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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】送電網システムのための光監視
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018113355
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019017236
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】15/643,427
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ・ラガーヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・キーゼル
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0321799(US,A1)
【文献】特開2016-020900(JP,A)
【文献】特開2015-198085(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102033041(CN,A)
【文献】特表2001-508535(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0320324(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視システムであって、
送電網システムの2つ以上の電力変圧器モニタであって、各々の電力変圧器モニタが、1つ以上の光ファイバ上に配置された複数の光センサを備え、前記光センサが、電力変圧器の内部パラメータを検知するように構成されており、各々の光センサが、電力変圧器内またはその上の場所に配置され、かつ前記複数の光センサのうちの少なくとも1つの他のセンサによって検知される内部変圧器パラメータとは異なる内部変圧器パラメータを検知するように構成されている、電力変圧器モニタと、
1つ以上の検出器ユニットであって、各々の検出器ユニットが、対応する電力変圧器モニタの前記光センサの光信号を、前記検知された変圧器パラメータを表す電気信号に変換するように構成されている、検出器ユニットと、
前記電気信号を分析する分析器と、
前記複数の光センサの動作波長帯域にわたる広い波長帯域にわたって入力励起光を供給する、前記複数の光センサに光学的に結合された広帯域光源と、
前記電力変圧器モニタの各々と通信可能に結合された、共有された制御回路であって、光学通信チャネルによって各々の電力変圧器モニタに通信可能に結合された前記検出器ユニットと、前記分析器と、前記広帯域光源を含む、共有された制御回路と、
前記制御回路に含まれ且つ前記1つ以上の光ファイバと前記検出器ユニットとの間に配置された少なくとも1つの光デマルチプレクサであって、前記複数の光センサからの光信号を波長に応じて空間的に分散させるように構成されている、少なくとも1つの光デマルチプレクサと、を備え、
前記検出器ユニットは、前記光ファイバからの光を伝送構造の出力面を通じて受け取る位置感応性検出器を有し、前記位置感応性検出器は、前記出力面に沿って基準位置から第一の距離で放射される第一の中心波長の光を受ける第一の領域と、前記出力面に沿って前記基準位置から第二の距離で放射される第二の中心波長の光を受ける第二の領域を有し、前記分析器によって使用される、前記伝送構造からの光出力の位置に関する情報を生成する、監視システム。
【請求項2】
前記光センサの各々が、単一の光ファイバ上に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光センサのうちの少なくとも1つが、第1の光ファイバ上に配置され、前記センサのうちの少なくとも1つが、第2の光ファイバ上に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記光センサのうちの少なくとも1つが、コア歪みを検知するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記光センサのうちの少なくとも1つが、溶存ガスを検知するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記溶存ガスが、水素含有ガスである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
監視システムであって、
送電網伝送及び分配システムの1つ以上の構成要素のための2つ以上の送電網構成要素モニタであって、各々の送電網構成要素モニタが、1つ以上の光ファイバ上に配置された複数の光センサを備え、前記光センサが、前記送電網構成要素のパラメータを検知するように構成されており、各々の光センサが、前記送電網構成要素内またはその上の場所に配置され、かつ前記複数の光センサのうちの少なくとも1つの他のセンサによって検知される送電網構成要素パラメータとは異なる送電網構成要素パラメータを検知するように構成されている、送電網構成要素モニタと、
1つ以上の検出器ユニットであって、各々の検出器ユニットが、対応する送電網構成要素モニタの前記光センサの光信号を、前記検知された送電網構成要素パラメータを表す電気信号に変換するように構成されている、1つ以上の検出器ユニットと、
前記電気信号を分析する分析器と、
前記複数の光センサの動作波長帯域にわたる広い波長帯域にわたって入力励起光を供給する、前記複数の光センサに光学的に結合された広帯域光源と、
前記送電網構成要素モニタの各々と通信可能に結合された、共有された制御回路であって、光学通信チャネルによって各々の送電網構成要素モニタに通信可能に結合された前記検出器ユニットと、前記分析器と、前記広帯域光源を含む、共有された制御回路と、
前記制御回路に含まれ且つ前記1つ以上の光ファイバと前記検出器ユニットとの間に配置された少なくとも1つの光デマルチプレクサであって、前記複数の光センサからの光信号を波長に応じて空間的に分散させるように構成されている、少なくとも1つの光デマルチプレクサと、を備え、
前記検出器ユニットは、前記光ファイバからの光を伝送構造の出力面を通じて受け取る位置感応性検出器を有し、前記位置感応性検出器は、前記出力面に沿って基準位置から第一の距離で放射される第一の中心波長の光を受ける第一の領域と、前記出力面に沿って前記基準位置から第二の距離で放射される第二の中心波長の光を受ける第二の領域を有し、前記分析器によって使用される、前記伝送構造からの光出力の位置に関する情報を生成する、監視システム。
【請求項8】
前記分析器は、前記電気信号の分析に基づいて、前記送電網構成要素の1つ以上の機能的条件、状態、及び/または劣化条件を予測、検出、及び/または診断するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
方法であって、
送電網構成要素の各々の内部またはその上に配置された光ファイバ上の複数の光センサを使用して、送電網伝送及び分配システムの複数の前記送電網構成要素の複数のパラメータを光学的に検知することであって、前記光センサのうちの少なくとも1つが、他の光センサとは異なるパラメータを検知するように構成されている、光学的に検知することと、
前記複数の光センサの動作波長帯域にわたる広い波長帯域にわたって入力励起光を供給する広帯域光源に光学的に結合された各々のセンサからの光出力信号を各々の光ファイバ上で搬送される合成光信号に合成することと、
波長に応じて前記合成光信号の各々を光デマルチプレクサによって空間的に分散させることと、
前記空間的に分散された光出力信号に応答して、前記光デマルチプレクサ、前記広帯域光源、検出器ユニットを含む共有された制御回路によって電気信号を生成することであって、前記電気信号が、前記送電網構成要素の前記検知されたパラメータを表す、生成することと、
前記検出器ユニットが、前記光ファイバからの光を伝送構造の出力面を通じて受け取る位置感応性検出器を有し、前記位置感応性検出器は、前記出力面に沿って基準位置から第一の距離で放射される第一の中心波長の光を受ける第一の領域と、前記出力面に沿って前記基準位置から第二の距離で放射される第二の中心波長の光を受ける第二の領域を有し、前記電気信号を分析する分析器によって使用される、前記伝送構造からの光出力の位置に関する情報を生成することと、を含む、方法。
【請求項10】
前記電気信号を分析し、前記電気信号の分析に基づいて、前記送電網構成要素の機能的条件、状態、及び/または劣化条件のうちの1つ以上を予測、検出、及び/または診断することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、送電網伝送及び分配システムを光学的に監視するための技術に関する。本出願はまた、そのような技術に関連する構成要素、装置、システム、及び方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
地球規模の気候変動及び人口増加は、世界中の信頼性の高い、持続可能な、かつクリーンな電力の需要を高めている。これは、すでに過度にストレスがかかっており、かつ老朽化している世界の電力インフラストラクチャにさらに重い負担をかけている。現代の送電網は、複雑で緊密に相互接続されたシステムである。重要な場所での特定の外的条件は、広範囲にわたって予測不可能かつ即座の影響を与える可能性がある。既存の送電網は、効果的な分配通信、監視、故障診断、及び自動化の不足に悩まされ、これは、単一障害からのカスケード効果による広域故障の可能性がさらに高める。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載された様々な実施形態は、電力伝送及び分配システムを監視するためのシステム及び方法を含む。いくつかの実施形態は、光監視システムに関する。監視システムは、1つ以上の電力変圧器モニタを含む。各々の電力分配モニタは、1つ以上の光ファイバ上に配置された複数の光センサを含む。光センサは、電力変圧器のパラメータ、例えば内部パラメータを検知するように構成される。各々の光センサは、電力変圧器内またはその上の場所に配置され、かつ複数の光学センサのうちの少なくとも1つの他のセンサによって検知される変圧器パラメータとは異なる変圧器パラメータを検知するように構成される。監視システムは、1つ以上の検出器ユニットを含む。各々の検出器ユニットは、対応する電力変圧器モニタの光センサの光信号を、検知された変圧器パラメータを表す電気信号に変換する。少なくとも1つの光カプラが、1つ以上の光ファイバと検出器ユニットとの間に配置される。光カプラは、光センサからの光信号を波長に応じて空間的に分散させる。
【0004】
いくつかの実施形態は、送電網伝送及び/または分配構成要素を光学的に監視するための方法を含む。電力変圧器の複数のパラメータは、電力変圧器の内部またはその上に配置された光ファイバ上の複数の光センサを使用して検知される。光センサのうちの少なくとも1つは、光センサのうちの他のものとは異なるパラメータを検知する。各々のセンサからの光出力信号は、光ファイバ上で搬送される合成光信号に合成される。合成された光信号は、波長に応じて空間的に分散される。電気信号は、空間的に分散された合成光出力信号に応答して生成される。電気信号は、電力変圧器の検知されたパラメータを表す。
【0005】
いくつかの態様によれば、電気信号は、電力変圧器の機能的条件、状態、及び/または劣化条件のうちの1つ以上を予測、検出、及び/または診断するために分析される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本明細書に記載の実施形態による監視システムを組み込むことができる送電網の一般的なブロック図を示す。
図2】いくつかの実施形態による電力分配変電所の監視システムの一般的なブロック図である。
図3】いくつかの実施形態による送電網監視システムのより詳細なブロック図である。
図4】いくつかの実施形態による監視システムで使用されるファイバブラッグ回折格子(FBG)センサの反射スペクトルを示す図である。
図5】いくつかの実施形態による、検知されたパラメータの変化を検出するために使用される検出ユニット及び分析器の一部を示すブロック図である。
図6】いくつかの実施形態による、非ピクセル化感光検出器を使用する検出ユニット及び分析器の一部を示すブロック図である。
図7】いくつかの実施形態による検知用途のために設計されたアレイ化導波路回折格子(AWG)を使用した複数のセンサの波長領域多重化を示す図である。
図8A】いくつかの実施形態による波長領域光デマルチプレクサとして使用されるAWGの出力導波路をより詳細に示す。
図8B】いくつかの実施形態による波長領域光デマルチプレクサとして使用されるAWGの出力導波路をより詳細に示す。
図9】いくつかの実施形態による波長領域光デマルチプレクサとして使用されるAWGの出力導波路をより詳細に示す。
図10】いくつかの実施形態による時間及び波長分割多重化の両方を含む監視システムのブロック図である。
【0007】
数字は必ずしも一定の比率ではない。図面で使用されている同様の番号は同様の構成要素を示す。しかしながら、所与の図の構成要素を参照するために番号を使用することは、同じ番号で示された別の図の構成要素を限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示に記載の実施形態は、送電網構成要素のための光監視システムを含む。電力障害及び停電の原因となる、製造上の不完全性、構造的劣化、機器の故障、容量の制限、ならびに自然事故及び災害の影響は、オンラインシステム条件の監視と診断によって低減することができる。最近のプラグイン電気車両(PEV)、再生可能エネルギー及びその他の代替エネルギー源の形での分散型エネルギー資源(DER)の増加はまた、送電網の統合、電力システムの安定性、過密性、非定常電力流、及びエネルギー格納ギャップのような、新たな課題を提示する。送電網の安全性、信頼性、効率性、及び稼働時間を維持するための、オンライン検知技術によるインテリジェントで低コストの監視と制御のニーズが高まっている。
【0009】
しかしながら、過酷で複雑な電力システム環境は、スマートグリッド用途における低コストの検知に大きな課題を提起している。詳細には、電気的センサは、無線周波数妨害(RFI)、高焼灼性(caustic)/腐食性環境、高湿度/湿度レベル、振動、塵埃、または性能及び/もしくは極めて高いコストに挑戦する他の条件の対象となり得る。この点に関して、無線センサネットワーク(WSN)は低コストの選択肢として検討されているが、電磁干渉(EMI)の影響で通信リンクの品質を監視することが困難になり、グリッドのWSNの使用が制限される。WSNはまた、サイバー脅威に追加の脆弱性を提供する。
【0010】
本開示に記載の実施形態は、送電網構成要素のための光監視システムを含む。本明細書に記載される光監視手法は、任意のタイプの送電網構成要素及び/または複数のタイプの送電網構成要素を監視する監視システムにおいて使用され得る。例えば、開示された手法による監視システムは、電力分配変圧器、電力伝送変圧器、送電網スイッチ、コンデンサ、リレー及び/または他の送電網構成要素などの送電網構成要素を監視することができる。
【0011】
特に関心のある送電網構成要素のうち、変圧器は、分配ネットワークにおいて見られるより高価な機器の1つである。電力分配変圧器は、長距離伝送用電力分配プラントからの電圧を昇圧するように設計されている。電力分配変圧器は、伝送レベルから高電圧を降圧し、高電圧伝送ネットワークから顧客に電力を供給する。構造が比較的単純で機械的にも堅牢であるため、これらは、長い使用可能寿命を提供する。変圧器の経年変化及び電力変圧器を介した非線形及び可変DER負荷の増加する供給の継続的な傾向のため、変圧器の持続可能性は、ますます増大する課題となっている。変圧器の経年変化における不確実性の増大は、DERのレベルがますます高くなることに起因して、可変負荷及び他のシステムの複雑さから生じる。
【0012】
可変及び非線形負荷は、変圧器の経年劣化を加速する要因となり得る。例えば、PEV用のバッテリ充電器は、著しい高調波電圧及び電流が分配システムに注入される可能性がある非線形スイッチングを使用する高出力装置である。高速充電は、PEVの採用を促進するために推奨される技術であり、これらのタイプの非線形負荷を正確に含む。シミュレーションモデルでは、高レベルのDER採用シナリオ(多数のPEVが同時に高速充電されるなど)が変圧器の経年変化を大幅に加速する可能性があることが示唆されている。屋上の太陽光発電などの他のタイプの分散型発電(DG)は、低から中程度の浸透水準でピーク負荷を軽減することによって、放射状のネットワークで変圧器の寿命を延長する可能性がある。しかしながら、DGの普及に伴い、メッシュネットワーク型電力分配システム(大都市圏で一般的)の変圧器二次側での電圧制限違反がますます発生する可能性があることが研究によって示唆されている。
【0013】
変圧器の設計では、絶縁材料としての油の使用は、低損失で優れた電気的性能を可能にする油の観点から普遍的になっている。しかしながら、油で満たされた変圧器の可燃性は、特に過渡的な過電圧または他の内部故障メカニズムに対して老朽化及び堅牢性が低下するにつれて、地下設備における公共の安全上の大きな危険を引き起こす可能性がある。したがって、劣化及び/または差し迫った故障の信頼性の高い予測のために、変圧器、特に分配変圧器の重要な内部パラメータを監視するための低コスト検知が必要となっている。
【0014】
図1は、送電網100の簡略図である。送電網100は、例えば燃焼石炭または天然ガス、水力発電、原子力発電、風力発電、太陽光発電、または他のタイプの発電によって、グリッドの電力を生成する何らかのタイプの発電機105を含む。発電機105からの出力電圧は、伝送変電所110で変圧器によって昇圧され、高電圧伝送線111によって1つ以上の電力分配変電所120に搬送される。電圧は、電力分配変電所120の電力分配変圧器によって降圧され、住宅130及び/または送電網100に接続された他の設備に供給される。本開示において説明される実施形態は、送電網構成要素を監視するための光システムに関する。例えば、電力分配変電所120は、本明細書で論じる実施形態による電力分配変圧器のための1つ以上の光監視システムを含むことができる。伝送変電所110は、電力伝送変圧器用の1つ以上の光監視システムを含むことができる。本開示では、監視される送電網構成要素として電力変圧器の例を使用して、送電網監視のための手法が説明されているが、これらの手法は送電網の他の構成要素にも等しく適用可能であることが理解されよう。
【0015】
図2は、いくつかの実施形態による、送電網変電所に位置する電力変圧器205を監視するように配列され得る光監視システム200を示す。光監視システム200は、1つ以上の電力変圧器モニタ220を含む。各々のモニタ220は、1つ以上の光ファイバ221上に配置された複数の光センサ222を含む。各々の光センサ222は、対応する電力変圧器の内部またはその上の場所に配置され、電力変圧器205のパラメータを検知するように構成される。検出されるパラメータは、歪み、温度、振動、化学などの内部パラメータ、または電圧及び電流などの動作パラメータであってもよい。いくつかの実施形態では、各々の光センサは、同じ変圧器を監視する他の光センサと比べて変圧器の異なるパラメータを検知することができる。いくつかのシナリオでは、変圧器を監視する2つ以上の光センサが、例えば、検知されたパラメータの平均を達成するために、または変圧器の異なる場所で同じパラメータを検知するために同じパラメータを検知することができる。図2に示す実施形態では、各々の変圧器205は、単一の光ファイバ221上に配置された複数のセンサ222によって監視される。代替的に、単一の変圧器は、複数の光ファイバ上に配置された複数のセンサによって監視されてもよく、及び/または複数の変圧器が、単一の光ファイバ上に配置された複数のセンサによって監視されてもよい。
【0016】
監視システム200は、変圧器モニタ220の光ファイバ221に光学的に結合された制御回路210を含む。様々な実施形態では、制御回路は、変電所の変圧器205の1つ、いくつか、または全ての光モニタからの光出力信号を受信するように配列することができる。
【0017】
制御回路210は、入力励起光を光センサ222に供給する光源211を含む。センサ222の各々は、入力光の一部をセンサ出力光として反射する。センサ出力光は、変圧器の検知されたパラメータの変化に応じてセンサの中心波長の波長シフトを示す。図2に示す実施形態では、変圧器205を監視する各々のセンサ222からの出力光は、単一の光ファイバ221上に多重化される。これにより、各々のセンサからの出力光が光ファイバ221上に多重化される。
【0018】
制御回路210は、光ファイバ221上に搬送された出力光を空間的に分配する光波長分割デマルチプレクサ212を含む。1つ以上の光検出器を含む検出器ユニット215は、出力光を、変圧器の検知されたパラメータを表す電気信号に変換する。
【0019】
検知されたパラメータに関連する波長シフトは、センサの中心波長間の間隔に比べて小さくてもよい。したがって、線形可変フィルタ、アレイ化導波路回折格子(AWG)、または他の波長分散光学素子を含むことができる波長分割デマルチプレクサを使用して、構成要素信号と呼ばれる個々のセンサからの光信号を分離することが実現可能である。代替的または付加的に、様々なセンサの各々に選択的にアドレスする光ファイバ内の短パルスの光を励起することによって動作する時間領域多重化方式を採用することができる。波長分割多重化/逆多重化及び/または時分割多重化/逆多重化などの様々な多重化構成を使用して、以下でより詳細に説明するように、数千個のセンサを単一の検出ユニットによって監視することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、制御回路210は、検出器ユニット215によって生成された電気信号を分析するように構成された分析器216を含む。分析器は、電気信号の分析に基づいて、1つ以上の機能性、状態、及び/または劣化条件を予測、検出、及び/または診断するように構成されたプロセッサであってもよい。
【0021】
サイバーセキュリティは、送電網システムにとって重要である。いくつかの実施形態では、監視システム200は、光ファイバ218に結合され、変圧器パラメータに起因しない異常な信号異常に対して光ファイバ218上に搬送される光信号を監視するように構成された1つ以上の光センサ217を含むことができる。これらのセキュリティセンサ217は、攻撃または他のセキュリティ違反に対して警告を提供することができる。サイバーセキュリティ及び/または違反検出のための追加のセンサは、図示のように制御回路210内の光ファイバ218に結合され、光ファイバ221に結合されてもよく、及び/またはサイバーセキュリティ及び/または違反検出光センサが両方の場所に配置されてもよい。
【0022】
図3は、いくつかの実施形態による監視システム300のより詳細な図を提供する。複数の光センサS1、S2、...SNは、それぞれ変圧器301の複数の内部パラメータを検知するように配列されている。動作変圧器のパラメータを監視するために、追加の内部及び/または外部センサを配列することができる。例えば、内部及び/または外部センサは、入力電流、出力電流、入力電圧、出力電圧などの変圧器の動作パラメータを検出するように構成することができる。
【0023】
光センサを使用して、多数のパラメータを監視することができる。例えば、光センサS1、S2、...SNは、変圧器301の内部または外部に配置され、温度、コア歪み、振動、様々な化学物質の存在、腐食、ガス(水素含有溶存ガスのような溶存ガスを含む)部分放電の存在、圧力、電流、電圧、及び/または他の変圧器パラメータなどの1つ以上の変圧器パラメータを検知するように構成される。
【0024】
センサS1、S2、..SNは、ファイバブラッグ回折格子(FBG)センサ、及び/またはエタロンもしくはファブリーペロー(FP)センサを含む任意のタイプの(または複数のタイプの)光センサを含むことができる。FBGセンサ及びエタロン/FPセンサの両方を、本明細書では、光センサまたは光ファイバセンサと総称する。本明細書で提供されるいくつかの例はFBGセンサに基づいているが、これらの及び他の実施形態では、他のタイプの光センサを代替的または付加的に使用することができることが理解される。
【0025】
光ファイバセンサは、それらの電気的な対応物よりも多くの利点を提供する。それらは、直径が薄く(通常、約100~200μm)、軽量で、感応性で、過酷な環境に堅牢で、EMIの影響を受けない。光ファイバセンサは、長い光ファイバケーブル上の多重化(多重化(muxed))構成で高感度で複数のパラメータを同時に測定することができる。光ファイバセンサは、ダウンホール検知で示されているように、長期間(5年以上)の油浸環境にさらされるなど、様々な厳しい環境に対して堅牢性を実証している。最も一般的な光ファイバ材料は耐食性であり、5年超にわたって1GPaの張力に耐え、-200℃~800℃の間で残存し、470kV/mmを超える絶縁破壊強度を有するシリカである。様々なタイプのプラスチックは、光ファイバ及び光センサにも有用である。FBGセンサのような光ファイバセンサは、衝撃及び振動に対して機械的に堅牢である。したがって、変圧器内の埋め込まれた光ファイバセンサは、関連するパラメータを確実に測定及び監視する魅力的な解決策を提供する。さらに、EMI及び無線周波数干渉(RFI)に対する光ファイバケーブルの耐性は、変電所及び長距離にわたるグリッドにわたる高電圧動作環境に特に好適な通信媒体になる。したがって、光ファイバケーブルの多機能性を利用して、電力システムにおける検知、通信、遮蔽、及び避雷機能を組み合わせることができる。
【0026】
FBGセンサは、光ファイバのコアの有限長(典型的には数mm)に沿った屈折率の周期変調によって形成することができる。いくつかの実施形態では、周期変調は、フェムト秒レーザを使用する直接描画によって光ファイバに記されることができる。変調パターンは、FBGセンサの屈折率プロファイルの周期性によって決定される、ブラッグ波長と呼ばれる波長を反射する。実際には、センサは、典型的には、ブラッグ波長を中心とする狭帯域の波長を反射する。外部刺激の特徴的値またはベース値におけるブラッグ波長は、λで示され、ピーク、中心、または重心波長λ(及びλに近い波長の狭帯域)を有する光は、センサが所定のベース条件にあるときセンサから反射される。例えば、ベース条件は、25℃及び/またはゼロ歪みに対応し得る。センサが刺激を受けると、刺激は格子の周期性とFBGの屈折率を変化させ、それによって反射光がピーク、中心、またはベース波長λと異なる、重心波長λを有するように反射光を変化させる。得られる波長シフトΔλ/λ=(λ-λ)/λは、刺激のプロキシ測定値である。
【0027】
FBGセンサは、例えば、屈折率n、歪みε、及び周囲温度変化ΔTの変化に感応性である可能性がある。屈折率nは、センサ素子領域の上に光ファイバクラッドを剥がすことによって、及び/またはこの感応性領域に適切なコーティングを加えることによって、センサの化学的環境に対して感応性にすることができる。歪み及び温度は、格子の周期性の変化のためにセンサの出力波長をシフトさせる。
【0028】
FBGセンサにおける波長シフト(Δλ/λ)と歪みと温度の関係は次のとおりである。
【0029】
【数1】
【0030】
式中、nは屈折率であり、p11及びp12は歪み光学定数であり、εは縦方向の歪みであり、αは熱膨張係数であり、Tは温度である。いくつかの実装形態では、歪み及び温度(設計または搭載に起因する)、デュアルファイバまたは特殊FBGセンサとデータ評価アルゴリズムとの組み合わせによって異なる影響を受ける複数のFBGセンサを使用することにより、歪み及び温度による波長シフトへの影響を分離することができた。例えば、変圧器に取り付けられた異なる波長の1対の隣接するFBGを使用して、歪み及び温度を分離することができる。隣接する2つのFBGのうちの1つは、熱的に感応性のペーストを使用する熱歪みだけに、または特殊なチュービングに封入することで、熱歪みに感応性になるように構成することができる。チュービング内の「基準」FBGセンサの測定された波長シフトは、温度補償のための隣接するFBG歪みセンサの全波長シフトから減算することができる。
【0031】
上述のように、光ファイバセンサは、温度及び歪みを検知するのに有用である。振動は動的歪みの変化として検出することができる。好適なコーティング及び構成では、FBG及び/または他の光センサは、電流、電圧、化学環境、及び腐食を監視するのに有用であり得る。例えば、関心のあるパラメータは、関心のパラメータに応答して、典型的には線形関係で歪みを受ける特殊コーティングを介して、FBG上の歪み信号にマッピングすることができる。関心のあるパラメータを高い忠実度で回復させるために、温度及び/または振動の影響などの交絡パラメータの影響を補償するために、1つ以上のすぐ隣接する光センサを使用することができる。
【0032】
例えば、腐食及び/または水分は、好適なコーティングを使用して及び/またはセンサもしくはセンサコーティングを腐食と共に引っ張り歪みを受ける構造構成要素に接合することによって、歪み信号に変換することができる。
【0033】
別の例として、化学的検知は、関心のある化学種の変化する濃度に応じて歪みを受ける特定の化学的に感応性のコーティングを堆積させることによって達成することができる。例えば、パラジウム(Pd)コーティングは、水素含有ガスに応答して可逆的な歪みを受ける。変圧器油及びセルロースの両方は、水素に富む炭素系分子構造を有する。油及びセルロースの分解は、可燃性及び不燃性ガスを含む多数の副産物を形成する。水素は、これらの化合物の大部分に天然に存在する。0.05%体積までのH及び短鎖炭化水素ガス濃度は、健全な変圧器にとって許容可能なレベルとなり得る。Pdコーティングされた光センサは、水素系ガスを検出するのに有用である。自由空気中のFBGを使用した水素ガス検知は、PdコーティングされたFBGが、熱効果を考慮せずに、約5分の応答時間で1%体積Hガス濃度変化に対して約7ピコメートル(pm)の波長シフト応答を有することを示唆している。同様のまたはより大きな応答感度が炭化水素について達成され得る。50フェムトメートル(fm)の検出ユニット分解能では、熱影響を考慮した上で、自由空気中で0.01~0.02%の分解能が達成される。同様の分解能レベルは、約250ppmの溶存ガス検出の目標分解能を可能にする、油中の溶存HまたはH含有ガスについて達成可能であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される監視システムは、変圧器の部分放電を検出するために使用され得る。部分放電は、ボイド内に含まれるガス(例えば、空気)の電気的破壊または非常に不均一な電場の結果として、小さな電気的スパークを絶縁体に存在させる。部分放電が起こったときに引き起こされるエネルギーの突然の放出は、部分放電場所を取り囲む材料の化学的及び構造的変化、電磁信号発生及び/または例えば50~200kHz周波数範囲の音響放射のような多数の影響を発生させる。本明細書で論じられる手法によって高周波数監視能力が可能になると、部分放電音響放射からの高速(1MHzまで)の動的歪み信号(最大1.45fm/√Hz)の音響放射検出を達成し、部分放電の発生及び/または重篤度を検出するために使用することができる。
【0035】
図3に示す実施形態では、センサS1、S2、...SNは、変圧器301内に部分的に埋め込まれた単一の光ファイバ330上に配置される。各々のセンサS1、S2、...SNは、光ファイバ330上の他のセンサとは異なる波長帯域内で動作することができる。例えば、センサS1は波長λを中心とする第1の波長帯域内で動作し、センサS2はλを中心とする第2の波長帯域内で動作し、センサSNはλを中心とするN番目の波長帯域内で動作する。各波長帯域λ、λ、..λは、他のセンサの波長帯域と実質的に重ならないように選択することができる。
【0036】
監視システム300は、入力光源310と、光デマルチプレクサ340と、検出ユニット350と、を含む、制御回路335を含む。いくつかの実施形態では、制御システムは、モデルベースのアルゴリズム362を実装する分析器360を含む。
【0037】
光センサS1、S2、...SNは、光センサS1、S2、...SNの動作波長帯域にわたる広い波長帯域にわたって入力励起光を供給する広帯域光源であってもよい、入力光源310に光学的に結合される。光センサS1、S2、...SNは、光ファイバ330から、光の波長に従って光ファイバ330からの光を空間的に分散させる波長領域光デマルチプレクサ340に搬送される。様々な実施形態において、光デマルチプレクサは、線形に可変の透過構造及び/もしくはアレイ化導波路回折格子、または他の光学的分散要素を含むことができる。
【0038】
複数の変圧器を含む構成では、各々の変圧器モニタ(センサS1~SNを各々含む)からの光信号を光時間マルチプレクサ(図3には図示せず)を介して光デマルチプレクサ340に結合することができる。光時間マルチプレクサの使用については、以下に詳細に説明する。
【0039】
デマルチプレクサ340からの光は、1つ以上の光検出器を含む検出ユニット350に光学的に結合される。各々の光検出器は、光検出器の感光面に当たる光に応答して電気信号を生成するように構成される。検出ユニット350の光検出器によって生成された電気信号は、センサS1、S2、...SNによって検知されるパラメータを表す。検出ユニット350と共に使用される光デマルチプレクサ340は、センサS1、S2、...SNからセンサ信号を個別に検出することを可能にする。
【0040】
検出ユニット350によって生成された電気信号は、電力変圧器301の機能的条件、状態、及び/または劣化条件のうちの1つ以上を電気信号の分析に基づいて分析(予測、検出及び/または診断)するために分析器360によって使用することができる。電力変圧器の状態の例は、変圧器の負荷レベルまたは変圧器の温度を含むことができる。機能的条件の例には、変圧器の実際の年齢、予想される負荷レベルに基づく予想される使用可能時間、現在の負荷容量などが含まれる。劣化条件の例としては、短絡、過度の溶存ガス、部分放電事象、腐食などが挙げられる。
【0041】
状態または条件を予測することは、状態または条件が将来の時間で起こると推定することを表現するために本明細書で使用される。予測には、状態または条件が発生すると予想される将来の時間の見積もりが含まれる場合がある。状態または条件を検出することは、その状態または条件が現在存在しているかまたは存在していないことを検出することを含む。状態または条件を診断することによって、状態または条件が存在する程度を識別し、及び/または状態または条件の原因を識別することができる。いくつかの実施形態では、この分析を使用して、電力変圧器及び/または送電網の他の構成要素のメンテナンスをスケジュールする及び/または動作を制御することができる。
【0042】
センサからの電気信号によって表される検知されたパラメータは、変圧器の状態、様々な劣化条件及び/または例えば、様々な機能的条件のリアルタイム推定のための理論的及び/または経験的変圧器モデル及びモデルベースアルゴリズム362と共に使用することができる。モデルは、変圧器の検出された条件、内部及び/または外部パラメータの測定値、及び/または動作条件と測定パラメータとの間の相関に基づいて適合させることができる。
【0043】
開示された監視システムによるリアルタイムの変圧器状態変数の利用可能性は、グリッド資産監視及びグリッド分配管理に関する多くの問題を大幅に緩和することができる。モデルベースのアルゴリズムは、検知されたパラメータ値及び/または傾向を変圧器劣化条件と相関させることができる。一例として、高温及び/または他の経年変化因子によって引き起こされる油及び断熱の劣化に起因する安全上重要な及び性能効果に相関する溶存ガス濃度を考慮する。ガス発生は、部分放電のような他の変圧器の故障の存在下で悪化する。したがって、溶存ガスレベルは、高温(周囲または高負荷運転)、可変分散エネルギー資源負荷下でのサイクリング、及び格納による変圧器の健全性の長期変化を反映している。本明細書で開示される監視システムは、溶存ガス検知に基づいて変圧器劣化に関する情報を提供することができる。分析器によって実行されるアルゴリズムは、変成器の将来の劣化状態及び/または変圧器劣化率についての予測を行うために、溶存ガス検知の傾向ならびに温度及び/またはサイクル傾向を考慮に入れることができる。
【0044】
さらなる例として、潜在的な関心のある別のパラメータ、コイル歪みを考える。コイルひずみは、(a)熱膨張につながるオーミックヒステリシス及びヒステリシス関連の加熱、及び(b)コア内の負荷レベルによって引き起こされる磁歪弾性(磁気弾性)変形の2つの要因に分けることができる。熱膨張は、コア膨張サイクルからの磁気弾性変形よりも遅いプロセスであるため、機械的平衡は熱よりもはるかに速く確立される。熱歪みは、例えば先に述べたように、チュービングを使用して磁気弾性変形から分離することができる。代替的な実施形態として、コアの熱膨張をモデル化することができる。ヒステリシス損失及び巻線の電気抵抗によって発生する熱は、材料の反復熱膨張及び収縮を生じる。光学的に検知された温度は、熱歪みモデルへの入力として使用され、温度誘起歪みを決定することができる。この値は、磁気弾性歪みを分離するために全歪みから減算することができる。
【0045】
熱歪みの分離は、残留磁気弾性歪みが変圧器の負荷レベルのスナップショットとして作用することを可能にする。数値シミュレーションによる典型的な結果に基づいて、約5~50μεの範囲のコア面内歪み値が予想され得る。負荷エネルギーの分布がより分散しているため、突入電流の下でのコイル歪みの応答挙動は、分散発生の高レベルからの二方向流れを含む可変DERシナリオの範囲の下で確実に機能する変圧器の能力を予測するために使用できる。
【0046】
部分放電またはコイル短絡事象中に、非弾性歪み挙動、音響放射、振動及び/または動的振動が発生し得る。部分放電及び短絡は、非弾性歪み、音響放射、振動、及び/または動的振動の検知に基づいて検出することができる。
【0047】
異常な振動は、コア構造上の重大な問題からも生じる可能性がある。したがって、負荷とともに変化するコイル歪み及び/または振動などのパラメータは、変圧器の負荷と相関し、動的事象は初期故障表示を提供する。
【0048】
グリッド(例えば、負荷の高調波)または動作環境(例えば、地震事象もしくは隣接する建設活動)に由来する機械的応力を、変圧器マウントを介して変圧器コアに伝送することが可能である。これらの応力は、モデルによって説明されていない追加の歪み及びセンサ示度を誘発し、センサによって検知されたパラメータを混乱させる可能性がある。制御光学歪みセンサは、変圧器包囲器上に配置することができる。制御センサの出力を使用して、関心のある検知されたパラメータ信号を、外部の歪み源から補正することができる。
【0049】
磁気弾性、溶存ガスの発生、部分放電事象の発生及び/または本明細書で論じるような他のパラメータの変化を光学的に検知し、経時的にパラメータを評価することは、変圧器の健全性及び予後診断に関する有用な測定基準を与える。例えば、1つ以上のパラメータの現在の値及び/もしくは1つ以上のパラメータの傾向の変化率は、変圧器の健全性の指標としての閾値現在値及び/もしくは傾向値(例えば、勾配)と比較することができ、ならびに/または変圧器コイル短絡のような劣化状態及び/もしくは安全事象の可能性を予測することができる。
【0050】
関連性ベクトルマシンなどの確率的回帰分析は、変圧器動作状態の検出、予測、及び/または診断のためのモデルベースアルゴリズムによって使用されるモデルを開発する機械学習手法に適用することができる。機械学習アルゴリズムは、実験室の訓練条件及び/または現場に展開された変圧器が経験する条件によってデータを収集することができる。使用される機械学習アルゴリズムは、確率的カーネルを使用して、従来の曲線当てはめ方法にバイアスをかけることができる、異なる動作条件下での異常値の影響及びデータ点の変化する数を除くことができる。確率論的技術は、ベイジアン学習を活用してシステムの不確実性を管理することもできる。
【0051】
モデル及び/またはモデルベースのアルゴリズムは、機械学習を継続することによって、時間の経過と共に適合させることができる。ここではさまざまなフィルタリング技術を使用することができる。良好な状態追跡性能を提供するために、ベイジアン学習と重要度サンプリングを組み合わせた効率的な非線形フィルタがこのタスクに好適である。トラッキングフェーズの間に調整されたモデルベースのアルゴリズムは、予想される負荷に対して伝播され、変圧器の短期または長期の予後診断を与えることができる。
【0052】
いくつかのシナリオでは、分析器360によって取得または開発された情報は、電子的または印刷されたレポートを介してオペレータに提供されてもよい。例えば、分析器360は、検知されたパラメータをコンパイル、分析、傾向付け、及び/または要約することができ、及び/または変圧器301の状態を予測及び/または診断するなどの検知されたパラメータを入力として使用する他のプロセスを実行することができる。これらの分析の結果及び/または変圧器301の監視から得られる他の情報は、オペレータに対して、グラフィック形式、テキスト形式、及び/もしくは任意の便利な形態で表示することができるレポートにおいて提供することができ、ならびに/またはデータベースへの格納及び/もしくはさらなる解析のために、及び/もしくは予測モデル及び/もしくはモデルベースのアルゴリズムを更新するために、別のコンピュータシステムに提供することができる。いくつかの構成では、変圧器監視から得られた情報は、ディスプレイ上に提示されるダッシュボード361を含むグラフィカルユーザインターフェースを介して送電網のオペレータに提供され得る。ディスプレイダッシュボードは、個々の変圧器、複数の変圧器及び/または他のグリッド構成要素の状態に関するレポート及び/またはグラフへのアクセス及び構成を可能にする。
【0053】
いくつかの実施形態では、光デマルチプレクサ、検出ユニット及び分析器の1つ以上を、変電所自動化システム(SAS)と相互運用可能な変電所で統合構成要素として実装することができる。統合構成要素は、1つ以上の電力変圧器内の1つ以上の多重化された組み込み光センサを処理することができる。
【0054】
図3に示すような光センサベース検知は、単一の光ファイバ上に複数のセンサ素子、例えば約8個のセンサを組み込むことを可能にする。いくつかの手法では、センサS1、S2、...SNは、波長領域の多重化及び逆多重化によって個別に問い合わせることができる。いくつかの手法では、以下に示すように、複数のセンサモジュールに配置されたセンサは、時間領域の多重化と波長領域の多重化と逆多重化の組み合わせによって個別に問い合わせることができる。
【0055】
いくつかの実装では、変圧器内に配置されたセンサ導波路330の両端を、光スイッチ(図3には図示せず)を介して光源310及び光デマルチプレクサ340に光学的に結合することができる。光ファイバの両端を結合することは、光ファイバが破損した場合に有用となり得る。例えば、光ファイバ330がセンサS1とS2との間の2つの部分で壊れているが、光ファイバ330の両端が光スイッチを介して光源310と光カプラ340に接続されているシナリオを考える。この例では、最初に光ファイバに全てのセンサS1~SNが含まれていたが、破損後、センサS1~SNは2本のFOケーブル上に配置されたとみなすことができる。破損した光ファイバであっても、光ファイバの両端部が光スイッチを介して光源310及び光デマルチプレクサ340に選択的に光学的に結合されている場合、全てのセンサS1~SNは、光ファイバの2つの部分を介してアクセス可能なままである。破損した光ファイバの各々の部分のセンサは、光ファイバ部分からの信号を時間多重化することによってアクセス可能である。上に概説したシナリオでは、センサS1からの信号は、光スイッチが第1の状態にあるとき、センサS2からSNからの信号っは、破損した光ファイバの第1の部分を介してアクセス可能であり光スイッチが第2の状態にあるとき、破損した光ファイバの第2の部分を介してアクセス可能である。
【0056】
いくつかの実施形態では、分析器360は、例えば、アクセスできないセンサの波長で信号が存在しないことに基づいて、光ファイバが破損していることを検出することができる。分析器が破損した光ファイバを検出した場合、分析器は、破損した光ファイバの両方の部分を介して光ファイバの全てのセンサの監視を開始することができる。光ファイバの両端を結合することは、1つのセンサのみが光ファイバ上に配置される実装において有用となり得る。例えば、光ファイバがS1のみを含むシナリオを考える。光ファイバが光源と光デマルチプレクサとS1との間で破損した場合、FOケーブルの両端部が上述したように光源と光デマルチプレクサとに光学的に結合されない限り、S1はアクセス不能になる。
【0057】
ここで図4を参照すると、光波長分割多重化及び逆多重化を使用して多重化されたセンサ出力を有する変圧器の複数のパラメータを監視する監視システムの動作が示されている。広帯域光は、例えば、発光ダイオード(LED)またはスーパールミネッセント・レーザ・ダイオード(SLD)を備えていてもよい、またはそれであってもよい光源410によって伝送される。広帯域光のスペクトル特性(強度対波長)は、挿入グラフ491によって示されている。光は、光ファイバ411を介して第1のFBGセンサ421に伝送される。第1のFBGセンサ421は、中心またはピーク波長λを有する第1の波長帯域の光の一部を反射する。第1の波長帯域以外の波長の光は、第1のFBGセンサ421を介して第2のFBGセンサ422に伝送される。第2のFBGセンサ422に伝送された光のスペクトル特性は、挿入グラフ492に示され、この波長帯域の光が第1のセンサ421によって反射されることを示すλを中心とする第1の波長帯域でノッチを示す。
【0058】
第2のFBGセンサ422は、中心またはピーク波長λを有する第2の波長帯域の光の一部を反射する。第2のFBGセンサ422によって反射されなかった光は、第2のFBGセンサ422を介して第3のFBGセンサ423に伝送される。第3のFBGセンサ423に伝送された光のスペクトル特性は、挿入グラフ493に示され、λ及びλを中心とするノッチを含む。
【0059】
第3のFBGセンサ423は、中心またはピーク波長λを有する第3の波長帯域の光の一部を反射する。第3のFBGセンサ423で反射されなかった光は、第3のFBGセンサ423を介して伝送される。第3のFBGセンサ423を介して伝送された光のスペクトル特性は、挿入グラフ494に示され、λ、λ、λを中心とするノッチを含む。
【0060】
中心波長λ、λ及びλ(挿入グラフ495に図示)を有する波長帯域481、482、483の光は、それぞれ第1、第2または第3のFBGセンサ421、422、423によって、FOケーブル412に沿って、分析器430へと反射される。分析器430は、センサ421~423によって反射された中心波長λ、λ及びλ及び/または波長帯域のシフトを特徴的ベース波長(既知の波長)と比較して、センサ421~423によって検知されたパラメータの変化が発生しているかどうかを判定することができる。分析器430は、波長分析に基づいて1つ以上の検知されたパラメータが変化したことを判定し、変化の相対的または絶対的測定値を計算することができる。
【0061】
いくつかの場合において、広帯域光を放射する代わりに、光源は、FOケーブル上に配置された様々なセンサが感応性である狭い波長帯域で光を放射する波長範囲を走査することができる。反射された光は、狭帯域光の放射に関連してタイミングが取られた多数の検知期間の間に検知される。たとえば、センサ1、2及び3がFOケーブルに配置されているシナリオを考える。センサ1は波長帯域(WB1)に感応性であり、センサ2は波長帯域WB2に感応性であり、センサ3はWB3に感応性である。期間1の間にWB1を有する光を放出し、期間1と重なる期間1aの間に反射された光を検知するように光源を制御することができる。時間期間1aに続いて、光源は期間2の間にWB2を有する光を放射し、時間期間2と重なる時間期間2aの反射光を検知する。時間期間2aに続いて、光源は時間期間3の間にWB3を有する光を放射し、時間期間3と重なる時間期間3aの反射光を検知する。このバージョンのTDMを使用すると、センサの各々は、離散的な時間期間中に問い合わせされることがある。
【0062】
エネルギー格納/電力システム監視に使用されるFOケーブルは、単一モード(SM)FOケーブルを含むことができ、またはマルチモード(MM)FOケーブルを含むことができる。単一モード光ファイバケーブルは、解釈がより容易な信号を提供するが、広範な適用性を達成し、製造コストを低減するために、マルチモードファイバを使用することができる。
【0063】
FBG及び他の波長ベースのFOセンサの主な課題は、得られる波長シフトが典型的には非常に小さいことである。サブピコメートルの波長測定分解能は、高感度を達成するために重要である。同時に、広いスペクトル範囲にわたってこの能力を維持することが望ましい。付加的に、高速検出は、より高い周波数の振動/音響信号の監視を可能にする。本明細書で説明する検出ユニットは、例えば、50フェムトメートルのような波長シフトを分解することができる波長シフト検出器を使用する。
【0064】
いくつかの実施形態では、検出器ユニットは、位置感応性光検出器を備え、光デマルチプレクサは、横方向に変化する伝送特性を有する検出器コーティング、横方向に変化する伝送構造(LVTS)を含む。コーティングは、入射光の波長情報を位置感応性光検出器で高精度に検出可能な空間的強度分布に変換する。光検出器の差分読出しにより、光分布の重心の決定が可能になる。光デマルチプレクサ及び検出ユニットによって使用される手法は、波長シフトを単一の重心検出方式に変換し、より高い解像度の波長シフト検出及び光信号を監視するためのカットオフ周波数を可能にする。
【0065】
図5及び図6と共により詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、モニタからの出力光は、光波長デマルチプレクサとして働く線形光学可変フィルタを通って導かれる。特定の範囲内の波長のみが、検出ユニットの1つ以上の光検出器によって伝送及び収集される。センサ信号の違いは、信号を光源の強度とは無関係にする。これにより、ノイズ源の変動に対して比較的堅牢になる。その結果、出力電圧は光の空間分布に比例する。
【0066】
図5は、電力変圧器の中、上または周りの場所に配列された複数の光センサを有するMMまたはSM FOケーブルから受信した光信号を検出及び/または解釈するために使用され得る変圧器監視システムの制御回路500の一部を示すブロック図である。光源505は、光ファイバ506を介してセンサに入力励起光を提供する。制御回路500は、センサによって反射され光ファイバ510によって伝播される光の波長のシフトを検出するために任意選択で使用され得る様々な構成要素を含む。制御回路500は、任意選択で、LVTS530の入力面を横切って光ファイバ510からの光をコリメート/または拡散するように構成された拡散構成要素540を含む。光ファイバから光の十分な広がりが生じる配置では、拡散構成要素は使用されなくてもよい。LVTS530は、プリズムまたは線形可変フィルタなどの分散要素を備えることができる。LVTS530は、(光ファイバ510及び(任意選択的で)拡散構成要素540からの)入力面531で光を受け取り、その出力面532から光を伝送する。LVTS530の出力面532において、光の波長は、出力面532に沿った距離と共に変化する。したがって、LVTS530は、光の波長に応じてLVTS530の入力面531に入射する光信号を逆多重化する働きをする。
【0067】
図5は、LVTS530から放射される2つの波長帯域(放射帯域と呼ばれる)を示し、第1の放射帯域は、出力面532に沿って基準位置(REF)から距離dで放射される中心波長λを有する。第2の放射帯域は、中心波長λを有し、基準位置から距離dで放射される。位置感応性検出器(PSD)550は、LVTS530を通り伝送された光がPSD上に当たるように、LVTS530に対して位置決めされる。例えば、波長λの光はPSD550の領域aに当たり、波長λの光はPSD550の領域bに当たる。PSDは、LVTSからの光出力の位置(したがって、波長)に関する情報を含む電気信号を出力551に沿って生成する。PSDからの出力信号は、分析器560によって使用され、センサによって反射された波長のシフトを検出する。
【0068】
PSDは、大面積光ダイオードなどの非ピクセル化検出器、または光ダイオードアレイまたは電荷結合検出器(CCD)などのピクセル化検出器であってもよいし、それらを含んでもよい。ピクセル化された一次元検出器は感光性要素のラインを含み、二次元ピクセル化検出器は感光性要素のn×k個のアレイを含む。ピクセル化検出器が使用される場合、ピクセルに対応する各々の感光性要素は、要素に入射する光の量を示す電気出力信号を生成することができる。分析器560は、伝送された光スポットの場所及び場所の変化を決定するために出力信号を走査するように構成されてもよい。LVTSの特性を知ることにより、第1及び/または第2の放射帯域のピーク波長(複数を含む)及びピーク波長(複数を含む)のシフトの決定が可能になる。第1または第2の放射帯域の波長シフトは、場所aまたはbでの伝送された光スポットのシフトとして検出することができる。これは、例えば、PSDのあるピクセルまたはピクセルグループの正規化された差分電流信号を決定することによって達成することができる。
【0069】
例えば、放射帯域EBを有する光スポットAが場所aのPSDに入射する例を考える。Ia1は場所a1のピクセル/ピクセルグループによって光スポットAによってPSDに生成される電流であり、Ia2は場所a2のピクセル/ピクセルグループによって光スポットAによってPSDで生成される電流である。放射帯域EBを有する光スポットBは、場所bのPSDに入射する。Ib1は場所b1のピクセル/ピクセルグループによって光スポットBによってPSDに生成される電流であり、Ib2は場所b2のピクセル/ピクセルグループによって光スポットBによってPSDで生成される電流である。
【0070】
場所a1及びa2のピクセルまたはピクセルグループによって生成される正規化差分電流信号は、PSD上の光スポットAの位置を示す(Ia1-Ia2)/(Ia1+Ia2)と書くことができる。EBの波長は、PSD上の光スポットAの位置から決定することができる。
【0071】
同様に、位置b1及びb2のピクセルまたはピクセルグループによって生成される正規化差分電流信号は、PSD上の光スポットBの位置を示す(Ib1-Ib2)/(Ib1+Ib2)と書くことができる。EBの波長は、PSD上の光スポットBの位置から決定することができる。
【0072】
図6は、非ピクセル化、一次元PSD650を含む監視システムの制御回路600の一部を示すブロック図である。制御回路600は、前述したように拡散構成要素540に類似する任意の拡散構成要素640を含む。拡散構成要素640は、LVTS630の入力面631を横切って光ファイバ610からの光をコリメート及び/または拡散させるように構成される。図6に示す実装形態では、LVTS630は、統合構造を形成するためにPSD650上に堆積された層を含む線形可変フィルタ(LVF)を含む。図示された例におけるLVF630は、光学キャビティ635を形成するように互いに離間した2つのミラー、例えば、分布ブラッグ反射器(DBR)633、634を含む。DBR633、634は、例えば、SiO及びTiOなどの高屈折率コントラスト誘電材料の交互の層を使用して形成することができる。DBR633のうちの1つは、不均一光学キャビティ635を形成する他のDBR634に対して傾斜している。LVFは、光が入射面にある角度で入射するとき、均一な光学キャビティを代替的に使用することができることが理解されよう。
【0073】
図6に示すPSD650は、二次元非ピクセル化PSD(及び一次元または二次元ピクセル化PSD)も可能であるが、非ピクセル化一次元PSDを表す。PSD650は、例えば、InGaAsなどの半導体を含む大面積光ダイオードを含むことができる。2つの接点653、654は、PSDの半導体の第1及び第2の縁部に沿って走り、PSD650の表面に入射する光によって生成される電流を収集するように配列される。光スポット699がPSD650に入射すると、光スポットに最も近い接点は、より少ない電流を収集する光スポットから遠い接点と比較して、より多くの電流を収集する。第1の接点653からの電流はIで示され、第2の接点654からの電流はIで示される。の分析器660は、正規化された差分電流(I-I)/(I+I)、伝送された光スポットの位置を決定するように構成され、したがってLVTS630の入力面631に入射する光の主波長を決定することができる。主波長は、既知の波長と比較して、波長のシフト量を決定することができる。波長のシフトは、検知されたパラメータの変化と相関させることができる。同時に2つの放射帯域(2つの空間的に分離された光スポットを生成する)が検出器に同時に当たる場合、検出器は、両方の放射帯域に対して平均波長及び波長シフトを提供することができるのみである。両方の放射帯域の波長及び波長シフトが別々に決定される必要がある場合、2つの放射帯域は異なる時間(時間多重化)で検出器に達する必要がある。
【0074】
他の実施形態では、縁部接点が4つの縁部の全てに沿って走る、二次元非ピクセル化PSDを使用することができる。中心反射波長の位置は、4つの接点の各々から収集された電流を分析することによって決定されてもよい。制御回路(図3の要素335参照)は、「読み出し」とも呼ばれ、チップサイズが、好適なハウジング、例えば、TO5トランジスタパッケージ内に配置することができる、30~60mmの光集積回路チップとしてのオンボード励起光源と共にパッケージングされてもよい。例えば、オンボード光源を有する制御回路の大量生産版は、約7.5inの小さな容積及び/または約0.1lbs未満の重量を有する典型的な集積光学モジュール内に収まる可能性がある。
【0075】
いくつかの実施形態では、波長分割デマルチプレクサ(図2の要素212参照)は、図7の監視システム700に示すように、アレイ化導波路回折格子(AWG)を備えることができる。図7は、電力変圧器770内、上、または周りに配置されたいくつかの光センサS1、S2、...SNを有する電力変圧器770を示す。図7には1つの変圧器しか示されていないが、監視システムが複数のセンサによって監視される複数の変圧器を含むことができることは理解されよう。
【0076】
図7を参照すると、S1は、ピーク、中心、または重心波長λを有する波長帯域で動作し、S2は、ピーク、中心、または重心波長λを有する波長帯域で動作し、SNは、中心波長λを有する波長帯域で動作する。各々のセンサは、S1がパラメータ1に対して最も感応性であり、S2がパラメータ2に対して最も感応性であり、SNがパラメータNに対して最も感応性であるように、異なるパラメータに対して最も感応性であり得る。パラメータ1の変化は、λから(λ+/-Δ)までS1から反射される光の波長をシフトさせることができ、パラメータ2の変化は、S2から反射された光の波長をλから(λ+/-Δ)にシフトさせることができる。検知されたパラメータの変化によって引き起こされる波長シフトは、個々のセンサの特徴的ベース波長間の間隔に比べて小さい。
【0077】
光源710は、サーキュレータ715を介してセンサに入力光を提供するように構成される。光源710は、各々のセンサの入力光と、予想される反射波長の範囲にわたって入力光を提供するのに十分広い帯域幅を有する。AWGは、N対の出力導波路745を含むことができ、出力導波路745の各々の対は、特定のセンサの反射出力の周りの波長の中心にある。光源からの光はサーキュレータを通って進み、出力光としてセンサから反射する。センサから発せられた出力光は、サーキュレータ715を通ってセンサ光導波路730上に運ばれ、光波長領域デマルチプレクサとして使用されるAWG740に搬送される。光デマルチプレクサとして使用するとき、AWG入力導波路741からの光は、光の波長に応じて出力導波路745に回折によって分散される。例えば、AWGは1550nmの中心波長と、100GHz(その波長で0.8nm)のチャネル間隔を有する16の出力チャネルとを有することができる。このシナリオでは、1549.6nmの光入力はチャネル8に行き、1550.4nmの光入力はチャネル9に行く。
【0078】
AWGは、入力導波路741、第1のスラブ導波路742、アレイ導波路743、第2のスラブ導波路744、及び出力導波路745を含むことができる。アレイ導波路743の各々は、次第に長くなる。入力光は、アレイ導波路743のうち第1のスラブ導波路742で分断される。各々のアレイ導波路743の出力において、光は、また、ある導波路から次の導波路へ徐々に増加する波長に依存する位相シフトを生じる。アレイ導波路743の出力は、コヒーレント源のアレイに似ている。したがって、アレイ導波路743から第2のスラブ導波路744へ放射される光の伝播方向は、回折格子におけるように、光源間の徐々に増加する位相シフト、したがって波長に依存する。
【0079】
いくつかの実施形態では、光カプラ、例えばAWG、光ダイオードアレイ及び/またはデジタイザは、平面光波回路、すなわち集積光学装置として配列されてもよい。例えば、これらのシステム構成要素は、光学及び/または電子ビームリソグラフィ技術を使用してシリコンオンインシュレータ(SOI)ウェハから作製されてもよい。平面光波回路は、シリコンに異方性エッチングされたV溝を使用して整列されたファイバ光学系に結合することができる。ゲルマニウムのような他の半導体とのハイブリッド集積は、シリコンのバンドギャップ以下のエネルギーで光検出を提供することが可能である。
【0080】
AWG740では、アレイ導波路743の出力(したがってスラブ導波路744の入力側)は、そこから発する光が第2のスラブ導波路744を進み、限られた距離で焦点を結ぶようになるように、所定の曲率半径を有する円弧に沿って配列されてもよい。出力導波路745の入力は、特定の波長に対応する焦点に名目上配置されているが、後で説明するように出力導波路間に意図的に「クロストーク」を導入するために焦点の前または後に設定することができる。したがって、AWG740の入力741の光は、光の波長に応じて出力導波路745の所与の1つに受動的に導かれる。したがって、S1、S2、...SNからの出力光は、出力光の波長に応じて出力導波路745に導かれる。
【0081】
出力導波路745は、光検出器、例えば2N個の光検出器を含む検出器ユニット750に光学的に結合される。AWGにおける波長に基づく空間的分散のために、センサS1、S2、...SNは、検出器ユニットの表面にわたって空間的に分布している。光検出器は、出力導波路からの光を検知し、検知されたパラメータに関する情報を含む電気信号を生成する。
【0082】
図8Aは、いくつかの実施形態による、波長領域光デマルチプレクサ(例えば、図3の要素340)及び検出器ユニット(例えば、図3の要素350)として使用されるAWGの出力導波路をより詳細に示す。構成では、2N個の光検出器がそれぞれN個のセンサからの光を受光するように結合される。AWGは、重心波長λ、λ、...λを有するセンサ出力光を、出力導波路対845a、b、846a、b、...847a、bに分散する。重心波長λを有するセンサ出力光は、導波路対845a、845bに分散され、重心波長λを有するセンサ出力光は、導波路対846a、846bに分散され、重心波長λを有するセンサ出力光は、導波路対847a、847b等に分散される。出力導波路845aからの光は、検出された光に応答して信号I11を生成する光検出器855aに光学的に結合され、出力導波路845bからの光は、検出された光に応答して信号I12を生成する光検出器855bに光学的に結合され、出力導波路846aからの光は、検出された光に応答して信号I21を生成する光検出器856aに光学的に結合され、出力導波路846bからの光は、検出された光に応答して信号I22を生成する光検出器856bに光学的に結合され、出力導波路847aからの光は、検出された光に応答して信号IN1を生成する光検出器857aに光学的に結合され、出力導波路847bからの光は、検出された光に応答して信号IN2を生成する光検出器857bに光学的に結合される。
【0083】
検知されたパラメータに応答してセンサの出力光の重心がシフトすると、AWGはセンサの出力光の空間位置もシフトさせる。例えば、最初にλの重心を有するセンサ出力光がλ+Δの重心にシフトすると、図8Aに示すように、出力導波路845aによって搬送される光の量が減少し、出力導波路845bによって搬送される光の量が増加する。したがって、光検出器855aによって検出される光の量は減少し、光検出器855bによって検出される光の量は、光電流I及びIの対応する変化とともに増加する。したがって、検知されたパラメータのシフトは、センサ出力光重心のλからλ+Δへのシフトを引き起こし、これは次にI11とI12との比の変化を引き起こす。
【0084】
各々の光ダイオードの光電流は、抵抗器または変圧器インピーダンス増幅器によって電圧に変換され、検知され、デジタル化される。波長シフトは、以下の式を有するi番目のFBGについて計算することができる。
【0085】
【数2】
【0086】
式中、λはi番目のFBGの推定波長であり、λi0は出力導波路対の中心波長であり、Δλは出力導波路対のピーク伝送波長間の波長間隔であり、I2i及びI2i-1は一対の各々の導波管の出力における光検出器によって記録された光強度である。所与のFBGの検知された波長シフトから、検知されたパラメータの値を計算し、次にそれらの特性がどのように観察される波長シフトを変化させる傾向があるかが分かっている場合には、FBGによって検知されたパラメータに対応する変圧器または他の送電網構成要素の特性を計算することが可能である。いくつかの実施形態では、FBGは、FBGからの反射ピークが対の1つの光検出器から他の光検出器にシフトすると、対の微分信号(上の式の分子)に連続的かつ単調な変化が生じるように、Δλ/2にほぼ等しいFWHMを有する。
【0087】
図8Bは、いくつかの実施形態による波長領域光デマルチプレクサ(例えば、図2の要素212)及び検出ユニット(例えば、図2の要素215)として使用されるAWGの出力導波路の別の構成をより詳細に示す。この構成では、N個の光検出器がそれぞれN個のセンサからの光を受光するように結合される。AWGは、重心波長λ、λ、...λを有するセンサ出力光を出力導波路845、846、...847に空間的に分散させる。重心波長λを有するセンサ出力光は、導波路845に分散され、心波長λを有するセンサ出力光は導波路846に分散され、重心波長λを有するセンサ出力光は導波路847等に分散されるなどである。出力導波路845からの光は、検出された光に応答して信号Iを生成する光検出器855に光学的に結合され、出力導波路846からの光は、検出された光に応答して信号Iを生成する光検出器856に光学的に結合され、出力導波路847からの光は、検出された光に応答して信号Iを生成する光検出器857に光学的に結合される。
【0088】
検知されたパラメータに応答してセンサの出力光の重心がシフトすると、AWGはセンサの出力光の空間位置もシフトさせる。例えば、図8Bに示すように、最初にλの重心を有するセンサ出力光がλ+Δの重心にシフトすると、出力導波路845によって搬送される光の量が増加する。したがって、光検出器855によって検出される光の量は、光電流Iの対応する変化とともに増加する。したがって、検知されたパラメータのシフトは、センサ出力光重心のλからλ+Δへのシフトを引き起こし、これは次にI内の変化を引き起こす。
【0089】
光源強度(例えば、図3の310)の変動によって引き起こされる光検出器電流の変化は、電流IN+1を生成する追加の光検出器899を使用して光源強度を測定することによってセンサ出力光の波長シフトによって引き起こされる光検出器電流の変化と区別することができる。次に、センサ1のI/IN+1、センサ2のI/IN+1などから波長シフトを計算することができる。
【0090】
所与のセンサの検知された波長シフトから、検知されたパラメータの値を計算し、次にそれらの特性が観測された波長シフトをどのように変化させる傾向があるかが分かっている場合、センサによって検知されたパラメータに対応する変圧器の特性を計算することが可能である。
【0091】
図9は、いくつかの実施形態による、波長領域光デマルチプレクサ、追加の分散要素、及びデジタイザとして使用されるAWGの出力導波路をより詳細に示す。この例では、初期重心波長λ、λ、...λを有するセンサ1、2、...Nは、それぞれAWGの出力導波路945、946、...947にそれぞれ空間的に分散される。出力導波路945、946、...947は、LVTS965、966、...967または他の空間的に分散性の光学素子上に入射する。
【0092】
任意選択的で、LVTSは、入力面LVTS965、966、...967を横切って出力導波路945、946、...947からの光をコリメート及び/または拡散するように構成される拡散構成要素955、956...957を含む。光の十分な広がりが出力導波路945、946、...947から起こる配置では、拡散構成要素を使用しない場合がある。LVTS965、966、...967は、プリズムまたは線形可変フィルタなどの分散要素を備える。LVTS965、966、...967は、その入力面965a、966a、...967aで導波路945、946、...947及び任意選択の拡散構成要素955、956、...957から光を受け、その出力面965b、966b、...967bから光検出器対975、976、...977に光を伝送する。LVTS965、966、...967の出力面965b、966b、...967bでは、光の波長は、出力面に沿った距離に応じて変化する。したがって、LVTS965、966、...967は、LVTS965、966、...967の入力面965a、966a、....967aに入射する光信号を、光の波長に応じて、さらに逆多重化するように働くことができる。
【0093】
図9は、LVTS965から放射される2つの波長帯域を示し、初期放射帯域は、出力面965bに沿った基準位置(REF)から距離dで放射される重心波長λを有する。検知されたパラメータに応答して、初期波長帯域は重心波長λ+Δを有する波長帯域にシフトする。シフトされた波長帯域は、基準位置から距離dΔ1で放射される。
【0094】
光検出器対975は、LVTS965を通り伝送された光が光検出器対975に当たるように、LVTS965に対して位置決めされる。例えば、波長λを有する光は、主に光検出器975a上に当たることができ、波長λ+Δを有する光は、主に光検出器975b上に当たることができる。光検出器975aは、その感光面に当たる光に応答して信号I11を生成し、光検出器975bは、その感光面に当たる光に応答して信号I12を生成する。信号I11、I12は、I11とI12の比の変化が検知されたパラメータの変化を示すように、検出されたパラメータに関する情報を含み、これは上述の式を使用して計算することができる。
【0095】
上述の高分解能波長シフト検出方式は、100Hzの有効サンプリングレートで50fm以上の波長分解能を維持しながら、数十から数千の多重化されたセンサを監視するように拡張することができる。例えば、一実施形態では、制御回路は、例えば光スイッチを使用して、時間領域多重化を使用して16個のセンサの8つの波長多重化センサ列を監視するように構成することができる。このような構成では、128個のセンサを100Hzで監視することができる。より低い周波数では、数千個までのセンサを監視することができる。
【0096】
図10は、M個の変圧器を監視するための時間領域多重化を組み込む監視システム1000のブロック図を示し、各々の変圧器モニタ1021、1022、...1023は、N個のセンサを含む。各々の変圧器モニタ1021、1022、...1023のN個のセンサの光出力は、単一の光ファイバ1031、1032、...1033上に搬送されてもよく、センサの光出力は、光デマルチプレクサによって波長において空間的に分布される。光ファイバ及び/またはセンサは、同一に構築することができる。
【0097】
入力光は、光源1010から各々の変圧器モニタ1021、1022、...1023のN個のセンサに光時間領域マルチプレクサ1070を介して、及び導波路1031、1032、...1033を介して送られる。入力励起光はセンサS11...SNMと相互作用する。変圧器モニタ1021、1022、...1023のセンサからの出力光は、光時間領域マルチプレクサ1070を介して光波長領域デマルチプレクサ1040に送られる。変圧器モニタ1021(センサS11~SN1を含む)1022(センサS12~SNMを含む)、...1023(センサS1M~SNMを含む)は、光時間領域マルチプレクサ1070によって1つずつ選択される。彼選択されたモニタからの光信号は、異なる時間間隔の間に光デマルチプレクサ1040、検出ユニット1050、及び分析器1060に印加される。本明細書で開示されるようなセンサ出力光の時間領域多重化及び波長領域多重化と逆多重化とを組み合わせた実装形態は、時間領域多重化または波長領域多重化/逆多重化のいずれかのみによって対処され得るよりも多くの変圧器を監視することができる。
【0098】
本明細書で論じる監視システム手法は、重要な組み込み機能としてのサイバーセキュリティ及び相互運用性を含むことができる。スマートグリッド資産のサイバーセキュリティでは、攻撃を熟考するための物理、計算、及び通信インターフェース層の脆弱性、ならびにユーザのエラー、機器の故障、及び自然災害からの不測の危殆化を懸念している。開示された手法は、少なくともそれらが埋め込み型検知のための光ファイバケーブルに基づいているため、従来の選択肢よりも固有の利点を有する。変圧器内の埋め込み検知構成から出る光ファイバケーブルは、例えば標準的な光ファイバコネクタを使用して、モジュール式の専用のデータセキュア通信バスに結合される。通信バスは、検知された信号を変電所制御センター、例えば100Hzで50fmの分解能で30kmまで直接伝送することができる。EMI及びRFI耐性特性は、光ファイバ通信を変電所周辺の望ましい長距離通信バスにする。付加的に、光ファイバを介した通信は、遮蔽及び避雷機能を提供する。
【0099】
いくつかの実施形態によれば、制御回路、例えば、オンボード光源を備えたフォトニックチップ読み出しは、監視制御及びデータ取得(SCADA)及びSASと直接インターフェースする変電所に位置する。埋め込み検知とモデルベースのアルゴリズムにより、制御回路は、変電所からの変圧器健全性のための光センサの波長シフトを監視する。前述のように、制御回路は、潜在的に複数の関心のある変圧器を監視することができ、及び/または時間多重化戦略を使用して中央の場所から同じ変圧器からの複数の冗長光ファイバケーブルを監視することができる。同じ変圧器から複数の冗長光ファイバを監視することは、例えば、セキュリティの観点から望ましい場合がある。中央の場所からの監視は、検知場所でのバッテリまたは他のエネルギー源の必要性を排除する。制御回路は、変電所制御センター内の自動化システムに給電するのと同じエネルギー源によって給電することができる。中央の場所からの監視は、制御回路が現場での攻撃から物理的に保護されるため、セキュリティを強化する。変圧器パラメータに起因しない異常な信号異常のために通信チャネルを監視する多重化された基準光センサを追加することにより、攻撃及び/または他のセキュリティ違反に対する警告を提供することができる。
【0100】
本明細書で開示されるシステム、装置、または方法は、本明細書に記載される特徴、構造、方法、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。例えば、装置または方法は、本明細書に記載された特徴及び/またはプロセスの1つ以上を含むように実装されてもよい。そのような装置または方法は、本明細書で説明される特徴及び/またはプロセスのすべてを含む必要はないが、有用な構造及び/または機能を提供する選択された特徴及び/またはプロセスを含むように実装され得ることが意図される。
【0101】
上記の詳細な説明では、数値及び範囲が、説明された実装の様々な態様について提供される。これらの値及び範囲は、単なる例として扱われ、特許請求の範囲を限定するものではない。例えば、本開示に記載された実施形態は、開示された数値範囲を通じて実施することができる。さらに、多くの材料が様々な実施に好適なものとして識別される。これらの材料は、例示的なものとして扱われるべきであり、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0102】
様々な実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、限定するものではない。開示された実施形態は、包括的であること、または可能な実施態様を開示された実施形態に限定することを意図しない。上記教示に照らして、多くの修正及び変形が可能である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10