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  • 特許-コンクリート製造方法 図1
  • 特許-コンクリート製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】コンクリート製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 40/02 20060101AFI20231109BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20231109BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20231109BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20231109BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20231109BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20231109BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20231109BHJP
   C04B 38/08 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C04B40/02
C04B14/02 B
C04B14/04 A
C04B14/28
C04B24/12 Z
C04B24/26 D
C04B24/38 B
C04B38/08 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018164277
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020037493
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-07-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小林 勝已
(72)【発明者】
【氏名】増田 圭司
(72)【発明者】
【氏名】中村 喜和
(72)【発明者】
【氏名】加藤 高之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 優
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】日比野 隆治
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-303398(JP,A)
【文献】特開2001-261410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02,40/00-40/06,103/00-111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を可逆的に吸着する多孔質材料を二酸化炭素雰囲気下で処理することで前記多孔質材料に二酸化炭素を吸着させること、
セメント、および前記二酸化炭素雰囲気下で処理された前記多孔質材料を含む第1の混合物を形成すること、
前記第1の混合物に気体状の二酸化炭素を添加して第2の混合物を形成すること、
前記二酸化炭素を添加した前記第2の混合物を攪拌すること、および
前記第2の混合物を硬化することを含み、
前記水の重量は、前記セメントの重量に対して0%よりも大きく60%以下であり、
前記攪拌の時間は、90秒以上10分以下であるコンクリート製造方法。
【請求項2】
二酸化炭素を可逆的に吸着する多孔質材料を二酸化炭素雰囲気下で処理することで前記多孔質材料に二酸化炭素を吸着させること、
セメント、および前記二酸化炭素雰囲気下で処理された前記多孔質材料を含む第1の混合物を形成すること、
前記第1の混合物に気体状の二酸化炭素を添加して第2の混合物を形成するとともに、前記第2の混合物を攪拌すること、および
前記第2の混合物を硬化することを含み、
前記水の重量は、前記セメントの重量に対して0%よりも大きく60%以下であり、
前記攪拌の時間は、90秒以上10分以下であるコンクリート製造方法。
【請求項3】
前記第1の混合物は骨材をさらに含む、請求項1または2に記載のコンクリート製造方法。
【請求項4】
前記第1の混合物は混和剤をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンクリート製造方法。
【請求項5】
前記多孔質材料は、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ランタノイド金属の酸化物、または炭素を含む、請求項1または2に記載のコンクリート製造方法。
【請求項6】
前記多孔質材料は、アミノ基を含む有機基を表面に有する、請求項1または2に記載のコンクリート製造方法。
【請求項7】
前記多孔質材料は、カルバメート基を含む有機基を表面に有する、請求項1または2に記載のコンクリート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、コンクリートとその製造方法に関する。例えば、本発明の実施形態の一つは、二酸化炭素が固定化されたコンクリート、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、主にセメント水和物、骨材、水、および混和剤によって構成され、その優れた機械的特性、耐候性、取り扱いの容易さ、経済性などに起因し、社会的生産基盤、経済基盤を創成するための重要な構造材料の一つとして様々な分野で幅広く利用されている。
【0003】
セメントは、その製造時において大量の二酸化炭素を排出することが知られており、これは温室効果の原因の一つとして挙げられている。そこで、例えば特許文献1に開示されているように、セメントと水の反応(水和)を二酸化炭素の存在下で行うことで、コンクリート中に二酸化炭素を固定化する方法が知られている。この方法により、セメントの製造時に発生した二酸化炭素が間接的に回収され、セメントの製造・利用過程における二酸化炭素の総排出量が軽減される。このため、セメントの水和時における二酸化炭素固定は、地球温暖化に対する有効な手段として関心が持たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-510274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、セメントの水和時において効果的に二酸化炭素を固定するための方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、二酸化炭素が効率よく固定化されたコンクリートを提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一つは、コンクリートを製造する方法である。この方法は、セメントと水を含む第1の混合物を形成すること、第1の混合物に二酸化炭素を添加して第2の混合物を形成すること、および第2の混合物を硬化することを含む。水の重量は、コンクリートに残存する未水和セメントが0%以上50%以下になるように調整される。この方法はさらに、第1の混合物、または第2の混合物に二酸化炭素を可逆的に吸着する多孔質材料を添加することを含んでもよい。
【0007】
本発明の実施形態の一つはコンクリートである。このコンクリートは、水和セメント、および炭酸カルシウムを含む。炭酸カルシウムの重量は、コンクリートの重量に対して0.1%以上50%以下である。コンクリートはさらに、二酸化炭素を可逆的に吸着する多孔質材料をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、効果的に二酸化炭素をコンクリート中に固定化することができる。また、二酸化炭素が効率よく固定され、強度や耐候性などの諸特性に優れたコンクリートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の一つであるコンクリートの製造方法のフロー。
図2】本発明の実施形態の一つであるコンクリートの製造方法に適用可能なシステム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0011】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0012】
1.コンクリート
本発明の実施形態の一つであるコンクリートを説明する。コンクリートは、主な構成として、セメント水和物と炭酸カルシウムを含む。コンクリートはさらに、骨材、混和剤、あるいは二酸化炭素を可逆的に吸着する多孔質材料を含んでもよい。また、コンクリートは未水和のセメントを含んでもよい。
【0013】
セメント水和物は、セメントと水の反応(水和)によって得ることができる。セメントの組成に制約はなく、例えばエーライトとも呼ばれる、主にケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO2)を含む鉱物、ビーライトとも呼ばれる、主にケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO2)を含む鉱物、アルミネート相を形成するアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al23)を主に含む鉱物、およびフェライト相を形成するアルミン酸四カルシウム(4CaO・Al23・Fe23)を主に含む鉱物の少なくとも一つを含む。あるいはこれらの鉱物の全てを含むセメントを用いてもよい。例えばポルトランドセメントを用いることができ、この場合、約55%の3CaO・SiO2と約20%の2CaO・SiO2が主成分となる。
【0014】
これらの鉱物は水と水和し、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)とともに、主にCaO・SiO2・2.5H2OやCaO・Al23・Ca(OH)2・18H2O、CaO・Fe23・Ca(OH)2・18H2Oなどのセメント水和物を与える。したがって、コンクリートはこれらの化学式で表されるセメント水和物の少なくとも一つを含む、あるいはこれらのセメント水和物の混合物である。
【0015】
後述するように、コンクリートはセメントの水和時に二酸化炭素を添加することで製造され、炭酸カルシウムは、少なくとも一部はセメントの水和時に生成する水酸化カルシウムと添加された二酸化炭素との反応によって生成する。炭酸カルシウムの重量は、コンクリートの重量に対して0.1%以上50%以下、0.1%以上5%以下、0.1%以上2.5%以下、あるいは1%以上1.5%以下の範囲、あるいは水和セメントと炭酸カルシウムの総重量に対して0.2%以上10%以下、0.2%以上5%以下、あるいは1%以上3%の範囲から選択される。
【0016】
骨材は、コンクリートに機械的・物理的強度を付与する、あるいはコンクリートの体積を増大させるために添加される。骨材としては砂や砂利、岩などが例示される。コンクリート中における骨材の組成に制約はなく、例えばコンクリートに対する骨材の重量は、10%以上90%以下、20%以上70%以下、あるいは25%以上60%以下の範囲から選択される。混和剤にも制約はなく、例えばセメントと水の混合物の凍結を防止する、あるいはこの混合物の流動性を増大する機能を有する薬品などを使用することができる。混和剤としては、オキシカルボン酸(ヒドロキシカルボン酸)塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物塩、スチレンスルホン酸共重合体塩などの、コンクリート中に空気泡を発生させる界面活性剤が例示される。あるいは、水中でのコンクリートの施工を可能にするための増粘剤を混和剤として用いてもよい。増粘剤としては、メチル化セルロースなどのセルロース誘導体やポリアクリルアミドが例示される。増粘剤は、用いるセメントの重量に対して0.1%以上20%以下、あるいは1%以上10%以下の範囲から選択することができる。
【0017】
二酸化炭素を可逆的に吸着、脱離する多孔質材料としては、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ランタノイド金属の酸化物、または炭素を基本骨格とする材料が例示される。ランタノイド金属としては、例えばセリウムやランタン、イットリウムなどが挙げられる。コンクリート中における多孔質材料の組成にも制約はなく、例えばコンクリートに対する多孔質材料の重量は、1%以上30%以下、0.1%以上10%以下、1%以上10%以下、あるいは1%以上5%以下の範囲から選択される。
【0018】
この多孔質材料は多数の細孔を有しており、細孔の平均径は、0.5nm以上100μm以下、2nm以上1μm以下、または50nm以上500nm以下である。多数の細孔に起因して、多孔質材料は100m2/g以上1000m2/g以下、あるいは300m2/g以上500m2/g以下の高い比表面積を有する。多孔質材料の細孔の表面は化学的に修飾されていてもよく、例えば一級アミノ基を有する有機基が多孔質材料のケイ素やジルコニウム、アルミニウム、炭素などと結合していてもよい。
【0019】
コンクリートに未水和のセメントが含まれる場合、その量は、コンクリートの総重量に対して0%よりも大きく50%以下、0%よりも大きく10%以下、0%よりも大きく5%以下、あるいは0%よりも大きく3%以下となるように調整される。水和はセメントと水との化学反応であるため、未水和セメントの量は、水和時の水の量によって調整される。
【0020】
このような構成を有するコンクリートは、機械的・物理的強度が高く、かつ、その強度がコンクリートの全体にわたって均一である。また、コンクリート中の細孔溶液のpHも12以上を維持することができ、コンクリートの内部に設けられる鉄筋などの構造物に対する影響は無視することができる。さらに、コンクリートは高い密度を有するため、外部から酸素や水などの汚染物質の侵入が抑制される。このため、耐候性が高く、耐用年数の長い構造材料として使用することができる。
【0021】
2.製造方法
以下、コンクリートの製造方法を図1のフローを用いて説明する。
【0022】
図1に示すように、まず、セメントを水の非存在下において攪拌する(S1:空練)。この際、骨材を用いてもよく、この操作により、骨材とセメントが均一に混合される。攪拌時間は30秒以上1時間以下、30秒以上15分以下、あるいは30秒以上5分以下とすればよい。
【0023】
引き続き、セメントに対して水を加えて攪拌する(S2:本練)。これにより、セメントと水を含む第1の混合物が得られ、第1の混合物内でセメントの水和が開始される。この時の水の量は、最終的に得られるコンクリートの総重量に対し、未水和セメントが残存しないように(すなわち、水和セメントが0%、もしくは0%よりも大きく10%以下、0%よりも大きく5%以下、あるいは0%よりも大きく3%以下となるように調整される。より具体的には、セメントの重量に対して0%よりも大きく60%以下、0%よりも大きく40%以下、あるいは0%よりも大きく20%以下の水が加えられる。この時、混和剤を第1の混合物に添加してもよい。
【0024】
この第1の混合物に対してさらに二酸化炭素が添加され、これによって第2の混合物が形成される(S3)。二酸化炭素を添加した後、あるいは二酸化炭素の添加とともに第2の混合物の攪拌を行う。攪拌時間は90秒以上10分以下、90秒以上5分以下、あるいは90秒以上2分以下の範囲から選択される。
【0025】
二酸化炭素の添加は、気体状の二酸化炭素を用いて行ってもよく、あるいは固体状の二酸化炭素(すなわちドライアイス)を用いて行ってもよい。後者の場合、ドライアイスの塊を機械的に粉砕して用いてもよく、あるいは高圧下液体として存在する二酸化炭素を急激に大気下に開放する操作、すなわち、断熱膨張を利用する急激な温度低下によって形成される微粒子状の二酸化炭素を用いてもよい。あるいは、第1の混合物を形成する際に用いる水として二酸化炭素を含む水(炭酸水)を用いることで二酸化炭素の添加を行ってもよい。この場合、炭酸水を用いて第1の混合物を形成した後、さらに気体状、もしくは固体状の二酸化炭素を添加してもよい。
【0026】
断熱膨張を利用する際には、例えば図2に示したシステム100を用いることができる。システム100は、高圧下で二酸化炭素を貯蔵するタンク102、第1の混合物や第2の混合物を生成、攪拌するためのミキサー104、タンク102内の二酸化炭素を輸送するための導管106、導管106に取り付けられ、二酸化炭素の輸送を制御するバルブ110を含む。任意の構成として、二酸化炭素の流量を見積もるための流量計108を有してもよい。さらに任意の構成として、ミキサー104の温度を制御するための温度コントローラ112を備えてもよい。例えばドライアイスを用いる場合に第2の混合物の温度が低下した場合、温度コントローラ112を用いて加熱し、水和を促進することができる。あるいは水和速度を低下させるため、温度コントローラ112を用いてミキサー104を冷却してもよい。ミキサー104は、密閉して内部が加圧できるように構成してもよい。
【0027】
ミキサー104にはさらに、セメントや骨材、混和剤を投入する開口116や水を導入する導管114が設けられる。ミキサー内104で得られる第2の混合物はシャッター118を介してミキサー104の底部から鋳型などへ搬出される。
【0028】
二酸化炭素の添加量は流量計108を用いて見積もってもよく、あるいは二酸化炭素の導入前後のタンク102の重量差から求めてもよい。あるいは、導管106から噴出する粒子状のドライアイスを計量することで求めてもよい。添加した二酸化炭素は、少なくとも一部は炭酸化に利用されないため、添加する二酸化炭素の量は、水和によって生成する水酸化カルシウムに対して過剰量添加すればよい。例えば生成する水酸化カルシウムに対し、10モル倍以上10000モル倍以下、あるいは10モル倍以上1000モル倍以下の二酸化炭素を添加すればよい。
【0029】
なお、図2のシステム100では、タンク102内に貯蔵される二酸化炭素がミキサーに輸送されるが、化学プラントや火力発電所から排出される二酸化炭素を含むガスをミキサー104へ導入してもよい。化学プラントや火力発電所の排出ガスには高濃度の二酸化炭素が含まれるため、これを利用することで大量の二酸化炭素が大気中へ放出されることが抑制され、地球温暖化の防止に寄与することができる。
【0030】
上述したように、セメントと水が接触して水和が開始し、これに伴って生成する水酸化カルシウムが水に溶解する。二酸化炭素を添加することで水酸化カルシウムが炭酸カルシウムを与える(水和反応、炭酸化:S4)。このため、コンクリートに含まれる炭酸カルシウムは、添加される水、または二酸化炭素の量によって制御することが可能である。
【0031】
なお、第1の混合物を形成するために添加する水は段階的に添加してもよい。上述したように、セメントの重量に対して0%よりも大きく60%以下、0%よりも大きく40%以下、あるいは0%よりも大きく20%以下の量の水が添加されるが、このうちの一部を用いて第1の混合物を形成し、引き続く二酸化炭素の添加後に残りの水を加えてもよい(S5)。水酸化カルシウムと二酸化炭素は1:1のモル比で反応するので、例えば、反応させる二酸化炭素に対して等モルの水酸化カルシムが生成するために必要な量の水を添加(一段階目の水の添加)して第1の混合物を形成し、残りの水を二酸化炭素の添加後、あるいは添加時に加えてもよい(二段階目の水の添加)。例えばポルトランドセメントを用いて二酸化炭素1kgの全てを炭酸化に利用する場合には、約0.63kgの水を添加して第1の混合物を形成し、その後、残りの水を第2の混合物の形成後に添加する。この時、二段階目の水として炭酸水を用いてもよく、あるいは二段階目の水の添加の際に二酸化炭素をさらに追加的に加えてもよい。また、混和剤は一段階目の水の添加の際に添加してもよく、二段階目の水の添加の際に添加してもよい。
【0032】
二酸化炭素は常温、常圧において気体として存在するため、条件によっては添加した二酸化炭素の一部、あるいは大部分は直ちに拡散する、あるいは昇華する。このため、添加した二酸化炭素の全てを炭酸化に利用することは事実上不可能である。そこで二酸化炭素を可逆的に吸着する多孔質材料を用いてもよい。多孔質材料は、セメントの水の非存在下における攪拌時(S1)、第1の混合物を形成する際(S2)のいずれかにおいて添加すればよい。その添加量は多孔質材料の二酸化炭素吸着量にも依存するが、例えば最終的に得られるコンクリートに対して1%以上30%以下、0.1%以上10%以下、1%以上10%以下、あるいは1%以上5%以下となるように調整すればよい。上述したように、多孔質材料は酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ランタノイド金属の酸化物、または炭素を含む無機化合物である。このため、最終的に得られるコンクリートにおいて骨材と同様の機能を発揮することができるため、コンクリートの機械的・物理的強度の向上に寄与する。
【0033】
多孔質材料を添加することで、添加された二酸化炭素の一部が多孔質材料に吸着される。例えば一級アミノ基を有する有機基が表面に固定された多孔質材料を用いる場合には、アミノ基は二酸化炭素と反応してカルバメート基として存在する。カルバメート基は二酸化炭素を放出して可逆的にアミノ基に戻るので、このメカニズムに従って二酸化炭素は多孔質材料に可逆的に吸脱着される。したがって、二酸化炭素の添加が終了して二酸化炭素の濃度が低下すると、平衡により、吸着された二酸化炭素が徐放される。この時、多孔質材料は水やセメントと接した状態であるため、放出された二酸化炭素は水に含まれる水酸化カルシウムと速やかに反応して炭酸カルシウムを与える。このようなメカニズムが炭酸化に寄与するため、添加された二酸化炭素を有効に利用することができる。
【0034】
多孔質材料を用いる場合、予め二酸化炭素が吸着した多孔質材料を用いてもよい。すなわち、別途二酸化炭素雰囲気下で処理し、表面にカルバメート基を有する多孔質材料をセメントの水の非存在下における攪拌時(S1)、あるいは第1の混合物を形成する際(S2)に添加してもよい。この場合も上述したメカニズムが働くため、効率よく二酸化炭素を利用することが可能となる。
【0035】
なお、二酸化炭素をミキサー104に添加した後、二酸化炭素が超臨界状態となるよう、ミキサー104を密閉、加熱してもよい。具体的には、ミキサー104内に二酸化炭素を導入した後、図示しないシャッターや開閉扉などを用いて開口116を塞いでミキサー104を密閉し、内部が31.1℃以上の温度、7.38Pa以上の圧力になるよう、温度コントローラ112によってミキサー104を加熱してもよい。超臨界状態では二酸化炭素は非常に低い粘性を示し、物質内に容易に拡散する。このため、炭酸化が速やかに、かつ効率よく進行し、添加した水によって生成する水酸化カルシウムを効率よく炭酸カルシウムへ変換することができる。
【0036】
この後、第2の混合物は鋳型へ移送される。鋳型内で水和がさらに進行するとともに流動性が大きく低下し、セメント水和物が硬化することでコンクリートが得られる(S6)。
【0037】
本発明の実施形態では、コンクリートの製造中に二酸化炭素が添加されるため、コンクリート中に炭酸カルシウムが存在する。このため、コンクリートは高い機械的・物理的強度を有することができる。また、二酸化炭素を可逆的に吸着する多孔質材料を用いる場合、多孔質材料はコンクリート中で骨材としても機能するため、コンクリートの機械的・物理的強度の更なる向上に寄与する。
【0038】
また、セメント製造時に放出される二酸化炭素は、間接的に、セメントを用いて製造されるコンクリート内に固定化される。このため、本発明の実施形態であるコンクリートの製造方法は、二酸化炭素の削減と地球温暖化の抑制に寄与することができる。特に二酸化炭素を可逆的に吸着する多孔質材料を用いることで、より効率よく二酸化炭素の固定化を行うことができるため、本発明の実施形態は温室効果対策のための有効な手段であると言える。
【0039】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0040】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0041】
100:システム、102:タンク、104:ミキサー、106:導管、108:流量計、110:バルブ、112:温度コントローラ、114:導管、116:開口、118:シャッター
図1
図2