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  • 特許-ポリアセタール樹脂組成物及び成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 59/00 20060101AFI20231109BHJP
   C08K 3/105 20180101ALI20231109BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231109BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20231109BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
C08L59/00
C08K3/105
C08K3/013
C08K7/04
C08J5/00 CEZ
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019141396
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021024891
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 美樹
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-194743(JP,A)
【文献】特開2012-233131(JP,A)
【文献】特開2014-234407(JP,A)
【文献】特開平05-017621(JP,A)
【文献】特開平05-255571(JP,A)
【文献】特開平07-157630(JP,A)
【文献】特開2017-214520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 59/00
C08K 7/04
C08K 3/013
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアセタール樹脂と(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維とを含有し、
前記ポリアセタール樹脂組成物100質量%に対して、前記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維を3~30質量%含有し、
前記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径が1μm以下であり、
前記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維長が5~50μmである、
ことを特徴とする、ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維のアスペクト比が5~300である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアセタール樹脂組成物100質量%に対して、前記(A)ポリアセタール樹脂を70~95質量%含有する、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は機械的特性と摺動性に優れ、機構部品や摺動部品として電気機器、自動車部品、精密機械部品等として広く用いられている。ポリアセタール樹脂の強度や剛性を向上させるためガラス繊維を配合することが知られている。
例えば、特許文献1にはガラス繊維強化樹脂において、ガラス繊維の径を小さくすると自材の磨耗が低減することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-214520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリアセタール樹脂にガラス繊維を添加すると、樹脂中の繊維や折損した繊維粉により、摺動接触する相手材に磨耗が生じ、部品の寿命を損なうという問題がある。特許文献1は、相手材の摩耗量についての検討は行われておらず、相手材の磨耗の低減に改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、強度と剛性に優れ、かつ相手材の摩耗低減と表面平滑性にも優れたポリアセタール樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
(A)ポリアセタール樹脂と(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維とを含有し、
前記ポリアセタール樹脂組成物100質量%に対して、前記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維を3~30質量%含有し、
前記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径が1μm以下であり、
前記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維長が5~50μmである、
ことを特徴とする、ポリアセタール樹脂組成物。
[2]
前記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維のアスペクト比が5~300である、[1]に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[3]
前記ポリアセタール樹脂組成物100質量%に対して、前記(A)ポリアセタール樹脂を70~95質量%含有する、[1]又は[2]に記載のポリアセタール樹脂組成物。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、強度と剛性に優れ、かつ、相手材の摩耗低減と表面平滑性にも優れたポリアセタール樹脂を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】摺動試験の説明図である。
図2】摺動試験前のピン状成形体先端の写真である。
図3】摺動試験後の実施例2のピン状成形体先端の写真である。
図4】摺動試験後の比較例6のピン状成形体先端の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
[ポリアセタール樹脂組成物]
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂と(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維とを含有する。
本発明は機械的特性に優れ、かつ、相手材の磨耗が低減されたポリアセタール樹脂組成物及びそれからなる成形体に関するものである。
【0011】
((A)ポリアセタール樹脂)
上記(A)ポリアセタール樹脂としては、オキシメチレン単位(‐CHO‐)を主な構成単位とする高分子化合物(例えば、ポリアセタール樹脂100質量%に対して、オキシメチレン単位を50質量%超、好ましくは70質量%以上、含む高分子化合物)で、公知のものを用いてよく、他の構成単位、例えばオキシエチレン単位等(‐CHCHO‐)を含むコポリマー、ターポリマー、ブロックポリマーを含んでいてもよい。
また、分子は線状のみならず、分岐、櫛形、架橋構造を有するものであってよい。
また有機基を導入した変性ポリアセタールであってもよい。
上記(A)ポリアセタール樹脂としては、主としてオキシメチレン単位とオキシエチレン単位からなる線状のポリアセタール樹脂が好ましい。
【0012】
上記(A)ポリアセタール樹脂としては、オキシメチレン単位中にオキシエチレン単位を0~30mol%含むことが好ましく、0.1~10mol%含むことが好ましく、0.5~5mol%含むことが好ましい。上記範囲のオキシエチレン単位を含むと、熱安定性と機械強度とに優れる。
【0013】
上記(A)ポリアセタール樹脂のメルトフローレイト(以下MFRとも記す)は、0.1~100g/10分であることが好ましく、1~80g/10分であることがより好ましく、3~50g/10分であることがより好ましい。上記MFRは、ISO 1131-1:2011(JIS K7210-1:2014)に準拠して2.16kgの荷重を用い、190℃で測定した値をいう。
【0014】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物中の(A)ポリアセタール樹脂の含有割合としては、樹脂組成物の靭性(引張り伸び特性)の観点から、ポリアセタール樹脂組成物100質量%に対して、70~95質量%であることが好ましく、より好ましくは80~93質量%である。
【0015】
((B)塩基性硫酸マグネシウム繊維)
上記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維としては、MgSO/5Mg(OH)・3HOで表されるウィスカ状繊維を用いることができる。
ここで、塩基性とは、懸濁液のpHが7超であってよく、8以上、9以上であってもよい。
【0016】
上記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維の含有割合は、ポリアセタール樹脂組成物100質量%に対して、3~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましく、8~15質量%がさらに好ましい。(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維の含有割合が上記範囲であると、相手材の摩耗低減に優れる。
【0017】
上記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維長は、5~50μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好まく、5~10μmであることがさらに好ましい。(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維長が上記範囲であると、強度向上効果と相手材の磨耗低減効果に優れる。
【0018】
上記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径が上記範囲であると、強度向上効果と相手材の磨耗低減効果に優れる。
【0019】
上記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維のアスペクト比は、5~300であることが好ましく、5~100であることがより好ましく、5~20であることがさらに好ましい。(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維のアスペクト比が上記範囲であると、強度向上効果と相手材の磨耗低減効果に優れる。
【0020】
ポリアセタール樹脂組成物中での塩基性硫酸マグネシウムの平均繊維長と平均繊維径は、樹脂ペレットを230℃の電気炉で2時間、350℃の電気炉で4時間加熱し、灰分をマイクロスコープで観察し、200本の平均から求めることができる。
【0021】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造に用いる、原料としての塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維長は、5~100μmであることが好ましく、5~50μmであることがより好ましいく、5~30μmであることがさらに好ましい。原料としての塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維長が上記範囲であると、強度向上効果と相手材の磨耗低減効果に優れるポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0022】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造に用いる、原料としての塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。原料としての塩基性硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径が上記範囲であると、強度向上効果と相手材の磨耗低減効果に優れるポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
なお、原料としての塩基性硫酸マグネシウムの平均繊維長と平均繊維径は、走査型電子顕微鏡によって100個の粒子を測定した平均である。
【0024】
上記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維は、チタネート系、シラネート系等の各種カップリング剤を用いて表面処理されたものであっても良い。表面処理の方法としては、公知の方法を用いてよく、溶媒に溶かしたカップリング剤と塩基性硫酸マグネシウム繊維を混合し乾燥させる湿式法であってもよいし、カップリング剤と塩基性硫酸マグネシウム繊維とを混合する乾式法であってもよい。また、樹脂との溶融混練時にこれらのカップリング剤と塩基性硫酸マグネシウム繊維とを添加する方法であっても良い。
【0025】
上記(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維は、各種脂肪酸金属塩を用いて表面処理されたものであっても良い。表面処理の方法としては、公知の方法を用いてよく、溶媒に溶かした脂肪酸金属塩と塩基性硫酸マグネシウム繊維を混合し乾燥させる湿式法であってもよいし、脂肪酸金属塩と塩基性硫酸マグネシウム繊維とを混合する乾式法であってもよい。また、樹脂との溶融混練時に脂肪酸金属塩と塩基性硫酸マグネシウム繊維とを添加する方法であっても良い。
【0026】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、更に必要に応じて、他の添加剤、例えば、摺動剤、滑剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、熱安定剤、光安定剤、変色防止剤、顔料、展着剤等を添加することができる。
【0027】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、更に必要に応じて他の無機充填材を添加することができる。
他の無機充填材を含む場合、(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維を含む無機充填材の総量100質量%のうち、(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維は95~100質量%が好ましい。
【0028】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において原材料((A)ポリアセタール樹脂と(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維、及び必要に応じて他の添加剤や無機充填材)の混合は、公知の溶融混合法によって行うことができる。例えば、単軸又は二軸の押出機を用いて練りこんでもよい。原材料は押出機に供給する前に混合してもよいし、独立して供給してもよい。更には、原材料は異なる供給口から供給しても良い。
【0029】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、公知の溶融成形法によって各種の成形体に成形され得る。上記製法により得られる物品としては、通常の射出成形体以外に、例えば繊維、シート・フィルム、及び異型押出品等も含む。
【0030】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物から成形体を得る際には、一旦組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットをポリアセタール樹脂ペレットと混合して成形することで、目的組成の成形体を得ても良い。
本実施形態の成形体は、少なくとも本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を含む。本実施形態の成形体は、例えば、電気機器、自動車部品、精密機械部品として用いることができる。
【0031】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例
【0032】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0033】
[原料]
(A)ポリアセタール樹脂
(A-1)ポリアセタール(旭化成株式会社製、「TENAC-C HC450」(商品名)、融点:168℃、MFR:8g/分)
(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維
(B-1)塩基性硫酸マグネシウム繊維(宇部興産製 「モスハイジA」(商品名)、平均繊維長:25μm、平均繊維径:0.7μm、L/D:36、モース硬度:2.5)
(C)繊維状フィラー
(C-1)ガラス繊維(日本電気硝子製「T-651H」(商品名)、平均繊維長:3000μm、平均繊維径:13μm、L/D:231、モース硬度:5)
(C-2)ガラス繊維(日本電気硝子製「T-651DE」(商品名)、平均繊維長:3000μm、平均繊維径:6.5μm、L/D:462、モース硬度:5)
(C-3)炭酸カルシウム繊維(平均繊維長:20μm、平均繊維径:2.5μm、L/D:8、モース硬度:3)
(C-4)ワラストナイト繊維(IMERYS製「NYAD1250」(商品名)、平均繊維長:9μm、平均繊維径:3μm、L/D:3、モース硬度:4.5)
(C-5)ワラストナイト繊維(IMERYS製「NYGLOS8」(商品名)、平均繊維長:135μm、平均繊維径:8μm、L/D:17、モース硬度:4.5)
(D)安定剤
(D-1)メラミン(日産化学製)
(E)展着剤
(E-1)流動パラフィン(モレスコ製「PS-260」(商品名))
【0034】
[ポリアセタール樹脂組成物の製造方法]
上流側に1箇所、下流側に1箇所の供給口を有する同方向回転二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM-26SS」(商品名))を用いた。押出機のシリンダー温度は180~210℃に設定した。(A)ポリアセタール樹脂、(D)安定剤及び(E)展着剤は上流側の供給口から、(B)塩基性硫酸マグネシウム繊維又は(C)繊維状フィラーは下流側の供給口から、(A)~(E)の供給量の合計が12~15kg/時間となるよう供給した。供給した原料をスクリュー回転数150rpmの条件で押し出し、冷却し、ストランド状にしたものを切断することで、ポリアセタール樹脂組成物からなる樹脂ペレットを得た。また、下流側に取り付けた真空吸引ポートより、揮発分及び水分の除去を行った。
【0035】
[各種評価方法]
各種評価方法の詳細について以下に述べる。
【0036】
(1)平均繊維長、平均繊維径
樹脂ペレットを230℃の電気炉で2時間、350℃の電気炉で4時間加熱し、灰分をマイクロスコープで観察し、200本の塩基性硫酸マグネシウム繊維、ガラス繊維、炭酸カルシウム繊維、ワラストナイトの繊維長及び繊維径から、平均繊維長(μm)、平均繊維径(μm)を求めた。
【0037】
(2)メルトマスフローレート(MFR)
東洋精機製「MELT INDEXER F-F01」(製品名)を用いて、ISO 1133-1に規定された方法(A法)により、MFR(g/10min)を求めた。試験温度は190℃、加重は2.16kgとした。
【0038】
(3)表面粗さ
射出成形機(東芝機械製「EC75NII」(製品名))を用いて、ISO 294-1に準拠し、ISO 20753に規定された多目的試験片(タイプA-1)の成形片を得た。レーザー顕微鏡(Lasertec製「HYBRID C3」(製品名))を用い、この成形片の中心750μm四方を観察し、ISO 25178に準拠して算術平均高さSa(μm)を求めた。この値が大きいほど成形片表面が粗い。
【0039】
(4)引張試験
島津製作所製「AG-X」(製品名)を用いて、ISO 527-1に準拠して、引張速度50mm/minで、上記(3)で得られた成形片の引張試験を行い、引張強さ(MPa)を測定した。
【0040】
(5)曲げ試験
島津製作所製「AG-X」(製品名)を用いて、ISO 178に準拠して、上記(3)で得られた成形片の曲げ試験を行い、曲げ強度(MPa)、曲げ弾性率(GPa)を測定した。
【0041】
(6)相手材磨耗度
射出成形機(製「Ti30GII」(製品名))を用いてポリアセタール(旭化成株式会社製、「TENAC-C 4520」(商品名))を射出成形しピン状成形体を得た。ピン状成形体は直径2.5mmの円柱と半球が合わさった形をしており、その先端は直径0.4mmの円状である。
上記(3)で得られた成形片上にグリス(協同油脂製「エクセライトNo.2」(商品名))を塗布し、上記ピン状成形体を1万往復摺動させた(図1)。往復摺動の条件は、摺動幅は10mm、摺動速度は30mm/min、ピン状成形体への荷重は2kgとした。
上記摺動試験の後、ピン状成形体に付着したグリスをトルエンでふき取り、レーザー顕微鏡(Lasertec製「HYBRID C3」(製品名))でピン状成形体の先端を観察し、r(μm)を測定した(図2~4)。
さらに、測定したピン先端の直径から磨耗した長さL(μm)を(式1)により算出した。これらの値が大きいほど相手材の磨耗が大きい。
(式1)
L=√(2500^2-(r/2)^2)-√(2500^2-(r0/2)^2)
磨耗前の先端径 r0=447μmとした。
【0042】
(実施例1~3及び比較例1~16)
各成分が表1に示す組成となるよう、ポリアセタール樹脂組成物を上述のようにして製造し、上記各種評価方法により評価した。結果を表1に示す。
表中、「N/A」は未測定を表す。
【0043】
【表1】
【0044】
塩基性硫酸マグネシウム繊維を添加した本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ガラス繊維を添加した樹脂組成物と比べて摺動接触する相手材を磨耗し難い性質を有し、表面が平滑で外観にも優れている。さらにガラス繊維を添加した樹脂組成物と遜色ない熱安定性、強度、剛性を有している。塩基性硫酸マグネシウム繊維を添加した本発明のポリアセタール樹脂組成物は摺動部材として特に好適な組成物である。
図1
図2
図3
図4