示される構造を有する中間体が高い収率で得られる。
【0094】
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させる際のエポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する不飽和基含有カルボン酸(a2)の量は0.8~1.2モルの範囲内であることが好ましい。この場合、感光性組成物の優れた感光性と保存安定性とが得られる。
【0095】
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、不飽和基の付加重合反応を抑制して、中間体の分子量の増大及び中間体の溶液のゲル化を抑制できる。また、最終生成物である(A1)樹脂の過度な着色を抑制できる。
【0096】
このようにして得られる中間体は、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)のカルボキシル基とが反応することで生成した水酸基を備える。
【0097】
酸二無水物(a3)は、酸無水物基を二つ有する化合物である。酸二無水物(a3)としては、例えばテトラカルボン酸の無水物などが挙げられる。酸二無水物(a3)としては、例えば1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト〔1,2-c〕フラン-1,3-ジオン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。酸二無水物(a3)は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。すなわち、式(5)及び式(6)におけるDが3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基を含むことが好ましい。この場合、感光性組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性組成物から形成される被膜のタック性を抑制すると共に、層間絶縁膜の絶縁信頼性及び耐メッキ性を向上させることができる。酸二無水物(a3)全体に対して、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は20モル%以上100モル%以下であることが好ましく、40モル%以上100モル%以下であることがより好ましい。
【0098】
酸一無水物(a4)は、酸無水物基を一つ有する化合物である。酸一無水物(a4)としては、例えばジカルボン酸の無水物等が挙げられる。酸一無水物(a4)としては、例えばフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物、イタコン酸無水物などが挙げられる。酸一無水物(a4)は、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸を含むことが好ましい。すなわち、(A1)樹脂が式(4)に示す構造を有し、式(4)におけるBが1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸残基を含むことが好ましい。この場合、感光性組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性組成物から形成される被膜のタック性を抑制すると、層間絶縁膜の絶縁信頼性及び耐メッキ性を向上することができる。酸一無水物(a4)全体に対して、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸は20モル%以上100モル%以下であることが好ましく、40モル%100モル%以下であることがより好ましい。
【0099】
中間体と酸無水物とは、公知の方法により反応させることができる。例えば中間体の溶剤溶液に酸無水物を加え、さらに必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは80℃以上120℃以下の温度で反応させることで、(A1)樹脂を得ることができる。溶剤、触媒及び重合禁止剤としては、適宜のものが使用でき、中間体の合成時に使用した溶剤、触媒及び重合禁止剤をそのまま使用することもできる。
【0100】
触媒は、トリフェニルフォスフィンを含むことが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、中間体と酸無水物とを反応させることが好ましい。この場合、中間体における二級の水酸基と酸無水物との反応が特に促進され、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくはほぼ100%の反応率(転化率)を達成することが可能である。このため式(4)で示される構造及び式(5)で示される構造のうち少なくとも一方の構造を有する(A1)樹脂が高い収率で得られる。
【0101】
酸無水物が酸二無水物(a3)と酸一無水物(a4)とを含む場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸二無水物(a3)の量は、0.05モル以上0.24モル以下であることが好ましい。また、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸一無水物(a4)の量は0.3モル以上0.7モル以下であることが好ましい。この場合、酸価と分子量とが適度に調整された(A1)樹脂が容易に得られる。
【0102】
((A2)樹脂)
(A2)ビフェニルノボラック骨格を有するカルボキシル基含有樹脂は、(A1)樹脂におけるビスフェノールフルオレン骨格に代えて、ビフェニルノボラック骨格を有するカルボキシル基含有樹脂である。(A2)樹脂は、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂とエチレン性不飽和基含有カルボン酸(a2)との反応物である中間体と、酸無水物との反応物である。(A2)樹脂は、前述の(A1)樹脂と同様の方法により合成することができる。(A2)樹脂の好ましい重量平均分子量及び酸価の範囲としては、前述の(A1)樹脂における好ましい範囲と同様である。
【0103】
((A3)樹脂)
(A)樹脂は、(A1)樹脂及び(A2)樹脂以外の他の光重合性を有する樹脂(以下、(A3)樹脂ともいう)を含んでいてもよい。(A3)樹脂としては、例えばカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する樹脂などが挙げられる。(A3)樹脂としては、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(g1)とエチレン性不飽和化合物(g2)との反応物である中間体と、多価カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方との反応物である樹脂などが挙げられる。(A3)樹脂は、例えばエポキシ化合物(g1)中のエポキシ基と、エチレン性不飽和化合物(g2)中のカルボキシル基とを反応させて得られた中間体に、多価カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方である化合物(g3)を付加させて得られる。エポキシ化合物(g1)としては、例えばクレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物等の適宜のエポキシ化合物が挙げられる。エチレン性不飽和化合物(g2)としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートなどが挙げられる。化合物(g3)としては、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸、これらの多価カルボン酸の無水物などが挙げられる。
【0104】
また、(A3)樹脂としては、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含有するエチレン性不飽和単量体の重合体とエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物との反応物である樹脂なども挙げられる。この(A3)樹脂は、重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる。エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0105】
(A)樹脂における光重合性を有する樹脂の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。この場合、層間絶縁膜の耐熱性及び絶縁信頼性をより向上させることができ、また、感光性組成物から形成される被膜のタック性を十分に抑制することができ、さらに、感光性組成物のアルカリ現像性をより向上させることができる。
【0106】
(A)樹脂は、(A1)樹脂を含むことが好ましい。(A)樹脂として、ビスフェノールフルオレン骨格を有する(A1)樹脂を用いることにより、層間絶縁膜の銅メッキ密着性をより向上させることできる。
【0107】
(A)樹脂は、光重合性を有する樹脂以外に、カルボキシル基を有し光重合性を有さない樹脂(以下、(a)樹脂ともいう)を含んでいてもよい。
【0108】
(a)樹脂としては、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体などが挙げられる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート等の単量体;ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の化合物と二塩基酸無水物との反応物などが挙げられる。
【0109】
(A)樹脂の感光性組成物全体(固形分)に対する割合は、5質量%以上85質量%以下であることが好ましく、10質量%以上75質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。感光性組成物全体(固形分)とは、感光性組成物における溶剤などの揮発性成分を除いた全成分の総和をいう。
【0110】
((B)光重合開始剤)
(B)光重合開始剤は、感光性組成物の感光性を向上させうる成分である。(B)光重合開始剤は、例えばα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、感光性組成物を紫外線等の光を照射して露光する場合に、感光性組成物に高い感光性を付与できる。(B)光重合開始剤は、(B1)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むことがさらに好ましい。この場合、感光性組成物に高い感光性を付与できるとともに、着色が少なく、高い透明性を維持できる。
【0111】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、例えば2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことができる。
【0112】
(B1)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-エチル-フェニル-フォスフィネート等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことができる。
【0113】
オキシムエステル系光重合開始剤は、例えば1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(О-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことができる。
【0114】
感光性組成物は、さらに適宜の光重合促進剤、及び増感剤等を含有してもよい。例えば感光性組成物は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のヒドロキシケトン類;ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4-ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン類;及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン等の窒素原子を含む化合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。感光性組成物は、(B)光重合開始剤と共に、p-ジメチル安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2-ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系などの適宜の光重合促進剤及び増感剤等を含有してもよい。感光性組成物は、必要に応じて、可視光露光用の光重合開始剤及び近赤外線露光用の光重合開始剤のうちの少なくとも一種を含有してもよい。感光性組成物は、(B)光重合開始剤と共に、レーザー露光法用増感剤である7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等のクマリン誘導体、カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等を含有してもよい。
【0115】
(B)光重合開始剤は、(B1)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤に加えて、(B2)ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含むことが好ましい。すなわち感光性組成物は(B2)ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含有することが好ましい。この場合、(B2)ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含有しない場合と比べて、感光性組成物にさらに高い感光性を付与できる。これにより、感光性組成物から形成される被膜に紫外線を照射して硬化させる場合、被膜をその表面から深部に亘って十分に硬化させることが可能となる。(B2)ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0116】
(B1)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と(B2)ヒドロキシケトン系光重合開始剤との質量比((B1):(B2))は、1:0.01~1:10の範囲内であることが好ましい。この場合、感光性組成物から形成される被膜の表面付近における硬化性と深部における硬化性とを、バランス良く向上させることができる。
【0117】
(B)光重合開始剤は、(B3)ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを含むことも好ましい。すなわち、感光性組成物は(B1)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及び(B3)ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを含有し、又は(B1)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、(B2)ヒドロキシケトン系光重合開始剤及び(B3)ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを含有することが好ましい。この場合、感光性組成物から形成される塗膜を部分的に露光してから現像する場合、露光されない部分の硬化が抑制されることで、解像性が特に高くなる。このため感光性組成物の硬化物で非常に微細なパターンを形成することが可能となる。特に、感光性組成物から多層プリント配線板の層間絶縁層を作製すると共にこの層間絶縁層にスルーホールのための小径の穴をフォトリソグラフィー法で設ける場合、小径の穴を精密且つ容易に形成することが可能となる。
【0118】
(B3)ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの割合は、(B1)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましい。(B3)ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが0.5質量部以上であると、解像性が特に高くなる。また、(B3)ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが20質量部以下であると、感光性組成物の硬化物の電気絶縁性を(B3)ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが阻害しにくい。
【0119】
(B)光重合開始剤の(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対する割合は、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、1質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
【0120】
(B)光重合開始剤の感光性組成物全体(固形分)に対する割合は、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0121】
((C)光重合性化合物)
(C)光重合性化合物は、感光性組成物に光硬化性を付与できる。(C)光重合性化合物は、通常、エチレン性二重結合を有している。(C)光重合性化合物がエチレン性二重結合を有することで、(C)光重合性化合物同士、及び/又は(C)光重合性化合物とエチレン性二重結合を有する(A)樹脂との間で架橋反応させることができ、被膜に架橋構造を形成することができる。エチレン性二重結合を含む基としては、例えばビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。(C)光重合性化合物としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0122】
(C)光重合性化合物は、三官能の化合物、すなわち一分子中に不飽和結合を3つ有する化合物を含むことが好ましい。この場合、感光性組成物から形成される被膜を露光・現像する場合の解像性が向上すると共に、感光性組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。三官能の化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0123】
(C)光重合性化合物は、プレポリマーを含んでいてもよい。プレポリマーとしては、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類などが挙げられる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類としては、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0124】
(C)光重合性化合物の(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対する割合は、1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上45質量部以下であることがより好ましく、21質量部以上40質量部以下であることがさらに好ましい。
【0125】
(C)光重合性化合物の感光性組成物全体(固形分)に対する割合は、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0126】
((D)エポキシ樹脂)
(D)エポキシ樹脂は、感光性組成物に熱硬化性を付与できる。(D)エポキシ樹脂は、結晶性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。この場合、感光性組成物の現像性を向上させることができる。また(D)エポキシ樹脂は、非晶性エポキシ樹脂をさらに含有してもよい。ここで「結晶性エポキシ樹脂」は融点を有するエポキシ樹脂であり、「非晶性エポキシ樹脂」は融点を有さないエポキシ樹脂である。
【0127】
結晶性エポキシ樹脂としては、例えば1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日鉄ケミカル&マテリアル社製の品番YDC-1312)、ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として三菱ケミカル社製の品番YX-4000)、ジフェニルエーテル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日鉄ケミカル&マテリアル社製の品番YSLV-80DE)、ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日鉄ケミカル&マテリアル社製の品番YSLV-70XY、YSLV-80XY)、テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日本化薬社製の品番GTR-1800)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として後述の式(7)で示される構造を有するエポキシ樹脂)などが挙げられる。
【0128】
結晶性エポキシ樹脂は、1分子中に2個のエポキシ基を有することが好ましい。
【0129】
結晶性エポキシ樹脂は150~300g/eqのエポキシ当量を有することが好ましい。このエポキシ当量は、1グラム当量のエポキシ基を含有する結晶性エポキシ樹脂のグラム質量である。結晶性エポキシ樹脂は融点を有する。結晶性エポキシ樹脂の融点としては、例えば70℃以上180℃以下である。
【0130】
(D)エポキシ樹脂は、融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。この場合、感光性組成物のアルカリ現像性がより向上する。融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂としては、例えばビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0131】
非晶性エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC社製の品番EPICLON N-775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC社製の品番EPICLON N-695)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC社製の品番EPICLON N-865)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱ケミカル社製の品番jER1001)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱ケミカル社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC社製の品番EPICLON EXA-1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬社製の品番NC-3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として日鉄ケミカル&マテリアル社製の品番ST-4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC社製の品番EPICLON HP-4032、EPICLON HP-4700、EPICLON HP-4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC社製の品番EPICLON HP-820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP-7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産社製の品番ADAMANTATE X-E-201)、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱ケミカル社製の品番YL7175-500、YL7175-1000;DIC社製の品番EPICLON TSR-960、EPICLON TER-601、EPICLON TSR-250-80BX、EPICLON 1650-75MPX、EPICLON EXA-4850、EPICLON EXA-4816、EPICLON EXA-4822、EPICLON EXA-9726;日鉄ケミカル&マテリアル社製の品番YSLV-120TE)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例としてカネカ社製の品番MX-156)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてカネカ社製の品番MX-136)などが挙げられる。
【0132】
(D)エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の当量の合計は、(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基1当量に対して、0.7倍以上2.5倍以下であることが好ましく、0.7倍以上2.3倍以下であることがより好ましく、0.7倍以上2.0倍以下であることがさらに好ましい。また、結晶性エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の当量の合計が、(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基1当量に対して、0.1倍以上2.0倍以下であることが好ましく、0.2倍以上1.9倍以下であることがより好ましく、0.3倍以上1.5倍以下であることがさらに好ましい。
【0133】
感光性組成物全体(固形分)に対する(D)エポキシ樹脂の割合は、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、8質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0134】
感光性組成物は、(D)エポキシ樹脂に加えて、エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤、硬化促進剤などを含有してもよい。
【0135】
硬化剤としては、例えばイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;オニウム塩などが挙げられる。感光性組成物が硬化剤を含有する場合、感光性組成物全体(固形分)に対する硬化剤の割合は、通常1質量%以上50質量%以下である。
【0136】
((E)有機フィラー)
(E)有機フィラーは、感光性組成物にチクソ性を付与することができる。(E)有機フィラーとしては、例えば(E1)カルボキシル基を有する有機フィラーなどが挙げられる。(E1)有機フィラーのカルボキシル基のうち、一部のカルボキシル基は(E1)有機フィラーの表面に露出しているとよい。
【0137】
(E1)有機フィラーは、感光性組成物中で高い相溶性を有し、より強いチクソ性を感光性組成物に付与することができる。また、感光性組成物がカルボキシル基を有する(E1)有機フィラーを含有することで、感光性組成物のアルカリ現像性をより向上させることができる。
【0138】
感光性組成物が(E1)有機フィラーを含有することで、感光性組成物の流動性に起因する硬化物層の不均一性を低減することができる。これにより、硬化物層の厚みを均一にさせ易くすることができる。この場合、感光性組成物はレオロジーコントロール剤を含有しなくてもよい。
【0139】
(E1)有機フィラーのカルボキシル基は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸モノマーを重合又は架橋させることで、その生成物における側鎖として形成される。カルボン酸モノマーは、例えばカルボキシル基と重合性不飽和二重結合とを有する。(E1)有機フィラーは、感光性組成物のチクソ性を高めることにより、感光性組成物の安定性(特に保存安定性)を向上させる。さらに、(E1)有機フィラーは、カルボキシル基を有するため、感光性組成物を含有する硬化物の現像性を向上させると共に、結晶性エポキシ樹脂との相溶性を向上させて感光性組成物中での結晶化を防ぐことができる。(E1)有機フィラーのカルボキシル基含有量は、例えば(E1)有機フィラーの酸価が、酸-塩基滴定による酸価で1mgKOH/g以上60mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が1mgKOH/gより小さいと感光性組成物の安定性及び硬化物の現像性が低下する場合がある。酸価が60mgKOH/gより大きいと硬化物の耐湿信頼性が低下する場合がある。(E1)有機フィラーの酸価は、3mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0140】
(E1)有機フィラーは、水酸基を有することが好ましい。この水酸基のうち、一部の水酸基が、(E1)有機フィラーの表面で露出しているとよい。このように、(E1)有機フィラーが水酸基を有することで、感光性組成物中における(E1)有機フィラーの分散性がさらに向上する。
【0141】
(E1)有機フィラーは、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましい。(E1)有機フィラーの平均一次粒子径が1μm以下であることで、感光性組成物のチクソ性が効率よく高められる。そのため、感光性組成物の安定性がより向上する。また、(E1)有機フィラーの平均一次粒子径が1μm以下であることで、硬化物に形成される粗面の粗さを細かくすることができる。これにより、硬化物の表面積が増加することに伴ってアンカー効果が大きくなり、粗面とメッキ層との密着性をより向上させることができる。(E1)有機フィラーの平均一次粒子径の下限は、特に限定されないが、例えば0.001μm以上である。(E)有機フィラーの平均一次粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により、D50として測定される。(E1)有機フィラーの平均一次粒子径は、0.4μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。この場合、硬化物に形成される粗面の粗さをより細かくすることができる。加えて、露光時の散乱を感光性組成物中で抑えることができ、これにより、感光性組成物の解像性をより向上させることができる。
【0142】
(E1)有機フィラーは、感光性組成物中において、最大粒子径が1.0μm未満で分散されていることが好ましく、0.5μm未満で分散されていることがより好ましい。(E)有機フィラーの最大粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により、又は硬化物を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで測定される。(E1)有機フィラーは、感光性組成物中において凝集することがある(例えば二次粒子を形成し得る)が、その場合、最大粒子径は凝集後の粒子のサイズを意味する。分散状態での(E1)有機フィラーの最大粒子径が前記範囲であると、硬化物に形成される粗面の粗さをより細かくすることができる。加えて、露光時の散乱が感光性組成物中で抑えられ、これにより、感光性組成物の解像性がより向上する。また、感光性組成物の安定性がより向上する。(E1)有機フィラーの平均一次粒子径が0.1μm以下であり、(E1)有機フィラーが0.5μm以下の粒子径で分散されていることが特に好ましい。なお、粒子の凝集が起こった場合、最大粒子径は、通常、平均一次粒子径よりも大きい。
【0143】
(E1)有機フィラーは、ゴム成分を含むことが好ましい。また、(E1)有機フィラーは、ゴム成分のみを含むことがより好ましい。ゴム成分は、感光性組成物の硬化物に柔軟性を付与できる。ゴム成分は、樹脂により構成され得る。ゴム成分としては、例えば架橋アクリルゴム、架橋NBR、架橋MBS、架橋SBRなどが挙げられる。この場合、ゴム成分が感光性組成物の硬化物に優れた柔軟性を付与することができる。さらに、硬化物層の表面に、より適度な粗面を付与することができる。ここで、ゴム成分は、前記重合体を構成するモノマーを共重合させる際に形成される架橋構造を含む。NBRは、一般的に、ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体であり、ニトリルゴムに分類される。MBSは、一般的に、メチルメタアクリレート、ブタジエン及びスチレンの3成分から形成される共重合体であり、ブタジエン系ゴムに分類される。SBRは、一般的に、スチレンとブタジエンとの共重合体であり、スチレンゴムに分類される。(E1)有機フィラーの具体例として、JSR社製の品番XER-91-MEK、品番XER-32-MEK、品番XSK-500等が挙げられる。これらの(E1)有機フィラーのうち、XER-91-MEKは、平均一次粒子径0.07μmのカルボキシル基を有する架橋ゴム(NBR)であり、この架橋ゴムの含有割合15重量%のメチルエチルケトン分散液として提供され、その酸価は10.0mgKOH/gである。XER-32-MEKは、カルボキシル基変性水素化ニトリルゴムのポリマー(線状粒子)を、分散液全量に対して含有量17重量%で、メチルエチルケトン中で分散させた分散液である。また、XSK-500は、平均一次粒子径0.07μmのカルボキシル基及び水酸基を有する架橋ゴム(SBR)であり、この架橋ゴムの含有割合15重量%のメチルエチルケトン分散液で提供される。このように、(E1)有機フィラーは、分散液として、感光性組成物に配合されてもよい。すなわち、ゴム成分は、分散液として、感光性組成物に配合され得る。また、(E1)有機フィラーの具体例として、前記の他に、JSR社製の品番XER-92等が挙げられる。
【0144】
(E1)有機フィラーは、ゴム成分以外の粒子成分を含んでいてもよい。このような(E1)有機フィラーとしては、例えばカルボキシル基を有するアクリル樹脂微粒子、カルボキシル基を有するセルロース微粒子などが挙げられる。カルボキシル基を有するアクリル樹脂微粒子としては、例えば非架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子、架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子などが挙げられる。非架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子の具体例として、日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製の品番FS-201(平均一次粒子径0.5μm)が挙げられる。架橋スチレン・アクリル樹脂微粒子の具体例として、日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製の品番MG-351(平均一次粒子径1.0μm)、品番BGK-001(平均一次粒子径1.0μm)が挙げられる。また、(E1)有機フィラーは、前述のゴム成分、アクリル樹脂微粒子及びセルロース微粒子以外の他の粒子成分を含んでいてもよい。
【0145】
(E)有機フィラーは、(E1)有機フィラー以外の有機フィラーをさらに含んでいてもよい。(E1)有機フィラー以外の有機フィラーは、カルボキシル基を有さなくてもよい。(E1)有機フィラー以外の有機フィラーは、平均一次粒子径が1μmより大きくてよい。ただし、チクソ性を効率よく得る観点、硬化物に粗面を付与する観点、及び感光性組成物の解像性を向上させる観点から、感光性組成物は、(E1)有機フィラー以外の有機フィラーを含まないことが好ましい。
【0146】
(E)有機フィラー全体に対する(E1)有機フィラーの割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。この場合、感光性組成物の安定性がさらに向上する。また、この場合、感光性組成物の硬化物に粗面をさらに付与しやすくなる。これにより、銅メッキ密着性をより向上させることができる。
【0147】
感光性組成物全体(固形分)に対する(E)有機フィラーの割合は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0148】
((F)無機フィラー)
感光性組成物は、(F)無機フィラーを含有することが好ましい。この場合、(F)無機フィラーは、感光性組成物の硬化物よりも、表面粗化工程で用いられる酸化剤で腐食され難い傾向にある。このため、(F)無機フィラーを含有する硬化物の表面を酸化剤で粗化する場合、硬化物の表面付近に酸化剤で腐食されやすい箇所と腐食されにくい箇所が存在するため、硬化物の表面を酸化剤で適度に腐食させることができる。これにより、メッキ処理に適した粗面を硬化物に付与することができ、銅メッキ密着性をより向上させることができる。
【0149】
(F)無機フィラーとしては、例えば硫酸バリウム、結晶性シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。(F)無機フィラーが酸化チタン、酸化亜鉛等の白色材料を含む場合、感光性組成物及びその硬化物を白色材料により白色化させることができる。
【0150】
感光性組成物中の(F)無機フィラーの割合は適宜設定されるが、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して1質量部以上300質量部以下であることが好ましく、3質量部以上200質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。(F)無機フィラーの感光性組成物全体(固形分)に対する割合は、45質量%未満であることが好ましく、40質量%未満であることがより好ましく、35質量%未満であることがさらに好ましく、20質量%未満であることが特に好ましい。
【0151】
(F)無機フィラーは、シリカ(f)を含むことが好ましい。シリカ(f)は表面にシラノール基を有する。このシラノール基は酸化剤で変性されると考えられる。このため、シリカ(f)の表面に酸化剤で粗面を付与することができる。酸化剤で感光性組成物の硬化物を腐食させる場合、硬化物の表面においてシリカ(f)が位置する難腐食箇所であっても、その難腐食箇所を酸化剤で適度に腐食させることができる。これにより、よりメッキ処理に適した粗面を硬化物に付与することができ、銅メッキ密着性をより向上させることができる。
【0152】
シリカ(f)は、平均粒子径が1μm以下であることが好ましい。シリカ(f)の平均粒子径が1μm以下であることで、硬化物に形成される粗面の粗さを細かくすることができる。これにより、硬化物の表面積が増加することに伴って、アンカー効果が大きくなり、粗面とメッキ層との密着性をより向上させることができる。シリカ(f)の平均粒子径の下限は、特に限定されないが、例えば0.001μm以上である。(F)無機フィラーの平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により、D50として測定される。シリカ(f)の平均粒子径は0.1μm以下であることがより好ましい。この場合、硬化物に形成される粗面の粗さを特に細かくすることができる。加えて、露光時の散乱を感光性組成物中で抑えることができ、これにより、感光性組成物の解像性をより向上させることができる。
【0153】
(F)無機フィラー全体に対するシリカ(f)の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることがとくに好ましい。
【0154】
感光性組成物全体(固形分)に対する(F)無機フィラー(固形分)の割合は、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0155】
((G)添加剤)
(G)添加剤としては、例えばシランカップリング剤、メラミン又はその誘導体、光重合促進剤、増感剤、レベリング剤、チクソトロピー剤、重合禁止剤、ハレーション防止剤、難燃剤、消泡剤、酸化防止剤、界面活性剤、高分子分散剤、シリコーン、アクリレート等の共重合体などが挙げられる。
【0156】
感光性組成物はシランカップリング剤を含有することで、(F)無機フィラーの分散性を向上させることができる。また、感光性組成物の解像性を向上させることもできる。
【0157】
シランカップリング剤は、ケイ素原子を含有し、かつ-OCH3基、-OC2H5基、-OCOCH3基などの加水分解性基を2~4個有する化合物である。シランカップリング剤は加水分解性基の他に、アミノ基、エポキシ基、ビニル(アリル)基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネート基、スルフィド基等の反応性基、又はメチル基を含有してもよい。
【0158】
シランカップリング剤としては、例えば、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジロキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、ジエトキシ(3-グリシジロキシプロピル)メチルシラン等のエポキシ類、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のビニル化合物、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等のアリル化合物、p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル化合物、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート類、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド類、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン等のメルカプト化合物類、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド類、オルトケイ酸テトラエチル、メチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0159】
感光性組成物がシランカップリング剤を含有する場合、感光性組成物全体(固形分)に対するシランカップリング剤の割合は、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0160】
感光性組成物はメラミン又はその誘導体を含有することで、感光性組成物から作製される層間絶縁膜と銅などの金属との間の密着性を向上させることができる。また、層間絶縁膜における耐メッキ性を向上させることができる。
【0161】
感光性組成物がメラミン又はその誘導体を含有する場合、(A)カルボキシル基含有樹脂に対するメラミン又はその誘導体の割合は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。感光性組成物全体(固形分)に対するメラミン又はその誘導体の割合は、0.05質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
【0162】
感光性組成物は、有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、感光性組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
【0163】
有機溶剤としては、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級又は多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;ジアルキルグリコールエーテル類などが挙げられる。
【0164】
感光性組成物が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の量は、感光性組成物から形成される塗膜を乾燥させる際に速やかに有機溶剤が揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。感光性組成物全体(固形分)に対する有機溶剤の割合は、0質量%以上99.5質量%以下であることが好ましく、15質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
【0165】
<層間絶縁膜>
本実施形態の層間絶縁膜は、前述の層間絶縁膜の製造方法により製造される。本実施形態の層間絶縁膜は、前述の層間絶縁膜の製造方法により得られるので、銅メッキ密着性に優れる。
【0166】
また、本実施形態の層間絶縁膜は、前述した感光性組成物の3mW/cm2以上300mW/cm2以下の照度の320nm以上390nm以下の波長の紫外線、及び140℃以上の温度の熱による硬化物を含むことが好ましい。
【実施例】
【0167】
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。
【0168】
[合成例1]((A1)ビスフェノールフルオレン骨格含有樹脂の合成)
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(下記式(A)で示され、式(A)中のR1~R8がすべて水素原子である、エポキシ当量250g/eqのエポキシ化合物)250質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート140質量部を加えた。これらをエアバブリング下で攪拌することで混合物を調製した。この混合物をフラスコ内でエアバブリング下で攪拌しながら、115℃で12時間加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。続いて、フラスコ内の中間体の溶液に1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.8質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート38.7質量部を投入した。これらをエアバブリング下で攪拌しながら115℃で6時間加熱し、さらに、エアバブリング下で攪拌しながら80℃で1時間加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂A-1の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂A-1の多分散度(Mw/Mn)は2.15であり、重量平均分子量(Mw)は3096であり、酸価は105mgKOH/gであった。
【0169】
【0170】
[合成例2]((A2)ビフェニルノボラック骨格含有樹脂の合成)
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、品番NC-3000-H、エポキシ当量288g/eq)288質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート155質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルフォスフィン3質量部を加えて、混合物を調製した。この混合物を、フラスコ内で、エアバブリング下で攪拌しながら、115℃の温度で12時間加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
続いて、フラスコ内の中間体の溶液に、テトラヒドロフタル酸無水物91.2質量部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート90質量部を投入し、エアバブリング下で攪拌しながら、90℃で4時間加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂A-2の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂A-2の重量平均分子量は8120、酸価は76mgKOH/gであった。
【0171】
(2)感光性組成物の調製
下記表1に示す成分を、粉状の成分は予めカルボキシル基含有樹脂に三本ロールを用いて分散させた後、すべての成分をフラスコ内で、35℃で攪拌混合することで、感光性組成物を得た。
表の「組成」に示される成分の詳細は次の通りである。
-(A)カルボキシル基含有樹脂
・樹脂A-1:前記合成した(A1)ビスフェノールフルオレン骨格含有樹脂(65質量%溶液)。
・樹脂A-2:前記合成した(A2)ビフェニルノボラック骨格含有樹脂(65質量%溶液)
-(B)光重合開始剤
・光重合開始剤A:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド。BASF社製。品番Irgacure TPO。
・光重合開始剤B:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン。BASF社製。品番Irgacure 184。
・光重合開始剤C:4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン。
-(C)光重合性化合物
・光重合性化合物A:トリメチロールプロパントリアクリレート。
-(D)エポキシ樹脂
・エポキシ樹脂A:ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂。日鉄ケミカル&マテリアル社製。品番YSLV-80XY。融点75~85℃。エポキシ当量192g/eq。
・エポキシ樹脂Bの溶液:長鎖炭素鎖含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、品番EPICLON EXA-4816、液状樹脂、エポキシ当量410g/eq)を固形分90質量%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させた溶液(固形分90%換算のエポキシ当量は455.56g/eq)。
-(E)有機フィラー
・有機フィラーAの分散液:平均一次粒子径0.07μmの架橋ゴム(NBR)を、分散液全量に対して含有量15重量%で、メチルエチルケトン中に分散させた分散液(JSR社製、品番XER-91-MEK、酸価10.0mgKOH/g)。
-(F)無機フィラー
・無機フィラーAの分散液:粒子径12nmのシリカゾルを、分散液全量に対して含有量30質量%で、メチルエチルケトン中に分散させた分散液(日産化学株式会社製の品番MEK-EC-2130Y)。
・無機フィラーBの分散液:粒子径45nmのシリカゾルを、分散液全量に対して含有量30質量%で、メチルエチルケトン中に分散させた分散液(日産化学株式会社製の品番MEK-AC-4130Y)。
-(G)添加剤
・添加剤A:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
・添加剤B:メラミン。
-希釈溶剤としてメチルエチルケトンを適量使用した。
【0172】
【0173】
(3)テストピースの作製
下記表2に示す感光性組成物を用いて、テストピースを、次のように作製した。
感光性組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケーターで塗布してから、80℃で5分加熱した後に、95℃で20分加熱することで乾燥させることにより、フィルム上に厚み20μm、35μm、及び60μmのドライフィルムを形成した。
厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR-4タイプ)を用意した。このガラスエポキシ銅張積層板にサブトラクティブ法で導体配線としてライン幅/スペース幅が50μm/50μmであるくし型電極を形成し、これによりコア材を得た。このコア材の導体配線における厚み1μm程度の表層部分を、エッチング剤(メック株式会社製の有機酸系マイクロエッチング剤、品番CZ-8101)で溶解除去することにより、導体配線を粗化した。このコア材の一面全面にドライフィルムを真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件は、0.5MPa、80℃、1分間とした。これにより、コア材上に、前記ドライフィルムからなる被膜を形成した。この被膜に、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上から、直径50μm、70μm及び100μmの円形形状を含むパターンの非露光部を有するネガマスクを直接当てがった状態で、ネガマスクを介して種々の露光法により、被膜に紫外線を照射した。露光後の被膜に現像処理を施した。
現像処理にあたっては、被膜に30℃の1質量%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。続いて、被膜に純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。これにより、被膜における露光されていない部分を除去して、被膜に穴を形成した。
なお、露光後、現像前に、ドライフィルム(被膜)からポリエチレンテレフタレート製のフィルムを剥離した。
続いて、下記表2に示す温度及び時間にて被膜を加熱した。また、以下に示す実施例又は参考例においては、後照射工程又は前照射工程を、以下に示す条件により行った。
・実施例18における後照射工程は、高圧水銀ランプを用い、照度906mW/cm2、照射量2000mJ/cm2で照射を行った。
・実施例19における前照射工程は、高圧水銀ランプを用い、照度12mW/cm2、照射量500mJ/cm2で照射を行った。
・参考例1における前照射工程(※1)は、高圧水銀ランプを用い、照度906mW/cm2、照射量1000mJ/cm2で照射を行った。(※1)は、前照射工程の照度の範囲外であることを示す。
・参考例2における前照射工程(※2)は、高圧水銀ランプを用い、照度906mW/cm2、照射量2000mJ/cm2で照射を行った。(※2)は、前照射工程の照度の範囲外であることを示す。
このようにして、各実施例、比較例及び参考例のテストピースを得た。
【0174】
(4)評価
[銅メッキ密着性評価]
前記得られたテストピースについて、硬化物からなる層の外表面を、めっき処理の前工程において、一般的なデスミア処理に基づいた下記手順で粗化させた。デスミア用膨潤液として市販されている膨潤処理液(アトテックジャパン社製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP)を用いて膨潤処理を70℃で15分間行い、硬化物の表面を膨潤させた。そして、この膨潤された表面に対して湯洗を行った。続いて、過マンガン酸カリウムを含有し、デスミア液として市販されている酸化剤(アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトCP)を用いて粗化処理を70℃で10分間行い、湯洗後の表面を粗化した。このように粗化された硬化物表面に対して、湯洗を行い、さらに、この硬化物表面におけるデスミア液の残渣を中和液(アトテックジャパン社製のリダクションソリューション・セキュリガントP)を用いて40℃で5分間施すことにより、残渣を除去した。そして、中和後の硬化物表面を水洗した。
前記粗化処理を行ったテストピースについて、硬化物からなる層に、市販の薬液を用いてテストピースの粗面に無電解銅メッキ処理で初期配線を形成した。この初期配線が設けられたテストピースを150℃で1時間加熱した。次に、電解銅メッキ処理により、2A/dm2の電流密度で、市販の薬液から初期配線に厚さ33μmの銅を直接析出させ、続いて銅を析出させたテストピースを180℃で30分間加熱して銅メッキ層を形成した。このようにして、形成された銅メッキ層と、テストピースにおける硬化物との密着性を次の評価基準で評価した。
ここで、無電解銅メッキ処理後、及び電解銅メッキ処理後の両方の加熱時にテストピースにブリスターが確認されない場合、銅メッキ層と硬化物との密着強度を下記の手順で評価した。密着強度は、JIS C6481に準拠して測定した。なお、銅メッキ層の密着安定性を確認するため、試験は3回おこなった。
A:無電解銅メッキ処理後の加熱時にブリスターが確認されず、電解銅メッキ処理後の加熱時でもブリスターが確認されなかった。そして、3回の試験結果の平均値により銅の密着強度を求め、値は0.7kN/m以上であった。
B:無電解銅メッキ処理後の加熱時にブリスターが確認されず、電解銅メッキ処理後の加熱時でもブリスターが確認されなかった。そして、3回の試験結果の平均値により銅の密着強度を求め、値は0.5kN/m以上0.7kN/m未満であった。
C:無電解銅メッキ処理後の加熱時にブリスターが確認されず、電解銅メッキ処理後の加熱時でもブリスターが確認されなかった。そして、3回の試験結果の平均値により銅の密着強度を求め、値は0.5kN未満であった。
D:無電解銅メッキ処理後の加熱時、又は電解銅メッキ処理後の加熱時にブリスターが確認されたものがあった。
【0175】
[絶縁信頼性評価]
前記得られたテストピースにおける導体配線(くし型電極)にDC30Vのバイアス電圧を印加しながら、テストピースを130℃、85%R.H.の試験環境下に100時間曝露した。この試験環境下における硬化物からなる層のくし型電極間の電気抵抗値を常時測定し、その結果を次のように評価した。
A:試験開始時から100時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に106Ω以上を維持した。
B:試験開始時から70時間経過するまでは電気抵抗値が常に106Ω以上を維持したが、試験開始時から100時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
C:試験開始時から50時間経過するまでは電気抵抗値が常に106Ω以上を維持したが、試験開始時から70時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
D:試験開始時から50時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
【0176】
[解像性評価]
前記得られたテストピースにおける硬化物からなる層に形成された開口部を観察し、その結果を次のように評価した。
A:直径50μmの開口部が形成されている。
B:直径70μmの開口部が形成されているが、直径50μmの開口部は形成されていない。
C:直径100μmの開口部が形成されているが、直径70μmの開口部は形成されていない。
D:直径100μmの開口部が形成されていない。
【0177】
【0178】
図1Aは実施例13の、
図1Bは比較例1のそれぞれ表面粗化工程後の被膜の電子顕微鏡写真である。実施例の製造方法では、被膜にアンカー効果の高い粗化形状が形成されたことがわかる。比較例の製造方法では、アンカー効果が得られる粗化形状を得ることはできなかった。