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特許7382182異形屋根材の製造方法及び異形屋根材の製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-08
(45)【発行日】2023-11-16
(54)【発明の名称】異形屋根材の製造方法及び異形屋根材の製造システム
(51)【国際特許分類】
   E04D 1/12 20060101AFI20231109BHJP
   E04D 1/16 20060101ALI20231109BHJP
【FI】
E04D1/12 F
E04D1/16 F ESW
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019161121
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021038585
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-213897(JP,A)
【文献】特許第3584022(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00- 3/40
E04D 13/00-15/07
B26D 5/00- 5/42
G06Q 10/00-99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状を有する標準屋根材を切断して異形屋根材を製造する方法であって、
前記異形屋根材に屋根面への設置位置を示す設置情報を付与するにあたり、前記標準屋根材の種類及び屋根面の各部位に応じて予め定められた前記異形屋根材の施工仕様により、前記異形屋根材が前記屋根面の各部位に設置された状態における非曝露部が予め定められており、
前記非曝露部の予め定められた範囲内に前記設置情報を付与するものであり、
前記設置情報が付与されるタイミングは、前記標準屋根材が切断される前である
異形屋根材の製造方法。
【請求項2】
所定の形状を有する標準屋根材を切断して得られ、屋根面への設置位置を示す設置情報を有する異形屋根材を製造する方法であって、
前記異形屋根材の形状は、前記異形屋根材の施工仕様により予め設定されている複数種の形状の中から選択され、
選択された前記形状に対応して予め設定された位置に前記設置情報が付与され、
前記設置情報が付与されるタイミングは、前記標準屋根材が切断される前であり、
前記形状に対応して予め設定された位置は、前記異形屋根材が前記屋根面に設置された状態で、前記屋根面に設置される屋根部材で、前記異形屋根材に付与された前記設置情報の少なくとも一部が覆われる位置である、
異形屋根材の製造方法。
【請求項3】
前記異形屋根材の施工仕様は予め設定されている複数種の形状を含み、当該複数種の形状は、前記屋根面の形状及び前記屋根面の勾配を含む屋根情報に基づいて決定される、
請求項1又は2に記載の異形屋根材の製造方法。
【請求項4】
前記異形屋根材の形状は、当該異形屋根材が設置される前記屋根面の形状及び前記屋根面の勾配を含む設置屋根情報に基づいて、前記複数種の形状の中から選択される、
請求項2又は3に記載の異形屋根材の製造方法。
【請求項5】
前記異形屋根材に付与された前記設置情報は、前記異形屋根材が前記屋根面に設置される時点において視認可能に前記異形屋根材の表面の色と同系色のインクで印刷したものである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の異形屋根材の製造方法。
【請求項6】
所定の形状を有する標準屋根材を切断する切断装置と、屋根面への設置位置を示す設置情報を付与する設置情報付与装置と、を備える異形屋根材の製造システムであって、
前記異形屋根材の施工仕様により予め設定されている複数種の形状の中から形状を選択する形状選択部と、
前記形状選択部で選択された前記形状に対応して予め設定されている位置を選択する位置選択部と、
前記位置選択部で選択された位置に前記設置情報を付与するように、前記設置情報付与装置を制御する制御部と、を備え
前記設置情報付与装置は、前記切断装置で前記標準屋根材を切断する前に、前記標準屋根材に前記設置情報を付与するようにしてなる、
異形屋根材の製造システム。
【請求項7】
前記設置情報付与装置は、インクジェットプリンタからなる印刷装置であり、前記異形屋根材に付与された前記設置情報が前記異形屋根材が前記屋根面に設置される時点において視認可能となるように前記異形屋根材の表面の色と同系色のインクで印刷する、
請求項に記載の異形屋根材の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形屋根材の製造方法及び異形屋根材の製造システムに関し、より詳細には、所定の形状を有する標準屋根材を切断して得られ、屋根面への設置位置を示す設置情報を有する異形屋根材の製造方法及び製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、屋根業界が抱える社会的課題として現場廃材や職人不足などがあげられる。これらの課題を解決するためには事前に屋根材をカットして現場納入することが有効である。
【0003】
特許文献1には、屋根材のプレカットシステムが記載されている。屋根材のプレカットシステムは、屋根施工において、現場における作業手間を削減するため、屋根材が配置される屋根面の形状等に基づき、予め工場等の施工現場以外でプレカットした屋根材を施工現場に搬入する技術に関するものである。
【0004】
特許文献1における屋根材のプレカットシステムは、演算データ取得手段と、屋根材配列位置計算手段と、加工情報生成手段とを備えている。演算データ取得手段は、建物設計データから、屋根部分の設計情報を抽出するものである。屋根材配列位置計算手段は、前記屋根部分の設計情報に基づいて、全ての屋根部分を多角形状の屋根面毎に区分して、屋根材の最適な配列位置を示す屋根材配列位置情報を計算し、プレカットすべき場所にある屋根材を特定する処理を実行するものである。加工情報生成手段は、前記屋根材配列位置計算手段により特定された屋根材を工場のプレカットラインで切断するためのプレカット材加工情報と、当該プレカット材に印刷される印字情報であって、プレカット材が使用される位置とプレカット材が存在する前記屋根面を示す情報と、前記屋根面の辺毎に配列方向と前記配列位置に対応するようにプレカット材を梱包するための自動梱包装置を制御する制御情報とを生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3584022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1における屋根材のプレカットシステムは、印刷情報がプレカット材の視認しにくい部分に印刷されると、プレカット材を施工する際に、屋根面に対するプレカット材の設置位置が判りにくく、施工現場での作業効率を向上させにくい場合があった。
【0007】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、施工現場での作業効率を向上させやすい異形屋根材の製造方法及び異形屋根材の製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る異形屋根材の製造方法は、所定の形状を有する標準屋根材を切断して異形屋根材を製造する方法である。前記異形屋根材に屋根面への設置位置を示す設置情報を付与するにあたり、前記標準屋根材の種類及び前記屋根面の各部位に応じて予め定められた前記異形屋根材の施工仕様により、前記異形屋根材が前記屋根面の各部位に設置された状態における非曝露部が予め定められている。非曝露部の予め定められた範囲内に前記設置情報を付与する。前記設置情報が付与されるタイミングは、前記標準屋根材が切断される前である。
【0009】
本発明の一態様に係る異形屋根材の製造方法は、所定の形状を有する標準屋根材を切断して得られ、屋根面への設置位置を示す設置情報を有する異形屋根材を製造する方法である。異形屋根材の形状は、予め設定されている複数種の形状の中から選択される。選択された形状に対応して予め設定された位置に設置情報が付与される。前記設置情報が付与されるタイミングは、前記標準屋根材が切断される前である。形状に対応して予め設定された位置は、異形屋根材が屋根面に設置された状態で、屋根面に設置される屋根部材で、異形屋根材に付与された設置情報の少なくとも一部が覆われる位置である。
【0010】
本発明の一態様に係る異形屋根材の製造システムは、所定の形状を有する標準屋根材を切断する切断装置と、屋根面への設置位置を示す設置情報を付与する設置情報付与装置と、を備える異形屋根材の製造システムである。異形屋根材の複数種の形状の中から形状を選択する形状選択部と、形状選択部で選択された形状に対応して予め設定されている位置を選択する位置選択部と、位置選択部で選択された位置に設置情報を付与するように、設置情報付与装置を制御する制御部と、を備える。前記設置情報付与装置は、前記切断装置で前記標準屋根材を切断する前に、前記標準屋根材に前記設置情報を付与するようにしてなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、施工現場での作業効率を向上させやすい異形屋根材を製造することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る標準屋根材を示す平面図である。
図2図2Aは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図2Bは、図2Aに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図2Cは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図2Dは、図2Cに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図2Eは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図2Fは、図2Eに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。
図3図3Aは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図3Bは、図3Aに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。
図4図4Aは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図4Bは、図4Aに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図4Cは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図4Dは、図4Cに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図4Eは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図4Fは、図4Eに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。
図5図5Aは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図5Bは、図5Aに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図5Cは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図5Dは、図5Cに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図5Eは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図5Fは、図5Eに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。
図6図6Aは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図6Bは、図6Aに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図6Cは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図6Dは、図6Cに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。
図7図7Aは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図7Bは、図7Aに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図7Cは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図7Dは、図7Cに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図7Eは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図7Fは、図7Eに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。
図8図8Aは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図8Bは、図8Aに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図8Cは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図8Dは、図8Cに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図8Eは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図8Fは、図8Eに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。
図9図9Aは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図9Bは、図9Aに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図9Cは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図9Dは、図9Cに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図9Eは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図9Fは、図9Eに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。
図10図10Aは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図10Bは、図10Aに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図10Cは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図10Dは、図10Cに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。図10Eは、本実施形態に係る標準屋根材の切断位置の一例を示す平面図である。図10Fは、図10Eに対応する異形屋根材の設置情報が付される位置を示す平面図である。
図11図11は、本実施形態に係る屋根の一例を示す斜視図である。
図12図12は、本実施形態に係る製造システムを示す説明図である。
図13図13は、本実施形態に係る製造システムの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
本実施形態に係る異形屋根材5の製造方法は、所定の形状を有する標準屋根材1から異形屋根材5を製造する方法である。具体的には、本実施形態において、異形屋根材5は、例えば、所定の形状を有する標準屋根材1を切断して得られる。また異形屋根材5は屋根面2への設置位置を示す設置情報4を有するようにして製造される。
【0014】
標準屋根材1は所定の形状を有する。所定の形状は、標準屋根材1の幅、長さ、厚み及び断面形状等により規定される。所定の形状の標準屋根材1は各種の形状に形成されるが、例えば、平面視(水平に置いて上方から見た場合)で三角形、四角形、五角形及び六角形などの多角形で、平板状である。所定の形状の標準屋根材1は、具体的には、例えば、幅300~1000mm、長さ200~500mm、厚み5~60mmに形成することができる。標準屋根材1は窯業系屋根材又は金属系屋根材などで形成される。窯業系屋根材としては、セメント、骨材、補強繊維などを含む水硬性材料を所望の形状に成形した後、硬化させたものなどが使用されるが、これらに限られるものでない。金属系屋根材は、金属板をロール成形等で成形して形成される。金属板として、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、塗装鋼板などが使用される。すなわち、標準屋根材1としては、一般的な屋根材を対象とするものである。
【0015】
異形屋根材5は標準屋根材1とは異なる形状を有する。異形屋根材5は標準屋根材1の一部を切断して除去して形成することができる。また異形屋根材5は標準屋根材1を切断せずに所望の形状に成形して形成することができる。
【0016】
異形屋根材5の形状は、予め設定されている複数種の形状の中から選択される。異形屋根材5の形状は、その異形屋根材5の屋根面2への設置位置や使用目的などに応じて、複数種設定されている。異形屋根材5の予め設定されている複数種の形状は、屋根面2の形状及び屋根面2の勾配などを含む屋根情報に基づいて決定される。屋根面2の形状及び屋根面2の勾配などは、建物の屋根の種類及び形状などによって、建物毎に異なる。
【0017】
図11に示す建物の屋根100は、形状、勾配及び傾斜方向が異なる複数の屋根面2が組み合わされて形成されている。屋根情報には、屋根面2の形状と屋根面2の勾配の他に、屋根の種類、傾斜方向などが含まれている。形状の異なる複数種の異形屋根材5は、屋根情報に応じて設定されている。すなわち、異なる複数種の異形屋根材5の各形状は、標準屋根材1の種類及び屋根面2の各部位に応じて予め定められている。
【0018】
図1には、標準屋根材1の一例を示している。この標準屋根材1は平面視で横長の六角形で平板状に形成されている。図11に示す屋根100は、屋根面2の部位としては、例えば、けらば部101、平棟部102、隅棟部103、谷部104、壁取合い部105、軒先部106及び平部107を有している。
【0019】
異形屋根材5には、選択された形状に対応して予め設定された位置7に設置情報4が付与される。設置情報4とは、その異形屋根材5が設置される屋根面2の部位を含む。また設置情報4には、その異形屋根材5が軒から見て何段目に設置されるかの情報が含まれている。つまり、標準屋根材1及び異形屋根材5は屋根面2の軒側から棟側に向かって一部を重ねて段状に設置されていくが、設置情報4には異形屋根材5の段の位置が含まれている。このように設置情報4は各異形屋根材5に対応する屋根面2への設置位置を含んでいる。
【0020】
異形屋根材5の設置情報4が付される位置7は、形状に対応して予め設定されている。この位置7に付された設置情報4の少なくとも一部は、異形屋根材5が屋根面2に設置された状態で、屋根面2に設置される屋根部材で覆われる。ここで、屋根部材は、標準屋根材1、異形屋根材5、または、けらばカバー及び棟包みなどの役物をいう。異形屋根材5に屋根面2への設置位置を示す設置情報4を付与するにあたっては、非曝露部9の予め定められた範囲内に設置情報4を付与するのが望ましい。つまり、標準屋根材1の種類及び屋根面2の各部位に応じて予め定められた異形屋根材5の施工仕様があるが、異形屋根材5には屋根面2の各部位に設置された状態における非曝露部9が予め定められている。そして、この非曝露部9に設置情報4が付される。非曝露部9は設置された状態で、屋根部材により覆われて露出しない部分を言う。
【0021】
異形屋根材5に付与された設置情報4は、異形屋根材5が屋根面2に設置される時点において視認可能である。設置情報4は、例えば、アルファベット、数字、記号、漢字、ひらがな及びカタカナなどで構成されており、一定のルールに基づいて形成されている。設置情報4は、異形屋根材5を設置する作業者が、所定位置への設置作業が可能な程度に確認することができるように付与されている。
【0022】
図2A図2C及び図2Eは、異形屋根材5としてけらば屋根材51を製造する際に標準屋根材1の切断する位置を示している。切断位置は一点鎖線Lで示されている。図2Bは、図2Aの切断位置で切断された異形屋根材5であって、けらば部101において平部107に設置されるけらば屋根材51である。図2Dは、図2Cの切断位置で切断された異形屋根材5であって、けらば部101において最上段より1段下に設置されるけらば屋根材51である。図2Fは、図2Eの切断位置で切断された異形屋根材5であって、けらば部101において最上段に設置されるけらば屋根材51である。これら複数のけらば屋根材51がけらば部101の位置に設置される。
【0023】
図3Aは、異形屋根材5として平棟屋根材52を製造する際に標準屋根材1の切断する位置を示している。図3Bは、図3Aの切断位置で切断された異形屋根材5であって、平棟部102の最上段又は最上段よりも1段下に設置される平棟屋根材52である。複数の平棟屋根材52は平棟部102の位置に設置される。
【0024】
図4A図4C及び図4E図5A図5C及び図5E図6A及び図6Cは、異形屋根材5として隅棟屋根材53を製造する際に標準屋根材1の切断する位置を示している。図4Bは、図4Aの切断位置で切断された異形屋根材5であって、隅棟部103に沿った各部位に設置される隅棟屋根材53である。図4Dは、図4Cの切断位置で切断された異形屋根材5であって、隅棟部103に沿った各部位に設置される隅棟屋根材53である。図4Fは、図4Eの切断位置で切断された異形屋根材5であって、隅棟部103に沿った各部位に設置される隅棟屋根材53である。図5Bは、図5Aの切断位置で切断された異形屋根材5であって、隅棟部103の最上段に設置される隅棟屋根材53である。図5Dは、図5Cの切断位置で切断された異形屋根材5であって、隅棟部103に三つ又に設置される隅棟屋根材53である。図5Fは、図5Eの切断位置で切断された異形屋根材5であって、隅棟部103に三つ又に設置される隅棟屋根材53である。図6Bは、図6Aの切断位置で切断された異形屋根材5であって、隅棟部103の三つ又の最上段に設置される隅棟屋根材53である。図6Dは、図6Cの切断位置で切断された異形屋根材5であって、隅棟部103の三つ又の最上段に設置される半裁の隅棟屋根材53である。これら複数の隅棟屋根材53が隅棟部103の位置に設置される。
【0025】
図7A図7C及び図7Eは、異形屋根材5として谷部屋根材54を製造する際に標準屋根材1の切断する位置を示している。図7Bは、図7Aの切断位置で切断された異形屋根材5であって、谷部104の最も端(谷側)に設置される谷部屋根材54である。図7Dは、図7Cの切断位置で切断された異形屋根材5であって、谷部104の最も端から2枚目に設置される谷部屋根材54である。図7Fは、図7Eの切断位置で切断された異形屋根材5であって、谷部104の最上段に設置される谷部屋根材54である。これら複数の谷部屋根材54が谷部104の位置に設置される。
【0026】
図8Aは、異形屋根材5として壁取合い部105の出隅に設置される出隅屋根材55を製造する際に標準屋根材1の切断する位置を示している。図8Bは、図8Aの切断位置で切断された出隅屋根材55である。
【0027】
図8Cは、異形屋根材5としてすがり部又は入隅部に設置されるすがり入隅屋根材56を製造する際に標準屋根材1の切断する位置を示している。図8Dは、図8Cの切断位置で切断されたすがり入隅屋根材56である。
【0028】
図8Eは異形屋根材5として端材57を製造する際に標準屋根材1の切断する位置を示している。図8Fは、図8Eの切断位置で切断された端材57である。
【0029】
図2図8において、各異形屋根材5は標準屋根材1を切断して形成される。標準屋根材1を示す各図において、一点鎖線Lは異形屋根材5を形成する際に標準屋根材1を切断する位置を示している。また異形屋根材5を示す各図において、点々模様の範囲内が位置7であって、異形屋根材5の設置情報4が付されている。二点鎖線の部分は切断により除去される。
【0030】
図12は、異形屋根材5の製造システム12を示している。この製造システム12は、工場等で標準屋根材1から異形屋根材5を製造するシステムである。切断装置13と、設置情報付与装置14と、を備えている。
【0031】
切断装置13は所定の形状を有する標準屋根材1を切断するものである。切断装置13は標準屋根材1を切断可能なブレードなどを備えている。
【0032】
設置情報付与装置14は、屋根面2への設置位置を示す設置情報4を付与するものである。設置情報付与装置14は異形屋根材5及び必要に応じて標準屋根材1の表面に印刷やレーザ加工等で設置情報4を付与することができ、例えば、インクジェットプリンタなどの印刷装置である。設置情報4は、標準屋根材1又は異形屋根材5の表面の色が濃色系の場合は淡色系のインクで印刷され、標準屋根材1又は異形屋根材5の表面の色が淡色系の場合は濃色系のインクで印刷される。これにより、設置情報4が視認しやすくなる。
【0033】
本実施形態において、異形屋根材5の製造システム12は、更に、形状選択部15と、位置選択部16と、制御部17と、を備える。形状選択部15は、異形屋根材5の複数種の形状の中から、目的の形状を選択する。異形屋根材5の複数種の形状は、例えば、図2図8に示すものである。形状選択部15はパーソナルコンピュータ等で構成され、異形屋根材5の複数種の形状を記憶する記憶装置と、作業者等の入力に基づいて記憶装置から所望の形状を選択する制御装置とを有している。
【0034】
位置選択部16は、形状選択部15で選択された形状に対応して予め設定されている位置7を選択する。位置7は、設置情報4を付与する位置である。位置選択部16は、パーソナルコンピュータ等で構成され、異形屋根材5の各形状に対応する位置7を記憶する記憶装置と、形状選択部15等の入力に基づいて記憶装置から予め設定された位置7を選択する制御装置とを有している。複数種の形状の中から目的とする異形屋根材5の形状を選択するにあたっては、当該異形屋根材5が設置される屋根面2の形状及び屋根面2の勾配に関する設置屋根情報に基づいて、位置選択部16で選択される。設置屋根情報は、屋根材の割付や積算時に得られる。
【0035】
制御部17は、位置選択部16で選択された位置7に設置情報4を付与するように、設置情報付与装置14を制御する。制御部17は、パーソナルコンピュータ等で構成され、位置選択部16等の入力に基づいて位置7に設置情報4を付与するように、設置情報付与装置14を制御する。なお、位置7と非曝露部9の境界よりも位置7の内方向に10mm以上内側に位置させるのが望ましい。つまり、非曝露部9の外縁部分よりも10mm以上内側に位置7を設定するのが好ましい。
【0036】
ここで、設置情報付与装置14により設置情報4が付与されるタイミングは、標準屋根材1が切断される前、標準屋根材1が切断されている途中及び標準屋根材1が切断された後のうちの少なくとも一つである。標準屋根材1が切断される前であれば、標準屋根材1の形状に対応して設置情報付与装置14を制御することができ、形状の異なる複数種の異形屋根材5の各形状に対応して設置情報付与装置14を制御する場合に比べて、設置情報付与装置14を容易に制御することができる。標準屋根材1が切断されている途中であれば、標準屋根材1の切断作業と並行して設置情報4の付与作業も行うことができ、作業の簡素化を図ることができる。標準屋根材1が切断された後であれば、異形屋根材5に設置情報4が付与されるため、設置情報4を付与する位置7が認識しやすくなり、設置情報4を付与する位置がずれにくくなる。
【0037】
(変形例)
実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0038】
図9A図9F及び図10A図10Fは、標準屋根材1がスタータの場合について示している。標準屋根材1のスタータは図1に示す標準屋根材1よりも細長く形成されている。図9Bは、図9Aの切断位置で切断された異形屋根材5であって、隅棟部103に設置される隅棟スタータ59である。図9Dは、図9Cの切断位置で切断された異形屋根材5であって、隅棟部103に設置される隅棟スタータ60である。隅棟スタータ61は端から2枚目に設置される。図9Fは、図9Eの切断位置で切断された異形屋根材5であって、けらば部101に設置されるけらばスタータ61である。図10Bは、図10Aの切断位置で切断された異形屋根材5であって、谷部104に設置される谷部スタータ64である。図10Dは、図10Cの切断位置で切断された異形屋根材5であって、谷部104に設置される谷部スタータ65である。図10Fは、図10Eの切断位置で切断された異形屋根材5であって、半裁されたスタータ66である。各図において、異形屋根材5における点々模様の範囲内が位置7であって、異形屋根材5の設置情報4が付されている。スタータの場合、全体が屋根部材に覆われるため、設置情報4は異形屋根材5の表面全体に付することが可能である。
【0039】
設置情報4は、例えば、それぞれの異形屋根材5が設置される屋根面2に応じてインク色を異ならせても良く、設置時や梱包時に間違い難くすることができる。
【0040】
また、位置7から設置情報4がはみ出す可能性があるなど、異形屋根材5及び屋根部材を屋根面2に設置した後も設置情報4が露出する場合は、作業者が設置作業中に視認できる程度に異形屋根材5の表面の色と同系色のインクで印刷しても良い。また、設置情報4は、異形屋根材5を設置後に、太陽光などの紫外線により経時的に消失するインクで印刷しても良い。また、設置情報4は、異形屋根材5を設置後に、雨水により経時的に流失するインクで印刷しても良い。
【0041】
図13は、異形屋根材5の製造システム12の変形例を示す。この製造システム12は、形状選択部15と、位置選択部16と、制御部17と、設置情報付与装置14と、更に、梱包装置18と、割付演算部19と、を備える。またこの製造システム12は、異形屋根材5の複数種の形状の中から、目的の形状を選択する形状選択部15と、異形屋根材5の複数種の形状に対応して予め設定されている位置7を選択する位置選択部16との両方の機能を有するパーソナルコンピュータ等で構成されている。したがって、形状選択部15に保持される情報と位置選択部16に保持される情報とを位置選択部16と形状選択部15とに共通の記憶装置に記憶させても良い。さらに異形屋根材5の形状の情報と、設置情報4を付与する位置7の情報とを、一体不可分の情報(データ)として扱うことも可能である。この場合、目的とする異形屋根材5の形状が選択されると、設置情報4を付与する位置7も自動的に決まるため、作業効率が向上する。
【0042】
梱包装置18は、設置情報4や施工仕様等に基づく制御部17からの情報を受け、例えば、標準屋根材1と異形屋根材5とを、それぞれの屋根面2毎に設置順序に沿って積載することができる移載機を備えている。
【0043】
割付演算部19は、屋根面2の形状、屋根面2の勾配、屋根面2の傾斜方向、屋根の種類、重ね代、隅棟部103、谷部104などの控え寸法など、屋根情報や施工仕様に基づいて割付情報を作成し、当該割付情報に基づいて切断すべき位置にある標準屋根材1を特定し、当該標準屋根材1から得られる異形屋根材5の設置位置情報を作成するとともに切断情報を作成し、また割付情報に基づいて梱包情報を作成する。そして、制御部17から当該切断情報が切断装置13に、当該設置位置情報が設置情報付与装置14に、当梱包情報が梱包装置18に送られ、切断、印刷、梱包が自動的に行われる。
【0044】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る異形屋根材の製造方法は、所定の形状を有する標準屋根材1から異形屋根材5を製造する方法である。異形屋根材5に屋根面2への設置位置を示す設置情報4を付与するにあたり、標準屋根材1の種類及び屋根面2の各部位に応じて予め定められた異形屋根材5の施工仕様により、異形屋根材5が屋根面2の各部位に設置された状態における非曝露部9が予め定められている。非曝露部9の予め定められた範囲内に設置情報4を付与する。
【0045】
この態様によれば、設置情報4が異形屋根材5の非曝露部9の表面に付与することができ、屋根面2に対する異形屋根材5の設置位置が判りやすく、施工現場での作業効率を向上させやすい。しかも非曝露部9は異形屋根材5の設置後に見えにくくなるため、屋根の外観が損なわれにくい。
【0046】
第2の態様に係る異形屋根材の製造方法は、所定の形状を有する標準屋根材1を切断して得られ、屋根面2への設置位置を示す設置情報4を有する異形屋根材5を製造する方法である。異形屋根材5の形状は、異形屋根材5の施工仕様により予め設定されている複数種の形状の中から選択される。選択された形状に対応して予め設定された位置7に設置情報4が付与される。形状に対応して予め設定された位置7は、異形屋根材5が屋根面2に設置された状態で、屋根面2に設置される屋根部材で、異形屋根材5に付与された設置情報4の少なくとも一部が覆われる位置である。
【0047】
この態様によれば、設置情報4が異形屋根材5の表面に付与することができ、屋根面2に対する異形屋根材5の設置位置が判りやすく、施工現場での作業効率を向上させやすい。また異形屋根材5の形状は、予め設定されている複数種の形状の中から選択されるため、異形屋根材5の形状を選択するにあたり、複雑な計算が必要でなく、異形屋根材5の製造効率が向上する。しかも異形屋根材5に付与された設置情報4は異形屋根材5の設置後に他の屋根部材で覆われて見えにくくなるため、屋根の外観が損なわれにくい。
【0048】
第3の態様に係る異形屋根材の製造方法は、第1又は第2の態様において、設置情報4が付与されるタイミングは、標準屋根材1が切断される前、標準屋根材1が切断されている途中及び標準屋根材1が切断された後のうちの少なくとも一つである。
【0049】
この態様によれば、標準屋根材1が切断される前であれば、設置情報4の付与位置を容易に制御することができる。また標準屋根材1が切断されている途中であれば、作業の簡素化を図ることができる。また標準屋根材1が切断された後であれば、設置情報4を付与する位置がずれにくくなる。
【0050】
第4の態様に係る異形屋根材の製造方法は、第1~3のいずれか一つの態様において、異形屋根材5の施工仕様は予め設定されている複数種の形状を含み、当該複数種の形状は、屋根面2の形状及び屋根面2の勾配を含む屋根情報に基づいて決定される。
【0051】
この態様によれば、屋根面2の形状及び屋根面2の勾配を含む屋根情報に応じた複数種の異形屋根材5の形状を予め設定しやすい。
【0052】
第5の態様に係る異形屋根材の製造方法は、第1~4のいずれか一つの態様において、異形屋根材5の形状は、当該異形屋根材5が設置される屋根面2の形状及び屋根面2の勾配を含む設置屋根情報に基づいて、複数種の形状の中から選択される。
【0053】
この態様によれば、屋根面2の形状及び屋根面2の勾配に応じた異形屋根材5の形状を選択することができる。
【0054】
第6の態様に係る異形屋根材の製造方法は、第1~5のいずれか一つの態様において、異形屋根材5に付与された設置情報4は、異形屋根材5が屋根面2に設置される時点において視認可能である。
【0055】
この態様によれば、屋根面2に対する異形屋根材5の設置位置が判りやすく、施工現場での作業効率を向上させやすい。
【0056】
第7の態様に係る異形屋根材の製造システム12は、所定の形状を有する標準屋根材1を切断する切断装置13と、屋根面2への設置位置を示す設置情報4を付与する設置情報付与装置14と、を備える異形屋根材の製造システムである。異形屋根材5の施工仕様により予め設定されている複数種の形状の中から形状を選択する形状選択部15と、形状選択部15で選択された形状に対応して予め設定されている位置7を選択する位置選択部16と、位置選択部16で選択された位置7に設置情報4を付与するように、設置情報付与装置14を制御する制御部17と、を備える。
【0057】
この態様によれば、異形屋根材5の形状は、予め設定されている複数種の形状の中から選択されるため、異形屋根材5の形状を選択するにあたり、複雑な計算が必要でなく、異形屋根材5の製造効率が向上する。
【0058】
第8の態様に係る異形屋根材の製造システム12は、第7の態様において、設置情報付与装置14は、印刷装置である。
【0059】
この態様によれば、印刷により設置情報4を容易に付与することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 標準屋根材
2 屋根面
4 設置情報
5 異形屋根材
7 位置
9 非曝露部
12 製造システム
13 切断装置
14 設置情報付与装置
15 形状選択部
16 位置選択部
17 制御部
18 梱包装置
19 割付演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13