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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20231109BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20231109BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20231109BHJP
   F21S 41/675 20180101ALI20231109BHJP
【FI】
B60Q1/14 Z
B60Q1/04 E
F21S41/148
F21S41/675
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019114172
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021000865
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】滝井 直樹
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190701(JP,A)
【文献】特開2018-073485(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
B60Q 1/04
F21S 41/148
F21S 41/675
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射される光の出射タイミングを制御する点灯制御手段と、前記光源から出射された光を繰り返し走査する回転走査手段を備え、走査された光により所用の領域を照明する車両用灯具であって、前記回転走査手段は1回転されたときに複数の繰り返し走査を行う構成であり、前記点灯制御手段は前記回転走査手段が1回転したときに検出される検出信号に基づいて当該回転走査手段の1回転の回転周期を検出し、検出した回転周期を前記繰り返し走査の数で等分したタイミングで前記光源の光出射タイミングを制御することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記回転走査手段は回転方向に配設された同一形状の複数の光反射ブレードを備える回転ミラーと、前記回転ミラーを回転駆動するモーターを備え、前記点灯制御手段は、前記モーターの回転周期を検出する周期検出手段と、検出した回転周期を複数に等分した分割周期を検出する周期分割手段を備え、検出した周期及び分割周期に基づいて前記光源の光出射タイミングを制御する請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記周期分割手段は、検出した回転周期を前記回転走査手段の光反射ブレードの数で分割して分割周期を演算する請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記モーターのローターは円周方向にS極とN極の複数対の磁極が着磁されたマグネットを備え、前記モーターには前記マグネットの回転に伴う磁極の変化を検出するホール素子が配設され、前記点灯制御手段は当該ホール素子の検出出力に基づいて点灯制御を行う請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記複数の磁極のうち一つの磁極の周方向の位置は、前記複数の光反射ブレードの一つの周方向の位置に対応して位置されており、前記点灯制御手段においては、前記光反射ブレードの周方向の位置に基づいて第1タイミングが設定され、前記第1タイミングの繰り返し周期で前記回転周期が検出され、検出された回転周期を等分したタイミングに基づいて第2以降のタイミングが設定される請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記複数の光反射ブレードは、光反射面が回転軸に対してなす傾斜角度が、回転方向に沿って徐々に変化される形状である請求項2ないし5のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記光源は半導体発光素子であり、前記点灯制御手段は前記光源の発光タイミングを制御する請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項8】
照明領域に存在する対象物を検出する対象物検出手段を備え、前記点灯制御手段は前記対象物検出手段で検出した対象物が存在する領域を走査するタイミングで前記光源の光出射タイミングを制御するADB配光での照明を行うヘッドランプとして構成された請求項1ないし7のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光走査方式の照明を行う車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の安全走行性を高めるために、自動車の前方領域に存在する先行車、対向車、歩行者等の対象物を検出し、検出した対象物を眩惑しないように配光制御する技術が提案されている。例えば、自動車のADB(Adaptive Driving Beam)配光制御は、ロービーム配光のカットオフラインよりも上側の領域を照明する際に、当該領域に存在する対象物に対して選択的に照明を行わないようにする配光制御である。このADB配光制御を実現するために光走査方式のランプが採用されている。
【0003】
光走査方式の照明を行う車両用灯具として、光源から出射された光の照射方向を変化させながら光照射を行う走査ミラーを利用したヘッドランプが提案されている。例えば、特許文献1には、走査ミラーとして光源の光を反射する回転ミラー(回転リフレクタ)を備え、この回転ミラーをモーターで回転駆動することにより、当該回転ミラーにおける反射角を変化させ、光照射方向を変化させて光走査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/104319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような回転ミラーによる光走査を制御する際には、回転ミラーの回転位置を検出し、検出した回転位置に基づいてモーターの回転を制御することが要求される。特許文献1においては、回転ミラーの回転位置を検出する技術として、回転ミラーのブレード(光反射羽根)の位置を検出する技術と、ホール素子を用いてモーターの回転位置を検出する技術が提案されている。これらの位置検出器の具体的構成についての詳細な説明は記載されていないが、前者の技術は例えばフォトインタラプタ等を用いてブレードの位置を検出する技術であると推測され、後者の技術はモーターのローターを構成するマグネットの磁極位置を検出する技術であると推測される。
【0006】
フォトインタラプタ等の位置検出器を用いた技術では、位置検出器を回転ミラーのブレード近傍に配設する必要があり、この種の位置検出器は小型化が難しいとともに、回転ミラーの近傍に位置検出器を配設するスペースを確保する必要があるため、回転ミラーの小型化を図ることが難しい。また、フォトインタラプタ等の位置検出器は総体的に高価であるので、回転ミラーの低価格化を図ることが難しい。
【0007】
一方、ホール素子を用いた技術では、ホール素子は小型でかつ比較的に安価であるので、回転ミラーの小型化、低価格化を図る上では有利である。しかし、ホール素子はモーターの回転位置を検出しているため、モーターと、モーターに取り付けられたブレードとの間に回転方向の位置ずれが生じていると、検出した回転位置と回転ミラーの実際の回転位置との間に検出誤差が生じることがある。特に、モーターのマグネットのS極、N極に回転方向の位置のバラツキが生じていると、このバラツキがそのまま検出誤差となる。このような検出誤差が生じると、モーターの回転を正確に制御しても、回転ミラーによる高精度の光走査が難しくなる。
【0008】
本発明の目的は回転ミラーでの高精度の光走査を可能にした小型の車両用灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光源から出射される光の出射タイミングを制御する点灯制御手段と、光源から出射された光を繰り返し走査する回転走査手段を備え、走査された光により所用の領域を照明する車両用灯具であり、回転走査手段は1回転されたときに複数の繰り返し走査を行う構成であり、点灯制御手段は回転走査手段が1回転したときに検出される検出信号に基づいて回転走査手段の回転走査手段の1回転の回転周期を検出し、検出した回転周期を繰り返し走査の数で等分したタイミングで光源の光出射タイミングを制御する構成である。
【0010】
本発明は好ましくは、回転走査手段は回転方向に配設された同一形状の複数の光反射ブレードを備える回転ミラーと、回転ミラーを回転駆動するモーターを備えており、点灯制御手段はモーターの回転周期を検出する周期検出手段と、検出した回転周期を複数に等分した分割周期を検出する周期分割手段を備える。その上で、検出した周期及び分割周期に基づいて光源の光出射タイミングを制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転走査手段の回転周期を検出し、かつ検出した回転周期を分割した分割周期を検出することにより、光源の光出射タイミングを制御することにより、小型でかつ好適なADB制御を行うことができる車両用灯具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用した自動車のヘッドランプの概略水平断面図。
図2】回転走査手段の一部を破断した概略斜視図。
図3】回転走査手段の断面図。
図4】点灯制御装置のブロック構成図。
図5】ロービーム配光とハイビーム配光の配光特性図。
図6】ADB配光を説明する配光特性図。
図7】設計上のマグネットの着磁と走査タイミングの相関を説明する図。
図8】課題となるマグネットの着磁と走査タイミングの相関を説明する図。
図9】本発明におけるマグネットの着磁と走査タイミングの相関を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明を適用した自動車のヘッドランプHLの概略水平断面図である。このヘッドランプHLはランプボディ11と、透光性の前面カバー12で構成されたランプハウジング1を備え、このランプハウジング1に内装されたロービームランプユニット2とハイビームランプユニット3で構成されている。以降の説明において、前後方向は自動車及びランプの前後方向に基づく方向である。
【0014】
前記ロービームランプユニット2はプロジェクタ型ランプユニットとして構成され、白色光を発光する光源としての第1白色LED(発光ダイオード)21と、この第1白色LED21から出射された白色光を集光状態に反射するリフレクタ22と、このリフレクタ22で集光された白色光を前方領域に投影する投影レンズ23を備えている。
【0015】
前記ハイビームランプユニット3は光走査方式のADB配光制御のランプユニットとして構成されている。このハイビームランプユニット3は、白色光を出射する第2白色LED31と、この第2白色LED31から出射された白色光を反射するとともに、その反射方向を水平方向に偏向させる回転走査手段32と、反射された白色光を自動車の前方領域に向けて投影する投影レンズ33を備えている。
【0016】
また、前記ランプハウジング1には、対象物検出装置4と点灯制御装置5が内装されている。前記対象物検出装置4は自動車の前方領域を撮像する撮像素子41と、この撮像素子41で撮像された画像を解析して対象物を検出する画像解析部42で構成されている。自動車の前方領域に対象物が存在すると、この対象物は撮像素子41により撮像され、画像解析部42において検出され、自動車に対する対象物の位置や方向を含む位置情報等が検出される。前記点灯制御装置5は検出された対象物の位置情報に基づいて前記第2白色LED31の発光を制御する。
【0017】
前記回転走査手段32は、ブラシレスモーター(以下、モーターと称する)6と、このモーター6により回転駆動される回転ミラー7とで構成されている。図2は前記モーター6と回転ミラー7の一部を破断した概略斜視図である。前記回転ミラー7はボス73に2枚の半円形をした光反射ブレード(以下、単にブレードと称する)71,72が支持されており、全体としてほぼ円板状に形成されている。前記ボス73は前記モーター6の回転軸61の一端部にスプライン等により回転方向に一体に支持されている。各ブレード71,72は表面、すなわち自動車の斜め前方に向けられている面が光反射面として構成されている。ここでは、2枚のブレード221は前記ボス222と共に樹脂成形により一体形成されており、少なくとも両ブレード71,72の表面にアルミニウム膜を蒸着、メッキ等した光反射膜が形成されている。
【0018】
前記2枚のブレード71,72はボス73を中心とした点対称の形状であり、光反射面としての表面の傾斜角度、すなわち前記モーター61の回転軸61の軸方向と垂直な面に対する傾斜角度が、円周方向に沿って連続的に変化する構成とされている。これにより、回転ミラー7はモーター6により回転駆動されたときに第2白色LED31に対向する反射面の水平方向の角度が連続的に変化され、この角度変化により第2白色LED31の白色光を水平方向に走査するように構成されている。また、2枚のブレード71,72の円周方向の間にはそれぞれ隙間が設けられており、この隙間は光反射を行わない無反射領域74として構成されている。
【0019】
図3は前記モーター6と回転ミラー7の断面図である。前記モーター6は円形浅皿状をしたベース62に組み立てられている。前記ベース62は、中心位置に開口された穴62aに臨んでステータ筒63が固定されており、このステータ筒63の内部に筒軸方向に離間配置された一対のボールボールベアリング64によって前記回転61軸が軸転可能に支持されている。この回転軸61の一端部は前記ベース62の表面側にまで延長され、前記回転ミラー7が取り付けられている。
【0020】
前記ステータ筒63の外周面には、コア(鉄芯)に導線を巻回した複数(ここでは4個)のコイル65が円周方向に等しい間隔で配設されている。これらのコイル65は前記ステータ筒63と共にモーター6のステータを構成する。
【0021】
前記回転軸61の他端には前記ステータ筒63及びコイル65を覆う外周位置に配設された短円筒容器状をしたローターヨーク66が取り付けられている。このローターヨーク66は強磁性体で構成されており、円形をした底壁の中心において前記回転軸61の他端に一体に取り付けられている。前記ローターヨーク66の円周壁の内面には円筒状をしたマグネット67が取り付けられている。図2に示したように、このマグネット67は円周方向にほぼ4等分した領域にS極とN極の各磁極が交互に配列されるように着磁されており、このマグネット67は前記ローターヨーク66と共にモーター6のローターを構成する。
【0022】
前記ベース62の裏面側には回路基板8が取り付けられており、この回路基板8には、前記点灯制御装置5を構成する回路部品が搭載されている。ここで、前記点灯制御装置5は、モーター制御部51と点灯制御部52を備えており、前者は前記モーター6の回転を制御し、後者は前記第1白色LED21と前記第2白色LED31の点灯状態を制御する。また、前記回路部品の一つとして、モーター6の回転状態を検出するホール素子81が搭載されている。さらに、外部の電源等に電気接続するためのコネクタ82が搭載されている。
【0023】
前記ホール素子81は通常では円周方向の一部に1つのホール素子が配設されており、このホール素子81においてホール効果を利用して前記マグネット67のS極とN極の変化を検出することにより、ローターヨーク67、すなわち回転軸61の回転状態を検出する。そして、この検出に基づいて前記コイル65に対する給電を制御してモーター6の回転を制御する。このホール素子81によるモーター制御の技術は公知であるので、ここではその詳細な説明は省略する。また、モーター制御を高精度に制御するような場合には、ホール素子は2つあるいは3つ設けてもよい。
【0024】
本発明においては、前記点灯制御部52は前記ホール素子81で検出した検出信号に基づいてハイビームランプユニット3の第2白色LED31の点灯状態、すなわち発光と消光(減光を含む)を制御する。
【0025】
図4は点灯制御部52のブロック構成図である。詳細については後述するが、ホール素子81の検出信号に基づいてモーター6及び回転ミラー7の回転位置(以下、回転ミラー回転位置と称する)を検出する回転位置検出部521と、検出した回転位置から発光タイミングを検出するタイミング検出部522と、検出したタイミングに基づいて第2白色LED31の発光を制御する発光制御部523を備えている。
【0026】
以上の構成のヘッドランプHLでは、点灯制御装置5の点灯制御部52によりロービームランプユニット2が点灯されると、図5(a)の配光特性図に示すようにロービーム配光領域PLの照明が行われる。すなわち、第1白色LED21が発光されると、自動車の前方領域の水平線Hにほぼ沿って延びるカットオフラインCOLを有し、このカットオフラインCOLよりも下側のロービーム配光領域(左上がり破線領域)PLの照明を行う。カットオフラインCOLは、鉛直線Vの右側(対向車線側)と左側(自車線側)とで高さが相違する。
【0027】
このロービームランプユニット2の点灯に加えてハイビームランプユニット3が点灯されると、図5(b)の配光特性図に示すように、ハイビーム配光領域PHの照明が行われる。すなわち、第2白色LED31が発光されると、当該LED31から出射された光は回転ミラー7のブレード71,72表面に投射され、ここで反射される。反射された光束は投影レンズ31に入射され、ヘッドランプHLの前方、すなわち自動車の前方に向けて投影され、自動車の前方領域に照射される。
【0028】
これと同時に回転ミラー7がモーター6により回転されると、第2白色LED31からの光が回転ミラー7のブレード71,72の表面に入射される円周方向の位置は円周方向に変化する。これらブレード71,72の表面の傾斜角度は円周方向に変化しているので、回転ミラー7の回転に伴って入射する光束の入射角が変化され、反射される光の反射角も変化されて水平方向に走査される。したがって、回転ミラー7の回転により前記した白色光の走査が繰り返され前記ロービーム配光領域PLのカットオフラインCOLよりも上側の領域(右上がり破線領域)のハイビーム配光領域PHの照明が行われる。
【0029】
このハイビーム配光領域の照明に際し、対象物検出装置4において撮像素子41により自動車の前方領域を撮像し、画像解析部42で撮像した画像から対象物を検出する。図6に示す例では、歩行者M1,M2と対向車CARが検出されている。これらの対象物が検出されたときには、点灯制御部52は対象物検出装置4からの対象物の位置(方向)と、ホール素子で検出した回転ミラー7の回転位置とに基づいて第2白色LED31の発光状態を制御する。ここでは、第2白色LED31を消光あるいは減光することを含んでいる。
【0030】
これにより、図6に示すように、ハイビーム配光領域PHに対しては、対象物M1,M2,CARが存在する領域では第2白色LED31の光ビームLの照射が行われることがなく、ハイビームランプユニット3による照明が制限される。それ以外の領域では、第2白色LED31の光ビームLによる所要光度での照明が実行される。したがって、対象物としての対向車CARや歩行者M1,M2を眩惑することなく、自動車の前方領域の視認性を高めたADB配光制御が実現される。
【0031】
このようにハイビームランプユニット3においては、点灯制御部52はホール素子81の検出信号に基づいて第2白色LED31の発光を制御している。この発光制御について、図7を参照して説明する。図7(a)のように、マグネット67は円周方向に2つのN極とS極が着磁されている。モーター6が1回転するとホール素子81からは、図7(b)の信号Dが出力される。横軸が回転角(時間)、縦軸が出力レベルである。回転位置検出部521は、信号が負から正に切り替わる第1回転位置θ1と第2回転位置θ2を検出する。これら回転位置θ1,θ2は回転ミラー7の1回転のうち、0°と180°の回転位置に相当する。
【0032】
タイミング検出部522は、回転位置θ1,θ2から所定の回転角度Δθに相当する時間Δtだけ遅延させた第1タイミングt1と第2タイミングt2を検出する。発光制御部523は、第1タイミングt1に基づいて第2白色LED31の発光を開始し、所定の時間tsだけ発光を継続した後に消光または減光する。続いて、第2タイミングt2に基づいて再び第2白色LED31の発光を開始し、所定の時間tsだけ発光を継続した後に消光または減光する。
【0033】
これにより、図7(c)のように、反時計方向に回転される回転ミラー7においては2つのブレード71,72のそれぞれ同じ円周方向の領域r1,r2、すなわち同じ傾斜角度の領域において走査が行われる。したがって、2つのブレード71,72により交番的に走査される光の反射方向、すなわち照明領域は完全に一致され、高精度のハイビーム配光領域の照明及びADB配光制御が実現される。
【0034】
しかしながら、モーター6を製造する際のマグネット67での着磁工程において、4つの磁極を正確に製造することは難しく、各磁極の円周方向の長さに誤差(バラツキ)が生じることがある。例えば、図8(a)に示すように、マグネット67において、設定した第1回転位置θ1に基づいて4つの磁極(各2つのN極,S極)を着磁しても、1つのS極の円周方向の長さが設計値よりも長く着磁されてしまい、当該S極と次のN極の境界である第2回転位置θ2が第2回転位置θ2’のように設計よりも時計回り方向にずれてしまうことがある。
【0035】
ここで、回転ミラー7をモーター6に取り付ける際には、詳細な説明は省略するが、例えばフォトリフレクタ等を用いて回転ミラー7の無反射領域74を検出し、この検出した回転位置を基準回転位置として設定する。また、モーター6のマグネット67におけるN極とS極の1つの境界を第1回転位置とし、この第1回転位置を前記基準回転位置に対して位置決めし、その状態で回転ミラー7をモーター6に取り付ける。したがって、第1回転位置θ1については回転ミラー7の無反射領域74に対して正確に位置決めすることができる。
【0036】
このように第2回転位置θ2が第2回転位置θ2’となるような位置ずれが生じると、モーター6が1回転するとホール素子81からは、図8(b)の信号D’が出力される。回転位置検出部521において検出する第1回転位置θ1は同じであるが、第2回転位置θ2’は正常時の回転位置θ2よりも時間軸上で遅延される。
【0037】
タイミング検出部522は、回転位置θ1,θ2’から所定の回転角度Δθに相当する時間Δtだけ遅延させたタイミングt1,t2’において第2白色LED31の発光を開始する。そして、所定の時間tsだけ発光を継続した後に消光または減光する。これにより、図8(c)のように、回転ミラー7においては一方のブレード71における円周方向の領域r1と、他方のブレード72における円周方向の領域r2’は異なる傾斜角度の領域となり、これらの領域r1,r2’において走査が行われることになる。したがって、2つのブレード71,72により交番的に走査される光の反射方向、すなわち投影方向は相違され、この相違によって走査にずれが生じ高精度のハイビーム配光領域の照明及びADB配光制御が難しくなる。
【0038】
このような場合には、ブレード72で反射された光はブレード71で反射された光よりも水平方向に進んだ走査光となる。そのため、ADB配光制御を行ったときには、図6に二点鎖線で示すように、走査された光が対象物としての対向車CARや歩行者M1,M2に照射されることがあり、対象物を眩惑してしまう。このことは、第2回転位置θ2が時間軸上で前倒しになる場合も同様であり、水平方向に遅れた走査光となる。
【0039】
本発明においては、図4に示すように、点灯制御部52のタイミング検出部522は、周期検出部524と、周期分割部525を備えている。周期検出部524は回転ミラー7が1回転する時間を周期1Tとして検出する。周期分割部525は検出した周期を1/2に分割した分割周期1/2Tを検出する。そして、タイミング検出部522は、検出した周期と分割周期に基づいて第1タイミングと第2タイミングを発光制御部523に出力し、発光制御部523はこの第1と第2のタイミングに基づいて第2白色LED31の発光を制御するように構成されている。
【0040】
このようにタイミング検出部522において周期検出部524と周期分割部525を備えることにより、図8に示した課題が解消される。すなわち、図9(a)において、図8(a)と同様にマグネット67の一つのS極の円周方向の長さが設計値よりも長く着磁されてS極からN極の境界である第2回転位置θ2’が設計よりも時計回り方向にずれていると、図9(b)のようにモーター6が1回転するとホール素子81からは、図9(b)の信号D’が出力される。
【0041】
タイミング検出部522では回転ミラー7の無反射領域74を基準にした第1回転位置θ1を検出すると、周期検出部524において当該信号D’に基づいて第1回転位置θ1から次の第1回転位置θ1までの周期1Tを検出する。このとき、第2回転位置の検出は行わない。次いで、周期分割部525は検出した周期1Tを1/2に等分した分割周期1/2Tを検出し、この分割周期に相当する回転位置を第2回転位置θ2として出力する。すなわち、第2回転位置θ2は、第1回転位置θ1に対して回転ミラー7の周方向の180°の位置となる。
【0042】
この周期検出部524においては、モーター6は等速回転運動を行っているので、モーター6の回転数から回転周期1Tを容易にかつ正確に検出することができる。そして、周期分割部525においては、この回転周期1Tを1/2演算することにより第2回転位置θ2を容易にかつ正確に演算することができる。
【0043】
タイミング検出部522は、これら第1と第2の回転位置θ1,θ2から所定の回転角度Δθに相当する時間Δtだけ遅延させた第1タイミングt1と第2タイミングt2を検出する。発光制御部523は、第1タイミングt1に基づいて第2白色LED31の発光を開始し、所定の時間tsだけ発光を継続した後に消光または減光する。続いて、第2タイミングt2に基づいて第2白色LED31の発光を開始し、所定の時間tsだけ発光を継続した後に消光または減光する。
【0044】
これにより、図9(c)のように、マグネット67に磁極が正しく着磁されている図7の場合と同様に、回転ミラー7の2つのブレード71,72のそれぞれ同じ傾斜角度の領域r1,r2において走査が行われる。回転ミラー7において、2つのブレード71,72により交番的に走査される光の反射方向、すなわち投影方向は完全に一致され、図6に実線で示したような高精度のハイビーム配光領域の照明及びADB配光制御が実現される。
【0045】
点灯制御装置5は、回転ミラー7を駆動するモーター6の回転周期を検出すれば、この回転周期に基づいて第1と第2のタイミングを検出することによりハイビームランプユニット3の第2白色LED31の発光を制御して好適なADB制御が実現できる。そして、回転周期の検出にはホール素子のような小型の電子部品を用いるのみでよいので、ハイビームランプユニット3の小型化、ないしヘッドランプHLの小型化が実現できる。
【0046】
以上説明した実施形態は、ヘッドランプのハイビームランプユニット3に本発明を適用した例を説明したが、ロービームランプユニット2に回転ミラーを配設して走査型のランプとして構成してもよい。このような場合には、当該ロービームランプユニット2の回転ミラーについても本発明を適用することができる。
【0047】
実施形態において、回転ミラーは2つのブレードを備える構成について説明したが、3つ以上のブレードを備える回転ミラーであってもよい。本発明においてブレードがn個(nは2以上の整数)で構成されている場合には、タイミング検出部の周期分割部では、周期をnに等分することになる。
【0048】
モーターについて、マグネットが円周方向に4つの磁極を有する構成例について説明したが、この磁極の数に限定されるものではない。また、点灯制御装置について、モーターの回転位置を検出する回転位置検出部としては、ホール素子以外の位置検出器を用いた構成であってもよい。
【0049】
発光制御部は、光源の発光と消光を制御するのみではなく、光源を減光する制御を行ってもよい。また、発光は継続しながら遮光材(シェード)を光源の光路に対して進退させ、光源からの光の出射状態を制御する構成としてもよい。特に、光源に半導体発光素子とは異なる発光体を用いる場合にはシェードによる光の出射制御を行うことが有効である。
【0050】
実施形態では、対象物検出装置をランプハウジング内に配設しているが、これに限られるものではなく、フロントウインドに臨む車室内、あるいはエンジンルーム内等の車体パネル内、さらにはバンパー内等に配設してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ランプハウジング
2 ロービームランプユニット
3 ハイビームランプユニット
4 対象物検出装置
5 点灯制御装置(点灯制御手段)
6 モーター(回転走査手段)
7 回転ミラー(回転走査手段)
8 回路基板
21 第1白色LED
31 第2白色LED(光源)
32 回転走査手段
51 モーター制御部
52 点灯制御部
63 ステータ筒(ステータ)
65 コイル(ステータ)
66 ローターヨーク(ローター)
67 マグネット(ローター)
81 ホール素子
521 回転位置検出部
522 タイミング検出部
523 発光制御部
524 周期検出部(周期検出手段)
525 周期分割部(周期分割手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9