(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】火災報知設備
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
G08B17/00 D
G08B17/00 C
(21)【出願番号】P 2019010730
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】小山 清明
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-259688(JP,A)
【文献】特開平07-044789(JP,A)
【文献】実開平05-002294(JP,U)
【文献】特開2000-278304(JP,A)
【文献】特開平08-336192(JP,A)
【文献】特開2007-323197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00-17/12
23/00-31/00
H04L12/42-12/437
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機に接続されたループ伝送路に火災感知器及び短絡切離し装置を含む端末を接続して火災を監視する火災報知設備に於いて、
前記受信機に伝送制御部の指示により動作する伝送部が設けられ、
前記受信機の前記伝送部は、
前記ループ伝送路の終端電圧が正常に検出される場合は、前記ループ伝送路の始端からの信号の送受信により火災を監視する正常時伝送制御を行い、
前記ループ伝送路の終端電圧が断たれた場合に、前記ループ伝送路の始端から信号の送受信を行う始端伝送制御と、前記ループ伝送路の終端から信号の送受信を行う終端伝送制御とを切替えて火災を監視する断線時伝送制御を行い、断線位置の検出を行い、
前記受信機に対しネットワーク回線を介して1又は複数の中継盤が接続され、前記中継盤に接続されたループ伝送路に火災感知器及び短絡切離し装置を含む端末を接続して火災を監視し、前記中継盤で火災を検出した場合に前記受信機に通知して火災警報を出力させる分散システムが構成されており、
前記中継盤に伝送制御部の指示により動作する伝送部が設けられ、
前記中継盤の前記伝送部は、
前記ループ伝送路の終端電圧が正常に検出される場合は、前記ループ伝送路の始端からの信号の送受信により火災を監視する正常時伝送制御を行い、
前記ループ伝送路の終端電圧が断たれた場合に断線を検出して終端スイッチをオンし、所定の伝送周期毎に、前記ループ伝送路の始端から信号の送受信を行う始端伝送制御と、前記終端スイッチを介して前記ループ伝送路の終端から信号の送受信を行う終端伝送制御とを交互に切替えて火災を監視する断線時伝送制御を行い、
断線時伝送制御における始端伝送制御中に、ループ回線の終端電圧が正常に検出された場合は、前記終端スイッチのオフにより断線時伝送制御を解除して正常時伝送制御に切り替える断線復旧制御を行う、
ことを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
請求項
1記載の火災報知設備に於いて、
前記中継盤の前記伝送部は、前記ループ伝送路の断線を検出した場合に、前記始端伝送制御により送信された信号に対し応答信号が受信された前記端末の始端側端末グループを検出すると共に、前記終端伝送制御により送信された信号に対し応答信号が受信された端末の終端側端末グループを検出し、前記始端側端末グループと前記終端側端末グループとの間を前記ループ伝送路の断線位置として検出し、前記受信機に通知して報知させることを特徴とする火災報知設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信機からのループ伝送路に火災感知器及び短絡切離し装置(ショートサーキットアイソレータ)を含む端末を接続して火災を監視する火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、R型として知られた火災報知設備にあっては、受信機から引き出された伝送路に、伝送機能を備えた火災感知器等の端末装置を接続し、火災検出時には、例えば火災感知器からの火災割込みに基づき、検索コマンドを発行して発報した火災感知器のアドレスを特定し、火災発生アドレスを表示すると共に、特定した火災感知器から火災データを収集して監視するようにしている。
【0003】
このように、火災を検出した火災感知器のアドレスが分かると、適切な避難誘導や消火活動が可能となり、特に規模の大きな設備の火災監視には不可欠な機能となっている。
【0004】
また、火災受信機から引き出された伝送路の断線障害に対する信頼性を確保するため、受信機に対しループ状に接続されたループ伝送路に火災感知器を接続して火災を監視する火災報知設備が知られている。
【0005】
図10は従来のループ伝送路を用いた火災報知設備の説明図である。
図10に示すように、受信機10に設けられた伝送部100からは一対の信号線を用いた伝送路12が引き出され、伝送路12は受信機10から引き出された後に再び受信機10に戻るループ状に配置されている。以下、説明では、受信機10にループ状に接続された伝送路12を、ループ伝送路12という。
【0006】
ループ伝送路12の信号線間には伝送機能を備えた火災感知器16が接続されており、火災感知器16には固有の端末アドレスが設定され、伝送部100から線路電圧を変化させる電圧制御信号(下り信号)を送信し、火災感知器16からは線路電流を変化させる電流応答信号(上り信号)を送信することで、火災を監視している。
【0007】
また、ループ伝送路12の途中には、所定の回線長や回線位置毎に、ショートサーキットアイソレータとして知られた短絡切離し装置18が接続されている。
【0008】
受信機10に引き込まれたループ伝送路12の終端には、電圧監視回路部104が設けられ、伝送部100からループ伝送路12に供給している線路電圧に基づきループ伝送路12の断線障害を監視している。また、ループ伝送路12の終端には、終端の信号線を伝送部100に切替え接続する終端スイッチ102が設けられており、通常監視状態で終端スイッチ102はオフとなり、ループ伝送路12の終端は伝送部100から切り離されている。
【0009】
運用中にループ伝送路12の途中で断線106が発生したとすると、電圧監視回路部104はループ伝送路12の終端電圧が断たれたことにより断線を検出して終端スイッチ102をオンし、ループ伝送路12の終端に伝送部100が接続される。
【0010】
このため伝送部100からの端末制御信号(電圧制御信号)は、終端スイッチ102を介してループ伝送路12の終端側から断線106の発生箇所に向けて伝送され、断線106の発生場所とループ伝送路12の終端の間に接続されている火災感知器16との間での信号の送受信が可能となり、断線障害が発生しても、ループ伝送路12に接続された火災感知器18による火災監視機能が失われることはなく、高い信頼性が得られる。
【0011】
また、運用中にループ伝送路12で短絡が発生した場合には、短絡発生場所の両側に位置する短絡切離し装置18がスイッチ62をオフして短絡箇所をループ伝送路12から切り離す。短絡切離し装置18による短絡箇所の切離しが行われると、断線時と同様にループ伝送路12の終端電圧が断たれたことにより電圧監視部104は断線を検出して終端スイッチ102をオンし、伝送部100からの端末制御信号は、終端スイッチ102を介してループ伝送路12の終端側から断線106の発生箇所に向けて伝送され、短絡障害が発生しても、ループ伝送路12に接続された火災感知器16による火災監視機能が失われることはなく、高い信頼性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2008-004033号公報
【文献】特開2010-114632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このような従来のループ伝送路が設けられた火災報知設備にあっては、ループ伝送路12に断線が発生した場合、電圧監視回路部104による終端電圧の監視により受信機10はループ伝送路12に断線が発生したことは分かるが、ループ伝送路12の何処で断線が発生したかが分からず、断線箇所の修復に手間と時間がかかる問題がある。
【0014】
また、断線が修復作業により復旧しても、ループ伝送路12の終端には断線時と同様に伝送部100から送信された端末制御信号の信号電圧が印加され、ループ伝送路12の伝送状態には変化がないため、受信機10は断線復旧を検出することができない。
【0015】
そのため、受信機における定期的な復旧スイッチ等の操作により、終端スイッチ102をオフし、復旧後に終端電圧が加われば終端スイッチ102のオフが維持されることで断線復旧と判断し、終端電圧が加わらなければ終端スイッチ102をオンして断線継続中と判断しており、断線復旧の確認に人為的な操作を必要とすることから、手間と時間がかかる問題がある。
【0016】
本発明は、ループ伝送路に断線が発生した場合に断線位置を確実に検出して報知すると共に断線が修復された場合にループ伝送路の伝送状態を元に戻す断線復旧の自動化を可能とする火災報知設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
(分散システムの中継盤)
受信機に対しネットワーク回線を介して1又は複数の中継盤が接続され、中継盤に接続されたループ伝送路に火災感知器及び短絡切離し装置を含む端末を接続して火災を監視し、中継盤で火災を検出した場合に受信機に通知して火災警報を出力させる分散システムが構成されており、
中継盤に伝送制御部の指示により動作する伝送部が設けられ、
中継盤の伝送部は、
ループ伝送路の終端電圧が正常に検出される場合は、ループ伝送路の始端からの信号の送受信により火災を監視する正常時伝送制御を行い、
ループ伝送路の終端電圧が断たれた場合に断線を検出して終端スイッチをオンし、所定の伝送周期毎に、ループ伝送路の始端から信号の送受信を行う始端伝送制御と、終端スイッチを介してループ伝送路の終端から信号の送受信を行う終端伝送制御とを交互に切替えて火災を監視する断線時伝送制御を行い、
断線時伝送制御における始端伝送制御中に、ループ回線の終端電圧が正常に検出された場合は、終端スイッチのオフにより断線時伝送制御を解除して正常時伝送制御に切り替える断線復旧制御を行う。
【0024】
(中継盤による断線位置の検出)
中継盤の伝送部は、ループ伝送路の断線を検出した場合に、始端伝送制御により送信された信号に対し応答信号が受信された端末の始端側端末グループを検出すると共に、終端伝送制御により送信された信号に対し応答信号が受信された端末の終端側端末グループを検出し、始端側端末グループと終端側端末グループとの間をループ伝送路の断線位置として検出し、受信機に通知して報知させる。
【発明の効果】
【0025】
(第1発明の火災報知設備による効果)
本発明は、受信機に接続されたループ伝送路に火災感知器及び短絡切離し装置(ショートサーキットアイソレータ)を含む端末を接続して火災を監視する火災報知設備に於いて、受信機に伝送制御部の指示により動作する伝送部が設けられ、伝送部は、ループ伝送路の終端電圧が正常に検出される場合は、ループ伝送路の始端からの信号の送受信により火災を監視する正常時伝送制御を行い、ループ伝送路の終端電圧が断たれた場合に、ループ伝送路の始端から信号の送受信を行う始端伝送制御と、ループ伝送路の終端から信号の送受信を行う終端伝送制御とを切替えて火災を監視する断線時伝送制御を行い、断線位置の検出を行うようにしたため、ループ伝送路が断線した場合に例えば所定の伝送周期毎に交互に行われる始端伝送制御と終端伝送制御を利用して信号応答のある始端端末側と終端端末側を検出して断線位置を検出することができ、断線位置が受信機のディスプレイ等の表示により報知されることで、ループ伝送路の断線に対し必要な修復作業を効率良く進めることができる。
【0026】
(断線位置の検出による効果)
また、伝送部は、ループ伝送路の断線を検出した場合に、始端伝送制御により端末応答信号が受信された端末の始端側端末グループを検出すると共に、終端伝送制御により端末応答信号が受信された端末の終端側端末グループを検出し、始端側端末グループと終端側端末グループとの間をループ伝送路の断線位置として検出して報知させることで、始端端末側グループと終端端末側グループの間となるループ伝送路の断線位置を確実に検出することができる。
【0027】
(第2発明の火災報知設備による効果)
本発明の他の形態にあっては、受信機に接続されたループ伝送路に火災感知器及び短絡切離し装置を含む端末を接続して火災を監視する火災報知設備に於いて、受信機に伝送制御部の指示により動作する伝送部が設けられ、伝送部は、ループ伝送路の終端電圧が正常に検出される場合は、ループ伝送路の始端からの信号の送受信により火災を監視する正常時伝送制御を行い、ループ伝送路の終端電圧が断たれた場合に断線を検出して終端スイッチをオンし、ループ伝送路の始端と終端からの信号の送受信により火災を監視する断線時伝送制御を行い、断線時伝送制御中に、始端と終端の内いずれか一端から所定の基準電圧以上の所定電圧範囲の電圧制御信号を送信し、ループ伝送路の他端側電圧を所定の基準電圧と比較し、他端側電圧が基準電圧以上となった場合に、ループ伝送路の断線復旧を検出し、終端スイッチのオフにより断線時伝送制御を解除して正常時伝送制御に切り替える断線復旧制御を行うようにしたため、ループ伝送路の断線状態では、オン状態にある終端スイッチの両端の電圧を監視していると、伝送部側の電圧とループ伝送路の他端側の電圧は同じまたは他端側の電圧が低くなっているが、断線が修復により復旧すると、ループ伝送路の他端側の電圧はループ伝送路の一端側から伝送された信号が印加されることで伝送部側の電圧より高い電圧となり、この断線復旧というループ伝送路の状態変化による終端電圧の変化を検出することで、終端スイッチのオフにより断線時伝送制御を解除して正常時伝送制御に切り替えることができ、受信機における人為的な操作を必要とすることなく、断線が修復された場合にループ伝送路の伝送状態を、ループ伝送路の始端と終端に対する双方向伝送から、ループ伝送路の始端に対する単方向伝送に戻す断線復旧を自動的に行うことができる。
【0028】
(他端側からの伝送)
また、第2発明の火災報知設備に於いて、伝送部は、断線時伝送制御中に、他端側電圧が基準電圧を下回った場合に、伝送部の他端側をループ伝送路の他端側に接続させるようにしたため、他端側電圧が基準電圧以下又は基準電圧を下回っている間は断線中にあることから、伝送部の他端側をループ伝送路の他端側に接続させることで、ループ伝送路の他端側に配置された機器について電源供給を継続することができる。電源断とならないため、感知器による火災の監視と検出データの保持を可能としながら、断線復旧監視が可能となる。
【0029】
(伝送部の効果)
また、伝送部は、伝送制御部から出力された端末制御信号を所定電圧範囲の電圧制御信号に変換してループ伝送路の始端側から送信すると共にループ伝送路の始端側から受信した所定電流範囲で変化する電流応答信号を端末応答信号に変換して伝送制御部に出力し、更に、伝送制御部から電圧固定信号が入力した場合にループ伝送路の始端側へ送信する電圧制御信号を所定電圧に固定する始端伝送部と、伝送制御部から出力された端末制御信号を所定電圧範囲の電圧制御信号に変換してループ伝送路の終端側から送信すると共にループ伝送路の始端側から受信した所定電流範囲で変化する電流応答信号を端末応答信号に変換して伝送制御部に出力し、更に、伝送制御部から電圧固定信号が入力した場合にループ伝送路の終端側へ送信する電圧制御信号を所定電圧に固定する終端伝送部と、終端伝送部とループ伝送路の終端との間に設けられた終端スイッチと、ループ伝送路の終端電圧を所定の基準電圧と比較し、終端電圧が基準電圧以下又は基準電圧を下回った場合に、ループ伝送路の断線を検出すると共に終端スイッチをオンして終端側伝送部をループ伝送路の終端に接続させる終端電圧監視部とが設けられたため、始端伝送部、終端伝送部、終端スイッチ及び終端電圧監視部の連携により、ループ伝送路に対する正常時伝送制御、始端伝送制御と終端伝送制御を交互に行う断線時伝送制御、及び断線復旧制御を適切に行うことができる。
【0030】
(伝送部の固定電圧の効果)
また、始端伝送部及び終端伝送部は、伝送制御部から電圧固定信号が入力した場合に、電圧制御信号を所定電圧範囲の下限電圧に固定するようにしたため、伝送制御で送信する電圧制御信号の下限電圧を有効に活用することで、ループ伝送路に対する出力電圧の固定を簡単に行うことができる。
【0031】
(終端電圧監視部の効果)
また、終端電圧監視部は、比較器を備え、比較器の一方の入力に終端電圧を入力すると共に、比較器の他方の入力に終端伝送部の伝送出力電圧を基準電圧として入力し、終端電圧が基準電圧以下となった場合の比較器の出力によりループ伝送路の断線を検出すると共に終端スイッチをオンして終端側伝送部をループ伝送路の終端に接続させるようにしたため、比較器によるループ伝送路の終端電圧と終端伝送部の出力電圧との比較により、断線検出時や断線復旧時の終端スイッチのオン、オフを簡単且つ適切に行うことができる。
【0032】
(分散システムの中継盤による効果)
また、受信機に対しネットワーク回線を介して1又は複数の中継盤が接続され、中継盤に接続されたループ伝送路に火災感知器及び短絡切離し装置を含む端末を接続して火災を監視し、中継盤で火災を検出した場合に受信機に通知して火災警報を出力させる分散システムが構成されており、中継盤に伝送制御部の指示により動作する伝送部が設けられ、伝送部は、ループ伝送路の終端電圧が正常に検出される場合は、始端側からの制御信号の送信により端末応答信号を受信して火災を監視する正常時伝送制御を行い、ループ伝送路終端電圧が断たれた場合に断線を検出し、所定の伝送周期毎に、ループ伝送路の始端側から端末制御信号を送信して端末応答信号を受信する始端伝送制御と、終端側からループ伝送路に端末制御信号を送信して端末応答信号を受信する終端伝送制御を交互に切替えて火災を監視する断線時伝送制御を行い、断線時伝送制御中に、ループ回線の終端電圧が正常に検出された場合は、正常時伝送制御に復旧させる断線復旧制御を行うようにしたため、分散システムの中継盤についても、ループ伝送路の断線状態での断線復旧に伴う終端電圧の変化を検出して終端スイッチのオフにより断線時伝送制御を解除して正常時伝送制御に切り替えることで、受信機における人為的な操作を必要とすることなく、自動的に断線復旧を行うことができる。
【0033】
(中継盤による断線位置の検出による効果)
また、中継盤の伝送部は、ループ伝送路の断線を検出した場合に、始端伝送制御により送信された信号に対し応答信号が受信された端末の始端側端末グループを検出すると共に、終端伝送制御により送信された信号に対し応答信号が受信された端末の終端側端末グループを検出し、始端側端末グループと終端側端末グループとの間をループ伝送路の断線位置として検出し、受信機に通知して報知させるようにしたため、中継盤のループ伝送路が断線した場合にも、交互に行われる始端伝送制御と終端伝送制御を利用して信号応答のある始端端末グループと終端端末グループを検出して断線位置を検出することができ、中継盤のループ伝送路における断線位置が受信機のディスプレイ等の表示により報知されることで、中継盤のループ伝送路の断線に対し必要な修復作業を効率良く進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】ループ伝送路により火災監視を行う火災報知設備の概要を示した説明図
【
図2】受信機の伝送部とループ伝送に接続された端末の詳細を示したブロック図
【
図3】終端電圧監視部の実施形態を示した回路ブロック図
【
図4】短絡切離し装置の実施形態を示した回路ブロック図
【
図5】ループ伝送路が正常な場合の伝送制御による各部の信号波形を示したタイムチャート
【
図6】ループ伝送路に断線が発生した場合の伝送部の動作状態を示したブロック図
【
図7】ループ伝送路に断線が発生した場合の伝送制御による各部の信号波形を示したタイムチャート
【
図8】ループ伝送路に対する伝送制御を示したフローチャート
【
図9】受信機に通信ネットワークを介して中継盤を接続した分散型の火災報知設備の概要を示した説明図
【
図10】ループ伝送路を用いた従来の報知設備を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0035】
[火災報知設備]
(火災報知設備の概要)
図1はループ伝送路により火災監視を行う火災報知設備の概要を示した説明図である。
図1に示すように、火災報知設備が設置された建物の一階の管理人室などには例えばR型の受信機10が設置され、受信機10から警戒区域に対し一対の信号線14a,14bを用いたループ伝送路12が例えば2回線引き出されている。
【0036】
ループ伝送路12には固有のアドレスが設定された伝送機能を有する複数の火災感知器16が接続されている。また、火災感知器16の間のループ伝送路12には、ループ伝送路12の短絡を検出して切り離すショートサーキットアイソレータとして知られた短絡切離し装置18が接続され、短絡切離し装置18は火災感知器16と同様に固有のアドレスが設定され、伝送機能を有する。
【0037】
ここで、ループ伝送路12に接続される火災感知器16及び短絡切離し装置18を含む端末に設定される最大アドレス数は例えば255としており、ループ伝送路12には最大254台の火災感知器16及び短絡切離し装置18を含む端末が接続できる。
【0038】
また、
図1にあっては、説明を分かり易くするため、火災感知器16を
10台、短絡切離し装置18を4台接続とし、火災感知器16及び短絡切離し装置18のアドレスをループ伝送路12の始端側からA1,A2・・・A
14としている。
【0039】
(受信機の概要)
受信機10には、メインCPU20と複数のサブCPU基板22-1,22-2が設けられ、サブCPU基板22-1,22-2にはサブCPU24と伝送部26が設けられている。メインCPU20とサブCPU24は、シリアル転送バス25で接続されており、相互にデータを送受信する。
【0040】
メインCPU20には、液晶表示パネル等を用いたタッチパネル付きのディスプレイ27、火災、ガス漏れ、障害の代表灯、LED表示灯等が設けられた表示部28、火災監視に必要な各種のスイッチが設けられた操作部30、スピーカが設けられた音響警報部32、及び、移報部34が接続されている。また、メインCPU20にはプログラムの実行により実現される機能として火報制御部38が設けられる。
【0041】
サブCPU基板22-1,22-2に設けられたサブCPU24にはプログラムの実行により実現される機能として伝送制御部36が設けられる。伝送制御部36は伝送部26に指示してループ伝送路12に対し信号を送受信させる伝送制御を行う。
【0042】
本実施形態の伝送制御部36による伝送制御は、ループ伝送路12が正常な場合は正常時伝送制御を行い、ループ伝送路12の断線を検出すると断線時伝送制御を行い、更に、ループ伝送路12の断線が修復して復旧すると断線復旧制御を行う。なお、伝送制御部36による各種の伝送制御の詳細は後の説明で明らかにされる。
【0043】
伝送部26は伝送制御部36の伝送制御によりサブCPU24から出力される0~5Vで変化する端末制御信号を所定電圧範囲、例えば24V~33Vの電圧範囲で変化する電圧制御信号(電圧パルス信号)に変換して下り信号としてループ伝送路12に出力する。
【0044】
これに対し火災感知器16及び短絡切離し装置18から受信機10に対する端末応答信号は、ループ伝送路12に伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列となる電流応答信号が上り信号として受信機10にされる。このため伝送部26はループ伝送路12から受信した電流応答信号を0~5Vの端末応答信号に変換してサブCPU24に出力する。
【0045】
ループ伝送路12が正常な場合の受信機10の火報制御部38による火災監視制御は次のようになる。サブCPU24の伝送制御部36は、通常の監視中にあっては、一定周期T毎に、伝送部26に指示して、一括AD変換コマンドを含むブロードキャストの一括AD変換信号を送信しており、この一括AD変換信号を受信した火災感知器16は、検煙部から出力されたアナログ煙濃度信号をAD変換によりデジタル煙濃度信号に変化して検出データとして保持する。続いて、伝送制御部36は伝送部26に指示して、端末アドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を送信している。
【0046】
火災感知器16は自己アドレスに一致するアドレスを持つ呼出信号を受信すると、そのとき保持している煙濃度データを含む応答信号を受信機10に送信する。
【0047】
また、火災感知器16には注意表示閾値として例えば1種感度相当の煙濃度閾値、例えば煙濃度閾値5.0%/mが設定されており、検出された煙濃度データが注意表示閾値以上又は注意表示閾値を超えると火災発報と判断し、受信機10に対し火災割込み信号を送信する。
【0048】
伝送制御部36は伝送部26を介して火災割込み信号を受信すると、グループ検索コマンド信号を送信して火災発報した火災感知器16を含むグループを特定し、続いて、グループ内検索コマンド信号を送信して火災発報した火災感知器16のアドレスを特定して煙濃度データを集中的に収集し、シリアル転送バス25を介してメインCPU20に送信する。
【0049】
メインCPU20の火報制御部38は、サブCPU24から受信した火報用の煙濃度データを2種感度相当の所定の火報閾値、例えば火報閾値10%/mと比較しており、煙濃度が火報閾値以上又は火報閾値を超えた場合に火災と判断し、火災警報制御を行う。
【0050】
火報制御部38による火災警報制御は、表示部28の火災代表灯を点灯し、音響警報部32のスピーカから火災発生を示す所定の主音響警報を出力させ、ディスプレイ27に火災が検出された感知器アドレスに基づき火災発生場所を含む火災警報情報を表示させ、更に、移報部34により火災移報信号を外部に出力して所定の移報制御等を行わせる。
【0051】
[伝送部の構成と伝送制御]
図2は受信機の伝送部の実施形態をループ伝送路に接続された端末と共に示したブロック図である。
【0052】
(伝送部始端側の構成)
図2に示すように、受信機10に設けられた始端端子L1,LC1からは信号
線14a,14bを用いたループ伝送路12が引き出され、ループ伝送路12の終端は受信機10に設けられた終端端子L2,L
C2に接続されている。
【0053】
受信機10の伝送部26には、始端伝送部40と終端伝送部48が設けられる。始端伝送部40の伝送出力側となるプラス側は通常状態でオンしている始端スイッチ42及びダイオード46を介して始端端子L1に接続される。始端スイッチ42はFET等を用いた半導体スイッチである。
【0054】
始端スイッチ42に対しては始端電圧監視部44が設けられる。始端電圧監視部44には始端伝送部40の電圧制御信号VOUT1が入力され、また、ダイオード46と始端端子L1の間から取り出した始端電圧VS1が入力されている。
【0055】
始端電圧監視部44は、電圧制御信号VOUT1と始端電圧VS1を比較し、通常時は始端スイッチ42をオンしてループ伝送路12の始端側を始端伝送部40に接続しており、始端端子L1,LC1と最初の短絡切離し装置18-1との間のループ伝送路12に短絡が発生すると始端スイッチ42をオフし、始端伝送部40をループ伝送路12から切り離す。
【0056】
伝送制御部36が設けられたサブCPU24から始端伝送部40に対しては、DC0~5Vで変化する端末制御信号E1が出力され、始端伝送部40からサブCPU24にはDC0~5Vで変化する端末応答信号E2が出力される。
【0057】
また、伝送制御部36が設けられたサブCPU24から始端伝送部40に対しては、電圧固定信号E3が出力される。電圧固定信号E3を受けた始端伝送部40はループ伝送路12に出力する電圧制御信号VOUT1を所定電圧、例えばDC24V~33Vで変化する電圧制御信号の電圧範囲の下限となるDC24Vに固定する。なお,以下の説明ではDCは省略する。
【0058】
更に、始端電圧監視部44からはループ伝送路12の短絡を検出して始端スイッチ42をオフした場合に短絡検出信号E4がサブCPU24に対し出力される。
【0059】
(伝送部終端側の構成)
伝送部26の終端側に設けられた終端伝送部48の伝送出力側となるプラス側は通常状態でオンしている終端スイッチ50及びダイオード54を介して終端端子L2に接続される。終端スイッチ50に対しては終端電圧監視部52が設けられる。終端スイッチ50もFET等を用いた半導体スイッチである。終端電圧監視部52には終端伝送部48の電圧制御信号VOUT2が入力され、また、ダイオード54と終端端子L2の間から取り出した終端電圧VS2が入力されている。
【0060】
終端電圧監視部52は、電圧制御信号VOUT2と終端電圧VS2を比較し、通常時は終端スイッチ50をオフしてループ伝送路12の終端側を終端伝送部48から切り離しており、ループ伝送路12に断線が発生すると終端電圧VS2が0Vに低下して断たれることから、これを検出して終端スイッチ50をオンし、終端伝送部48をループ伝送路12の終端に接続する。
【0061】
伝送制御部36が設けられたサブCPU24から終端伝送部48に対しては0~5Vで変化する端末制御信号E1が出力され、終端伝送部48からサブCPU24には0~5Vで変化する端末応答信号E5が出力される。
【0062】
また、伝送制御部36が設けられたサブCPU24から終端伝送部48に対しては電圧固定信号E6が出力される。電圧固定信号E6を受けた終端伝送部48はループ伝送路12に出力する電圧制御信号VOUT2を、始端伝送部40と同様に、24V~33Vで変化する電圧制御信号の電圧範囲の下限となる電圧24Vに固定する。
【0063】
更に、終端端電圧監視部52からはループ伝送路12の断線を検出して始端スイッチ42をオンした場合に断線検出信号E7がサブCPU24に対し出力される。
【0064】
(終端電圧監視部)
図3は
図1の終端電圧監視部の実施形態を示した回路ブロック図である。
図3に示すように、終端電圧監視部52は比較器70を備え、比較器70のマイナス入力端子にループ伝送路12の終端電圧VS2を抵抗76,78で分圧した終端比例電圧VS2aが入力され、比較器70のプラス入力端子に終端伝送部48の電圧制御信号VOUT2を抵抗72,74で分圧した電圧VOUT2aが入力されている。抵抗76,78の分圧比と抵抗72、74の分圧比は等しくなるように設定されている。また、整流用ダイオードとして機能するダイオード54により終端電圧VS2が終端伝送部48の電圧制御信号VOUT2により電圧降下しないようになっている。
【0065】
ここで、通常状態で終端電圧VS2は24V~33Vの範囲で変化し、電圧制御信号VOUT2は基準電圧VREF=24Vに固定され、(VOUT2)≦(VS2)の関係にあり、これに比例して(VOUT2a)≦(VS2a)の関係が得られる。更に、終端スイッチ50をオンした場合に、(VOUT2a)≦(VS2a)が維持できる。
【0066】
比較器70は(VOUT2a)≦(VS2a)の場合に比較出力をLレベルとして終端スイッチ50をオフしており、(VOUT2a)>(VS2a)の場合に比較出力をHレベルとして終端スイッチ50をオンし、また、Hレベルとなる断線検出信号E7を出力する。
【0067】
[短絡切離し装置]
図4はループ伝送路に設けられる短絡切離し装置の実施形態を示した回路ブロック図である。
図4に示すように、短絡切離し装置18は、伝送部56、制御部58、電圧検出部60、スイッチ回路部62-1,62-2及びダイオード64-1~64-4で構成され、信号線14a,14bからの電源供給又は専用の電源線からの電源供給を受けて動作する。
【0068】
電圧検出部60はループ伝送路12の終端側となる信号線14a,14bの間の電圧を検出して制御部58に出力する。ループ伝送路12の終端側となる信号線14a,14b間に短絡が発生すると、電圧検出部60による検出電圧は略0V付近に低下する。このとき、制御部58はスイッチ回路部62-1,62-2をオフ制御する。また、短絡が復旧すると、電圧検出部60による検出電圧は正常電圧に復旧する。このとき、制御部58はスイッチ回路部62-1,62-2をオン制御する。
【0069】
伝送部56は受信機10から送信された電圧制御信号を受信すると、電圧制御信号に含まれるコマンドに対応した制御を行い、受信機10に対し電流応答信号を送信する。受信機10からの信号の送受信は、通常時は始端側から行われ、断線時には終端側から行われることから、ダイオード64-1~64-4により始端側及び終端側の信号送受信に伝送部56が対応できるようにしている。
【0070】
即ち、始端側からの信号送受信はダイオード64-1,伝送部56及びダイオード64-2を通る入出力回路が使用され、終端側からの信号送受信はダイオード64-3,伝送部56及びダイオード64-4を通る入出力回路が使用される。
【0071】
制御部58は、伝送部56を介して受信機10から一括AD変換信号に続いて端末アドレスを順次指定した呼出信号を受信しており、自己アドレスを指定した呼出信号を受信すると、正常状態を示す応答信号を受信機10に送信する制御を行う。
【0072】
また、制御部58は、電圧検出部60からの電圧検出信号による検出電圧が所定の短絡閾値以下に低下したことを判別すると、伝送部56に指示して割込み信号を受信機10に送信し、受信機10は割込み信号を受けたアドレスを検索して呼出信号を送信することから、短絡検出を示すステータ情報を含む電流応答信号を伝送部56に指示して受信機10に送信する。
【0073】
制御部58は、電圧検出部60からの電圧検出信号による検出電圧が所定の短絡復旧閾値以上に復旧したことを判別すると、伝送部56に指示して割込み信号を受信機10に送信し、受信機10は割込み信号を受けたアドレスを検索して呼出信号を送信することから、短絡復旧検出を示すステータ情報を含む電流応答信号を伝送部56に指示して受信機10に送信する。
【0074】
なお、短絡切離し装置は検出電圧によるスイッチ回路部62-1,62-2のオン、オフ制御を行わず、制御部58は伝送部56を介して受信機10から受信した端末制御信号に基づき、必要に応じてスイッチ回路部62-1,62-2のオン、オフ制御を行うものとしても良いし、検出電圧と端末制御信号の両方に基づいてスイッチ回路部62-1,62-2のオン、オフ制御を行うものとしても良い。
【0075】
[伝送制御]
次に
図2の伝送制御部36と伝送部26によるループ伝送路を使用した伝送制御を正常時と断線時に分けて説明する。また、本実施形態の伝送制御部36による断線位置の検出機能は、第1発明の火災報知設備に対応し、また、本実施形態の伝送制御部36による断線時と断線復旧時の伝送制御は第2発明の火災報知設備に対応する。
【0076】
(正常時伝送制御)
図5はループ伝送路が正常な場合の伝送制御による各部の信号波形を示したタイムチャートであり、
図5(A)はサブCPU24から出力される端末制御信号E1(数字1~
14はアドレスA1~A
14)を示し、
図5(B)は始端伝送部40に対する電圧固定信号E3を示し、
図5(C)は始端伝送部40からループ伝送路12の始端に出力される電圧制御信号VOUT1を示し、
図5(D)は始端伝送部40でループ伝送路12の始端から受信される電流応答信号IIN1を示し、
図5(E)は始端スイッチ42の動作状態を示し、
図5(F)は始端電圧監視部44に入力する始端電圧VS1を示し、これが始端側の信号波形となる。
【0077】
一方、終端側の信号波形として、
図5(G)は終端伝送部48に対する電圧固定信号E6を示し、
図5(H)は終端伝送部48からループ伝送路12の終端に出力される電圧制御信号VOUT2を示し、
図5(I)は終端伝送部48でループ伝送路12の終端から受信される電流応答信号IIN2を示し、
図5(J)は終端スイッチ50の動作状態を示し、
図5(K)は終端電圧監視部52に入力する終端電圧VS2を示している。
【0078】
伝送制御部36は、ループ伝送路14に断線のない正常時は、ループ伝送路12の始端からの信号の送受信により火災を監視する正常時伝送制御を行っている。
【0079】
伝送制御部36による正常時伝送制御では、始端伝送部40及び終端伝送部48に指示してループ伝送路12の始端側から信号を送信し、端末からの信号を始端側から受信する始端伝送制御を行う。
【0080】
始端伝送制御では、始端スイッチ42はオン、終端スイッチ50はオフとなっている。伝送制御部36は、
図5(G)に示すように、終端伝送部48に対する電圧固定信号E6をHレベルとし、終端伝送部48がサブCPU24から出力された0~5Vで変化する端末制御信号E1を24V~33Vで変化する電圧制御信号VOUT2に変換する動作が禁止され、
図5(
H)に示すように、終端伝送部48から出力される電圧制御信号VOUT2を24Vに固定している。
【0081】
これ対し伝送制御部36は、
図5(B)に示すように、始端伝送部40に対する電圧固定信号E3をLレベルとしており、このため始端伝送部40はサブCPU24から入力した端末制御信号E1を24V~33Vの範囲で変化する電圧制御信号VOUT1に変換し、始端スイッチ42を介してループ伝送路12の始端側に送信している。
【0082】
始端伝送部40からループ伝送路12に送信された電圧制御信号VOUT1は、スイッチ回路部62-1,62-2が全てオンしている短絡切離し装置18-1~18-4を経由してループ伝送路12の終端に伝送され、ループ伝送路12の終端電圧VS2は24V~33Vの範囲で変化する。
【0083】
終端電圧監視部52は終端伝送部48から出力された電圧制御信号VOUT2の固定電圧24Vとループ伝送路12の終端端子L2,LC2間に加わる24V~33Vの終端電圧VS2を比較しており、(VOUT2)≦(VS2)の関係が保たれることで、終端スイッチ50のオフ状態を維持している。
【0084】
ここで、伝送制御部36は、
図5(A)に示すように、所定の伝送周期T毎に、端末制御信号E1として、ブロードキャストの一括AD変換信号に続いて1~
14の数字で示す端末アドレスA1~A
14を順次指定した呼出信号を送信しており、火災感知器
16は自己アドレスとの一致を判別すると、AD変換で保持した煙濃度等のセンサデータを電流応答信号IIN1として送信し、始端伝送部40で受信された電流応答信号IIN1は0~5Vの端末応答信号E2に変換されてサブCPU24に出力されている。
【0085】
(断線発生)
図6はループ伝送路に断線が発生した場合の伝送部の動作状態を示したブロック図である。
図6に示すように、例えば、火災感知器16-5と火災感知器16-6との間で断線90が発生したとする。断線90が発生すると、断線90の発生箇所から見た終端側のループ伝送路12に対する始端側からの電圧制御信号VOUT1は伝送されなくなり、ループ伝送路12の終端電圧VS2が0Vに低下して電圧が得られなくなる。
【0086】
このため終端電圧監視部52は断線90の発生で終端電圧VS2が0Vとなったことで、(VOUT2)>(VS2)の入力関係となり、
図3に示した比較器70の出力がそれまでのLレベルからHレベルとなり、終端スイッチ50をオンし、終端伝送部48の出力をループ伝送路12の終端側に接続する。
【0087】
また、終端電圧監視部52からサブCPU24に対し断線検出信号E7が出力され、伝送制御部36はループ伝送路12の断線を検出し、断線時伝送制御開始する。また、伝送制御部36は、
図1に示したメインCPU20に断線検出を通知し、メインCPU20の火報制御部38がディスプレイ27、表示部28、音響警報部32に指示して断線障害を警報する。
【0088】
(断線時伝送制御)
図7はループ伝送路に断線が発生した場合の伝送制御による各部の信号波形を示したタイムチャートであり、
図7(A)~(K)は
図5(A)~(K)に対応している。
【0089】
伝送制御部36はループ伝送路12の断線を検出すると、伝送周期T毎に、ループ伝送路12の始端から信号の送受信を行う始端伝送制御と、断線検出によりオンした終端スイッチ50を介してループ伝送路12の終端から信号の送受信を行う終端伝送制御とを交互に切替えて火災を監視する断線時伝送制御を行う。
【0090】
即ち、
図7の時刻t1~t2の伝送周期Tは始端伝送制御であり、次の時刻t2~t3の伝送周期Tは終端伝送制御となり、始端伝送制御と終端伝送制御を伝送周期T毎に交互に繰り返す。
【0091】
(始端伝送制御)
図7の時刻t1~t2の始端伝送制御は、
図5に示した正常時の始端伝送制御と同じになる。しかしながら、始端伝送制御により始端伝送部40からループ伝送路12の始端に送信された電圧制御信号VOUT1は、スイッチ回路部62-1,62-2が全てオンしている短絡切離し装置18-1,18-2を経由してループ伝送路12の終端側に伝送されるが、断線90の発生場所から先には伝送されず、ループ伝送路12の始端から断線90の間に接続している火災感知器16-1~16-5が電流応答信号IIN1を送信し、これが始端伝送
部40で受信され、端末応答信号E2に変換されてサブCPU24に出力される。
【0092】
また、始端伝送制御が行われている場合、終端電圧監視部52に入力する電圧制御信号VOUT2は固定電圧24Vであり、終端電圧VS2は電圧制御信号VOUT2からダイオードによる電圧降下分低下した固定電圧24Vより低い電圧であり、(VOUT2)>(VS2)の条件が成立していることから、終端スイッチ50のオンが維持される。
【0093】
(終端伝送制御)
図7の時刻t2~t3の終端伝送制御では、始端スイッチ42及び終端スイッチ50は共にオンとなっている。ループ伝送路12の断線を検出した伝送制御部36は、
図7(B)に示すように、始端伝送部40に対する電圧固定信号E3をHレベルとし、
図7(C)に示すように、始端伝送部40から出力される電圧制御信号VOUT1を24Vに固定している。
【0094】
これ対し伝送制御部36は、
図7(G)に示すように、終端伝送部48に対する電圧固定信号E6をLレベルとしており、このため終端伝送部48はサブCPU24から入力した端末制御信号E1を24V~33Vの範囲で変化する電圧制御信号VOUT2に変換し、終端スイッチ50を介してループ伝送路12の終端側に送信している。
【0095】
終端伝送部48からループ伝送路12に送信された電圧制御信号VOUT2は、スイッチ回路部62-1,62-2が全てオンしている短絡切離し装置18-4,18-3を経由してループ伝送路12の始端側に伝送されるが、断線90の発生場所から先には伝送されず、ループ伝送路12の終端から断線90の間に接続している火災感知器16-6~16-10が電流応答信号IIN2を送信し、これが終端伝送部48で受信され、端末応答信号E5に変換されてサブCPU24に出力される。
【0096】
また、終端伝送制御が行われている場合、終端電圧監視部52に入力する電圧制御信号VOUT2は24V~33Vであり、終端電圧VS2はダイオードによる電圧降下分低下した24V~33Vより低い電圧であり、(VOUT2)>(VS2)の条件が成立していることから、終端スイッチ50のオンが維持される。
【0097】
ただし、電圧制御信号VOUT2は電圧変動を伴うため、電圧変動により比較器70に於いて(VOUT2)≦(VS2)の条件が一時的に成立する可能性がある。このため、終端伝送制御が行われているときは比較器52による断線復旧の判定を行わないようにしても良い。
【0098】
また、終端伝送制御が行われている場合、始端電圧監視部44に入力する電圧制御信号VOUT1は24Vであり、始端電圧VS1はダイオードによる電圧降下分低下した24Vより低い電圧であり、(VOUT1)>(VS1)の条件が成立していることから、終端スイッチ50のオンが維持される。
【0099】
このように、伝送制御の他端側は固定値であるから断線復旧時のみ比較器70に於いて電圧制御信号(VOUT)≦伝送路端電圧(VS)の条件が成立するため、伝送制御の他端側で断線復旧を監視することが好適である。
【0100】
(断線位置の検出)
ループ伝送路12の断線を検出した伝送制御部36は、断線時伝送制御で伝送周期毎に交互に行う始端伝送制御と終端伝送制御で受信された端末応答信号に基づき、断線位置を検出して報知させる制御を行う。
【0101】
図6に示すように、ループ伝送路12に断線90が発生した場合、伝送制御部36は始端伝送制御により始端伝送部40からループ伝送路12に送信された端末アドレスを順次指定した呼出信号に対し、火災感知器16-1~16-5及び短絡切離し装置18-1,18-2から端末応答信号が受信されることから、これらのアドレスA1~A7を始端側端末グループとして検出する。
【0102】
また、伝送制御部36は終端伝送制御により終端伝送部48からループ伝送路12に送信された端末アドレスを順次指定した呼出信号に対し、火災感知器16-6~16-10及び短絡切離し装置18-3,18-4から端末応答信号が受信されることから、これらのアドレスA8~A14を終端側端末グループとして検出する。
【0103】
続いて、端末制御部36は、検出された始端側端末グループの中の最終アドレスA7の火災感知器16-5と終端側端末グループの中の先頭アドレスA8の火災感知器16-6の間をループ伝送路12の断線90の発生位置として検出し、メインCPU20に通知してディスプレイ27に、断線位置を示したループ伝送路ノードマップを表示して報知させる。
【0104】
(断線復旧制御)
伝送制御部36は、断線時伝送制御における始端伝送制御中に、ループ伝送路の終端電圧VS2が正常に検出された場合、もしくは終端伝送制御中に、ループ伝送路12の始端電圧VS1が正常に検出された場合は、終端スイッチ50のオフにより断線時伝送制御を解除して正常時伝送制御に切り替える断線復旧制御を行う。
【0105】
図6に示したループ伝送路12の断線90に対し修復作業が行われて断線90が解消された場合、始端伝送制御により始端伝送部40からループ伝送路12に送信された電圧制御信号VOUT1は、断線90が修復されたことでループ伝送路12の終端まで伝送され、終端電圧VS2は断線中の電圧制御信号VOUT2による固定電圧24Vから電圧制御信号VOTU1による電圧24V~33Vに変化する。
【0106】
このため終端電圧監視部52に入力する電圧は、(VOUT2)≦(VS2)の関係となり、
図3に示した比較器70の出力がそれまでのHレベルからLレベルに変化し、終端スイッチ50をオフする。
【0107】
また、終端電圧監視部52からサブCPU24に出力される断線検出信号E7もそれまでのHレベルからLレベルに変化し、伝送制御部36は断線復旧を検出し、それまでの断線時伝送制御を解除して正常時伝送制御、即ち、始端伝送制御に切り替える断線復旧制御を行い、自動的に正常時伝送制御に戻る。また、伝送制御部36はメインCPU20に断線復旧を通知することで、受信機10の断線障害警報が自動的にリセットされる。
【0108】
断線は短絡切離し装置によるスイッチ回路部62-1,62-2のオフ制御でも生じるが、短絡復旧に伴い断線が復旧した場合においても上記の自動的な断線復旧が可能となる。
【0109】
[伝送制御動作]
図8はループ伝送路に対する伝送制御を示したフローチャートであり、
図2に示した伝送制御部36による制御動作となる。
【0110】
図8に示すように、伝送制御部36はループ伝送路12に断線のない通常時にはステップS1で正常時伝送モードを設定する。正常時伝送モードは始端スイッチ42をオンし、終端スイッチ50をオフし、終端伝送部48に電圧固定信号E6を出力するモードである。
【0111】
続いて、伝送制御部36はステップS2で正常時伝送制御として始端伝送制御を行い、ループ伝送路12の始端側から電圧制御信号を送信して端末からの電流応答信号を受信する制御を行う。
【0112】
伝送制御部36は正常時伝送制御中にステップS3でループ伝送路12の断線を検出するとステップS4に進み、断線時伝送モードを設定する。断線時伝送モードは、始端スイッチ42と終端スイッチ50がオンした状態で、伝送周期毎に、終端伝送部48に電圧固定信号E6を出力するモードと、始端伝送部40に電圧固定信号E3を出力するモードを交互に切り替えるモードである。
【0113】
伝送制御部36は断線時伝送モードを設定した後に、まずステップS5でループ伝送路12の始端側から電圧制御信号を送信して電流応答信号を受信する始端伝送制御を行い、始端制御中にステップS6で断線復旧の検出がなければステップS7で伝送周期の経過を判別するまで、ステップS5の始端伝送制御を継続する。
【0114】
伝送制御部36はステップS7で伝送周期の経過を判別するとステップS8に進み、ループ伝送路12の終端側から電圧制御信号を送信して電流応答信号を受信する終端伝送制御を行い、ステップS9で伝送周期の経過を判別し、ステップS10に進み、断線位置を検出する。
【0115】
ステップS10の断線位置の検出は、ステップS5の始端伝送制御で応答のあった始端側端末グループとステップS8の終端伝送制御で応答にあった終端側端末グループを検出し、両者の間を断線位置として検出して報知させる。
【0116】
伝送制御部36は、ステップS4~S10の断線時伝送制御中におけるステップS5の始端伝送制御中にステップS6で断線復旧を検出すると、ステップS1に戻って正常時伝送モードを設定してステップS2の正常時伝送制御に入ることで、自動的に断線復旧が行われる。
【0117】
[受信機と中継盤で構成された分散システムの実施形態]
図9は受信機に通信ネットワークを介して中継盤を接続した分散型の火災報知設備の概要を示した説明図である。
【0118】
監視対象とする施設が複数に分かれる等して大規模になる場合には、
図9に示すように、防災センター等に設置した受信機10に加え、例えば建物毎に分けて中継盤94が設置され、受信機10と中継盤94の間がイーサネット(登録商標)等のネットワーク回線96により通信接続されている。
【0119】
受信機10は
図1に示したと同じであり、これに対し中継盤
94は
図1の受信機10からディスプレイ27、表示部28、操作部30及び音響警報部32を含む操作表示機能を除いた構成となり、それ以外は、受信機10と基本的に同じとなる。
【0120】
中継盤94にはループ伝送路12が接続され、ループ伝送路12には伝送機能を有する固有アドレスが設定された火災感知器16と短絡切離し装置18等の端末が接続されている。
【0121】
中継盤94には
図2の受信機10と同様に伝送部が設けられる。中継盤94の伝送部は、ループ伝送路12の終端電圧が正常に検出される場合は、ループ伝送路の始端からの信号の送受信により火災を監視する正常時伝送制御を行う。
【0122】
また、中継盤94の伝送部は、ループ伝送路12の終端電圧が断たれた場合に断線を検出して終端スイッチをオンし、所定の伝送周期毎に、ループ伝送路12の始端から信号の送受信を行う始端伝送制御と、終端スイッチを介してループ伝送路の終端から信号の送受信を行う終端伝送制御とを交互に切替えて火災を監視する断線時伝送制御を行う。
【0123】
また、中継盤94の伝送部は、断線時伝送制御における始端伝送制御中に、ループ伝送路12の終端電圧が正常に検出された場合は、終端スイッチのオフにより断線時伝送制御を解除して正常時伝送制御に切り替える断線復旧制御を行う。
【0124】
更に、中継盤94の伝送部は、ループ伝送路12の断線を検出した場合に、始端伝送制御により送信された信号に対し応答信号が受信された始端側端末グループを検出すると共に、終端伝送制御により送信された信号に対し応答信号が受信された端末の終端側端末グループを検出し、始端側端末グループと終端側端末グループとの間をループ伝送路12の断線位置として検出し、受信機10に通知して報知させる。
【0125】
[本発明の変形例]
(復旧)
短絡切り離し装置は受信機からの復旧確認信号を受信したときのみ、検出電圧によるスイッチ回路部62-1,62-2のオン制御を行うようにしても良い。
【0126】
(断線時の始端伝送制御と終端伝送制御の切替)
上記の実施形態は、断線時に所定の伝送周期毎に始端伝送制御と終端伝送制御の切替を行っているが、始端伝送制御と終端伝送制御の切替は異なる伝送周期としても良い。火災が発生していないときは始端伝送制御と終端伝送制御は同じ伝送周期とすることが好適であるが、ループ伝送路12の始端側もしくは終端側のいずれかで火災もしくは火災予兆を感知器もしくは発信機等の火災検出機器が検知したときは通信頻度を高めることが望ましいため、始端伝送制御と終端伝送制御のうち火災検出が行われた側の伝送制御を行う周期が多くなるようにしても良い。
【0127】
(基準電圧に余裕を持たせる)
上記の実施形態は、正常時または断線時の始端側からの伝送時に電圧制御信号VOUT2は電圧範囲の下限となるDC24Vとしたが、これより小さい電圧としても良い。ループ伝送路12による電圧降下分を勘案し所定の電圧の余裕を持たせた小さい電圧、例えば20Vとしても良い。同様に、断線時の終端側からの伝送時に電圧制御信号VOUT1もループ伝送路12による電圧降下分を勘案し所定の電圧の余裕を持たせた小さい電圧、例えば20Vとしても良い。
【0128】
上記の実施形態は、R型の受信機からのループ伝送路を介してR型の火災感知器を接続した火災報知設備を例にとっているが、P型の受信機から引き出したループ型の感知器回線にアドレスを設定すると共に伝送機能を備えたアドレッサブル火災感知器を接続した火災報知設備についても同様に適用できる。
【0129】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0130】
10:受信機
12:ループ伝送路
14a,14b:信号線
16,16-1~16-10:火災感知器
18,18-1~18-4:短絡切離し装置
20:メインCPU
22-1,22-2:サブCPU基板
24:サブCPU
26,56:伝送部
27:ディスプレイ
28:表示部
30:操作部
32:音響警報部
34:移報部
36:伝送制御部
38:火報制御部
40:始端伝送部
42:始端スイッチ
44:始端電圧監視部
46,54,64-1~64-4:ダイオード
48:終端伝送部
50:終端スイッチ
52:終端電圧監視部
58:制御部
60:電圧検出部
62-1,62-2:スイッチ回路部
70:比較器