(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】眼および脳の生体電気機能を測定および表示する装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20231109BHJP
A61B 5/398 20210101ALI20231109BHJP
【FI】
A61B3/10 800
A61B5/398
(21)【出願番号】P 2021502973
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 US2019040261
(87)【国際公開番号】W WO2020023190
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-29
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521020480
【氏名又は名称】シウォフ、ロナルド
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】シウォフ、ロナルド
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-085747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0024964(US,A1)
【文献】Anna Chabuda, et al.,High Frequency SSVEP-BCI With Hardware Stimuli Control and Phase-Synchronized Comb Filter,IEEE TRANSACTIONS ON NEURAL SYSTEMS AND REHABILITATION ENGINEERING,米国,IEEE,2018年02月01日,VOL. 26, NO. 2,pp. 344-352
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
A61B 5/24-5/398
A61B 5/05-5/0538
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の眼に表示された視覚刺激によって誘発される神経系の電気活動を測定するシステムであって、
a.視覚刺激を被検者に表示する電子視覚表示装置と、
b.前記視覚刺激に応答して前記被検者から発生する電気信号を受け取る少なくとも1つの電極と、
c.前記被検者から受け取った前記電気信号をデジタルデータに変換するアナログ/デジタル変換器と、
d.前記デジタルデータを記録するデジタルデータ記憶媒体と、
e.プログラミングに基づいて、前記
電子視覚表示装置にタイミングシーケンスに従って少なくとも2つ連続画像として前記視覚刺激を表示させるコンピュータの中央処理装置(CPU)と、
f.前記
電子視覚表示装置からの前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像の各々を、前記少なくとも1つの電極が受け取った前記電気信号と同期させる同期装置と
を有し、
前記システムは、さらに、前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像から受け取った前記電気信号の平均値に基づいて、前記中央処理装置(CPU)に信号加算平均されたデジタル波形を計算させるプログラミングを有する、
システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、さらに、
前記
電子視覚表示装置によって前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像が表示されたことを感知するセンサーを有するものである、システム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、
前記センサーは、前記
電子視覚表示装置によって放射された光を感知する光検出器であり、
前記同期装置は、前記少なくとも2つ連続画像を表示するために、前記少なくとも1つの電極が受け取った前記電気信号を、タイミング周期の開始時点に対応する前記光検出器からのデータと同期させるものである、
システム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにおいて、前記光検出器は光ダイオードである、システム。
【請求項5】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記中央処理装置(CPU)は、前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像の表示を制御する命令を実行するものであり、
前記同期装置は、前記
電子視覚表示装置を制御するための命令を送信するタイミングを入力ラグ、表示タイムラグ、またはその組み合わせに合わせて調整することにより、前記少なくとも1つの電極が受け取った前記電気信号を、前記
電子視覚表示装置によって表示される、前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像の各々と同期させるものである、
システム。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、前記同期は、原子時計と直接的または間接的に通信するコンピュータのクロックに基づいて行われるものである、システム。
【請求項7】
請求項1記載のシステムにおいて、
当該システムは、少なくとも2つ連続画像として前記視覚刺激を表示することが可能であり、さらに、
前記
電子視覚表示装置に、各画像について約250ms~約500msの範囲の少なくとも1つの表示速度に対応する速度で視覚刺激画像を表示するように命令するプログラミングを有するものである、
システム。
【請求項8】
請求項1記載のシステムにおいて、
当該システムは、少なくとも10の連続画像として前記視覚刺激を表示することが可能であり、さらに、
前記
電子視覚表示装置に、各画像について約250ms~約500msの範囲の少なくとも1つの表示速度に対応する速度で視覚刺激画像を表示するように命令するプログラミングを有するものである、
システム。
【請求項9】
請求項1記載のシステムにおいて、前記視覚刺激は光を有し、前記中央処理装置(CPU)は、プログラミングに基づいて、前記視覚刺激を少なくとも2回反転させるものである、システム。
【請求項10】
請求項1記載のシステムにおいて、前記視覚刺激は、パターン形状、デザイン、または物体の画像を含み、前記中央処理装置(CPU)は、プログラミングに基づいて、前記視覚刺激を少なくとも4回反転させるものである、システム。
【請求項11】
請求項9記載のシステムにおいて、前記視覚刺激は、方向の変更、光の変更、画像の交互の入れ替わり、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるシークエンスを有するものである、システム。
【請求項12】
請求項9記載のシステムにおいて、
当該システムは、少なくとも2つの連続画像として前記視覚刺激を表示することが可能であり、さらに、
前記中央処理装置(CPU)は、プログラミングに基づいて、前記
電子視覚表示装置に、各画像について約250ms~約500msの範囲の少なくとも1つの表示速度に対応する速度で視覚刺激画像を表示するように命令するものである、
システム。
【請求項13】
請求項9記載のシステムにおいて、
当該システムは、少なくとも10の連続画像として前記視覚刺激を表示することが可能であり、さらに、
前記中央処理装置(CPU)は、プログラミングに基づいて、前記
電子視覚表示装置に、各画像について約250ms~約500msの範囲の少なくとも1つの表示速度に対応する速度で視覚刺激画像を表示するように命令するものである、
システム。
【請求項14】
被検者の眼に表示された視覚刺激によって誘発される神経系の電気活動を測定する方法であって、
a.視覚表示装置により、タイミングシーケンスに従って少なくとも2つ連続画像として視覚刺激を被検者に視覚的に表示する工程と、
b.前記視覚刺激に応答して前記被検者から誘発された電気信号を検出する工程と、
c.前記視覚表示装置により前記少なくとも2つ連続画像の各々が表示された開始時点を検出する工程と、
d.前記誘発された電気信号を前記少なくとも2つ連続画像の各々が前記被検者に表示された開始時点と同期させる工程と、
e.前記少なくとも2つ連続画像について、前記電気信号をデジタルデータに変換する工程と、
f.時間の関数として前記視覚刺激の信号加算平均されたデータを提供するために、前記少なくとも2つ連続画像のデジタルデータを信号加算平均する工程と
を有する、方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、前記少なくとも2つ連続画像を表示するタイミングは、光検出器によって前記視覚表示装置からの光の表示を感知することにより決定されるものである、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記光検出器は光ダイオードである、方法。
【請求項17】
請求項14記載の方法において、
網膜電図(ERG)を前記視覚刺激と同期させる工程は、スイッチを作動させるタイミング、または前記視覚表示装置を制御するためのプログラミング命令を動作するタイミングに基づくものであり、
前記スイッチを作動させるタイミング、または前記視覚表示装置を制御するためのプログラミング命令を動作するタイミングは、入力ラグ、表示タイムラグ、またはその組み合わせに基づいて調整されるものである、
方法。
【請求項18】
請求項14記載の方法において、前記同期させる工程は、原子時計と同期されたクロックに基づくものである、方法。
【請求項19】
請求項14記載の方法において、前記視覚刺激である少なくとも2つ連続画像は、少なくとも2つの反転を有するものである、方法。
【請求項20】
請求項14記載の方法において、前記視覚刺激は、方向の変更、光の変更、画像の交互の入れ替わり、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるシークエンスを有するものである、方法。
【請求項21】
請求項15記載の方法において、前記視覚刺激は、方向の変更、光の変更、画像の交互の入れ替わり、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるシークエンスを有するものである、方法。
【請求項22】
請求項19記載の方法において、前記電気信号は、前記被検者の眼球上または眼球の近傍に配置される電極によって検出されるものである、方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、
前記視覚刺激は、少なくとも10の連続画像としてを表示されるものであり、
前記視覚表示装置は、プログラミングに基づいて
、中央処理装置(CPU)により各画像について約250ms~約500msの範囲の少なくとも1つの表示速度に対応する速度で視覚刺激画像を表示するように制御されるものである、
方法。
【請求項24】
請求項20記載の方法において、前記電気信号は、頭皮に配置される電極によって検出されるものである、方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法において、
前記視覚刺激は、少なくとも10の連続画像として表示されるものであり、
前記視覚表示装置は、プログラミングに基づいて
、中央処理装置(CPU)により各画像について約250ms~約500msの範囲の少なくとも1つの表示速度に対応する速度で視覚刺激画像を表示するように制御されるものである、
方法。
【請求項26】
視覚検査システムのための非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、1若しくはそれ以上のコンピュータ装置によって実行されると、当該1若しくはそれ以上のコンピュータ装置に、
a.視覚表示装置に、タイミングシーケンスに従って少なくとも2つ連続画像として視覚刺激を被検者に表示するように命令する工程と、
b.前記視覚刺激を表示した前記被検者から電気信号を受け取る工程であって、前記電気信号は、前記視覚刺激に暴露された結果、誘発されるものである、前記受け取る工程と、
c.前記視覚表示装置により前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像の各々が表示された開始時点を検出するセンサーからデータを受け取る工程と、
d.前記誘発された電気信号を前記少なくとも2つ連続画像の各々が前記被検者に表示された開始時点と同期させる工程と、
e.前記少なくとも2つ連続画像について、前記電気信号をデジタルデータに変換する工程と、
f.時間の関数として前記視覚刺激の信号加算平均されたデータを提供するために、前記少なくとも2つ連続画像のデジタルデータを信号加算平均する工程と
を実行させる、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項27】
請求項26記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体において、前記センサーは、前記視覚表示装置上の前記少なくとも2つ連続画像の開始時点を検出する光検出器である、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項28】
請求項26記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体において、さらに、
前記視覚刺激である、少なくとも2つの連続画像のデジタルデータを信号加算平均するための命令を有するものである、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項29】
被検者の眼に表示された視覚刺激によって誘発される神経系の電気活動を測定するシステムであって、
a.視覚刺激を被検者に表示する電子視覚表示装置と、
b.前記視覚刺激に応答して前記被検者から発生する電気信号を受け取る少なくとも1つの電極と、
c.前記被検者から受け取った前記電気信号をデジタルデータに変換するアナログ/デジタル変換器と、
d.前記デジタルデータを記録するデジタルデータ記憶媒体と、
e.プログラミングに基づいて、前記
電子視覚表示装置にタイミングシーケンスに従って少なくとも2つ連続画像として前記視覚刺激を表示させるコンピュータの中央処理装置(CPU)と、
f.前記
電子視覚表示装置から放射される光を感知する光検出器と、
g.前記光検出器からの前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像の各々を、当該画像を表示するためのタイミング周期の開始時点と対応するように同期させる同期装置と
を有し、
前記システムは、さらに、前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像から受け取った前記電気信号の平均値に基づいて、前記中央処理装置(CPU)に信号加算平均されたデジタル波形を計算させるプログラミングを有する、
システム。
【請求項30】
請求項29記載のシステムにおいて、さらに、
前記
電子視覚表示装置によって前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像が表示されたことを感知するセンサーを有するものである、システム。
【請求項31】
請求項30記載のシステムにおいて、
前記センサーは、前記
電子視覚表示装置によって放射された光を感知する光検出器であり、
前記同期装置は、前記少なくとも2つ連続画像を表示するために、前記少なくとも1つの電極が受け取った前記電気信号を、タイミング周期の開始時点に対応する前記光検出器からのデータと同期させるものである、
システム。
【請求項32】
請求項29記載のシステムにおいて、プログラミングに基づいて、前記中央処理装置(CPU)は、
(i)前記電気信号のステータスを読み出して時間の関数として、curCountおよびtick countを計算するものであり、ここでtick countは、時間/時間尺度であり、
(ii)tick countの最大値において、当該tick countおよびcurCountをData[x][y]配列に格納するものであり、ここで、xはtick count、yは市松模様のボート当たりのサンプル数であり、
(iii)原子時計の正確なタイミングをクエリーし、
(iv)(Data[x][y]arrays(複数のデータ[x][y]配列))/(全tick count)に基づいて平均配列を決定し、
(v)前記時間尺度を用いて平均配列をディスプレイに表示するものである、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経学的機能回復、神経学、眼科学、視力測定法の分野で利用される生体電気技術に関し、より具体的には、視覚刺激に応答して誘発された神経系の電気活動に対応するデータを抽出および処理するシステム、装置、方法、およびコンピュータ可読媒体に関する。本発明は、さらに、当該システム、装置、方法、およびコンピュータ可読媒体の局所および多局所への用途に関するとともに、パターン反転視覚誘発電位(P-VEP:Pattern Visual Evoked Potential)およびパターン反転網膜電図(PERG:Pattern Electro-Retinal-Gram)を含む、視覚誘発電位(VEP:Visual Evoked Potential)および網膜電図(ERG:Electro-Retina-Gram)への当該システム、装置、方法、およびコンピュータ可読媒体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経学的機能回復、神経学、眼科学、および視力測定法の分野では、脳および眼がどのように視覚情報を処理するかを決定する上で正確なデータ測定および推定が求められている。このようなデータは、視力検査、眼障害、眼疾患、および認知機能障害の診断および治療において利用される。生体電気技術、特に脳波記録法(EEG)は、観察者または患者に対して視覚刺激を与える一連の画像を表示することを含む、神経機能検査および/または視覚検査での決定に利用される。視覚刺激によって生じる電気信号を検出するために電極が所定の位置に配置され、このような電気信号は増幅および記録される。
【0003】
脳波記録(EEG)法は視覚誘発電位(VEP)の測定に使用可能である。所定の位置に電極を配置して脳内の神経活動の結果生じる電気信号を検出することができるが、このような電極は通常、頭皮に配置される。
【0004】
網膜電図(ERG)の場合、眼に対して表示される視覚刺激に応答して誘発される眼の神経活動または電気活動を測定するために、電極は通常、眼球上または眼球の近傍に配置される。また、網膜電図(ERG)の場合、眼から発する電気信号を検出するためにコンタクトレンズ型電極または瞼用電極が通常使用される。
【0005】
脳波記録(EEG)は通常、視覚刺激に応答して誘発される。視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)のデータは、被検者に視覚刺激を表示すると同時にデータを記録することによって生成される。この工程が数回繰り返されることでデータが平均化される。
【0006】
視覚刺激に対する神経系活動を取得するために様々な脳波記録(EEG)装置、視覚誘発電位(VEP)用装置、および/または網膜電図(ERG)用装置が提供されてきた。このような装置の既存の装置では通常、頭皮上または眼上、若しくは頭皮または眼の近傍に電極が配置される。次に、視覚刺激に応答して誘発された信号は通常、増幅されてアナログ/デジタル(A/D)変換器によってデジタル化される。大部分の場合、視覚刺激は、ビデオモニター、ビデオプロジェクター、光源などの映像表示装置によって被検者に対して表示される。反復データ点に対する視覚刺激を制御および管理するために、このような視覚刺激は、大部分の場合、中央処理装置(CPU)とともに、被検者に表示される視覚刺激を高速に切替える、またはオン/オフするために用いられるビデオカード、ハードウェアスイッチ、またはソフトウェアスイッチを備えるコンピュータによって制御される。このような技法では、誘発された電気信号データと視覚刺激を同期させるために、特殊なビデオボード等のハードウェアが必要とされる。外部ハードウェア装置は、視覚刺激の変化を制御するための信号を送信し、そのような制御信号と誘発された電気信号データのタイミングを同期させる。データはアナログ/デジタル変換器によってデジタル化された後平均化され、これにより、時間を関数とする神経応答を表す平均波形が生成される。この工程では、データをまず収集した後、次にリアルタイムで当該データを処理する必要があるため、当該工程の間、誘発された電気信号データは通常、患者または被検者が視覚刺激を受けている時間のほんの一部(通常、半分の時間)の間しか処理されない。このような処理では、効率が損失し、より長期間の検査期間が必要となり、また時間の経過とともに被検者の注力が損なわれることに起因して、非同期生アーティファクトの事象が増加する結果となる。
【0007】
視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)の精度を改善する試みがなされてきた。例えば、米国特許第9,717,465号明細書では、視覚誘発電位(VEP)または網膜電図(ERG)の分析において、視覚刺激の表示に対応しない非同期信号を補償する技法が開示されている。このような非同期信号は、被検者の眼のまばたきによって生じるアーティファクトを含む。しかしながら、非同期データを除外することで器機自体の感度または精度を改善することはできない。
【0008】
結果として、既存の視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)によって生成されるデータ、および視覚的誘発による脳波記録(EEG)法は、視覚情報処理に求められる精度よりも精度が低いものとなる。
【0009】
よって、視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)検査に有用な器機および方法の精度を改善する必要がある。また、データストリームの分析の際、効率の損失を防ぐために、連続的にデータストリームを処理する装置および方法が当該技術分野において必要とされている。さらに、改善された精度およびより高い信頼性をもって、所定期間の間データを同期させる装置および方法が当該技術分野において必要とされている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2014/0024964号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2014/0313488号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2016/0235323号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2010/0091245号明細書
(特許文献5) 米国特許出願公開第2009/0091706号明細書
(特許文献6) 米国特許出願公開第2004/0263780号明細書
(特許文献7) 米国特許第6,475,162号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、連続データストリームを処理する方法、連続データストリームを処理するように動作可能なシステム、およびコンピュータ可読媒体を提供するとともに、刺激の表示と同時に収集されたデータセットを選択するための、ソフトウェアによる分析を提供する。関連器機のタイムラグの原因となる入出力ラグによってデータが損失する可能性がある。
【0011】
視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)の分野では、上記ラグまたは時間ドリフトによりデータ損失が起こることが分かっている。また、(例えば、立上り時間および減衰時間による)時間ドリフトまたはタイムラグは、同期データの信号加算平均を制御するために使用されるハードウェアまたはスイッチ、および/または視覚表示装置の制御に関連していること、さらに、視覚表示装置(例えば、ビデオモニターなど)が信号を受信してから視覚刺激を表示するのに要する時間に起因する表示ラグに関連していることが分かっている。さらに、すべてのコンピュータの内部クロックは時間の経過とともにドリフトするため、各CPU装置の入力タイミング信号が異なってしまい、その結果、臨床データが不正確なものとなる。このような時間ドリフトまたはタイムラグを排除することによって、改善された方法、システム、およびコンピュータ可読媒体を得ることができる。
【0012】
さらに、効率性の向上および非同期生アーティファクトの低減のために、視覚誘発電気信号を連続的で中断されることのないストリームにおいて同期された態様で収集および処理することができる。本発明により、データのフラグメンテーションを回避することができ、その結果データ損失の防止および不正確な結果の回避が可能となる。正確性のために、原子時計を使用して、または原子時計に合わせて調整することで一定期間にわたって同期させることが可能である。
【0013】
本発明は、被検者の眼に表示された視覚刺激によって誘発される神経系の電気活動を測定するシステムであって、
a.視覚刺激を被検者に表示する電子視覚表示装置と、
b.前記視覚刺激に応答して前記被検者から発生する電気信号を受け取る少なくとも1つの電極と、
c.前記被検者から受け取った前記電気信号をデジタルデータに変換するアナログ/デジタル変換器と、
d.前記デジタルデータを記録するデジタルデータ記憶媒体と、
e.プログラミングに基づいて、前記視覚表示装置にタイミングシーケンスに従って少なくとも2つ連続画像として前記視覚刺激を表示させるコンピュータの中央処理装置(CPU)と、
f.前記視覚表示装置から放射される光を感知する光検出器と、
g.前記視覚表示装置からの前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像の各々を、前記少なくとも1つの電極が受け取った前記電気信号と同期させる同期装置と
を有し、
前記システムは、さらに、前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像から受け取った前記電気信号の平均値に基づいて、前記中央処理装置(CPU)に信号加算平均されたデジタル波形を計算させるプログラミングを有する、
システム、を提供する。
【0014】
本発明は、さらに、被検者の眼に表示された視覚刺激によって誘発される神経系の電気活動を測定するシステムであって、
a.視覚刺激を被検者に表示する電子視覚表示装置と、
b.前記視覚刺激に応答して前記被検者から発生する電気信号を受け取る少なくとも1つの電極と、
c.前記被検者から受け取った前記電気信号をデジタルデータに変換するアナログ/デジタル変換器と、
d.前記デジタルデータを記録するデジタルデータ記憶媒体と、
e.プログラミングに基づいて、前記視覚表示装置にタイミングシーケンスに従って少なくとも2つ連続画像として前記視覚刺激を表示させるコンピュータの中央処理装置(CPU)と、
f.前記視覚表示装置から放射される光を感知する光検出器と、
g.前記光検出器からの前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像の各々を、当該画像を表示するためのタイミング周期の開始時点と対応するように同期させる同期装置と
を有し、
前記システムは、さらに、前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像から受け取った前記電気信号の平均値に基づいて、前記中央処理装置(CPU)に信号加算平均されたデジタル波形を計算させるプログラミングを有する、
システム、を提供する。
【0015】
さらに、被検者の眼に表示された視覚刺激によって誘発される神経系の電気活動を測定する方法であって、
a.視覚表示装置により、タイミングシーケンスに従って少なくとも2つ連続画像として視覚刺激を被検者に視覚的に表示する工程と、
b.前記視覚刺激に応答して前記被検者から誘発された電気信号を検出する工程と、
c.前記視覚表示装置により前記少なくとも2つ連続画像の各々が表示された開始時点を検出する工程と、
d.前記誘発された電気信号を前記少なくとも2つ連続画像の各々が前記被検者に表示された開始時点と同期させる工程と、
e.前記少なくとも2つ連続画像について、前記電気信号をデジタルデータに変換する工程と、
f.時間の関数として前記視覚刺激の信号加算平均されたデータを提供するために、前記少なくとも2つ連続画像のデジタルデータを信号加算平均する工程と
を有する、方法、を提供される。
【0016】
本発明は、また、視覚検査システムのための非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、1若しくはそれ以上のコンピュータ装置によって実行されると、当該1若しくはそれ以上のコンピュータ装置に、
a.視覚表示装置に、タイミングシーケンスに従って少なくとも2つ連続画像として視覚刺激を被検者に表示するように命令する工程と、
b.前記視覚刺激を表示した前記被検者から電気信号を受け取る工程であって、前記電気信号は、前記視覚刺激に暴露された結果、誘発されるものである、前記受け取る工程と、
c.前記視覚表示装置により前記視覚刺激である前記少なくとも2つ連続画像の各々が表示された開始時点を検出するセンサーからデータを受け取る工程と、
d.前記誘発された電気信号を前記少なくとも2つ連続画像の各々が前記被検者に表示された開始時点と同期させる工程と、
e.前記少なくとも2つ連続画像について、前記電気信号をデジタルデータに変換する工程と、
f.時間の関数として前記視覚刺激の信号加算平均されたデータを提供するために、前記少なくとも2つ連続画像のデジタルデータを信号加算平均する工程と
を実行させる、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体、を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、以下の発明の好適な実施形態の詳細な説明および添付の図面を参照することで十分に理解されるとともに、さらなる利点が明らかになると考えられる。
【
図1】
図1は、RS社製光学素子を備えるヘッドセットとともに動作するディスプレイを有する、高解像度マルチメディアインターフェース(HDMI(登録商標))画面を備えたスマートフォン装置、またはLCDディスプレイである本発明の1実施形態のアセンブリの平面図を示す。
【
図2】
図2は、RS社製光学素子を備えるヘッドセットと連動するディスプレイを有するラップトップ上の本発明の1実施形態のアセンブリの平面図を示す。
【
図3a】
図3aは、本システムおよび方法の1実施形態における工程1~4のフロー図を示す。
【
図3b】
図3bは、本システムおよび方法の1実施形態における工程5~6のフロー図を示す。
【
図3c】
図3cは、本システムおよび方法の1実施形態における工程7~8のフロー図を示す。
【
図4】
図4は、視覚誘発電位(VEP)を正確に測定および表示するための本発明の方法の工程を示す別のフロー図である。
【
図5】
図5は、本発明に従って動作可能なディスプレイを有する装置の代表的な構成要素を示すアーキテクチャ図である。
【
図6】
図6は、被検者の眼に表示された視覚刺激によって誘発された神経系の電気活動を測定するための方法の1実施形態を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、本方法の1実施形態における工程を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、本システムおよび方法を使用した、500ms間における視覚誘発電位(VEP)応答の例を示すグラブである。
【
図9】
図9は、本システムおよび方法を使用した、250ms間における網膜電図(ERG)応答の例を示すグラブである。
【
図10】
図10は、本システムおよび方法を使用した、10秒間、1Hz(2反転/秒)、および起点85%~15%での光応答を示す視覚誘発電位(VEP)の例を示すグラブである。
【
図11】
図11は、本システムおよび方法を使用した、10秒間、2Hz(4反転/秒)、および起点85%~15%での光応答を示す網膜電図(ERG)の例を示すグラブである。
【
図12】
図12は、本システムおよび方法を使用した、10秒間、1Hz(2反転/秒)、および起点90%~10%(画素反応時間を測定するための標準パーセント)での光応答を示す視覚誘発電位(VEP)の例を示すグラブである。
【
図13】
図13は、本システムおよび方法を使用した、10秒間、2Hz(4反転/秒)、および起点90%~10%(画素反応時間を測定するための標準パーセント)での光応答を示す網膜電図(ERG)の例を示すグラブである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、パターン反転視覚誘発電位(P-VEP)およびパターン反転網膜電図(PERG)を含む(但し、これらに限定されるものではない)、視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)を測定および表示するための装置、システム、およびコンピュータ可読媒体について説明するとともに、パターン反転視覚誘発電位(P-VEP)およびパターン反転網膜電図(PERG)を含む(但し、これらに限定されるものではない)、視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)の局所および多局所への適用について説明する。本発明の上位概念においては、正確な結果を表示するために、アルゴリズム、光ダイオードおよび原子時計を用いて生体データを測定、収集、および分析する手段が提供される。
【0019】
視覚刺激は、パターン反転視覚誘発電位(P-VEP)およびパターン反転網膜電図(PERG)に関するデータを含む(但し、これらに限定されるものではない)。これらは、視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)の局所および多局所への適用を含む、局所および多局所の双方に関するデータの抽出のために利用される。
【0020】
本発明の目的は、データ精度の向上のために、眼または脳からの増幅電気信号を視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)装置によって生成される刺激表示と同期させるシステムまたは方法を提供することにある。同期は、デジタル式信号またはアナログ式信号、すなわち直接信号または間接信号に対して行うことができる。
【0021】
さらに、本装置はインターネットに接続され、コンピュータのクロックを原子時計または他の時間基準と同期させて、使用される任意のコンピュータに参照基準を提供するソフトウェアを含むことができる。次に、標準化されたクロックを使用してコンピュータ装置により画像が生成され、この画像に時刻署名が刻印される。ディスプレイおよびビデオカードの種類によって立上り時間および減衰時間が異なるため、本実施形態ではディスプレイのオン設定およびオフ設定を読み込む光ダイオードが使用される。この情報は、増幅器およびA/D変換器によって生成されるデータストリームの後処理に使用される。電気生理学的データは後処理されるため、より短期間により多くのデータを収集することが可能となり、その結果、より正確な視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)が得られる。ソフトウェアの後処理で、ディスプレイが異なることによって生じる相違点が修正されるため、視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)を携帯電話、タブレット、ラップトップ、および仮想現実ディスプレイで実行することが可能となる。タイムスタンプ付きデータは、ディスプレイに起因して生じた遅延に応じて補正される。次に、タイムスタンプ付きデータは、平均加算され、処理された後、グラフィック形式および数値形式の双方の機械可読形式で格納されたデジタル形式でユーザーに表示される。
【0022】
本発明によれば、所定の時間周期で一連の視覚刺激を被検者に表示し、脳波記録(EEG)信号および網膜電図(ERG)信号を測定する装置が提供される。この装置は、中央処理装置(CPU)と、電源装置(PSU)と、ランダムアクセスメモリ(RAM)と、ハードドライブ(HDD)とを有することができる。さらに、この装置は、少なくとも1つの電極と、光を電流に変換するための光ダイオードなどの光検出器を含むことができる。中央処理装置(CPU)はソフトウェアによって以下のように動作可能である。(i)視覚刺激によって誘発された網膜電図(ERG)信号を変換してデータを提供し、(ii)網膜電図(ERG)信号のステータスを読み出して時間の関数としてcurCountおよびtick countを計算し(ここで、tick count=時間/時間尺度)、(iii)tick countの最大値で、tick countおよびサンプル数をData[x][y] array(データ[x][y]配列)に格納し(ここで、x=tick count、y=画像当たりのサンプル数)、(iv)原子時計の正確なタイミングをクエリーし、(v)(Data[x][y]arrays(複数のデータ[x][y]配列))/(全tick count)に基づいて平均配列を決定し、(vi)時間尺度を用いて平均配列をディスプレイに表示する。
【0023】
画像は、パターン反転刺激に関するISCEV(国際臨床視覚電気生理学会)の基準に基づいて、反転率=2反転/秒(rps)または1Hz、および時間尺度500msで表示することができる。上記反転率は通常視覚誘発電位(VEP)を測定するために使用される反転率である。網膜電図(ERG)の場合、反転率は通常、4反転/秒(rps)または2Hz、および時間尺度250msに設定される。しかしながら、器機の操作者により、および方法において好適と考えられる他の反転率を用いることもできる。装置は、即時使用可能な心拍数モニターのフロントエンドである増幅器(例えば、心電図(ECG)を心拍数と相関させるために使用される市販の心電図(ECG)器機におけるもの)を備えていてもよく、当該増幅器は、即時復元機能およびリードオフ検出機能と、アナログ/デジタル(A/D)変換器基板とを有する。ここで、当該基板では、脳波記録(EEG)または網膜電図(ERG)装置の1のアナログ出力がアナログ基板の1の入力に接続され、アナログ基板の1のアナログ入力が光検出器用基板または当該光検出器(例えば光ダイオードの基板)の出力に接続されている。アナログ入力の走査範囲を、±2V(入力中間値=1.65V)、サンプリングレート=1920サンプル/秒(ISCEVの最低レートは1000サンプル/秒)、サンプル合計=10秒の走査時間に対して10xサンプリングレート(サンプル合計:19200)に設定するのが好ましい。ディスプレイは、LED Backlit IPS LCD、リフレッシュレート60Hz、および1920x1080のFHD(フルハイビジョン)を備えるモニターであることが好ましく、ディスプレイは、リフレッシュレート65Hz、および800x480のFHDを備え、一定期間におけるtick countの最大値が市松模様のボード(checkerboard)の数(視覚誘発電位(VEP)の場合20、網膜電図(ERG)の場合40)と等しいことがより好ましい。装置は、光ダイオードの応答時間が2μsに設定されることが好ましく、それにより、CPUは、光ダイオードなどの感光素子の応答時間を比較してソフトウェアタイマーTickを生成し、それによりディスプレイの入力ラグおよび応答時間の遅延を決定する。データは、被検者による視覚情報処理の測定のために、頭皮から測定される視覚誘発電位(VEP)および脳波記録(EEG)、網膜電図(ERG)(眼に配置された電極)、パターン反転視覚誘発電位(P-VEP)および/またはパターン反転網膜電図(PERG)、多局所網膜電図(ERG)、および多局所視覚誘発電位(VEP)として抽出されることが好ましい。
【0024】
本発明は、眼および脳の視覚検査を実行するための装置および方法に関し、当該視覚検査には観察者または患者に表示される一連の視覚刺激画像が含まれる。この技術は、脳および眼が視覚情報をどのように処理について測定するものである。このような技術は、神経学的機能回復、神経学、眼科学、視力測定法の分野で有用であり、上述したように、視覚誘発電位(VEP)または網膜電図(ERG)から情報を抽出するシステム、方法、およびコンピュータ可読媒体を有する。ラップトップ、タブレット、携帯電話、および仮想現実ゴーグルを含む任意のディスプレイ上に、正確かつ信頼性の高いデータが直接リアルタイムで表示される。
【0025】
本発明は、データ断片の集合ではなく、連続データストリームを処理することができる。このような連続データストリームは、刺激の表示と同時に収集されたデータセットを選択するためにソフトウェアにより分析される。
【0026】
本明細書において、「視覚刺激」は眼に対して表示され、神経応答または電気信号を誘発することができる任意のタイプの視覚刺激を意味し、この神経応答または電気信号を誘発によって被検者の身体の神経系を通して眼が直接的または間接的にこの視覚刺激を処理することができる。本発明で利用する視覚刺激は、所定のタイミング周期で被検者に表示される一連の2若しくはそれ以上の画像として表示することができる。タイミング周期のタイミングは一回の検査と通して一貫していることが好ましいが、代替的に変化させることもできる。視覚刺激の非限定的な例としては、パターン形状、非パターン形状、抽象デザイン、非抽象デザイン、場所、物体、顔、顔画像、人など(但し、これらに限定されるものではない)の物の画像が考えられる。視覚誘発電位(VEP)検査用の視覚刺激に物体が含まれている場合、パターン反転視覚誘発電位(PVEP)と呼ばれることが多い。また、網膜電図(ERG)検査用の視覚刺激に物体が含まれている場合、パターン反転網膜電図(P-ERG)と呼ばれることが多い。
【0027】
本明細書において、画像の「反転」、または画像若しくはその他の視覚刺激(以下、「画像」と総称する)を「反転させる」とは、画像表示を変化させることを意味する。ここで画像表示を変化とは、(1)回転(例えば、90~180度回転)、上下正向きから上下逆向き、および左右対称を含む(但し、これらに限定されるものではない)、方向の変更、(2)(例えば、白色部分が暗色に変化し、暗色部分が白色に変化するなどの)光の反転/光が反転した画像を含む(但し、これらに限定されるものではない)、画像における光の変更、(3)第1の画像の次に後続の異なる画像を連続表示することを含む(但し、これらに限定されるものではない)、画像の交互の入れ替わり、および(4)(特定の画像またはデザインを有する光、若しくは閃光などの(但し、これに限定されるものではない)特定の画像またはデザインを有さない光などの(但し、これらに限定されるものではない)視覚刺激を有する「オン」位相と、被検者に対して光が全く提供されない、またはほとんど提供されないことを特徴とする、若しくは灰色またはその他の色の画面などの低減された光の周期を特徴とする「オフ」位相との間で交互に入れ替わるオン-オフを含む。上記画像表示の任意の組み合わせ、またはそれらの反転を実行する、または反復することができる。光の変更、方向の変更、および画像の交互の入れ替わりの利点は、周期の双方の位相において光応答データ収集し、利用することができるため、同期間に2倍のデータを収集することが可能となる、若しくは同じ時間またはより少ない時間でより多くのデータを取得することが可能となる点にある。患者に対して次の画像反転、すなわち、方向の変更、光の変更、画像の交互表示、またはその組み合わせが表示されることが好ましく、また、方向の変更、光の変更、またはその組み合わせが表示されることがより好ましい。
【0028】
オフ位相の間、輝度が低減されるオン-オフ周期を除いて画像輝度は本質的に一定に維持する必要がある。本質的に一定とは、各画像の平均輝度が、明暗の移行時における僅かな変動を除いて同一であり、大きな変化がないことを意味する。輝度に有意な変化があった場合でも、それは画像自体によって生じる誘発電位の変化を阻止することができる僅かな変化でなければならない。例えば、(2±0.2反転/秒(rps)、すなわち、2反転を含み、全周期、1.0±0.1Hzに対応)を用いて)50cd/m2の平均明所視輝度である。パターンのオン/オフ設定に関しては、市松模様のボードは明暗の間で急激に交互に入れ替わる。各画像の平均輝度は、明暗の移行時における僅かな変動を除いて同一であり、大きな変化はない。
【0029】
少なくとも2セットのデータ点の生成には少なくとも2つの画像を表示する必要があり、信号加算平均には少なくとも4セットのデータ点が好ましく、少なくとも8セットのデータ点がより好ましく、少なくとも10セットのデータ点が最も好ましい。上限を変更することは可能だが、実用性と効率を考えると、100または100未満、50または50未満、25または25未満、15または15未満、12または12未満に制限してもよい。
【0030】
異なる種類の映像表示装置では、立上り時間および減衰時間の点で画面間に著しい違いが生じる。一方、同一のディスプレイの画面では大きな変化はない。標準的な視覚誘発電位(VEP)器機では、タイミング機構を完全に再設計しない限り改良された映像表示の利点を活用することはできない。本発明の光ダイオードを用いた、ソフトウェアによる同期および較正によって、CPUの内部クロックおよびビデオカードが異なっている場合でも、標準的な視覚誘発電位(VEP)器機に任意のディスプレイを使用することが可能となる。これは、1つの器機においてP100(陽性波)が98msで生じるのに対し、他の器機では100.2で生じることを意味する。
【0031】
本発明において有用な映像表示装置は、電球、LEDビデオ画面、LCDビデオ画面、プラズマビデオ画面、および陰極線管(CRT)ディスプレイを含み(但し、これらに限定されるものではない)、また、これらの技術を利用した直接表示およびビデオ投影を含む。
【0032】
本発明においては、光検出器を使用して映像表示装置による各視覚刺激画像の表示を検出することができる。好適な光検出器は光ダイオードである。光検出器は、任意の反転を感知して信号を同期装置に伝送し、次に同期装置は、特定の視覚刺激画像の表示の開始部分と誘発神経応答データを同期させる。光電ダイオードを使用する場合は、ディスプレイ上に配置することができ、当該ダイオードはディスプレイを較正しタイミングソフトウェアを調整する同期装置またはコンピュータに接続されている。このような態様で光検出器を使用することにより、連続データストリームを収集および処理することが可能となるが、従来の視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)では、このような連続データストリームの収集および処理は実施されていなかった。これは、前画像が処理されている間、後続画像の誘発電気信号の処理を一時停止する必要があったためであると考えられる。視覚ディスプレイからの光検出器データを用いない従来のシステムでは、連続ストリームにおいて同時にデータを同期させ、処理することができなかった。
【0033】
本発明では、視覚刺激によって誘発された電気信号と、光検出器から取得された、視覚刺激画像の表示に対応するタイミングデータ、または以下説明する、表示画像について決定されたラグ調整済みのタイミングとの間の同期は、同期アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0034】
好適な同期アルゴリズムは以下の工程を含むことが考えられる。同時サンプリングを行うアナログ/デジタル変換器(「ADC」)を利用して、(通常、増幅器によって処理後の)脳波記録(EEG)または網膜電図(ERG)データおよび光検出器の双方をサンプリングする工程。本明細書でより詳細に説明する、オンタイミングでデータをサンプリングする工程。いずれにしても、視覚刺激画像のタイミング周期の1周期毎に2回若しくはそれ以上行われる。アナログ/デジタル変換器(「ADC」)による同時サンプリングとは、全ての回線が同時にサンプリングされることを意味する。例えば、典型的な脳波記録(EEG)システムは最小で単一回線、最大で256回線を有することができる。例えば、回線を同時にサンプリングする場合、脳波記録(EEG)/網膜電図(ERG)の増幅器は、光検出器のサンプル1と時間的整合性を持って直接対応し、脳波記録(EEG)/網膜電図(ERG)データのサンプル2は光検出器のサンプル2と対応する。このようなサンプリングは、被検者に対する特定の検査の間に取得されたデータ全体またはデータの一部(但し、全ての場合において少なくとも2つの画像に関するデータ)に対して行うことができる。
【0035】
検査終了後、光検出器応答における最小電圧および最大電圧を求める工程。前記最小電圧および最大電圧の平均値を計算する工程。この平均値が「閾値」電圧である。画像が映像表示装置上で変化(例えば、周期におけるオン、または反転)時点に対応して閾値電圧を超える画像サンプル数を決定する工程。前記データを平均化して、時間の関数として電気信号強度の平均波形を提供する工程。
【0036】
上記アルゴリズムは、当業者であれば、主にMicrosoft Windows(登録商標)のオペレーティングシステム上に実装され、プラットフォームに依存しない、オブジェクト指向のプログラミング言語であるC#(但し、これに限定されるものではない)などの市販のプログラミングプラットフォームを用いてプログラミングすることができる。.NETフレームワークの一部であるC#は、Microsoft Intermediate Language (MSIL)にコンパイルされる。しかしながら、C++およびJava(登録商標)などの他のプログラミング言語を使用することも可能である。
【0037】
本発明の任意のまたは全ての用途において、サンプリングデータ全体を平均波形に使用することができる。代替的に、平均波形を決定する際、一部のデータを選択することができる。平均波形に使用するデータは、150ms、200ms、250ms、または300ms経過時点で収集されたデータに制限してもよく、また、閾値電圧を超えた各時点、若しくは各画像変更または画像反転の表示後、200ms経過した時点が好ましい。
【0038】
本発明により、検査結果の精度および信頼性を向上させることができることが分かった。これは、理論によって制限することを意図するわけではないが、タイムラグまたはドリフトを低減または排除し、検査時間を縮小する一方で同量のデータを取得する能力により、神経疲労、および非同期データの事象を低減することができる結果的であると考えられる。また、視覚刺激のタイミング周期を制御するために使用されるスイッチに関連する入力ラグ、および映像表示装置が画像表示に関する命令または信号を受信した時間に対して、当該装置が画像を表示するために必要な時間に関連する映像表示装置のラグなどのタイムラグを決定することにより、同期が実現できる。次に同期装置は、スイッチ、ビデオカード、または他の制御装置が、映像表示装置に画像を表示させるための信号を送信するタイミングに基づいて、神経応答データとCPUによって使用されるクロックと同期させることで、複合遅延時間を調整する。器機の遅延時間の決定については、器機のウォームアップが完了し安定動作状態にあるときに行う必要がある。また、その後器機は、一般的に常時安定している必要があるが、器機の動作効率が変化した場合、または変化しつつある場合は、遅延時間を再計算または再決定する必要がある。
【0039】
本発明においては、神経応答データを原子時計と同期させることで、データドリフトを最小限にして器機間の違いを排除する。
【0040】
好適な実施形態において、コンピュータのクロックを原子時計に同期させるためにインターネット接続とソフトウェアが提供され、これにより標準化されたクロックが提供される。この標準化されたクロックにより使用する任意のコンピュータに参照基準が提供される。次に、前記標準化されたクロックを使ってコンピュータ装置により画像が生成され、この画像に時刻署名が刻印される。ディスプレイおよびビデオカードの種類が異なることによって生じる異なる立上り時間および減衰時間の問題に対処するために光ダイオードなどの光検出器が利用される。この光検出器により、ディスプレイのオン設定およびオフ設定が読み込まれる。この情報は、増幅器およびA/D変換器によって生成されるデータストリームの後処理に使用される。電気生理学的データは後処理されるため、より短期間により多くのデータを収集することが可能となり、その結果、より正確な視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)が得られる。ソフトウェアの後処理で、ディスプレイが異なることによって生じる相違点が修正されるため、視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)を、非限定的な例として、携帯電話、タブレット、ラップトップ、コンピュータ、テレビ、および/または仮想現実ディスプレイを含む、ディスプレイ画面を備える多様な装置上で実行することが可能となる。タイムスタンプ付きデータは、ディスプレイに起因して生じた遅延に応じて補正される。次に、タイムスタンプ付きデータは、平均加算され、処理された後、グラフィック形式および数値形式の双方の機械可読形式で格納されたデジタル形式でユーザーに表示される。
【0041】
現在の国際臨床視覚電気生理学会(ISCEV)のガイドラインは、視覚誘発電位(VEP)の刺激パラメーターの測定および定義に関するガイダンスを提供している(VEP Standard 2016 draft 2016-02-24 jv012.docx02-24における「Society for Clinical Electrophysiology of Vision (ISCEV) Guidelines for clinical visually evoked potentials - 2016 update」を参照)。刺激は通常、ディスプレイ画面の任意の物理的なサイズに合わせて適切な視野サイズに調整され、50cm~150cmの視察距離を置いて画面上に生成される。2±0.2反転/秒(rps)の反転率を用いて、許容範囲内である50cd/m2の平均明所視輝度を得る。この反転率は、2反転を含む、全周期、1.0±0.1Hzに対応する。
【0042】
全視野臨床網膜電図検査におけるISCEV基準(2015年度改訂)は、全視野臨床網膜電図検査(ffERGまたはERG)について更新および改訂されたISCEV基準を提供する。ISCEVで定義された網膜電図(ERG)の一連の基準には、刺激(cd s m-2での閃光強度)および順応状態に応じて言及される以下の6つのプロトコールが含まれる。1.暗順応0.01ERG(桿体系によって誘発される双極細胞の応答)、2.暗順応3ERG(視細胞と双極細胞の桿体系および錐体系双方から発生する複合応答)、3.暗順応10ERG(視細胞機能を反映する、強化されたa波を伴う複合応答)、4.暗順応律動様小波(主にアマクリン細胞からの応答)、5.明順応3ERG(錐体系からの応答、錐体系視細胞およびオフ型双極細胞から発生するa波、オン型・オフ型双極細胞から発生するb波)、6.明順応30HzフリッカーERG(感光性錐体経路によって誘発される応答)。2015年度のISCEVガイドラインによると、患者の準備には以下が含まれる。(i)瞳孔を最大限に開く。(ii)暗順応プロトコール開始前に20分間暗順応させる。(iii)明暗順応プロトコール開始前に10分間明順応させる。(iv)高照度の光による部分的な明順応を防ぐために、低強度の閃光をより高強度の閃光の前に表示する。(v)暗順応期間の後、暗赤色光の下で角膜コンタクトレンズ電極を挿入する。明赤色光を避ける。(vi)コンタクトレンズ電極を挿入後、5分間の間追加の暗順応期間を与える。(vii)(眼底撮影法、蛍光眼底血管造影法、およびその他による)網膜撮像用に高照度の光を使用した後、通常の室内照明で少なくとも30分間の回復時間を与える。(viii)患者に眼を動かさずに固視するように依頼する。眼球運動によって電極の位置が変化する可能性があり、それにより瞼または電極によって光が遮断され、電気的アーティファクトが生じる可能性がある。角膜、眼球結膜、または下瞼の皮膚と接触する電極は、正入力と接続して、ISCEV基準に準拠した全視野網膜電図(full-field ERG)を記録する活性電極として使用される。このような電極は、コンタクトレンズ電極、導電性繊維および導体箔、結膜用ワイヤーループ、角膜用ウィック電極、および皮膚電極を含む。ISCEV基準では、被検者の視野全体に均一の輝度を提供するために、全視野(Ganzfeld)を使用することが要求される。通常これは、ドームまたは積分球を用いて達成される。固視点が提供され、刺激装置が眼を観察することによって固視の監視が可能となるようにする必要がある。標準的な閃光および背景は、CIE座標の近似値がx=0.31、y=0.32の可視白色である。明所視輝度および暗所視輝度は各刺激について特定される。
【0043】
暗所視(桿体)応答は、ISCEV基準に基づいて、20分間の暗順応により分離され、次に単一閃光または10Hzのフリッカーである短波長刺激が提供される。明所視(錐体)応答は、暗順応の前または後に取得することができる。桿体は20Hzを超えるフリッカー刺激を追従することができないため、少なくとも10分間の明順応条件下で、単一閃光(680nmを超える刺激波長)または30Hzのフリッカー刺激によって錐体視細胞の機能が主に測定される。明所視応答によって潜時が短い(30~32ms)小さなb波の振幅が発生するが、暗所視条件下では、潜時がより長い(60ms)、より大きなb波の振幅が発生する。要素は、最長系列(またはm系列)と呼ばれる明暗の疑似ランダム系列で刺激される。その結果生成される波形は全視野臨床網膜電図検査(ffERG)の波形に類似している。すなわち、第1の陰性波(N1またはa波)の次に陽性波(P1またはb波)が続き、さらに第2の陰性波(N2またはc波)が続く。
【0044】
視覚誘発電位(VEP)の記録には、焼結銀塩化銀電極、標準銀塩化銀電極、またはゴールドカップ(gold cup)電極などの皮膚電極が推奨されている。皮膚の準備は洗浄、および良好かつ安定した電気接続を確実にするために用いられる適切なペーストまたはゲルによって行われる。20Hz~40Hzで測定される場合、電極と皮膚の接触インピーダンスを5Kオームより低くする必要がある。電気的干渉を低減させるために、電極と皮膚の接触インピーダンスの電極間における違いは1Kオーム未満である必要がある。通常電極は、頭部のサイズに比例して目印となる骨に関連して頭皮に配置される。前頭部/後頭部の正中線の計測は、頭頂部に亘る、鼻根点(nasion)と外後頭隆起点(inion)との間の距離に基づいている。活性電極は視覚野Oz上の後頭部頭皮に配置され、参照電極はFzに配置される。また、別の電極が接地に取り付けおよび接続される。一般的に利用される接地電極配置位置は、前額部、頭頂部(Cz)、乳様突起、耳朶(AIまたはA2)、または両耳朶連結(linked earlobe)を含む。「VEP Standard 2016 draft(視覚誘発電位(VEP)基準、2016年草稿)、2016-02-24 jv012.docx02-24 jv012.docx (2016年2月)」における「Odorn et al.,ISCEV standard for clinical visual evoked potentials(オードンら、臨床視覚誘発電位に関するISCEV基準(2016年改訂)」を参照。視覚誘発電位(VEP)では、網膜電図(ERG)応答を発生させる画像表示に応答して時限データが減算される。この信号は、繰り返し平均化された場合、脳の無作為の興奮によっては発生した信号ではなく、画像によって発生した信号と考えられる。
【0045】
網膜電図(ERG)で利用される電極は、瞼用電極およびコンタクトレンズ型電極を含む。網膜電図(ERG)のタイミングシーケンスは通常、眼の明順応性とともに、刺激強度、空間特性、および色特性に関連する。本システムは、連続した少なくとも10の画像として視覚刺激が表示することが好ましく、またCPUは、視覚表示装置に、少なくとも1画像につき約250ms~約500ms、または約125ms~約250msの範囲の表示速度で視覚刺激を表示するように命令するプログラミングを有することが好ましい。市販の網膜電図(ERG)用電極の非限定的な例としては、使い捨て用ERG電極DTL PLUS ELECTRODE(登録商標)の商品名で販売されている、銀およびナイロンでできた医療グレードの角膜用低インピーダンス繊維電極、および網膜に対する光刺激によって動作可能な網膜電図(ERG)検査用コンタクトレンズを含む。このコンタクトレンズは、厚さ1オングストローム(10-10メートル)の金製環状体でできており、ERG electrode ERG-JET(登録商標)の商品名で販売されている粘性導電性液などの粘性導電性液を使用して角膜に接触するように配置することができる。記録用電極の種類としては、Burrian-Allen電極、Dawson-Trick-Litzkow電極、ERG-Jet電極、Mylar電極、皮膚電極、コットンウィック電極、およびHawlina-Konec電極を含む。
【0046】
本装置は通常、フィルターを備えるアナログ増幅器を含む。当該増幅器によって100倍の利得、および演算増幅器セットによって11倍の利得を得ることができ、これは全体として1100v/vの利得となる。このような構成により、本装置では、2.7mvの信号を検出することが可能となる。このような増幅レベルを提供できる好適な増幅器は、Analog Devices Inc.(アメリカ合衆国、マサチューセッツ州、ノーウッド、モデル:AD 8232)から入手可能である。
【0047】
また、本発明の目的のために、Diopsys Inc.(アメリカ合衆国、ニュージャージー州、パイン ブルック)の視覚誘発電位(VEP)装置(DiopsysのNOVA(登録商標)VEP検査システムなど)、またはKonan Medical USA(アメリカ合衆国、カリフォルニア州、アーバイン)の視覚誘発電位(VEP)装置(KonanのEvokeDx(登録商標)VEP検査システムなど)を使用して視覚誘発電位(VEP)データを生成することができる。他の供給元および製造業者の器機もまた使用可能である。本システムおよび方法は、眼または脳からの増幅電気信号を刺激表示と同期させる。本装置はインターネットに接続され、コンピュータのクロックを原子時計または他の時間基準と同期させて、使用される任意のコンピュータに参照基準を提供するソフトウェアを含むことができる。次に、標準化されたクロックを使用してコンピュータ装置により画像が生成され、この画像に時刻署名が刻印される。ディスプレイおよびビデオカードの種類によって立上り時間および減衰時間が異なるため、本実施形態ではディスプレイのオン設定およびオフ設定を読み込む光ダイオードが使用される。この情報は、増幅器およびA/D変換器によって生成されるデータストリームの後処理に使用される。電気生理学的データは後処理されるため、より短期間により多くのデータを収集することが可能となり、その結果、より正確な視覚誘発電位(VEP)が得られる。ソフトウェアの後処理で、ディスプレイが異なることによって生じる相違点が修正されるため、視覚誘発電位(VEP)を携帯電話、タブレット、ラップトップ、および仮想現実ディスプレイで実行することが可能となる。タイムスタンプ付きデータは、ディスプレイに起因して生じた遅延に応じて補正される。次に、タイムスタンプ付きデータは、平均加算され、処理された後、グラフィック形式および数値形式の双方の機械可読形式で格納されたデジタル形式でユーザーに表示される。
【0048】
増幅器はプログラムで制御できるアナログ/デジタル変換器(A/D)に接続されている。好適なアナログ/デジタル変換器(A/D)は、Measurement Computing Corporationから入手可能である(モデル:1608 FS Plusなど)。平均加算および分析はソフトウェアプラットフォームを使用して本システムおよび方法によって実施することができる。
【0049】
本システムおよび方法は、連続サンプリングパターンVEPコードおよび設計を提供する。臨床視覚誘発電位に関する国際臨床視覚電気生理学会(ISCEV)基準(2016年)に準拠して、利用されるハードウェアは以下を含むことが好ましい。Measurement Computing社製USB-1608FS-PLUS-OEM基板のみ、16ビット、8チャネル、100ks/s/ch、同時サンプリング方式DAQ装置、ii)Analog Devices社製AD8232-EVALZ基板、および即時復元機能およびリードオフ検出機能を備えた即時使用可能な心拍数モニターのフロントエンド。総利得1100V/V、計装用増幅器利得=100、演算増幅器利得=11。計装用増幅器は、カットオフ7Hzで利得および高域フィルタリングを適用(40dB/decadeのロールオフに対して2極)。演算増幅器は、カットオフ25Hz、2極、Sallen-Key(サレンキー)型構成で利得および低域フィルタリングを適用。停止時出力電圧=中間電圧=3.3V/2=1.65V。ゴールドカップ電極の入力に基づいた中間電圧1.65Vを超える右足駆動(Right Leg Drive)。マイクロチップ:MCP6031、光ダイオード:PICtail Plus Demo基板。XP Power IML0205S3V3 DC-DC変換器:5V~3.3V絶縁モジュール、最大出力600mA、EFT/サージフィルター設定付き、PC USBからの5Vを3.3Vに変換。モニター:LED Backlit IPS LCD、リフレッシュレート60Hz、1920 x 1080 FHD。Koramzi VR眼鏡実装。Duet Displayアプリ搭載のApple iPhone(登録商標)6により、監視、およびデスクトップとiPhone(登録商標)との拡張ディスプレイが可能となる。ディスプレイはスダンドアローン型VGAまたはHDMI(登録商標)であることが好ましいが、Samsungのスマートフォンもまた使用可能である。
【0050】
例えば、C#で書かれたコード:Microsoft Visual StudioおよびDAQ Universal Library(Measurement Computing社の厚意により掲載)を利用したWindows(登録商標)Forms。アナログ入力の走査範囲:最大利得のために±2Vに設定(入力中間値:1.65V)、精度を1.31mVに設定。サンプリングレート=1920サンプル/秒(ISCEVの最低レート:1000サンプル/秒)。サンプル合計=10秒の走査時間に対して少なくとも10xサンプリングレート(サンプル合計:19200)。パターン刺激:市松模様のボード(16x16、32x32、64x64、128x128)、反転率=2反転/秒(rps)または1Hz。換言すれば、各市松模様のボードは500msの間表示される。USB-1608FS-PLUS OEMの1のアナログ入力は、AD8232-EVALZの出力に接続される。USB-1608FS-PLUS OEMの1のアナログ入力は、MCP6031光ダイオード基板の出力に接続される。
【0051】
図1は、RS社製光学素子を備えるヘッドセットと連動するディスプレイを有するスマートフォン装置である本発明の1実施形態のアセンブリ(100として示す)の平面図を示す。RS社製光学素子を備えるヘッドセット101は、本方法のアルゴリズムに従って分析される生体視覚データを収集するために、102として示す患者の眼と一直線上に整列するように構成されている。ヘッドセット101は、(Tzumi VR Headset No. 4586の商品名で販売されているヘッドセット用マウントなどの)ヘッドセット用マウント103を含む。(Stepper Motor 08Y102S-LW4の商品名で販売されているモーターアセンブリなどの)モーターアセンブリ104は、ヘッドセット用マウント103内に一体化されている。ギヤハウジング105は、ギヤ/モーターアダプター106と、48個の歯を有する駆動ギヤ107と、2つの従動ギヤ用アダプター108と、2つのレンズ延長管109と、96個の歯を有する従動ギヤ110と、RS社製光学素子を備えるヘッドセット101として組み立てられた際、当該ヘッドセットと面一で取付けられた取付プレート111とを含む。RS社製光学素子を備えるヘッドセット101は、本明細書で一般的にスマートフォンとして示す、ディスプレイを有する装置(120として示す)とインタラクションするように構成されており、さらに、生体視覚データを正確に測定し、前記装置のディスプレイ上に当該データを表示するためにソフトウェアをダウンロード可能なように実装されている。スマートフォン120および/またはヘッドセット101はインターネット機能を有し、130で示すように、通信業者のネットワークを介してインターネット接続およびインターネット上での通信が可能であり、これにより131として示す原子時計と通信して精確な時間データをダウンロードする。スマートフォン120は、少なくとも1つのユニバーサルシリアルバス(USB)、おおびWi-Fiおよび/またはBluetooth(登録商標)の機能を備える無線ネットワーク通信業者を含む。ヘッドセット101は、少なくとも1つのUSBポートハードウェアおよび回路を含むことが好ましい。スマートフォン120は、USBを通してヘッドセット101と接続されていてもよい。代替的に、ヘッドセット101は、ネットワーク通信業者への接続機能と、当該ヘッドセット101とスマートフォン120との無線接続のためのWi-Fiおよび/またはBluetooth(登録商標)ハードウェアおよびソフトウェアとを含む。
【0052】
スマートフォンを介して利用される連続サンプリングパターンVEPコードおよび設計用のハードウェアは以下の通りである。Measurement Computing社製USB-1608FS-PLUS-OEM基板のみ、16ビット、8チャネル、100ks/s/ch、同時サンプリング方式DAQ装置、Analog Devices社製AD8232-EVALZ基板、および即時復元機能およびリードオフ検出機能を備えた即時使用可能な心拍数モニターのフロントエンド。総利得1100V/V、計装用増幅器利得=100、演算増幅器利得=11。計装用増幅器は、カットオフ7Hzで利得および高域フィルタリングを適用(40dB/decadeのロールオフに対して2極)。演算増幅器は、カットオフ25Hz、2極、Sallen-Key(サレンキー)型構成で利得および低域フィルタリングを適用。停止時出力電圧=中間電圧=3.3V/2=1.65V。ゴールドカップ電極の入力に基づいた中間電圧1.65Vを超える右足駆動(Right Leg Drive)。マイクロチップ:MCP6031、光ダイオード:PICtail Plus Demo基板。XP Power IML0205S3V3 DC-DC変換器:5V~3.3V絶縁モジュール、最大出力600mA、EFT/サージフィルター設定付き、PC USBからの5Vを3.3Vに変換。モニター:LED Backlit IPS LCD、リフレッシュレート60Hz、1920 x 1080 FHD。Koramzi VR眼鏡実装。ディスプレイはスダンドアローン型VGAまたはHDMI(登録商標)であることが好ましいが、Samsungのスマートフォンもまた使用可能である。
【0053】
C#で書かれたコード:Microsoft Visual StudioおよびDAQ Universal Library(Measurement Computing社の厚意により掲載)を利用したWindows(登録商標)Forms。アナログ入力の走査範囲:最大利得のために±2Vに設定(入力中間値:1.65V)、精度を1.31mVに設定。サンプリングレート=1920サンプル/秒(ISCEVの最低レート:1000サンプル/秒)。サンプル合計=10秒の走査時間に対して少なくとも10xサンプリングレート(サンプル合計:19200)。パターン刺激:市松模様のボード(16x16、32x32、64x64、128x128)、反転率=4反転/秒(rps)または2Hz。換言すれば、各市松模様のボードは250msの間表示される。USB-1608FS-PLUS OEMの1のアナログ入力は、AD8232-EVALZの出力に接続される。USB-1608FS-PLUS OEMの1のアナログ入力は、MCP6031光ダイオード基板の出力に接続される。
【0054】
図2は、RS社製光学素子を備えるヘッドセットと連動するディスプレイを有するラップトップ上の本発明の1実施形態のアセンブリ(200として示す)の平面図を示す。RS社製光学素子を備えるヘッドセット201は、本発明に従って局所および/または多局所生体視覚データを収集するために、患者の眼と一直線上に整列するように構成されおり、本発明のアルゴリズムに従って、パターン反転視覚誘発電位(P-VEP)およびパターン反転網膜電図(PERG)を含む視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)を分析する際に有用である。RS社製光学素子を備えるヘッドセット201は、ディスプレイを有する装置、ここでは220として示すラップトップとインタラクションするように構成されている。ラップトップ220は、少なくとも1つのユニバーサルシリアルバス(USB)、およびWi-Fiおよび/またはBluetooth(登録商標)の機能を備える無線ネットワーク通信業者を含む。また、ラップトップ220は、少なくとも1つのUSBポートハードウェアおよび回路を含むことが好ましい。ラップトップ220および/またはヘッドセット101はインターネット機能を有し、230で示すように、通信業者のネットワークを介してインターネット接続およびインターネット上での通信が可能であり、これにより231として示す原子時計と通信して精確な時間データをダウンロードする。ラップトップ220は、USBを通してヘッドセット201と接続されていてもよい。代替的に、ラップトップ220は、リアルタイムのデータ取得および分析のために、ネットワーク通信業者への接続機能と、当該ヘッドセット201とラップトップ220との無線接続のためのWi-Fiおよび/またはBluetooth(登録商標)ハードウェアおよびソフトウェアとを含む。ラップトップコンピュータ(Windows(登録商標)10)、Measurement Computing社製USB-1608FS-PLUS-OEM基板のみ、16ビット、8チャネル、100ks/s/ch。同時サンプリング方式DAQ装置。ハードウェアおよびソフトウェアは本明細書で記載のように提供される。
【0055】
図3a~3cは、本システムおよび本装置によって実施される方法の1実施形態における工程を説明するフロー図(300として示す)を示す。
図3aは工程1~4を示し、
図3bは工程5~6を示し、
図3cは工程7~8を示す。
図3aを参照すると、301として示す工程1において、市松模様のボードの設定に関するクエリー/質問がメッセージボックスに表示される。有効な市松模様のボードの選択は、16、32、64、および128であってもよい。このような選択は非限定的な例として提供されるものであり、例えば、異なるディスプレイ解像度を有するHDMI(登録商標)ディスプレイを使用する場合は変更することができる。また他の画像タイプを使用してもよい。上記番号は、市松模様パターン表示で使用するために保存される。302として示す工程2において、検査対象の眼に関するクエリーがメッセージボックスに表示される。有効な選択は、L、l、left、Left、R、r、right、Rightであり、市松模様のボードは選択に従って画面の左側または右側に移動する。光ダイオードが市松模様のボード表示される場所の上下方向中央部に配置される。303として示す工程3において、装置の画面上に市松模様のボードを適切に表示するために、form loadを実行して表示装置の画面の有効寸法をロードする。例えば、装置がiPhone(登録商標)の商品名で販売されているスマートフォンである場合、iPhone(登録商標)上で市松模様のボードを適切に表示するために、iPhone(登録商標)の表示画面の有効寸法に対応するようにform loadが実行される。次に、303aで示すように、タイマーが500ms~250msに設定され、タイマーの始動およびUSB-1608FS-Plusからのデータ取得が開始される。プログラムのバックグラウンドで走査が実行され、データがオンボードメモリフィルとしてWindows(登録商標)データバッファに転送される。USB-1608FS-Plusはまた、入力(電圧)に適合するようにデータを自動的にスケール調整することができる。304として示す工程4において、500msまたは250msのtimer tick毎にtick countが増加し、Universal Libraryによって提供されるGetStatus法を用いてUSB-1608FS-Plusのステータスが読み出される。1つの戻り値はcurCountであり、これはUSB-1608FS-PlusとWindows(登録商標)データバッファとの間で転送されたサンプルの総数である。304aで示すように、この数値は、Tick Count vs.Sample Countの配列に格納される。304bで示すように、Tick Count=時間/250msである。例えば、時間=0msでは、tick count=0/250ms=0であり、時間=250msでは、tick count=250ms/250ms=1、時間=500msでは、tick count=500ms/250ms=2である。この結果、304cで示すように、curCount値に基づいて、データストリームにおける各tickの発生個所を決定することができる。304dにおいて、原子時計に対して正確なタイミングに関するクエリーが行われる。
【0056】
305として示す工程5において、本方法によって、tick countが40に達したかどうかについて確認/クエリーが実行される(10秒/0.250s=10秒間で40の市松模様のボード)[時間=10,000ms(または10s)、tick count=10,000ms/250ms=40 tick counts]。はい、の場合、305aで示すように、本方法によって、データ取得およびタイマーが停止される。いいえ、の場合(市松模様のボードの数が40に達していない場合)、305bで示すように、本システムは、現在の市松模様のボードにおける左上のピクセルの色を確認する(デフォルトでは、最初に表示される市松模様のボードは白色)。白色である場合、305cで示すように、市松模様のボードは最初のピクセルを黒色として再描画/リセットされ、市松模様のボード全体の様相が変化する(白色は黒色に、黒色は白色に変化)。黒色である場合、305dで示すように、市松模様のボードは最初のピクセルを白色として再描画/リセットされ、市松模様のボード全体の様相が変化する(黒色は白色に、白色は黒色に変化)。
【0057】
306として示す工程6において、tick countが最大値に達したとき、Windows(登録商標)データバッファが所定の配列にロードされる。306aにおいて、平均化が実行されて、Data[x][y]の新しい配列が生成される。ここで、xはtickの総数(市松模様のボードの数に直接対応)であり、yはサンプル数/市松模様のボードである。306bにおいて、データを断片に切断することにより、実行中のサンプル配列から新しいデータ配列にコピーする。例えば、Data[0][y]は、第1の市松模様のボード表示中に収集されたデータの総数に対応する[x=0tick、y=サンプル数/第1の市松模様のボード]。Data[1][y]は、第2の市松模様のボード表示中に収集されたデータの総数に対応し[x=1ticks(時間=250ms、y=サンプル数/第2の市松模様のボード]...Data[1+n...][yの市松模様のボード=1+n...]である。306cにおいて、光ダイオードによる入力データ配列を走査することにより、各市松模様のパターンの開始および終了が決定/検出される。光ダイオードの応答時間は2μsに設定するのが好ましい。また、アナログ入力のサンプリングが同時に実行される。(USB-1608FS-PLUSへの)アナログ入力のサンプリングと光ダイオードによる高速時間(2μs)での応答が同時に行われることにより、光ダイオードのデータ配列における2点の差分絶対値が所定の閾値よりも高い時点について単に走査して、検査に使用されている画面の明度を調整することが可能となる。黒色の市松模様の升目は低電圧に対応し(LCDがLEDのバックライトを遮断)、一方、白色の市松模様の升目は高電圧に対応する(LCDがLEDのバックライトを透過)。このように、視覚誘発電位(VEP)データ、網膜電図(ERG)データ、パターン反転視覚誘発電位(P-VEP)データ、およびパターン反転網膜電図(PERG)データなどの生体データはパターン表示と直接一致するようになる。306dで示すように、市松模様のパターンを表示するモニターまたはその他の装置の入力ラグおよび応答時間の遅延を決定するために、光ダイオードの応答をタイマーticksにおけるcurCountと比較することが好ましい。306eで示すように、タイミングの正確性を確実なものとするために、前記時間を原子時間のクエリーと比較することが好ましい。
【0058】
工程7の307で示すように、市松模様のボード全体を平均化するnested for loop(入れ子になったforループ)を実装することによりデータの平均化が実行される。平均データ点=Data[x][y]/tick count総数である。したがって、データ点y=2の平均値は、加算:Data[0][2]+Data[1][2]+Data[3][2]+...+Data[tick countの総数][2]および当該加算による総計をtick countの総数で除算することによって得られる。次に、307aで示すように、この平均値を他の配列に加算し、配列の総数で除算することによって配列全体の平均値が決定される。
【0059】
最後に308で示す工程8のにおいて、配列の平均値が、適切な時間尺度(総時間=500msまたは250ms)で折れ線グラフとして画面に表示される。データ取得用基板によって電圧スケーリングが予め提供されていることが好ましいが、電圧を正確にするために、AD8232基板の中間電圧を減算する必要がある。
【0060】
図4は、視覚誘発電位(VEP)を正確に測定および表示するための本発明の方法の工程を示す別のフロー図(400として示す)である。411として示す工程1において、412で例示的に示すように、信号の記録のために被検者の頭皮に電極が配置される。413として示す工程2において、本方法により、市松模様のボード数の設定に関するクエリーが実行される。有効な市松模様のボードの選択は、16、32、64、および128である。上記番号は、市松模様パターン表示で使用するために保存される。414として示す工程3において、本方法により、検査対象の眼に関するクエリーが実行される。有効な選択は、L、l、left、Left、R、r、right、Rightであり、市松模様のボードは選択に従って画面の左側または右側に移動する。光ダイオードが市松模様のボードが表示される場所の左上隅に配置される。415として示す工程4において、装置の画面上に市松模様のボードを適切に表示するために、form loadを実行して表示装置の画面の有効寸法をロードする。例えば、装置がiPhone(登録商標)の商品名で販売されているスマートフォンである場合、iPhone(登録商標)上で市松模様のボードを適切に表示するために、iPhone(登録商標)の表示画面の有効寸法に対応するようにform loadが実行される。416として示す工程5において、
図3a~3cに関連して説明したように、本発明のアルゴリズムが採用される。303aで示すように、タイマーが500ms~250msに設定され、タイマーの始動およびUSB-1608FS-Plusからのデータ取得が開始される。プログラムのバックグラウンドで走査が実行され、データがオンボードメモリフィルとしてWindows(登録商標)データバッファに転送される。USB-1608FS-Plusはまた、入力(電圧)に適合するようにデータを自動的にスケール調整することができる。tick count、時間、市松模様のボード、サンプル数、配列、およびcurCountが、
図3a~3cにおいて説明した本方法のアルゴリズムを実行することにより決定される。417として示す工程6において、視覚誘発電位(VEP)データが装置のディスプレイに表示される。
【0061】
図5は、本発明に従って動作可能なディスプレイを有する装置(500として示す)の代表的な構成要素を示すアーキテクチャ図である。装置501は、本発明を実行する主要装置または器機として示されている。通常、装置501は、CPU/プロセッサ510と、メモリー520と、記憶装置530と、入力/出力装置540とを含むモジュールを有するように構成されている。これらのコンポーネントの各コンポーネントは、例えば、システムバスによって相互接続されている。プロセッサ510は、本発明の方法、システム、およびハードウェア構成部内のコンピュータ可読媒体における命令を実行処理することができる。装置501は、ディスプレイ507と、サービスプロバイダーへのネットワーク接続506を含む。
【0062】
図6は、600として示す、被検者の眼に表示された視覚刺激によって誘発された神経系の電気活動を測定するための方法の1実施形態を示すフロー図である。本方法は、1)612において、タイミングシーケンスに従って、視覚表示装置により、少なくとも2つの連続画像としての視覚刺激を被検者に対して視覚的に表示する工程と、2)613において、視覚刺激に応答して誘発された電気信号を検出する工程と、3)614において、映像表示装置により、視覚刺激である少なくとも2つの連続画像各画像が表示される開始時点を検出する工程と、4)615において、前記誘発電気信号を各画像が被検者に表示される開始時点と同期させる工程と、5)616において、少なくとも2つの前記画像について、前記電気信号をデジタルデータに変換する工程と、6)617において、前記画像からのデジタルデータを信号加算平均して、時間の関数として前記視覚刺激について信号が加算平均されたデータ提供する工程と、を含む。
【0063】
図7は、700として示す、本方法の1実施形態における工程を示すフロー図である。同時サンプリングを行うアナログ/デジタル変換器(「ADC」)を利用して、(通常、増幅器によって処理後の)脳波記録(EEG)または網膜電図(ERG)データがサンプリングされる。本明細書で詳細に説明したように、データのサンプリングはオンタイミングで実行する必要があるが、いずれにしても、視覚刺激画像が表示される周期毎に2若しくはそれ以上実行する必要がある。711において、検査終了後、光検出器応答における最小電圧および最大電圧を求める。713において、前記最小電圧および最大電圧の平均値を計算して、「閾値」電圧を決定する。次に、714において、画像が映像表示装置上で変化(例えば、周期におけるオン、または反転)時点に対応して閾値電圧を超える画像サンプル数を決定する。715において、前記データを平均化して、時間の関数として電気信号強度の平均波形を提供する。
図8は、本システムおよび方法を使用した、500ms間における視覚誘発電位(VEP)応答の例を示すグラブであり、800として示す。グラフ中、点801は、約98ms、0.008ボルトにおいて、眼を介して一次的な後頭部信号が伝達されたことを示す。図9は、本システムおよび方法を使用した、250ms間における網膜電図(ERG)応答の例を示すグラブであり、900として示す。グラフ中、点901は、25ms(偏差:+/-2ms)、0.0039ボルトにおいて、眼を介して一次的な後頭部信号が伝達されたことを示す。図10は、本システムおよび方法を使用した、10秒間、1Hz(2反転/秒)、および起点85%~15%での光応答を示す視覚誘発電位(VEP)の例を示すグラブであり、1000として示す。図11は、本システムおよび方法を使用した、10秒間、2Hz(4反転/秒)、および起点85%~15%での光応答を示す網膜電図(ERG)の例を示すグラブであり、1100として示す。図12は、本システムおよび方法を使用した、10秒間、1Hz(2反転/秒)、および起点90%~10%(画素反応時間を測定するための標準パーセント)での光応答を示す視覚誘発電位(VEP)の例を示すグラブであり、1200として示す。図13は、本システムおよび方法を使用した、10秒間、2Hz(4反転/秒)、および起点90%~10%(画素反応時間を測定するための標準パーセント)での光応答を示す網膜電図(ERG)の例を示すグラブである。
【0064】
以下の実施例を、本発明についてより完全な理解を提供するために提示する。本発明の原理および実施を説明する目的で本実施例に記載した特定の技法、条件、材料、割合、および報告データは例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例1】
【0065】
研究設計:反復測定設計が研究者らにより利用された。本設計により、研究者らは、本システムの従来器機(例えば、Diopsys VEP装置など)に対する信頼性に関する統計的推定を、少数の参加者のサンプル(n=10)を利用して行うことができた。さらに、この設計によって、研究者らが、データ収集に必要なタスクを完了するための訓練を参加者に対して迅速に行うことが可能となった。最後に、本方法により、参加者の測定値における変動を監視することが可能となり、単一の測定値ではなく測定平均値を用いて視覚タイプを診断することができた。
【0066】
患者の選択:最高矯正視力が20/25またはそれ以上である、正常視力の患者5人(「参加者」)が選択された。各被検者のいずれも眼疾患の病歴はなく、視力検査は正常であった。年齢は26歳~76歳にわたり、平均年齢は40.6歳であった。視神経萎縮症疾患を持つ患者5人が追加的に選択された。当該患者は、緑内障に続発した視神経萎縮症、または原発性視神経萎縮の診断を受けた。患者の診断は、OCT、眼底撮影法、および視力検査によって確認された。
【0067】
手順:患者をDiopsys Nova VEP/TRと本システムおよび方法で検査した。本研究の目的のために、1被検者に対し1つの眼を検査した。所定の視角を市松模様の升目毎に30分間生成するために、両方の装置を用いて32x32の市松模様のボードを表示した。頭皮をNuprep(TN)洗浄剤(Weaver & Co.、アメリカ合衆国、コロラド州、オーロラ)で洗浄後、Ten20(TN)導体ペースト(Weaver & Co.、アメリカ合衆国、コロラド州、オーロラ)を使って脳波記録(EEG)用ゴールドカップ電極を適用した。画像は光の反転による変更を利用して反転された。電極は、額の中央部において眉毛から2cm上方の位置、および後頭部の外後頭隆起点から2cm上方の位置、かつ頭頂部を中心に他の電極から等間隔で配置した。30HzでPrep-Check EIM105(TN)(General Devices、アメリカ合衆国、ニュージャージー州、リッチフィールド)を用いて計測した電極インピーダンスは5KΩであった。右眼には眼帯を装着し、左眼を10秒間検査した。上記手順を各装置について全体で3回繰り返した。Diopsys Nova VEP/TRの設定は、OS、10秒間、市松模様パターン 32x32、および視角の測定:30分/市松模様の升目であった。平均輝度を66.25cd/m2として明暗差は85%に設定した。パターン反転速度は、1Hzまたは2反転/秒に設定した。本装置で検査を行う前に電極インピーダンスを確認した。本装置の設定は、OS、10秒間、市松模様パターン測定:30分/市松模様の升目、明暗差:平均輝度を46.9cd/m2として85%であった。パターン反転速度は、1Hzまたは2反転/秒に設定した。
【0068】
分析設計:研究者らは3段階の分析設計を用いた。第1段階において、研究者らは、参加者の視覚タイプを診断するために、参加者に対する反復測定に関する記述分析を用いて平均スコアを生成した。平均スコアが100ミリ秒未満であった参加者は正常視覚タイプと診断され、0と記録された。これに対し、平均スコアが100ミリ秒を超えた参加者は視覚異常タイプと診断され、1と記録された。第2段階において、研究者らは1標本t検定を用いて、参加者が正常視力および視覚異常タイプの集団を均等に表しているかについての尤度を決定した。具体的には、全参加者の平均スコアが当業分野での100ミリ秒における測定値と比較された。第3段階において、研究者らは、参加者の記録値についてカイ二乗検定における独立性検定を行い、本システムとDiopsys装置との間に、視覚タイプおよび参加者の既知の視覚タイプに関する診断に有意差があるかどうかを決定した。
【0069】
結果
第1段階の分析
全参加者は両方の装置によって3回測定を完了した。3回の検査の平均測定値は、102.78~107.36の範囲であった。3回の検査の標準偏差は、18.63~22.61の範囲であった。最後に、全視覚タイプの平均測定値は、105.39であり、この際標準偏差は、19.60であった。
【0070】
第2段階の分析
参加者の平均測定値は、105.39(標準偏差=19.60、表1を参照)であった。1標本t検定の結果では、参加者の平均測定と当業分野での100ミリ秒のカットオフ測定値との間に有意差は示されなかった(t(19)=1.23、p=0.234)。
【0071】
第1段階の分析および第2段階の分析の双方の結果は2つの前提を裏付けるものである。第1に、全参加者の測定データ分布は、3回の検査にわたって一貫した結果であることが分かった。したがって、装置の種類とは関係なく参加者の視覚タイプを診断することにについてデータの一貫性が想定できる。第2に、参加者の平均測定、および正常視力と視覚異常を区別する当業分野でのカットオフ点である100ミリ秒基準は統計的に同じであった。第1段階および第2段階の分析の目的は、正常集団および異常集団が臨床的および統計的に異なることを実証することにある。これにより、第3段階に関連するカイ二乗検定において利用される2つのデータセットについて等しい人数の参加者(すなわち、正常視力および視覚異常の参加者)がいるという前提が裏付けられる。
【0072】
第3段階の分析
視覚タイプ診断の総完了時間において、2つの装置の有効性が異なることが分かった。正常視力および視覚異常に関する双方の装置の交差分布(cross distribution)は、診断の正確性におけるDiopsys装置と本システムとの間の違いを明示している。例えば、Diopsys装置は正常視力の患者のうち4人の患者を異常であると誤診した。また、Diopsys装置は視覚異常の患者5人全員を異常であると診断した。これに対し、本システムは、正常視力の患者5人全員を正常であると正確に診断した。さらに、本システムは、視覚異常の患者うち5人を異常であると正確に診断した。視覚異常参加者のグループのうち残りの2人は、本システムによって「正常」と診断されたが、異常患者集団を精査したところ、当該被検者は正常視力(20/20および20/25)有することが分かった。本システムは、視神経の外観に反して、当該2人の被検者が正常視力を有することを正確に判断したものである。これは、臨床所見と一致した結果である(すなわち、緑内障性視神経萎縮症の患者は疾患の末期になるまで極めて良好な中心視力を有することが多い。)。
【0073】
【0074】
【0075】
診断された視覚タイプと既知の視覚タイプは2つの装置において独立しているという仮説を検証するために、カイ二乗検定における独立性検定を2回行なった。上記と同様にこの2回の検査結果によって2つの装置の有効性が異なることが明らかになった。Diopsys装置では、診断された視覚タイプと既知の視覚タイプとの関係は有意ではなかった(X2(1,n=10)=1.11,p>0.05)。これは、Diopsys装置では、正常視力の患者と視覚異常の患者を効果的に区別することができないことを示す。これに対し、本装置では、診断された視覚タイプと既知の視覚タイプとの関係は有意であった(X2(1,n=10)=4.29,p<0.05)。これは、本システムによって正常視力の患者と視覚異常の患者が効果的に区別されたことを示す。
【0076】
【0077】
本発明を詳細に説明したが、そのような詳細に厳密に従う必要はなく、添付の特許の範囲で定義された本発明の範囲内で追加の修正および変更を当業者に対して示唆可能であることを理解されたい。