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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】殺菌・洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A23N 12/02 20060101AFI20231109BHJP
【FI】
A23N12/02 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019107748
(22)【出願日】2019-06-10
(65)【公開番号】P2020198812
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】396013329
【氏名又は名称】株式会社クレオ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】吉比 正弥
(72)【発明者】
【氏名】川野 禎貴
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-228862(JP,A)
【文献】特開2002-119207(JP,A)
【文献】実開昭60-182794(JP,U)
【文献】米国特許第05113881(US,A)
【文献】特開平08-322532(JP,A)
【文献】特開2004-201591(JP,A)
【文献】特開2001-238655(JP,A)
【文献】特開2013-236584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/00 - 12/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤を含む殺菌水を蓄える殺菌水貯蔵槽と、
前記殺菌水貯蔵槽に蓄えられている殺菌水の中に、所定の時間、対象物を浸ける対象物浸漬部と、
を有し、前記対象物浸漬部は、前記対象物が前記殺菌水貯蔵槽に蓄えられている殺菌水に浸っている状態で、前記対象物を上下方向に移動させるように構成されており、前記対象物浸漬部が、前記対象物を上下方向に移動させるときの加速度を変更できるように構成されていることを特徴とする殺菌・洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の殺菌・洗浄装置であって、
前記殺菌水を前記殺菌水貯蔵槽内に供給する殺菌水供給部と、
前記殺菌水貯蔵槽内に蓄えられている殺菌水を排出する殺菌水排出部と、
を有することを特徴とする殺菌・洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜等の対象物の洗浄に使用される殺菌・洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水槽内に収容されている水にネギ等の食品を浸し、上記水に水流を発生させるともに、上記水内にエアー噴射ノズルからエアーを噴射することで、上記食品を洗浄する食品洗浄装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5852761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の食品洗浄装置による洗浄では、水内に動きが早い気泡が大量に発生しており、しかも、これらの気泡が食品にぶつかるので食品の洗浄がよくされているように見える。
【0005】
しかし、従来の食品洗浄装置では食品の洗浄をしているときに、エアー噴射ノズルからエアーを噴射するので、食品の表面に気泡がぶつかり付着し、水に接触しない食品の表面が多く発生したり、食品の一部がエアーに触れることで、食品の水に触れる頻度が低下してしまうという問題がある。
【0006】
さらに、水に代えて食品を殺菌する殺菌水を用い、食品の洗浄のみならず殺菌をするとなると、同様に気泡により殺菌水が食品に接触することが阻害されるため、食品の殺菌が十分にされないか殺菌に長い時間を要してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、短時間で十分な対象物の殺菌と洗浄とをすることができる殺菌・洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、界面活性剤を含む殺菌水を蓄える殺菌水貯蔵槽と、前記殺菌水貯蔵槽に蓄えられている殺菌水の中に、所定の時間、対象物を浸ける対象物浸漬部とを有し、前記対象物浸漬部は、前記対象物が前記殺菌水貯蔵槽に蓄えられている殺菌水に浸っている状態で、前記対象物を上下方向に移動させるように構成されており、前記対象物浸漬部が、前記対象物を上下方向に移動させるときの加速度を変更できるように構成されている殺菌・洗浄装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の殺菌・洗浄装置であって、前記対象物浸漬部は、前記対象物が前記殺菌水貯蔵槽に蓄えられている殺菌水に浸っている状態で、前記対象物を移動させるように構成されている殺菌・洗浄装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、短時間で十分な対象物の殺菌と洗浄とをすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】野菜の加工工程を説明する図である。
図2】本発明の実施形態に係る殺菌・洗浄装置の平面図である。
図3図2におけるIII矢視図である。
図4図3におけるIV-IV断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る殺菌・洗浄装置で使用される野菜収容かごと野菜とを示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る殺菌・洗浄装置の対象物保持部の平面図である。
図7図6におけるVII矢視図である。
図8図6におけるVIII矢視図である。
図9】本発明の実施形態に係る殺菌・洗浄装置で使用される野菜収容かごの蓋の平面図である。
図10】本発明の実施形態に係る殺菌・洗浄装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る殺菌・洗浄装置1は、対象物(殺菌・洗浄対象物)6を洗浄する装置である。上記対象物6として、たとえば、キャベツやネギ等の野菜6や他の食品(食物)を掲げることができる。この実施形態では、図5で示すように、キャベツを例に掲げてある。
【0016】
ここで、市場から飲食店やコンビニエンスストアの店頭やスーパーマケットの店頭でそのまま食べることができる野菜(たとえばカット野菜)として顧客に提供されるまでの、野菜の加工工程について、図1を参照しつつ説明する。
【0017】
まず、殺菌・洗浄装置1で原体を殺菌し洗浄する(S1、S2)。ここで、原体とは、青果市場や八百屋で販売されている野菜(野菜の生産者等によって泥等の異物がおとされているが、調理用の洗浄やカット等がされていない野菜)である。
【0018】
殺菌・洗浄装置1で殺菌・洗浄された野菜6は、トリミング処理(たとえば食用に適さない部位の除去)され(S3)、続いて、一次洗浄される(S4)。一次洗浄がされた野菜6は、カット(適宜の大きさに切断)される(S5)。
【0019】
カットされた野菜は、二次洗浄され(S6)脱水され(S7)サンドイッチや弁当等の具材として消費者に提供される。なお、店頭でカット野菜等として販売される場合には、脱水の後に計量と包装がされ(S8)製品になる(S9)。
【0020】
殺菌・洗浄装置1は、図2図4等で示すように、殺菌水貯蔵槽3と対象物浸漬部(野菜浸漬部)5とを備えて構成されている。
【0021】
殺菌水貯蔵槽3は、殺菌水7を蓄える(貯める)ようになっている。殺菌水7として、たとえば、次亜塩酸ナトリウムを含む水を掲げることができる。殺菌水7は、界面活性剤を含んでいる。また、殺菌水7では、エアーの噴出等がされていないことで気泡が非存在になっている。すなわち、殺菌水7の内部には、気泡が含まれておらず、殺菌水7は、ほぼ透明に見える。
【0022】
なお、殺菌剤や界面活性剤を含んでいなくても、温度が60℃程度の水(水道水)であれば、殺菌剤や界面活性剤を含んでいる殺菌水と同様に、キュウリ等の野菜6をほぼ生の状態に維持したまま殺菌する能力を備えているので、本件明細書は殺菌水に含めるものとする。
【0023】
野菜浸漬部5は、殺菌水貯蔵槽3に蓄えられている殺菌水7の中に、所定の時間、野菜6の全体を浸けるものである。なお、野菜浸漬部5による野菜6の浸漬は、殺菌水の水圧と界面活性剤とによって、表面張力によって空気の塊(気泡)が野菜6の表面に付着しないようにするために、野菜6を所定の深さ沈めることでなされる。
【0024】
なお、殺菌・洗浄装置1を、殺菌装置や食品の殺菌・洗浄装置や野菜の殺菌・洗浄装置と呼んでもよい。
【0025】
野菜浸漬部5は、野菜6の少なくとも一部が、殺菌水貯蔵槽3に蓄えられている殺菌水7に浸っている状態で野菜6を移動させるように構成されている。
【0026】
さらに説明すると、野菜浸漬部5は、野菜6を保持する対象物保持部(野菜保持部)9と、この野菜保持部9で保持されている野菜6を所定の範囲内で移動する対象物移動部(野菜移動部)11とを備えて構成されている。
【0027】
ここで、説明の便宜のために、水平な所定の一方向を横方向とし、水平な所定の他の一方向であって横方向に対して直交する方向を前後方向とし、横方向と前後方向とに対して直交する方向を上下方向とする。
【0028】
殺菌水貯蔵槽3に蓄えられている殺菌水7内に野菜保持部9で保持されている野菜6の全体が沈められている状態で、野菜保持部9が野菜移動部11でたとえば上下方向に移動することで、野菜6が殺菌水貯蔵槽3内に蓄えられている殺菌水7中で移動するようになっている。
【0029】
なお、野菜6を保持している野菜保持部9が野菜移動部11で上下動することで、殺菌水貯蔵槽3に蓄えられている殺菌水7の上側で野菜6の全体が殺菌水7から出ている位置と、殺菌水貯蔵槽3に蓄えられている殺菌水7の中に野菜6の全体が所定の深さ沈められている位置との間で、野菜6が上下方向に移動するように構成されていてもよい。
【0030】
また、野菜6を保持している野菜保持部9が野菜移動部11でたとえば上下動することで、殺菌水貯蔵槽3に蓄えられている殺菌水7の上側で野菜6の一部(上側部位)が殺菌水7から出ている位置と、殺菌水貯蔵槽3に蓄えられている殺菌水7の中に野菜6の全体が所定の深さ沈められている位置との間で、野菜6が、上下方向に移動するように構成されていてもよい。
【0031】
さらに、上記説明で、野菜移動部11の移動の態様として、3つの態様を掲げたが、野菜6の表面に付着している気泡をさらに確実に除去するために、上記3つの態様の中から少なくとも2つの態様を適宜選択して、これらの選択した態様を、適宜組み合わせてもよい。
【0032】
たとえば、殺菌水7内に野菜6の全体が第1の所定の深さだけ沈んでいる位置と殺菌水7内に野菜6の全体が第1所定の深さよりも深い第2の所定の深さ沈んでいる位置との間で、野菜6を上下動させ、続いて、殺菌水7の上側で野菜6の全体が殺菌水7から出ている位置と殺菌水7の中に野菜6の全体が所定の深さ沈められている位置との間で、野菜6を上下動させる動作を、この順に所定の回数繰り返し行ってもよい。
【0033】
また、野菜6を上下することに代えてもしくは加えて、殺菌水7内で野菜6を縦方向や横方向に移動したり、回転等させてもよい。
【0034】
また、殺菌・洗浄装置1には、殺菌水供給部13と殺菌水排出部15とが設けられている。殺菌水供給部13は、殺菌水7(新しい殺菌水)を殺菌水貯蔵槽3の下部から殺菌水貯蔵槽3内に所定の量ずつたとえば連続して供給するようになっている。
【0035】
殺菌水排出部15は、殺菌水貯蔵槽3内に蓄えられている殺菌水7を殺菌水貯蔵槽3の上部から殺菌水貯蔵槽3の外部に、殺菌水供給部13が供給する所定の量と同じ所定の量ずつ排出するようになっている。
【0036】
殺菌水供給部13で殺菌水7を供給し続け、殺菌水排出部15で殺菌水7を排出し続けることで、殺菌水貯蔵槽3内の殺菌水7に水流が発生するともに、先入先出法の態様で所定の時間をかけて、殺菌水貯蔵槽3内の殺菌水7の入れ替えがされるようになっている。
【0037】
なお、殺菌・洗浄装置1には、界面活性剤供給部17が設けられており、殺菌水貯蔵槽3内には、殺菌水7の他に界面活性剤供給部17から界面活性剤も供給されるようになっている。界面活性剤供給部17から殺菌水貯蔵槽3内に供給される界面活性剤は、殺菌水7に完全に混ざった状態で、殺菌水貯蔵槽3内に供給され、殺菌水7とともに殺菌水排出部15から排出されるようになっている。
【0038】
また、殺菌・洗浄装置1には、殺菌水除去部(野菜水切り部)19が設けられている。野菜水切り部19は、殺菌水貯蔵槽3に隣接して、殺菌水貯蔵槽3に一体的に設けられている。また、野菜水切り部19は、野菜浸漬部5によって殺菌水貯蔵槽3に蓄えられている殺菌水7に浸けられていた野菜6が殺菌水7から上げられたときに、野菜6に付着している殺菌水7を、重力を用いて野菜6から除去するために設けられている。
【0039】
野菜水切り部19は、殺菌水7が内部に入る流し台状の槽21と、対象物載置体(野菜載置体)23とを備えて構成されている。野菜載置体23は、流し台状の槽21の上端の開口部を塞ぐように設けられる(図4参照)。野菜載置体23の上面には、野菜6が載置されるようになっている。
【0040】
野菜載置体23は、図示してはいないが、平板状で多数の貫通の孔が設けられているパンチングメタル状に形成されている。殺菌水7が若干ついている野菜6を野菜載置体23の上の載せた状態では、野菜6は野菜載置体23の穴を通って落下することはないが、野菜6に付着している殺菌水7が重力の作用によって時刻の経過とともに、野菜載置体23の穴を通り抜けて徐々に流し台状の槽21内に落下するようになっている。
【0041】
また、殺菌水排出部15によって殺菌水貯蔵槽3からあふれ出てきた殺菌水7も、流し台状の槽21に一時溜まるようになっている。この溜まった殺菌水7は、流し台状の槽21の外部に排出され適宜処理されるようになっている。
【0042】
なお、殺菌・洗浄装置1において、野菜移動部11が、野菜6を保持している野菜保持部9の移動速度を調整できる(変更できる)ように構成されていてもよい。また、野菜移動部11が、野菜6を保持している野菜保持部9の加速度を調整できる(変更できる)ように構成されていてもよい。
【0043】
ここで、殺菌・洗浄装置1についてさらに詳しく説明する。
【0044】
殺菌・洗浄装置1は、ベース体25を備えて構成されている。殺菌水貯蔵槽3は、上部が開口している矩形な枡状に形成されており、ベース体25に一体的に設けられている。
【0045】
野菜浸漬部5の野菜保持部9は、洗浄用バスケット27内に入れられている野菜6(図5参照)を保持するようになっている。洗浄用バスケット27はたとえば合成樹脂で矩形な枡状に形成されており、上部が開口している。
【0046】
また、野菜保持部9は、図6図8で示すように、洗浄用バスケット載置部(洗浄用バスケット載置体)29と蓋部(蓋)31と洗浄用バスケット載置部支持部(一対の側板)33と被支持部(一対の棒状部)35とを備えて構成されている。
【0047】
洗浄用バスケット載置体29には、内部に野菜6が入っている洗浄用バスケット27が載置されるようになっている(図7参照)。洗浄用バスケット載置体29は、たとえば、細長い円柱状の複数本の素材を適宜組み付けることで網目状(メッシュ状)に形成されており(図6参照)、厚さ方向が上下方向になっている(図7参照)。平面視すると、洗浄用バスケット載置体29の外形は、洗浄用バスケット27よりも大きい矩形状になっている(図6参照)。
【0048】
蓋31(詳しくは後述する蓋本体部37)は、内部に野菜6が入っている洗浄用バスケット27の上面の開口部を塞ぐようになっている(図7参照)。蓋31(蓋本体部37)は、図9で示すように、たとえば円形状の孔が複数設けられている矩形な平板状に形成されている(矩形なパンチングメタル状に形成されている)。平面視すると、蓋31(蓋本体部37)の大きさは、洗浄用バスケット27よりも大きく洗浄用バスケット載置体29よりも小さくなっている(図6参照)。
【0049】
図8で示すように、一対の側板33のうちの一方の側板33Aは、下端部では前後方向の寸法が大きく、上端部では前後方向の寸法が小さくなっているが、概ね矩形状に形成されている平板で形成されており、厚さ方向が横方向になっている。また、一方の側板33Aは、この下端部が洗浄用バスケット載置体29の横方向の一端に一体的に接合されており、洗浄用バスケット載置体29の横方向の一端から上側に起立している(図7参照)。
【0050】
一対の側板33のうちの他方の側板33Bは、一方の側板33Aと同形状に形成されており、厚さ方向が横方向になっている。また、他方の側板33Bは、この下端部が洗浄用バスケット載置体29の横方向の他端に一体的に接合されており、洗浄用バスケット載置体29の横方向の他端から上側に起立している(図7参照)。
【0051】
被支持部を構成している一対の棒状部35のうちの一方の棒状部35Aは、図6図8で示すように、細長い円柱状に形成されており、長手方向が横方向になるようにして、一対の側板33A、33Bの間で一対の側板33に一体的に設置されている。また、一方の棒状部35Aは、上下方向では一対の側板33の上端部に位置しており、前後方向では、一対の側板33の中央よりもわずかに前側に位置している。
【0052】
一対の棒状部35のうちの他方の棒状部35Bは、一方の棒状部35Aと同形状に形成されており、一方の棒状部35Aと同様に、長手方向が横方向になるようにして、一対の側板33A、33Bの間で一対の側板33に一体的に設置されている。また、他方の棒状部35Bは、上下方向では、一方方の棒状部35Aと同じところで一対の側板33の上端部に位置しており、前後方向では、一対の側板33の中央よりもわずかに後側に位置している。これによって、一方の棒状部35Aと他方の棒状部35Bとの間には、前後方向で僅かな間隙が形成されている。
【0053】
野菜保持部9で野菜6を保持している状態では、洗浄用バスケット載置体29の上に内部に野菜6が入っている洗浄用バスケット27が載置されており、この載置されている洗浄用バスケット27の上の開口部が蓋31で塞がれている。
【0054】
また、野菜保持部9で野菜6を保持している状態で、洗浄用バスケット載置体29と野菜6と洗浄用バスケット27と蓋31等を、殺菌水貯蔵槽3内に蓄えられている殺菌水7に入れても、殺菌水から受ける浮力で、野菜6と洗浄用バスケット27と蓋31が浮きあがって、洗浄用バスケット27が洗浄用バスケット載置体29から離れ、野菜6等の総てが殺菌水の水面より上に飛び出すことが無いようになっている。
【0055】
さらに、説明すると、野菜保持部9で野菜6を保持している状態で、洗浄用バスケット載置体29と野菜6と洗浄用バスケット27と蓋31等を、殺菌水貯蔵槽3内に蓄えられている殺菌水7に入れても、蓋31の重量によって、野菜6と洗浄用バスケット27とが上側に浮き上がることが防止され、洗浄用バスケット27の下面が洗浄用バスケット載置部29の上面に接している状態が維持されるようになっている。
【0056】
同様にして、洗浄用バスケット載置体29と野菜6と洗浄用バスケット27と蓋31に加速度が加わった場合であっても、洗浄用バスケット27の下面が洗浄用バスケット載置部29の上面に接している状態が維持されるようになっている。
【0057】
図9等で示すように、蓋31は、突出部39と操作部41と上述した蓋本体部37とを備えて構成されている。蓋本体部37は、上述したように、たとえば円形状の孔が複数設けられている矩形な平板状に形成されている。
【0058】
突出部39はたとえば4つ設けられており、4つの突出部39のうちの1つ目の突出部39Aは、所定の長さの細い円柱状に形成されており、蓋本体部37の横方向の一端部で、蓋本体部37に一体的に設けられている。さらに説明すると、突出部39Aは、長手方向が横方向になっており、横方向の他端部が蓋本体部37の上面で蓋本体部37に一体的に設けられており、横方向の一端部が蓋本体部37の横方向の一端から所定の長さ突出している。また、突出部39Aは、前後方向では、蓋本体部37の前側に位置している。
【0059】
4つの突出部39のうちの2つ目の突出部39Bは、1つ目の突出部39Aと同形状に形成されており、1つ目の突出部39Aと同様にして蓋本体部37の横方向の一端部で、蓋本体部37に一体的に設けられており、蓋本体部37から突出している。なお、突出部39Bは、前後方向では、蓋本体部37の中央もしくは中央よりもやや後側に位置している。
【0060】
4つの突出部39のうちの3つ目の突出部39Cも、1つ目の突出部39Aと同形状に形成されており、1つ目の突出部39Aと対称な形態で蓋本体部37の横方向の他端部で、蓋本体部37に一体的に設けられている。4つの突出部39のうちの4つ目の突出部39Dも、1つ目の突出部39Aと同形状に形成されており、2つ目の突出部39Bと対称な形態で蓋本体部37の横方向の他端部で蓋本体部37に一体的に設けられている。
【0061】
操作部41は、図7等で示すように、「コ」字状に形成されており、蓋本体部37の上面で蓋本体部37の上側に突出する態様で蓋本体部37に一体的に設けられている。
【0062】
野菜保持部9の側板33Aには、図8で示すように、2つの細長い貫通孔43(43A、43B)が設けられている。一方の貫通孔43Aは、前後方向では前側に位置している。貫通孔43Aには、蓋31の突出部39Aが入り込むようになっている。貫通孔43Aの幅寸法の値は、突出部39Aの外径の値よりもわずかに大きくなっている。突出部39Aが貫通孔43Aに入り込んだ状態では、突出部39Aの蓋本体部37から突出している部位が、貫通孔43Aを貫通している。
【0063】
さらに説明すると、貫通孔43Aは、第1の部位45と第2の部位47と第3の部位49とを備えて構成されている。第1の部位45は上下方向に長く延びている。第2の部位47は第1の部位45の上端から後側に第1の部位45よりも短い所定の長さ延びている。第3の部位49は、上側に凸な円弧状に形成されており、第2の部位47の後端から上側および後側に斜めになって第1の部位45よりも短く第2の部位47よりも長い所定の長さ延びている。
【0064】
側板33Aに設けられている他方の貫通孔43Bは、一方の貫通孔43Aと同形状に形成されており、上下方向では同じところに位置しており、前後方向では概ね後側に位置している。貫通孔43Bには、蓋31の突出部39Bが入り込むようになっている。
【0065】
側板33Bにも、側板33Aと同様にして、貫通孔43Aと同形状の2つの貫通孔43C、43Dが設けられている。そして、貫通孔43Cには、蓋31の突出部39Cが入り込み、貫通孔43Dには、蓋31の突出部39Dが入り込むようになっている。
【0066】
なお、洗浄用バスケット載置体29や側板33は、横方向に対して直交し洗浄用バスケット載置体29の中心を含む平面に対して対称に形成されている。
【0067】
側板33Aの貫通孔43Aに蓋31の突出部39Aが入り込み、側板33Aの貫通孔43Bに蓋31の突出部39Bが入り込み、側板33Bの貫通孔43Cに蓋31の突出部39Cが入り込み、側板33Bの貫通孔43Dに蓋31の突出部39Dが入り込んだ状態では、蓋31が一対の側板33にガイドされている。
【0068】
一対の側板33にガイドされている蓋31は、図8に示す位置P1から位置P2を通って位置P3まで、上下方向が厚さ方向になっておりしかも横方向における位置がほぼ一定になっている状態を維持したまま、移動することができるようになっている。
【0069】
なお、位置P1は、蓋31が、洗浄用バスケット載置体29に載置されている洗浄用バスケット27の上面の開口部を塞いでいる位置である。蓋31が位置P1にあるときに、野菜6の洗浄がされるようになっている。
【0070】
位置P3は、蓋31が、洗浄用バスケット載置体29に載置されている洗浄用バスケット27から最も離れている位置である。蓋31が位置P3にあるときに、洗浄用バスケット載置体29に載置されている洗浄用バスケット27への野菜6の出し入れがされるようになっている。
【0071】
なお、蓋31が位置P1にあるときに、この位置P1を維持する蓋位置維持部(図示せず)が設けられていてもよい。蓋位置維持部は、蓋31が位置P1にあるときに、蓋31をたとえば図示しない留め具を用いて側板33に固定するようになっている。これによって浮力の大きい野菜6の浮き上がりも防止することができる。
【0072】
野菜移動部11は、図4等で示すように、支持部(支持体)51とアーム部(アーム)53と連結部(連結体)55とアクチュエアータ(たとえばサーボモータ)57と機構部(機構)59とを備えて構成されている。
【0073】
アーム53は、機構59に支持されており、サーボモータ57を介して、ベース体25や殺菌水貯蔵槽3に対して上下方向でのみ、所定の距離、所定の速度および加速度で移動できるようになっている。支持体51は、連結体55を介してアーム53に一体的に設けられている。また、支持体51には、野菜保持部9の被支持部35が着脱自在になっている。
【0074】
支持体51に被支持部(一対の棒状部)35が支持され設置されたことで、野菜保持部9(洗浄用バスケット載置体29や側板33)が、アーム53と一体化するように構成されている。なお、支持体51は一対の棒状部35の長手方向の中央部で棒状部35を支持している。
【0075】
そして、内部に野菜6を入れた洗浄用バスケット27が洗浄用バスケット載置体29に載置され、洗浄用バスケット27に蓋31がされ、支持体51に被支持部35が設置された状態で、アーム53が上下方向に移動することで、洗浄用バスケット27の野菜6が上下方向で移動し、たとえば、野菜6が殺菌水7に入り、野菜6が殺菌水7から出、また、野菜6が殺菌水7中で移動するようになっている。
【0076】
すでに理解されるように、内部に野菜6を入れた洗浄用バスケット27が洗浄用バスケット載置体29に載置され、洗浄用バスケット27に蓋31がされ、支持体51に被支持部35が支持されて設置されている状態を平面視すると、図2で示すように、殺菌水貯蔵槽3の内側に、洗浄用バスケット載置体29や側板33や蓋31が位置している。
【0077】
殺菌水供給部13は、図1図2で示すように、殺菌水供給部本体61と連結配管63と供給配管65と界面活性剤供給部17とを備えて構成されている。
【0078】
供給配管65は、たとえば「U」字状に形成されており、殺菌水貯蔵槽3の下端部で横方向や前後方向に延びて殺菌水貯蔵槽3内に設置されている。また、供給配管65には、複数の貫通孔67が設けられている。これらの貫通孔67は、供給配管65の長手方向で所定の間隔をあけてならんでいる。
【0079】
殺菌水供給部本体61には、新しい殺菌水が蓄えられており、この蓄えられている殺菌水が、連結配管63を介して、殺菌水供給部本体61から供給配管65内に供給されるようになっている。貫通孔67は、供給配管65の上端で供給配管65の肉部を貫通している。そして、供給配管65内に供給された殺菌水7(エアーを含んでいない殺菌水7)は、上側に向かって、殺菌水貯蔵槽3内に吐出されるようになっている(図4の矢印A1参照)。
【0080】
殺菌水排出部15は、殺菌水貯蔵槽3の4つの側板69(69A、69B、69C、69D)のうちの前側に位置している側板69Aと、流し台状の槽21とを備えて構成されている。
【0081】
4つの側板69のうちの前側に位置している側板69Aの上端には切り欠き71が形成されている。切り欠き71は、側板69Aの横方向中央部に位置している。これにより、側板69Aの切り欠き71が形成されている部位の高さは、他の3つの側板69B、69C、69Dや側板69Aの切り欠き71が形成されていない部位の高さよりも低くなっている。
【0082】
これによって、殺菌水供給部13から殺菌水7が供給されて殺菌水7の水面の高さが側板69Aの切り欠き71が形成されている部位の高さよりも高くなったときに、殺菌水貯蔵槽3から殺菌水7があふれ出て(図4の矢印A2参照)、流し台状の槽21に入るようになっている。
【0083】
なお、流し台状の槽21は、矩形な枡状に形成されており、殺菌水貯蔵槽3の前側で殺菌水貯蔵槽3にくっつき殺菌水貯蔵槽3と一体化している。
【0084】
さらに説明すると、流し台状の槽21の横方向の寸法の値は、殺菌水貯蔵槽3の横方向の寸法の値と等しくなっており、流し台状の槽21の上下向の寸法の値は、殺菌水貯蔵槽3の上下方向の寸法の値よりも小さくなっており、流し台状の槽21の前後方向の寸法の値は、殺菌水貯蔵槽3の前後方向の寸法の値よりも小さくなっている。
【0085】
また、流し台状の槽21の4つの側板73のうちの後側の側板73Cは、殺菌水貯蔵槽3の前側の側板69Aの上側の部位で形成されている。また、上下方向では、後側の側板73Cで切り欠き71が形成されていない部位の上端の位置と、4つの側板73のうちの他の3つの側板73A、73B、73Cの上端の位置と、殺菌水貯蔵槽3の側板69B、69C、69Dの上端の位置とはお互いが一致している。
【0086】
また、流し台状の槽21の底板75には、筒状の殺菌水排出孔77が設けられており、流し台状の槽21内の殺菌水7が、殺菌水排出孔77を通って流し台状の槽21の外部に排出されるようになっている。
【0087】
野菜載置体23は、厚さ方向が上下方向になり流し台状の槽21の上面の開口部に蓋をするようにして、流し台状の槽21に載置され設置されるようになっている(図4参照)。
【0088】
また、図3で示すように、殺菌・洗浄装置1には、メモリ79とCPU81とを備えて構成されている制御部83と、たとえばLCDで構成されている出力部(表示画面)85と、たとえばタッチパネルで構成されている入力部87とを備えて構成されている。
【0089】
そして、予めメモリ79に記憶されている動作プログラムや入力部87から入力された動作プログラムによって、CPU81の制御の下、殺菌・洗浄装置1が所定の動作をするようになっている。なお、出力部85には、たとえば、動作の形態や動作プログラム等が適宜表示されるようになっている。
【0090】
ここで、殺菌・洗浄装置1での野菜6の殺菌・洗浄動作を説明する。
【0091】
初期状態として、殺菌水貯蔵槽3内には適量の殺菌水7が入っており、被支持部35が支持部51で支持されており、野菜保持部9が図10(b)で示すように、殺菌水7から出て殺菌水7の上側に位置しており、蓋31が、図8で示す位置P3のところに位置しているものとする。
【0092】
上記初期状態で、人手によって、野菜6が入った洗浄用バスケット27を洗浄用バスケット載置部29に載置し蓋31を図8で示す位置P1のところに位置させることで、野菜保持部9による野菜6の保持がされる。
【0093】
続いて、入力部87に設けられている図示しないスタートボタンが押されることで、殺菌水供給部13で殺菌水貯蔵槽3内に7を供給するとともに、アーム53を下降させることで、殺菌水貯蔵槽3内の殺菌水7に野菜6を所定時間浸ける。この浸けている状態で、アーム53を上下動させて5を上下方向に移動する(図10(a)(c)参照)。
【0094】
続いて、アーム53を上昇することで、図10(b)で示すように、野菜保持部9や野菜6を殺菌水7から取り出す。
【0095】
続いて、人手によって、蓋31を図8で示す位置P3のところに位置させ、野菜6を野菜載置体23の上に載置して、野菜6の水切りをする。
【0096】
殺菌・洗浄装置1によれば、殺菌水貯蔵槽3に殺菌水7を蓄え、この蓄えられている殺菌水7の中に、エアーを噴出等させることなく、所定の時間浸けるので、エアーの付着によって水に接触しない野菜6表面の部位ができてしまったり、野菜6の一部がエアーに触れることで野菜6の水に触れる頻度が低下してしまうことが少なくなり、短時間で十分な野菜6の殺菌と洗浄とをすることができる。
【0097】
また、殺菌水7に界面活性剤を加えることで、野菜6の表面に気泡が付着することを無くすことができ、短時間で一層十分な野菜6の殺菌と洗浄とをすることができる。すなわち、界面活性剤を含まない殺菌水7に野菜6を浸すと、殺菌水7内にエアーを噴出しなくても、野菜6の表面の一部が空気を取り込んだまま殺菌水7に浸され、表面張力によって気泡が野菜6の表面に付着し続ける状態が発生することがある。これに対して殺菌水7に界面活性剤を加えることで、上述した気泡の付着を防ぐことができるとともに、気泡が発生した場合であってもこの発生した気泡が消滅しやすくなる。
【0098】
また、殺菌・洗浄装置1によれば、野菜浸漬部5が、殺菌水貯蔵槽3に蓄えられている殺菌水7に野菜6が浸っている状態で野菜6を移動させるようになっているので、野菜6の表面の気泡を一層確実に無くすことができる。
【0099】
また、殺菌・洗浄装置1によれば、野菜水切り部19が設けられているので、野菜6に付着している殺菌水7の床等への落下を防止し、野菜6に付着している殺菌水7を集めて処理することができる。
【0100】
また、殺菌・洗浄装置1によれば、殺菌水供給部13と殺菌水排出部15とで殺菌水7に水流を発生させるので、殺菌水7の入れ換えをすることができるとともに、水流によって野菜6表面の気泡付着を無くし野菜6の洗浄や殺菌をさらに的確に行うことができる。
【0101】
また、殺菌・洗浄装置1において、野菜移動部11が野菜6を保持している野菜保持部9の移動速度や加速度を調整することができるようにすれば、野菜6を傷付けることなく、野菜6に付着している気泡の除去を一層確実にすることができる。
【0102】
たとえば、加速度の値を小さくすることで傷が付きやすい野菜6の殺菌と洗浄とを野菜6に傷をつけることなく行うことができ、一方、加速度の値を大きくすることで野菜6の殺菌と洗浄を効率よく行うことができる。すなわち、野菜6の種類に応じて的確な殺菌と洗浄とを行うことができる。
【0103】
ところで、上記説明では、野菜載置体23や蓋31がパンチングメタル状に形成されているが、野菜載置体23や蓋31が、洗浄用バスケット載置体29のように網状に形成されていてもよい。また、洗浄用バスケット載置体29が網状に形成されているが、洗浄用バスケット載置体29が、野菜載置体23や蓋31のようにパンチングメタル状に形成されていてもよい。
【0104】
また、野菜載置体23には、洗浄用バスケット27から取り出した野菜6が載置されるが、野菜載置体23に、野菜6が入った洗浄用バスケット27が載置されてもよい。
【0105】
なお、上記記載内容を方法の発明として把握してもよい。すなわち、エアーの噴出等がされていないことで気泡が非存在であって界面活性剤を含む殺菌水に対象物を所定の時間浸けることで、前記対象物の殺菌と洗浄を行う殺菌・洗浄方法として把握してもよい。この場合、前記殺菌水に浸かっている対象物を殺菌水内で移動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 殺菌・洗浄装置
3 殺菌水貯蔵槽
5 対象物浸漬部(野菜浸漬部)
6 対象物(野菜)
7 殺菌水
13 殺菌水供給部
15 殺菌水排出部
図1
図2
図3
図4
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