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特許7382119血管内グラフト及び拡張された大動脈の修復のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】血管内グラフト及び拡張された大動脈の修復のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20231109BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20231109BHJP
   A61F 2/954 20130101ALI20231109BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/966
A61F2/954
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020519740
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018054971
(87)【国際公開番号】W WO2019071268
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】62/569,511
(32)【優先日】2017-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/683,334
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504291867
【氏名又は名称】ザ クリーヴランド クリニック ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】THE CLEVELAND CLINIC FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】ロゼリ,エリック イー
(72)【発明者】
【氏名】エマートン,ケリー ビー
(72)【発明者】
【氏名】メトカーフ,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ガルカー,ブランドン
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0240318(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0310258(US,A1)
【文献】特表2012-523891(JP,A)
【文献】特表2010-526586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0209254(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
A61F 2/966
A61F 2/954
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内グラフトであって、
ステントグラフトを含み、
前記ステントグラフトは、細長い本体と、第1カフ部材とを含み、
前記細長い本体は、拘束構成と拡張構成との間で移動可能であり、前記細長い本体は、近位端部分、遠位端部分、前記近位端部分と前記遠位端部分との間で延在する中間部分、及び前記近位端部分と前記遠位端部分との間で延在するルーメンを有し、前記細長い本体は、フレーム構造をさらに含み、前記フレーム構造は、一部が圧縮スリーブによって覆われ、前記圧縮スリーブは、前記ステントグラフトの展開が必要となるまで前記本体を拘束構成として維持し、
第1カフ部材は、前記細長い本体に取り付けられ、拘束構成と拡張構成との間で移動可能であり、前記第1カフ部材は、前記細長い本体のルーメンと流体連通するルーメンを有し、前記第1カフ部材は、前記血管内グラフトが被験体に移植されたときに大動脈弓分枝血管のルーメンに延在するような大きさ及び寸法に設定され、前記第1カフ部材は、それに設けられる圧縮スリーブを有し、前記圧縮スリーブは、前記第1カフ部材の展開が必要となるまで、前記第1カフ部材を前記拘束構成として維持し、
前記細長い本体は、前記細長い本体のルーメンと前記第1カフ部材のルーメンとに流体連通する孔を含み、前記孔は、前記フレーム構造の一部によって規定され、前記フレーム構造は、逆止具を含み、前記逆止具は、前記血管内グラフトが被験体に移植されたときに前記第1カフ部材のルーメンに延在するような大きさ及び寸法に設定されることを特徴とする血管内グラフト。
【請求項2】
前記ステントグラフトの前記細長い本体の前記近位端部分は、扇形開口を規定し、前記扇形開口は、アーチ形状を有し、前記アーチ形状の大きさ及び寸法は、送達ツールを収容するように設定されることを特徴とする請求項1に記載の血管内グラフト。
【請求項3】
前記フレーム構造の一部は、前記ステントグラフトの近位端部分において設られ、且つ連続フレームを含み、前記連続フレームは、逆止具を含み、前記逆止具は、前記ステントグラフトの前記近位端部分の近位縁に取り付けられるアーチ形のフレームセグメントの間に位置し、前記近位縁は、部分的に開口を規定することを特徴とする請求項1に記載の血管内グラフト。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年6月11日に提出された米国仮出願第62/683,334号及び2017年10月7日に提出された米国仮出願第62/569,511号優先権を主張する。これら2つの出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本公開は、全体として体内の血管の血管修復に関し、より具体的に血管内グラフト及び大動脈の異常を修復する関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
米国及び米国外では、障害および死亡を引き起こす主な原因には、いずれも血管系への損傷が含まれる。これは大動脈瘤についての特定の問題である。例えば、心臓手術と人間の寿命延長の進歩のため、大動脈の疾患は、ますます注目されている。重度の動脈硬化、重度の大動脈の石灰化及びその他の適応症は、完全または部分的な大動脈置換手術を必要とし続けている。
【0004】
動脈瘤の通常の特徴は、罹患または損傷した血管を特徴とし、それは、血管壁の弱体化を引き起こす。血管壁の弱体化は、さらに血管の充血拡張を引き起こす。治療せずに放置すると、動脈瘤は、最終的に破裂し、短期間で急性(通常は致命的な)出血を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大動脈は、多数の動脈分枝を有する。例えば、胸部大動脈弓には3つの主要な分枝があり、これらの分枝は、弓の凸上面から始まり、胸郭上口を通って首の付け根まで上へ進む。動脈瘤が分枝動脈に近接していると、除外デバイス(管状ステントグラフト)の使用が制限される恐れがある。例えば、ステントグラフトを動脈壁の健康な(即ち、罹患又は拡張していない)部分に対して配置するため、管状ステントグラフトの本体又は末端は、分枝動脈を閉塞または遮断する可能性がある。また、ステントグラフトは、動脈瘤と分枝動脈の位置の間の領域に密封された健康な組織の長さが不十分である場合がある。たとえステントグラフトが最初に配置されたときに分枝動脈を遮断しなかったとしても、デバイスが分枝動脈を部分的に又は完全に遮断する位置に移動するリスクが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本公開の一態様は、血管内グラフトを含み得る。血管内グラフトは、外科用グラフトに取り付けられたステントグラフトを含み得る。ステントグラフトは、収縮構成と拡張構成との間で移動可能な細長い本体を含み得る。本体は、近位端部分、遠位端部分、近位端部分と遠位端部分との間に延在する中間部分、および近位端部分と遠位端部分との間に延在するルーメンを有することができる。本体は、少なくとも一部が圧縮スリーブによって覆われているフレーム構造をさらに含むことができ、当該圧縮スリーブは、ステントグラフトの展開が必要となるまで本体を収縮構成として維持する。第1カフ部材は、第1カフ部材のルーメンが細長い本体のルーメンと流体連通するように、細長い本体に取り付けることができる。第1カフ部材は、血管内グラフトが被験体に移植されたときに大動脈弓の分枝血管のルーメンに延在するような大きさ及び寸法に設定することができる。ステントグラフトの細長い本体は、細長い本体のルーメン及び第1カフ部材のルーメンと流体連通する孔を含むことができる。当該孔は、フレーム構造の一部によって規定されることができる。フレーム構造は、逆止具を含むことができ、逆止具は、血管内グラフトが被験体に移植されたときに第1カフ部材のルーメンに延在するような大きさ及び寸法に設定される。外科用グラフトは、ステントグラフトの近位端部分においてステントグラフトに部分的に取り付けることができる。外科用グラフトの近位端は、それに取り付けられる縫合カフを含むことができる。
【0007】
本公開の他の態様は、被験体の罹患した大動脈弓の少なくとも一部を修復するための方法を含み得る。当該方法の1つのステップは、外科用グラフトに部分的に取り付けられるステントグラフトを含む血管内グラフトを提供することを含むことができる。ステントグラフトは、細長い本体と第1カフ部材とを含むことができる。ステントグラフトは、近位端部分、遠位端部分、近位端部分と遠位端部分との間に延在する中間部分、及び近位端部分と遠位端部分との間に延在するルーメンを有することができる。細長い本体は、少なくとも一部が圧縮スリーブによって覆われているフレーム構造をさらに含むことができる。第1カフ部材は、第1カフ部材のルーメンが細長い本体のルーメンと流体連通するように、細長い本体に取り付けることができる。細長い本体は、細長い本体のルーメン及び第1カフ部材のルーメンと流体連通する孔を含むことができる。当該孔は、フレーム構造の一部によって規定されることができる。フレーム構造は、逆止具を含むことができる。ステントグラフトは、収縮構成で被験体の大動脈弓に位置決めることができる。第1カフ部材は、大動脈分枝血管(例えば、左鎖骨下動脈)に位置決めることができる。圧縮スリーブは、ステントグラフトが遠位端大動脈弓内に拡張し、第1カフ部材が大動脈弓分枝血管に延在するように、作動させることができる。例えば、まず、第1カフ部材を取り囲む圧縮スリーブを作動させ、そして、ステントグラフトの圧縮スリーブを作動させることができる。ステントグラフトは、遠位端大動脈弓に固定することができる。外科用グラフトは、大動脈のの横切された縁に固定することができる。
【0008】
本公開の他の態様は、血管内グラフトを送達するための送達システムを含むことができる。送達システムは、ハンドルを含み、当該ハンドルは、細長い本体を含み、当該細長い本体は、近位端部分と遠位端部分とを有し、その遠位端は遠位孔を規定する。二次支持ガイドチャネルは、細長い本体内で縦方向に延在することができ、その一端が、細長い本体の近位端部分によって規定される二次支持ガイド孔と流体連通し、他端が遠位孔と流体連通する。ハンドルは、第1アクチュエータチャネルをさらに含み、第1アクチュエータチャネルは、その一端が、細長い本体によって規定される第1アクチュエータ孔と流体連通し、その他端が、細長い本体の遠位端によって規定される遠位端第1アクチュエータ孔と流体連通する。ハンドルは、第2アクチュエータチャネルをさらに含むことができ、第2アクチュエータチャネルは、その一端が、細長い本体によって規定される第2アクチュエータ孔と流体連通し、その他端が、遠位孔と流体連通する。
【0009】
送達システムは、第1アクチュエータをさらに含み、当該第1アクチュエータは、ノブとノブから延在するワイヤとを含む。当該ワイヤは、第1アクチュエータ孔、第1アクチュエータチャネル及び遠位端第1アクチュエータ孔を通ってスライド可能に延在することができる。送達システムは、第2アクチュエータをさらに含むことができ、第2アクチュエータも、ノブとノブから延在するワイヤとを含む。当該ワイヤは、第2アクチュエータ孔、第2アクチュエータチャネル及び遠位孔を通ってスライド可能に延在する。
【0010】
送達システムは、ハンドルの遠位端に直接又は間接的に接続され、鈍い非外傷性の先端を有する主フレキシブル支持ガイド具をさらに含む。いくつかの実施例では、剛性の支持ロッドは、主フレキシブル支持ガイド具とハンドルとの間に設けることができる。例えば、剛性の支持ロッドは、一端がハンドルの遠位端に接続することができ、他端が主フレキシブル支持ガイド具の近位端に接続することができる。細長い二次支持ガイド具は、二次支持ガイド孔、二次支持ガイドチャネル及び遠位孔を通ってスライド可能に延在することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面を参照して以下の説明を読むことにより、本開示の前述の内容および他の特徴は、当業者には、明らかになるであろう。
図1】大動脈弓及び弓血管の断面図である。
図2A】本公開の一態様による拡張構成(図2A)にある血管内グラフトの側面図である。
図2B】本公開の一態様による収縮構成(図2B)にある血管内グラフトの側面図である。
図3】本公開の一態様による拡張構成されている血管内グラフトの側面図である。
図4図3の血管内グラフトの平面図である。
図5図3の血管内グラフトの斜視図である。
図6A図2Aの血管内グラフトの平面図である。
図6B図2Bの血管内グラフトの平面図である。
図7図2A図2Bの血管内グラフトの第1カフ部材の斜視図である。
図8】本公開の一態様による血管内グラフトのステントグラフトの一部内に設けられるフレーム構造の実施例を説明する平面図である。
図9】本公開の一態様による血管内グラフトのステントグラフトの一部内に設けられるフレーム構造の実施例を説明する平面図である。
図10図2A図2Bの血管内グラフトの代替構成の側面図である。
図11】本公開の一態様によるステントグラフト及び第1カフ部材を有する血管内グラフトの側面図であり、当該血管内グラフトは、送達システムに取り付けられている。
図12】本公開の一態様による送達システムの平面図である。
図13】本公開の一態様による送達システムの部材の側面図である。
図14】本公開の一態様による罹患した大動脈弓の少なくとも一部を修復するための方法を示すプロセスフローチャートである。
図15】本公開の一態様による罹患した大動脈弓の少なくとも一部を修復するための方法のステップをを示す模式図である。
図16】本公開の一態様による罹患した大動脈弓の少なくとも一部を修復するための方法のステップをを示す模式図である。
図17】本公開の一態様による罹患した大動脈弓の少なくとも一部を修復するための方法のステップをを示す模式図である。
図18】本公開の一態様による罹患した大動脈弓の少なくとも一部を修復するための方法のステップをを示す模式図である。
図19】本公開の一態様による罹患した大動脈弓の少なくとも一部を修復するための方法のステップをを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0013】
本開示の文脈において、単数形「1つ」、「1種」及び「前記」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数形も含み得る。本明細書で使用されるように、用語「含む」および/または「備える」という用語は、述べられる特徴、ステップ、操作、素子および/または部材の存在を限定できるが、1つ又は複数の他の特徴、ステップ、操作、素子、部材および/またはその組み合わせの存在又は増加を排除しないと理解されるであろう。
【0014】
本明細書で使用されるように、用語「および/または」は、1つまたは複数の関連する挙げたアイテムのいずれか及び全ての組み合わせを含むことができる。
【0015】
本明細書で使用されるように、例えば「XとYとの間」及び「おおよそXとYとの間」の語句は、X及びYを含むと解釈することができる。
【0016】
本明細書で使用されるように、例えば「おおよそXとYとの間」の語句は、「おおよそXとおおよそYとの間」と示すことができる。
【0017】
本明細書で使用されるように、例えば「おおよそXからYまで」の語句は、「おおよそXからおおよそYまで」と示すことができる。
【0018】
ある素子が別の素子の「上」にあり、別の素子に「取り付けられている」、「接続されている」、「結合されている」、「接触している」などと呼ばれる場合、それは、直接別の素子の「上」に、別の素子に直接「取り付けられている」、直接「接続されている」、直接「結合されている」、直接「接触している」、又は介在素子が存在し得る。逆に、ある素子が例えば「直接」他の素子の「上」にあり、他の素子に「直接取り付けられている」、「直接接続されている」、「直接結合されている」又は「直接接触している」と呼ばれる場合、介在素子が存在しないと理解できるであろう。当業者は、別の特徴に「隣接して」設けられる構成又は特徴は隣接する特徴と重なり合うまたは隣接する特徴のベースとなる部分を有し得ると理解するであろう。
【0019】
「全体的」、「統合される」又は「統一される」とは、説明される部材が製造中に1つの部材として製造されるか、又は説明される部材がいずれか1つの部材の完全性(即ち、引き裂く)を損なうことなく通常の量の力で分離できないと意味する。通常の量の力は、使用者がいずれか1つの部材を損なうことなく、別の部材と分離する部材を取りり外すために使用する力である。
【0020】
説明を容易にするために、例えば、「…の下方に」、「…の下に」、「下」、「…の上方に」、「上」などの空間的相対用語を本明細書で使用して説明することができ、図面において1つの素子又は特徴が他の1つ又は複数の素子又は特徴との関係を説明する。空間的に相対的な用語は、図に示されている向きに加えて、使用中または動作中の装置の異なる向きを含むことができることが理解されるであろう。例えば、図中の装置がひっくり返された場合、他の要素または特徴の「下」または「下方」に「ある」として説明される素子は、他の素子または特徴の「上」にあると向けられる。
【0021】
本明細書では「第1」、「第2」などの用語を使用して様々な素子を説明することができるが、これらの素子はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、ある素子を別の素子と区別するためにのみ使用される。従って、本公開の教示から逸脱しない限り、以下で論じられる「第1」素子は、「第2」素子と呼ばれることもできる。特に明記しない限り、操作(又はステップ)の順番は、特許請求の範囲または図面に提示された順番に限定されない。
【0022】
本明細書で使用されるように、用語「被験体」は、「患者」という用語と互換的に使用されることが可能であり、且つ、ヒト、ブタ、ラット、マウス、イヌ、ヤギ、羊、馬、猿、類人猿、ウサギ、牛などを含むが、これらに限定されない任意の温血生物を指す。
【0023】
本明細書で使用されるように、「生体適合性」という用語は、その意図された用途の生体内環境において実質的に非毒性であり、患者の生理系によって実質的に拒絶されない(すなわち、非抗原性)材料を指し得る。これは、材料が国際標準化機構(ISO)の標準No.10993および/または米国薬局方(USP)23および/または米国食品医薬品局(FDA)のブルーブックのメモNo.G95―1、タイトル「国際標準ISO―10993の使用、医療機器の生物学的評価、第1部分:評価と試験」に規定されている生体適合性試験に合格する能力によって評価できる。通常、これらの試験は、材料の毒性、感染性、発熱性、刺激性、反応性、溶血性、発がん性および/または免疫原性を測定することができる。生体適合性のある構造または材料は、大多数の患者に導入された場合、著しく有害で、長期的または段階的に増大する生物学的反応または応答を引き起こさず、通常、外科手術又は生体への異物の移植を伴う軽度の一時的な炎症とは区別される。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「エンドリーク(endoleak)」は、ステントグラフトの端部と血管壁(タイプI)との間のシールを通って流れる血液の流れが存在することを指すことができ、且つ全てのそのような流れがステントグラフトのルーメン内に含まれると、動脈瘤嚢に流れ込む。
【0025】
本明細書で使用されるように、用語「遷移」は、ステントグラフトがその意図される移植部位から変位することを指すことができる。
【0026】
本明細書で使用されるように、用語「配置されたステントグラフト」又は「移植されたステントグラフト」は、侵襲的または非侵襲的技術による手術配置又は移植されたステントグラフトを指すことができる。
【0027】
解剖学および生理学
本開示のいくつかの態様に関連する解剖学および生理学を理解やすくするために、図1は、人間の大動脈12及び大動脈弓分枝血管14を含み、付随する弓血管の断面図を示す。大動脈は、体内で最大の血管である。それは、酸素を含む血液を心臓の左心室(図示せず)からそれぞれの臓器に輸送する。大動脈は、心臓において大動脈弁膜16から始まり、この大動脈弁膜16は大動脈基部18のすぐ隣にあり、そして、上行大動脈20、横方向大動脈12又は大動脈弓、下行大動脈22及び胸腹部大動脈(図示せず)が続く。大動脈は、2つの腸骨総動脈(図示せず)における腹部大動脈で分岐した後、腹部で終わる。大動脈弓12は、腕頭幹24、左総頸動脈26及び左鎖骨下動脈28に引き出されている。腕頭幹24は、右鎖骨下動脈30及び右総頸動脈32に形成するように分け、右鎖骨下動脈30及び右総頸動脈32は、血液を右腕と首と頭の右側に供給する。左総頸動脈26及び左鎖骨下動脈28は、左側で平行した機能を果たす。
【0028】
血管内グラフト
本公開の一態様は、罹患した血管(例えば、罹患した大動脈弓)への移植及び修復のための血管内グラフト10(図2A図2B)を含むことができる。血管内グラフト10は、手術移植物36に部分的に接続又は取り付けられるステントグラフト34を含むことができる。「部分的に接続」とは、血管内グラフト10が被験体の体内に移植されていないとき、ステントグラフトのルーメン40が手術移植物のルーメン42と流体連通しないように、ステントグラフト34が1つ又は複数の点38において(例えば、1本又は複数本の縫合ワイヤを介して)手術移植物36に接続又は取り付けられることを指す。換言すれば、ステントグラフト34の縁44は、手術移植物36の対応する前縁46と完全に接触、面一又はシールされていない。
【0029】
図2A図2Bに示すように、ステントグラフト34は、拡張構成(図2A)と収縮構成(図2B)との間で移動することができる。ステントグラフト34は、近位端部分50、遠位端部分52、近位端部分と遠位端部分との間に延在する中間部分54、及び近位端部分と遠位端部分との間に延在するルーメン40を有する細長い本体48を含むことができる。場合によっては、ステントグラフト34は、可撓性のある管状の構成を有することができ、大動脈弓12のような体血管に配置することに適する。ステントグラフト34は、その細長い本体48が体血管の内面と完全又は実質的なシールを形成するように、体血管の内面に接合するように配置することができる。
【0030】
別の態様では、細長い本体48は、フレーム構造56を含むことができる。場合によっては、フレーム構造56は、細長い本体48に沿って延び、細長い本体48の全長を規定されてもよい。フレーム構造56の構成及び寸法は、2015年9月10日に出願した第14/849,785号の米国特許出願(以下、「'785出願」と呼ぶ)に開示されているように、参照により全体が組み込まれている(第5欄第35行~第9欄第22行)。他の場合では、フレーム構造56は、細長い本体48に沿って延び、細長い本体48の全長より小さいと規定されてもよい。例えば、細長い本体48の近位端部分50は、フレーム構造56を含み、中間部分54および/または本体の遠位端部分52は、拡張可能な支持部材(図示せず)を含むことができる。拡張可能な支持部材の例は、'785出願に説明されていた。
【0031】
フレーム構造56及び拡張可能な支持部材(存在する場合)のそれぞれは、生体適合性移植物材料58に縫い付けられるか、又は他の方式で生体適合性移植物材料58に取り付けられることができ、生体適合性移植物材料58は、ステントグラフト34の全て又は一部のみを含む。フレーム構造56及び拡張可能な支持部材(存在する場合)のそれぞれは、移植物材料58に覆われている少なくとも1つの表面を有することができる。図3を参照すると、いくつかの実施例では、フレーム構造56Aは、血管内グラフト10Aのステントグラフト34Aの生体適合性移植物材料58Aの外面に配置されている。
【0032】
移植物材料58は、体内で機械的に安定であり、且つステントグラフト34を通る血液又は他の体液の通過又は流れの可能性を防止又は実質的に低減できる任意の生体適合性材料を含むことができる。ステントグラフト34を構成するための適切な材料は、例えば織られたポリエステルのような生体適合性プラスチック、例えばシリコーン、SBR、EPDM、ブチル、ポリイソプレン、ニトリル、ネオプレン、ナイロン合金及び混合物、ポリ(エチレン酢酸ビニル)(EVA)共重合体、シリコーンゴム、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステルポリウレタン(poly(ester urethanes))、ポリエーテルウレタン(poly(ether urethanes))、ポリ(エステル尿素)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(例えばTEFLON)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレンテレフタレート(例えばDACRON)及びポリエチレンコポリマーのような吸収できないエラストマー又はポリマーを含むことができる。ステントグラフト34は、追加的に又は選択可能に生体材料の層(図示せず)、例えばウシ又はウマの心膜、腹膜組織、異種移植片、同種移植片、患者の移植片、または細胞播種組織心包膜、腹膜組織、異種移植物、同種移植物、患者移植物又は細胞接種の組織を含むことができると理解されるであろう。この層は、ステントグラフト34全体またなその一部のみを覆うことができる。当業者は、血管外科用途に適した他の材料もステントグラフト34に適切であることを理解するであろう。
【0033】
細長い本体48の近位端部分50は、扇形開口60(図6A~B及び図4)を含むことができる。扇形開口60は、アーチ形状の開口によって規定され、当該弧状開口は、送達ツール62(詳しく示されていない)を収容するような大きさ及び寸法に設定される。縫合カフ88(以下、より詳しく説明する)は、さらに扇形開口を含むことができ、当該扇形開口は、アーチ形状を有し、当該扇形開口は、送達ツールを収容するような大きさ及び寸法に設定される。そのような場合、縫合カフの扇形開口及び細長い本体は、互いに対向し、ともに1つの孔を規定し、血液が被験体の頭部の血管及び上肢へ流れることを維持することができる。例えば、好ましくは、扇形開口は、言及されていない動脈と頸動脈(図示せず)を収容する点で医師により大きな制御量を提供する。
【0034】
別の態様では、ステントグラフト34は、孔64を含むことができる(図2A図4)。一例では、孔64は、近位端部分50の上部66の周りに配置することができる。孔64の大きさ及び寸法は、細長い本体48のルーメン40が孔64と流体連通するように設定することができる。孔64は、任意の所望の長さ、幅、および/または周長を有することができる。場合によっては、孔64は、細長い楕円形の形状を有することができる。しかしながら、他の形状も可能であることは理解されるであろう。
【0035】
ステントグラフト34は、細長い本体48(例えば、その近位端部分50において)に取り付けられる第1カフ部材74を含むことができ、これにより、第1カフ部材のルーメン76は、細長い本体48のルーメン40(例えば、孔64を介して)と流体連通する。第1カフ部材74は、血管内グラフト10を被験体に移植するときに大動脈弓分枝血管(例えば左鎖骨下動脈28)のルーメン内に延在するような大きさ及び寸法と設定することができる。図7に示すように、第1カフ部材74は、管状又は円筒形を有し、第1端部78及び第2端部80を含むことができる。ルーメン76は、第1端部78と第2端部80との間に延在することができる。第1カフ部材74は、生体適合性材料58によって製造されることができ、当該生体適合性材料58は、拡張可能な支持部材82及びベースリング84の1つの又は複数の表面を覆うことができる。膨張可能な支持部材82とベースリング84は、それぞれ第2端部80と第1端部78に位置することができる。ベースリング84は、フレーム構造56によって規定される孔64を取り囲むことができる。ベースリング84は、第1カフ部材74を細長い本体48に取り付けることに寄与することができる(例えば、縫合ワイヤを使用)。膨張可能な支持部材は、図3図5に示されるステントを含むことができる。
【0036】
ステントグラフト34は、'785出願に説明した逆止具と類似し、又は同じ逆止具68を含むことができ、'785出願は、参照により本明細書に組み込まれる(第5欄第35行~第9欄第22行)。血管内グラフト10を被験体に移植するとき、逆止具68は、第1カフ部材74のルーメン76内に延在することに適する。場合によっては、逆止具68は、ステントグラフト34の細長い本体48に対して指定される角度になり、フレーム構造56の一部になるように、上昇位置にヒットセット(heat―set)することができる。有利には、逆止具68は、左鎖骨下動脈28に対する血管内グラフト10の軸方向の位置合わせ、及び血管内グラフトが分枝血管14と位置合わせるための回転配向を提供することができる。なお、逆止具68は、血管内グラフト10の移植後、(第1カフ部材74の)ルーメンの開通性を確保し、内部漏出のリスクを減らすことができる。
【0037】
別の態様では、図8及び図9に示すように、フレーム構造56Aは、連続フレームを含むことができ、この連続フレームは、アーチ形のフレームセグメント69、79の間に位置する逆止具68Aを含む。アーチ形のフレーム段69、79は、縫合又は他の方式でステントグラフトの近位端部分50Aの近位縁73、77に固定することができる。近位縁73、77は、部分的に開口60Aを規定し、血管内グラフトが移植されるときに、腕頭動脈及び左総頸動脈に連通することができる。大動脈弓に移植されるときに、フレーム構造56Aのアーチ形のフレームセグメント69、79は、ステントグラフトの近位端部分50Aの開通性を維持することに寄与することができる。
【0038】
ステントグラフト34の細長い本体48の全部又は一部のみは、フレーム構造56および/または膨張可能な支持部材(存在する場合)を覆う圧縮スリーブ70を含むことができる。圧縮スリーブ70は、上述した生体適合性材料58を含むことができる。場合によっては、スリーブ70は、フレーム構造56および/または膨張可能な支持部材(存在する場合)の周りに位置する生体適合性材料70を覆うことができる。換言すれば、スリーブ70は、フレーム構造56および/または膨張可能な支持部材を覆う材料と離れる材料58の分離片を含むことができる。他の場合では、圧縮スリーブ70は、図3図5に示すように、フレーム構造56および/または膨張可能な支持部材(存在する場合)に直接接触することができる。例えば、圧縮スリーブは、そのいずれか1つの主縁において、フレーム構造56および/または膨張可能な支持部材の残りの部分を覆う生体適合性材料58の分離片に取り付けることができる。
【0039】
圧縮スリーブ70は、ステントグラフト34の展開が必要になるまで(例えば、血管内グラフト10の移植後)、細長い本体48を収縮構成として維持させることができる。図6A図6Bに示すように、圧縮スリーブ70は、複数の小穴72又はそれに取り付けられる締結機構を含むことができる。ステントグラフト34を収縮構成にするために、小穴72が別の小穴と位置合わせるようにすることができ(図6B)、これによって、スリーブ70は圧縮され、細長い本体48の直径を小さくする。小穴72が位置合わせるとき、縫合ワイヤ、ワイヤ又は他の類似する機構(図示せず)は、それぞれの小穴を通して引き抜くことができ、これにより、ステントグラフト34を収縮構成として維持させる。ステントグラフト34の拡張が望まれるとき、小穴72を介して縫合ワイヤ又はワイヤを撤回することができ、これにより、フレーム構造56および/または拡張可能な支持部材(及び細長い本体48)は、図6Aに示される拡張構成に移行することが許容される。
【0040】
なお、図3を参照すると、拡張構成されている血管内グラフト10Aの実施例が示され、ステントグラフト34Aの細長い本体48Aは、第1カフ部材74Aと離れる圧縮スリーブを有することができる。例えば、細長い本体48Aは、細長い本体48Aの周りに包まれるか、又は他の方式でそれを取り囲んで配置される圧縮スリーブ70Aを有することができ、第1カフ部材74Aは、第1カフ部材74Aの周りに包まれるか、又は他の方式でそれを取り囲んで配置される別体の圧縮スリーブ71を有することができる。血管内グラフト10Aの展開中に、圧縮スリーブ71は、圧縮スリーブ71が第1カフ部材74Aの側面に当接して平らに配置されるように、引っ込めるか、又は「解放する」ことができ、また、圧縮スリーブ70Aは、圧縮スリーブ70Aが細長い本体48Aの側面に当接して平らに配置されるように、引っ込めるか、又は「解放する」ことができ、図3に示される通りである。より詳しく説明するように、アクチュエータワイヤは、圧縮スリーブ70A、71の遠位端(例えば最遠位端)に接続することができ、スリーブ70A、71を効果的に解放させることにより、細長い本体48A及び第1カフ部材74Aを展開し、細長い本体48及び第1カフ部材74Aを拡張構成にすることが可能になる。
【0041】
場合によっては、細長い本体の圧縮スリーブと同様に、第1カフ部材の周りに配置される圧縮スリーブは、1つ又は複数のインターロック部材(図示せず)を含むことができ、当該インターロック部材は、拘束ワイヤを使用して一緒にロックされるとき、第1カフ部材の直径を拘束し、以下詳しく説明する通りである。拘束ワイヤは、第1カフ部材の直径が拡大して展開する間に取り除くことができる。好ましくは、圧縮スリーブは、改良された展開順番を提供し、当該展開順番は、十分な直径拘束を提供するとともに、移植後、血管内グラフトから撤回する必要のある部材の数を最小化する。これにより、撤回する過程での部材の移動又は変位のリスクを最小化する。
【0042】
図11は、第1カフ部材74Cを覆う圧縮スリーブ71Cを示す。より詳細に説明するように、アクチュエータワイヤは、圧縮スリーブ75の遠位端(例えば最遠位端)に接続することができ、スリーブ75を効果的に解放させることにより、第1カフ部材74Cを展開し、第1カフ部材74Cを拡張構成にすることが可能になる。
【0043】
圧縮スリーブは、様々な形状及び寸法を有することができ、図に示される矩形構成に限定されない。また、1つ以上のスリーブを使用してステントグラフトを形成することができる。
【0044】
好ましくは、圧縮スリーブは、改良された展開順番を提供し、当該展開順番は、十分な直径拘束を提供するとともに、移植後、血管内グラフトから撤回する部材の数を最小化する。これにより、撤回する過程で、部材の移動又は変位のリスクを最小化する。なお、圧縮スリーブは、追加のメリットを提供することができ、即ち、近位端下行入口又は折り返しの引裂き(通常、大動脈の下行部分の大きな折り曲げに沿って発生する)の改良されたシール性を提供する。
【0045】
血管内グラフト10は、外科用グラフト36を含むことができ、外科用グラフト36は、その近位端部分86においてステントグラフト34に部分的に取り付けられている。外科用グラフト36は、生体適合性材料58によって製造されることができ、概して管状又は円筒形の形状を有する。外科用グラフト36は、前縁46を含むことができ、前縁46の少なくとも一部は、大動脈(例えば、上行大動脈20)又は大動脈弓12の横切された縁に取り付けられることに適する。外科用グラフト36は、近位端部分86に取り付けられる縫合カフ88を含むことができる。縫合カフ88は、円形又は楕円形形状を有することができ、体血管の一部、例えば大動脈(例えば、上行大動脈20)は大動脈弓12の横切された縁に縫合されることに適する。縫合カフ88は、既知の取り付け手段(例えば、釘、クリップ、縫合ワイヤ、接着剤など)のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを使用して外科用グラフト36に強固に取り付けることができる。縫合カフ88は、任意の切々な生体適合性材料、例えば織られたポリエステル、DACRON、TEFLON、PTFEおよび/または上記開示された生体適合性材料58の内のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを含むことができる。好ましくは、縫合カフ88は、生来の組織に縫合されることに寄与するとともに、血管内グラフト10の外科手術移植中に必要な縫合の量を減少し、また、血管内グラフトを縫合するために依然として医師が生来の組織上の精確な位置決めを制御することが許容される。図3図5に示すように、血管内グラフト10Aの外科用グラフト36Aは、導管61を含むことができ、導管61は、心肺バイパス機械のような大きさ及び寸法に設定される。
【0046】
別の態様では、図10に示すように、血管内グラフト11を構成することができる。血管内グラフト11を、以下で説明される部位を除き、図2A図2Bに示される血管内グラフト10と同じように構成することができる。例えば、外科用グラフト36は、第2カフ部材90及び第3カフ部材92を含むことができる。第2カフ部材90及び第3カフ部材92は、第1カフ部材74と同じ又は同様に構成することができる。第2カフ部材90及び第3カフ部材92は、互いに離間してもよく、その大きさ及び寸法は、左総頸動脈26及び腕頭幹24に挿入するように設定される。外科用グラフト36は、第2カフ部材90又は第3カフ部材92のみを含むように代替的に構成され得ると理解されるであろう。
【0047】
送達システム
図11図13を参照すると、本公開の特定の態様は、血管内グラフトを送達するための送達システムを含むことができる。送達システム200は、ハンドル202を含むことができ、ハンドル202は、細長い本体204を含み、当該細長い本体204は、近位端部分206と、遠位端210を有する遠位端部分208とを有し、遠位端210は、遠位孔212を規定する。二次支持ガイドチャネル(図示せず)は、細長い本体204内で縦方向に延在することができ、その一端は、細長い本体204の近位端部分206によって規定される二次支持ガイド孔214(図13に示すように)と流体連通し、その他端は、遠位孔212と流体連通する。ハンドル202は、一端が細長い本体204によって規定される第1アクチュエータ孔218と流体連通し、他端が細長い本体204の遠位端210によって規定される遠位端第1アクチュエータ孔220と流体連通する第1アクチュエータチャネル(図示せず)を含むことができる。ハンドル202は、一端が細長い本体204によって規定される第2アクチュエータ孔224と流体連通し、他端が遠位孔212と流体連通する第2アクチュエータチャネル(図示せず)を含むことができる。
【0048】
送達システム200は、ハンドル202の遠位端210に直接又は間接に接続され、鈍い非外傷性の尖端250を有する主フレキシブル支持ガイド具248を含むことができる。搭載配置では、ステントグラフト34Cの細長い本体48Cは、主フレキシブル支持ガイド具248の周りに配置される。主フレキシブル支持ガイド具248は、大動脈内でステントグラフト34Cを操作することを許容して、ステントグラフト34Cの精確な位置決めが許容される。細長い二次支持ガイド具254は、二次支持ガイド孔214、二次支持ガイドチャネル及び遠位孔212を通ってスライド可能に延在する。搭載配置では、第1カフ部材74Cは、細長い二次支持ガイド具254の遠位端部分の周りに配置される。ガイドワイヤは、第1カフ部材の展開前に第1カフ部材を含むステントグラフトの配置をアシストするように、細長い二次支持ガイド具のルーメンを通って延在することができる。
【0049】
特定の実施例では、剛性の支持ロッド252は、主フレキシブル支持ガイド具248とハンドル202との間に配置される。例えば、剛性の支持ロッド252は、一端がハンドル202の遠位端210に接続することができ、他端が主フレキシブル支持ガイド具248の近位端に接続することができる。存在する場合、支持ロッド252は、ステントグラフトを大動脈の自然な湾曲に位置決めために、初期湾曲を提供することができる。
【0050】
送達システム200は、ノブ228とノブ228から延在するワイヤ230とを備える第1アクチュエータ226をさらに含むことができる。ワイヤ230は、第1アクチュエータ孔218、第1アクチュエータチャネル及び遠位端の第1アクチュエータ孔220を通ってスライド可能に延在する。送達システム200は、第2アクチュエータ238をさらに含むことができ、第2アクチュエータ238も、ノブ240と、ノブ240から延在するワイヤ242とを備える。ワイヤ242は、第2アクチュエータ孔224、第2アクチュエータチャネル及び遠位孔212を通ってスライド可能に延在する。ワイヤ230及びワイヤ242は、いずれも円形の端を有することができる。第1アクチュエータ226のワイヤ230の遠位端と第2アクチュエータ238のワイヤ242の遠位端は、それぞれステントグラフト34Cの細長い本体48C及び第1カフ部材74Cに接続することができ、ノブ228、240を撤回することで対応するワイヤ230、242をリリースしてステントグラフト34Cが展開されるまで、各部材の周りに配置されるシース内でこれらの部材を拘束することができる。これは、図3図5に示すように、ステントグラフトの拡張を可能にするために、ステントグラフトの細長い本体及びステントグラフトの第1カフ部材の周りに配置されるシースを効果的に「解放」する。特に、搭載配置では、ステントグラフトの細長い本体は、鈍い遠位端の尖端の近位端の主フレキシブル支持ガイド具の周りに配置され、細長い本体の周りに配置される圧縮スリーブは、第1アクチュエータのワイヤの遠位端部分に接続されている。なお、搭載配置では、第1カフ部材は、細長い二次支持ガイド具の遠位端の周りに配置され、第1カフ部材の周りに配置される圧縮スリーブは、第2アクチュエータのワイヤの遠位端部分に接続されている。
【0051】
血管内グラフトシステム
本公開の特定の態様は、上述した送達システムと血管内グラフトとを備える血管内グラフトシステムを含むことができる。図11に示すように、搭載配置では、血管内グラフト10Cのステントグラフト34Cの細長い本体48Cは、尖端250の近位端の主フレキシブル支持ガイド具248の周りに配置され、第1アクチュエータ226のワイヤ230の遠位端部分に接続することができる。第1カフ部材74Cは、細長い二次支持ガイド具254の遠位端部分の周りに配置され、第2アクチュエータ238のワイヤ242の遠位端部分に接続することができる。
【0052】
血管内グラフトは、無菌で供給され、送達システムに事前に載置されるか、又は使用者によって予め送達システムに載置されることが可能である。送達システム200は、上述したように、非外傷性の尖端250及び解放ワイヤ230、242を備える主フレキシブル支持ガイド具248を含み、展開の前にステントグラフト34Cを拘束する単回使用の30フレンチデバイス(30 French device)であり得る。圧縮スリーブは、ステントグラフト34Cの細長い本体48C及び第1カフ部材74Cの外部に位置して、下行大動脈及び左鎖骨下動脈にそれぞれ位置するとき、ステントグラフト34Cの直径を拘束することができる。ステントグラフト34C及び第1カフ部材74Cのそれぞれについて、圧縮スリーブは、単一の全体的なシース又は2つの別個のシースであり得る。圧縮スリーブは、ステントグラフト34Cと血管壁との間に位置して患者体内に永久に留まることができる。
【0053】
方法
本公開の別の態様は、被験体の罹患した血管(例えば、大動脈弓12の動脈瘤)を修復するための方法94(図14)を含むことができる。方法94は、以下のステップ、即ち、管腔内グラフトを提供すること(ステップ96)と、収縮構成されている血管内グラフトのステントグラフトを被験体の大動脈弓に位置決めること(ステップ98)と、ステントグラフトが遠位端大動脈弓内に拡張し、第1カフ部材が大動脈弓分枝血管内に延在するように、ステントグラフトの圧縮スリーブを作動させること(ステップ100)と、ステントグラフトを遠位端大動脈弓に固定すること(ステップ102)と、外科用グラフトを大動脈の横切された縁に固定すること(ステップ104)とを含むことができる。場合によっては、方法94は、DeBakey I型急性大動脈解離(DeBakey type I acute aortic dissections)を治療するために使用することができる。例えば、方法94は、Roselli et al., J Thorac Cardiovasc Surg., 145(3 Suppl): S197-201(2013年3月)の手順に基づき調整することができる。方法94は、上行弓(ascending arch)及び下行胸部大動脈(descending thoracic aorta)における胸部大動脈疾患の修復にも使用することができる(Svensson et al., Ann Thorac Surg., 96:548-58 (2013))。
【0054】
大動脈弓動脈瘤を修復するために、例えば、図2A図2Bに示される血管内グラフト10を使用する外科手術を用いることができる。手術は心肺バイパスを使用して全身麻酔下で行うことができる。被験体は少なくとも28℃まで冷却可能であるが、最低18℃まで冷却可能である。被験体の血液循環を阻止または減少させることができる。開放型の外科手術方法を用いて血管内グラフトの移植を以下に説明するが、他の血管内グラフトを移植ための方法、例えば経皮的または低侵襲性外科技術、本明細書で説明される血管内グラフトの他の構成を使用することが可能であると理解されるであろう。
【0055】
ステップ96で血管内グラフトを提供した後、血管内グラフトの大動脈弓における配置位置は、例えば、蛍光透視法、血管造影法、超音波検査法、CT、ヘリカルCT、CT血管造影法、MRIおよび/またはMR血管造影などの結像技術を用いて確定するこことができる。血管内グラフトを移植する前に、送達ツールは、ステントグラフト(血管内グラフトの扇形開口を介して)を通って挿入することができる。そして、ステントグラフトの周りに配置される圧縮スリーブは、ステントグラフトが送達ツールの周りに固定されるよう、ステントグラフトを圧縮して収縮構成とするように、配置することができる。
【0056】
ステントグラフトを送達ツールに搭載した後、切口を介して送達ツールを大動脈弓に挿入することができる。例えば、大動脈は、腕頭動脈において開かれ横切されることが可能である。送達ツールは、順行性の方法で下行大動脈に配置することができる。そして、血管内グラフトを大動脈弓の近位縁に位置合わせ、アクセスワイヤを左鎖骨下動脈に歩進させる。
【0057】
血管内グラフトが大動脈弓内に適切に配置されると、第1カフ部材の拘束ワイヤを取り外して、第1カフ部材が左鎖骨下動脈の一部に歩進又は延在するようにすることができる。これは、少なくとも部分的に上述した逆止具により実現可能であり、当該逆止具は、直立配置され、これにより、第1カフ部材のルーメンに延在して、第1カフ部材が左鎖骨下動脈内に延在することをアシストする(例えば、左鎖骨下動脈の起源に位置する)。
【0058】
次に、圧縮スリーブの小穴を通って延在する縫合ワイヤ又はワイヤ(それがスリーブ及びステントグラフトを収縮構成として維持する)を取り外すことができ、これによって、ステントグラフトが拡張構成を取得し、下行大動脈に完全に拡張する。まだこのように行っていない場合、第1カフ部材に関連する拘束ワイヤを取り外して、第1カフ部材が左鎖骨下動脈に完全に拡張することができる。任意の他の部材、例えば送達ツールを取り外すこともできる。
【0059】
次に、肉眼検査を行って、ステントグラフトに対する大血管の正しい配置を確認することができる。正しい位置が確認されると、扇形開口を規定するステントグラフトの周辺を大動脈弓内に固定することができる(例えば、縫合により)。そして、外科用グラフトの縫合カフを横切された大動脈の縁に縫合し、外科用グラフトの対向端を元の切っていない上行大動脈根に縫合することができる。その後、血管内グラフトの周りの血管を外すことができ、これによって、血液が正常に血管内グラフトを流れるようにすることができる。血管内グラフトの拡張及び移植が需要に応じて変更されてもよいと理解されるであろう。
【0060】
図15図19を参照すると、血管内グラフトを送達する方法の別の非限定的な例を説明する。血管内グラフトは、上述した送達システム又は別の適切な送達システムを用いて開いた手術部位を介して進入して送達することができる。外科手術は、全身麻酔下で、胸骨切開を伴う心肺バイパスを使用して行うことができる。選択的順行性脳灌流を使用して患者の体温を少なくとも28℃まで下げることができるが、最低18℃まで下げることができる。患者の血液循環を阻止又は減少させることができる。大動脈を開くことができ、通常の解剖修復(半弓アプローチ(hemi―arch approach))を行うことができる。腕頭動脈のすぐ近位端で大動脈を横切して大動脈弓21を露出させることができる。図15に示すように、送達システム201のワイヤ端口内に位置するガイドワイヤ17(例えば標準の0.035”のガイドワイヤ)を下行大動脈22内に配置することができる。次に、ワイヤ端口を通って予め送達システムに搭載された別のガイドワイヤ19(例えば0.035”ガイドワイヤ)を左鎖骨下動脈28内に配置することができる。送達システム201が上記のように(図15図18で主フレキシブル支持ガイド具248Dとして示すように)主フレキシブル支持ガイド具を含む場合、主フレキシブル支持ガイド板は、フレキシブルであり、アーチ形に対応する形状と成形することができる。血管内グラフト10Dのステントグラフト34Dの細長い本体48Dは、順行の方式で下行大動脈22内に進むことができるとともに、患者の解剖構造に適応するように、主フレキシブル支持ガイド具248Dを除去及び再形成又は曲げることができる。
【0061】
並行して、ガイドワイヤの前進に続いて、ステントグラフト34Dの第1カフ部材74Dを左鎖骨下動脈28に挿入して位置合わせることができる。使用者は、血管内グラフト10Dのステントグラフト34Dを位置決めるために、装置の位置合わせ及び挿入を完全に可視化している。図16に示すように、ステントグラフト34Dの近位縁35は、大動脈弓21の近位縁37に位置合わせている。送達システムには、左鎖骨下動脈ガイドワイヤ用の二次支持ガイド具254が含むことができ、図15図17に示すように、ガイドワイヤが正しい位置に維持されると確保するように、当該二次支持ガイド具を撤回して取り外すことができる。第1カフ部材74Dを含むステントグラフト34Dの正しい位置決めが確認された後、使用者は、ステントグラフト34Dを展開することができる。特に、ワイヤ230、242を段階的に取り外すことができる。まず、第1カフ部材74D上のワイヤ242Dを取り外すことができ、上述したように、図17に示すように、圧縮スリーブ71Dを「解放」し、第1カフ部材74Dが完全に拡張することを可能にする。そして、図17及び図18に示すように、細長い本体48Dを取り囲む圧縮スリーブのワイヤ230Dを取り外すことができ、ステントグラフト34Dの細長い本体48Dが拡張できるようにする。さらに、ガイドワイヤ及び送達システム201を取り外すことができる。これで、手術の血管内への送達及び展開の手順が完了する。
【0062】
ステントグラフト34Dと大血管との相対位置を調べることができる。使用者は、血管内グラフト10Dを操作してそれを血管内に位置決める能力を有する。必要に応じて、大動脈から他の組織を切除することができる。使用者は、縫合前に扇形開口60Dを残りの2つの分枝血管の周りに適切に位置合わせることができる。図19に示すように、扇形開口60Dを規定するステントグラフト34Dの周囲を大動脈弓内に縫合することができる。特に、図19に示すように、ステントグラフト34Dを大動脈壁に固定するために、縫合ワイヤを扇形開口60Dの底部に配置することができ、縫合ワイヤがステントグラフト34Dの近位縁の周りに周方向に配置され、扇形開口60Dを取り囲むようにすることができる。このようにすることで、ステントグラフト34Dの近位端の開口縁全体を大動脈弓の外部湾曲に縫合することができ、当該外部湾曲は、左総頸動脈の遠位端に位置する。ステントグラフト34Dの近位端が生来の血管の領域2に縫合されて密封されると、手術移植物36Dの縫合カフを腕頭動脈に近い横切された大動脈の縁に縫合することができる。これらの2つの縫合ワイヤの組み合わせにより、腕頭および頸動脈の開口が形成される。外科用グラフト36Dの近位端を洞管接合部の近くの生来の組織に縫合し、1つの移植材料を補足することができる。
【0063】
血管内グラフトを移植するためのステップの手順は、説明のみを意図し、本公開を本明細書で説明したステップの手順に意図していない。なお、血管内グラフトのいくつかの部材は、他の部材に取り付けされるか、又は結合されると説明されているが、これらの部材は、他の部材と一体的に構成することができる。例えば、縫合カフは、外科用グラフトと一体的に構成することができる。本明細書に引用されているすべての特許、特許出願、および出版物は、その全体が参照により組み込まれている。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19