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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】工具及び工法
(51)【国際特許分類】
   B23G 1/52 20060101AFI20231109BHJP
   B23B 41/08 20060101ALI20231109BHJP
   B23G 1/24 20060101ALI20231109BHJP
   B23B 45/14 20060101ALI20231109BHJP
   B23G 1/22 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
B23G1/52
B23B41/08
B23G1/24
B23B45/14
B23G1/22 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019081728
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020179430
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】519149445
【氏名又は名称】佐々木 高行
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【弁理士】
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 高行
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-005593(JP,A)
【文献】実開昭62-029208(JP,U)
【文献】特開昭62-166912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23G 1/52、1/22
B23B 41/00、41/08、51/08
F16L 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に横たわった状態の既設配管の周面に設定されたターゲット孔にメネジを形成する工具であって、
前記ターゲット孔に前記メネジを形成するタップと、
前記タップに対して回転力を伝える回転軸と、
駆動力が印加される駆動側回転軸と、
前記駆動側回転軸を収容する筒と、
前記筒の外周面に設けられるものであり、前記既設配管に係合可能な係合アームと、を備え、
前記係合アームは、
前記筒の径方向外側へ延びる拡径部品と、
前記既設配管の側部に対して係合可能な配管係合部品と、を備え、
前記拡径部品は、前記径方向外側に向かうにしたがって前記タップ側に近づくよう斜めに延び、
前記配管係合部品は、前記拡径部品に対して着脱自在となっており、
前記ターゲット孔に前記メネジを形成するために前記タップを回転する際、前記係合アームが前記既設配管に係合することを特徴とする工具。
【請求項2】
前記拡径部品は、前記配管係合部品が挿通可能な挿通筒を備え、
前記配管係合部品は、
前記挿通筒に挿通可能な挿通可能部と、
前記挿通可能部の上端に設けられ、前記挿通可能部が前記挿通筒に挿通された状態を維持する挿通規制部を有し、
前記挿通規制部は、前記挿通可能部に対し屈曲しており、
前記挿通筒に前記挿通可能部が挿通されたとき、前記挿通規制部は、前記挿通筒に対し係合することを特徴とする請求項1記載の工具。
【請求項3】
第1の係合アームと、
第2の係合アームと、を備え、
前記第1の係合アームは、前記既設配管の側部に対して係合可能であって、
前記第2の係合アームは、前記ターゲット孔を介して前記既設配管の側部とは反対側の反対側部に対して係合可能であることを特徴とする請求項1または2記載の工具。
【請求項4】
前記回転軸の回転に伴って回転可能に設けられた穿孔部材を備え、
前記穿孔部材は、前記タップよりも先端側に配され、前記既設配管に前記ターゲット孔を形成するものであることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の工具。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の工具を用いて、前記既設配管に設定された前記ターゲット孔に前記メネジを形成するねじ切り工程を備えたことを特徴とする工法。
【請求項6】
地中に横たわった状態の既設配管の周面に設定されたターゲット孔に、工具を用いてメネジを形成する工法であって、
前記工具は、
前記ターゲット孔に前記メネジを形成するタップと、
前記タップに対して回転力を伝える回転軸と、
前記タップよりも先端側に位置し、前記回転軸の回転に伴って回転可能に設けられた穿孔部材と、
駆動力が印加される駆動側回転軸と、
前記駆動側回転軸を収容する筒と、
前記筒の外周面に設けられるものであり、前記既設配管に係合可能な係合アームと、を備え、
前記駆動側回転軸と前記回転軸とは互いに嵌合した嵌合状態と離隔状態との間で切り替え自在となっており、
前記離隔状態の前記工具を手で保持しながら、前記穿孔部材の回転により前記既設配管に前記ターゲット孔を形成する穿孔工程と、
前記嵌合状態の前記工具を用いて、前記タップの回転により前記ターゲット孔に前記メネジを形成するねじ切り工程と、を備え、
前記ねじ切り工程では、前記係合アームが前記既設配管に係合する状態で前記ターゲット孔に前記メネジを形成することを特徴とする工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具及び工法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス管や水道管等の配管は、住宅地、商業地及び工業地問わず、さまざまなエリアに網目状に敷設する必要がある。このような配管は、通常、地中に配される。
【0003】
ところが、地中に配された配管にも寿命があるため、配管交換のための工事が必要になる。一方で、工事の際、生活インフラとなる配管を止めてしまうことはできない。そこで、ガス管のような配管の交換作業は、図11に示すように、配管P1~P3の周りの土壌Dを除去した後(図11(a)~(b))、交換対象となる配管P2の前後の配管P1、P3に通気孔TX1、TX3を設け、通気孔TX1、TX3が連通するバイパス管BPを設ける(図11(c))。その後、配管P1、P3に対し、気密構造を設けた後、古い配管P2を取り出して、新しい配管P2’を接続する(図11(d))。これを順次繰り返すことにより、地中に配された配管の交換が可能となる。
【0004】
このような工事において、バイパス管BP設置のために設けた通気孔TX1、TX3を、ネジB1,B3を用いて塞ぐ必要があることから、通気孔TX1、TX3にはネジ切り作業が必要となっていた。こうした背景から、特許文献1に記載のような穿孔機が開発されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭62-29208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の穿孔機においては、回り止めアーム(2)や回り止め部材(18)のように、穿孔に寄与しない部品が増えることから穿孔機が大型になり、部品点数も多くなってしまう。回り止めアーム(2)や回り止め部材(18)のような部品の取り付け作業が別途必要となることから、作業効率がとても悪い。こうした背景から、特許文献1の穿孔機のようなものは利用されていなかった。
【0007】
そこで、発明者が鋭意検討したところ、構造がシンプルであり、作業効率の良い工具を見出した。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、構造がシンプルであり、作業効率の良い工具及び作業効率の良い工法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、地中に横たわった状態の既設配管の周面に設定されたターゲット孔にメネジを形成する工具であって、前記ターゲット孔に前記メネジを形成するタップと、前記タップに対して回転力を伝える回転軸と、駆動力が印加される駆動側回転軸と、前記駆動側回転軸を収容する筒と、前記筒の外周面に設けられるものであり、前記既設配管に係合可能な係合アームと、を備え、前記係合アームは、前記筒の径方向外側へ延びる拡径部品と、前記既設配管の側部に対して係合可能な配管係合部品と、を備え、前記拡径部品は、前記径方向外側に向かうにしたがって前記タップ側に近づくよう斜めに延び、前記配管係合部品は、前記拡径部品に対して着脱自在となっており、前記ターゲット孔に前記メネジを形成するために前記タップを回転する際、前記係合アームが前記既設配管に係合することを特徴とする。また、前記拡径部品は、前記配管係合部品が挿通可能な挿通筒を備え、前記配管係合部品は、前記挿通筒に挿通可能な挿通可能部と、前記挿通可能部の上端に設けられ、前記挿通可能部が前記挿通筒に挿通された状態を維持する挿通規制部を有し、前記挿通規制部は、前記挿通可能部に対し屈曲しており、前記挿通筒に前記挿通可能部が挿通されたとき、前記挿通規制部は、前記挿通筒に対し係合することが好ましい。また、第1の係合アームと、第2の係合アームと、を備え、前記第1の係合アームは、前記既設配管の側部に対して係合可能であって、前記第2の係合アームは、前記ターゲット孔を介して前記既設配管の側部とは反対側の反対側部に対して係合可能であることが好ましい。さらに、前記回転軸の回転に伴って回転可能に設けられた穿孔部材を備え、前記穿孔部材は、前記タップよりも先端側に配され、前記既設配管に前記ターゲット孔を形成するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の工法は、上記の工具を用いて、前記既設配管に設定された前記ターゲット孔に前記メネジを形成するねじ切り工程を備えたことを特徴とする。さらに、本発明は、地中に横たわった状態の既設配管の周面に設定されたターゲット孔に、工具を用いてメネジを形成する工法であって、前記工具は、前記ターゲット孔に前記メネジを形成するタップと、前記タップに対して回転力を伝える回転軸と、前記タップよりも先端側に位置し、前記回転軸の回転に伴って回転可能に設けられた穿孔部材と、駆動力が印加される駆動側回転軸と、前記駆動側回転軸を収容する筒と、前記筒の外周面に設けられるものであり、前記既設配管に係合可能な係合アームと、を備え、前記駆動側回転軸と前記回転軸とは互いに嵌合した嵌合状態と離隔状態との間で切り替え自在となっており、前記離隔状態の前記工具を手で保持しながら、前記穿孔部品の回転により前記既設配管に前記ターゲット孔を形成する穿孔工程と、前記離隔状態の前記工具を用いて、前記タップの回転により前記ターゲット孔に前記メネジを形成するねじ切り工程と、を備え、前記ねじ切り工程では、前記係合アームが前記既設配管に係合する状態で前記ターゲット孔に前記メネジを形成することを特徴とする。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構造がシンプルであり、作業効率の良い工具及び作業効率の良い工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】工具の概要を示す分解図である。
図1B】工具の概要を示す分解図である。
図2】工具の使用状態を示す説明図である。
図3】伝動機構の概要を表す説明図である。
図4】伝動機構の概要を表す分解斜視図である。
図5】上方筒が固定された場合の伝動機構の概要を表すものであり、(A)は、Va―Va’線断面図であり、(B)は、Vb―Vb’線断面図であり、(C)は、Vc―Vc’線断面図である。
図6】上方筒が固定されていない場合の伝動機構の概要を表すものであり、(A)は、Va―Va’線断面図であり、(B)は、Vb―Vb’線断面図であり、(C)は、Vc―Vc’線断面図である。
図7】台座の概要を示す断面図である。
図8】台座の概要を示す平面図である。
図9】工具の使用状態を示す平面図である。
図10】工具の使用状態を示す説明図である。
図11】配管の交換作業の手順の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、任意の水平方向をX方向、高さ方向をZ方向、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向として説明する。
【0014】
図1A~1B、2に示すように、工具2は、横たわった既設配管にネジ孔を形成するためのものであって、配管Pに孔を形成する穿孔部材10と、メネジを形成するタップ20と、穿孔部材10及びタップ20に対して回転力を伝える下方回転軸30と、進退自在の下方回転軸30を収容する下方筒40と、下方回転軸30に対して動力を伝える伝動機構50と、伝動機構50を収容する上方筒70と、配管Pに係合可能な係合アーム80と、を備える。
【0015】
穿孔部材10は、Z方向の軸を有する筒状体であり、下端部には、孔を形成するための歯11が形成される。
【0016】
タップ20は、Z方向の軸を有する筒状体である。タップ20の周面には、メネジを形成するための溝21が形成される。
【0017】
下方回転軸30は、Z方向の軸を有する四角柱である。下方回転軸30の下端部には、下方から上方にかけて、穿孔部材10と、タップ20とが、それぞれ嵌着されている。このため、下方回転軸30は、自身の軸を中心に回転すると、穿孔部材10及びタップ20は、それぞれ自身の軸周りに回転する。
【0018】
下方筒40は、Z方向の軸を有する筒状体であり、自身の中空部において、下方回転軸30を同軸状に収容する。また、下方回転軸30は、Z方向において進退自在のまま下方筒40の中空部に収容される。
【0019】
上方筒70は、上方筒上部71と、上方筒上部71に対して着脱自在な上方筒下部72とを有する。上方筒下部72から上方筒上部71を取り外すと、上方筒下部72の中空部が露呈する。上方筒下部72の中空部は、伝動機構50の収容空間(図3)となる。
【0020】
図3~4に示すように、伝動機構50は、モータの駆動力が伝わる上側軸52と、上側軸52に対して嵌着した駆動歯車54と、駆動歯車54の軸周りに配された上側遊星歯車56と、上側遊星歯車56を回動自在に保持する上側収容筒ケース58と、上側収容筒ケース58の下面58Uに対し嵌着された伝動歯車64と、伝動歯車64の軸周りに配された下側遊星歯車66と、下側遊星歯車66を回動自在に保持する下側収容筒ケース68と、下側収容筒ケース68の下面68UからZ方向に延びる下側軸62と、上方筒下部72の内周面に形成された内歯車72Xと、を備える。
【0021】
このように、伝動機構50は、複数の歯車を備えるため、上側軸52に印加された駆動力に基づき、下側軸62にて所定のトルクを出力することができる。
【0022】
上側軸52は、Z方向の軸を持つ円柱体である。上側軸52の上端は、スイングアームやモータ(駆動源)が接続可能となっている。
【0023】
駆動歯車54は、Z方向の軸を持つ。駆動歯車54は、上側軸52のZ方向周りの回動に伴って、同じ方向に回動する。
【0024】
上側遊星歯車56は、Z方向の軸を持つ。上側遊星歯車56は、駆動歯車54と噛み合うため、駆動歯車54のZ方向周りの回動に伴って、駆動歯車54とは反対方向のZ方向周りに回動する。
【0025】
上側収容筒ケース58は、Z方向の軸を持つ筒状に形成される。上側収容筒ケース58の中空部58AXには、駆動歯車54が収容される。 また、上側収容筒ケース58の周面には切り欠き部58SXが形成され、上側収容筒ケース58の上面58T及び下面58Uにはそれぞれ軸孔58TX及び軸孔58UXが形成される。切り欠き部58SXには、上側遊星歯車56が配されるとともに、上側遊星歯車56の軸56AXは、軸孔58TX及び軸孔58UXを通るように配される。上側遊星歯車56の軸56AXはZ方向において回動自在に支持されるため、上側遊星歯車56は上側収容筒ケース58に対して回動自在に支持される。
【0026】
伝動歯車64は、上側収容筒ケース58の下面58UXからZ方向下方向へ突出するように設けられる。伝動歯車64は、上側収容筒ケース58のZ方向周りの回動に伴って、同じ方向に回動する。
【0027】
下側遊星歯車66は、Z方向を軸とするものである。下側遊星歯車66は、伝動歯車64と噛み合うため、伝動歯車64のZ方向周りの回動に伴って、伝動歯車64とは反対方向のZ方向周りに回動する。
【0028】
上側遊星歯車56や下側遊星歯車66は、複数配されることが好ましい。この場合において、駆動歯車54や伝動歯車64に対して対称に配置されることが好ましい。
【0029】
下側収容筒ケース68は、Z方向の軸を持つ筒状に形成される。下側収容筒ケース68の中空部68AXには、伝動歯車64が収容される。また、下側収容筒ケース68の周面には切り欠き部68SXが形成され、下側収容筒ケース68の上面68T等には軸孔68TX及び軸孔68UXが形成される。切り欠き部68SXには、下側遊星歯車66が配されるとともに、下側遊星歯車66の軸66AXは、軸孔68TX及び軸孔68UXを通るように配される。下側遊星歯車66の軸66AXはZ方向において回動自在に支持されるため、下側遊星歯車66は下側収容筒ケース68に対して回動自在に支持される。
【0030】
下側軸62は、Z方向を軸とする柱状に形成されたものであり、下側収容筒ケース68から下方向へ突出するように設けられる。下側軸62は、下側収容筒ケース68のZ方向周りの回動に伴って、同じ方向に回動する。下側軸62の下端には、下方回転軸30が嵌合可能な嵌合孔62Xが形成されている。
【0031】
内歯車72Xは、上方筒下部72の内周面に形成されるものであり、上方筒70に収容された上側遊星歯車56及び下側遊星歯車66に対して噛み合う。
【0032】
上方筒下部72の中空部には潤滑油が充填されるため、上方筒下部72の縮径部72V(図3)において、下側収容筒ケース68は、Z方向周りに回動自在に保持される。また、上側収容筒ケース58は、下側収容筒ケース68よりもZ方向上側の位置において、Z方向周りに回動自在に保持される。
【0033】
図5~6に示すように、上側軸52のZ方向周りの回動に伴って、上側遊星歯車56は、自身の軸56AXの周りを反対回りに回動する。上側遊星歯車56は、内歯車72Xに噛み合うため、上側収容筒ケース58と上方筒下部72とが相対的な回転運動を行う。すなわち、上方筒下部72が固定されている場合には、上側収容筒ケース58及び伝動歯車64が回転運動を行う一方(図5(A))、上方筒下部72が固定されていない場合には、上方筒下部72が回転運動を行う(図6(A))。
【0034】
また、伝動歯車64のZ方向周りの回動に伴って、下側遊星歯車66は、自身の軸66AXの周りを反対回りに回動する。下側遊星歯車66は、内歯車72Xに噛み合うため、下側収容筒ケース68と上方筒下部72とが相対的な回転運動を行う。すなわち、上方筒下部72が固定されている場合には、下側収容筒ケース68及び下側軸62が回転運動を行う一方(図5(B)~(C))、上方筒下部72が固定されていない場合には、上方筒下部72が回転運動を行う(図5(B)~(C))。
【0035】
図1A~1B、2に戻って、係合アーム80は、上方筒下部72に設けられるものであり、上方筒下部72に設けられたアーム本体81と、アーム本体81の先端に設けられた挿通筒82と、挿通筒82に対して挿通可能な棒状部材83と、を備える。
【0036】
アーム本体81は、上方筒下部72の周面から径方向外側へ延びる。より詳しくいえば、アーム本体81は、配管Pに向かいながら径方向外側へ、すなわち、斜め下方向に延びる。挿通筒82は、中心軸がZ方向と重なる向きで、アーム本体81に取り付けられることが好ましい。
【0037】
棒状部材83は、挿通筒82に対して挿通自在となっている。なお、棒状部材83の中途部において屈曲していることが好ましい。棒状部材83の屈曲部の角度は、例えば、85°以上95°以下である。これにより、棒状部材83の下側が挿通筒82に対して挿通された状態において、棒状部材83の上側は、挿通筒82の上側開口端82Uに係合する。これにより、棒状部材83は、挿通筒82に対して挿通された状態のまま、脱落せずに済む。なお、棒状部材83の屈曲部の角度は、所期の効果が奏する限りにおいて特に限定されない。
【0038】
工具固定具100は、工具2を配管Pに固定するものであり、円筒状の台座110と、台座110と配管Pの隙間を埋めるパッキン120と、台座110の側面から延びる2つの突出部130と、一方の突出部130から他方の突出部130まで渡されるチェーン140と、を備える。
【0039】
図7~8に示すように、台座110の内周面には台座ネジ110Nが形成される。台座ネジ110Nは、下方筒40の下方端側に設けられた下方筒ネジ40N(図1)に対して螺合する。パッキン120は筒状に形成される。パッキン120の形成材料は、ゴム等弾性に富むものである。このため、台座ネジ110Nを下方筒ネジ40Nに対して螺合することにより、台座110の中空部が密閉状態となる。このため、ガス管における穿孔工事の安全性が向上する。チェーン140の一端が一方の突出部130に係合されるとともに、チェーン140の他端が他方の突出部130に係合される。これにより、工具固定具100は、工具2を配管に固定することができる。
【0040】
次に、工具2の使用方法について説明する。
【0041】
配管Pの周りの土壌Dを取り除き、交換対象となる配管の全体が露呈するようにする(図11(c))。
【0042】
図1Aに示すように、配管Pの上に、パッキン120と台座110とを順次配置し、チェーン140を用いて、台座110を配管Pに固定する。このとき、配管Pのターゲット位置PXが台座110の中空部から露呈する。次に、台座ネジ110Nを、下方筒40の下方端側に設けられた下方筒ネジ40Nに対して螺合するとともに、棒状部材83を挿通筒82へ挿通させる。このとき、下方回転軸30と下側軸62とは連結されていない。
【0043】
モータMの駆動により、下方回転軸30をZ方向周りに回転させると、穿孔部材10及びタップ20もZ方向周りに回転する。こうして、穿孔部材10は、配管Pのターゲット位置PXにおいて孔が形成される。
【0044】
その後、下方回転軸30に下側軸62を連結させる(図2)。図9に示すように、2本の係合アーム80のうち1本の棒状部材83は、配管Pの側部に対して係合可能であって、もう1本の棒状部材83は、ターゲット位置PXを介して配管Pの側部とは反対側の反対側部に対して係合可能となっている。
【0045】
モータMの駆動により上側軸52に対して反時計回りの回転力を与えた場合、上方筒下部72が固定されている場合には、上側収容筒ケース58及び伝動歯車64が反時計回りの回転運動を行う(図5(A))。一方、上方筒下部72が固定されていない場合には、上方筒下部72が時計回りの回転運動を行う(図6(A))。このため、2本の係合アーム80(図9の実線部)は、D1方向に回転してしまう(図9)。本発明の工具2は、配管Pへ係合可能な係合アーム80を備えるため、係合アーム80が配管Pへ係合した状態(図9の破線部)をつくることができる。結果、係合アーム80、すなわち、上方筒下部72の回転が規制される。また、モータMの駆動により上側軸52に対して時計回りの回転力を与えた場合も同様であり、2本の係合アーム80(図9の破線部)は、D2方向に回転してしまうものの、係合アーム80が配管Pへ係合した状態(図9の破線部)をつくることができる。結果、係合アーム80、すなわち、上方筒下部72の回転が規制される。このため、上側軸52の回転力は、上側収容筒ケース58、伝動歯車64、下側収容筒ケース68及び下側軸62へと伝わる(図5(A)~(C))。また、伝動機構50は、種々の歯車からなるため、モータ(駆動源)からの出力を利用して、タップに適した所望のトルクを出力することができる。
【0046】
したがって、本発明によれば、構造がシンプルであり、作業効率の良い工具及び作業効率の良い工法を提供することができる。
【0047】
上記実施形態では、2本の係合アーム80を備える工具2を用いたが本発明はこれに限られない。例えば、4本の係合アーム80を備える工具2を用いてもよい。この場合において、図9の実線部で表された係合アーム80と、図9の破線部で表された係合アーム80と、の4本を設けてもよい。
【0048】
棒状部材83は、挿通筒82に対して挿通自在となっているため、収納時の収納スペースを小さくすることができる。また、棒状部材83の上側は、挿通筒82の上側開口端82Uに係合するため。これにより、棒状部材83は、挿通筒82に対して挿通された状態のまま、脱落せずに済む。また、棒状部材83の下側が挿通筒82に対して挿通自在となっているため、障害物HZがあったとしても、問題がない(図10)。
【0049】
上記実施形態では、モータMを用いて上側軸52の回転駆動を行ったが、本発明はこれに限られず、マニュアルで上側軸52の回転駆動を行ってもよい。
【0050】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
2 工具
10 穿孔部材
11 歯
20 タップ
21 溝
30 下方回転軸
40 下方筒p
40N 下方筒ネジ
50 上方回転軸
51 嵌合孔
60 上方筒
62-29208 実開昭
70 ラチェット構造
80 係合アーム
81 アーム本体
82 挿通筒
82U 上側開口端
83 棒状部材
100 工具固定具
110 台座
110N 台座ネジ
120 パッキン
130 突出部
140 チェーン
M モータ
P 配管
P1、P3 配管
P1~P3 配管
P2 配管
P2’ 配管
PX ターゲット位置
TX1、TX3 通気孔


図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11