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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】GaN系発光ダイオードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/04 20100101AFI20231109BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20231109BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20231109BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20231109BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
H01L33/04
H01L33/32
H01L21/205
H01L21/20
C23C16/34
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019098598
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020010019
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】1854602
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ マシュー
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-198045(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0070857(KR,A)
【文献】特開2011-139067(JP,A)
【文献】国際公開第2005/034301(WO,A1)
【文献】特開2015-002324(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105161592(CN,A)
【文献】国際公開第2018/035324(WO,A1)
【文献】特開2000-164926(JP,A)
【文献】特開2007-300050(JP,A)
【文献】特表2021-502713(JP,A)
【文献】国際公開第2017/079168(WO,A1)
【文献】特開2007-039272(JP,A)
【文献】特開平10-144962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0277715(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0015502(US,A1)
【文献】国際公開第02/093658(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0049433(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
H01L 21/205
C23C 16/00 - 16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を気相エピタキシャル成長チャンバ内に維持しながら、以下のステップを連続して含む発光ダイオードの製造方法。
-ゼロではない第1の濃度のアンモニアを有する雰囲気の前記気相エピタキシャル成長チャンバ内において、P型マグネシウムドーパントを有する第1のGaN合金層をエピタキシャル堆積すること。
-マグネシウムが供給されていない前記気相エピタキシャル成長チャンバ内の雰囲気中で前記第1のGaN合金層上へ犠牲GaN合金層をエピタキシャル堆積すること。
-前記犠牲GaN合金層を除去するように、前記気相エピタキシャル成長チャンバ内の雰囲気を、前記第1の濃度の3分の1以上の第2の濃度のアンモニアを有する状態に保つこと。
-前記第1のGaN合金層とのトンネル接合を形成するように、N型ドーパントを有する第2のGaN合金層をエピタキシャル堆積すること。
【請求項2】
前記第1のGaN合金層の合金がAlGaNである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1のGaN合金層は、その厚さ方向にアルミニウム濃度勾配を有する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1のGaN合金層の厚さが50~400nmである、請求項1~3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記犠牲GaN合金層の合金は、前記第1のGaN合金層の前記合金とは異なる、請求項1~4の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第2のGaN合金層の合金がAlGaNである、請求項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記気相エピタキシャル成長チャンバ内に維持された前記基板が多重量子井戸層で覆われ、前記第1のGaN合金層が前記多重量子井戸層上に堆積される、請求項1~6の何れかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記第2のGaN合金層上に導電性電極を堆積するステップをさらに含む、請求項1~7の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1のGaN合金層上にInGaN層を堆積するステップをさらに含み、前記第2のGaN合金層が前記InGaN層上に堆積される、請求項1~8の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記犠牲GaN合金層を除去する際、前記気相エピタキシャル成長チャンバ内において、200Pa以上のアンモニア分圧が保たれる、請求項1~9の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記犠牲GaN合金層の除去が、水素(H)を含む前記気相エピタキシャル成長チャンバ内の雰囲気で行われる、請求項1~10の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記犠牲GaN合金層の除去が、Cl又はHClを含む前記気相エピタキシャル成長チャンバ内の雰囲気で行われる、請求項1~10の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第1のGaN合金層のエピタキシャル堆積ステップの前に、前記第1のGaN合金層が堆積される表面のマグネシウムドーパントによる飽和ステップが先行する、請求項1~12の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記犠牲GaN合金層を除去する前記ステップが、前記犠牲GaN合金層から少なくとも20nmの厚さを除去する、請求項1~13の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記犠牲GaN合金層を除去する前記ステップが、前記第1のGaN合金層が現れるまで続けられる、請求項1~14の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaN系発光ダイオードに関し、特にそのような発光ダイオードを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN合金層を含む発光ダイオードの製造は、これらの層のいくつかにP型ドーパントをドープすることを含む。アクセプタのレベルが深いため、P型ドーピングは実行が比較的困難である。したがって、周囲温度でのP型ドーパントのイオン化の割合は比較的低いままである。この比較的低いイオン化エネルギーのために、GaN合金層のためのP型ドーパントとして、しばしばマグネシウムが用いられる。それにもかかわらず、GaN合金中のマグネシウムの溶解度(solubility)は低いままである。そのため、意図的にマグネシウムをドープしないでP型ドープGaN合金層とGaN層を重ね合わせると、NIDと呼ばれるこの最後のGaN層にマグネシウムが見いだされる。pGaN合金層との界面からのNIDのGaN合金層中のマグネシウム濃度の減少は比較的遅いため、約100nmの厚さのNIDのGaN合金層上にかなりの濃度のマグネシウムが観察され得る。
【0003】
GaN系発光ダイオードの製造のために、層のスタックが製造され、製造工程中に堆積される最後の機能層は、一般にドーパントとしてマグネシウムを使用するpGaN合金の層である。次に、当該スタックの上面にコンタクト電極を形成しなければならない。この構造では、マグネシウム濃度の低減は制限的ではない。しかしながら、スタック上面の接触抵抗を改善するため、出版物‘InGaN based micro light emitting diodes featuring a buried GaN tunnel junction’,2015年,Applied Physics Letters,107,051107に記載された方法は、トンネル接合を形成するためにpGaN合金層上にnGaN合金層を使用する。
【0004】
nGaN及びpGaN合金層がMOCVDエピタキシーステップによって形成される場合、nGaN合金層はかなりの濃度のマグネシウムを有する。そのため、トンネル接合部が機能しなくなってしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】M. Malinverni 他2名,「InGaN based micro light emitting diodes featuring a buried GaN tunnel junction」,Applied Physics Letters,(米国),2015年8月3日,107巻,5号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これらの欠点のうちの1つ以上を克服することである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲で定義されているように、発光ダイオードを製造する方法に関する。
【0007】
また、本発明は、従属請求項の変形例に関する。当業者であれば、明細書又は従属請求項の変形例の各特徴は、必ずしも中間一般化を構成することなく、独立請求項の特徴と独立して組み合わせることができることを理解するであろう。
【0008】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら非限定的な例として提供される以下の説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明に係る製造方法を用いて製造された多層構造の概略断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る製造方法のステップにおける概略断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る製造方法のステップにおける概略断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る製造方法のステップにおける概略断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る製造方法のステップにおける概略断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る製造方法のステップにおける概略断面図である。
図7図7は、製造方法に応じた、多層構造体の厚さ方向におけるマグネシウム濃度の比較図である。
図8図8は、本発明の別の態様に係る製造方法の変形例に応じた、多層構造体の厚さ方向におけるマグネシウム濃度の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、発光ダイオード90は、以下のものを含む。
-バッファ層5上に形成されたN型ドープAlGaN層4。
-層4上に形成された多重量子井戸層(multiple quantum well layer)3。
-層3上に形成されたP型ドープAlGaN層2。
-層2の上に形成されたN型ドープAlGaN層1。
【0011】
層1と層2とを組み合わせるとトンネル接合(tunnel junction)が形成される。トンネル接合を形成するための層1及び層2の材料の適切な組み合わせは、それ自体当業者に知られている。層1の上面は、図示を省略するが、電極のための接触界面を形成するように意図されている。発光ダイオード90は、可視又は紫外線スペクトルの発光を有するGaNタイプのものである。
【0012】
基板6はそれ自体既知の構造を有する。基板6は、絶縁体又は真性若しくはドープされたシリコン型半導体又はSiC、サファイア、さらにはAlN又はGaNであってもよい。基板6は、典型的に、約350μmから1.5mmの厚さであってもよく、約10mmから300mmの直径を有していてもよい。
【0013】
基板6とバッファ層5との間には、図示しないアダプテーション層を介在させてもよい。バッファ層5は、例えば、非意図的ドープ型のGaNからなる。
【0014】
AlGaN層4は、例えば、典型的に1×1017cm-3から1×1019cm-3までの濃度のシリコン又はゲルマニウムでのN型ドーピングを有する。
【0015】
多重量子井戸層3は、それ自体既知の構造を有し、例えば、GaN層とInGaN層との積層体、又は、AlGaN/GaN層の積層体、又は、AlGa(1-x)N/AlGa(1-y)N層(ここでx≠y)の積層体のいくつかが交互に積層されたものを含んでいてもよい。
【0016】
P型ドープAlGaN層2は、例えば、それ自体既知の方法で、典型的に50nmから400nmまでの厚さ、及び、典型的に1×1018cm-3から1×1020cm-3までのマグネシウムの化学濃度を有していてもよい。この場合のP型ドーピングは、層2のAlGaNに導入されたマグネシウムのイオン化によって得られる。また、層2は、他のいずれのGaN合金からも製造することができる。
【0017】
N型ドープAlGaN層1は、例えば、それ自体既知の方法で、典型的に20nmから200nmまでの厚さ、及び、典型的に1×1018cm-3から1×1020cm-3までのN-ドーパント濃度を有していてもよい。ドーパントの濃度は、接合部の隣で大きく、表面に向かって低くすることができる。また、層1は、他の任意のGaN合金、例えばInGaN合金からも製造することができる。
【0018】
層2に一体化するのが困難であるマグネシウムが層1に入り、当該マグネシウムがトンネル接合を形成するのを困難にすることを防ぐことは重要である。
【0019】
図2乃至図6は、本発明の一実施形態に係る製造方法の様々なステップを示す概略断面図である。
【0020】
図2は、前述のように、バッファ層5、AlGaN層4及び多重量子井戸層3で覆われた基板6を備え、それ自体公知の方法によって得ることができる、形成中の多層構造9を示している。
【0021】
図3は、それ自体知られているパラメータに従った、pAlGaN層20の堆積を示している。例えば、構造9を気相エピタキシャル成長チャンバ(図示せず)内に配置することによって、チャンバ内に、ガリウム(例えば、TMGa)、アルミニウム(例えば、TMAl)、マグネシウム(例えば、CpMg)、アンモニア、水素及び窒素の前駆体を含む混合物を有するガス雰囲気(gaseous atmosphere)が作り出される。当該ステップの混合物中のアンモニア分圧は典型的に2000から8000Paまでの間である。チャンバ内の雰囲気中のガスの濃度は、チャンバ内の全圧に対するこのガスの分圧の比として表すことができる。マグネシウムの分圧は、所望の濃度のマグネシウムが層2に対して得られることを可能にするレベルに設定される。例えば、少なくとも1×1019cm-3、さらに少なくとも1×1020cm-3に等しいマグネシウムの平均化学濃度を所望の濃度としてもよい。層20をエピタキシャル成長させるためのチャンバ内の温度は、例えば、1000℃である。pAlGaN層20の堆積は、50nmから400nmまでの厚さで行われることが好ましい。
【0022】
図4は、実施形態に係る製造方法の他のステップを示す図である。構造9を気相エピタキシャル成長チャンバ内に維持することによって、チャンバ内のガス雰囲気は、チャンバの雰囲気からマグネシウムの供給を除去することによって修正される。したがって、チャンバは、ガリウム、アンモニア、二水素(dihydrogen)及び窒素を含む混合物を有するエピタキシャル成長ガス雰囲気に保たれる。このようにして、非意図的ドープ型のGaN層を形成する条件で、pAlGaN層20の上にGaN層21が、引き続き、堆積される。
【0023】
層21を堆積させるための混合物におけるアンモニア分圧は、当該ステップにおいて通常4000Paから15000Paまでの間である。層21のエピタキシャル成長を生じさせるためのチャンバ内の温度は、例えば1050℃である。GaN層21の堆積は、50nmから200nmまでの厚さで行われることが好ましい。層20の体積の際に用いられるマグネシウムの記憶効果(memory effect)のため、層21はマグネシウムも含む。マグネシウムの濃度は、層20との界面から離れるにつれて層21内で徐々に減少する。
【0024】
図5に示される構成を得るために、多層構造9はエピタキシャル成長チャンバ内に維持される。次いで、チャンバ内の雰囲気は、層21及び層20の上部の少なくとも一方を除去するための条件下に置かれる。
【0025】
第1の解決策によれば、この場合において、当該除去ステップのためのチャンバ内の雰囲気は、層20を堆積する際の雰囲気のアンモニア濃度Cd1の最大3分の1に等しいアンモニア濃度Cg1を示す。さらに、濃度Cg1は最大で濃度Cd1の10%に等しいことが好ましい。この場合において、除去ステップは、層21全体の除去を含む。当該除去は、層21の脱離メカニズム(desorption mechanism)によって行われる。
【0026】
エッチング/除去プロセスを安定させるため、当該除去ステップにおける雰囲気のアンモニア濃度Cg1はゼロではないことが好ましい。当該除去ステップのためのチャンバ内の雰囲気中のアンモニアCg1の濃度は、例えば、濃度Cd1の少なくとも4%に等しくてもよく、例えば、濃度Cd1の5%に等しくてもよい。
【0027】
前駆体層の上部の除去は、マグネシウム濃度の減衰勾配をより著しくするために、少なくとも20nmに等しい厚さにわたって実施されることが好ましい。
【0028】
当該除去ステップを実施するために用いられる雰囲気も二水素を含み、また、当該除去は1050℃の温度で実施される。このような除去条件下において、アンモニア濃度Cd1の5%のアンモニア濃度Cg1又は200Paから300Paまでのアンモニア分圧を有する層21に対して、2μm/時間のエッチング速度が得られた。
【0029】
第2の解決策によれば、当該除去ステップのためのチャンバ内の雰囲気において、アンモニアの濃度は、この場合において、ゼロである。この場合において、除去ステップは、層21全体の除去を含む。当該除去は、層21の脱離メカニズムによって行われる。
【0030】
前駆体層の上部の除去は、マグネシウム濃度の減衰勾配をより著しくするために、少なくとも20nmに等しい厚さにわたって実施されることが好ましい。
【0031】
この除去ステップを実施するために用いられる雰囲気は二水素を含み、また、当該除去は1050℃の温度で実施される。このような除去条件下において、層21に対して12μm/時間のエッチング速度が得られた。
【0032】
層20は、層21のエッチング後のストップ層として用いられるか(層20はAlGaNから形成され、一方、層21はGaNから形成される)、又は、除去条件を保ちながら追加のエッチングを受ける。次いで、図5に示すように、層20から層2が得られる。層21がGaNからなる場合、及び、層20がAlGaNからなる場合、当該層20は、本来的に、エピタキシャルチャンバ内の層21のエッチング条件のための停止層を形成する。層20を停止層として使用することにより、層21をエッチングするステップの適切な制御を確実にしながら、製造方法のばらつきを制限することが可能になる。しかしながら、AlGaNから層21を製造することも考えられる。ストップ層を形成せずに、層20もGaNとすることができることは既に述べた。
【0033】
図6は、層2上への層1の堆積を示す。図示の例では、N型ドープAlGaN層1のエピタキシャル堆積が層2上に実施されている。層1は、当該層1が堆積された後、メカノポリシング工程(a step of mecano-polishing)において研磨されてもよい。
【0034】
発光ダイオードを製造するための方法の追加のステップ(例えば、層1上における、画素としての電極パターンの形態での電極の形成、又は、層4の分極コンタクト(polarization contact)の形成)は、これらのステップはそれ自体当業者に知られているため、さらに詳細には説明されない。
【0035】
変形例として、層2と層1との間に(例えば、2nmから5nmまでの厚さで)InGaN層を堆積することも、トンネル接合の性能を改善するという観点から考えられ得る。
【0036】
分極によるドーピングを促進するために、層1又は層2の厚さ方向においてアルミニウムの濃度を変えることも考えられる。
【0037】
層20のエピタキシャル成長において、マグネシウムは、アンモニアに由来する水素によってパッシベーション(passivated)されてもよい。層1の存在によって、水素の除去が複雑になる可能性がある。犠牲層21の除去に続いて、ジパッシベーションアニーリング(depassivation annealing)を実行してもよい。次いで、水素の取り込み及びマグネシウムのパッシベーションを回避するため、窒素前駆体としてのヒドラジン(hydrazine)(又は水素を発生しない他の任意の分子)と共に、窒素をキャリアガスとして使用する。
【0038】
図7は、当該製造方法に応じた、多層構造の深さにおける位置Dに応じたマグネシウムCの濃度の比較図である。深さD=ゼロは、構造9の層1の上面に対応する。0.27μmの深さは、層1と層2との間の界面に対応する。
【0039】
破線の曲線は、pGaN層2のエピタキシャル堆積の直後にGaN層1がエピタキシャル堆積される従来技術の方法に従って製造された構造に対応する。点線の曲線は、pGaN層2の堆積とGaN層1の堆積との間に5分間のアニールが行われる従来技術の方法に従って製造された構造に対応し、当該アニーリングの間、チャンバの雰囲気からガリウム(TMGa)が除去される。実線の曲線は、本発明の実施形態に係る製造方法で得られた構造9に対応する。
【0040】
なお、一方では、従来技術に係る方法では、マグネシウムの濃度を層2との界面に対して10分の1に減らすために、少なくとも100nmの厚さのGaN層1が必要である。アニーリングステップを実施する従来技術による方法であっても、このようなGaN層1の厚さは、層2との界面に対してマグネシウムの濃度を10分の1に減少させるために必要である。
【0041】
これとは対照的に、本発明の実施形態に従って製造された構造9の場合、マグネシウムの濃度は、GaN層1の厚さが約30nmになると10分の1になる。
【0042】
このように、本発明の製造方法によれば、層2上に形成されたAlGaN層1中のマグネシウム濃度の低減率を高めることができる。従って、本発明によれば、層2上に形成されたAlGaN層1中のマグネシウム濃度の減少勾配は特に急峻である。したがって、AlGaN層2の特性を変えることなく、AlGaN層1上に導電性電極を形成することが容易になる。このような結果は、構造体9がエピタキシャルチャンバ内に維持されるため、層1と層2との間の界面を汚染することなく得られる。また、製造方法は、当該方法のこれらの様々なステップの間、構造9がエピタキシャルチャンバ内に維持されるため、比較的迅速に実施される。
【0043】
これは、可視スペクトル内に実質的に位置する発光スペクトルを有する発光ダイオードに特に有効であるが、紫外スペクトル内に実質的に位置する発光スペクトルを有する発光ダイオードにも適用することができる。
【0044】
層2より上側におけるマグネシウム濃度の減少速度をさらに増大させるため、当該方法は以下のステップの交互に実施することが好ましい。
-層21を部分的に除去する。
-非意図的ドープ型の層を形成するための条件を有するGaN層のエピタキシャル成長。
【0045】
例えば、そのようなステップが少なくとも10回、交互に実施されてもよい。
【0046】
この場合、層21を除去するステップは、チャンバの雰囲気中のアンモニアの濃度を一定濃度に保ちながら実施されることが好ましい。このような除去によって、工業プロセスを迅速に実施するのに十分に速い除去速度と、除去プロセスを適切に制御するのに十分遅い除去速度との双方を実現することができる。さらに、このような除去は、層20の堆積の場合と同じ温度条件下で実行することができるため、事前に構造を冷却する必要性を回避することができる。
【0047】
しかしながら、層20のエピタキシャル堆積に続いて、チャンバ内の他の雰囲気で除去プロセスを実施することも考えられる。例えば、除去ステップを実施するためにCl又はHClをチャンバ内に導入してもよい。Clの使用は、500℃から800℃までの低温でエッチングすることを可能にするという特別な利点を有し、このことは、可視光を放射する、インジウムを含有する量子井戸を有するLEDにとって興味深く、1050℃の熱収支が使用された場合には安定ではないであろう。
【0048】
本発明の他の独立した側面によれば、層20(層2の前駆体)を形成するステップは、当該層20の底部におけるマグネシウムの濃度の勾配が非常に鋭くなるように実施されてもよい。このような鋭い濃度勾配を有する場合、さらに薄い層2を使用することができる。
【0049】
当該目的のため、図3を参照して説明したpAlGaN前駆体層20を堆積するステップは以下のように実施されてもよい。多層構造9が気相エピタキシャル成長チャンバ内に配置される際、pAlGaN前駆体層のエピタキシャル成長条件が確立される前に、層の表面は予めマグネシウムで飽和される。表面のマグネシウム飽和を達成するためのマグネシウム前駆体のチャンバへの添加は、少なくとも10秒に等しい期間にわたって実施されることが好ましい。表面がマグネシウムで飽和されると、pAlGaN層20の堆積は、図3を参照して説明したエピタキシャル成長条件で開始される。飽和は、ガリウム前駆体を供給せずに、又は、非常に少量のガリウム前駆体とともに、マグネシウム前駆体を供給することによって実施される。
【0050】
図8は、pAlGaN層のエピタキシャル堆積前の、雰囲気中にマグネシウムを維持する期間に応じた、pAlGaN層2の厚さ方向におけるマグネシウム濃度の比較図を示す。垂直線は、層2の底部に対応する。破線曲線は、pAlGaN層のエピタキシャル堆積前に、エピタキシャルチャンバの雰囲気中にマグネシウムが維持されない製造方法に対応する。点線の曲線は、pAlGaN層のエピタキシャル堆積前にエピタキシャルチャンバの雰囲気中にマグネシウムを30秒間維持する製造方法に対応する。一点鎖線の曲線は、pAlGaN層のエピタキシャル堆積前にエピタキシャルチャンバの雰囲気中にマグネシウムを90秒間維持する製造方法に対応する。実線の曲線は、pAlGaN層のエピタキシャル堆積前にエピタキシャルチャンバの雰囲気中にマグネシウムを120秒間維持する製造方法に対応する。エピタキシャル条件に入る前に雰囲気がマグネシウムで維持される時間が長くなればなるほど、層2の底部におけるマグネシウム濃度の勾配が急峻になることが分かる。
【0051】
本発明は、発光ダイオードの画素のマトリックスを形成することを目的とした構造9に特に有利であることが証明されている。なぜなら、これらの部品の製造方法は、コンタクト用のメタライゼーションの選択に制約を課すため、トンネル接合は良好なコンタクトを維持しながら異なる金属の使用を可能にするからである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8