(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ダイナミック化粧製品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20231109BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20231109BHJP
A45D 34/00 20060101ALI20231109BHJP
A45D 40/00 20060101ALI20231109BHJP
A44C 5/00 20060101ALI20231109BHJP
A44C 9/00 20060101ALI20231109BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q1/02
A45D34/00 510Z
A45D40/00 Z
A44C5/00 Z
A44C9/00
A61K8/02
(21)【出願番号】P 2021528016
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 IB2019056267
(87)【国際公開番号】W WO2020021443
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523119665
【氏名又は名称】ハイドラインク・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】HYDRAINK S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】リッカルド・ダレッサンドリ
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-500391(JP,A)
【文献】特表2008-515863(JP,A)
【文献】特表2008-515790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D33/00-40/30
A45C 5/00
A44C 1/00- 3/00
A44C 7/00-27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合に磁気着色微粒子(10)を含むダイナミック化粧
料の製品(1)であって、
内部に前記ダイナミック化粧料を包含している交換可能なカプセルを含む詰め替え(11)と、
前記詰め替え(11)が挿入されるケーシング(12)と、
前記ダイナミック化粧料を塗布する外側ブラシ(13)と、
一端において前記ケーシング(12)に接続され、他端において前記外側ブラシ(13)に接続され、前記カプセルを貫通する固定部分を備える支持体(14)と、
を備え、
磁場の作用下で前記磁気着色微粒子(10)の配向が変更することによって、前記ダイナミック化
粧料の色が変化し、
前記ケーシング(12)は、前記ダイナミック化
粧料が一旦使い切った後、
交換した前記カプセルを含む前記詰め替え(11)によって再補充されるように構成され、
前記ケーシング(12)は、全てが磁性側面である側面を有し、前記側面は
前記磁場を発生する磁気源であ
り、
前記磁気源は、前記ケーシング(12)と通信するコンピュータアプリケーション(2)によって作動される、
ことを特徴とする、ダイナミック化粧
料の製品(1)。
【請求項2】
前記磁気着色微粒子(10)は、
微粒子の周期的配列を有する酸化鉄のコロイド状ナノ結晶であ
り、
前記磁場の作用により、前記微粒子の前記周期的配列の配向が変化する、
請求項1に記載のダイナミック化粧
料の製品(1)。
【請求項3】
前記詰め替え(11)に含まれる
前記ダイナミック化粧料は、
前記固定部分により前記カプセルを貫通することによって、取り外し可能で洗浄可能な
前記支持体(14)
を通って、前記外側ブラシ(13)に
到達する、
請求項1又は2に記載のダイナミック化粧
料の製品(1)。
【請求項4】
前記ケーシング(12)は、その内部で直接に色の変化を実行するために、磁場エミッタと、無線アンテナと、電子部品とを備えている、
請求項1又は2に記載のダイナミック化粧
料の製品(1)。
【請求項5】
前記ケーシング(12)は、磁力によって互いに結合された複数のケーシング(12)を含み、前記複数のケーシング(12)の形状の全ての組み合わせを形成するように構成されている、
請求項1又は2に記載のダイナミック化粧
料の製品(1)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の前記磁気着色微粒子(10)を含む前記ダイナミック化粧
料の製品(1)の色を変化させる方法であって、
前記ダイナミック化
粧料を塗布するステップ(a)と、
外部のコンピュータシステムによって
前記磁気源を作動させ、磁場を生成させるステップ(b)と、
コンピュータアプリケーション(2)を作動して、取得する色を選択し、
前記磁場の極性と強度を
前記ダイナミック化粧
料の製品(1)のケーシング(12)に伝達するステップ(c)と、
を含む、方法。
【請求項7】
前記磁気源は、コンピュータアプリケーション(2)によって作動される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記磁気源は、電子デバイス(3)又は
前記ダイナミック化粧
料の製品(1)の
前記ケーシング(12)である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(a)の前に、前記ダイナミック化粧
料の製品(1)のカプセルが
前記ケーシング(12)の内部に挿入される、
請求項6から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ダイナミック化粧
料の製品(1)と、コンピュータアプリケーション(2)と、磁気源とを含む、請求項6から9のいずれか1項に記載の方法を適用するためのシステム。
【請求項11】
前記コンピュータアプリケーション(2)は、スマートフォン又はスマートウォッチ用のモバイルアプリケーションである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記磁気源は、着用可能な電子デバイス(3)で
ある、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記磁気源は、前記ダイナミック化粧
料の製品(1)の
前記ケーシング(12)である、請求項10から12のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧分野における革新的な化粧製品及び当該製品を実施するための方法に関する。特に、この化粧製品は、磁気着色微粒子(magneto-chromatic microspheres)に基づく化粧製品の創作を含む新技術に基づいたものであって、磁気着色微粒子は、製品が適用された肌の表面を作用プラットフォームに変換することができる。
【0002】
したがって、本発明は、(コンピュータアプリケーションによって制御される)電子デバイスによって、及び製品を実施するための方法自身によって外部から印加された磁力に応答して、色が変化する材料を組み込んだ化粧製品に関する。
【背景技術】
【0003】
知られているように、化粧には古代の起源があり、現在私達が利用できる全ての化粧製品は、何世紀にもわたる歴史、発見、伝統の結果であり、時間とともに進化し、科学、特に医学と徐々に横断している。美の崇拝又は個人的な美的ケアは古代エジプトにおいて既に広まっていた。クレオパトラ時代の人々は、幅広い化粧製品を開発し、彼らの文化におけるそれら化粧製品の重要性を文書化した先駆的な者であった。エジプト人はコール(Kohl)を使用していた。コールは、焼けたアーモンド、鉛及び銅、ミネラル、灰及び黄土を研磨して得られた濃い色の粉末である。加工した物質がスティックで目に適用され、アーモンドの外観を与えることで非常に魅力的であると考えられていた。しかしながら、単なる化粧でなく、古代エジプト人、特に伝説的なネフェルティティのような美しい女王の濃い化粧は、目をカラフルで魅惑的且つ華やかにするだけでなく、本当の予防と治療の効果を有していた。化粧で実際に感染から目を保護したためである。
【0004】
1世紀から既に、ローマ人でさえまつげ及び眉毛の化粧にコールを使用していた。紀元前3世紀後半のローマの女性は、重なり合うカールで形成した非常に手の込んだ髪型のロングヘアを被り始めた。染料がよく使用され、人気のある色は赤みがかった金髪であった。彼女達は、唇が黄土の粉末を用いて赤く染められ、顔及び腕が白色染料又はチョークで白く染められ、目の輪郭がすすで黒く染められていた。肌を白く、柔らかくするために、ドンキーミルクが使用され、その鮮度を出すために、有毒な酸化鉛をベースにしたクリームであるセルッサ(cerussa)を振りかけた。ビクトリア女王時代に、女優達が顔の化粧をし始めた。女性は、透けて見える肌で現れるために思いきった手段をとって、鉛やヒ素などの成分を使用していた。太陽光を浴びることさえできず、肌が若くて健康であるために、ベール(veil)及び傘によって肌を保護する必要があるためである。オートミール、蜂蜜、卵黄、バラなどの天然成分が化粧製品を取り替えた。眉毛をリデザインし、顔とデコルテに米の粉が使用された。
【0005】
1930年代に、化粧は全ての社会階級の女性に普及された。輪郭がファンデーションで自然に覆われ、その中で口がハートの形に色付けられていた。眉毛も目の形も、細くてたるんでいて、それが、典型的な物憂げな容姿をするのに役に立つ。
【0006】
70年代の化粧は更に進化した。目元にアクセントが残り、つけまつげが現れた。唇は真珠光沢及び淡い色合いで色付けられる。現代のこれらの最初の化粧製品に使用される成分は、グリセリン、種子油、ラノリン、蜜蝋などの野菜である。しかし、一時的には、成長する石油産業は、ヴァセリンオイル、ヴァセリンストリーマー、パラフィンなど低コストの鉱物誘導体を提供していた。80年代には、トレンドを押さえる化粧は、強く、強調され、黒っぽい、印象的な目であった。このような目は、多層のアイライナー及び青、緑、紫の色合いの明るいアイシャドウによって形成される。ミネラルである雲母を用いて作られた金属粉末は、まぶたや体に使用して鮮やかな反射を得ることで有名になった。
【0007】
人類学は、化粧は、当初から身体イメージを装飾する機能だけでなく、さまざまな民族や人種に属するアイデンティティや文化の概念にも関係していることを教示している。いくつか例を挙げると、例えば、ネイティブアメリカンを考えれば、彼らの典型的な衣装及びその色によって彼らが特定の部族に属することが認められる。また、インドの女性は通常額を被って彼女達の新しいステータスを世界に伝えている。先住民族は休暇中に更に化粧する。これら全ての場合において、化粧は、他の人と差別化するという意味を持つ強いコミュニケーションの形態である。
【0008】
現在、私達の世界での生き方が変わったが、この意味はそのまま維持されている。したがって、この観点から、アフリカの部族にとっても、現在及びこれからの10代の若者にとっても、化粧は、非常によく似たコミュニケーション機能を持っている。
【0009】
最先端技術には、異なる化学形態で作られた、化粧ファミリーに属するいくつかの化粧組成物が存在する。実際に、異なる化粧ファミリーの化粧製品は、例えば、パウダー(フリーと、コンパクトと、クックド(cooked)と、押し出し(extruded)とに分けられている)、無水物(キャスティング(castings)と、押し出しとに細分されている)、エマルジョン(水中油型と、油中水型と、水及びシリコーン型とに分けられている)、ペンシル形のもの(木製又はプラスチック製)、エナメル、及び様々なもの(油、ゲル、軟膏、ペースト、及び溶液)がある。
【0010】
パウダーは、フリーと、コンパクトと、クックド(水が除去された)と、押し出し(チョークに似ている)とがある。市場に出回っているパウダー形態の化粧製品は、パウダー、コンパクトファンデーション、アース、チーク、アイシャドウ、ボディ用パウダーがある。パウダーの適用エリアは、フェイス(パウダー、ファンデーション、チーク、アース)、まぶた(アイシャドウ)、ボディ(タルカムパウダー及びアスペルサーパウダー)である。パウダーは、カバー力、不透明な外観、接着性、吸収性、滑らかさといった特定の技術的要件を満たす必要がある。パウダーの中で、最も普及している製品の1つはもちろんフェイスパウダーである。フェイスパウダーは、一般的にミネラル由来の多孔質マルチパウダーと、表皮への塗布及び付着に特徴付けるシリコーン及び合成油との混合物である。フェイスパウダーは、更にコンパクト型パウダーとルース型パウダーとに分けられる。コンパクトフェイスパウダーが最も一般的で、着色されており、結合物質及び顔料を多く含む合成物である。フェイスパウダーはファンデーションの代わりに、特に日中の化粧の仕上げに使用される。ルースフェイスパウダーは透明又はわずかに着色されており、メイクを重くしたり、以前に塗布したファンデーションの色を変えたりすることなく、メイクを固定するために使用される。
【0011】
無水化合物は水を含まない化合物であり、キャスティングと押し出しとに区別される。リップスティック、グロス、コンシーラー、アイシャドウ、チーク、ファンデーション、アイライナー、及びマスカラは無水化合物である。溶液は、分散媒体(溶媒)内の分散成分(溶質)によって形成された均質な混合物である。化粧分野において、使用される溶液は、水性アルコール又は水であってもよく、塩、抽出物、及び他の水溶性物質を含んでもよい。物質が液体に分散して透明でクリアな溶液を形成する場合、それが可溶性物質であることを意味する。2つの液体が互いに溶解できるとき、それらは混和性であると言える。溶液系の化粧製品の例は、トニック、ローション、バルサム、洗浄料、クラッチがある。エマルジョンは、ある液体が別の液体に非常に微細に分散したものであって、混合することができないものである。2相の混合は乳化剤によって可能となる。エマルジョンの主な種類は以下を含む。
水中油型(O/W):油が水に分散しており、且つ水性部分の割合が高い。例えば、日焼け止め用、又は乾燥肌若しくは脂性肌専用のクリームに使用されるエマルジョンがある。
油中水型(W/O):水が油に分散しており、且つ油性部分の割合が高い。このタイプのエマルジョンはわずかに油性である。
【0012】
一般的に、エマルジョン形の化粧製品は、多かれ少なかれ流動性のあるクリーム(ファンデーションやプライマーなど)、マスカラ、アイライナー、口紅、及びいくつかのヘアケア製品である。
【0013】
ペンシル形の化粧製品は、唇用、目用、眉毛用など、さまざまなタイプで市場に出回っている化粧製品である。適用する顔の異なる部分には、異なる種類のペンシル形化粧製品が必要である。ペンシル形化粧製品は、芯(mine)によって異なる。目には柔らかいペンシルを、唇と眉には硬いペンシルを使用することが勧められる。
【0014】
マニキュアは、爪を着色して保護するための化粧製品である。マニキュアには、無機顔料とその他の機能性成分との混合物が含まれている。これらの物質がより濃縮されるほど、エナメル質は多かれ少なかれ帯電した色調を帯びる。
【0015】
知られているように、構造的着色は、微視的構造化された表面によって、場合によっては顔料と組み合わせて色の生成である。微視的構造化された表面は、十分薄いものであって可視光による干渉が可能である。例えば、孔雀の尾の羽は茶色に着色されているが、その微視的構造により、青、ターコイズ、及び緑の光が反射され、よく虹色になる。
【0016】
構造的着色は、英国の科学者ロバートフック及びアイザックニュートンによって最初に観察され、その原理である波の干渉は、1世紀後にトーマスヤングによって解明された。ヤングによれば、虹色は、2つ以上の薄膜表面の反射間の干渉と、光がこれらの薄膜に出入りするときの屈折とが組み合わせた結果である。そして、幾何学的に、特定の角度では、両方の表面から反射された光が建設的に干渉し、他の角度では、光が破壊的に干渉することが決められている。このように、異なる角度で異なる色が現れる。
【0017】
動物、例えば、鳥の羽や蝶の鱗では、干渉は、回折格子、選択ミラー、フォトニック結晶、結晶ファイバ、ナノチャネルマトリックス、及びそれらの構成を変えることができるタンパク質を含む一連のフォトニックメカニズムによって発生する。
【0018】
更に、酸化鉄のコロイド状ナノ結晶のクラスターの懸濁液を磁場にさらすと、コロイド状ナノ結晶クラスター(CNC、すなわち、磁気着色微粒子)が周期的マトリックスに配列し、フォトニック結晶が形成され、可視スペクトル領域、並びに紫外及び赤外領域の光を拡散させることも知られている。CNCに印加される磁場強度を調整すると、フォトニック結晶構造が変化し、回折光の波長(色)が変化する。言い換えれば、CNCによって現れる色は、CNCを含む懸濁液に印加される磁場の強さを変化させることによって制御することができる。
【0019】
色の変化の属性を有する粒子の開発、すなわち超常磁性のマグネタイト(Fe3O4)CNCの開発を記載した最初の出版物の1つは、国際出願公開WO2009/017525である。ポリアクリル酸は、磁鉄鉱表面の鉄カチオンとのカルボキシル化基の強力な配位のための界面活性剤として使用される。また、国際出願公開WO2009/017525にも、ポリアクリレートでコーティングされた超常磁性磁気熱CNCからコロイドフォトニック結晶を作製するための方法が記載されている。これらのCNCは、極性溶媒(例えば、水、又はアルカノール)中でコロイドフォトニック結晶に簡単に配列するため、磁場をかけることができる。フォトニック結晶の光学応答は迅速で、完全に可逆的である。また、国際出願公開WO2010/096203は、電荷制御剤を使用して、CNCに長距離静電反発力を生成する非極性溶媒中のコロイドフォトニック結晶に超常磁性CNCを配列する方法を教示している。この方法は、CNCが非極性溶媒溶液に溶解するように疎水性コーティングでCNCをコーティングし、界面活性剤(電荷制御剤)を非極性溶媒溶液に添加することを含み、界面活性剤は、CNC間の電荷分離を増加させ、調整可能な粒子の分離で秩序的な構造を形成する。最後に、国際出願公開WO2012/122216は、CNCがシリカ層でコーティングされている、磁気フォトニック特性を有する固定された個々のナノチェンの製造方法を記載している。磁場をCNCに印加して、CNCをフォトニックチェーンに配列し、フォトニックチェーンを更にシリカ層でコーティングする。次に、溶液に分散したり、固体基板上で乾燥したりされても保持されるように、粒子チェーンはシリカのオーバーラップによって恒久的に固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
化粧製品を作成するための材料の組成及び作成プロセスが進化したが、後者は不変のままである。実際に、化粧製品における磁気着色微粒子の応用、例えば、化粧をダイナミックに、且つインタラクティブにすることは、知られていない。しかしながら、現在、社会的コンテキストは、人々自身の異なる表現を求めるため、日中に数回、コンテキストに応じて、化粧を完全に変える必要な場合がよくある。これを実現するため、明らかに多くの時間、及び異なる色を有する多数の化粧製品が利用可能であることが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、一度適用された後に、瞬時に色を変えることができる革新的なダイナミック化粧製品、及び当該化粧製品の「ダイナミック」を実現する方法を明らかにする必要がある。このように、ユーザは、化粧を取り除いて元に戻す必要なしに、さまざまな社会的シナリオに応じて化粧の色を自動的に変更することができる。微粒子に作用する外部磁場が配向を変えると、直ちに、且つ可逆的に色を変える微視的ポリマー微粒子は、カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)の研究グループによって作製された。ビーズ(beads)又は「磁気着色微粒子」は、優れた構造安定性を備えている。また、水、アルコール、ヘキサン、更にはポリマー溶液などの様々なタイプの分散媒体との互換性が高いため、様々な化学環境で磁気的に調整可能な色を有することができる。従来の方法とは異なり、ポリマー微粒子の瞬間的かつ可逆的な色の変化は、その構造的及び本質的な特性を変えることなく行われる。このメカニズムには、これらの磁気着色微粒子を、水、アルコール、ヘキサンなどの液体、又はポリマー溶液へ分散させることを含む。これらの微粒子には、それに作用する外部磁場によって回転する酸化鉄ナノ構造が含まれているため、ポリマー粒子の色が瞬時に変化することができる。新素材で観察される色は「構造色」である。顔料ではなく、干渉効果によって引き起こされるためである。調整可能な色の変化を生成する従来の方法は、アレイの周期性又は材料の屈折率を変更させるなど、達成が困難であり、遅いプロセス技術によるものである。この新しい方法において、外部のフィールドを適切に使用して、微粒子内の周期的配列の相対的な配向を変化させることにより、色を調整する。材料が磁場にさらされると、ナノ粒子間の距離が調整されるため、可視スペクトルにおける任意の色を可視化することができる(
図1)。
【0022】
したがって、本発明の目的は、外部磁場を印加することにより、可逆色の磁気着色微粒子を含む革新的な化粧製品、すなわち、口紅、グロス、アイシャドウなどの化粧製品、及び当該化粧製品の色を変える方法、又は化粧の「ダイナミズム」を実現する方法を提供することである。そのような微粒子、例えば、チェーン内に配列されたコロイド酸化鉄ナノ結晶は、化粧製品の配合に組み込まれており、当該ナノ結晶は、化粧製品に加えられた外力によって決められる色を可視化することを可能とする。化粧製品に係る独立請求項に記載されているように、当該化粧製品は、磁気着色微粒子を含み、当該磁気着色微粒子は、化粧を再適用する必要なく、外部デバイスによって変化することで化粧の色を変えることができる。
【0023】
ダイナミック化粧製品の色を変化させる方法は、方法に係る独立請求項に記載されており、その方法を実施するためのシステムは、装置に係る独立請求項に記載されている。
【0024】
従属請求項は、本発明の特有な及び更に有利な態様を記載している。
【0025】
本発明のこれら及び他の利点について、本発明の例示的な実施形態を表す添付の図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】外部磁場が微粒子に対する影響を示す図であって、従来技術により、外部磁場が微粒子の配向を変化させて、その結果、色が変化し、可視スペクトルにおける任意の色表示を可能にすることを示す図である。
【
図3】化粧の色を作成するスマートフォン用のモバイルアプリケーション形式のコンピューターインターフェイスを示す図である。
【
図4】
図2のコンピューターインターフェイスとダイナミック化粧製品の磁気着色微粒子との間の相互作用を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、ダイナミック化粧製品の製造に関するブロック図である。
【
図6】着用可能な(wearable)電子デバイスを設けない、本発明のさらなる実施形態によるシステムの簡略図である。
【
図9A】詰め替えホルダの組み合わせの実施形態の例を示す図である。
【
図9B】詰め替えホルダの組み合わせの実施形態の例を示す図である。
【
図9C】詰め替えホルダの組み合わせの実施形態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付された図には、ダイナミック化粧製品1、特に唇用の口紅が示されている。当該口紅の色は、着用可能な電子デバイス3によって生成された磁場の印加により変更される。着用可能な電子デバイス3によって生成される磁力の極性は、コンピュータアプリケーション2、例えば、スマートフォン又はスマートウォッチのアプリケーションによって制御される。
【0028】
具体的には、着用可能な電子デバイス3は、内部に、電磁気又は機械的運動によって作動される無線通信システム及び磁場エミッタを有する。ダイナミック化粧製品1は、内部に、着色された磁気着色微粒子10を有し、磁気着色微粒子10は、それらに印加された磁場に応じて、回転して整列し、所望の色を示す。
【0029】
ダイナミック化粧製品1、例えば、口紅は、その配合には、磁気着色微粒子10以外に、
ワックス(安定性、耐性、及び皮膜形成作用を与えるため)と、様々な物質由来の油(顔料の明るさ、柔らかさ、及び分散を保証するため)とにより構成されたベースと、
口紅に色を与える天然顔料(酸化鉄)又は合成顔料(ラッカー)と、
防腐剤と、
油性成分と香水の酸敗を防ぐ抗酸化剤と、
体感効果を保証するためのテクスチャリング(texturizing)と、
機能性物質:保湿、アンチエイジング、ボリューム増加、エモリエント(emollient)と、
乳化剤(油性のものと組み合わせるために必要な水性塩基用)と、
が含まれる。
【0030】
磁気着色微粒子は、異なる粒度分布を有するパウダーの形であってもよく、又は非極性溶媒で安定化された溶液であってもよい。磁場の印加及び相対的な色の変化は、非極性溶液に添加された界面活性剤(乳化剤)が荷電され、その溶液には磁気着色微粒子が添加されることで引き起こされる。磁気着色微粒子を安定化させる無極性環境は、油相(フェーズA)によっても保証される。
【0031】
【0032】
図5のブロック図に示すように、ダイナミック化粧製品1、例えば口紅は、以下に記載されるように製造される。ワックスはオイルと一緒に溶かして75℃にし、熱した溶融物にレオロジー調整剤を溶解又は分散させ、乳化剤及び品質改良剤(texturizers)を加える(フェーズA)。顔料及び磁気着色微粒子を、沈着物の一部に分散させる(フェーズB)。分散液は直ちに3シリンダマシン(cylinders machine)で精製され、脂肪相で再び結合される。別途に、水相の成分を秤量し、75℃にする。ここで、激しく攪拌しながら、又はホモジナイザーによって、水相をゆっくりと脂肪相に加える。得られたエマルジョンを適切な型に注ぎ、室温で放冷する。
【0033】
次に、磁気着色微粒子10を含むダイナミック化粧製品1の色を変化させる方法は、好ましくは、着用可能な磁気源によって実行される。生成された磁場の力は、磁気源の極性と強度を制御するための外部のコンピュータシステム又はコンピュータアプリケーションによって制御可能である。
【0034】
磁気源は、電子デバイス3又はダイナミック化粧製品1のケーシング12であってもよい。
【0035】
この方法は、
通常の化粧方法に従って、ダイナミック化粧製品を塗布するステップと、
磁気源を作動させ、外部ITシステムによって制御可能な磁場を生成するステップと、
コンピュータアプリケーションを作動して、磁気源の極性及び強度を制御するステップと、
を含む手順で実施される。
【0036】
図2に示すように、ダイナミック化粧製品1、例えば、ピンク色の口紅を唇に塗布した後、この色は、コンピュータアプリケーション2を使用することによって、再塗布する必要なく、変更することができる。コンピュータアプリケーション2は、磁気源を備えた着用可能な電子デバイス3と相互作用することができる。磁気源が、適用されたダイナミック化粧製品1内に存在する磁気着色微粒子に干渉作用することにより、ダイナミック化粧製品1の色を変化させ、例えば、赤色の口紅1'にすることができる。
【0037】
スマートフォン(
図3を参照)又はスマートウォッチが備えるコンピュータアプリケーション2を作動することにより、適用されたダイナミック化粧製品1を選択し、ダイナミック化粧製品1の可能な色バリエーションを見ることができる。このように、
図2に示すように、赤などの口紅の色の選択をシミュレートする。次に、コンピュータアプリケーションは、着用可能な電子デバイス3(例えば、指輪、ブレスレットなど)と無線で通信するか、又は、例えば、
図6に示す当該製品のケーシング12と直接に通信する。ユーザがアプリケーションによって行った色の選択に応じて、強度と磁気極性が化粧製品1に印加される。着用可能な電子デバイス3を化粧製品1に近づけると、磁気着色微粒子10(
図4及び
図8に示すように)は、所望の色を示すように配向を変える。このとき、ダイナミック化粧製品1の色は、最初に適用された色に対して変更される。色は、更なる色の変更が必要になるまで安定したまま維持される。更なる色の変更は、化粧自体が除去されるまで、説明された手順を実行することで、ユーザが必要なときにいつでも実行できる。
【0038】
有利なことに、当該ダイナミック化粧製品は、一旦使い切った後、補充することができる。詰め替えは、ダイナミック化粧製品のケーシングを変えることなく、製品の詰め替え用カプセルを使用することによって実現される。具体的には、カプセル内に選択されたダイナミックカラーの異なる化粧製品が含まれるか、又は化粧製品がケーシング内に挿入されて補充されることによって、化粧を適用するときに再び使用することができる。このように、ケーシングに直接挿入された詰め替えを使用することで、化粧製品内にバクテリアの形成の問題も解消される。実際に、カプセルで補充することにより、化粧製品が外部に接触することはない。各カプセルは密封され、且つ真空密封されており、このようにして化粧製品の品質及び純度が変わることなく維持される。使用期限は、使用されているモバイルデバイスにおける通知によってデジタルに表示される。有利なことに、この場合に、詰め替えの色が選択され、これにより、メイクを変更したいときに色合いを変更することによってカスタマイズされた色が作成される。カプセルの詰め替えは、特定の色合い又は色の変化を作成するために、100以上の異なる色が利用できる。
【0039】
例えば、
図7に示すように、口紅又は光沢として使用されるケーシング12を考えれば、詰め替え11に含まれる色は、取り外し可能で洗浄可能な支持体14を通ってケーシングの外側ブラシ13に到達する。このようにして、外側ブラシ13がカプセル内のインクと接触することはない。したがって、カプセル内のインクの衛生状態を維持することができる。支持体の基部の内側には、リップグロスの基部内に新しいカプセルを最初に挿入したときに当該カプセルを貫通できる鋭い固定部分が設けられている。新たな付け替え11は、前の詰め替えが使い切った後に、ケーシング12に容易に挿入することができる。
【0040】
有利なことに、
図6に示すように、革新的なケーシング12は、高度な技術を含み、ダイナミック化粧製品のカプセルを収容及び制御することができる。このようにして、色を変化させることは、ケーシング12自体の内部で直接に行うこともできる。例えば、ケーシング12は、直接にコンピュータアプリケーションと無線通信し、且つケーシング12の内部には、磁場エミッタ、無線アンテナ、及び必要な電子部品が備えられている。更に、各ケーシング12は、側面の全てが磁性側面である平行六面体の形状で作られ、
図9A、9B、及び9Cに概略的かつ例示的に示されているように、磁力によって互いに結合された、いくつかの平行六面体ケーシングを含む形状の全ての組み合わせを形成する。このようにして、利用可能なスペースの全てに適合させることができるケーシング12の構成を作成することができる。
【0041】
少なくとも1つの例示的な実施形態を概要的に説明し、且つ詳細な説明を提示しているが、本発明の保護の範囲内に含まれる多数の変形例が存在することを理解しなければならない。更に、提示された1つ又は複数の実施形態は、本発明、又はその応用若しくは構成の保護の範囲に対しては、決して限定することを意図しない例にすぎないことを理解されなければならない。むしろ、簡単な説明及び詳細な説明は、当業者に、少なくとも1つの例示的な実施形態を実施するための便利なガイドを提供する。添付の特許請求の範囲及びそれらの法上の技術的同等物によって確立された本発明の保護の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された要素の機能及び配置に多数の変形を行うことができることは明らかである。