(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/40 20060101AFI20231109BHJP
A47C 1/02 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
A47C7/40
A47C1/02
(21)【出願番号】P 2019158699
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 友希
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙介
(72)【発明者】
【氏名】森田 凌伍
(72)【発明者】
【氏名】橋本 実
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-167577(JP,A)
【文献】特開2007-301339(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0128902(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/40
A47C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに分離した座と背もたれ、及び、前記背もたれが取り付いた左右の前向きアーム部とを有しており、前記前向きアーム部は、前記座よりも高い位置に配置されていて、前記座の左右側方に配置されたサイド支持体に後傾動可能に連結されている構成であって、
前記左右のサイド支持体は、支柱部の上端に前後長手の上水平状部が設けられた側面視略T形又は逆L形に形成されており、
前記上水平状部に、正面視下向き開口コ字形で上板を有する上部受けブラケットが固定されている一方、
前記前向きアーム部には、前記上部受けブラケットで囲われた空間に入り込む押動ブラケットが設けられていて、前記押動ブラケットの後部が前記上部受けブラケットに左右長手の支軸で連結されていると共に、前記押動ブラケットと前記上部受けブラケットの上板とのうち前記支軸よりも手前の部位に弾性体が配置されて、前記押動ブラケットが前記上部受けブラケットの上板に当たることによって前記前向きアーム部の下向き回動角度が規制されており、
かつ、前記上水平状部又はこれに固定された下部受けブラケットに、前記押動ブラケットのうち前記支軸よりも手前の部位を下方から支持して前記前向きアーム部が上向き回動することを規制する基準姿勢支持部を設けている、
椅子。
【請求項2】
前記サイド支持体の上水平状部のうち後ろ側の部位に、前記下部受けブラケットが固定された平坦部が段落ちした状態に形成されて、前記平坦部の箇所に前記上部受けブラケットと弾性体とが配置されている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記平坦部の箇所に正面視上向き開口コ字型の前記下部受けブラケットが固定されており、前記押動ブラケットは、前記上部受けブラケットと下部受けブラケットとに前記支軸で連結されている、
請求項2に記載した椅子。
【請求項4】
前記平坦部の手前の部位に、前記上部受けブラケットが固定され
たブロック部が、前記平坦部から立ち上がった状態に形成されて
おり、前記上部受けブラケットの前端部と前記下部受けブラケットの前端部とが前記ブロック部に左右長手のフロント軸で連結されている、
請求項3に記載した椅子。
【請求項5】
前記前向きアーム部はパイプ材から成っている一方、
前記押動ブラケットには、前記前向きアーム部に密嵌するボス部が後ろ向きに突設されている、
請求項1~4のうちのいずれかに記載した椅子。
【請求項6】
前記前向きアーム部の前端部と前記サイド支持体の上水平状部とが、前後方向に一連に延びる1つの保護カバーで覆われており、前記上部受けブラケットは前記保護カバーで覆われている、
請求項1~5のうちのいずれかに記載した椅子。
【請求項7】
互いに分離した座と背もたれ、及び、前記背もたれが取り付いた左右の前向きアーム部とを有しており、前記前向きアーム部は、前記座よりも高い位置に配置されていて、前記座の左右側方に配置されたサイド支持体に後傾動可能に連結されている構成であって、
前記左右のサイド支持体は、支柱部の上端に前後長手の上水平状部が設けられた側面視略T形又は逆L形に形成されている一方、
前記前向きアーム部の前端には、平面視で前記上水平状部と重なる押動ブラケットが設けられていて、前記上水平状部に、前記押動ブラケットが入り込む段落ち部又は空洞部が形成されており、
前記押動ブラケットの前端部が、軸心が平面視で前記支柱部と重なるように配置された左右長手の支軸によって前記上水平状部に連結されて、前記段落ち部又は空洞部に、前記押動ブラケットの後傾動に抵抗を付与する弾性体が配置されており、
かつ、前記押動ブラケットの下向き回動角度は前記上水平状部によって直接に規制されて、前記押動ブラケットの上向き回動は、前記上水平状部によって直接に又は当該上水平状部に固定された上部受けブラケットを介して規制されている、
椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ロッキング機能を有する椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の構造は千差万別であって様々な基準によって分類できるが、1つの基準として、背もたれがロッキング機能を有するか否かで分類できる。パイプ椅子と呼ばれる簡単な構造の場合は、ロッキング機能を備えていないことが多い。また、座を高さ調節可能な回転椅子においても、ロッキング機能を備えていないことは多い。
【0003】
そこで、できるだけ簡単な構造で背もたれにロッキング機能を持たせることが提案されている。その例として特許文献1には、座の左右両側方に立設したサイド支柱の上端に、上部支持フレームを介して背もたれを後傾動可能に連結することが開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1において、上部支持フレームは、左右の前向きアーム部とその後端に繋がったリア部とを有していて平面視略U形になっており、リア部に背もたれを固定している一方、サイド部の前端が、サイド支持体の上端部に連結されている。特許文献1では、背もたれの後傾動に抵抗を付与する弾性体は、サイド部とサイド支持体との連結部に内蔵されていると推測される。
【0005】
他方、特許文献2に記載された椅子は、背もたれと座とが一体に連続したタイプにおいて、座の左右両側に、上端を前後長手の上水平状部と成した側面視T形のサイド支持体が配置されており、上水平状部の前部で座を前後動可能に吊支し、上水平状部の後部に、背もたれが上部支持フレームを介して後傾動可能に連結されている。
【0006】
特許文献2において、上部支持フレームは、左右の前向きアーム部とその後端に繋がったリア部とを有して背もたれを後ろから囲う形態になっており、前向きアーム部の前端に、サイド支持体の上水平状部に連結された可動ばね受けが固定されており、可動ばね受けと上水平状部との間にばねが配置されている。従って、サイド支持体の上水平状部は受けブラケットになっている。
【0007】
また、特許文献3では、座の左右に配置した肘当てフレームの後端を背もたれの側面部まで延長して、肘当てフレームの後端に背もたれを後傾動可能に連結している。この特許文献3において、肘当てフレームはパイプ材で構成されており、その内部に、背もたれの後傾動に対して抵抗を付与する板ばねが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】意匠登録第1627516号公報
【文献】特開2007-167577号公報
【文献】実開昭61-129558号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の椅子はシンプルでありながらロッキング機能を有しており、デザイン面と機能の面とで優れていると解されるが、サイド支持体は背もたれを連結する機能しか持たないため、機能的に十分とは言い難いと云える。
【0010】
他方、特許文献2の椅子は、サイド支持体の上水平状部は前後方向に長いため、これを肘当てとして使用することが可能であり、それだけ機能面で優れている。また、特許文献2では、人が椅子に腰掛けたり椅子から立ち上がったりするに際して、上水平状部を掴んで身体を支えることも可能であり、この面でも特許文献2はユーザーフレンドリーである。
【0011】
しかし、特許文献2は、背もたれと座とが一体に繋がったタイプを前提にしているため、背もたれと座とが分離したタイプの椅子にはそのままでは適用できないという問題がある。
【0012】
また、特許文献3は、シンプルな外観でありながら肘当て機能とロッキング機能を備えており、デザイン性と機能性とを併有していると云えるが、ばねなどの部材が肘当てフレームの内部に配置されているため、組み立てに手間がかかることが懸念される。
【0013】
本願発明はこのような現状を契機として成されたものであり、シンプルな外観でありながらロッキング機能を備えた椅子において、機能性の向上や組み立ての容易性、強度の向上など、品質を向上させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その典型例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は、
「互いに分離した座と背もたれ、及び、前記背もたれが取り付いた左右の前向きアーム部とを有しており、前記前向きアーム部は、前記座よりも高い位置に配置されていて、前記座の左右側方に配置されたサイド支持体に後傾動可能に連結されている」
という基本構成において、
「前記左右のサイド支持体は、支柱部の上端に前後長手の上水平状部が設けられた側面視略T形又は逆L形に形成されており、前記上水平状部に、正面視下向き開口コ字形で上板を有する上部受けブラケットが固定されている一方、
前記前向きアーム部には、前記上部受けブラケットで囲われた空間に入り込む押動ブラケットが設けられていて、前記押動ブラケットの後部が前記上部受けブラケットに左右長手の支軸で連結されていると共に、前記押動ブラケットと前記上部受けブラケットの上板とのうち前記支軸よりも手前の部位に弾性体が配置されて、前記押動ブラケットが前記上部受けブラケットの上板に当たることによって前記前向きアーム部の下向き回動角度が規制されており、
かつ、前記上水平状部又はこれに固定された下部受けブラケットに、前記押動ブラケットのうち前記支軸よりも手前の部位を下方から支持して前記前向きアーム部が上向き回動することを規制する基準姿勢支持部を設けている」
という構成が付加されている。
【0015】
請求項2の発明は請求項1の展開例であり、
「前記サイド支持体の上水平状部のうち後ろ側の部位に、前記下部受けブラケットが固定された平坦部が段落ちした状態に形成されて、前記平坦部の箇所に前記上部受けブラケットと弾性体とが配置されている」
という構成になっている。
【0016】
請求項3の発明は請求項2の発明の展開例であり、
「前記平坦部の箇所に正面視上向き開口コ字型の前記下部受けブラケットが固定されており、前記押動ブラケットは、前記上部受けブラケットと下部受けブラケットとに前記支軸で連結されている」
という構成になっている。
【0017】
請求項4の発明は請求項3を具体化したものであり、
「前記平坦部の手前の部位に、前記上部受けブラケットが固定されたブロック部が、前記平坦部から立ち上がった状態に形成されており、前記上部受けブラケットの前端部と前記下部受けブラケットの前端部とが前記ブロック部に左右長手のフロント軸で連結されている」
という構成になっている。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1~4のうちのいずれかにおいて、
「前記前向きアーム部はパイプ材から成っている一方、
前記押動ブラケットには、前記前向きアーム部に密嵌するボス部が後ろ向きに突設されている」
という構成になっている。
【0019】
請求項6の発明では、請求項1~5のうちのいずれかにおいて、「前記前向きアーム部の前端部と前記サイド支持体の上水平状部とが、前後方向に一連に延びる1つの保護カバーで覆われており、前記上部受けブラケットは前記保護カバーで覆われている」という構成になっている。
請求項7の発明は、請求項1と同じ基本構成において、
「前記左右のサイド支持体は、支柱部の上端に前後長手の上水平状部が設けられた側面視略T形又は逆L形に形成されている一方、
前記前向きアーム部の前端には、平面視で前記上水平状部と重なる押動ブラケットが設けられていて、前記上水平状部に、前記押動ブラケットが入り込む段落ち部又は空洞部が形成されており、
前記押動ブラケットの前端部が、軸心が平面視で前記支柱部と重なるように配置された左右長手の支軸によって前記上水平状部に連結されて、前記段落ち部又は空洞部に、前記押動ブラケットの後傾動に抵抗を付与する弾性体が配置されており、
かつ、前記押動ブラケットの下向き回動角度は前記上水平状部によって直接に規制されて、前記押動ブラケットの上向き回動は、前記上水平状部によって直接に又は当該上水平状部に固定された上部受けブラケットを介して規制されている」
という構成になっている。
【0020】
本願発明において、脚装置は様々な形態を採用できる。例えば、ガスシリンダより成る脚柱を備えた形態を採用できる。すなわち、回転椅子に適用できる。或いは、4本足方式のような非回転式椅子にも適用できる。
【発明の効果】
【0021】
◎請求項1の効果
本願各発明では、サイド支持体の上水平状部は前後方向に長い形態であるため、この上水平状部を、使用者が着座・離席に際して手で掴んで身体を支える掴み部として機能させることができる。また、肘当てとして機能させたりすることも可能になる。従って、ユーザーフレンドリーである。
【0022】
そして、ブラケットは外付け方式であるため、上水平状部に対する取り付けは容易である。また、寸法や形状の選択の自由性が高いため、必要な強度も確保できるような設計も容易である。
【0023】
ロッキング椅子において、押動ブラケットは必須の要素であり、弾性体を上水平状部で支持して、これを押動ブラケットで圧縮変形させるという構成も可能であるが、この場合は、上水平状部や押動ブラケットの形状などが制約を受けるおそれがある。これに対して、本願発明のように弾性体を上部受けブラケットで支持する構成を採用すると、弾性体の配置位置などの自由性を格段に向上させて、設計のバリエーションを拡大できる。
【0025】
本願発明のように上下の受け部材を設けると、押動ブラケットの連結や弾性体の支持などの機能を上下の受けブラケットに保持させることができるため、上水平状部の加工を必要最小限度に抑えることができる。そして、上下の受けブラケットは、板金加工等によって必要な強度に容易に製造できるため、コストや強度面でも有利である。
【0026】
◎請求項4の効果
特に、請求項4の構成を採用すると、上下の受けブラケットを単純な溝形に形成しつつ、上水平状部に容易に固定することができて好適である。また、弾性体は予備圧縮しておく必要があるが、請求項4では、上部受けブラケットを上水平状部のブロック部にビスで固定することによって弾性体を圧縮させることが可能になるため、組み立ての手間の軽減に更に貢献できる。
【0027】
◎請求項5の効果
押動ブラケットを前向きアーム部に一体的に形成することも可能であるが、この場合は加工にかなりの手間が掛かることが予想される。これに対して請求項5のように押動ブラケットと前向きアーム部とを別体に製造してから互いに嵌着する構成を採用すると、全体として加工の手間を抑制できる。また、前向きアーム部は金属パイプ製であるため、軽量化しつつ高い強度を確保できる。
【0028】
背もたれのロッキングに対して抵抗を付与する弾性体としては、コイルばねや板ばね、或いは、リング状に巻かれた線材が軸心回りに変形するねじりばねなどのばね体も採用できるが、実施形態のように樹脂製(樹脂系)ゴムを採用すると、狭いスペースにも配置できるため好適である。また、ばね体の場合、プリ変形させたときに、滑り等によってばね体が飛散してしまうことがあるが、発泡ウレタン系エラストマ等の樹脂製ゴムの場合は予備圧縮しても飛散することはないため、組み立てを行いやすい利点もある。
【0029】
◎請求項6の効果
請求項6のように保護カバーを設けると、ブラケットは外観を気にすることなく強度等を保持できるように設計できる。従って、美観を確保しつつ、上記の効果を享受できる。また、ブラケットに人の手が触れることはないため、安全性の面でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態に係る椅子の外観を示す図で、(A)は前上方から見た斜視図、(B)は部分正面図、(C)は後ろ上方から見た斜視図、(D)は後ろ下方から見た斜視図である。
【
図2】(A)は脚装置を省略した平面図、(B)は側面図、(C)は背面図である。
【
図3】(A)はロッキング前の状態での部分側面図、(B)はロッキング状態での側面図である。
【
図4】上部支持フレームの連結構造を示す図で、(A)はカバーを分離した斜視図、(B)は上部支持フレームを分離した斜視図である。
【
図5】上部支持フレームの連結構造を示す図で、(A)は前上方から見た分離斜視図、(B)は後ろ上方から見た分離斜視図である。
【
図8】(A)(B)は脚柱のロック解除操作部を前上方から見た分離斜視図、(C)は右側のサイド支持体を下方から見た部分斜視図である。
【
図10】(A)は第3実施形態の断面図、(B)は第4実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、この方向は椅子に普通に着座した人から見た状態を基準にしている。正面視方向は、着座者と相対向した方向である。まず、
図1~7に示す第1実施形態(主たる実施形態)を説明する。
【0032】
(1).椅子の概要
まず、
図1~3を参照して椅子の概要を説明する。
図1に示すように、椅子は、基本的な要素として、脚装置1と座2と背もたれ3とを備えている。脚装置1は、複数本(5本)の枝アームを有する接地体4の中央部にガスシリンダより成る脚柱5を立設した構造であり、各アームの先端にはキャスタを設けている。従って、本実施形態は回転椅子に適用している。
【0033】
図1(D)に示すように、脚柱5の上端に、底面視(及び平面視)で略四角形のベース6が固定されている。ベース6には座受け部材7が前後スライド自在に装着されており、座受け部材7の上面に座2が取り付けられている。ベース6は例えばアルミダイキャスト品であり、座受け部材7は例えば合成樹脂の成型品である。
【0034】
座受け部材7は、弾性体の一例としてのばねによって後退位置に付勢されており、ロッキングに際して着座者の身体が伸び勝手になると、座2及び座受け部材7は臀部で押されて前進し得る。
図3において、座2が前進した状態を表示している。
図3の(A)と(B)との比較から理解できるように、本実施形態では、座受け部材7及び座2は、僅かながら上昇しつつ前進する。
【0035】
椅子は、座2よりも高い位置において着座者を後ろから囲うように配置された上部支持フレーム8を備えている。従って、上部支持フレーム8は、正面視で背もたれ3(及び着座者)の左右側方に位置する左右の前向きアーム部(サイド部)8aと、着座者の後ろに位置するリア部8bとを有しており、リア部8bに、背もたれ3が後傾動可能に連結されている。
【0036】
当然のことであるが、背もたれ3はリア部8bの手前に配置されている。上部支持フレーム8は、スチール管のような金属パイプで製造されているが、角形鋼管や金属製の丸棒又は角棒で製造することも可能である。
【0037】
実施形態の背もたれ3は、着座者の身体を後ろから抱持するように平面視で後ろ向きに膨れた(前向きに凹んだ)形状に湾曲しており、上部支持フレーム8のリア部8bは、背もたれ3の湾曲に倣うように湾曲している。
【0038】
すなわち、平面視において、上部支持フレーム8のリア部8bと背もたれ3の後面とは相似形になっている。更に、前向きアーム部8aもリア部8bと滑らかに連続するように湾曲しており、結果として、上部支持フレーム8は、全体として円弧に近い形態に湾曲している。そして、
図2に明示するように、上部支持フレーム8と背もたれ3との間には、ある程度の間隔Eの隙間が空いている。また、上部支持フレーム8は、全体として水平姿勢になっている。
【0039】
上部支持フレーム8の左右前向きアーム部8aは、座2の左右側方に配置されたサイド支持体9に後傾動可能に連結されている。サイド支持体9は、例えばアルミダイキャスト品であり、上下長手で板状の支柱部9aと、その上端に一体に形成された前後長手で略円形の上水平状部9bとを有している。そして、上水平状部9bの後部に、上部支持フレーム8の前向きアーム部8aが弾性に抗して後傾動するように連結されている。上水平状部9bは、エラストマ系の保護カバー10で覆われている。
【0040】
サイド支持体9の支柱部9aには、座2の下方に回り込んだ基部9cが一体に形成され方おり、基部9cの先端部が、ベース6に形成された係合穴11(
図1(D)や
図2(B)参照)に嵌め込まれており、先端部がボルトでベース6に固定されている。
【0041】
既述のとおり、脚柱5はガスシリンダより成っており、ガスシリンダのロックを解除すると、座2及び背もたれ3の高さを自在に調節できる。そして、例えば
図1(A)(C)に明示するように、右側のサイド支持体9の上水平状部9bに、ガスシリンダのロックを解除するための摘み(ノブ)12が、上水平状部9bの軸心回りに回転させ得るように装着されている。摘み12は左右いずれの方向にも回転可能であり、いずれの方向に回転させてもガスシリンダのロックが解除される。
【0042】
図2(A)(B)に一点鎖線で示すように、サイド支持体9の上水平状部9bに肘当て13を取り付けることも可能である。
図1(B)におおまかに示すように、背もたれ3は、合成樹脂製の背インナーシェル(背板)14aとその前面に張られた背クッション14bとを備えており、かつ、全体がクロス等の表皮材14cで覆われている。従って、表皮材14cは袋状になっている。
【0043】
例えば
図1(C)(D)に示すように、背インナーシェル14aのうち下寄り部位でかつ左右箇所の部位に後ろ向きに開口した角形凹所15が形成されており、角形凹所15に配置した連結ユニット16により、背もたれ3が上部支持フレーム8のリア部8bに後傾動自在に連結されている。従って、連結ユニット16は、支軸やばね受けを備えており、背もたれ3は、ゴム質弾性体に抗して後傾動する。
【0044】
図3に示すように、本実施形態では、着座者が背もたれ3にもたれ掛かると、まず、上部支持フレーム8がサイド支持体9に対して後傾することによって第1段階のロッキングが行われ、次いで、着座した人が上半身を後ろに反らせると、背もたれ3は上部支持フレーム8に対して後傾動し、第2段階のロッキングが行われる。
【0045】
従って、上部支持フレーム8の回動角度及び背もたれ3の回動角度がさほど大きくなくても、全体としての後傾角度を大きくできる。従って、簡易な構造でありながら、着座者に高い安楽性を付与できる。
図3(A)及び
図2(A)に示すように、背もたれ3の回動軸心O1は、背もたれ3の後面よりも手前でかつ背もたれ3の下端寄り部位に位置している。
【0046】
(2).上部支持フレームの取り付け構造
次に、サイド支持体9に対する上部支持フレーム8の連結構造を、主として
図4~6を参照して説明する。既述のとおり、右側のサイド支持体9には脚柱5(ガスシリンダ)のロック解除するための操作部材を配置している。このため、左右のサイド支持体9は構造が少し相違しているが、上部支持フレーム8の連結構造は左右において共通している。ここでは、摘み12を備えていない左側の部位を取り上げて説明する。
【0047】
図5に明示するように、上部支持フレーム8の前向きアーム部8aに、左右の上向き側板18aを有する押動ブラケット18が固定されている。押動ブラケット18は、上向き側板18aを有するチャンネル状の部分と、その後ろに位置したボス部19とを備えており、ボス部19が、上部支持フレーム8の前向きアーム部8aに溶接によって固定されている。ボス部19の付け根部には、上部支持フレーム8の前端面に当たるフランジ20が一体に形成されている。押動ブラケット18は、スチールの鋳造品が採用されている。
【0048】
図5に示すように、サイド支持体9の上水平状部9bのうちのその略後半部に、段落ちした状態の平坦部21
(平坦状の段落ち部)が形成されており、平坦部21に、その前部に位置した角形のブロック部22と、ブロック部22の後ろに位置したタップ穴23とが形成されている。
【0049】
そして、平坦部21には、上向きの側板24aを有するチャンネル状の下部受けブラケット24が重ね配置されており、下部受けブラケット24は、タップ穴23にねじ込まれた下ビス25によって平坦部21に固定されている。下部受けブラケット24の前部には、ブロック部22との干渉を回避するための切り欠きが形成されており、下部受けブラケット24の側板24aはブロック部22の左右側方に位置している。
【0050】
下部受けブラケット24の内部には、下向き側板27aを有する上部受けブラケット27が上から嵌まり込んでいる。上部受けブラケット27はブロック部22を上から抱持しており、上下受けブラケット27,24における側板27a,24aの前部とブロック部22とが、左右長手のフロント軸28によって連結されている。上部受けブラケット27の前端には、下向き鉤部29が折り曲げ形成されている。上下受けブラケット24,27は、鋼板で作られている。
【0051】
更に、押動ブラケット18は上部受けブラケット27の内部に入り込んでおり、上下受けブラケット27,24における側板27a,24aの後部と、押動ブラケット18における側板18aの後部とが、左右長手の支軸30によって連結されている。そして、押動ブラケット18と上部受けブラケット27との間に、発泡ウレタン系エラストマのような樹脂系ゴムによってブロック状に形成された弾性体31を挟み込んでいる。
【0052】
上下の受けブラケット27,24は回動不能に固定されている一方、押動ブラケット18は1本の支軸30で連結されており、かつ、押動ブラケット18の左右側板18aに、手前に向けて低くなる傾斜部32を形成している。従って、上部支持フレーム8は、弾性体31を変形させて、支軸30の軸心回りに、傾斜部32と上部受けブラケット27との広がり角度θだけ後傾動し得る。従って、押動ブラケット18の最大後傾角度は上部受けブラケット27の上板で規制される。弾性体31は予備圧縮されている。
【0053】
押動ブラケット18は弾性体31によって下向きに付勢されており、下部受けブラケット24の底板によって下方から支持されている。換言すると、押動ブラケット18が弾性体31に押されて前傾(上向き回動)することは、下部受けブラケット24によって阻止されており、これにより、弾性体31が圧縮された状態で、背もたれ3は基準姿勢に保持されている。従って、本実施形態では、下部受けブラケット24が請求項に記載した基準姿勢支持部を有している。
【0054】
図6に示すように、上部受けブラケット27とブロック部22とフロント軸28は、上方からフロント軸28にねじ込まれたフロントビス33によって固定されており、押動ブラケット18と支軸30とは、上方から支軸30にねじ込まれたリアビス34によって固定されている。
【0055】
図6に明示するように、下部受けブラケット24には、下ビス25の頭が入り込む下向き突部24bを下向きに膨出形成しており、これに対応して、上水平状部9bの平坦部21には、下向き突部24bが入り込む凹部21aを形成している。
【0056】
サイド支持体9の上水平状部9bは、既述の保護カバー10で覆われている。
図5(B)に明示するように、保護カバー10の後部は完全な筒部10aになっていて、その後ろには下向きの開口35が形成されている。また、保護カバー10の内部には、前後長手の多数のリブ36(
図5(B)参照)が形成されている。
【0057】
(3).上部支持フレームの取り付け構造の変形例
図7では、上水平状部9bの形態や上部支持フレーム8の連結構造等の変形例を示している。この変形例では、まず、上水平状部9bは角形になっており、ブロック部22は平面視でU形になっている。また、この実施形態でも上下の受けブラケット27,24を有しているが、
図5のフロント支軸28は備えていない。上部受けブラケット27には、弾性体31をずれ不能に保持する上向き膨出部27bを形成している。
【0058】
また、この変形例では、保護カバー10は前向きに開口しており、開口35の手前の部位は下向きに開口したフロントスリット10cによって分断されている。そして、保護カバー10の前面は樹脂製のフロントキャップ70で塞がれている。フロントキャップ70には、後ろ向きに突出した下部リブ70aと、それよりも左右幅が大きい上部リブ70bとが一体に形成されている。
【0059】
他方、保護カバー10の前部には、上水平状部9bの前面に重なる壁10eを形成して、保護カバー10の壁10eとサイド支持体9の上水平状部9bとに、フロントキャップ70の上部リブ70bが嵌入する凹所10f,71を形成している。フロントキャップ70における上部リブ70bの後端には、係合爪70cを形成しており、係合爪70cは、上水平状部9bの内部に形成した係合部72に係合する。これにより、フロントキャップ70は抜け不能に保持される。
【0060】
フロントキャップ70の下リブ70aは、その上半部は保護カバー10のフロントスリット10c及び上水平状部9bの切り開き溝73に嵌入する。そして、フロントキャップ70の下リブ70aの下半部は左右に広がった傘部になっており、保護カバー10のうちフロントスリット10cの両側の部位は、下リブ70aの傘部が下方から覆われている。従って、保護カバー10の前部に下方から人の指先が当たっても、保護カバー10が捲れることはない。
【0061】
保護カバー10は射出成型法によって製造されるが、前向き開口の形態でかつフロントスリット10cを有することにより、容易に型抜きできる状態で製造できる一方、フロントスリット10cを挟んだ両側がフロントキャップ70の下リブ70aで覆われているため、人の指先が当たることによる捲れを防止できる。なお、保護カバー10は、金型を使用して成型してから、弾性変形させて型抜きするが、フロントスリット10cの存在により、容易に型抜きできる状態に変形させることができる。
【0062】
(4).上部支持フレームの取り付け構造のまとめ
さて、椅子が肘当て機能を有していると、ユーザーフレンドリーである。また、椅子が肘当てを有している場合、椅子に腰掛けたり立ち上がったりするに際して、肘当てに手を掛けて(肘当てを手で掴んで)立ち上がったり腰を降ろしたりすることがあるが、肘当てと云えなくとも、椅子への腰掛けや立ち上がりに際して体重を支える部材があると便利である。
【0063】
そして、サイド支持体9の上水平状部9bは、基本的な機能として上部支持フレーム8の連結機能を有しており、上部支持フレーム8を後傾可能に連結するための上水平状部9bを利用して、肘当てとして機能させたり、使用者の着座・立ち上がりに際しての掴み部材として機能させたりすることができるため、構造が複雑化することはない。従って、コストを抑制できると共に、シンプルさを維持して美観においても優れている。
【0064】
また、上水平状部9bは前後方向に長いため、上部支持フレーム8を後傾動可能に連結するに当たって、部材の配置スペースを確保することができる。従って、上部支持フレーム8を必要な強度で上水平状部9bに連結できる。実施形態のように保護カバー10を設けると、上部受けブラケット27等の配置に制約がなくなるため、特に好適である。
【0065】
受けブラケット24,27は押動ブラケット18及び上部支持フレーム8とは別体であり、上水平状部9bに外側から(上から)取り付けられるため、上部支持フレーム8の組み付け作業を容易に行える。
【0066】
着座した人が背もたれ3にもたれ掛かると、押動ブラケット18には、支軸30よりも手前の部分を上向き動させようとする大きなモーメントが作用する。従って、上部受けブラケット27は上向きの大きな力を受ける。
【0067】
然るに、上部受けブラケット27は、その前部はフロント軸28によって上水平状部9bのブロック部22に連結されている一方、後部は、上水平状部9bに下ビス25で固定された下部受けブラケット24に支軸30で連結されているため、上向きの荷重に対して極めて高い抵抗を発揮する。従って、上水平状部9bの後半部に連結部を組み込んだコンパクトな構造でありながら、背もたれ3は極めて高い支持強度を有している。
【0068】
また、上部受けブラケット27が押動ブラケット18によって上向きに押されると、下部受けブラケット24も上向きに引かれるが、下部受けブラケット24は、弾性体31の下方に位置した下ビス25によって上水平状部9bに固定されているため、上向き移動が阻止される。結果として、上部受けブラケット27の上向き動も阻止される。この面でも、本実施形態では、上部支持フレーム8の連結部は高い強度を有している。
【0069】
(5).脚柱ロック解除用ケーブルの配置構造
次に、
図8を参照して、ロック解除操作部を説明する。右側のサイド支持体9の前面には、溝キャップ38で塞がれた長溝39が全長に亙って形成されており、長溝39に、操作ケーブル40が配置されている。
【0070】
操作ケーブル40はよく知られたものであり、チューブ41とその内部に摺動自在に挿通されたワイヤー42とを備えており、ワイヤー42の両端部をチューブ41の外側に露出させて、露出部の先端にボール43を固定している。また、チューブ41の両端部には、環状溝を有する係止体44が固定されている。既述のとおり、摘み12を回転させるとワイヤー42の一端部が引っ張られて、脚柱5のロックが解除される。
【0071】
溝キャップ38は、長溝39に嵌入した内向きの突条38aを備えており、突条38aが、長溝39に適宜間隔で配置された複数のホルダー45によって左右から挟み保持されている。
【0072】
摘み12は合成樹脂製であり、サイド支持体9における上水平状部9b(及び保護カバー10)の手前に露出した操作部48と、サイド支持体9における上水平状部9bの内部に入り込んだボス体49とを有しており、操作部48には、ゴム質等の軟質材から成るキャップ50が相対回転不能に嵌着している。
【0073】
ボス体49は操作部48よりも小径になっており、ボス体49のうち摘み12に近い部位には、摩擦が小さくて耐磨耗性に優れた樹脂より成る軸受ブッシュ52が嵌まっている。従って、ボス体49は、軸受ブッシュ52を介してサイド支持体9の上水平状部9bに回転自在に保持されている。
【0074】
ボス体49のうち軸受ブッシュ52の後ろの部位に環状溝53が形成されており、この環状溝53に、上部受けブラケット27の前端に形成した下向き鉤部29が上から嵌入している。従って、摘み12は、上部受けブラケット27の下向き鉤部29によって、前後移動不能で回転可能に保持されている。
【0075】
摘み12のボス体49には、ボール保持溝54とこれに連通したワイヤー挿通溝(図示せず)とが後ろ向きに開口するように形成されており、かつ、ワイヤー挿通溝と連通したワイヤー保持溝55が外周面に開口するように形成されている。そして、摘み12を左右いずれかに回転させると、ボール43が上向きに移動することによってワイヤー42が引かれて、脚柱5のロックが開示される。
【0076】
溝キャップ38の上端に前向きに突出したヘッド部38bが形成されており、ヘッド部38bに前向き突出部38cが形成されている。一方、サイド支持体9の上水平状部9bには、溝キャップ38のヘッド部38bが嵌入する切り開き溝58形成されて、保護カバー10の前端部には、溝キャップ38の前向き突出部38cが嵌入する割溝59が形成されている。
【0077】
摘み12が配置されている右側の上水平状部9bの前端には小径部9dが形成されており、これに伴って、保護カバー10の前端部にも小径部10bが形成されている。そして、保護カバー10の小径部10bにリング68を嵌着している。従って、保護カバー10の前端部は、リング68によって開き不能に保持されている。
【0078】
(6).上部支持フレーム及び摘みの取り付け手順
上部支持フレーム8の連結は、例えば次の手順で行われる。すなわち、まず、前工程として、押動ブラケット18は上部支持フレーム8の前向きアーム部8aに予め固定されている一方、サイド支持体9はベース6に固定されている。また、保護カバー10は予め上部支持フレーム8の前向きアーム部9に嵌め込まれている。
【0079】
そして、上下の受けブラケット27,24と押動ブラケット18とにリア支軸60を挿通し、押動ブラケット18と上部受けブラケット27との間に弾性体31を嵌め入れる。それから、上水平状部9bに下部受けブラケット24をビス33で固定し、次いで、
図7の例では、上部受けブラケット27をフロントビス33で角形のブロック部22に固定する。フロントビス33を角形のブロック部22にねじ込むと、弾性体31と徐々に加圧されて予備圧縮される。
【0080】
図5の例では、下部受けブラケット24と押動ブラケット18との間に弾性体31を挟み込んでから、上部受けブラケット27を人手又は治具によって下方に押すことによって弾性体31を予備圧縮し、その状態でフロント軸28を挿通して上下受けブラケット27,24とブロック部22とを連結する。いずれにしても、上水平状部9bへの支持フレーム8の連結が終えてから、保護カバー10を手前に移動させて所定の状態に嵌め込む。
【0081】
摘み12の取付けは、次の手順で行われる。まず、操作ケーブル40はベース6の係合穴11から外側に引き出されており、その状態でベース6へのサイド支持体9の取り付けが行われる。そして、ワイヤー42の上端に摘み12を係止してから、サイド支持体9の長溝39に操作ケーブル40を嵌め込むと共に、摘み12を上水平状部9bに嵌め込み、次いで、溝キャップ38を長溝39及び摘み12に装着し、それから保護カバー10を装着してリング68を嵌め込み、最後に、摘み12にキャップ50を装着する。
【0082】
摘み12を設けている箇所では、摘み12を上水平状部9bに挿入してから、上下受けブラケット27,24を固定し、それから、上下受けブラケット27に設けた下向き鉤部29を摘み12の環状溝53に嵌め入れることになる。
【0083】
(7).他の実施形態
図9では第2実施形態を示している。この実施形態では、ブラケットは、下向きに開口した押動ブラケット18のみで構成されており、押動ブラケット18は、ブロック部22に支軸30によって連結されている。そして、支軸30の後ろに弾性体31が配置されていて、弾性体31は
平坦部21にずれ不能に載置されている。従って、本実施形態では、弾性体31は押動ブラケット18の回動支点の
後方に配置されている。
支軸30は、平面視で支柱部9aとは重なるように配置されている。
【0084】
押動ブラケット18は、下向きに開口した上部受けブラケット(押さえ部材)60により、弾性体31を予備圧縮した状態で上向き回動しないように保持されている。上部受けブラケット60は上板と左右の側板60aを備えており、後部はフロントビス61によって上水平状部9bに固定されて、後部はリアビス62によって上水平状部9bに固定されている。支軸30は上部受けブラケット60によって抜け不能に保持されている。また、上部受けブラケット60には、押動ブラケット18に当接する下向き膨出部60bを形成している。
【0085】
上水平状部9bの左右側面には、押動ブラケット18の側板18aが回動することを許容する逃がし段部63が形成されている。また、上部受けブラケット60は保護カバー10によって全体が覆われている。
【0086】
図10(A)では第3実施形態を示している。この第3実施形態では、押動ブラケット18は例えば真鍮を材料にしたダイキャスト品であり、後ろ向き部と下向き部18bを有するL形に形成されており、コーナー部が支軸30によって上水平状部9bに連結されている。従って、サイド支持体9には、押動ブラケット18が部分的に入り込む空洞部64を後ろ向きに開口するように形成している。
【0087】
弾性体31として樹脂系のものを使用しており、弾性体31は、押動ブラケット18の下向き部18bとサイド支持体9における空洞部64の底面との間に配置されている。空洞部64の底面には、弾性体31のずれを防止する突起65を設けている。押動ブラケット18のうちサイド支持体9の空洞部64に入り込んだ部分は断面角形になっており、ボス部19は断面円形になっている。
【0088】
この実施形態でも、押動ブラケット18は上部支持フレーム8とは別部材になっており、上部支持フレーム8の前向きアーム部8aはリアビス34によって押動ブラケット18のボス部19に固定されている。この実施形態では、押動ブラケット18の上向き回動は空洞部64の上内面で規制されて、押動ブラケット18の下向き回動は、空洞部64の前内面で規制される。支軸30の軸心は、平面視で支柱部9aと重なるように配置されている。
【0089】
図10(B)に示す第4実施形態では、押動ブラケット18は水平状に形成されており、その前端部が支軸30によってサイド支持体9の上水平状部9bに連結されている。従って、弾性体31は、押動ブラケット18の回動支点である支軸30よりも後ろに配置されている。そこで、サイド支持体9に後ろ向き張り出し部66を形成して、空洞部64を後ろ向き張り出し部66まで広げることにより、弾性体31の配置スペースを確保している。
【0090】
この実施形態では、弾性体31に、その上下両面に開口した中心穴67を形成すると共に、上面には上板68を重ねており、上板68に設けたねじ筒68aを中心穴67に上から挿通している。
【0091】
そして、後ろ向き張り出し部66に、ねじ筒68aにねじ込み可能なビス69aが下方から挿通される引き込み穴69を形成している。押動ブラケット18の組み付けに際しては、ビス69をねじ筒68aにねじ込んで弾性体31を圧縮させることにより、押動ブラケット18の連結を容易に行える。押動ブラケット18を連結したら、ビス69aは抜き外して弾性体31を弾性力によって復元させる。この実施形態では、押動ブラケット18の最大後傾角度は空洞部64の下内面で規制されて、押動ブラケット28の上向き回動は空洞部64の上内面で規制される。
【0092】
第3,4実施形態では、押動ブラケット18の一部は上水平状部9bの外側に露出しているため、他の実施形態と同様に組み立ては容易である。
【0093】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、各実施形態では押動ブラケットをダイキャスト品で構成したが、板金加工品も採用できる。弾性体としてトーションバーを使用することも可能である。また、実施形態では背もたれが上部支持フレームに後傾動可能に連結されているが、背もたれが上部支持フレームに固定された構造であってもよい。また、上部支持フレームのリア部は必ずしも存在する必要はないのであり、背もたれを構成する部材(例えば背インナーシェル)に前向きアーム部を一体に形成することも可能である。
【0094】
また、本願発明の適用対象である椅子は脚柱をガスシリンダで構成した回転椅子には限らないのであり、4本足方式のような非回転椅子にも適用できる。或いは、固定式の椅子にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本願発明は、椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0096】
1 脚装置
2 座
3 背もたれ
5 脚柱(ガスシリンダ)
8 上部支持フレーム
8a 前向きアーム部(サイド部)
8b リア部
8c コーナー部
9 サイド支持体
9a 支柱部
9b 上水平状部
10 保護カバー
18 押動ブラケット
19 押動ブラケットのボス部
21 平坦部
22 ブロック部
24 下部受けブラケット
27 上部受けブラケット
30 支軸
31 発泡ウレタン系エラストマより成る樹脂ゴム製弾性体
32 傾斜部