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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】缶識別システム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20231109BHJP
   G06K 7/14 20060101ALI20231109BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
G06K7/10 428
G06K7/10 416
G06K7/10 372
G06K7/14 017
B65D25/20 P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019157250
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021033958
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 誠
(72)【発明者】
【氏名】福田 知行
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-226776(JP,A)
【文献】特開平08-072883(JP,A)
【文献】特表2006-506701(JP,A)
【文献】特開平08-075096(JP,A)
【文献】中国実用新案第202584155(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第102663341(CN,A)
【文献】特開2017-173406(JP,A)
【文献】特開2019-089596(JP,A)
【文献】特開昭49-110481(JP,A)
【文献】特表2015-501259(JP,A)
【文献】中国実用新案第207036718(CN,U)
【文献】中国実用新案第207826817(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107434091(CN,A)
【文献】特開昭61-232157(JP,A)
【文献】特開平08-048373(JP,A)
【文献】特開2017-178382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
G06K 7/14
B65D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ライン上において隙間なく並んで連続して搬送される缶を識別対象とする缶識別システムであって、
前記缶は、先端側に向かって縮径するネック部を備え、前記ネック部は胴部と上端部とに連接しており、前記ネック部に識別コードが設けられており、
缶のネック部の全領域を読取範囲とし前記ネック部に設けられた識別コードを読み取る読取手段と、
前記読取手段によって読み取った識別コードに基づいて缶を識別する識別手段と、
を備え
前記読取手段は、4台以上のコードリーダーからなり、
前記4台以上のコードリーダーは、読取対象の缶を中心とした円周上に設置される缶識別システム。
【請求項2】
缶のネック部の傾斜角をα°とし、前記読取手段の光軸と読取対象の缶の中心軸とのなす角をθ°とした場合、α-10≦θ≦α+10となるように前記読取手段が設置される請求項1に記載の缶識別システム。
【請求項3】
前記読取手段によって識別コードが読み取られる前の缶のネック部に対して、空気を吹きつける送風手段を備える請求項1又は請求項2に記載の缶識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、非常に多くの種類の飲料が商品化されており、当然、飲料を封入する缶についても多種多様なデザインのものが存在する。
その結果、缶の納入業者によって所望の缶とは異なる缶(異種の缶)の誤納品が発生する可能性はゼロではない。
【0003】
また、生産ラインにおいて製品種を変更する際に、前の製品種の缶(異種の缶)が後の製品種の缶に混ざってしまう可能性も僅かながら存在する。
【0004】
このように異種の缶が混入する可能性があるため、缶を識別して分別する方法について、これまでにも幾つか対応策が提案されてきた。
【0005】
例えば、特許文献1には、記号が付される物品に対し、それぞれ異なる方向からレーザー光を照射するための複数の記号リーダーを備え、前記物品に対する前記各記号リーダーの各読取可能範囲を組合わせることによって、物品の側面全周を読取可能範囲とし、前記記号を読取る構成とする、光学式記号読取装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-134512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る発明は、缶の胴部分に設けられたバーコードを読み取る構成であり、特許文献1には缶の向きを変えずにバーコードを読み取ることができることができると説明されている。
しかしながら、缶の胴部分に設けられたバーコードを読み取る構成では、生産ライン上(搬送路上)において缶同士が接している場合にバーコードが隠れてしまう場合がある。このような場合、バーコードを読み取ることが非常に困難となることから、缶を精度よく識別して異種の缶の存在を検知することができない。
【0008】
なお、特許文献1では、缶同士が接している場合を想定していないことから(図1、2等参照)、ライン上で缶同士を切り離す(間隔を設ける)手段が別途必要となるが、このような手段を設けると、処理のスピードが大幅に低減するとともに、缶同士を切り離す際に缶を傷つけてしまう可能性もある。つまり、特許文献1に係る発明では、缶を精度よく識別しようとすると、このような別の問題が生じてしまうため、特許文献1に係る発明とは全く異なる新しい技術の創出が必要である。
【0009】
そこで、本発明は、缶を精度よく識別することができる缶識別システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)生産ライン上において隙間なく並んで連続して搬送される缶を識別対象とする缶識別システムであって、前記缶は、先端側に向かって縮径するネック部を備え、前記ネック部は胴部と上端部とに連接しており、前記ネック部に識別コードが設けられており、缶のネック部の全領域を読取範囲とし前記ネック部に設けられた識別コードを読み取る読取手段と、前記読取手段によって読み取った識別コードに基づいて缶を識別する識別手段と、を備え、前記読取手段は、4台以上のコードリーダーからなり、前記4台以上のコードリーダーは、読取対象の缶を中心とした円周上に設置される缶識別システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る缶識別システムによれば、缶を精度よく識別することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る缶の模式図である。
図2】缶に設けられる識別コードの模式図である。
図3】本実施形態に係る缶識別システムの全体の模式図である。
図4】本実施形態に係る缶識別システムが識別コードを読み取る状態を上方から見た模式図である。
図5】本実施形態に係る缶識別システムが識別コードを読み取る状態を横から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る缶識別システム、缶識別方法、及び、缶を実施するための形態(実施形態)について、図を参照して説明する。
【0014】
[識別対象となる缶]
まず、図1を参照して、本実施形態に係る缶識別システム、及び、缶識別方法の識別対象となる本実施形態に係る缶について説明する。
缶1は、全体として円筒状を呈し、先端側(図1では上端側)に向かって縮径するネック部2を備えている。そして、缶1は、ネック部2に識別コード3が設けられている。
【0015】
図1のネック部2は、胴部Bから上端部Tに向かう縦断面形状が直線(及び、滑らかな曲線)で縮径するスムースネックの場合を示しているが、縦断面形状が段状に縮径する4段ネックや3段ネックといったものであってもよい。ただし、識別コード3の読取精度を向上させる観点から、ネック部2はスムースネックであるのが好ましい。
【0016】
識別コード3は、ネック部2という限られた領域に設ける必要があるため、一次元コード(バーコード)よりも面積あたりのデータ容量の大きくサイズの小さい二次元コードの方が好ましい。そして、二次元コードとしては、例えば、DateMatrix、QRコード、MaxiCode、PDF417といった従来公知のものが挙げられる。
【0017】
また、図2に示すように識別コード3が二次元コード30である場合において、二次元コード30の暗モジュール31のL*値をXとし、明モジュール32のL*値をYとした場合、XとYとの差は35以上であることが好ましく、40以上、45以上、50以上であることがより好ましい。
XとYの差が所定値以上であることによって、識別コード3の読取精度をより向上させることができる。
そして、明モジュール32の色とネック部2の表面の色とは、同色であってもよく、例えば、暗モジュール31は黒色、明モジュール32とネック部2の表面とは白色という構成であってもよい。
なお、二次元コード30の近辺に、当該二次元コード30に対応するヒューマンリーダブルの目視文字を設けてもよい。
なお、L*値とは、詳細には、物体の色を示すのに使用されるL*a*b*表色系(エルスター・エースター・ビースター表色系)の明度を示す値である。そして、L*a*b*表色系とは、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化された指標であり、JIS Z8781-4:2013に規定されている。
【0018】
[缶識別システム]
次に、図3、4、5を参照して、本実施形態に係る缶識別システムSの構成について説明する。
缶識別システムSは、ネック部2に識別コード3が設けられた缶1を識別する缶識別システムであって、缶1のネック部2の全領域を読取範囲としネック部2に設けられた識別コード3を読み取る読取手段4と、読取手段4によって読み取った識別コード3に基づいて缶を識別する識別手段5と、を備える。
【0019】
以下では、生産ライン上を連続して搬送される缶1を識別対象とする場合について説明する。
なお、生産ラインにおいて製品種を変更する際に、前の製品種の缶(異種の缶)が後の製品種の缶群に混ざってしまう可能性を考慮すると、可能な限り下流側(製品として出荷される直前のもの)に缶識別システムSを適用するのが好ましい。
また、全ての缶について識別作業を実施する場合は、缶が単列で搬送されるライン(単列部)に缶識別システムSを適用するのが好ましい。
【0020】
(読取手段)
読取手段4は、缶1のネック部2に設けられた識別コード3を読み取る手段であり、例えば、従来公知のコードリーダーや撮像装置(カメラ等)が挙げられる。
そして、読取手段4は、搬送される所定の缶1のネック部2の全領域を読取範囲とするために、読取手段4は4台以上が好ましい。読取手段4を4台以上とすることによって、缶1のネック部2の全領域を読取範囲とすることができる。さらに、各読取手段4の読取範囲がネック部2全周の1/4以上の円弧状の領域(具体的には、各読取手段4に対向するネック部2であって、ネック部2全周の1/4以上、好ましくは1/3以上の円弧状の領域)である場合、読取手段4を4台以上とすることによって、読み取り難い各読取手段4における読取範囲の端部が両隣の読取手段4の読取範囲とオーバーラップすることとなり、読取の正確性(さらには識別の正確性)を大幅に向上させることができる。
【0021】
読取手段4がコードリーダーの場合、読取範囲の光を取り込み画像データを取得する受光部、読み取った画像データに対して明るさ補正や幾何学補正などの画像処理を施す画像処理部、画像処理後の画像データと記憶部に記憶させた所望の識別コードとのマッチングを判定(所望の識別コードが存在するか否かを判定)する判定部などを備えるが、前記のとおり、既存の機器であるため、詳細な説明は省略する。
なお、各読取手段4は、判定部が行った判定結果(所望の識別コードの有無)を識別手段5に出力する。
【0022】
(読取手段:設置位置)
図4に示すように、生産ラインを上方から確認すると、4台の読取手段4は、読取対象である缶1を中心とした円周上(鎖線上)において、ほぼ等間隔(好ましくは等間隔)となるように設置される。
そして、缶1(ネック部2表面)と読取手段4との距離は、読取手段4の性能によって適宜設定すればよく、例えば、200~350mmであり、245~290mmである。
なお、図4に示すように、4台の読取手段4を用いる場合、読取対象である缶1の中心点と所定の読取手段4と隣接する読取手段4とのなす角は75~115°(好ましくは80~100°、より好ましくは90°)となる。
【0023】
図5に示すように、生産ラインを横から確認すると、読取手段4は、読取対象の缶1に対して真横ではなく、斜め上方に位置している。これは、読取対象の缶1のネック部2と隣の缶11のネック部2との間の隙間を利用して、適切に読み取りを行うためである。
具体的には、図5において、読取手段4の光軸L(一点鎖線:読取手段4における受光部のレンズの光軸)が、隣の缶11に遮られることなく読取対象の缶1のネック部2の幅方向の中央部分(ネック部2の幅の長さをLとすると、幅方向の中央からネック部2の両端に向けてL/8となる部分であり、好ましくはL/10となる部分であり、より好ましくは幅方向の中央)に位置するような状態である。そして、読取手段4による読取処理が、可能な限り隣の缶11に邪魔されることがないよう、読取手段4の光軸Lは、隣の缶11の傾斜と略並行になるのが好ましい。例えば、缶1、11のネック部2の傾斜角(鉛直に対する角度)がα°の場合、読取手段4の光軸と読取対象の缶の中心軸A(二点鎖線:鉛直線)とのなす角θ°は、α-10≦θ≦α+10が好ましく、α-5≦θ≦α+5がより好ましく、α-3≦θ≦α+3がさらに好ましい。
また、読取手段4の光軸と読取対象の缶の中心軸A(二点鎖線:鉛直線)とのなす角θ°は、例えば、15~35°が好ましく、20~30°がより好ましい。
【0024】
(識別手段)
識別手段5は、読取手段4によって読み取った識別コードに基づいて缶を識別(所望の缶と異種の缶との識別)する手段である。
詳細には、識別手段5は、4台の読取手段4の判定部から入力された4つの判定結果(所望の識別コードの有無)に基づいて、識別(所望の缶であるか否か)を実施する。
そして、識別手段5は、識別結果の情報を判定結果出力手段(図示せず)に出力する。
【0025】
(識別結果出力手段)
識別結果出力手段(図示せず)は、識別手段5から入力された識別結果を外部に出力する手段である。この識別結果出力手段は、例えば、所望の缶ではないとの識別結果が識別手段5から入力された場合に音や光を発する警報装置、異種の缶を生産ライン上から除外するような装置、全ての結果を表示できるモニター等に結果を出力する。
【0026】
(送風手段)
送風手段(図示せず)は、読取手段4によって識別コード3が読み取られる前の缶1のネック部2に対して、空気を吹きつける手段である。
そして、送風手段は、従来公知のブロワーであればよい。この送風手段を設けることによって、缶1のネック部2に付着している水滴等を排除し、読み取りや識別の正確性を向上させることができる。
【0027】
なお、読取手段4、識別手段5、識別結果出力手段は、CPU(Central Processing Unit)によるプログラムの実行処理や、専用回路等によって実現される。
また、各手段の記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の一般的な記憶装置で構成することができる。
【0028】
[本実施形態に係る缶識別方法(缶識別システムの動作)]
次に、本実施形態に係る缶識別方法について、図3、4、5を参照して説明する。なお、前記した本実施形態に係る缶識別システムの動作も併せて説明する。
【0029】
本実施形態に係る缶識別方法は、読取工程と、識別工程と、を含む。
以下、本実施形態に係る缶識別方法の各工程について説明する。
【0030】
(読取工程)
読取工程は、缶のネック部の全領域を読取範囲としネック部に設けられた識別コードを読み取る工程である。
具体的には、読取工程では、コードリーダーや撮像装置といった読取手段4が缶1のネック部2の全領域の画像データを得て、ネック部2に設けられた識別コード3を読み取る。
【0031】
(識別工程)
識別工程は、読取工程によって読み取った識別コード3に基づいて缶1を識別する工程である。
具体的には、識別工程では読取手段4が取得した画像データについて、適宜、読取手段4の画像処理部が画像処理(明るさ補正や幾何学補正)を施した後、得られた画像データと読取手段4の記憶部に記憶させた所望の識別コードとのマッチングを読取手段4の判定部が判定(所望の識別コードが存在するか否かを判定)する。そして、各読取手段4から識別手段5に判定結果が出力され、これらの判定結果に基づいて、識別手段5が缶の識別(所望の缶であるか否かを識別)を行う。そして、識別工程では、識別手段5の識別結果について、外部に所定の指示を出力する。
なお、後の変形例において詳述するが、前記した画像処理、判定処理は、識別手段5が実施する構成でもよい。
【0032】
識別処理については、4台の読取手段4から入力された4つの判定結果において、一つ以上「所望の識別コードが存在する」との結果が得られた場合、識別手段5は「缶は所望の缶である」と識別し、一つも「所望の識別コードが存在する」との結果が得られなかった場合、識別手段5は「缶は所望の缶ではない(異種の缶である)」と識別する。
なお、4台の読取手段4は、読取範囲をオーバーラップさせていることから、2台の読取手段4が「所望の識別コードが存在する」との判定結果を示す場合がある。
【0033】
(識別工程以降の工程)
外部に所定の指示が出力されると、例えば、異種の缶と識別した旨を音や光を発することで知らせる警報装置が作動したり、異種の缶を生産ライン上から除外する装置が作動したりすることとなる。
なお、識別工程において、いずれの識別結果が得られようと、全ての結果をモニターに表示するという構成としてもよい。
【0034】
(読取工程前の工程:送風工程)
読取工程の前に、生産ラインを搬送される缶1(特に、ネック部2の表面)に対して、空気を吹き付ける送風工程を設けてもよい。
【0035】
(各工程の開始のタイミング)
各工程については、例えば、読取手段4の近辺に設置したレーザーポインタ等によって生産ライン上における缶1の存在を確認したタイミングで読取工程を実施(開始)し、その後の一連の工程を実施するという流れであればよい。
なお、読取手段4が、缶1の存在を確認するレーザーポインタを備える構成であってもよい。
【0036】
また、送風工程の開始のタイミングについては、例えば、送風手段の近辺に設置したレーザーポインタにより生産ライン上における缶1の存在を確認したタイミングで送風工程を実施してもよいが、常に、ブロワー等によって、生産ライン上における缶に対して送風するという構成でもよい。
【0037】
[本実施形態に係る缶識別システム、缶識別方法、及び、缶の効果]
次に、本実施形態に係る缶識別システム、缶識別方法、及び、缶の効果について、図1~5を参照して説明する。
【0038】
本実施形態に係る缶1によれば、ネック部2に識別コード3が設けられているため、当該缶1を識別する際に、特許文献1のように胴部分に設けられたバーコードを読み取る必要はない。よって、本実施形態に係る缶1によれば、生産ライン上において缶同士が隙間なく並んで搬送されている状態であっても、識別コード3が適切に読み取られ、その結果、精度よく識別されることとなる。
また、本実施形態に係る缶1によれば、当該缶1を識別する際に、生産ライン上において缶同士を切り離す(隙間を設ける)必要がないため、処理スピードの低下や、切り離す際の缶への傷の発生を回避することもできる。
【0039】
本実施形態に係る缶識別システムS、及び、缶識別方法によれば、ネック部2に識別コード3を設ける缶1を識別対象とするため、特許文献1のように胴部分に設けられたバーコードを読み取る必要はない。よって、本実施形態に係る缶識別システムS、及び、缶識別方法によれば、生産ライン上において缶同士が隙間なく並んで搬送されている状態であっても、読取手段4(読取工程)によって識別コード3を適切に読み取ることができ、その結果、識別手段5(識別工程)によって精度よく識別することができる。
また、本実施形態に係る缶識別システムS、及び、缶識別方法によれば、生産ライン上において缶同士を切り離す(隙間を設ける)必要がないため、処理スピードの低下や、切り離す際の缶への傷の発生を回避することもできる。
【0040】
本実施形態に係る缶識別システムSによれば、読取手段4を4台以上とすることによって、読み取り難い各読取手段4における読取範囲の端部が両隣の読取手段4の読取範囲とオーバーラップすることとなり、読取の正確性(さらには識別の正確性)を大幅に向上させることができる。
【0041】
本実施形態に係る缶識別システムS、及び、缶識別方法によれば、送風手段(送風工程)を備えていることから、缶1のネック部2に付着した水滴等を除去することができ、読取手段4(読取工程)における識別コード3の読み取りが正確に行われ、その結果、識別手段5(識別工程)における誤識別の可能性を低減することができる。
【0042】
[本実施形態に係る缶識別システム、缶識別方法、及び、缶の変形例]
図1に示す缶1は、ネック部2に識別コード3を1つ設ける構成であるが、同じ識別コード3を2つ以上設ける構成であってもよい。なお、同じ識別コード3を2つ以上設ける構成の場合、ネック部2の周囲に沿って等間隔に設けるのが好ましい。
このような構成とすることによって、識別コード3を読み取る読取手段4の数を減らすことが可能となる。
【0043】
読取手段4について、缶1のネック部2の全領域を読取範囲とし識別コード3を読み取るだけでなく、画像処理や識別コードのマッチングの判定処理も行う構成について説明したが、画像処理および判定処理の少なくとも一方を識別手段5が行う構成としてもよい。
具体的には、まず、4台の読取手段4によって読み取られた4つの画像データ(識別コードを含む)が、識別手段5に出力され、識別手段5が4つの画像データに対して画像処理を施し、画像処理後の画像データと識別手段5の記憶部に記憶させた所望の識別コードとのマッチングを判定(所望の識別コードが存在するか否かを判定)する。そして、識別手段5が、その4つの判定結果(所望の識別コードの有無)に基づいて、識別(所望の缶であるか否か)を実施する、という構成であってもよい。
なお、画像処理後の画像データと読取手段4(または識別手段5)の記憶部に記憶させた所望の識別コードとのマッチングを判定する構成を説明したが、一旦、画像処理後の画像データを4桁の資材コードに変換した後、この資材コードと読取手段4(または識別手段5)の記憶部に記憶させた所望の4桁の資材コードとを比較し、マッチングを判定(所望の4桁の資材コードを表す識別コードが存在するか否かを判定)する構成としてもよい。
【0044】
図3に示す缶識別システムSは、読取手段4を4つ設ける構成であるが、読取手段4を1つ設ける構成であってもよい。この場合、読取手段4は、読取対象の缶の真上(読取対象の缶の中心軸Aの延長線上)に設ければよい。ただ、読取の正確性を向上させるという観点からは、前記のとおり、読取手段4は4つ以上が好ましく、例えは、6つ以上であってもよい。
【0045】
なお、本実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【実施例
【0046】
次に、実施例を例示して、本発明に係る缶識別システム、缶識別方法、及び、缶について説明する。
【0047】
生産ライン上を図1に示す缶1について、缶同士が接している状態で単列で連続的に搬送し、図3、4に示す缶識別システムSを用いて缶1の識別を実施した。なお、対象の缶1は、水洗後であって、水滴が僅かに缶体表面に残っている状態のものであった。
一部の缶1については、読取手段4で読取処理を実施する前の缶1にエアブローを実施せず、残りの缶1については、読取手段4で読取処理を実施する前の缶1にエアブローを実施した。
なお、読取手段4としては市販のコードリーダーを使用した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果から、エアブローを実施しなくとも、誤識別率は十分に低減できているものの、エアブローを実施することによって、誤識別率を大幅に低減できることが確認できた。
【符号の説明】
【0050】
1 缶
2 ネック部
3 識別コード
4 読取手段
5 識別手段
S 缶識別システム
A 缶の中心軸(鉛直線)
L 光軸
θ 読取手段の光軸と読取対象である缶の中心軸とのなす角(°)
α 缶のネック部の傾斜角(°)
図1
図2
図3
図4
図5